特許第5747416号(P5747416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 飯田電機工業株式会社の特許一覧 ▶ ザマ・ジャパン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5747416-手持ち式エンジン作業機の燃料調整方法 図000002
  • 特許5747416-手持ち式エンジン作業機の燃料調整方法 図000003
  • 特許5747416-手持ち式エンジン作業機の燃料調整方法 図000004
  • 特許5747416-手持ち式エンジン作業機の燃料調整方法 図000005
  • 特許5747416-手持ち式エンジン作業機の燃料調整方法 図000006
  • 特許5747416-手持ち式エンジン作業機の燃料調整方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747416
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】手持ち式エンジン作業機の燃料調整方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 7/20 20060101AFI20150625BHJP
   F02B 63/02 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   F02M7/20 D
   F02B63/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-76440(P2012-76440)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-204552(P2013-204552A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023054
【氏名又は名称】飯田電機工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】307043902
【氏名又は名称】ザマ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】山下 良平
(72)【発明者】
【氏名】山崎 明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 保
(72)【発明者】
【氏名】野中 匠
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−010768(JP,A)
【文献】 特開2011−12685(JP,A)
【文献】 特開2003−343358(JP,A)
【文献】 特開平08−284761(JP,A)
【文献】 特開昭49−75933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 61/00 − 79/00
F02M 7/00 − 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式エンジン作業機に取り付けられるエンジン(7)と気化器(1)の組合わせ物において、前記気化器(1)の燃料通路には、前記エンジン(7)の作業回転速度範囲内で燃料流量を制御するソレノイドバルブ(3)を設け、前記エンジン(7)には、該エンジン(7)の回転速度検知と、前記ソレノイドバルブ(3)の駆動を行う制御装置(8)を設け、前記エンジン(7)の始動後、実作業を行う前に、環境によってばらついた燃料流量をソレノイドバルブ(3)の開度を変えることにより調整する燃料流量調整工程を行ない、該燃料流量調整工程においては、一定負荷、一定スロットル開度で運転した際に、現在の回転速度である検知回転速度が、前記作業回転速度範囲内の燃料流量調整用に設定された燃料流量調整回転速度範囲内に入ったときに、その状態において期待する空燃比となる回転速度として予め定められている目標回転速度となるように前記検知回転速度をフィードバックしてソレノイドバルブ(3)の開度を調整し、一定回転回数の間、または一定時間の間、前記検知回転速度が予め燃料流量調整回転速度範囲内に定められている燃料流量調整完了速度範囲にとどまったときに、前記ソレノイドバルブ(3)の開度を調整完了開度として決定し、該燃料流量調整工程を完了したうえで、得られた調整完了開度で実作業を行うことを特徴とした手持式エンジン作業機の燃料調整方法。
【請求項2】
実作業において検知回転速度が目標回転速度からずれている場合、ソレノイドバルブ(3)の開度を燃料流量調整工程で得られた調整完了開度に、該調整完了開度と検知回転速度からきまる補正開度を加えた開度とする請求項1に記載の手持式エンジン作業機の燃料調整方法。
【請求項3】
エンジン(7)の温度を検知する温度センサ(10)を設け、該温度センサ(10)の検知温度値から、前記エンジン(7)が調整により安定して動作する暖気状態であると判断して燃料流量調整工程を完了する請求項1または2に記載の手持ち式エンジン作業機の燃料調整方法。
【請求項4】
ランプ等の表示部(11)で、燃料流量調整工程の調整状態を表示する請求項1〜3のいずれか1項に記載の手持ち式エンジン作業機の燃料調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝刈り機やチェーンソウ等の手持ち式エンジン作業機の運転制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、市場で使用されている手持ち式エンジン作業機は、エンジンを製造する工場で、気化器やエンジンのばらつきを補正するために、個々の気化器の調整を行なって、出荷状態で最適な運転ができるようにしている。
【0003】
それにも関らず、使用環境における気温、気圧、燃料の種類、エンジンのなれやエアクリーナの目詰まり等の影響によって、エンジン内での燃料の最適な燃焼状態が変わってしまい、最適な運転状態を維持できなくなり、燃費の低下、エンジンの出力の低下、排気ガスの増加と言った不都合が生じる。
【0004】
これを解消する手段として、作業の都度、運転者は気化器の針弁を調整して燃料を最適な燃焼状態に調整すればよいのであるが、この針弁の正確な調整は、高いレベルの熟練と専門的な設備とを要する。すなわち、通常のエンジンでは、始動直後に、作業環境で変わってしまった空燃比を補正するために、回転速度を計測しながら気化器の針弁を調整する。しかし、屋外などの作業現場では、精密な回転測定器を準備することは困難で、さらにはエンジンの振動によって、針弁を正確に回転させて、精密に燃料調整を行なうことは難しい。
【0005】
このような使用環境の変動に適切に対応する、気化器の調整を自動で行うための従来技術として、例えば特許文献1(特開2011−012685号公報)に示された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−012685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、エンジン回転速度を安定させるため比較的長い時間が必要になり、実際の作業における急激な負荷の変動によって回転速度が変動した場合などの制御には向かない、という問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、エンジン始動後の実作業を行う前に、ソレノイドバルブの開度を自動的に調整して、適正な空燃比とすることを技術的課題とし、もって急激な負荷の変動にも時間遅れなく対応して、良好で安定した運転を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の手持ち式エンジン作業機の燃料調整方法おける主たる構成は、
手持ち式エンジン作業機に取り付けられるエンジンと気化器の組合わせ物において、気化器の燃料通路には、エンジンの作業回転速度範囲内で燃料流量を制御するソレノイドバルブを設け、エンジンには、このエンジンの回転速度検知と、ソレノイドバルブの駆動を行う制御装置を設け、エンジンの始動後、実作業を行う前に、環境によってばらついた燃料流量をソレノイドバルブの開度を変えることにより調整する燃料流量調整工程を行うこと、
この燃料流量調整工程においては、一定負荷、一定スロットル開度で運転した際に、現在の回転速度である検知回転速度が、作業回転速度範囲内の燃料流量調整用に設定された燃料流量調整回転速度範囲内に入ったときに、その状態において期待する空燃比となる回転速度として予め定められている目標回転速度となるように、検知回転速度をフィードバックしてソレノイドバルブの開度を調整し、一定回転回数の間、または一定時間の間、検知回転速度が予め燃料流量調整回転速度範囲内に定められている燃料流量調整完了速度範囲にとどまったときに、ソレノイドバルブの開度を調整完了開度として決定すること、
この燃料流量調整工程を完了させたうえで、得られた調整完了開度で実作業を行うこと、
にある。
【0010】
エンジンの制御装置は、永久磁石を内蔵したフライホイールが回転することで充電コイルに発生する電圧を用いて回転速度の検知を行い、また発生する電力を内蔵したマイコンの駆動エネルギーおよびソレノイドバルブを駆動するエネルギーとして用いる。
【0011】
作業者はエンジンを始動させ、暖気運転を行い、環境に合わせて気化器の燃料流量を調整するための燃料流量調整工程を行う。燃料流量の調整はエンジンの特性により、再現性が高い動作条件となる一定の負荷(たとえば無負荷)、一定のスロットル開度(たとえば全開)のもと、作業回転速度範囲内に設定された目標回転速度を含む燃料流量調整回転速度範囲で行われる。このとき回転しているエンジンの検知回転速度が、予め定められている目標回転速度と等しくなるように、ソレノイドバルブの開度を制御装置が自動で調整する。
【0012】
このソレノイドバルブの燃料流量調整工程により、エンジンの回転速度が制御されるのであるが、エンジン始動直後のソレノイドバルブはエンジンの前回の動作時における調整完了開度である待機開度となっており、燃料流量は環境や使用する燃料によって変わる。燃料流量調整工程によって待機開度から調整された適正な開度を調整完了開度とする。
【0013】
この燃料流量調整工程においては、運転しているエンジンの検知回転速度が、目標回転速度を含んだ一定の幅をもつ速度範囲である燃料流量調整完了速度範囲に安定して運転していると判断できる一定時間の間、あるいは一定回転回数の間、居続けたとき、ソレノイドバルブに対する調整を完了するものとしている。
【0014】
本発明の他の構成は、上記した主たる構成に、実作業において検知回転速度が目標回転速度からずれている場合、ソレノイドバルブの開度を燃料流量調整工程で得られた調整完了開度に、この調整完了開度と検知回転速度から決まる補正開度を加えた開度とすること、を加えたものである。
【0015】
燃料流量調整工程が完了し、調整完了開度が決定され、実作業に入ると、様々な負荷が加わることにより、エンジンの回転速度は、クラッチがつながり作業機についた工具が駆動する作業回転速度範囲内で大きく変動する場合がある。その時に、ソレノイドバルブの調整完了開度のみでは、作業回転速度範囲全域で良好な空燃比とすることができない場合が生じる。そのため、燃料流量調整工程で得た調整完了開度と、変動した回転速度(そのときの検知回転速度)から決まる補正開度を得、調整完了開度に補正開度を加えた値を、そのときのソレノイドバルブの開度とすることにより、変動した検知回転速度に対応して適正な空燃比を得る。
【0016】
また、本発明の他の構成は、上記した主たる構成に、エンジンの温度を検知する温度センサを設け、この温度センサの検知温度値から、エンジンが調整により安定して動作する暖気状態であると判断して、燃料流量調整工程を完了する、ことを加えたものである。
【0017】
温度センサの検知温度値から、エンジンが暖気状態であると判断して調整を完了するものにあっては、エンジンの暖気状態を確実に判断することができ、これによりエンジンの安定運転状態を正確に判断することができる。
【0018】
また、本発明の他の構成は、上記した主たる構成に、ランプ等の表示部で、燃料調整工程の調整状態を表示する、ことを加えたものである。
【0019】
ランプ等の表示部で燃料調整工程の調整状態を表示するものにあっては、使用する手持ち式エンジン作業機のソレノイドバルブの開度の調整状態を一目で判断することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる方法の構成を有するものにあっては、ソレノイドバルブの開度調整により、作業回転速度範囲で燃焼状態の良い運転を得ることができることになるので、燃料流量を最適な値に合わせることが容易に達成することができ、燃料消費効率の良い運転を得ることができる。
【0021】
検知回転速度が燃料流量調整完了速度範囲に、一定時間の間、あるいは一定回転回数の間、居続けることを、燃料流量調整工程の完了条件としているので、検知回転速度での運転が安定的に得られることになり、これによりエンジンは好ましい空燃比で運転されることになる。
【0022】
実作業において検知回転速度が目標回転速度からずれている場合、ソレノイドバルブの開度を燃料流量調整工程で得られた調整完了開度に、この調整完了開度と検知回転速度から決まる補正開度を加えた開度とすることを加えたものにあっては、作業回転速度範囲内の各回転速度に対して、適正なソレノイドバルブの開度を設定し、これにより作業回転速度範囲の全域において、適正な空燃比での運転を得ることができるので、エンジンの良好で安定した運転を得ることができる。
【0023】
温度センサの検知温度値から、エンジンが暖気状態であると判断して調整を完了するものにあっては、エンジンの安定運転状態を正確に判断することができるので、燃料流量調整工程を正確にかつより安全に終了させることができる。
【0024】
ランプ等の表示部で調整状態を表示するものにあっては、使用する手持ち式エンジン作業機のソレノイドバルブの開度調整を行う燃料流量調整工程の状態を、一目で判断することができるので、手持ち式エンジン作業機の安全な取り扱いを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明を実施する組合わせ物の、簡略説明図である。
図2】本発明の基本的作動を表すフロー図である。
図3】本発明の実施形態例の制御アルゴリズムを示す、フロー図である。
図4】調整完了開度と回転速度から補正開度が決まる3次元グラフである。
図5】燃料流量と回転速度の関係例の比較を示すグラフである。
図6】燃料流量調整完了速度範囲における動作説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
図1において、エンジン7は、フライホイール9に内蔵された永久磁石と充電コイル12によって、フラグの点火、制御装置8内のマイコン制御の他に、エンジン7の回転速度の検知、およびソレノイドバルブ3の駆動の電力を発生させる。なお、制御装置8内のマイコンはエンジン7が回転している間、1回転あたりの時間を検出し、回転速度データを記憶している。
【0027】
気化器1は、計量室とメインノズル2の間に接続されて、制御装置8からのバルブ駆動信号tに応じて燃料を増減して、回転速度の変更を行なうソレノイドバルブ3が設けられており、このソレノイドバルブ3は、燃料供給路6を介して燃料タンク5に接続されている。なお、4はスロットルバルブであり、この気化器1で生成された空気と燃料の混合気である吸気kは、エンジン7のシリンダ内に供給される。
【0028】
マイコン(図示省)を内蔵する制御装置8には、エンジン7の温度を検出する温度センサ10と、本発明による調整の状態を表示するLEDを使用したランプ等を利用した表示部11とが取り付けられている。この図1に示した実施例にあっては、温度センサ10により、適正な暖気状態で精度良く、かつ効率良く作業回転速度範囲における回転速度(平均回転速度)を検出することができ、また表示部11による表示により、例えば本発明による「調整」の完了を明確に、かつ正確に認識することができ、これにより安全で間違いのない取り扱いを得ることができる。
【0029】
図2は本発明の基本的な制御フローを示した図で、「エンジン始動」後、暖機運転を行った後、「実作業」を行う前に環境によってばらついた燃料流量を、ソレノイドバルブ3により調整する「燃料流量調整工程」を行い、燃料調整が完了した後に「実作業」に移ることを示しており、またエンジン7が停止したのち再び始動した際は、同様の燃料調整を行うことを示している。
【0030】
図3の左側は、制御装置8のマイコンの開度調整工程における1回転毎の制御アルゴリズムを示すもので、エンジン7の始動後にスロットルバルブ4を開いて燃料流量調整工程に至ったとき、動作s1で燃料流量調整工程が完了していないことを確認し、動作s2で現在の回転速度を検知しそれを検知回転速度とし、動作s3で作業回転速度範囲内に設定された、調整を行うための回転速度範囲である燃料流量調整回転速度範囲にあることを確認し、動作s4およびs6にて検知回転速度と目標回転速度とを比較し、動作s5およびs7でソレノイドバルブ3の開度(以下、単にバルブ開度と記す)を調整し、動作S8で検知回転速度が一定時間の間、もしくは一定回転回数以上の間、燃料流量調整完了速度範囲にとどまっているかを判断する。その時にまだ一定以上の間とどまっていない場合は、この回転での処理を終了し、次の回転も同様にフローに従って処理を行う。一定以上の間、検出回転速度が燃料流量調整完了速度範囲にある場合は、動作s9にてその時のバルブ開度を調整完了開度として決定する。動作s10で調整完了開度を次回始動時のバルブ開度である待機開度としてマイコンに保存する。
【0031】
すなわち、エンジン7がスロットルバルブ4を開いた燃料流量調整回転速度範囲で、無負荷を含め一定の負荷状態において、その負荷で燃焼状態が良い回転速度である目標回転速度になるように、ソレノイドバルブ3を制御し、検知回転速度をフィードバックし燃料流量を制御する。検知回転速度が目標回転速度よりも大きい場合には、検知回転速度が目標回転速度になるように、バルブ開度を大きくして燃料消費量を増やす。検知回転速度が目標回転速度よりも小さい場合には、バルブ開度を小さくして燃料消費量を減らし、目標回転速度まで上げる。このように、一定の負荷状態での燃料消費量は回転速度データによってフィードバック制御される。このフィードバック制御は、検知回転速度が所望により定めた一定の時間の間、若しくは一定の回転回数の間、回転速度が安定したと判断できる予め定めた回転速度の範囲である燃料流量調整完了速度範囲内に居続けたときに、フィードバック制御による調整を完了させる。
【0032】
エンジン7の始動直後の上記燃料流量調整のためのフィードバック制御が完了した後、燃料流量調整工程は完了し開度調整工程(図3の左側参照)が終了する。エンジン7の停止までの間、燃料流量調整工程完了時のバルブ開度である調整完了開度はマイコンによって保持されるが、実作業状態の作業回転速度範囲で負荷の変化により回転速度が変化した場合には、この変化に対応してバルブ開度を補正変化させることが可能である。すなわち、作業回転速度範囲の各回転速度においては、動作s9の調整によって決定されて保持されているバルブ開度では回転速度が変わってしまうと混合気は過濃になってしまったり、希薄になってしまったりと良好な運転ができなくなる。
【0033】
各回転速度においても最適な燃焼となるように、決定されたバルブ開度にさらに補正する開度調整補正工程(図3の右側参照)を行うことができる。図4は、開度調整補正工程を行うことを可能とする調整完了開度と回転速度と補正開度の関係データの一例を示したもので、この図4に示したグラフのデータは、燃料流量の調整を無負荷(13000rpm)で適切な燃料流量となる値に調整した場合である。そのほかの回転速度では、バルブ開度に補正を行なって最適な燃料流量となるようにしている。それゆえ、開度調整補正工程の動作s12において、動作s9の調整によって決まったバルブ開度と回転速度から、その状態での適切なバルブ開度の補正開度が決まることになる。
【0034】
この図4に示されたグラフデータから明らかなように、目標回転速度(13000rpm)では、補正開度は「0」であり「バルブ開度=調整完了開度」となっている。負荷などの変動により検知回転速度が目標回転速度から変化、例えば11000rpmに変化すると、調整完了開度が50のときに補正開度は「−7」となるので、バルブ開度は43となる。このように、図4に示したデータに従って、動作s9で得られた調整完了開度を負荷変動時の動作s12に与えてバルブ開度を決定する。すなわち負荷の変化に対応してバルブ開度を補正する場合においては、検知回転速度を動作s11で検知し、この検知回転速度信号に従って動作s12ではバルブ開度を設定しているのである。これにより、作業回転速度範囲の全範囲で最適な燃料流量で運転することができ、出力の最大化、排ガスの低減を達成できる。
【0035】
図5は、作業回転速度範囲における回転速度と燃料流量の関係を、本発明を適用していない「従来の気化器:菱形印」、本発明を適用した「調整完了開度:四角印」、本発明を適用した「調整完了開度に補正開度を加えたとき:丸印」の3つの状態に分けて示したもので、燃料流量調整工程を行なうことで、「調整時負荷」および「負荷2」での燃料状態を最適な状態にすることができることを示しており、従来の気化器の場合は、これに比べて燃料流量が大きくなってしまっている。「バルブ開度=調整完了開度+補正開度」の場合は、負荷が変わっても最適な燃料流量で運転することができることを示している。
【0036】
図6は、燃料流量調整工程における回転速度と燃料流量の関係を示すもので、一定負荷で一定スロットル開度の時の燃料流量と回転速度の関係を表している。燃料流量調整工程が行われる前のソレノイドバルブの初期開度における回転速度と燃料流量は、環境によって濃い側または薄い側にずれており、燃料流量調整工程において調整を行う速度範囲として、作業回転速度範囲内に定められている燃料流量調整回転速度範囲に至ったときに、この運転状態において期待する燃焼状態で運転したときの回転速度である目標回転速度になるようにバルブ開度を調整し、回転速度が安定して運転していると判断できる燃料流量調整完了速度範囲に一定時間の間、もしくは一定回転回数以上の間とどまっていたら、その時のバルブ開度を調整完了開度として決定し、燃料流量調整工程を完了する。
【0037】
実際の簡単な動作例を、以下に説明する。エンジン7の始動後にスロットルバルブ4を全開にして無負荷状態において運転を行い、回転速度が燃料流量調整回転速度範囲の下限である11000rpm以上になったら、検知回転速度のフィードバック制御を行なう。目標回転速度を13000rpmとして、検知回転速度がそれ以下の時はバルブ開度を小さくし、検知回転速度がそれ以上の時はバルブ開度を大きくして検知回転速度を目標回転速度一定に保つ。燃料流量調整工程において温度センサ10の値が50℃(エンジン7が十分に暖気されている値)の時に回転回数5000回の間、検知回転速度が12500rpmから13500rpmの範囲に設定された燃料流量調整完了速度範囲に入っていたら、バルブ開度を調整完了開度として決定し、燃料流量調整工程を完了する。負荷の変動などにより回転速度が変化する場合には、決定した調整完了開度の値で、回転速度と、図4に示した特性カーブから、作業回転速度範囲内の各回転速度におけるバルブ開度の補正開度を決定する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明の手持ち式エンジン作業機の燃料調整方法は,作業回転速度範囲において、ソレノイドバルブの開度を直接調整するので、最適な燃料流量を確実に安定して得ることができるものであり、高い作業効率が強く求められる手持ち式エンジン作業機の利用分野で幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0039】
1 ;気化器
2 ;メインノズル
3 ;ソレノイドバルブ
4 ;スロットルバルブ
5 ;燃料タンク
6 ;燃料供給路
7 ;エンジン
8 ;制御装置
9 ;フライホイール
10;温度センサ
11;表示部
12;充電コイル
k ;吸気
t ;バルブ駆動信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6