特許第5747470号(P5747470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747470
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】砒素汚染土壌の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/02 20060101AFI20150625BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20150625BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20150625BHJP
   C02F 1/56 20060101ALI20150625BHJP
   B09C 1/00 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   B09B3/00 304K
   C02F1/52 BZAB
   C02F1/56 B
   B09B5/00 S
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-227901(P2010-227901)
(22)【出願日】2010年10月7日
(65)【公開番号】特開2012-81386(P2012-81386A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】毛利 光男
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 誠一
(72)【発明者】
【氏名】江口 崇
(72)【発明者】
【氏名】高柳 宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 仁志
【審査官】 原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−279454(JP,A)
【文献】 特開2008−036525(JP,A)
【文献】 特開2000−325936(JP,A)
【文献】 特開2005−238207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/00−1/10
B09B 1/00−5/00
C02F 1/52−1/56
B01D 21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砒素による汚染土壌を洗浄処理する方法であって、
処理対象の汚染土壌をスラリーとし、土粒子に吸着されている砒素をアルカリ抽出により溶存態としてスラリー中に抽出した後、
該スラリーに無機凝集剤の添加を省略して高分子凝集剤を添加して混合攪拌することにより、スラリー中の5〜10μm以上の土粒子のみを選択的に凝集させてフロックを形成するとともに、5〜10μm未満の微細粒子を凝集させることなくスラリー中に分散させたうえで、
前記フロックを沈降分離して中和安定化処理することにより5〜10μm以上の土粒子からなる浄化土を得るとともに、5〜10μm未満の微細粒子分および溶存態としての砒素を含む上澄水をさらに無機凝集剤と高分子凝集剤とを併用する凝集沈澱処理してその凝集スラッジを脱水処理することにより砒素を含む濃縮汚染土を得ることを特徴とする砒素汚染土壌の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚染土壌の洗浄処理技術に係わり、特に自然由来の低濃度砒素汚染土壌を対象とする洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然由来の重金属による土壌汚染は鉱床地帯を通る山岳トンネルにおいて従来より問題とされていたが、最近では市街地において海成堆積物から溶出する重金属、特に砒素による土壌汚染の問題が顕在化している。
このような自然由来の砒素による市街地での汚染濃度は低濃度ではあるものの、溶出量が0.015〜0.03mg/L程度と環境基準値(0.01mg/L)を大きく超過していることが問題であり、浄化処理が必要である。
【0003】
汚染土壌中の環境汚染物質(重金属類、鉱物油、シアンなど)は、砂分や礫分などの粗粒子分よりも土壌有機物(腐植質)や粘土・シルトなどの細粒子分に多く吸着・保持されていることから、その浄化に際しては粗粒子分と細粒子分とを分離・除去することが効率的な処理を行ううえで有利である。
【0004】
たとえば特許文献1に開示されているような土壌洗浄方法は、汚染土壌をスラリーとして汚染物質を吸着している細粒子分をハイドロサイクロンにより分離したうえで、その細粒子分を含む懸濁液に凝集剤を添加・攪拌して凝集沈澱処理し、凝集スラッジを脱水して濃縮汚染土(脱水ケーキ)として処分するものである。
この場合、ハイドロサイクロンは土壌スラリーを分級する上で便利で処理能力の高い装置であるが、分級点が20〜30μmよりも小さいハイドロサイクロンではサイズが小さいため処理能力が低く、したがって大量の土壌スラリーを処理するためには非常に多くのサイクロンとポンプを必要とするため現実的ではないことから、土壌洗浄の分野においては分級点を20〜30μm程度とすることが限界であって通常は分級点が63〜125μmのハイドロサイクロンが一般に用いられる。
【0005】
また、特許文献2に示される汚染土壌の浄化方法は、重金属類やシアン等の有害物質に汚染された土壌を対象として、抽出剤を添加し、混合機で混練し、浸出液で浸出し、固液分離することにより有害物質を除去するものであるが、この場合もドラムウオッシャ、振動篩、ハイドロサイクロン、スパイラル分級機等を用いて150μm前後で分級し、粒径150μm以上の粒子を浄化処理するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−116397号公報
【特許文献2】特開2000−157964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように汚染土壌を分級したうえで洗浄処理する場合においては、たとえ低濃度の汚染土壌であっても分級した細粒子分の全てを最終処分する必要があるから、処分量および処分コストを削減するためには分級点を可及的に小さくしたいという要請がある。
すなわち、日本各地の土壌には63μm以下の細粒子分が乾燥比重比で25〜40%程度含まれていることが通常であり、粘土・シルト分を多く含む地域では細粒子分が土壌全体の50〜60%を示す場合もあることから、上記従来の洗浄方法において分級点を63〜125μmないし150μm程度に設定した場合には実質的に汚染土壌全体の大半を処理し処分しなければならないことになり、そのために多大なコストを要するものとなる。
【0008】
そこで、分級点をたとえば5〜10μm程度にまで小さくし、それにより分級した微細粒子を対象として処理・処分するようにすれば、処分土量や処分コストを大幅に削減することが可能であるが、上述したように従来のハイドロサイクロンを始めとする一般的な分級手段では処理効率を低下させることなく分級点を63〜125μmよりも充分に小さくすることは困難であることから、それを可能とする有効適切な手段の開発が望まれているのが実状である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は砒素による汚染土壌を洗浄処理するに際して、処理対象の汚染土壌をスラリーとし、土粒子に吸着されている砒素をアルカリ抽出により溶存態としてスラリー中に抽出した後、該スラリーに無機凝集剤の添加を省略して高分子凝集剤を添加して混合攪拌することにより、スラリー中の5〜10μm以上の土粒子のみを選択的に凝集させてフロックを形成するとともに、5〜10μm未満の微細粒子を凝集させることなくスラリー中に分散させたうえで、前記フロックを沈降分離して中和安定化処理することにより5〜10μm以上の土粒子からなる浄化土を得るとともに、5〜10μm未満の微細粒子分および溶存態としての砒素を含む上澄水をさらに無機凝集剤と高分子凝集剤とを併用する凝集沈澱処理してその凝集スラッジを脱水処理することにより砒素を含む濃縮汚染土を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ハイドロサイクロン等の物理的手法では達成が困難である5〜10μm未満の微細粒子分の効率的な分離を化学的な手法である凝集沈澱法により分離するものであり、特に通常の凝集沈澱法の一部を省略して敢えて不完全な凝集沈澱処理を意図的に行うことによって5〜10μm以上の土粒子を選択的にフロックとして沈降分離することにより5〜10μm未満の微細粒子の分級を可能としたものである。
そして本発明では、汚染土壌からアルカリ抽出により砒素を溶存態としてスラリー中に抽出したうえで、上記の分級を行って5〜10μm未満の微細粒子からなる濃縮汚染土を得ることにより、従来一般の洗浄方法においては濃縮汚染土に含まれてしまうことから処分せざるを得ない5〜10μm以上の土粒子を再利用可能な浄化土として回収可能であり、したがって濃縮汚染土の発生量を大幅に低減し得てその処分に要するコストを大幅に削減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の洗浄方法の実施形態を示すフロー図である。
図2】同、不完全凝集沈澱法の原理を示す説明図である。
図3】本発明が対象とする砒素汚染土壌の特性を示す図である。
図4】通常の凝集沈殿法の原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を説明するに先立ち、本発明が対象としている自然由来の砒素汚染土壌からの砒素の溶出機構と砒素汚染土壌のロードカーブ(砒素全含有量と砒素溶出量の分布)の特性について説明する。
(a)自然由来砒素の溶出機構
(1)pH7〜8で酸化環境にある通常の水中では、砒素はヒドロ砒酸イオン(HAs042-)などのオキソ陰イオンとして存在しており、水酸化鉄や粘土鉱物の微粒子に吸着される。
(2)砒素は鉄やアルミニウムなどの水酸化物、天然酸化鉱物、粘土鉱物に吸着されやすい性質がある。その吸着はpHに大きく依存し、低pH(酸性)であるほど高く、pHの増加に従い減少する。酸化物のZPC(Zero Point of Charge)より低いpH条件においては表面が正(プラス)に帯電し、負の電荷を有する陰イオン種(砒酸イオンなど)は正に帯電した表面に引き寄せられる。逆に、高いpH条件では表面が負(マイナス)に帯電するため、陰イオン種は脱着する。
(3)黄鉄鋼(FeS2)に微量成分として含有される砒素は、酸化的な(酸素に富んだ)表層水や浅層地下水との接触により黄鉄鋼が酸化分解されることで溶出する。
(4)水酸化鉄に吸着した砒素は、堆積物とともに沈澱し底質中に固定される。この水酸化鉄が還元的な(酸素を含まない)地下水と接触すると、水酸化鉄の沈殿物は不安定となって分解する。この過程で水酸化鉄に吸着(固定)されていた砒素も可溶化して溶出する。
本発明が対象としている市街地の砒素溶出は上記の(1)と(2)のメカニズムで起きる場合が多く、そのような市街地の砒素汚染土壌に対しては吸着されている砒素をアルカリ抽出法により抽出することで浄化することができる。
(b)自然由来の砒素汚染土壌のロードカーブ
自然由来の砒素汚染土壌のロードカーブ(含有量(底質調査法)と溶出量の両方)を図3に示す。この場合、土壌全体の含有量値は6.6mg/kgであるが、図3(a)より粒子径が小さいほど含有量値が高いことが認められる。また、図3(b)から溶出量値についても同様の傾向が認められる。したがって粗粒子分よりも細粒子分、特に微細粒子分を選択的に処理することで効率的な処理が可能である。
【0013】
本発明は、上記のような自然由来の砒素の溶出機構についての知見に基づき、低濃度の砒素汚染土壌を「アルカリ抽出法」と後述する特殊な凝集沈殿法(以下、「不完全凝集沈澱法」と称す)により洗浄処理することを主眼とする。
本発明における「不完全凝集沈澱法」は、ハイドロサイクロン等の物理的手法では達成が困難である5〜10μm未満の微細粒子分の効率的な分離を化学的な手法である凝集沈澱法により可能とするものであるが、通常の凝集沈澱法の一部を省略して敢えて不完全な凝集沈澱処理を意図的に行うようにしたものである。
【0014】
本発明における「不完全凝集沈殿法」を説明するに先立ち、まず図4を参照して通常の凝集沈澱法について説明する。
水中の粒子が凝集せずに安定に分散している理由は、粒子表面は一般に負の電荷を帯びており、粒子どうしの荷電の反発が生じるため、および粒子周囲に存在するイオンや溶存分子が接近を阻害しているためである。
したがって、凝集作用によって大きな粒子に成長させるためには、粒子の表面電荷を反対電荷によって中和して静電的な反発を弱め、また吸着しやすい官能基(吸着基)をもった高分子凝集剤で粒子間を架橋することが必要であり、そのため通常の凝集沈澱法においては図4に示すように無機凝集剤(PAC、硫酸バンドなど)と高分子凝集剤とを併用して凝集沈澱処理を行うことが必要である。
すなわち、無機凝集剤は粒子表面の荷電中和の作用が強く、同時に粒子や溶解物への吸着作用があるので、小さい粒子をもれなく集めるのに適しているが、強度の弱い小フロックしか形成できない。そこで、その小フロックに、さらに分子量が大きくアミド基やカルボキシル基などの吸着基をもったアニオン性や非イオン性の高分子凝集剤を添加することで、小フロックは架橋して強固な大フロックとなり、沈降が促進される。
【0015】
このように通常の凝集沈澱法では無機凝集剤と高分子凝集剤とを併用することによって大フロックを形成して凝集沈澱作用を得るのであるが、この場合は微細粒子も含めて全ての粒子が大フロックとなって沈降して沈澱汚泥となるから、5〜10μmの微細粒子のみを選択的に分離することはできない。
【0016】
そこで本発明では、図2に示すように、無機凝集剤の添加を省略して高分子凝集剤のみを添加するに留めて、上述のように不完全な凝集沈澱処理を意図的に行う。
すなわち、無機凝集剤を添加せずに高分子凝集剤のみで凝集させる場合には凝集可能な粒子径は自ずと限界があり、5〜6μm以上の比較的大径の粒子どうしは従来と同様に大フロックを形成して沈降して沈澱汚泥となるが、5〜6μm未満の微細粒子に対しては高分子凝集剤の架橋作用が働きにくく、フロックを形成しないか、あるいはフロックを形成してもごく微細なものでしかなく、これらは沈降速度が小さいために浮遊しながらオーバーフローとして流出させることができる。
したがって、大フロックとなって沈降する沈澱汚泥(アンダーフロー)と上澄水(オーバーフロー)とを分離することが可能であり、それにより5〜6μm未満の微細粒子分とそれよりも大きな細粒子分とを分離できることになる。但し、現実的には上澄水を溢水流としてオーバーフローさせて回収することになるから、水平方向に流れる溢水流に伴われて10μm程度の微細粒子も回収されるため、実際の分級点はやや大きくなって図中に示しているように5〜10μm程度となる。
【0017】
なお、上記のような不完全凝集による微細粒子の分級・分離が可能となるためには、無機凝集剤の添加を省略することを前提として、高分子凝集剤の添加量およびpHを適正に調整する必要があるが、高分子凝集剤の添加量は通常の凝集沈澱法の場合に比べて少なくて良く、またpHは通常の凝集沈澱法の適正pHと異なるpH領域で凝集を行うように調整すると良い。
たとえば、高分子凝集剤の添加量は通常の凝集沈澱法において適正とされる量の1/2〜2/3程度で良い。また、高分子凝集剤としてアニオン系ポリマーを用いる場合における通常の凝集沈澱法ではpH=7〜9とすることが一般的であるが、本発明ではpH=9〜11とすることが好ましい。また、高分子凝集剤の添加量およびpHの調整と関連づけて上記のように分級点が5〜10μmとなるようにオーバーフローの溢流速度を適切に設定すれば良い。
【0018】
本発明は、上記の「不完全凝集沈殿法」の前段でアルカリ抽出法を実施することを要旨とし、それによって自然由来の低濃度の砒素汚染土壌を効率的に洗浄浄化することが可能なものであり、その具体的な実施形態を図1に示す。
【0019】
処理対象の汚染土壌に水を加え、2mm以上の粗粒子分を予め除去し解泥したスラリーにNaOHを添加し、pH9〜12の条件化で攪拌することによって「アルカリ抽出法」を実施する。これにより、土壌から砒素が砒酸あるいは亜砒酸などのオキソ陰イオンの形態で抽出される。
【0020】
そこで、その砒酸が抽出された土壌スラリーに対して上記の「不完全凝集沈殿法」を実施する。これにより、5〜10μmから2mmの土壌粒子(細粒子分と砂分)は大きなフロックを形成し、大きな沈降速度で沈殿槽底部に沈澱するから、それを引き抜いて中和・安定化処理し、脱水することによって浄化土が得られる。この浄化土は土壌環境基準を満足することから再利用が可能であり、処分の必要はない。
【0021】
一方、不完全凝集によりオーバーフローとして分離された上澄水には、5〜10μm未満の微細粒子、小さな凝集フロック、および抽出された溶存態の砒素が含まれるから、このオーバーフローについてはさらに通常の凝集沈殿法(無機凝集剤を使用するいわば完全凝集沈殿法)を実施し、5〜10μm未満の微細粒子、小さな凝集フロック、および抽出された溶存態の砒素を全て凝集スラッジとして水中から分離し、それをプレスして脱水する。これにより高濃度の砒素を含む濃縮汚染土が得られるから、これは外部処分する。
【0022】
本発明によれば、従来においては濃縮汚染土に含まれてしまうことから処分せざるを得ない大量の5〜10μm以上の粒子分を再利用可能な浄化土として回収可能であり、したがって濃縮汚染土の発生量を大幅に低減し得てその処分に要するコストを大幅に削減することが可能である。
一実験例によれば、ハイドロサイクロンにより63〜125μmで分級していた従来法による場合には処理土壌全体の35%を濃縮汚染土として処分する必要があったが、上記の不完全凝集沈澱法により5〜10μmで分級した本発明による場合には濃縮汚染土を5%未満にまで低減させることができ、従来法に比べて濃縮汚染土量を1/8〜1/5程度に低減できることが確認されている。
【0023】
また、図3に示されるように砒素の含有量や溶出量は粒子径が小さい成分ほど高いことから、本発明のように微細粒子分を選択的に処理することで従来法に比べてより効率的な処理が可能である。
しかも、不完全凝集沈澱法においては5〜10μmから2mmまでの土壌粒子が大きなフロックを形成するため、フロックの沈降速度が非常に大きく、そのため沈殿槽の面積を小さくできるし、その際には自ずと大きな圧密がかかって固形分率が高い(約50%ds)堆積物となり、後段の脱水処理が容易である。
さらに、不完全凝集沈澱法によるオーバーフローに対しては後段で無機凝集剤(PACや硫酸バンドなど)を使用した通常の凝集沈殿法を行うので、その際にはアルカリ助剤が必要となるが、不完全凝集沈殿法の前段のアルカリ抽出工程で添加するNaOHはそのアルカリ助剤として有効利用できるので無駄になることはない。
以上のことから、本発明の洗浄方法は「アルカリ抽出法」と「不完全凝集沈澱法」を有機的に組み合わせたことで自然由来の低濃度の砒素汚染土壌を効率的に処理可能なものであり、極めて合理的であり有効である。
図1
図2
図3
図4