(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747337
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】支柱用の支線アンカー、及び支柱用の支線アンカーの敷設方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/80 20060101AFI20150625BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
E02D5/80 103
H02G7/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-83351(P2013-83351)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-139394(P2014-139394A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2013年3月25日
【審判番号】不服2013-25932(P2013-25932/J1)
【審判請求日】2013年12月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-289387(P2012-289387)
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597176647
【氏名又は名称】フルタ鉄塔建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古田 政幸
【合議体】
【審判長】
本郷 徹
【審判官】
門 良成
【審判官】
住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−132218(JP,A)
【文献】
特開昭57−140423(JP,A)
【文献】
実開昭48−59109(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D5/80,E02D27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネット等を吊り張りする支柱のうち端部の支柱に設けられた支線を連結する先端側を残して地中に埋設する支線棒と、該支線棒の後端側に取り付け支線棒の地中からの抜脱を阻止する抵抗板から構成された支柱用の支線アンカーにおいて、前記抵抗板は、中に穿孔する孔の径に対応した同径の略円形状で、側面に複数の突起部分を形成し、且つ抵抗板を傾斜した状態で孔に挿入すべく支線棒に螺子間で遊嵌状態とすべく取り付けられ、穿孔する径に対応して選択可能に構成され、しかも前記支線棒が埋設される孔の穿孔深さに応じて長尺状で複数本連結可能に構成されていることを特徴とする支線用の支線アンカー。
【請求項2】
ネット等を吊り張りする端部の支柱を補強すべく、地中に孔を穿孔し、該孔の底部分に抵抗板を設置した後、前記孔を埋設し抵抗板に後端側を取り付け、先端側を地中より突出した支線棒に、支柱に設けられた支線を連結する支柱用の支線アンカーの敷設方法において、前記孔を支柱の大きさに応じた深さで円筒形状に穿孔し、前記径に対応した径の相違する複数枚の抵抗板より選択した抵抗板を孔の径に対応して略円形状に形成し支線棒に対して抵抗板を螺子間で遊嵌状態とすることで傾斜して孔に挿入し、底部分で側面の突起部分を側壁に係止し孔の底部分に水平に位置させるとともに、前記支線棒を孔の深さに応じて長さ調整することを特徴とする支柱用の支線アンカーの敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防球用のネット、又は電線用に用いる端末の支柱の倒壊、傾斜を阻止し、安定的に保持する支柱用の支線アンカー、及び支柱用の支線アンカーの敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支柱を支える支線アンカーは先端側を残して支柱の近傍で地中に埋設し、前記支線アンカーの先端側に支柱に設けた支線を連結することで支柱を支える。
【0003】
上記従来の支線アンカーの基本構成は、地中の深い部分に埋設し抜け止め防止用として長尺矩形状に形成された抵抗板と、該抵抗板に他端側を直交状態で固定し、一端側を地中より突出し支線に連結した支線棒から構成されている。
【0004】
上記支線アンカーを敷設する方法は、穿孔した孔の底部分でガイドパイプを地中に打撃することで、ガイドパイプに連結した抵抗板を地中の所要位置に進入させた後、該抵抗板に後端側を係合した支線棒を抵抗板の表面に対し垂直方向に回転して埋設し、そして支線棒の先端側に支柱に設けられた支線を連結し、ガイドパイプを抜き取って支線アンカーの敷設を完了する。
【0005】
また、別の支線アンカーの敷設方法としてドリルで穿孔し、該孔を拡大した後、抵抗板を底部分に設置し土を埋設し支線棒の先端側に支線を連結することで支線アンカーの敷設を完了する。
【0006】
上記従来の支線アンカーは、打撃により抵抗板を地中の所要の位置に設置する必要があり、その作業が煩雑である。
【0007】
また、支線棒を抵抗板の表面に対し略直角に回転させるため、又は抵抗板の形状が矩形状で幅広であるために、幅の広い孔を穿孔する必要があり、重機で掘削しなければならない。
【0008】
また、広い孔を穿孔した場合は、支線アンカーを埋設した後の残土処理の問題があった。
【0009】
また、支線棒の長さが一定であるために、抵抗板の地中への設置は支柱にかかるネット等の張力の大きさに関わらず同一の深さで地中に設置するために、抵抗板を大きくして地耐力を向上する必要があった。
【0010】
そこで、本発明は、支線アンカーの構成が簡易で、且つ支線アンカーの敷設が容易で、地中よりの抜脱がない支柱用の支線アンカー、及び支柱用の支線アンカーの敷設方法を提供することを課題とする。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための支柱用の支線アンカーは、請求項1に記載のように、ネット等を吊り張りする支柱のうち端部の支柱に設けられた支線を連結し、先端側を残して地中に埋設する支線棒と、該支線棒の後端側に取り付け、支線棒の地中からの抜脱を阻止する抵抗板から構成された支柱用の支線アンカーにおいて、前記抵抗板は、地中に穿孔する孔の径に対応した同径の略円形状で、側面に複数の突起部分を形成し、且つ抵抗板を傾斜した状態で孔に挿入すべく支線棒に
螺子間で遊嵌状態
とすべく取り付けられ、穿孔する径に対応
して選択すべく構成され、しかも前記支線棒が埋設
される孔の穿孔深さに応じて長尺状で複数本連結可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するための支柱用の支線アンカーの敷設方法は、請求項2に記載のように、ネット等を吊り張りする端部の支柱を補強すべく、地中に孔を穿孔し、該孔の底部分に抵抗板を設置した後、前記孔を埋設し抵抗板に後端側を取り付け先端側を地中より突出した支線棒
に、支柱に設けられた支線を連結する支柱用の支線アンカーの敷設方法において、前記孔を支柱の大きさに応じて円筒形状に穿孔し、前記径に対応した径の相違する複数枚の抵抗板より選択した抵抗板を孔の径に対応して略円形状に形成し支線棒に対して
抵抗板を螺子間で遊嵌状態とすることで傾斜して孔に挿入し、底部分で側面の突起部分を側壁に係止し、孔の底部分に水平に位置させるとともに、前記支線棒を孔の深さに応じて長さ調整することを特徴とする。
【0013】
本発明の支柱用の支線アンカー、及び支柱用の支線アンカーの敷設方法の作用効果を説明する。
【0014】
先ず、請求項1に記載の支柱用の支線アンカーは、ネット等を吊り張りする支柱のうち張力の影響を受ける端部の支柱を支持すべく、該支柱に設けられた支線を連結する。
【0015】
前記支線の連結は、地中に穿孔した孔に埋設した抵抗板に後端側を取り付け、先端側を地中より突出した支線棒からなる支線アンカーに連結する。
【0016】
この際、抵抗板は地中に穿孔する孔の径に対応した径を有する略円形状に形成されているために、そのまま穿孔した孔に挿入して底部分に抵抗板を密着した状態で設置でき、孔を拡径したりする煩雑な作業を必要としない。
【0017】
このため、支柱の大きさ、支柱にかかる張力に応じて抵抗板の径を拡大することで、自在に対応することができる。
【0018】
また、地中に穿孔する孔の深さに応じて、抵抗板に後端側を取り付けた支線棒を複数本連結することで所望の長さ、先端側を突出して埋設する長さに自在に対応することができる。
【0019】
上記と同様に、支柱の大きさ、張力の強さに応じて深く穿孔する必要があるが、支線棒は、長尺状で複数本連結可能に構成されているために、孔の深さに自在に対応することができる。
【0020】
このように、本発明の支線アンカーは、抵抗板が穿孔する孔の径に対応した径の略円形状に形成に形成されているために、孔の底部分に設置が容易である。
【0021】
また、支線棒が長尺状で複数本連結可能に構成されているために、穿孔する孔の深さに自在に対応することが容易である。
【0022】
しかも、支線アンカーの構成が簡易であり、故障がなく頻繁なメンテナンスを必要としない。
【0023】
また、抵抗板の径、支線棒の連結で、地耐力を自在に向上することができる。
【0024】
次に、請求項2に記載の支柱用の支線アンカーの敷設方法は、先ずネット等を吊り張りした支柱のうち端部の支柱の近傍で、地中に作業ドリルで円柱型状に孔を穿孔する。
【0025】
この際、支線アンカーの抵抗板は、ドリルで穿孔する孔の径に対応した径を有する円形状に形成された抵抗板を取り付けることで、前記孔に沿って挿入して孔の底部分に設置することで、固定状態で抵抗板を設置できる。
【0026】
また、抵抗板の径は、支柱の大きさ、支柱にかかる張力に対応して自在に変更できるので、用いる作業ドリルを変更するだけで該ドリル径に対応した径の抵抗板を設置することができる。
【0027】
このため、抵抗板の設置作業が容易で作業工程の削減、作業時間の短縮を図ることができる。
【0028】
次に、前記抵抗板に後端側を取り付けた支線棒の長さを穿孔した孔の深さに対応すべく、複数本を連結して調整し、該支線棒の先端側を地中より突出するように埋設する。
【0029】
このため、支柱の大きさ、支柱にかかる張力に対応して孔の深さを自在に調整できる。
【0030】
その後、前記支線棒の先端側の連結部に端部の支柱に設けられた支線を連結して支柱用の支線アンカーの敷設を完了する。
【0031】
このように、本発明の支柱用の支線アンカーの敷設方法は、支線アンカーの埋設作業の工程が少なく、作業時間の短縮を図ることができる。
【0032】
また、作業が安全に行え、作業の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の支柱用の支線アンカー、及び支柱用の支線アンカーの敷設方法の一実施例について説明する。
【0034】
図1は、本発明の支柱用の支線アンカーの一実施例を示す概略説明側面図であり、
図2は、
図1の抵抗板を示す概略説明平面図であり、
図3は、支柱への支線アンカーの連結を示す概略説明側面図であり、
図4、
図5は、孔への支線アンカーの設置を示す概略説明側面図であり、
図6は、抵抗板の他実施例を示す概略説明平面図であり、
図7は、支柱用の支線アンカーの敷設方法を示すフローチャートである。
【0035】
本発明の支柱用の支線アンカー1は、支柱1の上部側に一端側を固定した支線11の他端側を連結する連結部2を先端側に形成する棒状の支線棒3と、該支線棒3の後端側に取り付けられ、地中に埋設する抵抗板4から構成されている。
【0036】
前記支線棒3は、長尺状に形成され、通常は1本を用いるが、支柱10の大きさ、支柱10の張力に応じて、穿孔する孔12の深さに応じて複数本を連結する。
【0037】
尚、支線棒3の連結は、両端側に連結部2の形成された連結用の支線棒3Aを用いて連結するが、予め連結した支線棒3を用いてのよい。
【0038】
前記抵抗板4は、円形状又は円盤型状に形成され、中央部分に穿孔された孔5に前記支線棒3の後端側を挿通し、上下間で螺子6を螺合することで支線棒3に取り付ける。
【0039】
尚、抵抗板4の支線棒3への取り付けは、螺子6間で遊嵌状態とすることで、抵抗板4を少し傾斜した状態で孔12にスムーズに挿入し、孔12の底部分で水平にして孔12に密着して孔12に固定して設置することができる。
【0040】
また、上記抵抗板4の径は、作業ドリルで穿孔する孔12の径と略同一に形成されているために、各作業ドリルに対応した径を有する抵抗板4を有する。
【0041】
上記のように、本発明の支柱用の支線アンカー1は構成され、次に、該支柱用の支線アンカー1を用いて防球用ネットに使用する支柱10を支持する場合について説明する。
【0042】
先ず、防球用ネットを吊り張り支柱の端末の支柱10の近傍を作業ドリルで円筒型の孔12を穿孔する。
【0043】
次に、前記孔12の底部分に向かって支線アンカー1の抵抗板4を挿入する。
【0044】
この際、抵抗板4の径は穿孔した孔12の径と略同一形状であるために、抵抗板4を支線棒3に対して傾斜状態で孔12に挿入し底部分で抵抗板4を支線棒3に対して水平にすることで、孔12の側面に強く密着した状態で設置することができる。
【0045】
このように、抵抗板4の設置作業の工程が従来に比し簡略化され、簡易に行なえる。
【0046】
その後、前記抵抗板4に後端側を取り付けた支線棒3の長さを、穿孔した孔12の深さに対応すべく調整する。該調整方法は、複数本の支線棒3を連結して孔12の深さに対応する。
【0047】
この状態で孔12を埋設し、支線棒3の先端側を突出し、連結部2を地中上に位置させる。
【0048】
そして、前記支線棒3の連結部2に支線11の他端側を連結し、支柱用の支線アンカー1の敷設を完了する。
【0049】
このように、本発明の支柱用の支線アンカー1、及び支柱用の支線アンカーの敷設方法は、構成が簡易であり、頻繁なメンテナンスを必要としない。
【0050】
また、抵抗板4の固定が容易であり、従来のような打撃作業を必要としなく、作業工程の削減、及び作業時間の短縮を行うことができる。
【0051】
さらに、支柱の大きさ、支柱の張力の強さに応じて自在に穿孔する孔の深さ、径を調整することができ、あらゆる支柱に対応することができる。
【0052】
尚、上記実施例では抵抗板4を略円形状に形成したが、本発明の抵抗板4の形状はこれに限定するものでなく、例えば、円形状の側面に複数の突起部分4Aを形成し孔12の側壁に強く係止すべく形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明の支柱用の支線アンカーを示す概略説明側面図
【
図3】支柱への支線アンカーの連結を示す概略説明側面図
【
図4】孔への支線アンカーの設置を示す概略説明側面図
【
図5】孔への支線アンカーの設置を示す概略説明側面図
【
図7】本発明の支柱用の支線アンカーの敷設方法を示すフローチャート
【符号の説明】
【0054】
1−支柱用の支線アンカー、3−支線棒、4−抵抗板、10−支柱