(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明に係る偏光測定装置10を含む光学測定装置の実施形態を示す。
【0012】
光学測定装置は、分析対象光として試料Sを透過した光を偏光測定装置10に入射させるために、試料Sに光を照射する光源12を含む。光源12として、例えば、ハロゲンランプなどの白色光源を使用することができる。
【0013】
光学測定装置は、光路Lに沿って光源12と試料Sとの間に配置された光ファイバー14と、コリメートレンズ16と、干渉フィルタ18とを更に含む。光ファイバー14は、光源12からの光を点光源とする。光ファイバー14として、例えば、直径200μmのものを使用することができる。コリメートレンズ16は、光ファイバー14により点光源にされた光を平行光とする。干渉フィルタ18は、コリメートレンズにより平行光にされた光を単色光とする。
【0014】
偏光測定装置10は、分析対象光(この実施形態では、試料Sを透過した光)を偏光変調する偏光変調器20と、偏光変調された光の所定の偏光成分を透過させる検光子30と、検光子30を透過した光の光強度を検出する検出手段40と、検出手段40により検出された光強度に基づいて分析対象光の偏光特性要素を演算する演算部60とを備える。
【0015】
偏光変調器20は、複屈折位相差を変化させることができる2つの可変位相子21、22を含む。可変位相子21、22は、例えば、ネマティック液晶セルを含む液晶可変位相子からなる。ネマティック液晶セルとして、例えば、液晶の屈折率異方性Δnが0.2、セルギャップが5.5μmのものを使用することができる。
【0016】
分析対象光の進行方向の手前側に配置された第1の液晶可変位相子21は、任意の方向に主軸(進相軸又は遅相軸)を有する。第1の液晶可変位相子21の主軸方位を0°とすると、第1の液晶可変位相子21は、その複屈折位相差δ
1に応じて任意の偏光のストークスパラメータS
2及びS
3を変化させる。すなわち、第1の液晶可変位相子21は、
図2に示すように、ポアンカレ球において任意の偏光状態を示す点PをS
1軸回りに回転させる。
【0017】
分析対象光の進行方向の奥側に配置された第2の液晶可変位相子22は、第1の液晶可変位相子21の主軸方位に対して45°の奇数倍傾いた方向に主軸(進相軸又は遅相軸)を有する。第1の液晶可変位相子21の主軸方位を0°としたので、第2の液晶可変位相子22の主軸方位は45°の奇数倍となり、第2の液晶可変位相子22は、その複屈折位相差δ
2に応じて任意の偏光のストークスパラメータS
1及びS
3を変化させる。すなわち、第2の液晶可変位相子22は、
図3に示すように、ポアンカレ球において任意の偏光状態を示す点PをS
2軸回りに回転させる。
【0018】
偏光変調器20は、主軸方位が0°である第1の液晶可変位相子21と、主軸方位が45°の奇数倍である第2の液晶可変位相子22とを備えるので、分析対象光のストークスパラメータS
2及びS
3を第1の液晶可変位相子21の複屈折位相差δ
1に応じて変化させ、次いでストークスパラメータS
1及びS
3を第2の液晶可変位相子22の複屈折位相差δ
2に応じて変化させる。すなわち、偏光変調器20は、
図4に示すように、ポアンカレ球において分析対象光の偏光状態を示す点P
0をS
1軸回りの回転により矢印aで示すように点P
1に移動させ、更に点P
1をS
2軸回りの回転により矢印bで示すように点P
2に移動させる。
【0019】
2つの液晶可変位相子の主軸方位をこのように設定したことにより、偏光変調器20による分析対象光の偏光変調は、ポアンカレ球において2つの軸(S
1軸及びS
2軸)回りの回転のみを含み、S
3軸回りの回転を含まない単純な動きとなるため、分析対象光の偏光状態を求めるための理論式を単純にすることができる。
【0020】
偏光変調器20は更に、液晶可変位相子21、22を取り囲む恒温ブロック23と、液晶可変位相子21、22の温度を制御する温度制御部24とを含む。温度制御部24は、液晶可変位相子21、22の温度を感知する温度センサ25と、ペルチェ素子26と、温度センサ25が感知した温度に基づいてペルチェ素子26を制御するペルチェコントローラ27とを含む。
【0021】
検光子30は、偏光変調器20により偏光変調された光の特定方向の直線偏光成分を透過させる。検光子30は、第1の液晶可変位相子21の主軸方位に対して45°の偶数倍傾いた方向に主軸(透過軸)を有する直線偏光子であり、任意の偏光のストークスパラメータS
1に相当する垂直直線偏光成分を透過させる。すなわち、検光子30は、
図5に示すように、ポアンカレ球において任意の偏光状態を示す点P
2をS
1軸に投影した点P
3に移動させる。
【0022】
検出手段40は、検光子30を透過した直線偏光の光強度を検出する。検出手段40は、受光センサとしてフォトセンサを含む。
【0023】
偏光測定装置10は、制御装置50として、演算部60と、制御信号発生部70と、記憶部80とを含む。
【0024】
演算部60は、分析対象光の偏光状態を示す偏光特性要素、例えばストークスパラメータを演算する。演算部60が演算する偏光特性要素は、ストークスパラメータ、楕円率角、方位角を含み得る。偏光測定装置10が光学測定装置の一部として構成される場合、演算部60は、分析対象光のストークスパラメータに基づいて、試料Sの旋光度、複屈折、ミュラー行列等を演算する。
【0025】
制御信号発生部70は、第1及び第2の液晶可変位相子21、22の複屈折位相差を変化させるために、第1及び第2の液晶可変位相子21、22の各々への印加電圧を制御する信号を発生する。
【0026】
記憶部80は、検出手段40が検出した光強度、演算部60が演算した分析対象光の偏光特性要素などを一時的に記憶する。
【0027】
上記の構成によれば、2つの液晶可変位相子への印加電圧を変えることにより2つの液晶可変位相子の複屈折位相差を変化させて光強度を検出することができるので、分析対象光のストークスパラメータ等の偏光状態、及びその波長分散を容易に測定することができる。また、2つの液晶可変位相子を含む偏光変調器を用い、位相子や検光子を回転せずに測定を行うので、位相子や検光子を回転するための駆動部が不要である。したがって、装置を小型化し、駆動電圧及び消費電力を低減することができる。更に、機械的な駆動がないため、測定速度を向上することができ、機械的な故障を低減することができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態における偏光測定装置10を説明したが、本発明に係る偏光測定装置はこれに限定されるものではない。偏光測定装置10の各部の構成は同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0029】
干渉フィルタ18は、検光子30と検出手段40の間に配置しても良い。或いは、干渉フィルタ18を用いる代わりに、検出手段40を分光手段としての回折格子と受光手段としての光検出アレイとを有する分光受光器としてもよい。これにより、分光受光器に入射した光を回折格子により波長毎に分光し、光検出アレイを構成するそれぞれの受光素子により波長毎の光強度を同時に検出することができる。したがって、偏光状態の波長分散をより効率よく測定することができる。
【0030】
続いて、本発明に係る偏光測定装置及び偏光測定方法による測定の原理を、数式を簡単にするために、第1の液晶可変位相子21の主軸方位を0°とし、第2の液晶可変位相子22の主軸方位を45°とし、検光子30の主軸方位を90°として説明する。
【0031】
分析対象光の各波長λにおけるストークスパラメータをS
0(λ)、S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)とすると、分析対象光の各波長におけるストークスベクトルS
INは、
【数1】
と表される。
【0032】
主軸方位が0°である第1の液晶可変位相子21のミュラー行列LC
1は、
【数2】
と表される。ここで、δ
1(λ)は波長λにおける第1の液晶可変位相子21の複屈折位相差である。このミュラー行列LC
1によって表される第1の液晶可変位相子21による偏光変調は、
図4のポアンカレ球において矢印aで表される。したがって、第1の液晶可変位相子21を通過した光の偏光状態は、ストークスベクトルで
【数3】
と表され、
図4のポアンカレ球において点P
1で示される。
【0033】
主軸方位が45°である第2の液晶可変位相子22のミュラー行列LC
2は、
【数4】
と表される。ここで、δ
2(λ)は波長λにおける第2の液晶可変位相子22の複屈折位相差である。このミュラー行列LC
2によって表される第2の液晶可変位相子22による偏光変調は、
図4のポアンカレ球において矢印bで表される。したがって、第2の液晶可変位相子22を通過した光の偏光状態は、ストークスベクトルで
【数5】
と表され、
図4のポアンカレ球において点P
2で示される。
【0034】
主軸方位が90°である検光子30のミュラー行列Aは、
【数6】
と表される。このミュラー行列Aによって表される検光子30による垂直直線偏光成分の取り出しは、
図5のポアンカレ球において矢印cで表される。したがって、検光子30を通過した光のストークスベクトルS
OUTは、
【数7】
と表される。この偏光状態は、
図5のポアンカレ球においてP
3で示される。
【0035】
式(7)から、検出手段40によって検出される各波長の光強度I(δ
1(λ),δ
2(λ))は、ストークスベクトルS
OUTのS
0成分であるので、以下の式で表される。
【数8】
【0036】
第1及び第2の液晶可変位相子21、22の複屈折位相差δ
1(λ)、δ
2(λ)をδ
1(λ)=δ
2(λ)=δ(λ)とすると、光強度I(δ(λ))は以下の式で表される。
【数9】
【0037】
式(9)をδに対してフーリエ解析したときのフーリエ級数の各係数は、ストークスパラメータS
0(λ)、S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)により以下の式で表される。
【数10】
【0038】
したがって、分析対象光のストークスパラメータS
0(λ)、S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)は、それぞれ以下の式で表される。
【数11】
【0039】
以上から、本発明に係る装置及び方法は、位相変調量δ(λ)を変化させて各波長の検出した光強度I(δ(λ))をフーリエ解析することにより、分析対象光の各波長のストークスパラメータS
0(λ)、S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)を算出することができる。
【0040】
図6に示すように、液晶可変位相子への印加電圧と液晶可変位相子の複屈折位相差との関係は波長によって異なるので、予め測定したそれぞれの波長における印加電圧と複屈折位相差との関係に基づいて、波長毎に印加電圧を複屈折位相差へ換算できるようにしておくことにより、それぞれの波長のストークスパラメータを測定することができる。
【0041】
また、ストークスパラメータが得られることにより、方位角や楕円率角などの他の偏光特性要素を容易に得ることができる。偏光測定装置が表示部(図示せず)を更に含む場合、分析対象光のストークスパラメータをポアンカレ球表示することにより、分析対象光の偏光状態を容易に視覚化することができる。また、本発明に係る偏光測定装置が光学特性測定装置に組み込まれる場合には、試料の旋光度、複屈折、ミュラー行列等も容易に測定することができる。
【0042】
本発明に係る装置及び方法による測定の原理を、数式を簡単にするために、主軸方位0°の第1の液晶可変位相子21と、主軸方位45°の第2の液晶可変位相子22と、主軸方位90°の検光子30とを用いた場合について説明した。しかし、第1の液晶可変位相子21の主軸方位は分析対象光の進行方向に垂直な任意の方向とすることができる。このとき、第1の液晶可変位相子21の主軸方位に対して、第2の液晶可変位相子22の主軸方位を45°の奇数倍傾いた方向とし、検光子30の主軸方位を45°の偶数倍傾いた方向とすることにより、分析対象光のストークスパラメータを同様に算出することができる。
【0043】
光強度の式(9)は、第1の可変位相子21の主軸方位に対する第2の可変位相子22の主軸方位及び検光子30の主軸方位の組み合わせによって異なる。光強度の式が異なる他の3つの組合せの例を第1〜第3の変更例として以下に示す。
【0044】
第1の変更例として、第1の可変位相子21の主軸方位を0°とし、第2の液晶可変位相子22の主軸方位を45°とし、検光子30の主軸方位を0°とすると、検光子30を通過した光のストークスベクトルS
OUT、検出手段40によって検出される各波長の光強度I(δ
1(λ),δ
2(λ))は、以下の式で表される。
【数12】
【0045】
第1及び第2の液晶可変位相子21、22の複屈折位相差δ
1(λ)、δ
2(λ)をδ
1(λ)=δ
2(λ)=δ(λ)とすると、光強度I(δ(λ))は以下の式で表される。
【数13】
【0046】
第2の変更例として、第1の可変位相子21の主軸方位を0°とし、第2の液晶可変位相子22の主軸方位を−45°とし、検光子30の主軸方位を90°とすると、検光子30を通過した光のストークスベクトルS
OUT、検出手段40によって検出される各波長の光強度I(δ
1(λ),δ
2(λ))は、以下の式で表される。
【数14】
【0047】
第1及び第2の液晶可変位相子21、22の複屈折位相差δ
1(λ)、δ
2(λ)をδ
1(λ)=δ
2(λ)=δ(λ)とすると、光強度I(δ(λ))は以下の式で表される。
【数15】
【0048】
第3の変更例として、第1の可変位相子21の主軸方位を0°とし、第2の液晶可変位相子22の主軸方位を−45°とし、検光子30の主軸方位を0°とすると、検光子30を通過した光のストークスベクトルS
OUT、検出手段40によって検出される各波長の光強度I(δ
1(λ),δ
2(λ))は、以下の式で表される。
【数16】
【0049】
第1及び第2の液晶可変位相子21、22の複屈折位相差δ
1(λ)=δ
2(λ)=δ(λ)とすると、光強度I(δ(λ))は以下の式で表される。
【数17】
【0050】
したがって、第1〜3の変更例においても、式(13)、(15)、(17)をδに対してフーリエ解析したときのフーリエ係数から、同様に析対象光のストークスパラメータS
0(λ)、S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)を算出することができる。また、第1の液晶可変位相子21の主軸方位を0°以外の任意の方向とした場合でも、第1の液晶可変位相子21の主軸方位に対する第2の液晶可変位相子22の主軸方位及び検光子30の主軸方位に応じて、式(9)、(13)、(15)、(17)のいずれかに基づいて、光強度I(δ(λ))をフーリエ解析することにより、分析対象光のストークスパラメータを同様に算出することができる。
【0051】
尚、検光子30の主軸方位は、必ずしも第1の液晶可変位相子21の主軸方位に対して45°の偶数倍傾いた方向でなくてもよい。しかし、例えば、第1の液晶可変位相子21の主軸方位を0°とし、第2の液晶可変位相子22の主軸方位を−45°としたとき、検光子30の主軸方位を45°とすると、検光子30を通過した直線偏光の光強度の式には、分析対象光のストークスパラメータS
0(λ)、S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)のすべてが含まれず、分析対象光のストークスパラメータを得ることができない。したがって、検光子30の主軸方位は、検光子30を通過した直線偏光の光強度の式に分析対象光のストークスパラメータS
0(λ)、S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)のすべてが含まれるように選択される必要がある。
【0052】
サンプリング数を減らすために、フーリエ解析による方法の代わりに、液晶可変位相子の位相変調量δを0°、45°、90°、135°としたときの光強度I(0)、I(45)、I(90)、I(135)を用いてストークスパラメータを得ることもできる。それぞれの光強度は、
【数18】
と表される。式(18a)〜(18d)から、それぞれのストークスパラメータは、以下のように表される。
【数19】
【0053】
したがって、この方法でも分析対象光のストークスパラメータを算出することができる。なお、位相変調量δを0°、45°、90°、135°とするために第1及び第2の液晶可変位相子21、22へ印加する電圧は波長によって異なるので、この方法ではそれぞれの位相変調量δにおける光強度の検出を波長毎に行う必要がある。
【0054】
測定例1
本発明の実施形態である
図1に示した偏光測定装置を使用し、試料として光軸回りに回転可能な偏光子を用い、試料を透過した分析対象光のストークスパラメータS
0(λ)、S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)を測定した。測定は、試料としての偏光子を10°ずつ回転させて行った。また、測定したストークスパラメータS
1及びS
2を用いて、以下の式(20)から方位角ψ(λ)を求めた。
【数20】
【0055】
図7は、測定したストークスパラメータS
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)をプロットしたポアンカレ球を示す。
図7から、測定したストークスパラメータS
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)がポアンカレ球の赤道に沿ってプロットされていることが分かる。これは、分析対象光のストークスパラメータS
3が概ねゼロであること、すなわち試料としての偏光子を通過した光の偏光状態が直線偏光であることを示す。また、測定毎(偏光子の回転毎)に、直線偏光の方位角が変化していることが分かる。
【0056】
図8は、偏光子の光軸回りの回転角と、測定したストークスパラメータS
1(λ)及びS
2(λ)から求めた方位角ψ(λ)との関係を示す。
図8から、偏光子による出射偏光角度に対して、直線偏光の方位角が線形性よく測定されていることが分かる。したがって、本発明の偏光測定装置によって、分析対象光のストークスパラメータS
1(λ)及びS
2(λ)が精度良く測定されたことが分かる。
【0057】
測定例2
本発明の実施形態である
図1に示した偏光測定装置を使用し、試料として液晶可変位相子を用い、試料を透過した分析対象光のストークスパラメータS
0(λ)、S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)を測定した。液晶可変位相子には配向方向45°のネマテッィク液晶セルを使用した。測定は、印加電圧を制御することにより試料としての液晶可変位相子の複屈折位相差を変化させて行った。
【0058】
液晶可変位相子を透過した分析対象光のストークスパラメータS
0(λ)、S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)は、以下の式(21a)で表される。測定したストークスパラメータS
1(λ)及びS
3(λ)を用いて、式(21b)から複屈折位相差δ(λ)を求めた。また、測定したストークスパラメータS
0(λ)とS
3(λ)を用いて、式(21c)から楕円率角χ(λ)を求めた。
【数21】
【0059】
図9は、測定したストークスパラメータS
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)をプロットしたポアンカレ球を示す。
図9から、測定したストークスパラメータS
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ)がS
2軸を中心にポアンカレ球の経線に沿ってプロットされていることが分かる。これは、分析対象光の偏光状態が円偏光と直線偏光との間で変化していることを表している。
【0060】
図10は、印加電圧を制御することにより設定した液晶可変位相子の複屈折位相差の設定値と、測定したストークスパラメータS
1(λ)及びS
3(λ)を用いて式(21b)から求めた複屈折位相差との関係を示す。
図10から、測定結果から求めた液晶可変位相子の複屈折位相差が、設定値とよく対応していることが分かる。すなわち、分析対象光の偏光状態から、分析対象光が透過した試料の光学特性が精度よく測定されていることが分かる。
【0061】
図11は、液晶可変位相子の複屈折位相差の設定値と、測定したストークスパラメータS
0(λ)とS
3(λ)から導いた楕円率角χ(λ)との関係を示す。
図11から、楕円率角χ(λ)が線形性よく測定されていることが読み取れる。したがって、本発明の偏光測定装置によって、分析対象光のストークスパラメータS
3(λ)も精度良く測定されたことが分かる。
【0062】
測定例3
本発明の実施形態である
図1に示した偏光測定装置を使用し、試料として中心波長590nm、水晶製の1/4波長板を用い、試料を透過した分析対象光のストークスパラメータを測定した。波長486nm、590nm、656nmの干渉フィルタを用いて、ストークスパラメータの波長分散も測定した。また、それぞれの波長で測定したストークスパラメータから、測定例2と同様に式(21b)を用いて試料の複屈折位相差を算出した。
【0063】
図12は、波長486nm、590nm、656nmでのストークスパラメータ測定値から算出した試料の複屈折位相差を示す。また実線は、以下の複屈折位相差の式と、厚さd=1.65μmと、各波長における水晶の常光屈折率n
o(λ)及び異常光屈折率n
e(λ)の値とを用いたシミュレーションにより求めた1/4波長板の複屈折位相差の波長分散曲線である。
【数22】
【0064】
測定値から求めたそれぞれの波長における試料の複屈折位相差はいずれも、シミュレーションにより求めた複屈折位相差の波長分散曲線上に乗っている。本発明の偏光測定装置によって、分析対象光のストークスパラメータの波長分散が精度良く測定され、それにより分析対象光が透過した試料の波長分散もまた精度良く測定されていることが分かる。
【0065】
以上、本発明の実施形態に係る偏光測定装置及び偏光測定方法を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。