【文献】
L. QIU et al.,Dispersing Carbon Nanotubes with Graphene Oxide in Water and Synergistic Effects between Graphene Derivatives,Chemistry A European Journal,2010年 9月17日,Vol.16, No.35,p.10653-10658
【文献】
S. YANG et al.,Constructing a hierarchical graphene-carbon nanotube architecture for enhancing exposure of graphene and electrochemical activity of Pt nanoclusters,Electrochemistry Communications,2010年 9月,Vol.12, No.9,p.1206-1209
【文献】
Z. FAN et al.,A Three-Dimensional Carbon Nanotube/Graphene Sandwich and Its Application as Electrode in Supercapacitors,Advanced Materials,2010年 9月 1日,Vol.22, No.33,p.3723-3728
【文献】
J. YAN et al.,Preparation of graphene nanosheet/carbon nanotube/polyaniline composite as electrode material for supercapacitors,Journal of Power Sources,2010年 5月 1日,Vol.195, No.9,p.3041-3045
【文献】
D. YU et al.,Self-Assembled Graphene/Carbon Nanotube Hybrid Films for Supercapacitors,The Journal of Physical Chemistry Letters,2010年 1月21日,Vol.1, No.2,p.467-470
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
化学的に還元されたグラフェンシートを均一に分散させた水溶液にカーボンナノチューブを添加して、前記グラフェンシートと前記カーボンナノチューブとを含む混合溶液を作製する工程と、前記混合溶液を濾過する工程と、を有することを特徴とするグラフェンシート集積体フィルムの製造方法。
ヒドラジン水和物を用いて、グラファイト酸化物を還元して、前記化学的に還元されたグラフェンシートを生成することを特徴とする請求項4に記載のグラフェンシート集積体フィルムの製造方法。
【背景技術】
【0002】
電解液イオンの吸脱着を利用する電気二重層キャパシターは、充放電が急速で、出力密度が大きいので、バックアップ電源として、重要な役割を担ってきたが、キャパシターに蓄えられるエネルギー密度が低いため、今後、ニーズが一層高まる電気自動車等の高エネルギー密度蓄電デバイスへの応用は困難と考えられている。そこで、エネルギー密度等を高めるための電極材料開発がなされてきた。エネルギー密度を向上させるには、電極の比表面積を増大化させる必要があり、そのための試みがなされてきた。
【0003】
電気二重層キャパシター電極の比表面積増大化において、効果的であったのは、カーボン微粒子、特に表面に多量の微細孔をもつ活性炭の導入である。活性炭の微細孔内に電解液イオンが吸着し、エネルギー密度等を増大させることができた。しかし、活性炭は電気抵抗が大きく、出力密度を低下させるなど、その効果には限界があった。
【0004】
そこで、最近は、カーボンナノチューブを濾過してシート状にしたものや、基板にカーボンナノチューブを林状に成長させるスーパーグロース法と称される合成技術を用いて製造される単層カーボンナノチューブも研究されている。スーパーグロース法で製造される単層カーボンナノチューブは、高いエネルギー密度を示している(非特許文献2)。しかし、この方法を用いて製造される単層カーボンナノチューブのキャパシタ−電極は、エネルギー密度の一層の向上は困難であり、コストや生産性に問題があり、耐久性もよくない。
【0005】
また、カーボンナノチューブを高分子のバインダーによりシート化した電極はエネルギー密度6−7Wh/kgであり(非特許文献1)、前記のカーボンナノチューブキャパシターよりかなり低い。
【0006】
エネルギー密度を一層増大させるため、レドックス反応(酸化還元反応)による効果を加えるため、金属酸化物や金属窒化物を電極にコーティングする方法も試みられている(特許文献1)。しかし、レドックス反応により、エネルギー密度は向上するが、出力密度が減少し、さらには、コストや性能安定性などの問題が生じる。
【0007】
以上説明したように、活性炭素やカーボンナノチューブでは、キャパシタ−電極性能向上に限界があり、コスト、性能の安定性などについてもさらなる検討が必要であった。
【0008】
そのため、薄いナノシートで、導電性、強度、表面のイオン吸着などキャパシター電極として、極めて優れている最新のナノ素材であるグラフェンが注目されるようになった。グラフェン(graphene:以下、グラフェンシートいう。)とは、1原子の厚さのsp
2結合炭素原子のシートであり、炭素原子が蜂の巣のような六角形格子構造をとっている。グラフェンは比表面積が2630m
2/gと大きく、導電性も10
6S/cmとよく、キャパシター電極材料として極めて優れている。
【0009】
表1にグラフェンシートと他の電極素材のカーボンナノチューブ、炭素、活性炭素粉末のキャパシターに関する基本物性を比較して示す。例えば、グラフェンシートは比表面積が2630m
2/gであるのに対し、炭素(グラファイト)は10m
2/g、活性炭素粉末は300〜2200m
2/g、カーボンナノチューブは120〜500m
2/gに過ぎず、グラフェンは他の素材に比べ、キャパシター素材として格段に優れていることがわかる。
【0010】
【表1】
【0011】
そのため、グラフェンをベースとしたキャパシター電極の研究は、着手され始めている。グラフェン懸濁液を濾過するなどにより、グラフェンを重ね合わせたシートをキャパシター電極としている研究例がある(特許文献2、非特許文献3〜5)。
【0012】
例えば、米国において、グラフェンのシートを重ねたグラフェンプレートを導電性樹脂で接着させたキャパシター電極が試作され、80F/gに達するキャパシタンスが得られている(特許文献2)。
【0013】
また、直接重ね合わせたグラフェンシートでキャパシタンス117F/g、エネルギー密度31.9Wh/kgを達成したとの報告もある(非特許文献3)。
【0014】
しかし、これらは、グラフェンシート間の間隔が制御されていないので、グラフェンシート同士が直接接触して、グラフェン間に電解液イオンが拡散して、グラフェンに吸着できないことや、グラフェンがランダム方向に凝集し、電気抵抗が大きくなるなどの欠点があり、グラフェンの特性を十分活かせていない(特許文献2、非特許文献3〜5)。そのため、現在までの研究では、グラフェンシートを単独に用いても、キャパシター性能はそれほど向上していない(非特許文献4及び5)。
【0015】
そこで、グラフェンシートの懸濁液を基板上にたらし、乾燥させてシート化し、その上にカーボンナノチューブ懸濁液をたらして、グラフェンとカーボンナノチューブとからなる複合シートを作製し、これを繰り返して多層のグラフェンとカーボンナノチューブ複合シートを作製する研究もなされている(非特許文献6)。
【0016】
非特許文献6は、グラフェンシートベースの電極性能向上のため、グラフェンシートとカーボンナノチューブを複合化する試みに関するものである。プラス(+)にチャージしたグラフェンシート層を先ず、基板にコーティングし、次に、マイナス(−)にチャージしたカーボンナノチューブをグラフェンシート上にコーティングし、これを繰り返して多層シートを作製し、電極としている。
【0017】
しかし、水溶液にグラフェンやカーボンナノチューブを分散させるのに、芳香族(polyaromatic)の表面活性剤を用いている。また、グラフェンとカーボンナノチューブを接合・接着させるのに、それぞれにカチオンやアニオンを添加して有機溶媒を用いて、+及び−にチャージさせている。
【0018】
これらの大きな分子の表面活性剤や有機溶媒に含まれるカチオンやアニオンは、グラフェンやカーボンナノチューブの特性を著しく劣化させるとともに、クーロン力によりグラフェンシート同士が強固に結びつくため、グラフェン間に電解液イオンが拡散・吸着することが困難となる。
【0019】
その結果、カーボンナノチューブの導電性を劣化させ、グラフェンとカーボンナノチューブの多層シートのキャパシター特性を向上させることができず、キャパシタンスは120F/gに留まり、グラフェンシートそのもののキャパシター電極と同程度となる(非特許文献3)。最近のグラフェンシートキャパシターのキャパシタンスはより大きいものが報告されており(非特許文献4及び5)、カーボンナノチューブとグラフェンシートとの単なる積層化の効果はあまりない。
【0020】
以上説明したように、最新のナノ素材のグラフェンは最も期待される材料であるが、グラフェン単独のシートだけでは、電解液イオンの吸着が不十分で、大きな比表面積を十分活かせなかった。
【0021】
また、カーボンナノチューブとの単なる複合化では、カーボンナノチューブのスペーサー、電気的連結効果が不十分であり、また、カーボンナノチューブやグラフェンの一様分散にキャパシター性能を劣化させる表面活性剤やカチオン・アニオンを用いるため、性能が劣化し、期待されるような特性を発現できなかった。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(本発明の実施形態)
<グラフェンシート集積体>
まず、本発明の実施形態であるグラフェンシート集積体について説明する。
【0039】
図1に示すように、グラフェンシート集積体101は、グラフェンシート11〜25間を接合し、グラフェンシート11〜25面が平行となるように積層されたグラフェンシート積層体61〜65を形成する第1のカーボンナノチューブ31〜48と、前記グラフェンシート積層体61〜65間を連結する第2のカーボンナノチューブ51〜56と、を有して概略構成されている。
【0040】
なお、グラフェンシート集積体101は、フィルム状とされている(図示略)。
【0041】
グラフェンシート11〜25は、化学的に還元したグラフェンシートを用いることが好ましい。これにより、第1のカーボンナノチューブ31〜48を容易に介在させることができ、各グラフェンシート11〜25の間隔を適切に(2〜10nm程度)に保ち、各グラフェンシート11〜25の一面が平行となるように積層したグラフェンシート積層体61〜65を生成することができる。
【0042】
図1に示すように、グラフェンシート11〜25間に第1のカーボンナノチューブ31〜48及び第2のカーボンナノチューブ51〜56を介在させている。このような構成とすることにより、第1のカーボンナノチューブ31〜48及び第2のカーボンナノチューブ51〜56を、グラフェンシート11〜25の間隔を一定に保つスペーサーとして機能させることができる。
【0043】
第1のカーボンナノチューブ31〜48は、スペーサーとして機能して、電解液イオンをグラフェンシート11〜25の表面に容易に拡散させ、容易に吸着させることができる。
【0044】
また、第2のカーボンナノチューブ51〜56は、グラフェンシート集積体を電気的及び機械的に3次元的に連結させ、高導電性で機械的性質に優れたグラフェンシート集積体からなるフィルムを形成させる。
【0045】
図1に示すように、グラフェンシート11〜25間は第1のカーボンナノチューブ31〜48及び第2のカーボンナノチューブ51〜56により接合・連結されている。
【0046】
第1のカーボンナノチューブ31〜48は、グラフェンシート11〜25とπ−π相互作用(スタッキング相互作用)により共有結合して、グラフェンシート11〜25同士を、カーボンナノチューブを介して強固に機械的にも接合させることができ、高強度のフィルムとすることができる。
【0047】
更に、第1のカーボンナノチューブ31〜48は、グラフェンシート11〜25同士を電気的に連結させることができ、グラフェンシート集積体101の導電性を向上させ、グラフェンシート集積体101のキャパシター性能を向上させることができる。
【0048】
第1のカーボンナノチューブ31〜48は、2枚以上のグラフェンシート11〜25を強固に結合させ、グラフェンシート積層体61〜65を形成する。これにより、グラフェンシート積層体61〜65を集積してなるグラフェンシート集積体を高強度にすることができる。
【0049】
また、第2のカーボンナノチューブ51〜56は、π−π相互作用(スタッキング相互作用)により共有結合して、グラフェンシート積層体61〜65同士を強固に機械的にも連結させるとともに、グラフェンシート積層体61〜65の3次元空間内の配置の自由度を高くして、高強度のフィルムとすることができる。
【0050】
更に、第2のカーボンナノチューブ51〜56は、グラフェンシート積層体61〜65同士を電気的に連結させることができ、グラフェンシート集積体101の導電性を向上させ、グラフェンシート集積体101のキャパシター性能を向上させることができる。
【0051】
第2のカーボンナノチューブ51〜56は、3次元空間内で絡み合うようにグラフェンシート積層体61〜65を連結し、フレキシブルで、高強度のフィルム状のグラフェンシート集積体101を形成することができる。また、グラフェンシートがこのような3次元構造をとることにより、電解液イオンの吸着をより容易にすることができる。
【0052】
第1のカーボンナノチューブ31〜48及び第2のカーボンナノチューブ51〜56は、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。単層カーボンナノチューブは、導電性が10
4S/cmと高く、導電性を高める接合・連結材として用いることができる。また、単層カーボンナノチューブは、グラフェンシート11〜25およびグラフェンシート積層体61〜65同士をπ−π相互作用により、容易に共有結合させることができる。
【0053】
前記単層カーボンナノチューブの長さは、5〜20μmであることが好ましく、6〜19μmであることがより好ましく、7〜18μmであることが更に好ましい。前記単層カーボンナノチューブの長さをこのような範囲にすると、グラフェンシート11〜25とのπ−π相互作用(スタッキング相互作用)による共有結合を一様に強固なものとするとともに、均一な間隔のスペーサーとして用いることができ、キャパシター特性の再現性を高めることができる。
【0054】
なお、グラフェンシート積層体61のグラフェンシート11〜13には、筒状の第1のカーボンナノチューブ31〜35が側面をグラフェンシート11〜13の表面に接触させて、グラフェンシート11〜13を接合している。これにより、グラフェンシート積層体61のグラフェンシート11〜13の結合を強固なものとすることができる。
【0055】
グラフェンシート積層体61は、カーボンナノチューブとグラフェンとのスタッキング相互作用(π−π相互作用)を活用して、グラフェンシート間を接合し、グラフェンシート間にカーボンナノチューブをスペーサーとして介在させることにより、電解液イオンの高速拡散、吸着に適するシート積層とされている。これにより、グラフェンの性能をいささかも損なわずに、高導電性、軽量、高強度というグラフェンの特性を十分活かすことができる。
【0056】
従来のグラフェンシートキャパシターは、グラフェンシート間にカーボンナノチューブが介在していないので、グラフェンシート間に電解液イオンを拡散、吸着させることが困難である。そのため、グラフェンシートの大きな比表面積が活かされていない。
【0057】
また、例えば、グラフェンシート積層体61、62を連結する筒状の第2のカーボンナノチューブ51は、その両端部をグラフェンシート13、14の表面に接触させて、グラフェンシート積層体61、62を連結している。これにより、グラフェンシート集積体101の膜の安定性を高めることができる。
【0058】
第1のカーボンナノチューブと第2のカーボンナノチューブの比率を調整することにより、所望の特性を有する、グラフェンシート集積体101とすることができる。
<グラフェンシート集積体の製造方法>
次に、本発明の実施形態であるグラフェンシート集積体の製造方法について説明する。
【0059】
本発明の実施形態であるグラフェンシート集積体101の製造方法は、修正ハマー法(modified-Hummers method)により、グラファイト粒子からグラフェン酸化物を生成する工程(第1工程)と、ヒドラジン水和物を用いて、グラファイト酸化物を還元して、化学的に還元されたグラフェンを生成する工程(第2工程)と、化学的に還元されたグラフェンを均一に分散させた水溶液にカーボンナノチューブを添加して、グラフェンとカーボンナノチューブとを含む混合溶液を作製する工程(第3工程)と、前記混合溶液を濾過する工程(第4工程)と、を有する。
【0060】
なお、本発明の実施形態であるグラフェンシート集積体の製造方法は、前記第3工程と前記第4工程とを有していればよく、前記第1工程と前記第2工程としては別の工程を用いて、化学的に還元されたグラフェンを生成してもよい。
<第1工程>
図2は、前記第1工程と前記第2工程の一例を示す図である。
【0061】
第1工程は、修正ハマー法により、グラファイト粒子からグラファイト酸化物を生成する工程である。
【0062】
グラファイト酸化物を生成する工程は、修正ハマー法を用いることが好ましい。修正ハマー法を用いることにより、シート状のグラフェン(グラフェンシート)の粉末を容易に得ることができる。
【0063】
図2のA工程に示すように、まず、グラファイト粒子と硝酸ナトリウム(NaNO
3)とをフラスコにとり、混ぜ合わせてから、硫酸(H
2SO
4)を加え、氷浴中で撹拌して、第1の懸濁液を調整する。
【0064】
次に、第1の懸濁液に、過マンガン酸カリウム(KMnO
4)を加熱しないように徐々に加え、室温で撹拌しながら保持する。例えば、2時間撹拌する。これにより、第1の懸濁液は次第にあざやかな茶色となる。
【0065】
次に、これに90mlの蒸留水を撹拌しながら加える。第1の懸濁液の温度は上昇し、懸濁液は黄色となる。
【0066】
次に、
図2のB工程に示すように、希釈した第1の懸濁液に30%の過酸化水素(H
2O
2)を加え、98℃で撹拌する。例えば、12時間撹拌する。
【0067】
次に、生成物を精製するため、先ず、5%の塩酸(HCl)ですすぎ洗浄し、さらに数回洗浄水ですすぐ。
【0068】
次に、第1の懸濁液を4000rpmで6時間、遠心分離する。
【0069】
次に、真空下で濾過、乾燥して、グラファイト酸化物の黒色の粉末を得る。
<第2工程>
第2工程は、ヒドラジン水和物を用いて、グラファイト酸化物を還元して、前記化学的に還元されたグラフェンを生成する工程である。
【0070】
まず、第1工程で得られたグラファイト酸化物を取り、蒸留水に加え、超音波処理により分散させて、第2の懸濁液を調整する。例えば、30分間超音波処理を行う。
【0071】
次に、第2の懸濁液をホットプレート上で、100℃になるまで加熱し、ヒドラジン水和物(hydrazine hydrate)を加え、98℃で保持する。保持時間は特に限定されないが、例えば、24時間保持する。この加熱保持工程により、
図2のC工程に示すように、還元されたグラフェンの黒色の粉末が得られる。なお、ヒドラジン水和物を用いて、前記グラファイト酸化物を化学的に還元することが好ましい。ヒドラジン水和物を用いることにより、容易にグラファイト酸化物を化学的に還元することができるためである。
【0072】
次に、還元されたグラフェンの黒色の粉末を濾過して収集してから、得られた濾過生成物を蒸留水で数回洗浄し、余分のヒドラジンを除き、超音波処理により、水中に再度分散させて、第3の懸濁液を調整する。
【0073】
次に、第3の懸濁液を超音波処理にする。超音波処理により、残存するグラファイトを除くことができる。例えば、4000rpm、3分間の超音波処理を行う。
【0074】
次に、第3の懸濁液を、真空下、濾過してから、乾燥させる。
【0075】
この濾過乾燥工程により、化学的に還元されたシート状のグラフェン(グラフェンシート)の粉末を得ることができる。
<第3工程>
第3工程は、化学的に還元されたグラフェンを均一に分散させた水溶液にカーボンナノチューブを添加して、グラフェンとカーボンナノチューブとを含む混合溶液を作製する工程である。
【0076】
まず、カーボンナノチューブを用意する。カーボンナノチューブとしては、市販の単層カーボンナノチューブを、特別の処理をすることなく、そのまま使用することができる。単層カーボンナノチューブとしては、純度が高いものが好ましく、90%以上の純度が好ましく、95%以上の純度がより好ましい。なお、数wt%であれば、アモルファスカーボンを含んでいても良い。
【0077】
次に、水中にグラフェンシートを均一に分散させて、分散溶液を調整する。前記分散溶液には、表面活性剤等を添加しない。
【0078】
次に、前記分散溶液に、用意したカーボンナノチューブを徐々に添加して、カーボンナノチューブとグラフェンシートが均一に分散した混合溶液を製造する。なお、グラフェンシートはカーボンナノチューブを水中に分散させるのに必要な表面活性剤の役割を担うので、表面活性剤等を添加しなくても、グラフェンシートとカーボンナノチューブを一様に分散させることができる。
【0079】
なお、最終的に、均質なキャパシター電極フィルムを得るのに最も重要なことは、グラフェンシートとカーボンナノチューブが一様に分散した懸濁液を得ることである。グラフェンシートはカーボンナノチューブを水中に分散させるのに必要な表面活性剤の役割を担い、グラフェンシートとカーボンナノチューブが一様に分散した懸濁液を得ることができる。水中に分散されたグラフェンシートには、カーボンナノチューブが共有結合に由来するπ−π相互作用により容易に接着することができ、カーボンナノチューブも、グラフェンシートとともに水中に一様分散できる。
【0080】
前記混合溶液中では、化学的に還元されたグラフェンシートが一様分散させた水溶液に単層カーボンナノチューブが一様分散されるので、グラフェンシートの間にカーボンナノチューブを容易に入り込ませることができ、グラフェンシートとカーボンナノチューブを共有結合に由来するπ−π相互作用のみで容易に接合させ、グラフェンシート積層体を形成させることができる。
【0081】
次に、このグラフェンシート積層体を核として、グラフェンシート積層体の外側に接着したカーボンナノチューブがグラフェンシート積層体間を連結させ、グラフェンシート積層体が3次元空間的に絡み合うように連結されたグラフェンシート集積体を形成することができる。
<第4工程>
第4工程は、前記混合溶液を濾過する工程である。
【0082】
前記混合溶液を真空濾過して、溶媒を除去することにより、フィルム状の集積体を得ることができる。
【0083】
以上の工程により得られたフィルム状の集積体が、本発明の実施形態であるグラフェンシート集積体である。
<グラフェンシートキャパシター>
次に、本発明の実施形態であるグラフェンシートキャパシターについて説明する。
【0084】
図5は、本発明の実施形態であるグラフェンシートキャパシターを用いたテストリグの概略図であり、
図6はテストリグの説明図である。
【0085】
図5及び
図6に示すように、本発明の実施形態であるグラフェンシートキャパシターは、グラフェンシート/カーボンナノチューブ(グラフェンシート集積体101)を有している。このように、グラフェンシート集積体101を、適切なセルで電極として用いることにより、キャパシター電極として使用可能となる。
【0086】
本発明の実施形態であるグラフェンシート集積体101は、2枚以上のグラフェンシート11〜25が集積され、フィルム状とされたグラフェンシート集積体であって、グラフェンシート11〜25間を接合し、グラフェンシート11〜25面が平行となるように積層されたグラフェンシート積層体61〜65を形成する第1のカーボンナノチューブ31〜48と、前記グラフェンシート積層体61〜65間を連結する第2のカーボンナノチューブ51〜56と、を有する構成なので、グラフェンシート11〜25表面上に電解液イオンを多量に、高速拡散させることができ、高密度に吸着・脱着させることができる。また、導電性のカーボンナノチューブをグラフェンシート間に介在させるとともに、グラフェンシート積層間を連結させることにより、グラフェンシート間およびグラフェンシート積層間の導電性を高めることができる。これにより、グラフェンシートのもつ特性をそのまま活かすとともに、カーボンナノチューブの高導電性も活かすことができ、エネルギー密度及び出力密度に係るキャパシター性能を向上させることができる。
【0087】
本発明の実施形態であるグラフェンシート集積体101は、第1のカーボンナノチューブ31〜48及び第2のカーボンナノチューブ51〜56が導電性の高い単層カーボンナノチューブなので、グラフェンシート11〜25間の導電性を高めることができる。また、この第1のカーボンナノチューブ31〜48及び第2のカーボンナノチューブ51〜56とグラフェンシート11〜25との接合・連結に、キャパシター電極の特性に悪影響を及ぼすイオン等を持ち込まず、もともと両物質がもつ共有結合の1種であるπ−π相互作用を用いることができ、エネルギー密度及び出力密度に係るキャパシター性能を向上させることができる。
【0088】
本発明の実施形態であるグラフェンシート集積体101は、単層カーボンナノチューブの長さが5〜20μmである構成なので、グラフェンシート11〜25とのπ−π相互作用(スタッキング相互作用)による共有結合を一様に強固なものとするとともに、均一な間隔のスペーサーとして用いることができ、キャパシター特性の再現性を高めることができる。
【0089】
本発明の実施形態であるグラフェンシート集積体101は、第1のカーボンナノチューブ31〜48とグラフェンシート11〜25との接合及び第2のカーボンナノチューブ51〜56とグラフェンシート11〜25との連結が、π−π相互作用による共有結合である構成なので、グラフェンシート11〜25間を機械的に接合して、高強度のグラフェンシートキャパシターとすることができるとともに、グラフェンシート11〜25間を電気的に接合させて、グラフェンシート11〜25間の導電性をより高めることができる。また、このカーボンナノチューブ31〜56とグラフェンシート11〜25との接合・連結に、キャパシター電極の特性に悪影響を及ぼすイオン等を持ち込まず、また、性能劣化につながる表面活性剤などの処理を必要としないため、グラフェン11〜25及びカーボンナノチューブ31〜56本来の持つ特性を損なうことはなく、もともと両物質がもつ共有結合の1種であるπ−π相互作用を用いることができ、エネルギー密度及び出力密度に係るキャパシター性能を向上させることができる。
【0090】
本発明の実施形態であるグラフェンシート集積体101の製造方法は、化学的に還元されたグラフェンを均一に分散させた水溶液にカーボンナノチューブを添加して、グラフェンとカーボンナノチューブとを含む混合溶液を作成する工程と、前記混合溶液を濾過する工程と、を有する構成なので、グラフェンシートに界面活性剤と同様の役割を行わせて、グラフェンシートとカーボンナノチューブが一様に分散した混合溶液を形成して、濾過工程で均質なフィルムを容易に生成させることができ、エネルギー密度及び出力密度に係るキャパシター性能を向上させたグラフェンシート集積体を容易に製造することができる。
【0091】
本発明の実施形態であるグラフェンシート集積体101の製造方法は、ヒドラジン水和物を用いて、グラファイト酸化物を還元して、前記化学的に還元されたグラフェンを生成する構成なので、エネルギー密度及び出力密度に係るキャパシター性能を向上させたグラフェンシートキャパシターを容易に製造することができる。
【0092】
本発明の実施形態であるグラフェンシートキャパシターは、グラフェンシート集積体101を有する構成なので、グラフェンシート表面上に電解液イオンを多量に、高速拡散させることができ、高密度に吸着・脱着させることができる。また、導電性のカーボンナノチューブをグラフェンシート間に介在させるとともに、グラフェンシート積層間を連結させることにより、グラフェンシート間およびグラフェンシート積層間の導電性を高めることができる。これにより、グラフェンシートのもつ特性をそのまま活かすとともに、カーボンナノチューブの高導電性も活かすことができ、エネルギー密度及び出力密度に係るキャパシター性能を向上させることができる。
【0093】
本発明の実施形態であるグラフェンシート集積体からなるフィルム及びそれを用いたグラフェンシートキャパシターは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0094】
(実施例1、比較例1、2)
<実施例1、比較例1、2のフィルムサンプル作製>
図2に示すグラフェンの生成工程に従い、グラフェンを生成した。
【0095】
まず、素材のグラファイト粒子を用いて、以下の修正ハマー法によりグラファイト酸化物を得た。
【0096】
具体的には、まず、グラファイト3gと硝酸ナトリウム(NaNO
3)1.5gとをフラスコにとり、混ぜ合わせてから、硫酸(H
2SO
4,95%)100mlを加え、氷浴中で撹拌した。
【0097】
次に、この懸濁液に、過マンガン酸カリウム(KMnO
4)8gを加熱しないように徐々に加え、室温で2時間撹拌しながら保持した。この間、懸濁液は次第にあざやかな茶色となった。
【0098】
次に、これに90mlの蒸留水をフラスコに撹拌しながら加えた。懸濁液の温度は上昇して90℃となり、懸濁液は黄色となった。
【0099】
次に、希釈した懸濁液に30%の過酸化水素(H
2O
2)30mlを加え、98℃で12時間撹拌した。
【0100】
次に、生成物を精製するため、先ず、5%の塩酸(HCl)ですすぎ洗浄し、さらに数回洗浄水ですすいだ。
【0101】
次に、懸濁液を4000rpmで6時間、遠心分離した。その後、真空下で濾過、乾燥し、グラファイト酸化物の黒色の粉末を得た。
【0102】
次に、グラファイト酸化物を還元してグラフェンを生成した。
【0103】
具体的には、まず、得られたグラファイト酸化物100mgを取り、蒸留水30mlに加え、30分間の超音波処理により分散させた。
【0104】
次に、この懸濁液をホットプレート上で、100℃になるまで加熱し、ヒドラジン水和物(hydrazine hydrate)3mlを加え、98℃で24時間保持した。
【0105】
次に、還元して生成したグラフェンの黒色の粉末を濾過して収集してから、得られた濾過生成物を蒸留水で数回洗浄し、余分のヒドラジンを除き、超音波処理により、水中に再度分散させた。
【0106】
次に、この懸濁液を4000rpm、3分間超音波処理して、残存するグラファイトを除いた。
【0107】
次に、この懸濁液を真空下の濾過、乾燥して、最終生成物のグラフェンを得た。
【0108】
次に、市販の単層カーボンナノチューブ(Cheap Tube Inc., purity>90%)を用意した。なお、この単層カーボンナノチューブは、アモルファスカーボンを3wt%以上含んでいた。また、この単層カーボンナノチューブの比表面積は407m
2/gであり、導電性は10
4S/cmであり、長さは5−30μmであった。以下の工程で、この単層カーボンナノチューブを特別の処理をすることなく、そのまま使用した。
【0109】
次に、水中に最終生成物のグラフェンを均一に分散させて、分散溶液を調整した。前記分散溶液には、表面活性剤等を添加しなかった。しかし、グラフェンは一様分散した。
【0110】
次に、前記分散溶液に、用意したカーボンナノチューブを徐々に添加して、カーボンナノチューブとグラフェンが均一に分散した混合溶液を製造した。混合溶液中、グラフェンシートとカーボンナノチューブは一様に分散した。
【0111】
図3(a)に、カーボンナノチューブ、グラフェン及びグラフェン/カーボンナノチューブを超音波処理により、水中に分散させ、その2時間後の水溶液の状態を示す写真である。また、
図3(b)は、
図3(a)に示した水溶液の状態を説明するための概念図である。
【0112】
図3(a)に示すように、超音波処理分散2時間後、カーボンナノチューブは凝集して沈殿した。一方、グラフェン及びグラフェン/カーボンナノチューブは一様分散した。
図3(b)に示すように、グラフェン/カーボンナノチューブの水溶液では、添加されたカーボンナノチューブがグラフェンに絡んで、一様分散したと判断した。
【0113】
次に、これらの分散液を、真空下での濾過、乾燥をして、フィルムを作製した。この真空濾過・乾燥過程には1時間要した。この間、グラフェン及びグラフェン/カーボンナノチューブの分散液の一様分散状態は保たれていた。
【0114】
以上により、カーボンナノチューブフィルム(比較例1)、グラフェンシートフィルム(比較例2)及びグラフェンシート集積体(実施例1)の3種のフィルムサンプルを実用に供すことが可能なサイズで作製した。
<実施例1、比較例1、2のフィルムサンプルの電子顕微鏡観察及び回折パターン測定>
カーボンナノチューブフィルム(比較例1)、グラフェンシートフィルム(比較例2)及びグラフェンシート集積体(実施例1)の3種のフィルムサンプルの電子顕微鏡観察及び回折パターン測定を行った。
【0115】
図4は、カーボンナノチューブフィルム(比較例1)、グラフェンシートフィルム(比較例2)及びグラフェンシート集積体(実施例1)の電子顕微鏡写真である。
【0116】
図4(a)はカーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真であり、
図4(b)及び
図4(c)はカーボンナノチューブにより接合されたグラフェンシートフィルム(以下、カーボンナノチューブ接合グラフェンシートフィルムという。)の走査型電子顕微写真であり、
図4(d)及び
図4(e)はカーボンナノチューブ及びグラフェンシートの透過型電子顕微鏡写真と回折パターンであり、
図4(f)はカーボンナノチューブに連結されたグラフェンシートの透過型電子顕微鏡写真である。
図4(f)中の矢印はグラフェンシートを示す。
【0117】
図4(a)に示すように、カーボンナノチューブのファイバーは、かなり長く、相互に絡み合い、クモの糸状を呈していた。このことから、カーボンナノチューブのフィルムは導電性がよく、また、グラフェンシートを容易にキャッチすると考えられる。なお、同写真のフィルム上にみられる塊状の物質はアモルファスカーボンである。
【0118】
図4(b)及び
図4(c)に示すように、グラフェンシート集積体(実施例1)では、グラフェンシートに導電性がよいカーボンナノチューブがからみ、接合されていた。この写真から、グラフェンシート集積体は導電性がよいことが分かる。また、カーボンナノチューブがスペーサーの役割も果たしていることから、グラフェンシート集積体は、電解液イオンを多量に吸着するとともに高速拡散も可能にすることが分かる。
【0119】
図4(d)に示すように、カーボンナノチューブフィルム(比較例1)では、カーボンナノチューブは凝集してバンドル状となっている。
図4(d)中に示した回折パターンは、カーボンナノチューブのものである。
【0120】
図4(e)に示すように、グラフェンシートフィルム(比較例2)では、グラフェンシートにグラファイトが一部残存しているのが見られた。
図4(e)中に示した回折パターンは、グラフェンシートのものであり、(1−210)と(−2110)の強いスポットが見られた。このことは、2−3枚のグラフェンシートが重なっていることを示す。
【0121】
図4(f)に示すように、グラフェンシート集積体(実施例1)では、グラフェンシートがカーボンナノチューブに3次元的に捕捉・接合されていた。
【0122】
以上により、キャパシター電極として実用に供すことが可能なサイズのグラフェンシート集積体(実施例1)は、カーボンナノチューブとグラフェンシートとを有する集積体であり、グラフェンシート間に介在するカーボンナノチューブがグラフェンシート間を相互連結していることを確認できた。
<実施例1、比較例1、2のフィルムサンプルのキャパシター特性測定>
図5及び
図6に示すテストセルを用いて、作製したそれぞれのシートのキャパシター特性を計測した。計測値は計測する電池システムによるが、ここでは、キャパシターの材料特性を最も正確に計測する2電極テストセルを用いた。
【0123】
まず、接着剤を使用することなく、2電極を組み立てた。なお、電極の面積は、実用に供せられる2cm
2とした。
【0124】
図5及び
図6に示すように、集電極には純チタンシート(Ti plate)を用い、セパレーター(Separator)には薄いポリプロピレン(polypropylene)フィルムを用いた。
また、電解液には、1Mの塩化カリウム(KCl)水溶液と1MのTEABF
4(Tetraethylammonium tetrafluoroborate)のPC(Propylene carbonate)液を用いた。
【0125】
図7は、カーボンナノチューブフィルム(比較例1)、グラフェンシートフィルム(比較例2)及びグラフェンシート集積体(実施例1)のキャパシター特性である。
【0126】
図7(a)は1Mの塩化カリウム(KCl)水溶液を用い、10mV/sでスキャンした時のサイクリックボルタンメトリーカーブである。
【0127】
また、
図7(b)は1Mの有機電解液(TEABF4/PC液)を用い、10mV/sでスキャンした時のサイクリックボルタンメトリーカーブである。
【0128】
また、
図7(c)は1Mの塩化カリウム(KCl)水溶液における500mA/gのチャージ電流下でのガルバノスタティックチャージディスチャージカーブである。
【0129】
また、
図7(d)は1Mの有機電解液(TEABF4/PC液)における500mA/gのチャージ電流下でのガルバノスタティックチャージディスチャージカーブである。
【0130】
グラフェンシート集積体(実施例1)のいずれの電気化学特性も、カーボンナノチューブフィルム(比較例1)、グラフェンシートフィルム(比較例2)の電気化学特性よりも良かった。
【0131】
図8は、カーボンナノチューブフィルム(比較例1)、グラフェンシートフィルム(比較例2)及びグラフェンシート集積体(実施例1)のキャパシター特性を示すグラフである。
【0132】
図8(a)はESR(Equivalent Series Resistance)でキャパシター内部の抵抗成分を等価な純抵抗で表したものである。カーボンナノチューブフィルム(比較例1)が低く、グラフェンシートフィルム(比較例2)はやや高く、グラフェンシート集積体(実施例1)はカーボンナノチューブ並となった。
【0133】
また、
図8(b)は出力密度(Power density)で、ESRの逆となる。即ち、カーボンナノチューブフィルム(比較例1)が一番大きかった。
【0134】
また、
図8(c)はエネルギー密度(Energy density)である。カーボンナノチューブフィルム(比較例1)は低く、有機溶媒中で20Wh/kgであるが、グラフェンシートフィルム(比較例2)では45Wh/kg、グラフェンシート集積体(実施例1)では、60Wh/kgを超えた。
【0135】
また、
図8(d)はキャパシタンス(Specific capacitance)であるが、グラフェンシート集積体(実施例1)が最も大きな値を示した。
【0136】
グラフェンシート集積体(実施例1)は、エネルギー密度を62.8Wh/kgまで高め、出力密度も58.5kW/kgと高い値であった。また、キャパシタンスは290.6F/gであった。エネルギー密度及び出力密度は、グラフェンシートフィルム(比較例2)に比べ、それぞれ、23%及び31%も増加したものであった。
【0137】
表2に、グラフェンシート集積体(実施例1)と、従来の研究で得られた値とを比較して示す。エネルギー密度や出力密度まで計測している文献はあまりないが、キャパシタンス、エネルギー密度及び出力密度とも、グラフェンシート集積体(実施例1)のキャパシター特性は抜きんでて優れたものであった。
【0138】
【表2】
【0139】
また、以上の結果から分かるように、グラフェンシート集積体(実施例1)はグラフェンとカーボンナノチューブがそれぞれ有する物性と形状特性を単に足し合わせたものではなくグラフェンとカーボンナノチューブを有機的に、3次元的に結合させることにより、キャパシター特性を格段に向上させたものであると判断した。
【0140】
本発明のグラフェンシートキャパシターは、エネルギー密度62.8Wh/kg、出力密度58.5kW/kgと従来の水準をはるかに超えるものであり、トヨタ・プリウスやホンダ・インサイト等のハイブリッド車に使用されているニッケル水素電池と同程度であり、出力密度は30倍に達するものである。そのため、ブレーキエネルギーの回収、短時間で容易な充電を考えれば、現在の性能で、バッテリを置き換えられる可能性を有する。