(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747522
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】セグメント連結構造
(51)【国際特許分類】
E21D 11/04 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
E21D11/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-13115(P2011-13115)
(22)【出願日】2011年1月25日
(65)【公開番号】特開2012-154078(P2012-154078A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊明
(72)【発明者】
【氏名】木村 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 公宏
(72)【発明者】
【氏名】佐田 荘一
(72)【発明者】
【氏名】香川 敦
(72)【発明者】
【氏名】西森 昭博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 透
(72)【発明者】
【氏名】森 理人
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−041884(JP,A)
【文献】
特開平11−294088(JP,A)
【文献】
特開2004−108137(JP,A)
【文献】
特開平11−193693(JP,A)
【文献】
特開2001−090483(JP,A)
【文献】
米国特許第04830536(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定セグメントを、当該所定セグメントとトンネル軸方向に隣接する2つのセグメントに跨って主桁同士で当接させることで、前記2つのセグメントの各主桁端部に備わる凸部対を、前記所定セグメントの主桁に備わる挿通孔に挿入し、前記挿通孔を介し前記所定セグメント内に突出した前記凸部対を拘束部材により拘束してなるセグメント連結構造において、
前記拘束部材が、前記所定セグメントにおける前記挿通孔と連通する主桁裏側に配置され、前記挿通孔より小径かつ前記凸部対の挿入は許容するサイズ及び形状の開口と、前記凸部対の突出長のうち所定長分を収容する高さの内空とを備えるものである、
ことを特徴とするセグメント連結構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記セグメントの主桁は、挿通孔に加えて、両端において凸部を備えるものであり、
前記セグメントを、当該セグメントとトンネル軸方向に隣接する2つのセグメントに跨って主桁同士で当接させることで、前記2つのセグメントの各主桁端部に備わる凸部対を前記挿通孔に挿入して、前記挿通孔を介しセグメント内に突出した前記凸部対を前記拘束部材により拘束すると共に、前記セグメントの主桁両端に備わる各凸部を、前記2つのセグメントの各主桁に備わる挿通孔に挿入してなる、ことを特徴とするセグメント連結構造。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記拘束部材は、前記所定セグメントの主桁裏側と点溶接または接着材で固定されていることを特徴とするセグメント連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメント連結構造およびセグメント連結方法に関するものであり、具体的には、セグメントにおける特段の補強を必要とせずに、セグメント間の効率的かつ確実な連結を可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法を採用してトンネルを構築する場合には、切羽の掘進に応じて後方でセグメントを連結し、筒状の覆工体を形成していくことが一般的である。こうしたセグメント同士の連結作業を単純化し、作業の効率化を図るための種々の連結構造が提案されている。
【0003】
こうした技術の例としては、例えば、更なる施工の高速化、省力化を図ることができるセグメント及びそのセグメントを用いた覆工方法を提供するとの課題の下、掘削穴の軸線周りに周設されると共にその軸線方向に連設されて筒状壁体を形成するセグメントであって、前記セグメントの前記軸線方向の両端面には、凸部が設けられ、該セグメントの前記軸線方向の両端面において該軸線方向に隣接するセグメントの前記凸部に対応する位置には、該凸部が嵌合する凹部が形成されていることを特徴とするセグメント(特許文献1)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−41884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の連結構造においては、セグメントの主桁に凹部を設けることになるため、そのままでは主桁の強度は低下する。一方で、この凹部には、これに嵌合する凸部がトンネル周方向に互いに離れようとする力が直接働く。この力に対抗する為には、凹部が形成されている主桁自体の強度を大きなものとする必要がある。そのため従来の連結構造に採用される主桁は、肉厚で桁高も大きなものが必要であった。また、こうした強度面での懸念に対応するために、凹部周りの主桁に補強材を設置することとすれば、作業コストや部材コストもかさみ、連結構造の導入コスト増大を招く恐れもある。
【0006】
そこで本発明では、セグメントにおける特段の補強を必要とせずに、セグメント間の効率的かつ確実な連結を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のセグメント連結構造は、
所定セグメントを、当該所定セグメントとトンネル軸方向に隣接する2つのセグメントに跨って主桁同士で当接させることで、前記2つのセグメントの各主桁端部に備わる凸部対を、前記所定セグメントの主桁に備わる挿通孔に挿入し、前記挿通孔を介し前記所定セグメント内に突出した前記凸部対を拘束部材により拘束してなるセグメント連結構造において、前記拘束部材が、前記所定セグメントにおける前記挿通孔と連通する主桁裏側に配置され、前記挿通孔より小径かつ前記凸部対の挿入は許容するサイズ及び形状の開口と、前記凸部対の突出長のうち所定長分を収容する高さの内空とを備えるものであることを特徴とする。
【0008】
なお、前記セグメント連結構造において、前記セグメントの主桁は、挿通孔に加えて、両端において凸部を備えるものであり、前記セグメントを、当該セグメントとトンネル軸方向に隣接する2つのセグメントに跨って主桁同士で当接させることで、前記2つのセグメントの各主桁端部に備わる凸部対を前記挿通孔に挿入して、前記挿通孔を介しセグメント内に突出した前記凸部対を前記拘束部材により拘束すると共に、前記セグメントの主桁両端に備わる各凸部を、前記2つのセグメントの各主桁に備わる挿通孔に挿入してなる、としてもよい。
これによれば、セグメントリングを構成する各セグメントの全ては、対向するセグメントリングにおけるセグメントとの間において上述の拘束部材による凸部対の拘束による連結構造を互いに構成することが可能となる。
【0009】
また、前記セグメント連結構造において、前記拘束部材は、前記所定セグメントの主桁裏側と点溶接または接着材で固定されているとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、セグメントにおける特段の補強を必要とせずに、セグメント間の効率的かつ確実な連結が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態におけるセグメント連結構造を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態における連結動作を示す図である。
【
図3】本実施形態における他の拘束部材例を示す図である。
【
図4】本実施形態における他のセグメント連結構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態におけるセグメント連結構造1を示す図である。本実施形態におけるセグメント10は、シールド工法におけるトンネルの覆工体として用いられる。シールド工法において、シールド掘進機内では、エレクタ等によりこのセグメント10が逐次連結され、筒状の覆工体を形成するのが一般的である。そこで互いに連結されるセグメント10の連結構造として、本実施形態のセグメント連結構造1を採用する。
【0017】
本実施形態のセグメント連結構造1を構成するセグメント10は、
図1に示すように、主桁11の例えば、長手方向中央に設けられた挿通孔12と、前記挿通孔12に挿入された凸部対22(詳細は後述)の離間を拘束する拘束部材13とを備えている。本実施形態では、セグメント10として、鋼殻4にコンクリート5を充填して一体化させた合成セグメントを例示している。但し、本発明の適用対象となるセグメントはこれに限定されず、例えば鋼製セグメントであってもよい。また、主桁11における挿通孔12の配置位置は、長手方向中央だけに限定されず、挿入される凸部対22の位置等に応じて端部寄りであってもよい。
【0018】
前記セグメント10の主桁11の両端には凸部14が備わっている。これは挿通孔12に挿入される凸部対22を構成するものとなる。従って、挿通孔12に挿入される凸部対22は、前記セグメント10に対しトンネル軸方向に隣接する前記2つのセグメント(以後、セグメント対21と称する)の各凸部14からなる。セグメントリング20をなす各セグメント30は、例えば切羽側の主桁11において、両端に凸部14を突出させており、セグメント同士が連結する部位では、各セグメント端部の凸部14が集まって対をなす構造となる。
図1の例では、各セグメント30の主桁11の端部に2つの凸部14が備わり、2セットの凸部対22が形成されている。また、各セグメント10は、当該セグメント10とトンネル軸方向に隣接するセグメントリング20における前記2つのセグメントを跨るよう、千鳥状に配置されることになる。
【0019】
なお
図1の例では、前記主桁11においていわゆるリング間継手40も設けている。リング間継手40としては、施工が容易なピン挿入式継手、例えばプッシュグリップ式継手などが採用できる。なお、プッシュグリップ式継手は、楔を応用したピン方式の継手で、挿入側のピンボルトを受入側の孔部に挿入して締結する継手であり、ピンボルトと受入れ孔部にはそれぞれ噛み合い可能な鋸歯状の突部と凹部が連続して形成されている。
【0020】
また、セグメント10、30のトンネル周方向の端面15においては、セグメントリング20の形成時にセグメント同士をつなげる金具50が備わっている。この金具50としては、セグメント同士の前記端面15すなわち突き合わせ接合面の対向位置に埋め込まれたC型の連結金具と、対向する両セグメントのC型連結金具の開口部に両側端部のフランジが係合するI型の連結金具とから構成される。C型連結金具の開口部にI型連結金具のフランジを係合させて嵌め込むことによって、セグメント同士の突き合わせ端面を相互に接合させて連結することとなる。なお、こうした金具50は必ずしも必要ではなく、組み立て精度を向上させるため補助的に使用するものとなる。
【0021】
図2は本実施形態における連結動作を示す図である。セグメント連結構造を構成する場合、上記構造を備える、例えば切羽側のセグメント10を、これに対向する坑口側にあって、組み立て済みのセグメントリング20における所定のセグメント対21に対して、主桁同士で当接させることで、セグメント対21(2つのセグメント30から構成されている)の各主桁端部18に備わる凸部対22を、前記セグメント10の挿通孔12に挿入させることになる。
【0022】
この挿入動作により、各セグメント30の凸部14からなる凸部対22は、セグメント10の挿通孔12を貫いて、セグメント10の内部に達する。この時、凸部対22は、挿通孔12を貫くと共に、拘束部材13の開口16にも到達している。当然、凸部対22をなす各凸部14は、主桁11の肉厚と拘束部材13の高さを考慮した突出長を有しており、この突出長のうち所定長分は拘束部材13の開口内に到達するよう設計されている。また、拘束部材13の開口16は、挿通孔12より小径だが凸部対22の挿入は許容するサイズ、形状の開口となっている。
【0023】
拘束部材13の開口16に到達した凸部対22は、拘束部材13の開口範囲でしか挙動出来ず、しかも、凸部対22をなす各凸部14が互いに離間する方向、すなわち、各凸部14が主桁中央付近から端部に向かう方向への挙動は、拘束部材13の開口終端17で抑止される。つまり、凸部14の挙動は拘束部材13により拘束される。
【0024】
また、上記の動作に伴い、凸部対22の挿通孔12への挿入と同様に、セグメント10の主桁両端18に備わる各凸部14は、前記セグメント対21の各主桁中央33に備わる挿通孔12に挿入されることになる。また、このセグメント10とトンネル周方向の端面15で他セグメントを突き合わせ接合すれば、この他セグメントの主桁端に備わる凸部も、上記同様、前記セグメント対21の主桁中央33に備わる挿通孔12に挿入されることになり、セグメント10と他セグメントとの連結構造が形成される。
【0025】
こうした本実施形態によれば、セグメント主桁11の挿通孔12に挿入された、対向するセグメント対21すなわち連結対象のセグメントリング20(をなす一対のセグメント)から突出する凸部対22が、この凸部対22をなす各凸部14の離間を許容しない形で前記拘束部材13により拘束される。つまり、凸部対22の拘束がなされることで、凸部対22をなす各凸部14を有するセグメント対21の拘束もなされることになる。この場合、セグメント対21が離間しようとする際の力は、前記挿通孔12すなわちセグメント主桁11が負担することなく、前記拘束部材13が負担する。従って、セグメント連結構造1を構成する為に、従来技術の如くセグメント主桁11の肉厚や桁高を大きくする必要はない。従って、セグメントにおける特段の補強を必要とせずに、セグメント間の効率的かつ確実な連結が可能となる。また、セグメントリングを構成する各セグメント10の全ては、対向するセグメントリング20におけるセグメント30との間において上述の拘束部材13による凸部対21の拘束による連結構造を互いに構成することが可能となる。
【0026】
図3は本実施形態における他の拘束部材例を示す図である。
図1、2で例示した拘束部材13は、挿通孔12より小径だが凸部対22の挿入は許容する開口16を2つ備えた部材であった。だが拘束部材13としては、こうした形状に限定されず、例えば、
図3に示すように、開口16が1つのみで環状のもの、或いは、フック材で構成され半環状のもの、などが採用できる。勿論、凸部対22の外周を押さえて、凸部同士の離間を拘束する構造であればその他の構造を備える拘束部材を採用することもできる。
【0027】
また、拘束部材13を構成する部材は、凸部対22をなす各凸部14が互いに離間しようとする方向の力、すなわちセグメントリング20においてセグメント対21をなすセグメント同士が離間しようとする力に対抗しうる適宜な強度を備えたものであればよい。例えば、鋼製などの金属製、樹脂製、炭素繊維製、であることが考えられる。
【0028】
また、拘束部材13をセグメント内に配置する場合、例えば、拘束部材13を主桁11に点溶接する手法の他、接着剤により拘束部材13と主桁11とを接着固定する手法なども採用できる。或いは、セグメント形成用のコンクリート打設にあわせて、拘束部材13を、所定治具などを介してセグメント内の挿通孔周囲に係止しておき、コンクリート中での埋め込み固定を図る形態なども採用できる。
【0029】
なお、シールドジャッキ(図示せず)と凸部14との無用な接触を回避し作業性を高める意味で、
図4に示すように、例えばセグメント10における切羽側の主桁11aには凸部14を設けないとしてもよい。この場合、前記主桁11aには、主桁両端18および主桁中央33の挿通孔12と、主桁中央33の挿通孔12に開口16が連通する拘束部材13とが備わっている。一方、坑口側の主桁11bには、主桁両端18の凸部14および主桁中央33の凸部対26が備わっている。
【0030】
こうした構成において、例えば切羽側のセグメント10を、このセグメントとトンネル軸方向に隣接し坑口側にある所定セグメント60に対して、主桁同士で当接させることで、セグメント10の主桁端部18に備わる凸部14を、前記セグメント60の主桁中央33における挿通孔12に挿入させることになる。また、前記セグメント10とトンネル周方向に連結するセグメント70も同様に、前記セグメント10と隣接する主桁端部18に備わる凸部14を、前記セグメント60の主桁中央33における挿通孔12に挿入させる。セグメント10およびセグメント70の前記各凸部14をもって凸部対22とみなすことができる。前記挿入動作により、
図1に基づく上記実施形態と同様に、凸部対22はセグメント60の拘束部材13の開口範囲でしか挙動出来ず、凸部対22をなす各凸部14が互いに離間する方向、すなわち、各凸部14を有するセグメント10およびセグメント70が互いに離間しようとする方向への挙動が抑止される。
【0031】
また、上記の動作に伴い、前記凸部対22の挿通孔12への挿入と同様に、セグメント10やセグメント70の主桁中央33に備わる凸部対26をなす一方の凸部14は、前記セグメント60の主桁両端18に備わる挿通孔12に挿入されることになる。前記凸部対26をなす他方の凸部14は、前記セグメント60とトンネル周方向に連結されている他セグメント80の主桁端に備わる挿通孔12に挿入されることになる。これにより、前記凸部対26が、セグメント60および他セグメント80を挿通孔12を介して拘束し、セグメント60とセグメント80との離間を抑止することになる。
【0032】
以上、本実施形態によれば、セグメントにおける特段の補強を必要とせずに、セグメント間の効率的かつ確実な連結が可能となる。
【0033】
本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 連結構造
4 鋼殻
5 コンクリート
10、60 セグメント
11 主桁
11a 切羽側の主桁
11b 坑口側の主桁
12 挿通孔
13 拘束部材
14 凸部
15 セグメントのトンネル周方向の端面
16 拘束部材の開口
17 拘束部材の開口終端
18 セグメントの主桁両端
20 セグメントリング
21 セグメント対
22、26 凸部対
30 対向するセグメント
33 セグメント対の各主桁中央
40 リング間継手
50 金具
80 他セグメント