(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のように、金属補強板を設置してもなお、強風に曝されることにより、躯体に捻じ込んだ固定ビスが抜けてしまう場合があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、強風に曝されても、躯体に捻じ込んだ固定ビスが抜け難い防水構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが、鋭意研究を重ねたところ、固定ビス41の抜けには、防水構造体が強風に曝されたときに生じる、防水シート23の横揺れが関与していることを見出した。
【0010】
図24に示すように、防水シート23が横揺れすると、防水シート23に接着されている固定板45が、断熱層22上で横揺れすることになる。
図24(A)は、固定板45が横揺れする前の図であり、
図24(B)及び(C)は、固定板45が横揺れしている様子を示す図であり、図中、点線で示す位置まで固定板45が移動していることを示す。
【0011】
固定板45の横揺れによる力は、固定ビス41のビス頭43に加わることになるが、躯体21と固定板45との間に、断熱層22があるために、固定板45の横揺れによる力が、固定ビス41に加わる点(
図23中、符号53)と、固定ビス41が躯体21に固定されている点(
図23中、符号54)とが、断熱層22の厚みの分だけ離れている。そのため、符号54で示す点を支点として、固定ビス41が揺れるため、躯体21及び断熱層22には、固定ビス41により、ネジ穴を広げる大きな力が加えられることになる。
【0012】
そして、固定ビス41の揺れにより広げられたネジ穴の大きさが大きくなると、固定ビス41は、躯体21及び断熱層22から抜けてしまう。
【0013】
本発明者らは、このような知見に基づき、固定板の横揺れを防止する措置を施すことにより、強風に曝されて防水シートが横揺れしても、固定板が横揺れしないので、防水シートの横揺れに起因する固定ビスの抜けを防止することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、断熱層と防水シートとからなる防水層が、固定具で、躯体の表面に固定されている防水構造体であって、
該躯体と、該断熱層と、該防水シートと、該固定具と、を有し、
該固定具は、該断熱層を貫通し該躯体に捻じ込み固定されている固定ビスと、該固定ビスが挿通される固定板と、からなり、
該固定板の防水シート側の面は、該防水シートに接合されており、
該固定板が該断熱層上で横揺れするのを防止する横揺れ防止措置が施されていること、
を特徴とする防水構造体を提供するものである。
【0015】
また、本発明(2)は、前記固定板の断熱層側に食い込み部を設け、前記断熱層に該食い込み部を食い込ませることにより、前記横揺れ防止措置が施されていることを特徴とする(1)の防水構造体を提供するものである。
【0016】
また、本発明(3)は、前記固定板の断熱層側の面と前記断熱層とを接着することにより、前記横揺れ防止措置が施されていることを特徴とする(1)の防水構造体を提供するものである。
【0017】
また、本発明(4)は、前記固定板の断熱層側の面と前記断熱層との摩擦力を高めることにより、前記横揺れ防止措置が施されていることを特徴とする(1)の防水構造体を提供するものである。
【0018】
また、本発明(5)は、前記固定板の形状と対応する形状であり、前記固定板を嵌め込む固定板嵌め込み孔を設け、該固定板嵌め込み孔に前記固定板を嵌め込むことにより、前記横揺れ防止措置が施されていることを特徴とする(1)の防水構造体を提供するものである。
【0019】
また、本発明(6)は、固定ビスと、該固定ビスが挿通される固定板と、からなり、
該固定板の断熱層側の面に、断熱層に食い込む食い込み部が設けられていることを特徴とする(2)の防水構造体用の固定具を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、強風に曝されても、躯体に捻じ込んだ固定ビスが抜け難い防水構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の防水構造体は、断熱層と防水シートとからなる防水層が、固定具で、躯体の表面に固定されている防水構造体であって、
該躯体と、該断熱層と、該防水シートと、該固定具と、を有し、
該固定具は、該断熱層を貫通し該躯体に捻じ込み固定されている固定ビスと、該固定ビスが挿通される固定板と、からなり、
該固定板の防水シート側の面は、該防水シートに接合されており、
該固定板が該断熱層上で横揺れするのを防止する横揺れ防止措置が施されていること、
を特徴とする防水構造体である。
【0024】
図1中、防水構造体10は、躯体21と、躯体21の表面に敷設されており、躯体21の表面を覆う断熱層22及び断熱層22を覆う防水シート23とからなる防水層24と、防水層24を固定するための固定具11aと、を有する。
【0025】
固定具11aは、固定ビス1と、固定板5aとからなる。
【0026】
固定ビス1は、
図2に示すように、平面形状が円形のビス頭3と、側面にネジ山が形成されている軸2と、先端部4で、構成されている。
【0027】
固定板5aは、
図3に示すように、固定ビス1の挿通孔6aを有している。この挿通孔6aの内周面には、固定ビス1のビス頭3が嵌合する座繰り部7aが形成されている。座繰り部7aの平面形状は、円形であり、座繰り部7aの形状は、ビス頭3の形状に対応する形状である。また、固定板5aの断熱層22側には、断熱層22に食い込むことにより、固定板5aの横揺れを防止する食い込み部8aが設けられている。固定板5aでは、下側から見たときの形状が円形である板状の食い込み部8aが、断熱層22の上面(
図3(B)中、符号15で示す点線の位置)から、断熱層22の内部に入り込むように、断熱層側に設けられている。本発明において、固定ビスのビス頭の形状に対応する形状とは、鋳物とその鋳物を鋳造するための鋳型のようにビス頭に対応する形状を指す。
【0028】
そして、固定板5aの食い込み部8aが、断熱層22に食い込むように、固定板5aが、断熱層22上に配置され、固定板5aの挿通孔6aを、固定ビス1が挿通し、断熱層22を貫通し、躯体21に捻じり込まれることにより、躯体21に断熱層22が固定されている。このとき、固定ビス1のビス頭3は、固定板5aの座繰り部7aに嵌合した状態で、躯体21に捻じ込み固定されている。
【0029】
また、固定板5aは、断熱層22と防水シート23の間に配置されている。そして、固定板5aの防水シート23側の面12は、防水シート23に接合されている。
【0030】
このような防水構造体10は、例えば、
図4〜
図8に示す方法により構築される。
【0031】
図4に示すように、先ず、躯体21の表面に、断熱層22を載置する。
【0032】
次いで、
図5に示すように、断熱層22上の固定板5aの設置箇所に、固定板5aの食い込み部8aを食い込ませて、固定板5aを設置する。
【0033】
次いで、
図6及び
図7に示すように、固定板5aの挿通孔6aより、固定ビス1を断熱層22に捻じ込み、断熱層22を貫通させ、更に、躯体21に捻じ込む。そして、固定ビス1を、断熱層22に貫通させ、躯体21に捻じ込むことにより、断熱層22が、固定具11aにより、躯体22に固定される。
【0034】
次いで、
図8に示すように、断熱層22及び固定具11aを覆うように、防水シート23を載置する。
【0035】
次いで、固定板5aの防水シート側の面12と防水シート23とを接合させることにより、
図1に示す防水構造体10を構築する。
【0036】
防水構造体10の固定具11aでは、
図1に示すように、固定板5aの食い込み部8aが、断熱層22に食い込んでいるので、固定板5aが、断熱層22上で横揺れするのが防止される。そのため、防水構造体10では、防水構造体10が強風に曝されても、固定板5aの横揺れに起因する固定ビス1の抜けが起こり難い。
【0037】
すなわち、本発明の防水構造体は、断熱層と防水シートとからなる防水層が、固定具で、躯体の表面に固定されている防水構造体であって、
該躯体と、該断熱層と、該防水シートと、該固定具と、を有し、
該固定具は、該断熱層を貫通し該躯体に捻じ込み固定されている固定ビスと、該固定ビスが挿通される固定板と、からなり、
該固定板の防水シート側の面は、該防水シートに接合されており、
該固定板が該断熱層上で横揺れするのを防止する横揺れ防止措置が施されていること、
を特徴とする防水構造体である。
【0038】
躯体は、断熱層と防水シートからなる防水層が敷設されている対象である。
図1に示す形態例では、防水層が敷設されている躯体の材質は、金属板であるが、これに限定されるものではなく、躯体の材質としては、金属板、コンクリート、軽量コンクリート、パネル材、木材等が挙げられる。また、
図1に示す形態例では、躯体の表面形状が、折れ板状に加工された形状であるが、これに限定されるものではなく、躯体の形状としては、平板状の形状、折れ板状の形状等が挙げられる。
【0039】
防水層は、断熱層と防水シートにより構成されている。
【0040】
断熱層の材質としては、通常、建物の断熱に用いられる断熱材であれば、特に制限されず、発泡ポリスチレン、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム等が挙げられる。本発明の防水構造体においては、断熱層としては、特に制限されず、躯体と防水シートとの間に配置されて、断熱機能を発揮するものであればよい。断熱層は、上記のような断熱材のみで形成されていてもよいし、他には、例えば、上記のような断熱材上に(上記断熱材と固定板との間に)、例えば、ポリエチレン製の織布からなる絶縁クロスシート、ガラス繊維製の防火用シート、ピンホール検査用のアルミ箔ラミネートシート等や、人の歩行を可能にする目的で、歩行用ボードとして、珪酸カルシウム板、石綿スレート板、軽量気泡コンクリート板等の高剛性板が敷かれているものであってもよく、この場合は、上記断熱材及びその上に敷かれている絶縁クロスシート、防火用シート、アルミ箔ラミネートシート、高剛性板等が、断熱層である。
【0041】
防水シートの材質は、防水性と耐候性を有し、通常、建物の防水シートとして用いられるものであれば、特に制限されず、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等の軟質の合成樹脂、合成ゴム系の材質等が挙げられる。これらのうち、防水シートの材質としては、ポリ塩化ビニル樹脂が、溶剤溶着性や熱融着性に優れる点で、好ましい。防水シートの厚みは、特に制限されず、必要に応じて適宜選択される。
【0042】
本発明の防水構造体に係る固定具は、固定ビスと、固定板と、からなる。固定具は、固定ビスが固定板の挿通孔に挿通され、固定ビスが断熱層を貫通し躯体に捻じり込み固定されることにより、断熱層を固定する部材であり、且つ、固定板の防水シート側の面が防水シートに接合することにより、防水シートを固定する部材でもある。
【0043】
固定ビスは、固定板の挿通孔に挿通されており、断熱層を貫通し躯体に捻じ込み固定されている。
【0044】
固定ビスは、固定ビスの先端部を、金属板やコンクリー等の躯体に打ち込むことにより、躯体に孔を空け、固定ビスを回転させることにより、側面のネジ山で躯体に開けられた孔にネジ山を切ることができるような構造を有している。
【0045】
固定ビスの材質としては、特に制限されず、鉄、ステンレス鋼などの金属等が挙げられる。
【0046】
固定ビスのビス頭には、固定ビスを回転させるための工具が係合する溝、例えば、
図2に示す形態例では、十字形状の溝14が、形成されている。ビス頭に形成されている溝の形状は、固定ビスを回転させるための工具を係合させることができる形状であれば、特に制限されない。
【0047】
固定板は、固定ビスが挿通される挿通孔を有している。固定板の挿通孔の内周面には、固定ビスのビス頭が嵌合する座繰り部が形成されている。固定板に形成されている座繰り部の形状は、固定ビスのビス頭が嵌合する形状であればよく、ビス頭の形状に合わせて適宜選択される。
【0048】
固定板の材質としては、特に制限されないが、例えば、鉄、ステンレス鋼などの金属、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの合成樹脂等が挙げられる。
【0049】
固定板が、表面が合成樹脂で被覆されている鋼板等の金属板の場合、固定板に被覆されている合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等の軟質の合成樹脂、合成ゴム系の材質等が挙げられる。これらのうち、固定板に被覆されている合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂が、溶剤溶着性や熱融着性に優れる点で、好ましい。固定板の厚みは、特に制限されず、必要に応じて適宜選択される。
【0050】
固定板が、表面に合成樹脂が被覆されている金属板の場合、例えば、合成樹脂被覆鋼板をプレス加工することにより、表面に合成樹脂が被覆されている金属板製の固定板を作製することができる。また、固定板が、合成樹脂板の場合、例えば、射出成形等の適宜の樹脂加工方法により、合成樹脂製の固定板を作製することができる。
【0051】
固定板は、断熱層と防水シートとの間に配置される。固定板の防水シート側の面は、防水シートに接合されている。固定板の防水シート側の面と防水シートとの接合形態は、強風に曝されても防水シートが固定板の防水シート側の面から剥がれない形態であれば、特に制限されず、例えば、防水シートに覆われた状態で、防水シートの上から、固定板の防水シート側の面に被覆されている樹脂を加熱することにより、固定板の防水シート側の面に被覆されている樹脂で融着された形態、防水シートを固定板の防水シート側の面に載置するときに、固定板の防水シート側の面に被覆されている樹脂に溶剤を塗布することにより、固定板の防水シート側の面に被覆されている樹脂で溶着された形態、防水シートを固定板の防水シート側の面に載置するときに、固定板の防水シート側の面に接着剤を塗布することにより、接着剤で接着された形態等が挙げられる。
【0052】
本発明の防水構造体には、固定板が断熱層上で横揺れするのを防止する横揺れ防止措置が施されている。
【0053】
本発明の第一の形態の防水構造体(以下、防水構造体(1)とも記載する。)は、固定板の断熱層側の面に食い込み部を設け、断熱層に食い込み部を食い込ませることにより、横揺れ防止措置が施されている防水構造体である。
【0054】
防水構造体(1)に係る固定板には、断熱層側に、断熱層に食い込む食い込み部が設けられている。
【0055】
防水構造体(1)に係る固定板としては、例えば、
図3に示す形態例の固定板5aが挙げられる。
【0056】
また、防水構造体(1)に係る固定板としては、
図9に示す形態例の固定板5bが挙げられる。固定板5bは、固定ビス1の挿通孔6bを有している。この挿通孔6bの内周面には、固定ビス1のビス頭3が嵌合する座繰り部7bが形成されている。座繰り部7bの平面形状は、円形であり、座繰り部7bの形状は、ビス頭3の形状に対応する形状である。また、固定板5bの断熱層22側には、断熱層22に食い込むことにより、固定板5bの横揺れを防止する食い込み部8bが設けられている。固定板5bでは、下側から見たときの形状が円弧の一部の形状である板状の食い込み部8bが4つ、断熱層22の上面(
図9(B)中、符号15で示す点線の位置)から、断熱層22の内部に入り込むように、断熱層側に設けられている。
【0057】
また、防水構造体(1)に係る固定板としては、
図10に示す形態例の固定板5cが挙げられる。固定板5cは、固定ビス1の挿通孔6cを有している。この挿通孔6cの内周面には、固定ビス1のビス頭3が嵌合する座繰り部7cが形成されている。座繰り部7cの平面形状は、円形であり、座繰り部7cの形状は、ビス頭3の形状に対応する形状である。また、固定板5cの断熱層22側には、断熱層22に食い込むことにより、固定板5cの横揺れを防止する食い込み部8cが設けられている。固定板5cでは、横側から見たときの形状が逆三角形である板状の食い込み部8cが4つ、断熱層22の上面(
図10(B)中、符号15で示す点線の位置)から、断熱層22の内部に入り込むように、断熱層側に設けられている。
【0058】
また、防水構造体(1)に係る固定板としては、
図11に示す形態例の固定板5dが挙げられる。固定板5dは、固定ビス1の挿通孔6dを有している。この挿通孔6dの内周面には、固定ビス1のビス頭3が嵌合する座繰り部7dが形成されている。座繰り部7dの平面形状は、円形であり、座繰り部7dの形状は、ビス頭3の形状に対応する形状である。また、固定板5dの断熱層22側には、断熱層22に食い込むことにより、固定板5dの横揺れを防止する食い込み部8dが設けられている。固定板5dでは、下側の面全体が、下側に向けて出っ張っており、この出っ張った下側の部分全体が食い込み部である。つまり、固定板5dには、断熱層22の上面(
図11(B)中、符号15で示す点線の位置)から、断熱層22の内部にめり込むことができるように、下側に向けて出っ張った食い込み部8dが設けられている。
【0059】
また、防水構造体(1)に係る固定板としては、
図12に示す形態例の固定板5eが挙げられる。固定板5eは、固定ビス1の挿通孔6eを有している。この挿通孔6eの内周面には、固定ビス1のビス頭3が嵌合する座繰り部7eが形成されている。座繰り部7eの平面形状は、円形であり、座繰り部7eの形状は、ビス頭3の形状に対応する形状である。また、固定板5eの断熱層22側には、断熱層22に食い込むことにより、固定板5eの横揺れを防止する食い込み部8eが設けられている。固定板5eでは、下側から見たときの形状が円形である板状の食い込み部8eが、断熱層22の上面(
図12(B)中、符号15で示す点線の位置)から、断熱層22の内部に入り込むように、断熱層側に設けられている。
【0060】
防水構造体(1)に係る固定板に設けられている食い込み部の形状は、特に制限されず、断熱層に食い込むこと、すなわち、断熱層の上面から断熱層の内部に入り込むことにより、固定板の横揺れを防止することができる形状であればよい。
【0061】
防水構造体(1)に係る固定板において、食い込み部が設けられる平面方向の位置は、
図2及び
図9に示す形態例では、固定板を下側から見たときに、固定板の外縁又はその近傍であり、また、
図10及び
図12に示す形態例では、固定板を下側から見たときに、固定板の外縁より中心側に寄った位置であり、また、
図11に示す形態例では、固定板を下側から見たときに、固体板の全体であるが、これらに限定されず、断熱層に食い込むこと、すなわち、断熱層の上面から断熱層の内部に入り込むことにより、固定板の横揺れを防止することができる位置であればよい。
【0062】
防水構造体(1)に係る固定板において、食い込み部が設けられる平面方向の位置について、
図13を用いて説明する。
図13に示す固定板5eにおいて、固定ビスの軸心の位置(固定板5eの中心の位置でもある。)を符号33で示し、固定ビスの外縁(固定板5eの挿通孔6eの内周でもある。)を符号30で示し、食い込み部8eの設置位置を符号32で示し、固定板5eの外縁の位置を符号29で示している。なお、
図13では、固定ビスの外縁30と挿通孔6eの内周面の位置とは重なっているので、説明の都合上、挿通孔6eの内周の記載を省略する。また、半径方向の食い込み部8eの中点を、食い込み部5eの設置位置32とする。防水構造体(1)に係る固定板において、固定ビスの半径34に対する固定板の中心33から食い込み部の設置位置32までの長さ35の比(符号35の長さ/符号34の長さ)は、好ましくは1.5以上、特に好ましくは3以上、更に好ましくは5以上である。また、防水構造体(1)において、固定板の中心33から外縁29までの長さ28に対する固定板の中心33から食い込み部の設置位置32のまでの長さ35の比(符号35の長さ/符号28の長さ)は、好ましくは0.15〜1、特に好ましくは0.3〜1、更に好ましくは0.5〜1である。防水構造体(1)に係る固定板において、固定ビスの半径34に対する固定板の中心33から食い込み部の設置位置32までの長さ35の比(符号35の長さ/符号34の長さ)、又は固定板の中心33から外縁29までの長さ28に対する固定板の中心33から食い込み部の設置位置32のまでの長さ35の比(符号35の長さ/符号28の長さ)が、上記範囲にあることにより、固定板の横揺れを防水する効果が高くなる。
【0063】
防水構造体(1)に係る固定板において、食い込み部としては、固定板の断熱層側の面に付与される1mm以下の凹凸又は突起から、例えば、
図19に示す形態例のように、断熱層の厚さと同程度の長さのものまである。防水構造体(1)に係る固定板において、食い込み部の長さは、特に制限されないが、食い込み部の長さは、好ましくは断熱層厚さの10%以上、特に好ましくは断熱層厚さの50%以上、更に好ましくは断熱層厚さと同値である。なお、防水構造体(1)に係る固定板において、食い込み部の長さとは、断熱層内に食い込む食い込み部の縦方向の長さであり、断熱層の上面の位置から食い込み部の先端までの長さであり、
図3に示す形態例では、符号13で示す長さである。
【0064】
図19に示す形態例の固定板5jは、食い込み部の長さが異なること以外は、
図3に示す固定板5aと同様である。つまり、固定板5jは、固定ビス1の挿通孔を有している。この固定板5jの挿通孔の内周面には、固定ビス1のビス頭が嵌合する座繰り部が形成されている。固定板5jに形成されている座繰り部の平面形状は、円形であり、固定板5jに形成されている座繰り部の形状は、固定ビス1のビス頭に対応する形状である。固定板5jの断熱層22側には、長さが断熱層22の厚みと同じ長さである食い込み部8jが設けられている。食い込み部8jは、下側から見たときの形状が円形である板状の食い込み部である。なお、
図19では、説明の都合上、防水シートの記載を省略したが、実際は、固定板5jの防水シート側の面は、防水シートに接合されている。
【0065】
そして、防水構造体が、固定板5jのような、断熱層の厚みと同じ長さの食い込み部が設けられている固定板を有する場合、固定板の食い込み部の下端は、躯体の表面に当接している。例えば、
図19に示す形態例では、食い込み部8jの下端81が、躯体21の表面に当接している。固定板の食い込み部の下端が、躯体の表面に当接していることにより、食い込み部が躯体に接している点も支点となるので、多点支点、線状に支点を確保でき、固定ビスによる固定部の1点支点に比べ、横揺れ力の作用を発生し難くできる。
【0066】
また、食い込み部の長さが断熱層と同程度である食い込み部が設けられている固定板の形態例としては、例えば、
図9に示す固定板5bの食い込み部8bの長さが、断熱層の厚みと同じ長さである形態例が挙げられる。そのような形態例の固定板(以下、固定板5kとも記載する。)は、食い込み部の長さが異なること以外は、
図9に示す固定板5bと同様である。つまり、固定板5kは、固定ビス1の挿通孔を有している。この固定板の挿通孔の内周面には、固定ビス1のビス頭が嵌合する座繰り部が形成されている。固定板5kに形成されている座繰り部の平面形状は、円形であり、固定板5kに形成されている座繰り部の形状は、固定ビス1のビス頭に対応する形状である。そして、固定板5kの断熱層側には、長さが断熱層の厚さと同じ長さである食い込み部(以下、食い込み部8kとも記載する。)が設けられている。食い込み部8kは、下側から見たときの形状が円弧の一部の形状である板状の食い込み部である。
【0067】
本発明の第二の形態の防水構造体(以下、防水構造体(2)とも記載する。)は、固定板の断熱層側の面と断熱層とを接着することにより、横揺れ防止措置が施されている防水構造体である。
【0068】
防水構造体(2)の形態例の構築方法を説明する。先ず、
図2に示す固定ビス1及び
図14に示す固定板5fを用意する。固定板5fは、固定ビス1の挿通孔6fを有している。この挿通孔6fの内周面には、固定ビス1のビス頭3が嵌合する座繰り部7fが形成されている。座繰り部7fの平面形状は、円形であり、座繰り部7fの形状は、ビス頭3の形状に対応する形状である。固定板5fには、食い込み部は設けられていない。
【0069】
次いで、
図15(A)に示すように、躯体21の表面に、断熱層22を載置する。次いで、
図15(B)に示すように、接着剤により固定板5fと断熱層22とを接着させる等の方法により、固定板5fの設置箇所の断熱層22に、固定板5fを接着させる。次いで、
図15(C)に示すように、固定板5fの挿通孔6fより、固定ビス1を断熱層22に捻じ込み、断熱層22を貫通させ、更に、躯体21に捻じ込む。次いで、
図8と同様に、断熱層22及び固定具11fを覆うように、防水シートを載置する。次いで、固定板5fの防水シート側の面12と防水シート23とを接合させることにより、防水構造体(2)を構築する。
【0070】
防水構造体(2)において、固定板と断熱層とを接着させる接着形態及び接着方法は、特に制限されず、固定板の横揺れを防止することができる接着形態及び接着方法が適宜選択される。
【0071】
本発明の第三の形態の防水構造体(以下、防水構造体(3)とも記載する。)は、固定板の断熱層側の面と断熱層との摩擦力を高めることにより、横揺れ防止措置が施されている防水構造体である。
【0072】
防水構造体(3)において、固定板の断熱層側の面と断熱層との摩擦力を高める方法としては、固定板の断熱層側の面に断熱層と固定板との摩擦力が高くなるような微小凹凸又は微小突起を設ける方法、固定板の断熱層側の面に断熱層と固定板との摩擦力を高める部材を固定する方法等が挙げられる。
【0073】
なお、防水構造体(3)において、固定板の断熱層側の面と断熱層との摩擦力を高めるとは、固定板の断熱層側の面と断熱層との摩擦力を高める横揺れ防止措置が施されていないこと以外は同じ組み合わせの固定板と断熱層における摩擦力に比べ、固定板の横揺れを防止することができる程度に、摩擦力が高くなっていることを指す。
【0074】
本発明の第四の形態の防水構造体(以下、防水構造体(4)とも記載する。)は、固定板の形状と対応する形状であり、固定板を嵌め込むための固定板嵌め込み孔を断熱層に設け、固定板嵌め込み孔に、固定板を嵌め込むことにより、横揺れ防止措置が施されている防水構造体である。
【0075】
防水構造体(4)の形態例の構築方法を説明する。先ず、
図2に示す固定ビス1及び
図14に示す固定板5fを用意する。
【0076】
次いで、
図16(A)に示すように、躯体21の表面に断熱層22を載置し、固定板5fの設置箇所の断熱層22に、固定板5fが嵌り込む固定板嵌め込み孔38を形成させる。次いで、
図16(B)に示すように、固定板5fの挿通孔6fに固定ビス1を挿通させた状態で、固定ビス1を断熱層22に捻じ込み、断熱層22を貫通させ、更に、躯体21に捻じ込む。このとき、固定板5fは、固定板嵌め込み孔38に嵌め込まれる。次いで、
図8と同様に、断熱層22及び固定具11fを覆うように、防水シートを載置する。次いで、固定板5fの防水シート側の面12と防水シート23とを接着させることにより、防水構造体(4)を構築する。
【0077】
防水構造体(4)において、固定板の形状に対応する形状とは、鋳物とその鋳物を鋳造するための鋳型のように固定板に対応する形状を指す。また、防水構造体(4)において、固定板嵌め込み孔に、固定板が嵌め込まれている状態とは、固定板の下側又は全体が、断熱層の内部に入り込んでいる状態を指す。
【0078】
本発明の防水構造体において、固定板の横揺れ防止措置を施す手段は、上記の形態に限定されるのではなく、固定板の横揺れを防止することができる手段であればよい。他には、例えば、先ず、
図2に示す固定ビス1、
図17に示す固定板5h、及び
図18に示す横揺れ防止ビス39を用意する。固定板5hは、固定ビス1の挿通孔6hを有している。この挿通孔6hの内周面には、固定ビス1のビス頭3が嵌合する座繰り部7hが形成されている。座繰り部7hの平面形状は、円形であり、座繰り部7hの形状は、ビス頭3の形状に対応する形状である。また、固定板5hは、横揺れ防止ビス39が挿通される横揺れ防止ビス挿通孔36を有している、横揺れ防止ビス挿通孔36の内周面には、横揺れ防止ビス39のビス頭が嵌合する横揺れ防止ビス用座繰り部37が形成されている。横揺れ防止ビス39は、平面形状が円形のビス頭と、側面にネジ山が形成されている軸と、断熱層に孔を空けることができる先端部と、を有している。
【0079】
そして、
図18に示すように、固定板5hの挿通孔6hより、固定ビス1を断熱層22に捻じ込み、断熱層22を貫通させ、更に、躯体21に捻じ込む。次いで、横揺れ防止ビス39を、横揺れ防止ビス挿通孔36に挿通させ、断熱層22に捻じ込むことにより、固定板の横揺れを防止する措置を施すことができる。
【0080】
本発明の固定具は、本発明の防水構造体に用いられる固定具であり、固定ビスと、該固定ビスが挿通される固定板と、からなり、該固定板の断熱層側の面に、断熱層に食い込む食い込み部が設けられていることを特徴とする固定具である。
【0081】
本発明の固定具に係る固定ビス、固定板は、本発明の防水構造体に係る固定ビス、固定板と同様である。