特許第5747429号(P5747429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747429
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】画像処理装置および超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   A61B8/00
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2007-207329(P2007-207329)
(22)【出願日】2007年8月9日
(65)【公開番号】特開2009-39306(P2009-39306A)
(43)【公開日】2009年2月26日
【審査請求日】2010年6月30日
【審判番号】不服2013-19702(P2013-19702/J1)
【審判請求日】2013年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100095511
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 紳志郎
(72)【発明者】
【氏名】谷川 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】見山 広二
【合議体】
【審判長】 尾崎 淳史
【審判官】 平田 佳規
【審判官】 信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−393(JP,A)
【文献】 特開平11−339036(JP,A)
【文献】 特開平9−220228(JP,A)
【文献】 特開平7−44701(JP,A)
【文献】 特開平11−211560(JP,A)
【文献】 特開2007−359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある時刻に対応する実フレーム前記時刻より後の時刻に対応する実フレームとの中間の時刻に対応する補間フレーム上の画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数3】

により求める補間フレーム作成部を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
ある時刻に対応する実フレーム前記時刻より後の時刻に対応する実フレームとの中間の時刻に対応する補間フレーム上の画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数4】


により求める補間フレーム作成部を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
ある時刻に対応する実フレーム前記時刻より後の時刻に対応する実フレームとの中間の時刻に対応する補間フレーム上の画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数5】


により求める補間フレーム作成部を備える
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像処理装置において、前記補間フレーム作成部は、ランダムの強さの指定値Swを、
【数6】

により求めることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の画像処理装置において、前記補間フレーム作成部は、加重加算の重みWiを、
【数7】

により求めることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
被検体を超音波スキャンして時系列の実フレームを得る超音波スキャン手段と、ある時刻に対応する実フレーム前記時刻より後の時刻に対応する実フレームとの中間の時刻に対応する補間フレーム上の画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を求める補間フレーム作成部と、前記補間フレームを表示する画像表示手段とを具備し、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数3】

により求めることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
被検体を超音波スキャンして時系列の実フレームを得る超音波スキャン手段と、ある時刻に対応する実フレーム前記時刻より後の時刻に対応する実フレームとの中間の時刻に対応する補間フレーム上の画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を求める補間フレーム作成部と、前記補間フレームを表示する画像表示手段とを具備し、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数4】

により求めることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
被検体を超音波スキャンして時系列の実フレームを得る超音波スキャン手段と、ある時刻に対応する実フレーム前記時刻より後の時刻に対応する実フレームとの中間の時刻に対応する補間フレーム上の画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を求める補間フレーム作成部と、前記補間フレームを表示する画像表示手段とを具備し、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数5】

により求めることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれかに記載の超音波診断装置において、前記補間フレーム作成部は、ランダムの強さの指定値Swを、
【数6】

により求めることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれかに記載の超音波診断装置において、前記補間フレーム作成部は、前記補間画素点の位置が折りかえり領域付近か否かを判定、折りかえり領域付近の位置では他の位置よりランダムの強さの指定値Swを大きくするようにランダムの強さの指定値Swを決めることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項11】
請求項6から請求項10のいずれかに記載の超音波診断装置において、前記補間フレーム作成部は、加重加算の重みWiを、
【数7】

により求めることを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および超音波診断装置に関し、更に詳しくは、より自然に見える補間フレームを生成しうる画像処理装置および超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ある時刻に対応する実フレーム(=実測により画素値を得たフレーム)上の画素点の画素値と後の時刻に対応する実フレーム上の画素点の画素値とを加重加算して中間の時刻に対応する補間フレーム(=補間計算により画素値を得るフレーム)上の画素点の画素値とする超音波診断装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
他方、実フレーム上において、補間画素点(=補間計算により画素値を得る画素点)の近傍の複数の原画素点(=実測により画素値を得た画素点)の画素値から線形補間により画素値を計算し、その計算された画素値にランダム成分を加えて補間画素点の画素値とする画像処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平9−220228号公報
【特許文献2】特開平7−44701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記2つの従来技術を組み合わせれば、ある時刻に対応する実フレーム上の画素点の画素値と後の時刻に対応する実フレーム上の画素点の画素値とを加重加算し、その加重加算して得た画素値にランダム成分を加えて中間の時刻に対応する補間フレーム上の画素点の画素値とすることが考えられる。
このように、線形補間により計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とすることで、線形補間により計算された画素値をそのまま補間フレーム上の画素点の画素値とするよりも自然に見える補間フレームを作成することが出来る。
しかし、自然に見える程度が不十分になる場合がある問題点があった。
そこで、本発明の目的は、より自然に見える補間フレームを生成しうる画像処理装置および超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、ある時刻に対応する実フレーム上の画素点の画素値と前記時刻より後の時刻に対応する実フレーム上の画素点の画素値とに独立した各ランダム成分を加えてランダム処理後画素値とするランダム処理手段と、前記ランダム処理後画素値を加重加算して中間の時刻に対応する補間フレーム上の画素点の画素値とする加重加算手段とを具備したことを特徴とする画像処理装置を提供する。
上記第1の観点による画像処理装置では、計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームを挟む実フレーム上の補間画素点に対応する各画素点の画素値にそれぞれ独立のランダム成分を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値とする。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による画像処理装置において、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数1】
により求めることを特徴とする画像処理装置を提供する。
上記第2の観点による画像処理装置では、計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームを挟む実フレーム上の補間画素点に対応する各画素点の画素値にそれぞれ独立のランダム成分を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値とする。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1の観点による画像処理装置において、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数2】
により求めることを特徴とする画像処理装置を提供する。
上記第3の観点による画像処理装置では、計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームを挟む実フレーム上の補間画素点に対応する各画素点の画素値にそれぞれ独立のランダム成分を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値とする。
また、補間画素点ごとに異なるランダム成分となるため、この点でも画像上に規則的パターンが現れるのを抑制でき、自然に見える程度をより向上できる。
【0007】
第4の観点では、本発明は、前記第1の観点による画像処理装置において、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数3】

により求めることを特徴とする画像処理装置を提供する。
上記第4の観点による画像処理装置では、計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームを挟む実フレーム上の補間画素点に対応する各画素点の画素値にそれぞれ独立のランダム成分を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値とする。このため、自然に見える程度を向上できる。
また、補間フレームごとに異なるランダム成分となるため、時間方向に規則的パターンが現れるのを抑制でき、動画として自然に見える程度を向上できる。
【0008】
第5の観点では、本発明は、前記第1の観点による画像処理装置において、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数4】

により求めることを特徴とする画像処理装置を提供する。
上記第5の観点による画像処理装置では、計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームを挟む実フレーム上の補間画素点に対応する各画素点の画素値にそれぞれ独立のランダム成分を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値とする。このため、自然に見える程度を向上できる。
また、実フレームの時間変化によって異なるランダム成分となるため、規則的パターンが現れるのを抑制でき、動画として自然に見える程度を向上できる。
【0009】
第6の観点では、本発明は、前記第1の観点による画像処理装置において、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数5】

により求めることを特徴とする画像処理装置を提供する。
上記第6の観点による画像処理装置では、計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームを挟む実フレーム上の補間画素点に対応する各画素点の画素値にそれぞれ独立のランダム成分を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値とする。このため、自然に見える程度を向上できる。
また、補間画素点ごとに異なるランダム成分としたり、補間フレームごとに異なるランダム成分としたり、実フレームの時間変化によって異なるランダム成分とすることが可能になるため、規則的パターンが現れるのを抑制でき、自然に見える程度を向上できる。
【0010】
第7の観点では、本発明は、前記第2から前記第6のいずれかの観点による画像処理装置において、ランダムの強さの指定値Swを、
【数6】
により求める手段を具備したことを特徴とする画像処理装置を提供する。
上記第7の観点による画像処理装置では、実フレーム上の画素点の画素値の差が大きいほど大きなランダム成分を加えることが出来るので、自然に見える程度を向上できる。
【0011】
第8の観点では、本発明は、前記第2から前記第7のいずれかの観点による画像処理装置において、加重加算の重みWiを、
【数7】
により求める手段を具備したことを特徴とする画像処理装置を提供する。
上記第8の観点による画像処理装置では、補間フレームに近い実フレームほどその画素値の寄与を大きく出来る。
【0012】
第9の観点では、本発明は、被検体を超音波スキャンして時系列の実フレームを得る超音波スキャン手段と、ある時刻に対応する実フレーム上の画素点の画素値と前記時刻より後の時刻に対応する実フレーム上の原画素点の画素値とに独立した各ランダム成分を加えてランダム処理後画素値とするランダム処理手段と、前記ランダム処理後画素値を加重加算して中間の時刻に対応する補間フレーム上の画素点の画素値とする加重加算手段と、前記補間フレームを表示する画像表示手段とを具備したことを特徴とする超音波診断装置を提供する。
上記第9の観点による超音波診断装置では、計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームを挟む実フレーム上の補間画素点に対応する各画素点の画素値にそれぞれ独立のランダム成分を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値とする。
【0013】
第10の観点では、本発明は、前記第9の観点による超音波診断装置において、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数1】
により求めることを特徴とする超音波診断装置を提供する。
上記第10の観点による超音波診断装置では、計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームを挟む実フレーム上の補間画素点に対応する各画素点の画素値にそれぞれ独立のランダム成分を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値とする。
【0014】
第11の観点では、本発明は、前記第9の観点による超音波診断装置において、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数2】
により求めることを特徴とする超音波診断装置を提供する。
上記第11の観点による超音波診断装置では、計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームを挟む実フレーム上の補間画素点に対応する各画素点の画素値にそれぞれ独立のランダム成分を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値とする。
また、補間画素点ごとに異なるランダム成分となるため、時間方向に規則的パターンが現れるのを抑制でき、動画として自然に見える程度を向上できる。
【0015】
第12の観点では、本発明は、前記第9の観点による超音波診断装置において、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数3】

により求めることを特徴とする超音波診断装置を提供する。
上記第12の観点による超音波診断装置では、計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームを挟む実フレーム上の補間画素点に対応する各画素点の画素値にそれぞれ独立のランダム成分を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値とする。このため、自然に見える程度を向上できる。
また、補間フレームごとに異なるランダム成分となるため、規則的パターンが現れるのを抑制でき、自然に見える程度を向上できる。
【0016】
第13の観点では、本発明は、前記第9の観点による超音波診断装置において、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数4】

により求めることを特徴とする超音波診断装置を提供する。
上記第13の観点による超音波診断装置では、計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームを挟む実フレーム上の補間画素点に対応する各画素点の画素値にそれぞれ独立のランダム成分を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値とする。このため、自然に見える程度を向上できる。
また、実フレームの時間変化によって異なるランダム成分となるため、時間方向に規則的パターンが現れるのを抑制でき、動画として自然に見える程度を向上できる。
【0017】
第14の観点では、本発明は、前記第9の観点による超音波診断装置において、補間画素点の画素値rk(k=1,2,3,…,K)を、
【数5】

により求めることを特徴とする超音波診断装置を提供する。
上記第14の観点による超音波診断装置では、計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレーム上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームを挟む実フレーム上の補間画素点に対応する各画素点の画素値にそれぞれ独立のランダム成分を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値とする。このため、自然に見える程度を向上できる。
また、補間画素点ごとに異なるランダム成分としたり、補間フレームごとに異なるランダム成分としたり、実フレームの時間変化によって異なるランダム成分とすることが可能になるため、規則的パターンが現れるのを抑制でき、自然に見える程度を向上できる。
【0018】
第15の観点では、本発明は、前記第9から第14のいずれかの観点による超音波診断装置において、ランダムの強さの指定値Swを、
【数6】
により求める手段を具備したことを特徴とする超音波診断装置を提供する。
上記第15の観点による画像処理装置では、実フレーム上の画素点の画素値の差が大きいほど大きなランダム成分を加えることが出来るので、自然に見える程度を向上できる。
【0019】
第16の観点では、本発明は、前記第9から第14のいずれかの観点による超音波診断装置において、前記補間画素点の位置が折りかえり領域付近か否かを判定する手段と、折りかえり領域付近の位置では他の位置よりランダムの強さの指定値Swを大きくするようにランダムの強さの指定値Swを決める手段とを具備したことを特徴とする超音波診断装置を提供する。
上記構成において「折りかえり領域」とは、元の画素値が画素値の上限より大きいか又は下限より小さい場合に見かけの画素値が上限から下限へ折りかえしたような値または下限から上限へ折りかえしたような値になる領域をいう。
上記第16の観点による超音波診断装置では、不自然に見えやすい折りかえり領域付近では他より大きなランダム成分を加えることが出来るので、自然に見える程度を向上できる。
【0020】
第17の観点では、本発明は、前記第9から前記第16のいずれかの観点による超音波診断装置において、加重加算の重みWiを、
【数7】
により求める手段を具備したことを特徴とする超音波診断装置を提供する。
上記第17の観点による超音波診断装置では、補間フレームに近い実フレームほどその画素値の寄与を大きく出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明の画像処理装置および超音波診断装置によれば、自然に見える補間フレームを作成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
図1は、実施例1にかかる超音波診断装置100の構成ブロック図である。
この超音波診断装置100は、超音波探触子10と、超音波探触子10を駆動して被検体内を超音波ビームで走査する送受信部20と、送受信部20により得られた信号を基に時系列の超音波画像(=実フレーム)を生成する画像生成部30と、超音波画像やそれを基に生成された補間画像(=補間フレーム)などを表示する画像表示部40と、操作者が指示やデータを与えるための操作部50と、超音波画像などを記録する記録部60と、全体を制御する制御部80と、制御部80に含まれている超音波画像記録部81および補間フレーム作成部83とを具備している。
【0024】
図2は、実フレームと補間フレームの説明図である。
実フレームF(t1)は、時刻t1に対応した走査により得られた超音波画像である。実フレームF(t2)は、時刻t1より後の時刻t2に対応した走査により得られた超音波画像である。
【0025】
補間フレームH1は、時刻t1と時刻t2の間の時刻「t1+Ta」に対応した補間画像である。
時刻「t1+Ta」に対応した補間フレームH1上の補間画素点rkの画素値rk(rkは、補間画素点およびその画素値の両方を表すものとする)は、時刻「t1+Ta」の直前の実フレームF(t1)上の補間画素点rkに対応した画素点p(t1)の画素値p(t1)(p(t1)は、画素点およびその画素値の両方を表すものとする)と、時刻「t1+Ta」の直後の実フレームF(t2)上の補間画素点rkに対応した画素点p(t2)の画素値p(t2)(p(t2)は、画素点およびその画素値の両方を表すものとする)とから計算により求められる。
【0026】
補間フレームH2,H3も、補間フレームH1と同様に、実フレームF(t1)と実フレームF(t2)を基にした計算により得られる。
【0027】
図3は、補間フレーム作成部83による補間フレーム作成処理を示すフロー図である。なお、補間フレームH1を作成する場合を想定して説明する。
【0028】
ステップS1では、補間画素点番号カウンタk=1に初期化する。補間画素点番号は、補間フレーム上で各画素点に付した連番である。
【0029】
ステップS2では、図2に示すように、補間フレームH1に対応する時刻「t1+Ta」の直前の実フレームF(t1)上の補間画素点rkに対応した画素点p(t1)の画素値p(t1)と、時刻「t1+Ta」の直後の実フレームF(t2)上の補間画素点rkに対応した画素点p(t2)の画素値p(t2)と、補間フレームH1と実フレームF(t1)の時間差Taと、補間フレームH1と実フレームF(t2)の時間差Tbとを取得する。
【0030】
ステップS3では、操作者が「ランダム補間」を選択していたらステップS4へ進み、そうでなかったらステップS11へ進む。
【0031】
ステップS4では、実フレームF(t1)上の画素点p(t1)の位置が折りかえし領域付近ならステップS5へ進み、実フレームF(t2)上の画素点p(t2)の位置が折りかえし領域付近ならステップS5へ進み、そうでなければステップS6へ進む。
例えば、画素値が−128〜127の範囲内の値をとるものとし、画素点p(t1)の最近傍の4点の画素値がp1,p2,p3,p4であるとき、|p1−p2|>127または|p3−p4|>127または|p1−p3|>127を満たす場合は折りかえし領域付近と判定する。
【0032】
ステップS5では、基準値So=S1とする。そして、ステップS7へ進む。
【0033】
ステップS6では、基準値So=S2とする。但し、S1>S2とする。そして、ステップS7へ進む。
【0034】
ステップS7では、次式によりランダムの強さの指定値Swを算出する。
【数6】
【0035】
ステップS8では、補間画素点の画素値rkを次式により求める。
【数5】
ここで、操作者は、j=0またはj=kを選択できる。また、f=0またはf=補間フレームH1のフレーム番号(フレームには通番が付されている)またはf=実フレームF(t1)上の全面または一部領域の画素値の合計またはf=実フレームF(t2)上の全面または一部領域の画素値の合計のいずれかを選択できる。また、d=0またはd=実フレームF(t1)上の全面または一部領域の画素値の合計と実フレームF(t2)上の全面または一部領域の画素値の合計の差を選択できる。加重加算の重みwiは次式により計算する。
【数7】
【0036】
ステップS9では、補間画素点番号カウンタkが最終値Kに到達したなら処理を終了し、到達していないならステップS10へ進む。
ステップS10では、補間画素点番号カウンタkを1だけインクリメントしてからステップS2に戻る。
【0037】
ステップS11では、操作者が線形補間を選択していたらステップS12へ進み、そうでなかったら別の補間方法をチェックする処理へ進む。
【0038】
ステップS12では、補間画素点の画素値rkを次式により求める。
【数8】
そして、ステップS9に戻る。
【0039】
実施例1の超音波診断装置100によれば次の効果が得られる。
(1)計算された画素値にランダム成分を加えて補間フレームH1,H2,H3上の画素点の画素値とするのではなく、補間フレームH1,H2,H3を挟む実フレームF(t1),F(t2)上の補間画素点に対応する各画素点の画素値p(t1),p(t2)にそれぞれ独立のランダム成分 rand(1+j+f+d)%Sw-Sw/2,rand(2+j+f+d)%Sw-Sw/2 を加えてランダム処理後画素値とした後、それらランダム処理後画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値rkとする。このため、自然に見える程度を向上できる。例えば、音線がほとんど目立たなくなる。また、補間フレームH1,H2,H3間における規則性が目立たなくなる。
【0040】
(2)実フレームは、カラーフロー画像でも、Bフロー画像でも、Bモード画像でもよいが、カラーフロー画像の場合に特に有用である。すなわち、バックグラウンドのBモード画像に埋もれて目立たない微小なカラーデータ(輝度が低い、面積が小さい等)がカラーフロー画像に存在した場合、補間フレームではカラーデータがランダム成分を含んで変化するため、動画として見たときに目立つようになり、血流があることを視認しやすくなる。
【0041】
(3)ランダム性の強さをコントロールすることが可能になるため、規則性が現れるのを最適に抑制できる。
【実施例2】
【0042】
実施例2では、実フレームF(t1),F(t2)上で空間的な補間を行って補間画素点を生成し、実フレームF(t1),F(t2)上の画素点を増やす。この画素点を増やした実フレームF(t1),F(t2)を用いることにより、補間フレームH1,H2,H3における補間画素点密度を高くすることが出来る。
【0043】
図4は、実施例2にかかる超音波診断装置200の構成ブロック図である。
この超音波診断装置100は、超音波探触子10と、超音波探触子10を駆動して被検体内を超音波ビームで走査する送受信部20と、送受信部20により得られた信号を基に時系列の超音波画像を生成する画像生成部30と、超音波画像やそれを基に生成された補間画像などを表示する画像表示部40と、操作者が指示やデータを与えるための操作部50と、超音波画像などを記録する記録部60と、全体を制御する制御部80と、制御部80に含まれている超音波画像記録部81,補間画像生成部82および補間フレーム作成部83とを具備している。
【0044】
図5は、原画素点(走査により得られた画素点)と補間画素点(原画素点を基にした計算により得られた画素点)の説明図である。
原画素点p1,p2,p3,p4は、走査により画素値を得た画素点である。補間画素点Rkは、最近傍4点の原画素点p1,p2,p3,p4を基にした計算により画素値を得た画素点である。
【0045】
図6は、補間画像生成部82による補間画像生成処理を示すフロー図である。なお、実フレームF(t1)上で空間的補間を行う場合を想定して説明する。
【0046】
ステップP1では、補間画素点番号カウンタk=1に初期化する。補間画素点番号は、実フレーム上で各補間画素点に付した連番である。
【0047】
ステップP2では、図5に示すように、k番目の補間画素点Rkの位置から最短の4個の原画素点の画素値p1,p2,p3,p4と距離L1,L2,L3,L4とを取得する。
【0048】
ステップP3では、操作者がランダム補間を選択していたらステップP4へ進み、そうでなかったらステップP11へ進む。
【0049】
ステップP4では、補間画素点Rkの位置が折りかえし領域付近ならステップP5へ進み、そうでなければステップP6へ進む。
例えば、画素値が−128〜127の範囲内の値をとるものとするとき、|p1−p2|>127または|p3−p4|>127または|p1−p3|>127を満たす場合は折りかえし領域付近と判定する。
【0050】
ステップP5では、基準値So=S1とする。そして、ステップP7へ進む。
【0051】
ステップP6では、基準値So=S2とする。但し、S1>S2とする。そして、ステップP7へ進む。
【0052】
ステップP7では、次式によりランダムの強さの指定値Swを算出する。
【数6】
【0053】
ステップP8では、補間画素点の画素値Rkを次式により求める。
【数5】
ここで、操作者は、j=0またはj=kを選択できる。また、f=0またはf=フレーム番号またはf=実フレームの全面または一部領域の画素値の合計のいずれかを選択できる。また、d=0またはd=実フレームの全面または一部領域の画素値の合計と直前の実フレームの全面または一部領域の画素値の合計との差を選択できる。加重加算の重みwiは次式により計算する。
【数7】
【0054】
ステップP9では、補間画素点番号kが最終値Kに到達したなら処理を終了し、到達していないならステップP10へ進む。
ステップP10では、補間画素点番号カウンタkを1だけインクリメントしてからステップP2に戻る。
【0055】
ステップP11では、操作者が線形補間を選択していたらステップP12へ進み、そうでなかったら別の補間方法をチェックする処理へ進む。
【0056】
ステップP12では、補間画素点の画素値Rkを次式により求める。
【数8】
そして、ステップP9に戻る。
【0057】
図6の補間画像生成処理により画素点を増やした実フレームF(t1),F(t2)を用いて、補間フレーム作成部83が補間フレームH1,H2,H3を作成するが、その補間フレーム作成処理は図3と同様であり、説明を省略する。
【0058】
実施例2の超音波診断装置200によれば、実施例1の効果に加えて、次の効果が得られる。
(4)実フレームF(t1),F(t2)上で空間的な補間を行って補間画素点を生成し、実フレームF(t1),F(t2)上の画素点を増やすので、補間フレームH1,H2,H3における補間画素点密度を高くすることが出来る。
(5)実フレームF(t1),F(t2)上の空間的な補間において、計算された画素値にランダム成分を加えて補間画素点の画素値とするのではなく、4点の原画素点の各画素値p1,p2,p3,p4にそれぞれ異なるランダム成分 rand(1+j+f+d)%Sw-Sw/2,rand(2+j+f+d)%Sw-Sw/2,rand(3+j+f+d)%Sw-Sw/2,rand(4+j+f+d)%Sw-Sw/2 を加えてランダム処理後原画素値とした後、4個のランダム処理後原画素値を加重加算した画素値を補間画素点の画素値Rkとする。このため、自然に見える程度を向上できる。例えば、音線がほとんど目立たなくなる。原画像は、カラーフロー画像でも、Bフロー画像でも、Bモード画像でもよいが、カラーフロー画像の場合に特に有用である。
【0059】
(6)j=kとして補間画素点ごとに異なるランダム成分としたり、f=フレーム番号または実フレームの全画素値の合計のいずれかとしてフレームごとに異なるランダム成分としたり、d=実フレームの全画素値の合計と直前の実フレームの全画素値の合計との差としてフレームごとに異なるランダム成分としたりすることが可能になるため、実フレーム上に規則的パターンが現れるのを抑制でき、実フレームが自然に見える程度を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の画像処理装置および超音波診断装置は、自然に見える補間フレームを作成するのに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】実施例1に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
図2】補間フレームと実フレームを示す概念図である。
図3】実施例1に係る補間フレーム作成処理を示すフロー図である。
図4】実施例2に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
図5】原画素点と補間画素点を示す概念図である。
図6】実施例2に係る補間画像生成処理を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0062】
10 超音波探触子
80 制御部
81 超音波画像記録部
82 補間画像生成部
83 補間フレーム作成部
100 超音波診断装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6