(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような、従来より実施されている精製工程を有する無水マレイン酸の製造方法によって、純度の高い無水マレイン酸を得ることができるが、蒸留塔を2塔使用することから設備コストがかかり、なおかつ熱安定性が低下するという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、より簡便な精製工程によって、効率よく高い純度の無水マレイン酸を得ることができる工業的に有利な無水マレイン酸の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、反応ガスを有機溶媒に吸収させた後、無水マレイン酸を含有する有機溶媒を、塔頂に分縮器を有する蒸留塔へ供給して、塔頂から抜き出される一部の混合ガスを分縮し、且つ側流から粗無水マレイン酸を抜き出し、その粗無水マレイン酸を、更に蒸留塔に供給して、側流から精製された無水マレイン酸を抜き出すことにより、精製工程で使用する蒸留塔を1塔にすることができ、且つ、従来と同等以上の高い純度の無水マレイン酸を得ることができることを見出した。
【0007】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下の[1]〜[4]を要旨とする。
[1]以下の(A)〜(D)の工程を含むことを特徴とする無水マレイン酸の製造方法。
工程(A):炭化水素と酸素を気相で触媒の存在下に反応させて無水マレイン酸を含む反応ガスを生成する工程
工程(B):工程(A)から得られる反応ガスを有機溶媒と接触させて無水マレイン酸を有機溶媒中に捕集する工程
工程(C):工程(B)から得られる前記無水マレイン酸および
アクリル酸を含有する有機溶媒を蒸留塔に導入し、蒸留分離によって、塔頂から抜き出される混合ガスを分縮し
混合ガス中のアクリル酸を一部ガスとして系外へパージし、且つ側流より粗無水マレイン酸を含む液を抜き出す工程
工程(D):工程(C)から得られる前記粗無水マレイン酸を含む液を蒸留塔に導入し、蒸留塔の側流から無水マレイン酸を得る工程
[2]
以下の(A)〜(D)の工程を含むことを特徴とする無水マレイン酸の製造方法。
工程(A):炭化水素と酸素を気相で触媒の存在下に反応させて無水マレイン酸を含む反応ガスを生成する工程
工程(B):工程(A)から得られる反応ガスを有機溶媒と接触させて無水マレイン酸を有機溶媒中に捕集する工程
工程(C):工程(B)から得られる前記無水マレイン酸を含有する有機溶媒を蒸留塔に導入し、蒸留分離によって、塔頂から抜き出される混合ガスを分縮し、且つ側流より粗無水マレイン酸を含む液を抜き出す工程
工程(D):工程(C)から得られる前記粗無水マレイン酸を含む液を蒸留塔に導入し、塔頂圧力を10〜30mmHgとし、蒸留塔の側流から無水マレイン酸を得る工程
[
3] 以下の工程(E)を更に有することを特徴とする[1]
又は[2]に記載の無水マレイン酸の製造方法。
【0008】
工程(E):工程(D)から得られる無水マレイン酸を、蒸留塔に供給し、該無水マレイン酸の供給箇所よりも高い位置の側流から精製された無水マレイン酸を抜き出す工程
[
4] 前記触媒が、リン−バナジウム系複合酸化物であることを特徴とする[1]
〜[3]のいずれかに記載の無水マレイン酸の製造方法。
[
5] 前記炭化水素が炭素原子数4以上の鎖状炭化水素であることを特徴とする[1]
〜[
4]のいずれ
かに記載の無水マレイン酸の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、純度が高く、且つ色調に優れた高い無水マレイン酸を効率よく得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に無水マレイン酸の製造方法の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されない。
(工程A)
本発明の工程Aは、炭化水素と酸素を気相で触媒の存在下に反応させて無水マレイン酸を含む反応ガスを生成させる工程である。
【0012】
ここで使用される触媒は、バナジウム及びリンを主要構成元素とする複合酸化物(リン−バナジウム系複合酸化物)を活性成分とするものであり、中でもピロリン酸ジバナジル((VO)
2P
2O
7)を活性成分とするものが優れた性能を発揮することが知られており、
特に好ましい。これらの触媒自体は、公知であって、通常用いられるものであり、その製造方法等は、例えば、Chem.Rev.88,ぺージ55〜80(1988)、特開昭59−95933号、米国特許第4472527号及び米国特許第4520127号等に
開示されている。
【0013】
原料の炭化水素としては、通常、ブタン(n−ブタン)、ブテン類(1−ブテン、2−ブテン)、ブタジエン(1,3−ブタジエン)等の炭素数4の鎖状炭化水素が挙げられ、それらの中で、ブタンを用いるのが好ましい。酸素ガスとしては、通常空気が使用されるが、不活性ガスで希釈された空気、酸素を加えて富化された空気等を使用することもできる。
【0014】
反応は、流動床反応器又は固定床反応器で行われ、原料の炭化水素と酸素含有ガス、通常は空気、とを原料の炭化水素濃度が1.5〜10%程度となるように反応器に供給し、300〜600℃で反応させる。かかる流動床又は固定床反応器による反応方式は、それ自体公知であり、例えば、特公昭49−29168号、特表平1−503211号、特開平2−19370号、特開平8−245610号及びKirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, Fourth Edition, Volume 15, P.905-914 John Wiley & Sons, Inc.等
に詳細に記載されている。
【0015】
反応器から流出する反応ガス中には目的生成物の無水マレイン酸の他に、未反応の酸素及び原料炭化水素、並びに副生する一酸化炭素、二酸化炭素、水その他の反応生成物が含まれている。このように生成した反応ガスは、工程(B)に導入され、工程(B)において、有機溶媒と接触させて反応ガス中の無水マレイン酸を有機溶媒中に捕集することができる。
【0016】
(工程B)
本発明における工程Bは、工程Aで得られる生成ガスを有機溶媒と接触させて無水マレイン酸を有機溶媒中に捕集する工程である。
反応ガスと接触させる有機溶媒としては、無水マレイン酸を溶解することができ、高沸点であり、且つアルカリ水溶液に溶解しないものであれば特に限定されないが、通常はフタル酸又はその水添物のジアルキルエステル、例えばフタル酸、ジヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などの、ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジイソプロピルエステル、ジブチルエステル、ジイソブチルエステルなど、炭素数1〜4のジアルキルエステルが用いられる。これらのなかではジブチルフタレート、フタル酸ジブチルが好ましい。また、ジメチルベンゾフェノン、ジクロロジフェニルオキサイドなども用いられる。接触方法としては、吸収塔を用いて行われる方法が一般的であり、反応ガスと有機溶媒とを向流接触させる方法が好ましく用いられる。このときの、接触時の圧力としては、特に限定されないが、通常は0〜0.1MPaGである。この向流接触によれば、塔頂より有機溶媒に溶解できなかった生成ガスが排出され、塔底より無水マレイン酸が捕集された有機溶媒を得ることができる。
【0017】
(工程C)
本発明の工程Cは、工程Bで得られる無水マレイン酸を含有する有機溶媒を蒸留塔に導入し、蒸留分離によって、該蒸留塔の塔頂から抜き出される混合ガスを分縮し、且つ側流から粗無水マレイン酸を含む液を抜き出す工程である。なお、工程Cにおける側流とは塔頂や塔底抜き出しに加えて、塔頂や塔底以外の塔の横の位置から抜き出すことを指す。本発明の工程(C)において、工程Bで得られる無水マレイン酸を含有する有機溶媒中の無水マレイン酸よりも沸点が低い化合物(以下、軽沸点化合物と呼ぶことがある。)を蒸留塔により除去することができる。軽沸点化合物としては、例えば、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。工程Bで得られる無水マレイン酸を含有する有機溶媒中の軽沸点化合物を除去するには、蒸留塔の側流から粗無水マレイン酸を含む液を抜き出せばよい。また、塔頂から抜き出す混合ガスを分縮し、該混合ガス中に含まれる軽沸点化合物の一部を系外にパージして、一部を凝縮して塔頂に循環することで、蒸留塔内の軽沸点化合
物濃度を低減できる。なお、分縮の条件としては、圧力を1〜100mmHgとすることが好ましい。より好ましくは圧力が3〜50mmHgであり、特に好ましくは3〜20mmHgの範囲である。この塔頂圧力が低すぎると、圧力を保つために多大なコストが必要となる。また高すぎると蒸留塔の塔底の温度が高くなり、蒸気コストの増大となってしまう。温度は、通常53〜120℃であり、好ましくは60〜100℃、より好ましくは60〜90℃である。塔頂温度が低すぎると冷却器など特殊な装置が必要となりコスト悪化となる。
【0018】
また、塔底からは粗無水マレイン酸と無水マレイン酸を分離除去された有機溶媒が抜き出される。この塔底から得られる有機溶媒は、再度工程Bに循環して無水マレイン酸を含む生成ガスと接触させる有機溶媒として使用することができる。
本発明の工程Cの蒸留に用いる蒸留塔の蒸留時の圧力は任意に設定することができるが、塔底温度を低くするために、塔頂圧力を1〜200mmHgとすることが好ましい。より好ましくは塔頂圧力が5〜50mmHgであり、特に好ましくは10〜30mmHgの範囲である。この塔頂圧力が低すぎると、圧力を保つために多大なコストが必要となり、また高すぎると蒸留塔の塔底の温度が高くなり、蒸気コストの増大となってしまう。塔頂温度は、特に限定されないが、通常53〜130℃であり、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜110℃である。温度が高すぎると、塔底温度もより高い温度となるために、蒸気コストの増大となってしまう。
【0019】
還流比は側流抜き出し流量に対して0.1〜10.0で差し支えなく、好ましくは0.5〜2.0である。還流比が小さすぎると、分離能の悪化を引き起こし、還流比が高すぎると、必要な熱量が増大し、コスト悪化原因となる。
本発明の工程Cは、側流から抜き出される粗無水マレイン酸を含む液には、無水マレイン酸が、通常、99.00〜99.97wt%、好ましくは、99.50〜99.95wt%の割合で含有されている。この粗無水マレイン酸の純度は、上記の蒸留条件等によって変動しうる。
【0020】
本発明の工程A〜工程Cの一連のプロセスは、上述の各工程を有するものであれば、特に制限されないが、その1例として模式的に
図1に基づいて説明する。
触媒を内部に保有する反応器3へ原料ガス供給ライン1から炭化水素と酸素含有ガス供給ライン2から酸素含有ガスが導入される。反応で生成した生成ガス4は無水マレイン酸を吸収させる吸収塔5に導かれる。吸収塔には有機溶媒6を導入し、吸収塔5内で生成ガスと有機溶媒を接触させ、無水マレイン酸を吸収した有機溶媒7は、有機溶媒と無水マレイン酸を分離する蒸留塔(溶媒分離塔)9に導かれる。蒸留塔(溶媒分離塔)9では、有機溶媒と無水マレイン酸をそれぞれの沸点の差を利用して蒸留分離する。蒸留塔(溶媒分離塔)9の側流から粗無水マレイン酸11が抜き出され、塔底から大部分の無水マレイン酸を分離除去した残りの有機溶媒10が抜き出される。大部分の無水マレイン酸を除去した残りの有機溶媒10は、吸収塔5に循環され有機溶媒として再使用される。また、蒸留塔(溶媒分離塔)9の塔頂からは軽沸点化合物を含む混合ガス12が抜き出されるが、この混合ガス12を分縮器14に導入して、軽沸点化合物の一部をストリッパー16に導入してライン13からパージして、軽沸点化合物の一部をドラム15に導入して蒸留塔(溶媒分離塔)9の塔頂に還流する。
【0021】
(工程D)
工程Dでは、工程Cで得られる粗無水マレイン酸を含む液を蒸留塔に導入して、側流から無水マレイン酸を得ることができる。
本発明の工程Dにおいて、工程Cで得られる粗無水マレイン酸を含有する液中の無水マレイン酸よりも沸点が高い化合物(以下、高沸点化合物と呼ぶことがある)を蒸留塔に塔底から抜き出し、側流から粗無水マレイン酸よりも純度の高い無水マレイン酸を抜き出す
ことができる。高沸点化合物としては、例えば、工程Bで用いられる有機溶媒の他、フタル酸等が挙げられる。また、塔頂からは、工程Cで抜き出すことが出来なかった軽沸点化合物を抜き出すことができる。
【0022】
本発明の工程Dの蒸留に用いる蒸留塔の蒸留時の圧力は任意に設定することができるが、塔底温度を低くするために、塔頂圧力を1〜200mmHgとすることが好ましい。より好ましくは塔頂圧力が5〜50mmHgであり、特に好ましくは10〜30mmHgの範囲である。この塔頂圧力が低すぎると、圧力を保つために多大なコストが必要となり、また高すぎると蒸留塔の塔底の温度が高くなり、蒸気コストの増大となってしまう。塔頂温度は特に限定されないが、通常53〜130℃であり、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜110℃である。塔頂温度が低すぎると冷却器など特殊な装置が必要となりコスト悪化となる。また温度が高すぎると、塔底温度もより高い温度となるために、蒸気コストの増大となってしまう。
【0023】
還流比は側流抜き出し流量に対して0.1〜10.0で差し支えないが、好ましくは0.5〜2.0である。還流比が小さすぎると、分離能の悪化を引き起こし、還流比が高すぎると、必要な熱量が増大し、コスト悪化原因となる。工程Cで得られる無水マレイン酸を工程Dに供給する際の、工程Dの蒸留塔の供給箇所としては、通常、塔底から1〜80段高い位置に供給されるが、好ましくは、塔底から1〜50段高い位置である。また、精製された無水マレイン酸は、工程Cから得られる無水マレイン酸を蒸留塔へ供給する箇所よりも、1〜70段低い箇所、好ましくは、5〜40段低い箇所から抜き出される。
【0024】
本発明の工程Dは、側流から抜き出される無水マレイン酸は、通常、純度は99.50〜99.90wt%である無水マレイン酸となっている。この純度より高い純度の無水マレイン酸を得るためには、工程Dで側流から抜き出される無水マレイン酸を更に、工程Eに供給して精製することが好ましい。
本発明の工程A〜工程Dの一連のプロセスは、上述の各工程を有するものであれば、特に制限されないが、その1例として模式的に
図2に基づいて説明する。なお、
図2は
図1の工程A〜工程Cのプロセスに更に工程Dに該当する蒸留塔18を設置したものである。蒸留塔(溶媒分離塔)9の側流より得られる粗無水マレイン酸を蒸留塔18に供給して、塔底から高沸点化合物を分離し、側流21より製品無水マレイン酸を得ることができる。
【0025】
(工程E)
工程Eでは、工程Dで得られる無水マレイン酸を、蒸留塔に供給し、該無水マレイン酸の供給箇所よりも高い位置の側流から精製された無水マレイン酸を抜き出す工程である。工程Eでは、工程Dで除去できなかった高沸点化合物の一部を塔底より抜き出すことで除去することができる。
【0026】
工程Dで得られる無水マレイン酸を工程Eに供給する際の、工程Eの蒸留塔の供給箇所としては、通常、塔底から1〜30段高い位置に供給されるが、好ましくは、塔底から1〜10段高い位置である。また、精製された無水マレイン酸は、工程Dから得られる無水マレイン酸を蒸留塔へ供給する箇所よりも、1〜50段高い箇所、好ましくは、5〜20段高い箇所から抜き出される。
【0027】
なお、蒸留に用いる蒸留塔の蒸留時の圧力は任意に設定することができるが、塔底温度を低くするために、塔頂圧力を1〜200mmHgとすることが好ましい。より好ましくは塔頂圧力が5〜50mmHgであり、特に好ましくは10〜30mmHgの範囲である。この塔頂圧力が低すぎると、圧力を保つために多大なコストが必要となり、また高すぎると蒸留塔の塔底の温度が高くなり、蒸気コストの増大となってしまう。塔頂温度は通常55〜130℃であり、好ましくは60〜120℃、より好ましくは60〜80℃である
。塔頂温度が低すぎると冷却器など特殊な装置が必要となりコスト悪化となる。また温度が高すぎると、塔底温度もより高い温度となるために、蒸気コストの増大となってしまう。
【0028】
還流比は側流抜き出し流量に対して0.1〜10.0で差し支えなく、好ましくは0.5〜2.0である。還流比が小さすぎると、分離能の悪化を引き起こし、還流比が高すぎると、必要な熱量が増大し、コスト悪化原因となる。
本発明の工程Eは、側流から抜き出される無水マレイン酸は、通常、純度は99.90%〜100.00%である無水マレイン酸となっている。
【0029】
本発明の工程A〜工程Eの一連のプロセスとしては、上述の各工程を有するものであれば、特に制限されないが、その1例として模式的に
図3に基づいて説明する。なお、
図3は
図2の工程A〜工程Dのプロセスに更に工程Eに該当する蒸留塔22を設置したものである。蒸留塔(溶媒分離塔)18の側流より得られる無水マレイン酸を蒸留塔22に供給して、塔底から高沸点化合物を分離し、側流23より精製された純度の高い無水マレイン酸を得ることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[製造例1:複合酸化物の調製]
特開昭59―95933号公報の実施例2に記載の方法と同様にして、バナジウム−リン系複合酸化物を含有する流動床触媒を製造した。
[実施例1]
図1に示すプロセスを用いて、無水マレイン酸を製造した。製造例1で製造した流動床触媒を充填した反応器3に、n−ブタンを含む原料ガスと酸素含有ガスとして空気を、それぞれ原料ガス供給ライン1と酸素含有ガス供給ライン2から供給しブタンの気相酸化反応を行い、無水マレイン酸を含む表1に示す組成の生成ガス4を得た。
【0031】
この生成ガスを吸収塔5に供給した。このとき、有機溶媒8としてフタル酸ジブチルを用い、生成ガスと向流接触させて生成ガス中の無水マレイン酸等を吸収させた。吸収塔5の塔底から無水マレイン酸等を吸収したフタル酸ジブチルを抜き出し、蒸留塔(溶媒分離塔)9に供給した。蒸留塔(溶媒分離塔)9は塔内に充填物を有する蒸留塔であり、この蒸留塔(溶媒分離塔)9は、塔頂から抜き出される混合ガス12を分縮できる分縮器14を有している。この蒸留塔(溶媒分離塔)9の吸収塔5の塔底から抜き出された無水マレイン酸等を吸収したフタル酸ジブチルを供給し、蒸留分離を行い、塔頂から混合ガス(ガス中のアクリル酸、無水マレイン酸、酢酸、水)を抜き出し、分縮器により混合ガス中のアクリル酸を一部ガスとして系外へパージし、残りを凝縮させ蒸留塔の塔頂に還流させた。このとき、側流として、蒸留塔(溶媒分離塔)9の側流11から粗無水マレイン酸を含有する液を抜き出した。また、塔底から抜き出された有機溶媒フタル酸ジブチル(10)は、吸収塔5に循環供給し、生成ガスと接触させ、生成ガス中の無水マレイン酸等の吸収に再使用した。
【0032】
このようにして、蒸留塔(溶媒分離塔)9の側流11から得られた粗無水マレイン酸を含有する液を、オルダーショウ型連続蒸留塔を用いて蒸留し、無水マレイン酸の精製を行った。オルダーショウ型連続蒸留塔は、内径32mm、段間隔30mmの全18段で、塔頂から3段目に原料供給口を備えている。オルダーショウ型連続蒸留塔のリボイラーは自然循環式で、オーバーフローにより塔底からの缶出液が抜き出し可能な構造である。また、塔底から5段目の箇所に側流抜出口を有している。オルダーショウ型連続蒸留塔の原料供給
口か
ら蒸留塔(溶媒分離塔)9から得られた前記の粗無水マレイン酸を含有する液を134g/Hrで供給し、操作圧力を絶対圧で2.7kPa、塔底温度130℃、塔頂温度90℃で蒸留を行った。塔底の缶出液を溜め込み、塔頂からの留出量7g/Hr(原料供給量の5%)、及び還流量を127g/Hrとして連続的に蒸留した。側流からは精製された無水マレイン酸を含むガスを127g/Hrで抜き出した。蒸留開始から6時間経過後に定常状態となり、サンプリングを行った。以後、2時間ごとにサンプリングを実施して側流から抜き出されたガスのHST(60)、及び留出液をガスクロマトグラフィーによる分析を行った。結果を表−2に示す。なお、本実施例で使用したガスクロマトグラフィーはSciences社製 型番:TC-FFAPである。なお、表-2中の“HST 60”は、無水マレイン酸を183±1℃で加温し、融解後60分間加温した後のハーゼン色数(APHA)を測定したもので、AA、AcOH、MAAは、それぞれアクリル酸、酢酸、メタクリル酸のことを指す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表−2から、無水マレイン酸を連続蒸留して精製無水マレイン酸を得る際に、側流から連続的に抜き出すことで色調が優れた無水マレイン酸を得ることができることがわかる。