(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747654
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】水圧計測装置、深度計測装置および貫入プローブ
(51)【国際特許分類】
G01L 13/02 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
G01L13/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-114895(P2011-114895)
(22)【出願日】2011年5月23日
(65)【公開番号】特開2012-242328(P2012-242328A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】西尾 伸也
(72)【発明者】
【氏名】安部 透
【審査官】
公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−163809(JP,U)
【文献】
特開2008−223378(JP,A)
【文献】
特開平04−080611(JP,A)
【文献】
特開平10−019612(JP,A)
【文献】
特開平05−187939(JP,A)
【文献】
特開2003−042864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 13/02
G01L 5/00
G01C 13/00
G01F 23/14
E02D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底地盤内の水圧を計測する装置であって、
高圧側導入部と低圧側導入部とからなり、高圧側導入部により導入された水圧と低圧側導入部により導入された水圧の差圧を計測する差圧計と、水中で基準となる水圧を導入可能な水圧室と、この水圧室と外部との連通を開閉する開閉弁とを有し、
低圧側導入部は、水圧室の圧力を導入するものであり、
差圧計により計測した水底地盤内の過剰間隙水圧から静水圧を推定することを特徴とする水圧計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水圧計測装置で計測した水圧に基づいて水底地盤内における深度を計測することを特徴とする深度計測装置。
【請求項3】
コーン貫入試験用の貫入プローブであって、請求項1に記載の水圧計測装置または請求項2に記載の深度計測装置を内蔵し、計測した水圧または深度に基づいて自身の貫入深度を計測する機能を有することを特徴とする貫入プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大水深域で用いるのに適した水圧計測装置、深度計測装置および貫入プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、メタンハイドレートは、石油・天然ガスに代わる次世代資源として脚光を浴びている。日本周辺海域においても、日本の天然ガスの年間消費量の100倍のメタンハイドレートが賦存しており、それを安全にしかも経済的に産出する技術の開発が求められている。その中でも、特にメタンハイドレートおよびメタンハイドレート堆積地盤の物性把握は重要課題として位置付けられている。
【0003】
通常、試料の物性を調べるためには、サンプリングした試料を実験室に運搬して室内試験を行うのが一般的である。しかし、メタンハイドレートは低温高圧条件では安定しているが、常温常圧条件では容易に水とガスに分解する性質を有しているため、採取した堆積土試料はサンプリング時の応力解放の影響を受け、ハイドレート分解に伴うガス発生および溶存ガスの体積増加による構造的な乱れが発生する可能性が指摘されている。すなわち、応力解放による乱れの影響を受けない高品質な特性値を把握することが重要である。
【0004】
メタンハイドレートが存在するのは水深300m以深の海底地盤であることから、従来、このような条件では、コーン圧入・引抜き装置、データ収録装置などを搭載したユニットおよび信号ケーブルを海底に降ろし、そこから反力を取りながらコーン貫入試験を行っていた。しかし、そのユニットおよび信号ケーブルの上げ下ろし等の操作を行うためには大きなウインチを有する掘削船や掘削リグが不可欠であり、調査には多大な費用と時間を要するため、こうした大水深域での測定例は極めて少ないのが現状である。
【0005】
このような問題を解決するため、本発明者の一人は、特許文献1に示されるコーン貫入試験機を提案している。
図4に、このコーン貫入試験機に用いる貫入プローブを示す。
図4に示すように、この貫入プローブ1は、コーン2と中空のロッド3とからなる。ロッド3内部にはコーン2に作用する貫入圧力を検知するための圧力センサ4と、データ記録手段5と、バッテリ6が内蔵されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−223378号公報
【特許文献2】特開2004−257858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、貫入抵抗計測時の貫入深度は直接計測できないことから、プローブの貫入速度を一定と仮定して経過時間に対応した値を計算し、これを貫入深度とみなしてきた。しかし、このような手法では、貫入抵抗の深度方向の変化を正確に評価することができず、大きな課題となっていた。これに対し、水圧から換算した水深に基づいて貫入深度を計測する手法が有効と考えられるが、従来の大水深用の水圧計(耐圧20MPa、水深2000m相当)(例えば、特許文献2参照)では、水深計測の分解能が不足するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、大水深域の水底地盤へのコーン貫入試験用プローブの貫入深度を精度よく計測するのに適した高分解能の水圧計測装置、深度計測装置および貫入プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る水圧計測装置は、
水底地盤内の水圧を計測する装置であって、高圧側導入部と低圧側導入部とからなり、高圧側導入部により導入された水圧と低圧側導入部により導入された水圧の差圧を計測する差圧計と、水中で基準となる水圧を導入可能な水圧室と、この水圧室と外部との連通を開閉する開閉弁とを有し、低圧側導入部は、水圧室の圧力を導入する
ものであり、差圧計により計測した水底地盤内の過剰間隙水圧から静水圧を推定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る深度計測装置は、上述した請求項1に記載の水圧計測装置で計測した水圧に基づいて
水底地盤内における深度を計測することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る貫入プローブは、コーン貫入試験用の貫入プローブであって、上述した請求項1に記載の水圧計測装置または請求項2に記載の深度計測装置を内蔵し、計測した水圧または深度に基づいて自身の貫入深度を計測する機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る水圧計測装置によれば、高圧側導入部と低圧側導入部とからなり、高圧側導入部により導入された水圧と低圧側導入部により導入された水圧の差圧を計測する差圧計と、水中で基準となる水圧を導入可能な水圧室と、この水圧室と外部との連通を開閉する開閉弁とを有し、低圧側導入部は、水圧室の圧力を導入するので、差圧計は、高圧側導入部により導入された水圧と低圧側導入部により導入された水圧室の水圧の差圧により水圧を計測する。水中で開閉弁を閉じると水圧室にはその位置での水圧が導入される。高圧側導入部により導入される外部の水圧が変化しても、水圧室内はこの基準水圧に保たれ、差圧計はこの基準水圧からの差圧を計測する。このため、大水深域の高圧下でも水圧変化を精度よく計測することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る深度計測装置によれば、上述した水圧計測装置で計測した水圧に基づいて深度を計測するので、差圧計は、高圧側導入部により導入された水圧と低圧側導入部により導入された水圧室の水圧の差圧により水圧を計測する。水中で開閉弁を閉じると水圧室にはその位置での水圧が導入される。高圧側導入部により導入される外部の水圧が変化しても、水圧室内はこの基準水圧に保たれ、差圧計は水圧室内の基準水圧からの差圧に基いて静水圧分布を設定し、水中深度を推定する。特に、貫入プローブを水底地盤に一定速度で貫入していく場合には、過剰間隙水圧が計測されるので、この過剰間隙水圧分布の傾向から水底地盤内の静水圧分布を推定し、この静水圧分布に基づいて地盤内の貫入深度を推定する。静水圧分布の値は直近の基準水圧からの差圧に基づくことから、大水深域の高圧下でも深度変化を精度よく計測することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る貫入プローブによれば、コーン貫入試験用の貫入プローブであって、上述した水圧計測装置または深度計測装置を内蔵し、計測した水圧または深度に基づいて自身の貫入深度を計測する機能を有するので、水圧計測装置または深度計測装置により計測された水圧や深度を用いることで、大水深域の高圧下でも水底地盤への貫入プローブの貫入深度を精度よく計測することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係る水圧計測装置、深度計測装置および貫入プローブの実施例を示す図である。
【
図2】
図2は、水圧計測による深度計測の概念を説明する図である。
【
図3】
図3は、本発明による貫入プローブの貫入深度の計測概念図である。
【
図4】
図4は、従来のコーン貫入試験機の貫入プローブの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る水圧計測装置、深度計測装置および貫入プローブの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
[水圧計測装置]
まず、本発明に係る水圧計測装置について説明する。
図1に示すように、本発明に係る水圧計測装置10は、差圧計16と、水中で基準となる水圧を導入可能な水圧室18と、この水圧室18と外部との連通を開閉する開閉弁22とを有する。
【0018】
差圧計16は、高圧側導入部12と低圧側導入部14とからなり、高圧側導入部12により導入された外部の水圧と低圧側導入部14により導入された水圧の差圧を計測するものである。差圧計16は市販のものを用いることができ、例えば分解能が比較的高い計測範囲50〜100kPaの差圧計を用いてもよい。
【0019】
低圧側導入部14は、水圧室18の圧力を導入するので、差圧計16は、高圧側導入部12により導入された外部の水圧と低圧側導入部14により導入された水圧室18の水圧の差圧により水圧を計測する。水中で開閉弁22を閉じると、水圧室18にはその位置での水圧が導入される。高圧側導入部12により導入される外部の水圧が変化しても、水圧室18内はこの基準水圧に保たれ、差圧計16はこの基準水圧からの差圧を計測する。このため、大水深域の高圧下でも水圧変化を精度よく計測することができる。
【0020】
[深度計測装置]
次に、本発明に係る深度計測装置について説明する。
図1に示すように、本発明に係る深度計測装置20は、上述した水圧計測装置10で計測した水圧に基づいて深度を計測するものである。差圧計16は水圧室18内の基準水圧からの差圧に基いて静水圧分布を設定し、水中深度を推定する。特に、貫入プローブを水底地盤に一定速度で貫入していく場合には、
図2の左図に示すように、過剰間隙水圧が計測されるので、この過剰間隙水圧分布の傾向から水底地盤内の静水圧分布を推定し(
図2の右図を参照)、この静水圧分布に基づいて地盤内の貫入深度を推定する。静水圧分布の値は直近の基準水圧からの差圧に基づくことから、大水深域の高圧下でも深度変化を精度よく計測することができる。
【0021】
[貫入プローブ]
次に、本発明に係る貫入プローブについて説明する。
図1に示すように、本発明に係る貫入プローブ100は、コーン貫入試験用の貫入プローブであって、コーン24と中空のロッド26とからなる。ロッド26内部には、水圧計測装置10または深度計測装置20が内蔵してある。貫入プローブ100は、水圧計測装置10または深度計測装置20が計測した水圧または深度に基づいて自身の貫入深度を計測する機能を有する。
【0022】
なお、ロッド26内部には、従来の貫入プローブのように、コーン24に作用する貫入圧力を検知するための圧力センサ、データ記録手段、バッテリ(いずれも図示せず)をさらに内蔵してもよい。また、開閉弁22の開閉操作方法としては、メッセンジャーウェイトによる開閉操作、電磁バルブによる遠隔操作等を利用することができる。
【0023】
上記構成の動作および作用について説明する。
貫入プローブ100を水中で降下する場合には、開閉弁22を開とし、水圧室18内と外部の圧力を等しくさせる。そして、貫入プローブ100を水底地盤に貫入する直前に開閉弁22を閉とする。こうすることで、水圧室18に基準水圧が導入される。
【0024】
次に、開閉弁22を閉としたまま、貫入プローブ100を地盤内に貫入して行く。貫入の最中に、差圧計16の高圧側導入部12で外部の水圧を導入し、低圧側導入部14で水圧室18の水圧を導入することにより、水圧室18の内外の圧力差を計測する。開閉弁22が閉のままでは水圧室18は基準水圧(地盤表面の水圧)に保たれるので、貫入深度における水圧は、この基準水圧からの差分として計測される。この計測水圧を地盤表面からの貫入深度に換算することで、貫入プローブ100の貫入深度を精度よく計測することができる。
【0025】
貫入プローブ100を引き上げる場合には、再度、開閉弁22を開とし、水圧室18の内外の圧力を等しくさせればよい。
【0026】
このように、本発明の貫入プローブ100によれば、水圧計測装置10または深度計測装置20により計測された水圧や深度を用いることで、大水深域の高圧下でも水底地盤への貫入プローブの貫入深度を精度よく計測することができる。
【0027】
図3は、本発明による貫入プローブの貫入深度の計測概念を示した図である。
図3(a)は通常の堆積地盤、
図3(b)はメタンハイドレートが深度2m以深に堆積する地盤でのコーン先端抵抗値の測定を想定したものである。
図3に示すように、貫入抵抗の深度方向の変化を正確に評価でき、堆積地盤の強度特性、メタンハイドレート堆積深度の推定が容易となると期待される。
【0028】
なお、本発明の水圧計測装置、深度計測装置および貫入プローブは、大水深域の水底(海底・湖底)地盤の表層数mの範囲を主な適用対象としている。これは、まさに水底の地盤表層に存在するメタンハイドレートの堆積深度であり、上述したように、測定例は極めて少ないのが現状であるが、本発明の水圧計測装置、深度計測装置および貫入プローブを用いることで今後測定例が増えていくものと思われる。
【0029】
また、上述した従来型のコーン貫入試験では、さらに深部までの調査が可能であるが、表層のみの調査を行う場合でも、深部調査と同様の費用と時間が必要であった。しかし、本発明の水圧計測装置、深度計測装置および貫入プローブは、表層型ハイドレート調査だけではなく、海底・湖底の表層地盤の力学特性が求められる調査に広く効果を発揮することが可能である。
【0030】
以上説明したように、本発明に係る水圧計測装置によれば、高圧側導入部と低圧側導入部とからなり、高圧側導入部により導入された水圧と低圧側導入部により導入された水圧の差圧を計測する差圧計と、水中で基準となる水圧を導入可能な水圧室と、この水圧室と外部との連通を開閉する開閉弁とを有し、低圧側導入部は、水圧室の圧力を導入するので、差圧計は、高圧側導入部により導入された水圧と低圧側導入部により導入された水圧室の水圧の差圧により水圧を計測する。水中で開閉弁を閉じると水圧室にはその位置での水圧が導入される。高圧側導入部により導入される外部の水圧が変化しても、水圧室内はこの基準水圧に保たれ、差圧計はこの基準水圧からの差圧を計測する。このため、大水深域の高圧下でも水圧変化を精度よく計測することができる。
【0031】
また、本発明に係る深度計測装置によれば、上述した水圧計測装置で計測した水圧に基づいて深度を計測するので、差圧計は、高圧側導入部により導入された水圧と低圧側導入部により導入された水圧室の水圧の差圧により水圧を計測する。水中で開閉弁を閉じると水圧室にはその位置での水圧が導入される。高圧側導入部により導入される外部の水圧が変化しても、水圧室内はこの基準水圧に保たれ、差圧計は水圧室内の基準水圧からの差圧に基いて静水圧分布を設定し、水中深度を推定する。特に、貫入プローブを水底地盤に一定速度で貫入していく場合には、過剰間隙水圧が計測されるので、この過剰間隙水圧分布の傾向から水底地盤内の静水圧分布を推定し、この静水圧分布に基づいて地盤内の貫入深度を推定する。静水圧分布の値は直近の基準水圧からの差圧に基づくことから、大水深域の高圧下でも深度変化を精度よく計測することができる。
【0032】
また、本発明に係る貫入プローブによれば、コーン貫入試験用の貫入プローブであって、上述した水圧計測装置または深度計測装置を内蔵し、計測した水圧または深度に基づいて自身の貫入深度を計測する機能を有するので、水圧計測装置または深度計測装置により計測された水圧や深度を用いることで、大水深域の高圧下でも水底地盤への貫入プローブの貫入深度を精度よく計測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明に係る水圧計測装置、深度計測装置および貫入プローブは、大水深域の水底地盤に対するコーン貫入試験に有用であり、特に、貫入プローブの貫入深度を精度よく計測するのに適している。
【符号の説明】
【0034】
10 水圧計測装置
12 高圧側導入部
14 低圧側導入部
16 差圧計
18 水圧室
20 深度計測装置
22 開閉弁
24 コーン
26 ロッド
100 貫入プローブ