【実施例1】
【0011】
図1乃至
図9を参照して実施例1を説明する。
図7は、実施例1のエンコーダが形成された半導体基板の平面図であり、
図6は、
図7中の破線a−bの断面を示す図及び平面図で示されたスケールを表す。
図6に示すように、エンコーダ100は、半導体基板1に形成されている。半導体基板1には、発光部と、発光部から出射された光をスケールに投影し、その反射光の回折パターンを検出する検出部と、当該検出部の信号をエンコーダ信号として処理する信号処理回路とを具備している。発光部は、例えば、LED等の発光素子が形成され、第1の発光部22及び第2の発光部32を有している。検出部は、例えば、フォトダイオード(PD)が形成され、第1の検出部21及び第2の検出部31を有している。信号処理回路は、図示はしないが、半導体基板1に形成されて、エンコーダ信号としての位置信号や原点信号を形成する。
【0012】
エンコーダ信号は、移動方向を示すために互いに90度位相のずれた位置信号になるA相信号及びB相信号と、例えば、電源をオフ(OFF)後、再度電源をオン(ON)した時に原点位置を検出する原点信号になるZ相信号から形成される。また、前記スケールの内、前記Z相信号を形成するためのZ相スケールには光反射領域及び光透過領域の2領域からなるベタパターンを用い、原点信号は、前記Z相スケールから形成されたZ相出力信号(アナログ)をデジタル化して得られるパルス状信号をA相信号またはB相信号と同期させることにより得られる。
【0013】
第1の発光部22から放射された光は、Z相スケール41で反射され、反射光は、第1の検出部21のフォトダイオードに入力し、Z相出力信号(アナログ)を出力する。Z相出力信号(アナログ)は、信号処理回路内の2値化回路でパルス状のZ相出力信号に変換される。また、第2の発光部32から放射された光は、AB相スケール42で反射され、反射光は、第2の検出部31のフォトダイオードに入力し、A相又はB相出力信号(アナログ)を出力する。A相またはB相出力信号(アナログ)は、信号処理回路内の2値化回路で位置信号に変換される。発光部22、32のLEDから放射される光は、方向性が無いので、Z相スケール41あるいはAB相スケール42で反射あるいは透過させる前に、Z相スケール41あるいはAB相スケール42と発光部22、32との間に配置されたスケール(図示しない)を通して、方向性を持たせることができる。半導体基板1のZ相出力信号形成部2及びAB相出力信号形成部3は、半導体基板1に作り込まれるが、発光部22、32のLEDは、これらとは別のチップとしてこの半導体基板1に取り付けられる。
【0014】
図7は、
図6に示すエンコーダが形成された半導体基板1の平面図である。半導体基板1は、Z相出力信号形成部2及びAB相出力信号形成部3を有し、Z相出力信号形成部2は、第1の発光部22及び第1の検出部21を有し、AB相出力信号形成部3は、第2の発光部32及び第1の検出部31を有している。半導体基板1に離れてスケール4が配置されている。ここで用いるスケール4は、Z相スケール41及びAB相スケール42から構成されている(
図8)。ただし、Z相スケール及びAB相スケールをそれぞれ別体で形成することも可能である。
【0015】
次に、
図1乃至
図5及び
図9を参照してエンコーダを構成する信号処理回路を説明する。
信号処理回路5は、A相出力信号(a)(アナログ)及びB相出力信号(b)(アナログ)をそれぞれ位置信号(c)(デジタル)及び位置信号(d)(デジタル)に変換する二値化回路51、Z相出力信号(e)(アナログ)を原点検出用信号(f)(デジタル)に変換する二値化回路52、原点検出用信号(f)(デジタル)を位置信号(c)もしくは位置信号(d)に同期させて原点信号(g)を生成させる同期回路53を備えている。A相出力信号(a)又はB相出力信号(b)は、エンコーダ100が形成された半導体基板1の第2の発光部32から放射された光をAB相スケール42で反射し、第2の検出部31に入力して得られる。同様に、Z相出力信号(e)は、半導体基板1の第1の発光部22から放射された光をZ相スケール41で反射し、第1の検出部21に入力して得られる。
【0016】
図2に示すように、A相出力信号(a)、B相出力信号(b)及びZ相出力信号(e)は、アナログ信号であり、位置信号(c)及び(d)、原点検出用信号(f)及び原点信号(g)は、デジタル信号である。
図2は、信号処理回路5において、第1の検出器21及び第2の検出器31からの入力信号が処理されている状態を示すタイミングチャートであり、横軸は、時間を表し、対象物の一定速度の変位が生じているときの各信号の変化(波形)を示している。
図9によりZ相出力信号(デジタル)(原点検出用信号(f))の形成を説明する。原点信号を形成するZ相出力信号(アナログ)は、Z相スケールを用い、当該スケールからの反射光を受光して形成される。Z相スケールは、入射する光を透過する白い領域と、入射する光を反射して反射光が第1の検出器21に入射する光反射領域である黒い領域から構成され、移動する光照射領域に対応したZ相出力信号(アナログ)が形成される。その後、Z相出力信号(アナログ)を二値化回路52(
図1参照)により二値化して原点検出用信号(f)となるZ相出力信号(デジタル)が形成される。Z相出力信号(アナログ)は、Z相スケールの形状に対応して、例えば、0Vのレベルから10Vのレベルに変化する波形を有している。Z相出力(アナログ)信号から形成されたZ相出力(デジタル)信号は、閾値の異なる2つの比較器を介して生成され、例えば、3Vと7Vに閾値を有する比較器を介して得られた2つの信号からパルス幅が形成される。
【0017】
図4(a)は、
図1に記載された信号処理回路5における原点検出用信号(f)(Z相出力信号(デジタル))を形成するための二値化回路52を表している。二値化回路52は、第1の比較回路521、第2の比較回路522及びAND回路523を備えている。入力端には第1の検出器21により検出されたZ相出力信号(e)が入力される。出力端(AND回路523の出力端)からは原点検出用信号(f)が出力される。Z相出力信号(e)は、その波形図が
図4(d)に示される。原点検出用信号(f)のパルス幅は、Z相出力信号(e)のロウレベル(この実施例では0V)からハイレベル(この実施例では10V)の間の任意の2点の電圧から決められる。この実施例では、2点は、例えば、3Vと7Vとする。
Z相出力信号(e)は、第1の比較回路521の正(+)入力端及び第2の比較回路522の負(−)入力端に入力される。第1の比較回路521の負(−)入力端には第1の基準電圧(Ref1)(この実施例では3V)が入力され、第2の比較回路522の正(+)入力端には第2の基準電圧(Ref2)(この実施例では7V)が入力される。
【0018】
対象物の相対移動に伴ってZ相出力信号(e)は、ロウレベルの0Vからハイレベルの10Vに変化する。第1の比較回路521は、基準電圧(Ref1)が3Vであるから、Z相出力信号(e)が3Vまでロウレベル(0V)を出力し、3Vを越えるとハイレベルに変化して信号(h)を出力する。第2の比較回路522は、基準電圧(Ref2)が7Vであり、Z相出力信号(e)が負(−)入力端に入力されるから、Z相出力信号(e)が7Vまではハイレベルを出力し、7Vを越えるとロウレベルに変化して信号(i)を出力する。
次に、信号(h)は、論理回路(AND(論理積))523の第1の入力端に入力され、信号(i)は、第2の入力端に入力される。論理回路523は、信号(h)、(i)が入力されて原点検出用信号(f)を出力する(
図4(b)及び(c)参照)。
【0019】
次に、同期回路53により、原点信号(g)を形成する(
図3)。同期回路53は、論理回路(AND)である。A相出力信号(a)から形成された位置信号(c)は、論理回路(AND)53の第1の入力端に入力され、原点検出用信号(f)は、第2の入力端に入力されて、原点信号(g)が出力される。
また、同期回路53は、B相出力信号(b)から形成された位置信号(d)を原点検出用信号(f)に同期させて、原点信号(g)を出力する。
図5に示すように、光反射領域及び光透過領域の2領域からなるベタパターンを有するスケールを用いてアナログZ相出力信号からパルス状のデジタルZ相出力信号を得て、パルス状のZ相信号とA相信号又はB相信号のANDを取ってパルスを作成することにより、走査方向に関わらず、同一の位置に原点信号が得られる。このように走査方向の依存性が小さくA相信号もしくはB相信号に同期した原点検出を安定して行うことができるエンコーダが得られる。