(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747481
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】板材の突合わせ溶接方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B23K 37/04 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
B23K37/04 D
B23K37/04 E
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-252034(P2010-252034)
(22)【出願日】2010年11月10日
(65)【公開番号】特開2012-101251(P2012-101251A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】大野 清司
(72)【発明者】
【氏名】中島 康仁
(72)【発明者】
【氏名】中根 和彦
【審査官】
篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−071592(JP,A)
【文献】
実開平05−009777(JP,U)
【文献】
特開平08−174279(JP,A)
【文献】
特開2008−119752(JP,A)
【文献】
特開2004−298927(JP,A)
【文献】
米国特許第05878944(US,A)
【文献】
米国特許第05023427(US,A)
【文献】
特開平02−133195(JP,A)
【文献】
実開昭60−034394(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の板材の突合わせ端面と第2の板材の突合わせ端面とを突合わせて溶接する板材の突合わせ溶接方法であって、
前記第1の板材及び前記第2の板材をそれぞれ第1の電磁石及び第2の電磁石で支持し、前記第1の電磁石の前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の電磁石の前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とを同極とした状態で、前記第2の板材の突合わせ端面を前記第1の板材の突合わせ端面に近接させた後、前記第2の電磁石をオフにすることにより、又は、前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが異極となるように切り替えることにより前記第1の板材が帯びる磁力により前記第2の板材を引き寄せて前記第1の板材に突合わせることを特徴とする板材の突合わせ溶接方法。
【請求項2】
前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが異極となるように切り替えるときには、前記第2の電磁石の磁力に対して前記第1の電磁石の磁力を強くすることを特徴とする請求項1に記載の板材の突合わせ溶接方法。
【請求項3】
第1の板材の突合わせ端面と第2の板材の突合わせ端面とを突合わせて溶接する板材の突合わせ溶接方法であって、
前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが同極となるように、前記第1の板材及び前記第2の板材をそれぞれ第1の電磁石及び第2の電磁石で支持する第1の工程と、
前記第1の電磁石及び前記第2の電磁石を移動させて、前記第1の板材の突合わせ端面と前記第2の板材の突合わせ端面との間に、定位置にある基準部材を挟み込む第2の工程と、
前記基準部材を抜いた後、前記第2の電磁石を移動させて、前記第2の板材の突合わせ端面を前記第1の板材の突合わせ端面に近接させる第3の工程と、
前記第3の工程の後、前記第2の電磁石をオフにすることにより、又は、前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが異極となるように切り替えるとともに前記第2の電磁石の磁力に対して前記第1の電磁石の磁力を強くすることにより、前記第1の板材が帯びる磁力により前記第2の板材を引き寄せて、前記第2の板材の突合わせ端面を前記第1の板材の突合わせ端面に突合わせる第4の工程と、
前記第4の工程の後、前記第1の板材の突合わせ端面と前記第2の板材の突合わせ端面との突合わせ位置を溶接する第5の工程とを有することを特徴とする板材の突合わせ溶接方法。
【請求項4】
前記第4の工程では、前記第1の電磁石の磁力を前記第1の工程から前記3の工程での磁力より強くすることを特徴とする請求項3に記載の板材の突合わせ溶接方法。
【請求項5】
前記第5の工程では、溶接に際して、前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが異極となるように前記第1の電磁石の磁力を前記第2の電磁石の磁力と同じにすることを特徴とする請求項4に記載の板材の突合わせ溶接方法。
【請求項6】
第1の板材の突合わせ端面と第2の板材の突合わせ端面とを突合わせて溶接する板材の突合わせ溶接装置であって、
前記第1の板材の突合わせ端面と前記第2の板材の突合わせ端面とを突合わせた状態で溶接するための溶接手段と、
前記第1の板材及び前記第2の板材をそれぞれ支持する第1の電磁石及び第2の電磁石と、
前記第1の電磁石及び前記第2の電磁石を移動させる移動機構と、
定位置にあり、上下に移動可能な基準部材と、
前記第1の電磁石及び前記第2の電磁石、前記移動機構及び前記基準部材を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記第1の板材及び前記第2の板材をそれぞれ第1の電磁石及び第2の電磁石で支持するときに、前記第1の電磁石の前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の電磁石の前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とを同極とする第1の工程と、
前記移動機構により前記第1の電磁石及び前記第2の電磁石を移動させて、前記第1の板材の突合わせ端面と前記第2の板材の突合わせ端面との間に、前記基準部材を挟み込む第2の工程と、
前記基準部材を抜いた後、前記移動機構により前記第2の電磁石を移動させて、前記第2の板材の突合わせ端面を前記第1の板材の突合わせ端面に近接させる第3の工程と、
前記第3の工程の後、前記第2の電磁石をオフにすることにより、又は、前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが異極となるように切り替えるとともに前記第2の電磁石の磁力に対して前記第1の電磁石の磁力を強くすることにより、前記第1の板材が帯びる磁力により前記第2の板材を引き寄せて、前記第2の板材の突合わせ端面を前記第1の板材の突合わせ端面に突合わせる第4の工程と、
前記第4の工程の後、前記溶接手段により、前記第1の板材の突合わせ端面と前記第2の板材の突合わせ端面との突合わせ位置を溶接する第5の工程とを実行することを特徴とする板材の突合わせ溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の板材の突合わせ端面と第2の板材の突合わせ端面とを突合わせて溶接する板材の突合わせ溶接方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体パネル等には、板厚や材質の異なる鋼板を突合わせてレーザ溶接等により接合したテーラードブランク材と称される材料が用いられている。テーラードブランク材を車体のプレス成形部材に用いることで、例えば強度の必要な部分だけ板厚を増すことができるので、車体の軽量化等の製造コストの低減を図ることができる。
【0003】
テーラードブランク材を製造する際には、鋼板同士を突合わせて位置決め固定した後、溶接ヘッドを溶接線に沿って走行させて突合わせ溶接を行う。この場合に、溶接線の両側で各鋼板を上方からクランプで押圧して固定することが行われている。しかしながら、クランプで鋼板を上方から押圧する場合、クランプが溶接線の近傍にあるため、溶接ヘッドの走行に支障をきたす場合がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、溶接線を挟んでこの左右両側にそれぞれ電磁石を配設し、各電磁石で被溶接部材を下方からそれぞれ吸引して位置決めをするとともに、各電磁石の磁力を少なくとも2段階に調整できるようにした溶接装置及び溶接方法が開示されている。これにより、被溶接部材の上方にはハードクランプが存在せず、被溶接部材を所定位置に固定する電磁石が溶接ヘッドの移動の障害になることはないので、良好な位置決め及び固定を行って溶接作業を進行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−71592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1にあるように電磁石を利用する場合、溶接加工面上の空間を自由に使うことが可能となり、多品種溶接に対応可能となる。また、電磁石による吸引力及び吸引のタイミングを制御可能となり、複雑な形状のテーラードブランク材においてもフレキシブルな位置決め・固定が可能となる。
【0007】
しかしながら、溶接線を挟んで配設された電磁石による吸引力及び吸引のタイミングをうまく調整しないと、磁力を帯びた一方の鋼板に他方の鋼板が引き寄せられ、この他方の鋼板に押されるかたちで一方の鋼板がずれ動き、突合わせ位置がずれてしまう場合がある。
【0008】
図3A〜
図3Gには、2枚の鋼板を突合わせるときに突合わせ位置がずれてしまう状況の一例を示す。まず
図3Aに示すように、鋼板A及び鋼板Bの下面をそれぞれ第1の電磁石101及び第2の電磁石102で支持する。このとき、第1の電磁石101及び第2の電磁石102の磁力をいずれも「弱」にし、第1の電磁石101の突合わせ位置側をS極、第2の電磁石102の突合わせ位置側をN極とする。そして、第1の電磁石101及び第2の電磁石102を不図示のアクチュエータにより移動させて(図中の矢印X
1、X
2を参照)、鋼板Aの突合わせ端面と鋼板Bの突合わせ端面との間に、定位置にある基準プレート103を挟み込む。
【0009】
鋼板Aの突合わせ端面と鋼板Bの突合わせ端面との間に基準プレート103を挟み込んだ後、
図3Bに示すように、第1の電磁石101及び第2の電磁石102の移動を停止させる。そして、基準プレート103を下降させ、鋼板Aの突合わせ端面と鋼板Bの突合わせ端面との間から抜いて、鋼板Aの突合わせ端面の位置を溶接基準位置とする。
【0010】
次に、
図3Cに示すように、第1の電磁石101の磁力を「強」にするとともに、第2の電磁石102をオフにして、第2の電磁石102をアクチュエータにより移動させて(図中の矢印X
2を参照)、鋼板Bの突合わせ端面を鋼板Aの突合わせ端面に近づける。このとき、鋼板Aが磁力を帯びているため、鋼板Bは鋼板Aに引き寄せられるかたちで第2の電磁石102上をすべるように移動する(図中の矢印X
3を参照)。その結果、
図3Dに示すように、鋼板Bの突合わせ端面が鋼板Aの突合わせ端面に衝突する。この鋼板Bの衝突により、鋼板Bに押されるかたちで鋼板Aが第1の電磁石101上をすべるように移動する(図中の矢印X
4を参照)。そのため、鋼板A及び鋼板Bの突合わせ位置が溶接基準位置からずれてしまう(ずれ量δ)。なお、第1の電磁石101の磁力は「強」で、垂直方向の鋼板Aの固定力は十分に大きいが、水平方向に作用する外力の大きさによっては鋼板Aが水平方向に動かされる場合がある。
【0011】
そして、
図3Eに示すように、鋼板Aの突合わせ端面と鋼板Bの突合わせ端面とが接すると、鋼板B及び第2の電磁石102も磁力を帯び、鋼板A及び第1の電磁石101の磁力と均衡する。この状態で、第2の電磁石102をアクチュエータにより移動させていると(図中の矢印X
2を参照)、鋼板Bに押されるかたちで鋼板Aが第1の電磁石101上をすべるように移動する。そのため、
図3Fに示すように、鋼板A及び鋼板Bの突合わせ位置が溶接基準位置から更にずれてしまう(ずれ量Δ)。
【0012】
その後、
図3Gに示すように、第1の電磁石101及び第2の電磁石102の磁力をいずれも「強」にして鋼板A及び鋼板Bを強固に固定する。そして、溶接基準位置に沿って溶接ヘッド104を移動させながら鋼板Aと鋼板Bを溶接するのであるが、突合わせ位置が溶接基準位置からずれてしまっているため、溶接不良が発生しやすくなる。
【0013】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、電磁石を利用して第1の板材と第2の板材とを突合わせるときに、突合わせ位置がずれないようにして、溶接不良の発生を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の板材の突合わせ溶接方法は、第1の板材の突合わせ端面と第2の板材の突合わせ端面とを突合わせて溶接する板材の突合わせ溶接方法であって、前記第1の板材及び前記第2の板材をそれぞれ第1の電磁石及び第2の電磁石で支持し、前記第1の電磁石の前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の電磁石の前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とを同極とした状態で、前記第2の板材の突合わせ端面を前記第1の板材の突合わせ端面に近接させた後、
前記第2の電磁石をオフにすることにより、又は、前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが異極となるように切り替えることにより前記第1の板材が帯びる磁力により前記第2の板材を引き寄せて前記第1の板材に突合わせることを特徴とする。
この場合に、前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが異極となるように切り替えるときには、前記第2の電磁石の磁力に対して前記第1の電磁石の磁力を強くするようにしてもよい。
本発明の板材の突合わせ溶接方法は、第1の板材の突合わせ端面と第2の板材の突合わせ端面とを突合わせて溶接する板材の突合わせ溶接方法であって、前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが同極となるように、前記第1の板材及び前記第2の板材をそれぞれ第1の電磁石及び第2の電磁石で支持する第1の工程と、前記第1の電磁石及び前記第2の電磁石を移動させて、前記第1の板材の突合わせ端面と前記第2の板材の突合わせ端面との間に、定位置にある基準部材を挟み込む第2の工程と、前記基準部材を抜いた後、前記第2の電磁石を移動させて、前記第2の板材の突合わせ端面を前記第1の板材の突合わせ端面に近接させる第3の工程と、前記第3の工程の後、前記第2の電磁石をオフにすることにより、又は、前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが異極となるように切り替えるとともに前記第2の電磁石の磁力に対して前記第1の電磁石の磁力を強くすることにより、前記第1の板材が帯びる磁力により前記第2の板材を引き寄せて、前記第2の板材の突合わせ端面を前記第1の板材の突合わせ端面に突合わせる第4の工程と、前記第4の工程の後、前記第1の板材の突合わせ端面と前記第2の板材の突合わせ端面との突合わせ位置を溶接する第5の工程とを有することを特徴とする。この場合に、前記第4の工程では、前記第1の電磁石の磁力を前記第1の工程から前記3の工程での磁力より強くするようにしてもよい。また、前記第5の工程では、溶接に際して、前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが異極となるように前記第1の電磁石の磁力を前記第2の電磁石の磁力と同じにするようにしてもよい。
本発明の板材の突合わせ溶接装置は、第1の板材の突合わせ端面と第2の板材の突合わせ端面とを突合わせて溶接する板材の突合わせ溶接装置であって、前記第1の板材の突合わせ端面と前記第2の板材の突合わせ端面とを突合わせた状態で溶接するための溶接手段と、前記第1の板材及び前記第2の板材をそれぞれ支持する第1の電磁石及び第2の電磁石と、前記第1の電磁石及び前記第2の電磁石を移動させる移動機構と、定位置にあり、上下に移動可能な基準部材と、前記第1の電磁石及び前記第2の電磁石、前記移動機構及び前記基準部材を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記第1の板材及び前記第2の板材をそれぞれ第1の電磁石及び第2の電磁石で支持するときに、前記第1の電磁石の前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の電磁石の前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とを同極とする第1の工程と、前記移動機構により前記第1の電磁石及び前記第2の電磁石を移動させて、前記第1の板材の突合わせ端面と前記第2の板材の突合わせ端面との間に、前記基準部材を挟み込む第2の工程と、前記基準部材を抜いた後、前記移動機構により前記第2の電磁石を移動させて、前記第2の板材の突合わせ端面を前記第1の板材の突合わせ端面に近接させる第3の工程と、前記第3の工程の後、前記第2の電磁石をオフにすることにより、又は、前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが異極となるように切り替えるとともに前記第2の電磁石の磁力に対して前記第1の電磁石の磁力を強くすることにより、前記第1の板材が帯びる磁力により前記第2の板材を引き寄せて、前記第2の板材の突合わせ端面を前記第1の板材の突合わせ端面に突合わせる第4の工程と、前記第4の工程の後、前記溶接手段により、前記第1の板材の突合わせ端面と前記第2の板材の突合わせ端面との突合わせ位置を溶接する第5の工程とを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の電磁石の第1の板材の突合わせ位置側の磁極と第2の電磁石の第2の板材の突合わせ位置側の磁極とを同極とした状態で、第2の板材の突合わせ端面を第1の板材の突合わせ端面に近接させた後、
前記第2の電磁石をオフにすることにより、又は、前記第1の板材の突合わせ位置側の磁極と前記第2の板材の突合わせ位置側の磁極とが異極となるように切り替えることにより第1の板材が帯びる磁力により第2の板材を引き寄せて第1の板材に突合わせるようにしたので、突合わせ位置がずれないようにして、溶接不良の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】本実施形態に係る板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図1B】本実施形態に係る板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図1C】本実施形態に係る板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図1D】本実施形態に係る板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図1E】本実施形態に係る板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図1F】本実施形態に係る板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図1G】本実施形態に係る板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図2】本発明を適用可能な板材の突合わせ溶接装置の一例を示す斜視図である。
【
図3A】従来の板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図3B】従来の板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図3C】従来の板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図3D】従来の板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図3E】従来の板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図3F】従来の板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【
図3G】従来の板材の突合わせ溶接方法の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1A〜
図1Gには、本発明を適用した実施形態に係る板材の突合わせ溶接方法の工程を示す。
まず
図1Aに示すように、第1の板材である鋼板A及び第2の板材である鋼板Bの下面をそれぞれ第1の電磁石1及び第2の電磁石2で支持する。このとき、第1の電磁石1及び第2の電磁石2の磁力をいずれも「弱」にし、第1の電磁石1の突合わせ位置側をS極、第2の電磁石102の突合わせ位置側もS極とする。そして、第1の電磁石1及び第2の電磁石2を不図示のアクチュエータにより移動させて(図中の矢印X
1、X
2を参照)、鋼板Aの突合わせ端面と鋼板Bの突合わせ端面との間に、定位置にある基準プレート3を挟み込む。本実施形態では、電磁石1、2は供給電流を調整することにより、磁力を「弱」と「強」に切り替えることができる。磁力「弱」は、鋼板が水平方向の外力により水平方向に移動できる程度の強度である。このように第1の電磁石1及び第2の電磁石2の磁力をいずれも「弱」にして鋼板A、Bの下面を吸引することにより、鋼板A、Bに残着している油等によるすべり等を防止することができる。
【0018】
鋼板Aの突合わせ端面と鋼板Bの突合わせ端面との間に基準プレート3を挟み込んだ後、
図1Bに示すように、第1の電磁石1及び第2の電磁石2の移動を停止させる。そして、基準プレート3を下降させ、鋼板Aの突合わせ端面と鋼板Bの突合わせ端面との間から抜いて、鋼板Aの突合わせ端面の位置を溶接基準位置とする。
【0019】
次に、
図1Cに示すように、第1の電磁石1及び第2の電磁石2の磁力を「弱」、第1の電磁石1の突合わせ位置側及び第2の電磁石2の突合わせ位置側をS極に保ったまま、第2の電磁石102をアクチュエータにより移動させて(図中の矢印X
2を参照)、鋼板Bの突合わせ端面を鋼板Aの突合わせ端面に近接させる。近接とは、鋼板Bの突合わせ端面を鋼板Aの突合わせ端面に微小距離lだけ離間するよう近づけることを意味する。微小距離lは、例えば0mmより長く、1mm以下程度とするのが望ましい。このとき、鋼板A及び鋼板Bの突合わせ端面は同極(S極)の磁力を帯びているので、両者は反発し、微小距離lだけ離間した状態が保たれる。すなわち、鋼板Bが鋼板Aに引き寄せられることがなく、鋼板Bの突合わせ端面が鋼板Aの突合わせ端面に衝突するのを避けることができる。このように鋼板Bの突合わせ端面を鋼板Aの突合わせ端面に近接させた後、第2の電磁石102の移動を停止させる。
【0020】
次に、
図1Dに示すように、第1の電磁石1の磁力を「強」にするとともに、第2の電磁石2をオフにする。これにより、鋼板Bは鋼板Aに引き寄せられるかたちで第2の電磁石2上をすべるように移動する(図中の矢印X
3を参照)。その結果、
図1Eに示すように、鋼板Bの突合わせ端面が鋼板Aの突合わせ端面に当接する。この場合に、鋼板Bは微小距離lを移動するだけであるので、鋼板Bが当接しても、鋼板Aが第1の電磁石1上をすべるように移動することはない。なお、
図1Dでは、鋼板B側の電磁石の影響を完全に排除するために第2の電磁石102をオフにすると説明したが、鋼板Aの突合わせ位置側の磁極と鋼板Bの突合わせ位置側の磁極とが異極となるように、例えば鋼板Aの突合わせ位置側をS極のままとし鋼板Bの突合わせ位置側の磁極をN極となるように切り替え、第1の電磁石1の磁力を「強」に、第2の電磁石2の磁力を「弱」にしてもよい。
【0021】
そして、
図1Eに示すように、鋼板Aの突合わせ端面と鋼板Bの突合わせ端面とが接すると、鋼板B及び第2の電磁石2も磁力を帯び、鋼板A及び第1の電磁石1の磁力と均衡する。本実施形態では、この時点で第2の電磁石2をアクチュエータにより移動させていないので、鋼板A及び鋼板Bの突合わせ位置が溶接基準位置からずれることはない。
【0022】
その後、
図1Gに示すように、鋼板Aの突合わせ位置側の磁極と鋼板Bの突合わせ位置側の磁極とが異極となるように、例えば鋼板Aの突合わせ位置側をS極のままとし鋼板Bの突合わせ位置側の磁極をN極となるように切り替え、第1の電磁石1及び第2の電磁石2の磁力をいずれも「強」にして鋼板A及び鋼板Bを強固に固定する。そして、溶接基準位置に沿って溶接ヘッド4を移動させながら鋼板Aと鋼板Bを溶接する。本実施形態では、ここまで述べたように突合わせ位置が溶接基準位置からずれていないので、溶接不良が発生することもない。
【0023】
以上のように、鋼板A及び鋼板Bをそれぞれ第1の電磁石1及び第2の電磁石2で支持し、第1の電磁石1の鋼板Aの突合わせ位置側の磁極と第2の電磁石2の鋼板Bの突合わせ位置側の磁極とを同極とした状態で、鋼板Bの突合わせ端面を鋼板Aの突合わせ端面に近接させた後(
図1A〜
図1C)、鋼板Aが帯びる磁力により鋼板Bを引き寄せて鋼板Aに突合わせるようにしたので(
図1D、
図1E)、突合わせ位置がずれないようにして、溶接不良の発生を防止することができる。実際に位置決めを繰り返したところ、突合わせ位置のずれ精度が0.05mm以下となり、品質に優れた溶接が可能であった。
【0024】
図2は、本発明を適用可能な板材の突合わせ溶接装置の一例を示す斜視図である。なお、
図1A〜
図1Gで説明した構成要素には同一の符号を付して説明する。基準プレート3が定位置にあり、上下に移動可能となっている。そして、基準プレート3を挟んで一方の側にフレーム5が配置され、その上部に第1の電磁石1が設けられている。また、基準プレート3を挟んで他方の側にもフレーム6が配置され、その上部に第2の電磁石2が設けられている。第1の電磁石1と第2の電磁石2とは同じ高さ位置に配置されている。
【0025】
第1の電磁石1の後方には、第1の電磁石1と同じ高さ位置にテーブルとして例えばローラコンベヤ7が配置されている。鋼板Aはローラコンベヤ7により搬送され、その先端部分が第1の電磁石1上に載置される。同様に、第2の電磁石2の後方には、第2の電磁石2と同じ高さ位置にテーブルとして例えばローラコンベヤ8が配置されている。鋼板Bはローラコンベヤ8により搬送され、その先端部分が第2の電磁石2上に載置される。
【0026】
フレーム5の下方にはアクチュエータ9が搭載されており、このアクチュエータ9(例えばエアシリンダ)によりフレーム5と共に第1の電磁石1が前後(図中の矢印)に移動可能となっている。同様に、フレーム6の下方にはアクチュエータ10(例えばエアシリンダ)が搭載されており、このアクチュエータ10によりフレーム6と共に第2の電磁石2が前後(図中の矢印)に移動可能となっている。
【0027】
また、溶接装置は、第1の電磁石1及び第2の電磁石2の磁力の強さ及び磁極の切り替え、移動機構を構成するアクチュエータ9、10による第1の電磁石1及び第2の電磁石2の移動、及び基準プレート3の上昇・下降部材を制御する制御手段であるコントローラ11を備えている。このコントローラ11の制御下で、
図1A〜
図1Gで説明した板材の突合わせ溶接方法が実現される。
【0028】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1:第1の電磁石、2:第2の電磁石、3:基準プレート、4:溶接ヘッド、5、6:フレーム、7、8:ローラコンベヤ、9、10:アクチュエータ、11:コントローラ