(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747373
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】対震錠止機構
(51)【国際特許分類】
E05B 55/02 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
E05B55/02
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-76167(P2010-76167)
(22)【出願日】2010年3月29日
(65)【公開番号】特開2011-208401(P2011-208401A)
(43)【公開日】2011年10月20日
【審査請求日】2013年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078097
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 岳雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊樹
【審査官】
川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】
実用新案登録第2515197(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠箱内においてフロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内されると共に、フロント板から突出する方向の前方に付勢され、前端に斜面を形成したラッチヘッドを装着したラッチボルトと、このラッチボルトの近傍で、フロント板に近い錠箱内に配設され、錠箱の側板に平行な平面内において支軸の回りを回動自在に支承され、前端がラッチヘッドの段部と係合する方向に付勢された錠止レバーとを有するものにおいて、上記段部を構成するラッチボルトの背面に接合するように板ばね材よりなるストッパーを設け、このストッパーの錠止レバー前端に対向するストッパーの端部を錠箱内方に向かって捲れ上がるように成形すると共に、ラッチボルトがフロント板から突出した常態ではストッパーの端部が錠止レバー前端の移動軌跡から離間するようにし、また、ラッチボルトが少し引っ込んだ状態ではストッパーの端部が錠止レバーの前端に係合可能に臨むようにし、以って、地震などの加振力によって生じる、ラッチボルトと錠止レバーの相対位置関係の狂いに起因するアンロック状態、或いはラッチボルトの案内機構の塑性変形に起因する、屋内に人を閉じ込めてのラッチボルトのロック状態を防止するようにしたことを特徴とする耐震錠止機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気錠や所謂ホテル錠等の対震錠止機構に係り、特に、地震や機械振動等から加振力を受けても不具合が生じない対震錠止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、下記特許文献1を以て、ラッチヘッド4aの段部に先端を係合させるように付勢された錠止レバー8による錠止機構において、地震や振動によって万が一にも解錠してしまうことが無い錠止機構を提案した。
【0003】
この錠止機構は、錠箱内においてフロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内されると共に、フロント板から突出する方向の前方に付勢され、前端に斜面を形成したラッチヘッドを装着したラッチボルトと、このラッチボルトの近傍で、フロント板に近い錠箱内に配設され、錠箱の側板に平行な平面内において支軸の回りを回動自在に支承され、前端がラッチヘッドの段部と係合する方向に付勢された錠止レバーとを有するものにおいて、ラッチヘッドの段部及び錠止レバーの前端の何れか一方に水平な突条を、他方にこの突条と係合し得る凹条を夫々形成し、錠箱に加振力が印加されてラッチボルトが錠箱内に引込む方向に付勢されると共に、錠止レバーの前端がラッチヘッドの段部から離間する方向に付勢されたとき、上記突条及び凹条が相互に噛み合って錠止レバーの前端がラッチヘッドの段部から外れないようにしたことを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−077424
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成された特許文献1に記載の発明による耐震錠止機構は、勿論所期の機能を発揮し、加振時ラッチヘッドから錠止レバーが外れて解錠状態になってしまうことは皆無となった。
【0006】
しかしながら、扉の建付けの不具合、ストライクとラッチヘッドのずれ、或いはクローザーによりラッチヘッドがストライクに押圧される、等の原因によりラッチヘッドの案内が円滑でなくなり、上記突条と凹条が噛み合った儘でラッチヘッドが少し引っ込んだ状態になる場合がある(特許文献1の
図5参照)。
【0007】
このような場合には、錠止レバーを解錠方向に動かして解錠しようとしても、突条と凹条との噛み合いが解けないので、ハンドルやノブなどを操作してもラッチヘッドを引っ込ませることができず、人が室内側に居るときには室内に閉じ込められてしまい、室外側に居るときには締め出されてしまう、等未だ改良の余地がある。
【0008】
そこで、この発明は、加振時ラッチヘッドから錠止レバーが外れて解錠状態になってしまうこと、及び錠止レバーがラッチヘッドから外れなくなってしまうことがない耐震錠止機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
錠箱内においてフロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内されると共に、フロント板から突出する方向の前方に付勢され、前端に斜面を形成したラッチヘッドを装着したラッチボルトと、このラッチボルトの近傍で、フロント板に近い錠箱内に配設され、錠箱の側板に平行な平面内において支軸の回りを回動自在に支承され、前端がラッチヘッドの段部と係合する方向に付勢された錠止レバーとを有するものにおいて、上記段部を構成するラッチボルトの背面に接合するように板ばね材よりなるストッパーを設け、このストッパーの錠止レバー前端に対向するストッパーの端部を錠箱内方に向かって捲れ上がるように成形すると共に、ラッチボルトがフロント板から突出した常態ではストッパーの端部が錠止レバー前端の移動軌跡から離間するようにし、また、ラッチボルトが少し引っ込んだ状態ではストッパーの端部が錠止レバーの前端に係合可能に臨むようにし、
以って、地震などの加振力によって生じる、ラッチボルトと錠止レバーの相対位置関係の狂いに起因するアンロック状態、或いはラッチボルトの案内機構の塑性変形に起因する、屋内に人を閉じ込めてのラッチボルトのロック状態を防止するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成された請求項1に記載の発明による対震錠止機構は、地震や振動によって錠箱に加振力が加わると、その加振力に起因して錠止レバー及びラッチボルトの双方の重心に加速度が加わる。
【0011】
この加速度を示すベクトルが例えば上下方向、或いは水平方向の何れか一方である場合には、錠止レバーが揺動したとしてもラッチボルトは動かず、この場合加振力が消失した場合には錠止レバーはラッチヘッドの段部と係合するに致り、この場合錠止機構のロック状態が解かれることはない。
【0012】
或いは、加速度が水平方向に作用し、ラッチボルトが錠箱内に引込む方向に付勢された場合には、錠止レバーの前端とラッチヘッドの段部との係合は外れないから、この場合にも錠止機構のロック状態が解かれることはない。
【0013】
一方、加振力が2次元的に作用し、ラッチボルトを錠箱内に引込ませる方向に付勢すると共に、錠止レバーの前端がラッチヘッドの移動軌跡外に退避する方向に付勢された場合には、前記したように錠止機構のロック状態が解かれ、アンロックされる可能性がある。
【0014】
この場合、例えば地震に起因する扉の歪により錠箱のラッチボルト案内機構に塑性変形が生じ、ラッチボルトが元の位置に戻れないと、錠止機構のアンロック状態が固定されてしまう可能性がある。
【0015】
しかしながら、本発明による対震錠止機構においては、このような場合ラッチボルトの後方への移動により、ストッパーの端部が錠止レバーの前端にこれを抑圧するように係合し、この係合によって錠止レバーがラッチヘッドの段部から外れて錠止機構がアンロックされてしまうことがない。
【0016】
他方、例えば地震に起因する扉の歪により錠箱のラッチボルト案内機構に塑性変形が生じ、ラッチボルトが元の位置に戻れない上、錠止レバーもストッパーに押圧されている場合には、前記特許文献1に記載された発明では突条と凹条の噛み合いによって解錠できなくなり、家人が閉じ込められ或いは締め出される。
【0017】
しかしながら、本願発明においては錠止レバーを解錠方向に強制的に回動させることにより、ストッパーの弾性変形によって錠止レバーとストッパーとの係合が解けるので、上記した不都合を解消することができる、という所期の効果を奏する。
【0018】
なお、ラッチボルトの案内機構に塑性変形が生ぜずにラッチボトが自由であり、その付勢力によりラッチボルトがフロント板から突出した常態では、ストッパーの端部が錠止レバー前端の移動軌跡から離間しているので、通常の施解錠操作には何らの影響を及ぼさない、等種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ホテル錠の錠箱の拡大一部断面側面図で、加振力が加わらない常態を示す。
【
図5】
図1と同様の側面図で、ラッチボルトが少し錠箱内方に移動した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前端に斜面を形成したラッチヘッドを装着したラッチボルトと、前端がラッチヘッドの段部と係合する方向に付勢された錠止レバーとを有するものにおいて、上記段部を構成するラッチヘッドの背面に接合するように板ばね材よりなるストッパーを設け、このストッパーの錠止レバー前端に対向するストッパーの端部を錠箱内方に向かって捲れ上がるように成形すると共に、ラッチボルトがフロント板から突出した常態ではストッパーの端部が錠止レバー前端の移動軌跡から離間するようにし、また、ラッチボルトが少し引っ込んだ状態ではストッパーの端部が錠止レバーの前端に係合可能に臨むようにする。
【実施例1】
【0021】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1は所謂ホテル錠の錠箱の蓋板を取り外して示す拡大側面図で、同図において符号1はデッドボルトを兼ねるラッチボルトを示す。
【0022】
上記ラッチボルト1は、錠箱2内においてフロント板3に垂直な前後方向(図において左右方向)に移動可能に案内され、前端には斜面4aを形成したラッチヘッド4が装着されている。
【0023】
上記ラッチボルト1は、圧縮コイルばねとしてのラッチボルトばね5の弾力により、前方、即ち図において左方に付勢されている。
【0024】
なお、図示のラッチボルトの施錠時における突出位置は、ラッチボード6の一部と、フロント板3の付番しないラッチヘッドが出入りする開口との係合により定まる。
【0025】
一方、
図1に示すように、ラッチボルト1の下方における錠箱側板2aには支軸7が植設されており、この支軸7に錠止レバー8が回動可能に支承されている。
【0026】
この錠止レバー8は、支軸7に巻装された、図面を明瞭にするため付番しない捩りコイルばねにより、
図1で時計方向に、換言すればラッチヘッド4の段部に係合する方向に付勢されている。
【0027】
なお、図示の実施例における錠止レバー8は、
図2に示すように、板材を横断面が下に開くコ字形に折り曲げた枠体である。
【0028】
一方、
図1に示すように、上記段部を構成するラッチヘッド4の背面に接合するように、板ばね材よりなるストッパー9が装着されている。
【0029】
図示の実施例におけるストッパー9は、
図3及び
図4に示すように、全体の形状が略矩形の板ばねで、例えば、矩形の本体部のほぼ中央の円形の開口にラッチボルト6を挿通させるようにして、ラッチボルトに形成されたフランジ11とラッチヘッド4との間に挟み込んで装着する。
【0030】
そして、このストッパー9の錠止レバー前端に対向するストッパーの端部(
図3及び
図4で下端突部)は、錠箱内方に向かって捲れ上がるように成形されている。
【0031】
また、ラッチボルト1がフロント板3から突出した常態では、ストッパー9の端部が錠止レバー8前端の移動軌跡から離間するようにストッパー9の形状、寸法が設定されている。
【0032】
一方、
図5に示すようにラッチボルト6が錠箱内方に少し引っ込んだ状態では、ストッパー9の端部が錠止レバーの前端に係合可能に臨むように、換言すれば、左右方向において両者が重合するようにすべきことは前記した通りである。
【符号の説明】
【0033】
1 ラッチボルト
2 錠箱
3 フロント板
4 ラッチヘッド
5 ラッチボルトばね
6 ラッチボード
7 支軸
8 錠止レバー
9 ストッパー
11 フランジ