【実施例1】
【0028】
図1から
図4及び
図7を参照しながら本発明の実施例1を説明する。
図1は本発明の実施例1に係る射出成形用金型の概略断面図である。
図2(a)から
図2(c)は本発明の実施例1に係るサンドイッチ成形品の射出成形方法の成形工程の前半を示す金型の概略断面図である。
図3(a)から
図3(c)は本発明の実施例1に係るサンドイッチ成形品の射出成形方法の成形工程の後半を示す金型の概略断面図である。
図4は本発明の実施例1に係る射出成形用金型のシールピン機構先端部の拡大図である。
図4(a)が
図2(c)における要部Aの拡大図、
図4(b)が
図4(a)の要部Cにおけるシールピン機構先端部に形成されたスキン層、
図4(c)が
図3(a)における要部Bの拡大図かつ
図4(a)の要部Cにおけるシールピン機構先端部に形成されたスキン層を示す。
図7は本発明の実施例1に係る射出成形用金型のシールピン機構先端部の別形態を示す概略断面図である。
【0029】
実施例1は、本発明の射出成形用金型が、表層と内層とからなり、内層が表層に内包されるサンドイッチ成形品を成形させるサンドイッチ成形用金型として構成されるものである。このサンドイッチ成形用金型の説明を行うに際し、汎用の射出成形機に対して、このサンドイッチ成形用金型が取り付けられる射出成形機側で説明すべき点は、一般的には、その射出ユニットが表層用と内層用とで2セット以上必要な場合がある点のみであり、他に特殊な構成要件はない。そのため、射出成形機の説明は割愛し、関連する構成要件についてのみ説明する。また、
図1から
図4及び
図7は、金型等、成形工程を説明するために必要な構成要件のみの概略断面図であり、これら概略断面図は射出成形機の長手方向に沿った縦断面図(側面断面図)、横断面図(平面断面図)のいずれであっても良い。
【0030】
最初に、
図1を参照しながら、本発明の実施例1に係る、サンドイッチ成形用金型として構成される射出成形用金型を説明する。
図1に示すように、図示しない固定盤に取り付けられた固定金型2に、表層用溶融樹脂9b(第1流体)を射出する第1射出ユニット17が、該固定盤の背面から、その先端ノズルを接離可能に配置されている。その第1射出ユニット17から射出される表層用溶融樹脂9bを金型キャビティ9a内に充填させる表層用樹脂流路9c(第1流体流路)が固定金型2に配置され、表層用樹脂流路9cの金型キャビティ9a側端部において、金型キャビティ9a内に連通されるゲート部分にはゲートバルブ(樹脂遮断開放切替弁)9dが設けられている。また、固定金型2には、第1射出ユニット17とは別に、第2流体である内層用溶融樹脂10bを射出する第2射出ユニット18が、その先端ノズルを接離可能に配置されている。
【0031】
第1射出ユニット17と同様に、第2射出ユニット18から射出される内層用溶融樹脂10b(第2流体)を金型キャビティ9a内に充填させる内層用樹脂流路10c(第2流体流路)が固定金型2に配置され、内層用樹脂流路10cの金型キャビティ9a側端部の開口部分にはシールピン機構10dが進退自在に配置されている。シールピン機構10dは、
図1に示すように、前進状態においては、内層用樹脂流路10cの金型キャビティ9a側端部の開口部分をシールさせると共に、その先端部を金型キャビティ9a内に所定量突出させている。また、シールピン機構10dはその先端部の形状が、その進退方向と直交する断面積を、その前進方向に漸次、減少させる形状、つまり、金型キャビティ9aの内部へ行くほど尖った形状で形成されている。
【0032】
シールピン機構10dの先端部の金型キャビティ9aへの突出量や、尖らせる角度等については、表層用溶融樹脂9bの樹脂材料、形成されるスキン層の厚みや強度、シールピン機構10dの先端部を金型キャビティ9aに突出させる部位の製品厚み等、により、適宜好適な仕様が選択されれば良い。しかしながら、少なくとも、シールピン機構10dの先端部の金型キャビティ9aへの突出量は、該先端部を金型キャビティ9aに突出させる部位の製品厚みの略半分(該部位の金型キャビティ9aの略中央位置)まで突出させることが好ましい。
【0033】
また、後述する本発明の実施例1に係る射出成形用金型を使用するサンドイッチ成形品の成形工程の説明と図を簡単にするために、内層用樹脂流路10cの金型キャビティ9a側端部の開口部分に配置されたシールピン機構10dは、
図1(
図7(a))に示すように、その前進状態において、その先端部に連続する直胴部により、内層用樹脂流路10cの金型キャビティ9a側端部の開口部分をシールさせる形態としているが、同
図7(b)に示すように、内層用樹脂流路10cの金型キャビティ9a側端部の開口部分の形状を、シールピン機構10dの先端部のテーパ面と略同形状のテーパ面とし、その前進状態において、先端部のテーパ面を開口部分のテーパ面に押し当てることによりシールさせる形態でも良い。この場合、内層用樹脂流路10cの開口部分の高いシール性を確保できると共に、シールピン機構10dの先端部の金型キャビティ9a内への突出量を精密に制御させることができる。更に、シールピン機構10dの先端部及び内層用樹脂流路10c開口部分の形状を、同
図7(c)に示すように、
図7(a)の直胴部の形態と
図7(b)のテーパ面の形態とを合わせた段付きテーパ面とすれば、
図7(b)に示す内層用樹脂流路10cの開口部分のテーパ面端部をより肉厚に、高い剛性を有するように形成させることができ、内層用樹脂流路10cの開口部分の高いシール性を長期間維持させることができる。このように、シールピン機構10dは、その前進状態において、内層用樹脂流路10cの金型キャビティ9a側端部の開口部分をシールさせると共に、その先端部を金型キャビティ9a内に所定量突出させることができれば、様々な形態を選択することができる。
【0034】
図1に戻る。シールピン機構10dの先端部が、その進退方向と直交する断面積を、その前進方向に漸次、減少させる形状、つまり、金型キャビティ9aの内部へ行くほど尖った形状で形成されている一方、その先端部の他端にはピストンが形成されており、固定金型2内の空間部と組み合わされ、シールピン機構10dの先端部から連続する直胴部をピストンロッドとする油圧シリンダが構成されている。該油圧シリンダのヘッド側に油圧を作用させると、シールピン機構10dは、
図1に示すような前進状態となり、ロッド側に油圧を作動させると、内層用樹脂流路10c(第2流体流路)の金型キャビティ9a側端部の開口部分を開放させると共に、その先端部を金型キャビティ9a外に退避させる後退状態となる。シールピン機構10dを進退させる機構は、
図1に示すような油圧シリンダでも良いし、エアシリンダやモータとボールねじを組み合わせた各種アクチュエータ等であっても良い。
【0035】
そして、固定金型2と組み合わされて金型キャビティ9aを形成させる可動金型4が、図示しない可動盤に固定金型2に対向するように取り付けられ、図示しない型開閉機構により射出成形機の長手方向(以後、型開閉方向と呼称する)に移動可能に配置されている。本実施例1においては、固定金型2及び可動金型4は、それぞれの金型の分割面(金型分割面、パーティング面、割面と呼称されることもある)がシェアエッジ構造となっており、射出成形機の型開閉機構による型開閉動作で、金型キャビティの容積を可変させるものとする。
【0036】
ここで、第1射出ユニット17及び第2射出ユニット18については、
図1に示すように、射出ユニットそれぞれに連通する第1流体流路とゲートバルブ9d、及び、第2流体流路とシールピン機構10d、が固定金型2及び可動金型4のいずれかに配置されれば、2つの射出ユニットの配置、あるいは、どちらの射出ユニットが固定金型2及び可動金型4のいずれかに接続可能に配置されるか、に特に金型側の制約はない。また、表層用溶融樹脂9b(第1流体)及び内層用溶融樹脂10b(第2流体)が同じ樹脂材料である場合、射出ユニットが1セットしか配置されていない射出成形機であっても、表層用溶融樹脂及び内層用溶融樹脂の樹脂流路を、金型内でそれぞれ分岐させ、それぞれ分岐させた樹脂流路に、
図1に示すようなゲートバルブ9d、及び、シールピン機構10dが配置されれば、本発明は実施可能である。
【0037】
また、前述した金型のシェアエッジ構造とは、くいきり構造、あるいはインロー構造等と呼称されることもあり、金型の分割面を形成する嵌合部の構造として一般的に知られた構造であって、型開閉方向に伸びて、互いに摺動しながら挿脱することのできる嵌合部を、固定金型と可動金型の間に形成することによって金型キャビティ内に射出充填された溶融樹脂が、所定量、金型を型開きさせても金型外に漏れ出すのを防止することができる構造である。このようなシェアエッジ構造の金型は、成形工程中に金型を微小型開き状態にさせる拡張発泡成形方法(コアバック発泡成形方法と呼称されることもある。)や圧縮成形方法、また、型内被覆成形方法(インモールドコーティング法、金型内塗装方法と呼称されることもある。)等に採用される。
【0038】
次に、
図2から
図4を参照しながら、本発明の実施例1に係る射出成形用金型を使用するサンドイッチ成形品の成形工程を説明する。
図2(a)は、成形サイクル開始前の型開き状態を示す。各構成要件は
図1で説明したとおりである。説明及び図を簡単にするため、表層用溶融樹脂9b(第1流体)を流入させる表層用樹脂流路9c(第1流体流路)及び内層用溶融樹脂10b(第2流体)を流入させる内層用樹脂流路10c(第2流体流路)は共に何も流入されていない状態としているが、実際には、前サイクルでの表層用溶融樹脂9b及び内層用溶融樹脂10bそれぞれの射出充填終了後、これから説明する次サイクルのために、それぞれの樹脂流路は、計量されたそれぞれの溶融樹脂により既に満たされた状態である。
【0039】
そして、
図2(b)に示すように、可動金型4を図示しない型開閉機構により固定金型2側に移動させ、可動金型4と固定金型2とを型閉じさせる。その後、型締力を付与させた状態で、表層用樹脂流路9c(第1流体流路)のゲートバルブ9dを開放させ(開放状態のため図示せず。)、後に表層9を形成する表層用溶融樹脂9b(第1流体)を、第1射出ユニット17から表層用樹脂流路9c(第1流体流路)を介して、可動金型4及び固定金型2により形成された金型キャビティ9a内に射出充填させる表層用樹脂射出充填工程が行われる。この表層用樹脂射出充填工程において、内層用樹脂流路10c(第2流体流路)の金型キャビティ9a側端部の開口部分に設けられたシールピン機構10dは、その先端部を所定量、金型キャビティ9a内に突出させた状態で、内層用樹脂流路10cの金型キャビティ9a側端部の開口部分をシールさせており、金型キャビティ9a内に射出充填させた表層用溶融樹脂9bが内層用樹脂流路10cに逆流することはない。
【0040】
この表層用樹脂射出充填工程において、金型キャビティ9aは、表層用溶融樹脂9b(第1流体)の射出充填量(容積)に対して、射出充填率が略100%となるようにその金型キャビティの容積を製品容積より縮小させた状態である。射出充填率が略100%(フルショット)となるように、金型キャビティ9aの容積を製品容積より縮小させることにより、縮小させた金型キャビティ9a内が表層用溶融樹脂9bにより満たされ、金型キャビティ9a内の表層用溶融樹脂9bに型締力が略均一に付与され、表層用溶融樹脂9bの樹脂圧力が略均一に高められることにより、表層用溶融樹脂9bの略全面に金型キャビティ9aの内面との接触により冷却固化されたスキン層(冷却固化層)が形成され、後に表層用溶融樹脂9b内に射出充填される内層用溶融樹脂10b(第2流体)の表層用溶融樹脂9bの外部への流出、いわゆる、樹脂反転不良が抑制される。また、金型キャビティ9aの内面の該スキン層への高い転写性が確保されるため、一般的なサンドイッチ成形品、すなわち、表層用溶融樹脂9bがショートショットで射出充填され、続いて行われる内層用溶融樹脂10bの射出充填により、金型キャビティ9a内を自由流動する表層用溶融樹脂9bの、自由流動により不均一に付与される流動圧力のみで、金型キャビティ9aの内面形状が表層用溶融樹脂9bの表面に形成されたスキン層(冷却固化層)へ転写されるサンドイッチ成形品に対して、製品外観性が向上する。
【0041】
表層用溶融樹脂9b(第1流体)は、金型キャビティ9a内に射出充填された直後から金型内で冷却され、冷却固化収縮が進行するため、縮小させた金型キャビティ9aの容積より、少なくとも冷却固化収縮分(容積)だけ多く射出充填させた方が、先に説明した表層用溶融樹脂9bのスキン層(冷却固化層)の形成と該スキン層への高い転写性を確保する上で好ましい。ここで、金型キャビティ9aの内面との接触により形成されたスキン層は、金型キャビティ9a内の気体との接触部、すなわち、金型キャビティ9aの内面と接触しない表層用溶融樹脂9bの表面に形成されるスキン層に対して強固ではあるが、完全に硬化している層ではなく、その温度が樹脂軟化点温度、あるいは、ガラス固化温度以上で冷却固化がまだ進行中の、層方向にゴム状の弾性挙動を示す薄膜のような層であり、金型キャビティ9aの容積の可変に伸縮して追従可能である。
【0042】
一方、金型キャビティ9aの容積を製品容積より縮小(拡張)させることができない金型構成の場合、この表層用樹脂射出充填工程は一般的にショートショットで行われる。その場合、樹脂反転不良を防止しつつ、金型キャビティ9aの内面の表層用溶融樹脂9b(第1流体)のスキン層への転写性を低下させないような樹脂流動を金型キャビティ9a内で形成させるために、最初に射出充填させる表層用溶融樹脂9bの射出充填量(容積)、射出充填圧力、樹脂温度等、そして、続いて、表層用溶融樹脂9b内に射出充填させる内層用溶融樹脂10b(第2流体)の射出充填タイミング、射出充填量(容積)、射出充填圧力、樹脂温度等を十分に検討・調整する必要があることは言うまでもない。
【0043】
図2(c)は、表層用樹脂射出充填工程が完了し、表層用樹脂流路9c(第1流体流路)のゲートバルブ9dが閉じられた状態である。この時、シールピン機構10dは、内層用溶融樹脂流路10c(第2流体流路)の開口部分をシールさせた前進状態である。ここで、同
図2(c)の要部Aで示すこのシールピン機構10dの先端部の拡大図が
図4(a)である。
図4(a)に示すように、金型キャビティ9a内の表層用溶融樹脂9b(第1流体)は、金型キャビティ9aの内面との接触部に形成されたスキン層9eと、まだ溶融状態の溶融層9fとで構成される表層9(樹脂成形体)の状態である。当然のことながら、
図4(a)の要部C、すなわち、金型キャビティ9a内に所定量、突出させているシールピン機構10dの先端部と表層用溶融樹脂9bとの接触部にもスキン層9eが形成されるが、この接触部に形成されたスキン層9eは、
図4(b)に示すように、シールピン機構10dの先端部の先端に行くほど、金型キャビティ9aの内部に行くほどその厚みが薄く形成され、その強度も漸次低下する。
【0044】
これは、シールピン機構10dの先端部の形状が、その進退方向と直交する断面積を、その前進方向に漸次、減少させる形状、つまり、金型キャビティ9aの内部へ行くほど尖った形状であるため、金型キャビティ9aの内面に対して、金型キャビティ9aの内部へ行くほどその先端部の容積及び熱容量が小さくなり、その接触部において溶融樹脂を冷却固化させる冷却固化作用も低下すること、そして、シールピン機構10dのこの先端部の形状に準じて表層用溶融樹脂9b(第1流体)の表面に形成される凹部の形状も、金型キャビティ9aの内部へ行くほど尖った形状に形成され、表層用溶融樹脂9bの温度も、金型キャビティ9aの内部へ行くほど、溶融層9fの中央に近づき高温となるため冷却固化されにくいこと、のこれらの理由によるものである。更に、最終的に、金型キャビティ9a内のサンドイッチ成形品を冷却固化させる必要のある金型キャビティ9aの管理温度に対して、その内部の樹脂を溶融させて流動可能な状態で常時保持させるために、加熱手段及び断熱・保温手段を備えるホットランナーでもある内層用樹脂流路10c(第2流体流路)の管理温度は高く、その内層用樹脂流路10c内に配置されるシールピン機構10dの温度も高く維持されている。そのため、シールピン機構10dの冷却固化作用は、金型キャビティ9aの内面に対して、その先端部の容積減少による熱容量の低減効果を除いても低く、表層用溶融樹脂9bは、金型キャビティ9aの内面と接触する部分に対して、シールピン機構10dの先端部に接触する部分が冷却固化されにくく、形成されるスキン層9eもその厚さが薄く強度の弱いものとなる。
【0045】
次に、
図3(a)に示すように、表層用樹脂射出充填工程の途中に、あるいは、完了後に、金型キャビティ9aの容積を製品容積まで拡張させる金型キャビティ拡張工程が行われる。表層用樹脂流路9c(第1流体流路)のゲートバルブ9dが閉じられ、可動金型4を固定金型2から離間する方向に微小型開き量L1になるまで、図示しない型開閉機構により型開きさせ、金型キャビティ9aの容積を拡張させる。微小型開き量L1になるまで型開きさせた状態の金型キャビティ9aの容積が製品容積と略同じとなる。そして、この金型キャビティ拡張工程と同時に、あるいは、所定時間経過後に、内層用樹脂流路10c(第2流体流路)のシールピン機構10dを後退状態にさせ、後に内層10を形成する内層用溶融樹脂10b(第2流体)を、第2射出ユニット18から内層用樹脂流路10cを介して、表層用溶融樹脂9b(第1流体)と金型キャビティ9aの内面との接触面に形成された表層用溶融樹脂9bのスキン層(冷却固化層)9eを貫通させて、表層用溶融樹脂9b内に射出充填させる内層用樹脂射出充填工程が行われる。
【0046】
ここで、同
図3(a)の要部Bで示すこのシールピン機構10dの先端部の拡大図かつ
図4(a)の要部Cにおけるシールピン機構10dの先端部に形成されたスキン層を示す図が
図4(c)である。
図4(b)に示すように、金型キャビティ9aの内部へ行くほど尖った形状のシールピン機構10dの先端部を
図4(c)に示すように後退状態にさせ、金型キャビティ9a外へ退避させると、内層用樹脂流路10c(第2流体流路)の開口部分が開放され、表層用溶融樹脂9b(第1流体)の表面に形成された凹部に、内層用溶融樹脂10b(第2流体)が所定圧力で所定量、射出充填される。射出充填された内層用溶融樹脂10bの樹脂流動は、金型キャビティ9aの内部へ行くほど尖ったその凹部の形状により収束され、その流動圧力が漸次高められる。このような流動収束効果により流動圧力が高められた内層用溶融樹脂10bの樹脂流動の先端が、先に説明した、スキン層9eの厚みが最も薄く、強度の低いその凹部の底部に衝突されることにより、同樹脂流動を、表層用溶融樹脂9bのスキン層9eを貫通させ、表層用溶融樹脂9b内の溶融層9fに確実に射出充填させることができる。
【0047】
また、予め、内層用樹脂流路10c(第2流体流路)内の内層用溶融樹脂10b(第2流体)の樹脂内圧力を金型キャビティ9a内の表層用溶融樹脂9b(第1流体)の樹脂内圧力より十分に高めた上でシールピン機構10dの先端部を後退状態にさせ、内層用溶融樹脂10bを射出充填させれば、内層用樹脂流路10cの開口部分に表層用溶融樹脂9bが逆流することはなく、シールピン機構10dの先端部を前進状態にさせ、内層用溶融樹脂10bの射出充填を完了させる際にも、内層用樹脂流路10c内の内層用溶融樹脂10bの樹脂内圧力が金型キャビティ9a内の表層用溶融樹脂9bの樹脂内圧力より十分に高い状態でシールピン機構10dの先端部を前進状態にさせれば、内層用樹脂流路10cの開口部分に表層用溶融樹脂9bが逆流することはなく内層用溶融樹脂10bの射出充填を完了させることができる。
【0048】
ここで、金型キャビティ拡張工程と内層用樹脂射出充填工程とを連動させ、可動金型4の型開き量、すなわち、金型キャビティ9aの容積拡張量が、表層用溶融樹脂9b(第1流体)内に射出充填させる内層用溶融樹脂10b(第2流体)の射出充填量(容積)の増加と同じ、あるいは、所定量(容積)少なくなるように、型開閉機構による型開き速度や型位置保持力等を制御させ、前述した隙間が生じないように金型キャビティ9aの容積が製品容積になるまで、すなわち、微小型開き量L1になるまで可動金型4を型開きさせることが、内層用樹脂流路10cのシールピン機構10dの先端部と、金型キャビティ9aの内面との接触面に形成された表層用溶融樹脂9bのスキン層9eとを密着させた状態を維持させ、表層用樹脂流路10c(第2流体流路)部における樹脂反転不良の発生を防止する上で非常に重要である。
【0049】
更に、金型キャビティ拡張工程と内層用樹脂射出充填工程とを連動させることは、先に説明した表層用溶融樹脂9b(第1流体)のスキン層9e(冷却固化層)の形成と該スキン層への高い転写性を確保しつつ、内層用溶融樹脂10b(第2流体)の射出充填抵抗を低下させ、表層用溶融樹脂9bのスキン層9eからの樹脂反転不良の発生を防止する上でも好ましい。また、金型キャビティ拡張工程と内層用樹脂射出充填工程との連動制御については、先に説明したように、内層用溶融樹脂10bの射出充填量(容積)の増加を基準に可動金型4の型開き動作を制御させても良いし、逆に、可動金型4の型開きによる金型キャビティ9aの容積拡張量に合わせて、内層用樹脂射出充填工程における内層用溶融樹脂10bの射出充填量(容積)を同様に制御させる、あるいは、双方を連動制御させても良い。尚、金型キャビティ拡張工程と内層用樹脂射出充填工程との連動によらず、成形条件等で、ゲートバルブ10dと表層用溶融樹脂9bのスキン層9eとの密着性が維持される場合においては、金型キャビティ拡張工程と内層用樹脂射出充填工程とを必ずしも連動させる必要はない。
【0050】
一方、金型キャビティ9aの容積を拡張(縮小)させることができない金型構成の場合、金型キャビティ拡張工程がないため、樹脂反転不良を防止しつつ、金型キャビティ9aの内面の表層用溶融樹脂9b(第1流体)のスキン層への転写性を低下させないような樹脂流動を金型キャビティ9a内で形成させるために、最初に行われる表層用樹脂射出充填工程における表層用溶融樹脂9bの射出充填量(容積)、射出充填圧力、樹脂温度等、そして、続いて行われる内層用樹脂射出充填工程における内層用溶融樹脂10b(第2流体)の射出充填タイミング、射出充填量(容積)、射出充填圧力、樹脂温度等を十分に検討・調整する必要があることは先に説明したとおりである。
【0051】
図3に戻る。
図3(a)の金型キャビティ拡張工程及び内層用樹脂射出充填工程が完了し、可動金型4が微小型開き量L1になるまで型開きされ、金型キャビティ9aの容積が製品容積まで拡張された状態を
図3(b)に示す。引き続き、内層用樹脂流路10c(第2流体流路)のシールピン機構10dを前進状態にさせ、内層用樹脂流路10cの開口部分をシールさせると共に、所定の型締力を付与させた状態で冷却固化させる冷却固化工程に移行させる。そして、金型キャビティ9a内に成形された、表層9に内層10が内包されたサンドイッチ成形品11の冷却固化が完了した後、
図3(c)に示すように、可動金型4を図示しない型開閉機構により固定金型2から型開きさせ、図示しない製品取出手段によりサンドイッチ成形品11を射出成形機外へ搬出させ、成形サイクルが終了する。この時点において、既に、次サイクルのための計量を終えた表層用溶融樹脂9b(第1流体)及び内層用溶融樹脂10b(第2流体)が、それぞれ、表層用樹脂流路9c(第1流体流路)及び内層用樹脂流路10c(第2流体流路)に流動可能な状態で保持されている。
【0052】
以上説明したように、
図2(a)から
図3(c)までの工程を繰り返すことにより、内装用溶融樹脂10b(第2流体)を表層用溶融樹脂9b(第1流体)内に確実に充填させて、表層9に内層10が内包されたサンドイッチ成形品11を連続して成形させることができる。
【0053】
ここで、本実施例1のように、2つの射出ユニットが固定金型2に接続される形態、あるいは、1つの射出ユニットが固定金型2に接続される形態においては、一般的にはサンドイッチ成形品11の固定金型2側へゲート跡(ゲート痕、射出痕)が転写されるため、この固定金型2側が非意匠面、対向する可動金型4側が意匠面となる。そのため、製品を取り出す際は、非意匠面である固定金型2側から製品押出手段等で金型から押し出されるが、本発明に係るサンドイッチ成形品を成形させるサンドイッチ成形用金型として構成される射出成形用金型は、先に説明したように、2つ、あるいは、1つの射出ユニットがどのように配置されるか、2つ、あるいは、1つの射出ユニットが固定金型2及び可動金型4のいずれに接続されるか、あるいは、サンドイッチ成形品の固定金型2側、可動金型4側のいずれが意匠面で非意匠面か、等の形態の差異によって、先に説明した効果に大きな差異が生じることはなく、そのような異なる形態においても実施することができる。
【実施例2】
【0054】
図5及び
図6を参照しながら本発明の実施例2を説明する。
図5は本発明の実施例2に係る射出成形用金型の概略断面図である。
図6は本発明の実施例2に係る射出成形用金型のシールピン機構先端部の拡大図である。
図6(a)が実施例1の
図2(c)の成形工程に相当する実施例2における要部Aの拡大図、
図6(b)が
図6(a)の要部Dにおけるシールピン機構先端部に形成されたスキン層、
図6(c)が実施例1の
図3(a)の成形工程に相当する実施例2における要部Bの拡大図かつ
図6(a)の要部Dにおけるシールピン機構先端部に形成されたスキン層を示す。
【0055】
実施例2は、本発明の射出成形用金型が、内部に中空部が形成された中空成形品を成形させる中空成形用金型として構成されるものである。実施例2における実施例1との相違点は、第2流体が内層用溶融樹脂10bではなく、内部に中空部を形成させるための加圧ガス10b’である点である。一方、第1流体については、説明の都合上、表層用溶融樹脂9bではなく溶融樹脂9b’とするが、共に樹脂材料であることに変わりはない。そのため、成形される樹脂成形品が相違するにもかかわらず、第1流体である溶融樹脂9b’内に第2流体である加圧ガス10b’を注入させる工程も含め、それ以外の成形工程や、金型及び射出成形機の構成は実施例1と基本的に同じため、実施例1との相違点についてのみ説明する。
【0056】
また、この中空成形用金型の説明を行うに際し、汎用の射出成形機に対して、射出成形機側で説明すべき点は、加圧ガスの供給手段(加圧ガスユニット18’)が必要である点のみであり、他に特殊な構成要件はない。そのため、射出成形機の説明は割愛し、関連する構成要件についてのみ説明する。ここで、
図5及び
図6も、
図1から
図4及び
図7と同様に、金型等、成形工程を説明するために必要な構成要件のみの概略断面図であり、これら概略断面図は射出成形機の長手方向に沿った縦断面図(側面断面図)、横断面図(平面断面図)のいずれであっても良い。
【0057】
最初に、
図5を参照しながら、本発明の実施例2に係る、中空成形用金型として構成される射出成形用金型を説明する。
図5に示すように、本発明の実施例1に係る、サンドイッチ成形用金型として構成される射出成形用金型との相違点は、第2射出ユニット18ではなく、加圧ガスユニット18’が配置される点である。そして、加圧ガスユニット18’から金型キャビティ9a内に流入させる第2流体が、内層用溶融樹脂10bでなく加圧ガス10b’となるため、第2流体流路を内層用樹脂流路10cではなく、加圧ガス流路10c’とする。しかしながら、加圧ガス流路10c’の金型キャビティ9a側端部の開口部分にシールピン機構10dが進退自在に配置されている点は同じである。また、先に説明したように、第1流体については、説明の都合上、表層用溶融樹脂9bではなく溶融樹脂9b’とするため、表層用樹脂流路9cも樹脂流路9c’(第1流体流路)とする。
【0058】
ここで、本実施例2においても、実施例1と同様に、固定金型2及び可動金型4は、それぞれの金型の分割面(金型分割面、パーティング面、割面と呼称されることもある)がシェアエッジ構造となっており、射出成形機の型開閉機構による型開閉動作で、金型キャビティ容積を可変させるものとする。
【0059】
次に、実施例1との相違点の1つである加圧ガスユニット18’について説明する。加圧ガスユニット18’は、後述する中空部形成工程で使用される、空気、窒素、二酸化炭素等のガスを所定量、所定圧力で供給可能なユニットであって、タンクユニットと、タンクユニットに係る圧力計、圧力制御弁、ガス流量制御弁、逆止弁、大気開放弁等で構成される。本加圧ガスユニット18’は、タンクユニットを含む1つのユニットとして、射出成形機近傍に配置され、固定金型2の加圧ガス流路10cと配管やガスホース等で接続されている。加圧ガスを射出成形機が設置されている工場のユーティリティー配管等から供給可能な場合は、それらユーティリティー配管から直接加圧ガスを供給させ、必要な配管機器類のみをユニットとして別置きする形態や、該ユニットを射出成形機の固定盤等に配置させる形態も可能である。
【0060】
次に、実施例1の
図2から
図4を引用し、
図6を参照しながら、本発明の実施例2に係る射出成形用金型を使用する中空成形品の成形工程を説明する。
図5に示す成形サイクル開始前の型開き状態から、可動金型4を図示しない型開閉機構により固定金型2側に移動させ、可動金型4と固定金型2とを型閉じさせる。その後、型締力を付与させた状態で、樹脂流路9c’(第1流体流路)のゲートバルブ9dを開放させ、後に樹脂成形体9’(中空成形品11’)を形成する溶融樹脂9b’(第1流体)を、射出ユニット17から樹脂流路9c’を介して、可動金型4及び固定金型2により形成された金型キャビティ9a内に射出充填させる射出充填工程が行われる。この射出充填工程は、先に説明した第1流体の呼称の相違点以外、実施例1の
図2(b)及び
図2(c)と同じである。また、金型キャビティ9aの容積を製品容積より縮小(拡張)させることができない金型構成の場合も先に説明したとおりである。
【0061】
ここで、実施例1の
図2(c)の成形工程に相当する実施例2における要部Aの拡大図が
図6(a)である。先に説明したように、
図6(a)の要部D、すなわち、金型キャビティ9a内に所定量、突出させているシールピン機構10dの先端部と溶融樹脂9b’(第1流体)との接触部にもスキン層9eが形成されるが、このシールピン機構10dの先端部と溶融樹脂9b’との接触部に形成されたスキン層9eは、
図6(b)に示すように、シールピン機構10dの先端部の先端に行くほど、金型キャビティ9aの内部に行くほどその厚みが薄く形成され、その強度も漸次低下する。その理由は先に説明したとおりである。
【0062】
また、一般的な中空射出成形方法で使用されるガス注入ノズルは、ノズル内に、更に好適にはノズル先端部に、加圧ガスの注入を制御すると共に、ノズル先端部からの溶融樹脂の逆流を防止するガス遮断・開放機構が設けられる。具体的には、ノズル先端部のノズル長手方向に所定長さのスリット(切り込み)を加工し、通常は、ノズル内のガス圧力を、ノズルを挿入させた溶融樹脂の樹脂内圧力より低く保持させることで、樹脂内圧力によりスリットを弾性変形により閉じさせ、ガスを注入させる場合には、ノズル内のガス圧力を、ノズルを挿入させた溶融樹脂の樹脂内圧力より高く保持させることで、ガス注入圧力によりスリットを開放させるガス遮断・開放機構や、スプリング等の弾性部材とボールとの組み合わせによるガス遮断・開放機構が設けられる。当然ながらノズル内にはこれらガス遮断・開放機構と連通されるガス流路が配置され、ノズル全体の金型キャビティ内への進退動作機構と加えて、ガス注入ノズルの構造の複雑化や、ノズル先端部への溶融樹脂逆流による閉塞等の問題が生じ易い。これに対して、本発明に係るシールピン機構の先端部には、ガス遮断・開放機構や、このガス遮断・開放機構と連通されるガス流路を内蔵させる必要がない。また、シールピン機構10dの先端部のみを加圧ガス流路10c’(第2流体流路)内を摺動させて、加圧ガス流路10c’の開口部分の遮断・開閉を行わせる構成により、構造の複雑化やノズル先端部への溶融樹脂逆流による閉塞等の問題を回避させることができる。
【0063】
次に、射出充填工程の途中に、あるいは、完了後に、金型キャビティ9aの容積を製品容積まで拡張させる金型キャビティ拡張工程が行われる。そして、この金型キャビティ拡張工程と同時に、あるいは、所定時間経過後に、加圧ガス流路10c’(第2流体流路)のシールピン機構10dを後退状態にさせ、中空部10’を形成させるための加圧ガス10b’(第2流体)を、加圧ガスユニット18’から加圧ガス流路10c’を介して、溶融樹脂9b’(第1流体)と金型キャビティ9aの内面との接触面に形成された溶融樹脂9b’のスキン層(冷却固化層)9eを貫通させて、溶融樹脂9b’内の溶融層9fに注入させる中空部形成工程が行われる。この中空部形成工程は、実施例1における内層用樹脂射出充填工程に相当するもので、第2流体を内層用溶融樹脂10bから加圧ガス10b’置き換えれば、先の金型キャビティ拡張工程と合わせて、実施例1の
図3(a)及び
図3(b)と同じである。
【0064】
ここで、実施例1の
図3(a)の成形工程に相当する実施例2における要部Bの拡大図かつ
図6(a)の要部Dにおけるシールピン機構10dの先端部に形成されたスキン層を示す図が
図6(c)である。注入された加圧ガス10b’(第2流体)のガス流動は、金型キャビティ9aの内部へ行くほど尖ったその凹部の形状により収束され、その流動圧力が漸次高められる。このような流動収束効果により流動圧力が高められた加圧ガス10b’のガス流動の先端が、スキン層9eの厚みが最も薄く、強度の低いその凹部の底部に衝突されることにより、加圧ガス10b’のガス流動を、樹脂成形体9’のスキン層9eを貫通させ、溶融樹脂9b’内の溶融層9fに確実に注入させ、中空部10’を形成させることができる。
【0065】
実施例1と同様に、金型キャビティ拡張工程と中空部形成工程とを連動させることが、加圧ガス流路10c’(第2流体流路)のシールピン機構10dの先端部と、金型キャビティ9aの内面との接触面に形成された溶融樹脂9b’(第1流体)のスキン層9eとを密着させた状態を維持させ、加圧ガス流路10c’部におけるガス噴出の発生を防止する上で、また、溶融樹脂9b’のスキン層9e(冷却固化層)の形成と該スキン層への高い転写性を確保しつつ、加圧ガス10b’(第2流体)の注入抵抗を低下させ、溶融樹脂9b’のスキン層9eからの加圧ガスの噴出、いわゆる、ガス破裂不良の発生を防止する上で好ましい。
【0066】
一方、金型キャビティ9aの容積を拡張(縮小)させることができない金型構成の場合、実施例1と同様に、金型キャビティ拡張工程がないため、ガス破裂不良を防止しつつ、金型キャビティ9aの内面の溶融樹脂9b’(第1流体)のスキン層への転写性を低下させないような樹脂流動を金型キャビティ9a内で形成させるために、最初に行われる射出充填工程における溶融樹脂9b’の射出充填量(容積)、射出充填圧力、樹脂温度等、そして、続いて行われる中空部形成工程における加圧ガス10b’(第2流体)の注入タイミング、注入量(容積)、注入圧力、加圧ガス温度等を十分に検討・調整する必要があることは言うまでもない。
【0067】
次に、実施例1の
図3(b)と同様に、金型キャビティ拡張工程及び中空部形成工程が完了し、可動金型4が微小型開き量L1になるまで型開きされ、金型キャビティ9aの容積が製品容積まで拡張される。引き続き、加圧ガス流路10c’(第2流体流路)のシールピン機構10dを前進状態にさせ、加圧ガス流路10c’の開口部分をシールさせると共に、所定の型締力を付与させた状態で冷却固化させる冷却固化工程に移行させる。そして、金型キャビティ9a内に成形された、内部に中空部10’が形成された中空成形品11’の冷却固化が完了した後、実施例1の
図3(c)と同様に、可動金型4を図示しない型開閉機構により固定金型2から型開きさせ、図示しない製品取出手段により中空成形品11’を射出成形機外へ搬出させ、成形サイクルが終了する。この時点において、次サイクルのための計量を終えた溶融樹脂9b’(第1流体)が、樹脂流路9c’(第1流体流路)に流動可能な状態で保持されており、加圧ガス10b’(第2流体)も加圧ガス流路10c’(第2流体流路)内に所定圧力で保持されている。
【0068】
また、中空部10’を形成させた加圧ガス10b’(第2流体)は、金型キャビティ9a内に成形された中空成形品11の冷却固化工程の途中に、あるいは、完了後に、加圧ガス流路10c’(第2流体流路)から加圧ガスユニット18’間の管路に配置された大気開放弁を開放させるか、加圧ガス流路10c’の開口部分を、シールピン機構10dを後退状態にさせ、開放させて排出させれば良い。
【0069】
以上説明したように、実施例1の
図2(a)から
図3(c)までの工程と同様の工程を繰り返すことにより、加圧ガス10b’(第2流体)を溶融樹脂9b’(第1流体)内に確実に注入させて、内部に所望する中空部10’が形成された中空成形品11’を連続して成形させることができる。
【0070】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。実施例1及び実施例2において、金型キャビティ拡張工程が、シェアエッジ構造の金型を前提に、射出成形機の型開閉機構による型開閉動作で、金型キャビティの容積を可変させるものとしたが、金型キャビティの容積を可変させる手段は、このような射出成形機の型開閉機構による型開閉動作に限定されるものではなく、金型内可動部の移動動作等、金型キャビティの容積を、金型キャビティ内のガス圧力、あるいは、金型キャビティ内の樹脂圧力に対抗して、その容積、可変速度、可変容積保持力(型位置保持力)等を任意で制御可能な手段であれば良い。また、シェアエッジ構造ではなく、型開閉方向に直交する平面のみで構成される金型分割面(PL面とも呼称される)を有する一般的な構造の金型であっても、本発明の実施が可能であることも先に説明したとおりである。
【0071】
更に、本発明に係る射出成形用金型は、金型キャビティ内に先に射出充填された溶融樹脂の表面に形成されるスキン層(冷却固化層)が強固な場合においても、該溶融樹脂内に、他の流体を確実に充填・注入可能な射出成形用金型、更に詳しくは、表層用溶融樹脂内に内層用溶融樹脂を確実に充填可能なサンドイッチ成形品の射出成形用金型、及び、溶融樹脂内に加圧ガスを確実に注入させて所望する中空部の形成が可能な中空成形品の射出成形用金型としたが、金型キャビティ内に先に射出充填された溶融樹脂の表面に形成されるスキン層(冷却固化層)が強固でない場合における実施を否定するものではない。すなわち、該スキン層が強固でない場合であっても、該スキン層の厚みが最も薄く、強度の低い部位は、シールピン機構の先端部により該スキン層に形成された凹部の底部であることに変わりはなく、内層用溶融樹脂の樹脂流動、あるいは、加圧ガスのガス流動がその凹部の底部に衝突されることにより、これら流体の流動を先に射出充填させた溶融樹脂のスキン層を貫通させ、溶融樹脂内の溶融層に確実に充填・注入させることができるという効果を奏することに変わりはない。