(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747577
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】コグニティブ無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/14 20090101AFI20150625BHJP
H04W 72/08 20090101ALI20150625BHJP
【FI】
H04W16/14
H04W72/08 110
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-55815(P2011-55815)
(22)【出願日】2011年3月14日
(65)【公開番号】特開2012-191592(P2012-191592A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】周 明拓
(72)【発明者】
【氏名】原田 博司
【審査官】
桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/053553(WO,A1)
【文献】
Khaled Letaief; Wei Zhang,Cooperative Communicationsfor Cognitive Radio Networks,Proceedings of the IEEE (Volume:97 , Issue: 5 ) ,IEEE,2009年 4月28日,Page(s): 878 - 893
【文献】
Peh, E.; Ying-Chang Liang,Optimization for cooperative sensing in cognitive radio networks,Wireless Communications and Networking Conference, 2007.WCNC 2007. IEEE ,IEEE,2007年 3月11日,Page(s): 27 - 32
【文献】
Wei Zhang; Letaief, K.,Optimization of cooperative spectrum sensing with energy detection in cognitive radio networks,Wireless Communications, IEEE Transactions on (Volume:8 , Issue: 12 ) ,IEEE,2009年12月11日,Page(s): 5761 - 5766
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム全体を制御する制御局と、
優先的に無線通信を行うプライマリシステムと、
上記プライマリシステムにおける無線通信を妨害しないように自らの無線通信を行うために、プライマリシステムの存在の有無を検出して、その検出結果を上記制御局に通知する複数のセカンダリシステムとを備え、
上記制御局は、上記プライマリシステムの存在を
周波数を介して検出する上で互いに協調して
周波数検出不能なセカンダリシステムを随時特定して、
特定した上記セカンダリシステムからの上記検出結果の通知を受け付けないこととし、
その際に、上記互いに協調して周波数検出可能なセカンダリシステムの数の上限を決定する上で、当該周波数検出を行う上でのエラー可能性εdを下記式に基づいて求め、
SN比の閾値であるγTは、下記式εdの最大許容範囲に基づいて決定し、
決定した上記SN比の閾値γTに基づいて、上記セカンダリシステムの数の上限を決定すること
【数10】
N:セカンダリシステムの数、λ:エネルギー閾値、f(γ):SN比の確率密度関数
を特徴とするコグニティブ無線通信システム。
【請求項2】
上記セカンダリシステムは、上記プライマリシステムの存在を検出したときのSN比が、予め設定されたSN比の閾値よりも高い場合に1ビットの信号で構成される検出報告を上記制御局に送信し、上記プライマリシステムの存在を検出したときのSN比が、予め設定されたSN比の閾値以下の場合に1ビットの信号で構成される検出報告を上記制御局に送信しないこととし、
上記制御局は、上記セカンダリシステムから上記検出報告を受信しなかった場合には、当該セカンダリシステムが上記プライマリシステムの存在を検出しなかった旨を識別すること
を特徴とする請求項1記載のコグニティブ無線通信システム。
【請求項3】
下記SN比の確率密度関数f(γ)の式によって得られるpに基づいて、
上記セカンダリシステムが検出報告を制御局に送信する際の通信を評価すること
【数11】
を特徴とする
請求項1又は2記載のコグニティブ無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コグニティブ無線通信システムに関し、特にセカンダリシステムが増加した場合においても制御局への通信量並びに使用する帯域を節約することが可能なコグニティブ無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アナログテレビからデジタルテレビへの移行に伴い、ある程度の周波数が開放されてそれらの周波数帯域が移動通信に使用されるようになっている。特に、新しい通信サービスや様々なアプリケーションが次々に実用化されている昨今において、この無線帯域の割り当ては細分化され、複雑なものとなっている。このようにして割り当てられた各通信サービスが無線帯域において混在している中で、更に新たな通信サービスをこの無線帯域に割り当てるのは徐々に困難になりつつある。
【0003】
近年において周波数の有効利用しつつ無線通信を行う方法としてコグニティブ(Cognitive)無線通信技術が近年において注目されている。コグニティブ無線通信とは、限定された周波数リソースを再活用してより効率的に周波数リソースを使用する技術である。即ち、コグニティブ無線通信によれば、セカンダリネットワークに属するデバイスは、プライマリネットワークにおいて使用されていない周波数リソースを周期的または非周期的にセンシングして使用可能な周波数リソースを認知し、認知された使用可能な周波数リソースを利用してデータを送受信するものである。
【0004】
コグニティブ無線では、もともとある通信帯域を使用する優先ネットワーク(プライマリネットワーク)と、プライマリネットワークが使用していない周波数帯域や時間などを監視して、この情報をもとに通信を行うコグニティブシステム(セカンダリネットワーク)が存在する。基本的にはプライマリネットワークは、優先的に与えられた通信帯域を常に使用することが可能であり、例えばテレビシステム等がある。セカンダリネットワークは、プライマリネットワークに干渉を与えることなく、自システム内に属するデバイスによる通信を行う。セカンダリネットワークは、上述したプライマリネットワークとしてのテレビシステムに割り当てられている周波数を使用することが前提となる。この中でも、特にこのセカンダリネットワークでは、自身が判断して周波数を利用して通信を行うデバイスがあり、例えば自らの位置情報と、当該位置において利用可能なプライマリネットワークの周波数に関する情報を取得することができるデバイスがある。また、このセカンダリネットワークでは、このような位置情報やプライマリネットワークの周波数情報を取得することができない場合には、他のデバイスによる制御の下で通信を行うものもある。
【0005】
コグニティブ無線通信では、以下の手順により通信を行う。先ず、セカンダリネットワークは、プライマリネットワークが無線通信を行っていない時間や、利用していない周波数帯域を検出する。次に、セカンダリネットワークは、自システムに属するデバイスによる通信によりプライマリネットワークの各デバイスが通信を行う上で干渉を与えないか否かを確認し、問題ないと判断した場合には、上記検出した周波数帯域又は時間により無線通信を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K.B. Letaief and W. Zhang, "Cooperative communications for cognitive radio networks," Proceeding of the IEEE, Vol. 97, No. 5, May 2009
【非特許文献2】E. Peh and Y.C. Liang, "Optimization for cooperative sensing in cognitive radio networks," IEEE WCNC 2007, pp. 27-32, Hong Kong, Mar 2007
【非特許文献3】W. Zhang, R.K. Mallik, and K.B. Letaief, "Optimization of cooperative spectrum sensing with energy detection in cognitive radio networks," IEEE Trans. Wireless Commun., Vol. 8, No. 12, pp. 5761-5766, Dec 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このセカンダリネットワークによる周波数検出は、あくまでセカンダリネットワークが自ら通信を行うために空いている周波数チャネルを取得するために行うものである。しかしながら、プライマリネットワークの存在している中で、あえて空の周波数チャネルを取得できる可能性は、特にセカンダリネットワークの増大に伴って低下する。このため、かかるセカンダネットワークによるチャネル取得可能性は、セカンダリユーザ間で互いに協調することで大幅に改善することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0008】
セカンダリネットワークの数が多い場合において、もしそれぞれのセカンダネットワークが、各タイムスロットにおいてその周波数チャネルの検出結果を通知した場合に、互いに強調して行う周波数検出動作の時間は必然的に長くなってしまう。そして、制御局に検出結果の通知が集中する結果、かかる制御局の動作が複雑化し、また各セカンダリネットワークに周波数チャネルを割り当てると膨大な帯域幅が必要になる。これは、システム全体で必要になる通信量、エネルギー並びに使用する帯域幅の浪費にもつながる。
【0009】
これに対して、実際に周波数検出の精度や効率は、より多くのセカンダネットワークからの情報の通知が無くてもそれほど影響を受けない点も報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。この非特許文献2の開示技術では、逆に多くのセカンダリユーザからの情報の通知が無くても検出能力を向上させることができる点が示されている。また、検出結果を制御局に通知する上で、セカンダリシステムの作業パートを分担することによりエネルギーや帯域幅の消費を抑えることができる点も報告されている。
【0010】
更に、非特許文献3の開示技術によれば、周波数検出に強調的なセカンダリユーザを探索するための方法が示されている。しかしながら、周波数検出に強調的なセカンダリユーザの最適数を直接的に選択する方法は特に開示されていない。
【0011】
非特許文献2の開示技術では、全てのセカンダリネットワークに対して、プライマリユーザから受信した信号のSN比を制御局に通知することを要求しているが、セカンダリシステムの数が大きいときにおける周波数帯域検出の通知に関する問題点は、上述のとおりである。
【0012】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、特にセカンダリシステムが増加した場合においても制御局への通信量並びに使用する帯域を節約することが可能なコグニティブ無線通信システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した課題を解決するために、システム全体を制御する制御局と、優先的に無線通信を行うプライマリシステムと、上記プライマリシステムにおける無線通信を妨害しないように自らの無線通信を行うために、プライマリシステムの存在の有無を検出して、その検出結果を上記制御局に通知する複数のセカンダリシステムとを備え、上記制御局は、上記プライマリシステムの存在を周波数を介して検出する上で互いに協調して周波数検出不能なセカンダリシステムを随時特定して、特定した上記セカンダリシステムからの上記検出結果の通知を受け付けないこととし、その際に、上記互いに協調して周波数検出可能なセカンダリシステムの数の上限を決定する上で、当該周波数検出を行う上でのエラー可能性ε
dを下記式に基づいて求め、SN比の閾値であるγ
Tは、下記式ε
dの最大許容範囲に基づいて決定し、決定した上記SN比の閾値γ
Tに基づいて、上記セカンダリシステムの数の上限を決定すること
【数10】
N:セカンダリシステムの数、λ:エネルギー閾値、f(γ):SN比の確率密度関数
を特徴とするコグニティブ無線通信システム。
【発明の効果】
【0014】
上述した構成からなる本発明によれば、特にセカンダリシステムが増加した場合においても制御局への通信量並びに使用する帯域を節約することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を適用したコグニティブ無線通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】節約される帯域幅並びにエネルギーと、セカンダリシステムの数の関係を解析した結果を示す図である。
【
図3】SNの閾値と、セカンダリシステムの数の関係を解析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明を適用したコグニティブ無線通信システム1の構成を示している。このコグニティブ無線通信システム1は、もともとある通信帯域を優先的に使用するプライマリシステム10と、プライマリシステム10が使用していない周波数帯域や時間などを監視して、この情報をもとに通信を行う複数のセカンダリシステム20と、コグニティブ無線通信システム1全体を制御する制御局30とを備えている。即ち、このセカンダリシステム20は、あくまでプライマリシステム10により使用されていない周波数帯域を選択的に使用して通信を行うものである。
【0018】
基本的にはプライマリシステム10は、優先的に与えられた通信帯域を常に使用することが可能であり、例えばテレビシステム等がある。セカンダリシステム20は、プライマリシステム10に干渉を与えることなく、自システム内に属するデバイスによる通信を行うことが前提となる。
【0019】
プライマリシステム10は、基地局12と、基地局12にアクセス可能なデバイス11とを備えている。
【0020】
デバイス11は、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータ(ノートPC)や、携帯電話等を初めとした各種携帯情報端末等で構成される。このデバイス11は、少なくとも基地局12との間で無線通信を行うことができ、更には基地局12を介して他のデバイス11との間で無線パケット通信を行うことができる。
【0021】
基地局12は、デバイス11から送信されてくるビーコンを取得し、またデバイス11との間でリンクを確立するために、これらを互いに同期化させる役割を担う。また、この基地局12は、図示しないテレビジョン受像機に対して割り当てた周波数チャネルを利用し、電波を送信する。
【0022】
複数のセカンダリシステム20も同様に自己のネットワーク内において基地局としての役割を担うコーディネータと、通信を行うデバイスとを備えている。
【0023】
仮にこのようなセカンダリシステム20に着目した場合において、プライマリシステム10が使用していない周波数帯域のチャネルを使用し、或いはプライマリシステム10が無線通信を行っていない時間帯において無線通信を行う。
【0024】
本発明では、複数のセカンダリシステム20からプライマリシステム10における無線通信を妨害しないように自らの無線通信を行うために、そのプライマリシステム10の存在の有無を検出する。このとき、当該プライマリシステム10の存在を検出する上で、セカンダリシステム20間で互いに協調して検出結果を制御局30へ報告する。しかしながら、他のセカンダリシステム20間で互いに協調して検出結果を報告することができないセカンダリシステム20が存在していた場合には、当該セカンダリシステム20を随時特定する。そして、制御局30は、その特定した互いに協調して検出結果を報告することができないセカンダリシステム20からの検出結果の通知を受けないように制御する。
【0025】
具体的には、このセカンダリシステム20において、プライマリシステム10の存在を検出したときのSN比が、予め設定されたSN比の閾値よりも高い場合に1ビットの信号で構成される検出報告を制御局30に送信し、プライマリシステム10の存在を検出したときのSN比が、予め設定されたSN比の閾値以下の場合に1ビットの信号で構成される検出報告を制御局30に送信しないこととする。制御局30において、セカンダリシステム20から検出報告を受信しなかった場合には、当該セカンダリシステム20がプライマリシステム10の存在を検出しなかった旨を識別する。
【0026】
本発明を適用したコグニティブ無線通信システム1において、互いにセカンダリシステム20間で互いに強調して周波数検出を行う場合、仮にセカンダリシステム20の数が多い場合には、制御局30に検出結果を各セカンダリシステム20から逐次報告することになれば、検出結果の通知が集中する結果、かかる制御局の動作が複雑化し、また各セカンダリシステム20に周波数チャネルを割り当てると膨大な帯域幅が必要になり、検出通知とトータルの時間が非常に長くなってしまう。
【0027】
このため、本発明では、ORルールの下で、許容範囲内における周波数チャネル検出能力の低下を容認しつつ、あくまでセカンダリシステム20が増加した場合においても制御局30への通信量並びに使用する帯域を節約を可能とするものである。つまり、周波数検出結果を通知するセカンダリシステム20の数を抑制するものである。
【0028】
このとき、周波数検出結果を通知するセカンダリシステム20の数の抑制は、周波数チャネル検出を行う際に、互いに強調して周波数検出を行うことが不能なセカンダリシステム20を削除することにより行う。このとき、以下の方法により、プライマリシステム10の検出信号についてSN比の閾値を設定する。
【0029】
先ず互いに強調して周波数検出を行うために、周波数検出結果を制御局30へ通知するセカンダリシステム20の数の上限を決定する。これは、本発明を適用した周波数検出を行う上でのエラー可能性の最大許容範囲にも対応したものである。ここでいうエラー可能性は、周波数検出の機会損失と、互いに強調して制御局30に対して周波数検出結果を伝送することに関する損失(以下、伝達損失という。)の合計として定義される。
【0030】
ここで、本発明を適用したコグニティブ無線通信システム1において、上述のORルールと周波数エネルギー検出とが実行された場合において、互いに協力的に検出通知を行うN個のセカンダリシステム20は、プライマリシステム10の存在の検出有無を1ビットの信号で制御局30へ送信する。周波数検出後の各タイミングにおいてかかる信号を送信するのであれば、上述したエラー可能性は下記(1)式で与えられる。
【0031】
【数1】
・・・・・・・・・・・(1)
【0032】
ここでi=1、2、・・・・Nはセカンダリシステム20のインデックス番号であり、p
m,iは、検出機会損失のであり、p
f,iは、伝達損失である。ここでプライマリシステム10のSN比が密度関数f(γ
i)で与えられたとき、これらは下記式(2)、(3)で与えられる。
【0033】
【数2】
・・・・・・・・・・・(2)
【0034】
【数3】
・・・・・・・・・・(3)
【0035】
ここでλ
iは、エネルギーの閾値であり、γ
iは、i番目のセカンダリシステム20によって検出されたプライマリシステム10のSN比である。uは、時間−帯域幅を検出する因子であって、単純化するためのパラメータである。Γ(・)と、Γ(m,x)=∫
x∞t
m-1e
-tdtは、完全ガンマ関数と、不完全ガンマ関数である。
【0036】
また下記の式(4)は、MarcumのQ関数である。ここでI
m-1(・)は、ベッセル関数の変形であり、m-1のオーダーである。
【0037】
【数4】
・・・・・・・・・・・(4)
【0038】
ORルールにおいては、一のセカンダリシステム20又は多くのセカンダリシステム20がプライマリシステム10を検出した結果、1ビットの信号で“1”を制御局30に通知した場合において、制御局30は、仮説“H1”(プライマリシステム10の検出が行われた旨)を決定する。それ以外の場合において、制御局30は、“H0”(プライマリシステム10の検出が行われなかった旨)の仮説を決定する。
【0039】
本発明において、プライマリシステム10のSN比の閾値(γ
T)を設定する。ORルール並びに周波数検出フェースにおいて、セカンダリシステム20において検出したプライマリシステム10のSN比がγ
Tよりも高い場合のみにおいて周波数検出を行い、その後の期間においてセカンダリシステム20は、制御局30に対して1ビットで構成される検出結果の通知を行う。それ以外では、制御局30に対する検出結果の報告を行わない。1ビットで構成される検出結果の通知が制御局30に対して行われなかった場合、かかる制御局30は、かかる検出期間において、セカンダリシステム20においてプライマリシステム10の検出が行われなかった旨の判定“0”であることを判別する。エラー可能性の変化が、システムが許容できる上限より低いため、SNRの閾値γ
Tが選択されることとなる。
【0040】
本発明において、H0の仮説においては、プライマリシステム10による信号検出は行われないため、プライマリシステム10自身が通信を行っていないことが前提となる。このため、伝達損失は、SN比とは関係が無い。伝達損失の可能性はi番目のセカンダリシステム20においては、式(3)によって与えられる。しかしながら、H1の場合、プライマリシステム10が通信を行っているという前提となる。i番目のセカンダリシステム20においてH1は、γ
i>γ
TかつE
i>λ
iである場合のみ、決定される。ここでE
iは、i番目のセカンダリシステム20によって検出される周波数において集められるエネルギーである。本発明において提案される、受信失敗の可能性は、以下の(5)式によって与えられる。
【0041】
【数5】
・・・・・・・・・・・(5)
【0042】
セカンダリシステム20による制御局30への検出報告が少なくなるにつれて、制御局30における周波数検出のエラー可能性が悪化する。エラー可能性は、上述した伝達損失の増加に起因する。これは以下の(6)式によって与えられる。
【数6】
・・・・・・・・・・・(6)
【0043】
ここで全てのセカンダリシステム20が、プライマリシステム10のSN比が同一であるものと仮定した場合に、(7)式は以下に変形される。
【0044】
【数7】
・・・・・・・・・・・(7)
【0045】
N:セカンダリシステムの数、λ:エネルギー閾値、f(γ):SN比の確率密度関数。
【0046】
即ち、この(7)式では、プライマリシステム10の存在を検出する上で互いに協調して検出不能なセカンダリシステム20を排除する際に、互いに協調して検出可能なセカンダリシステム20の数の上限を決定する上で、当該周波数検出を行う上でのエラー可能性ε
dの最大許容範囲に基づくものとし、上記SN比の閾値はγ
Tは、上記ε
dに基づいて決定されるようにしている。
【0047】
本発明では、プライマリシステム10におけるSN比の確率密度関数f(γ)、制御局30にけるエラー可能性の許容できる減少幅ε(例えばエラー可能性の上限)、セカンダリシステム20の数N、エネルギー閾値λ、が知られている状況下でSN比の閾値γ
Tを探索するために使用することができる。
【0048】
エネルギー閾値λは、各セカンダリシステム20が最小のエラー可能性であるという前提の下で、付加的な検出を仮定することによって探索される。
本発明において、提案されたスキームを評価するために使用されるメトリクスは、検出結果として、規格化された節約されるエネルギーと波長であり、以下の(8)式で与えられる。
【0050】
即ち、このSN比の確率密度関数f(γ)の式(8)によって得られるpに基づいて、上述した通信を評価するメトリクスを提供するようにしてもよいことは勿論である。
【実施例1】
【0051】
以下、本発明の実施例について、数値解析を例にとり説明をする。レイリーによって与えられたチャネルを仮定し、エネルギー閾値λが理想的な周波数検出を可能とする値(最小エラー可能性が達成される値)であるものと仮定する。レイリーによって与えられたチャネルにおいてプライマリシステム10のSN比の確率密度は、以下で与えられる。
【0052】
【数9】
・・・・・・・・・(9)
【0053】
図2は、本発明を適用した場合において、ORルールにより強調的な周波数検出を行った場合における節約された帯域幅とエネルギーを示している。プライマリシステム10における平均SN比は、5〜10dBでセットされる。エラー可能性の変化の上限は、仮定されている。本発明を適用することにより、帯域幅とエネルギーが節約されるのが分かる。仮に10個のセカンダリシステム20が存在していたときに、SN比の平均(=r
avg)が10dBであるとき、60%以上のエネルギーや帯域幅が節約される。また50個のセカンダリシステム20が存在していたとき、80〜90%ものエネルギーや帯域幅が節約される。
【0054】
図3は、プライマリシステム10におけるSN比の閾値におけるセカンダリシステム20の数量の依存性を調査した結果を示している。この
図3では、プライマリシステム10のSN比の平均とエラー可能性の変化の上限をパラメータとしている。これらSN比の閾値は、上述した説明によって述べられている傾向が示されている。
【符号の説明】
【0055】
1 コグニティブ無線通信システム
10 プライマリシステム
11 デバイス
12 基地局
20 セカンダリシステム
30 制御局