(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
容器内に第一電池及び第二電池を収容し、前記第一電池が前記容器内の空気の流れの上流側に位置し、前記第二電池が前記容器内の空気の流れの下流側に位置する組電池の温度調節装置であって、
前記容器の前記上流側に接続され前記容器内の前記第一電池及び第二電池に空気を供給する第一流路と、前記第一電池よりも前記容器内の前記下流側に接続されて前記第二電池に空気を供給する第二流路とに分岐形成された供給流路と、
前記容器に接続され前記容器の前記第二電池側から空気を排出する排出流路と、
前記第一電池の第一温度及び前記第二電池の第二温度をそれぞれ検出する温度センサと、
前記温度センサで検出された前記第一温度及び前記第二温度に応じて前記組電池に空気を供給して前記組電池を温度調節する温度制御手段と、
前記温度制御手段による温度調節が行われるときに前記温度センサで検出された前記第一温度及び前記第二温度に応じて前記第一流路及び前記第二流路を流通する各空気の流量を変更する流量変更手段と、を備え、
前記温度制御手段は、前記温度センサで検出された前記第一温度及び前記第二温度の少なくとも一方が予め設定された所定の要冷却温度以上の場合に前記組電池を冷却し、前記第一温度及び前記第二温度の少なくとも一方が予め設定された所定の要暖房温度未満の場合に前記組電池を暖房し、
前記流量変更手段は、少なくとも前記第一温度が前記要冷却温度以上又は前記要暖房温度未満の場合に、前記第一流路に空気を流通させ、前記第一流路を流通した空気によって前記第一温度及び前記第二温度の温度差が増大傾向にある場合に、前記第二流路の空気の流量を増加させる
ことを特徴とする、組電池の温度調節装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
[1.第一実施形態]
第一実施形態に係る組電池の温度調節装置の構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。本温度調節装置は、電気自動車やハイブリッド車等の電動車両に用いて好適であり、ここではハイブリッド車に適用したものを例として説明する。
【0023】
[1−1.全体構成]
図2は本温度調節装置を備えた車両の構成図である。
図2に示すように、車両1は、エンジン(ENG)2の出力軸(回転軸)2aにクラッチ3を介して電動発電機(以下、電動機ともいう)4の回転軸4aが接続され、電動機4の回転軸4aに変速機(T/M)5の入力軸5aが直結されたパラレル式ハイブリッド自動車として構成されている。また、変速機5の出力軸5bは、プロペラシャフト6,図示しないディファレンシャル及びドライブシャフトを介して左右の駆動輪7に接続されている。したがって、クラッチ3が接続されているときには、エンジン2の出力軸2aと電動機4の回転軸4aの双方が駆動輪7と機械的に接続され、クラッチ3が切断されているときには、電動機4の回転軸4aのみが駆動輪7と機械的に接続された状態となる。
【0024】
電動機4は、バッテリ(組電池)10に蓄えられた直流電力がインバータ8によって交流電力に変換されて供給されることにより電動機(モータ)として作動し、その駆動力が変速機5によって適切な速度に変換された後に駆動輪7に伝達される。また、車両減速時には、電動機4が発電機として作動し、駆動輪7の回転による運動エネルギが変速機5を介して電動機4に伝達され、交流電力に変換されることにより回生制動力を発生する。そして、この交流電力はインバータ8によって直流電力に変換された後、バッテリ10に充電され、駆動輪7の回転による運動エネルギが電気エネルギとして回収される。
【0025】
一方、エンジン2の駆動力は、クラッチ3が接続されているときに電動機4の回転軸4aを経由して変速機5に伝達され、適切な速度に変速された後に駆動輪7に伝達される。したがって、エンジン2の駆動力が駆動輪7に伝達されているときに電動機4がモータとして作動する場合には、エンジン2の駆動力と電動機4の駆動力とがそれぞれ駆動輪7に伝達される。すなわち、車両1の駆動のために駆動輪7に伝達されるべき駆動トルクの一部がエンジン2から供給されると共に、残りが電動機4から供給される。
【0026】
また、バッテリ10の充電率が低下してバッテリ10を充電する必要があるときには、電動機4が発電機として作動すると共に、エンジン2の駆動力の一部を用いて電動機4を駆動する。これにより発電が行われ、発電された交流電力がインバータ8によって直流電力に変換された後にバッテリ10に充電される。なお、バッテリ10の近傍には、バッテリ10を暖房するためのヒータ11が設けられている。
【0027】
また、車両1には、上記の駆動系及び発電系の装置とは別に、車室内の空気の温度を調節するためのエアコン(A/C)9が設けられている。また、車両1にはこれら装置を制御する電子制御装置(以下、ECUという)が設けられている。すなわち、車両1には、エンジン2を制御するエンジンECU(ENG_ECU)12,インバータ8を制御するインバータECU13,エアコン9を制御するエアコンECU(A/C_ECU)14,バッテリ10及びヒータ11を制御するバッテリマネジメントユニット(以下、BMUという)15がそれぞれ設けられ、これらのエンジンECU12,インバータECU13,エアコンECU14,BMU15を通じて車両1を統合制御するために車両ECU16が設けられている。各ECU12〜14,16及びBMU15は、メモリ(ROM,RAM)及びCPU等で構成されるコンピュータである。
【0028】
なお、エンジンECU12,インバータECU13,エアコンECU14の各機能については、周知の技術を適用可能であるため、詳細については省略する。
【0029】
[1−2.温度調節装置の構成]
図1は本温度調節装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車室1a内には、バッテリ10,ヒータ11,BMU15,車両ECU16及び配管20が設けられ、車室1a外には、エアコンECU14,配管17及び18,配管17内に配置されたエアコンブロア9a及びエアコン側シャッタバルブ9bが設けられている。配管17は車室1a内へ外気を導入するものであり、配管18は車室1a内の空気を配管17へ循環させる配管である。エアコン側シャッタバルブ9bはこれら配管17及び18が接続された部分に設けられ、エアコンECU14により制御されて空気の流れを切り替える。なお、エアコンブロア9a及びエアコン側シャッタバルブ9bの上流側には図示しないコンプレッサやコンデンサ等が設けられており、これらによりエアコン9(
図2参照)が構成されている。車室1a内は、このエアコン9により空調される。
【0030】
バッテリ10は、バッテリケース(容器)30内に電池モジュール(電池)31が複数収容された組電池として構成されている。ここでは、バッテリケース30の長手方向に四つずつ,短手方向に二つずつ配設され、八つの電池モジュール31が収容されている。各電池モジュール31は、そのケース内に複数の電池セルが直列に接続されて収容された組電池である。なお、電池モジュールの数はこれに限られない。
【0031】
複数の電池モジュール31は、互いに隙間を有してバッテリケース30内に収容されている。これら複数の電池モジュール31は、後述する供給流路21から供給される空気が各電池モジュール31の周囲を流通することにより冷却又は暖房される。これにより、バッテリ10の温度調節が行われる。各電池モジュール31には、それぞれ温度センサ32が設けられており、各電池モジュール31の温度が各温度センサ32によってそれぞれ検出される。検出された各電池モジュール31の温度情報は、BMU15へ伝達される。なお、
図1では分かりやすくするために、各電池モジュール31間の隙間は大きく表現されている。また、温度センサ32は二つのみ記載しているが、一つの電池モジュール31に一つの温度センサ32が設けられている。
【0032】
ヒータ11は、例えばPTCヒータ等のヒータであって、BMU15によりスイッチのオン/オフ状態が制御され、スイッチオンのときに空気を加熱する。このヒータ11は、スイッチオンの場合、ハイ/ローの二段階に温度が切り替られるようになっている。この温度切替制御もBMU15により行われる。なお、スイッチオンの場合の温度切替は二段階より多くてもよく、また、オン/オフ制御のみで温度切替制御がなくてもよい。ヒータ11は、後述するようにバッテリ10を暖房する際に用いられる。
【0033】
配管20は、車室1a内の空気を配管20内に導入し、その空気をバッテリケース30内へ供給するための供給流路21と、バッテリケース30内を流通し終えた空気を車室1a外へ排出するための排出流路22と、供給流路21と排出流路22とを接続する循環流路23とを有している。
供給流路21は、その上流端が車室1a内の任意の位置で開口して設けられ、その中間部が下流に向かって二つの流路に分岐形成されている。分岐した一方の流路(第一流路)21aの下流端は、バッテリケース30の長手方向の一端部に接続され、他方の流路(第二流路)21bの下流端は、バッテリケース30の長手方向の中間部に接続されている。第一流路21aと第二流路21bとに分岐した分岐点には、第一流路21aに流れる空気の流量と第二流路21bに流れる空気の流量とを変更する流量変更バルブ(流量変更手段)33が設けられている。流量変更バルブ33は、車両ECU16によりその開度が制御されることで第一流路21a及び第二流路21bに流れる空気の流量を変更する。
【0034】
排出流路22は、その上流端がバッテリケース30の長手方向の他端部に接続され、下流端が車室1a外で開口して設けられている。排出流路22の上流側には、配管20内及びバッテリケース30内に空気を流通させるためのファン26が設けられている。ファン26は車両ECU16により制御される。また、排出流路22の下流側には隙間22cが設けられている。この隙間22cにより排出流路22内を流通する空気がわずかに車室1a内に排出され、車室1a内の負圧が回避される。
【0035】
バッテリケース30には、上記した供給流路21の第一流路21a及び第二流路21bと排出流路22とが接続されている。これらの流路によりバッテリケース30内に空気の流れが生成される。このとき、第一流路21a側に配置されたA〜Dの電池モジュール31(以下、電池モジュール31A〜Dという)は、第一流路21aから供給される空気のみによって冷却又は暖房される。一方、第二流路21b側に配置されたE〜Hの電池モジュール31(以下、電池モジュール31E〜Hという)は、第二流路21bから供給される空気に加え、電池モジュール31A〜Dの周囲を流通した空気によって冷却又は暖房される。
【0036】
これは、電池モジュール31E〜Hが電池モジュール31A〜Dよりも排出流路22側に配置されており、空気の流れの下流側に位置しているためである。以下、下流側の電池モジュール31E〜Hを第二電池31E〜Hともいう。これに対して、電池モジュール31A〜Dは空気の流れの上流側に位置している。以下、上流側の電池モジュール31A〜Dを第一電池31A〜Dともいう。本実施形態では、バッテリケース30内の空間が、便宜的に二つの空間から構成されたものとする。これらの二つの空間のうち、第二流路21b及び排出流路22に接続された一方の空間内に第二電池31E〜Hが収容され、他方の空間内に第一電池31A〜Dが収容される。
【0037】
循環流路23は、供給流路21の分岐点の上流側と排出流路22の中間部とを接続する流路であり、排出流路22を流れる空気を再び供給流路21へ戻し、供給流路21とバッテリケース30と排出流路22との間において空気を循環させる流路である。この循環流路23の中間部にはヒータ11が介装されており、循環流路23を流通する空気は、ヒータ11により加熱されて供給流路21へ戻される。すなわち、この循環流路23は、暖房用の通路である。
【0038】
供給流路21と循環流路23との接続点には、供給流路21の流通状態を切り替えるシャッタバルブ(切換弁,以下、上流側シャッタバルブという)24が設けられている。この上流側シャッタバルブ24は、閉状態のときに供給流路21の上流側と下流側とを連通状態とし、開状態のときに循環流路23と供給流路21の下流側とを連通状態とする。言い換えると、上流側シャッタバルブ24が閉じているときは車室1a内の空気がバッテリケース30内へ供給され、上流側シャッタバルブ24が開いているときはヒータ11により加熱された空気がバッテリケース30内へ供給される。つまり、上流側シャッタバルブ24は、ヒータ11で加熱された空気と加熱されていない空気(すなわち、室内空気)とを切り替える弁である。
【0039】
また、排出流路22と循環流路23との接続点には、排出流路22の流通状態を切り替えるシャッタバルブ(切替弁,以下、下流側シャッタバルブという)25が設けられている。この下流側シャッタバルブ25は、閉状態のときに排出流路22の上流側と下流側とを連通状態とし、開状態のときに排出流路22の上流側と循環流路23とを連通状態とする。言い換えると、下流側シャッタバルブ25が閉じているときはバッテリケース30内の空気が外部へ排出され、下流側シャッタバルブ25が開いているときはバッテリケース30内を流通し終えた空気がヒータ11へ導入されて加熱される。
【0040】
これら上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25は、BMU15により制御される。このとき、上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25は、ヒータ11のオン/オフ制御と連動して作動するように制御される。すなわち、ヒータ11により加熱された空気がバッテリケース30内に供給される場合は、BMU15により上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25がいずれも開状態とされてヒータ11がオン状態となるように制御される。反対に、室内空気がバッテリケース30内に供給される場合は、BMU15により上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25がいずれも閉状態とされてヒータ11がオフ状態となるように制御される。
【0041】
[1−3.制御構成]
BMU15は、バッテリ10の温度や電圧、インバータ8とバッテリ10との間に流れる電流等を検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ10の充電率を算出し、過充電や過放電とならないようにバッテリ10の状態を監視するものである。ここでは、BMU15は、温度センサ32で検出された全ての電池モジュール31の温度を収集しており、この温度情報から、第一電池(上流側の電池モジュール)31A〜Dの最大値(最大温度)T
A及び最小値(最小温度)T
Cと、第二電池(下流側の電池モジュール)31E〜Hの最大値(最大温度)T
B及び最小値(最小温度)T
Dとを選択する。なお、以下、特に最大値と最小値とを区別しない場合は、第一電池31A〜Dの温度を第一温度、第二電池31E〜Hの温度を第二温度と呼ぶ。
【0042】
BMU15は、選択した第一電池31A〜Dの最大値T
A及び最小値T
Cと、第二電池31E〜Hの最大値T
B及び最小値T
Dとに加え、算出した充電率や各検出結果を車両ECU16へ伝達する。また、BMU15は、後述する車両ECU16からの指令により、ヒータ11のオン/オフ制御及び温度切替制御や、配管20に設けられた上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25の切替制御を行う。
【0043】
車両ECU16は、上記したように車両1を統合制御する電子制御装置であり、ここではバッテリ10の温度調節制御を実施する。車両ECU16は、温度センサ32で検出された電池モジュール31の温度に応じてバッテリ10の温度調節を行う温度制御部(温度制御手段)16aとしての機能要素と、温度センサ32で検出された電池モジュール31の温度に応じて第一流路21a及び第二流路21bを流通する各空気の流量を変更する流量変更部(流量変更手段)16bとしての機能要素とを有している。
【0044】
温度制御部16aは、BMU15から伝達された第一電池31A〜Dの第一温度と第二電池31E〜Hの第二温度とに基づいて、バッテリ10が高温の場合は冷却をし、低温の場合は暖房をし、適温の場合は保持するように制御するものである。
まず、冷却の場合を説明する。温度制御部16aは、第一電池31A〜Dの最大値T
Aと第二電池31E〜Hの最大値T
Bの少なくとも一方が、冷却を必要とする温度(以下、要冷却温度という)以上の場合は、バッテリ10を冷却する制御を行う。要冷却温度は、バッテリ10の冷却を行うか否かを判定するための閾値であり、使用される電池モジュールに応じて予め設定される。要冷却温度は、第一電池31A〜Dに対する温度(以下、第一要冷却温度という)T
A0と、第二電池31E〜Hに対する温度(以下、第二要冷却温度という)T
B0とがあり、ここでは、第一要冷却温度T
A0と第二要冷却温度T
B0とが同じ温度に設定されている。
【0045】
言い換えると、温度制御部16aは、以下の温度条件(1)及び(2)の少なくともいずれか一方が成立した場合に、バッテリ10を冷却するための制御を実施する。
(1)第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0以上(T
A≧T
A0)
(2)第二電池31E〜Hの最大値T
Bが第二要冷却温度T
B0以上(T
B≧T
B0)
【0046】
温度制御部16aは、バッテリ10を冷却する場合は、BMU15に対して以下の指令1を伝達する。
(指令1)ヒータ11をオフ,ファン26をオン,上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25を閉状態とする。
【0047】
当該指令1により、バッテリケース30内には、車室1a内の空気が供給され、バッテリ10は冷却される。なお、温度制御部16aは、以下の温度条件(3)が成立した場合は、バッテリ10の冷却は必要ないと判定し、次に暖房が必要であるか否かの判定を実施する。すなわち、温度制御部16aは、冷却を暖房よりも優先して判定する。
(3)第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0未満、且つ、第二電池31E〜Hの最大値T
Bが第二要冷却温度T
B0未満(T
A<T
A0、且つ、T
B<T
B0)
【0048】
次に、暖房の場合を説明する。温度制御部16aは、第一電池31A〜Dの最小値T
Cと第二電池31E〜Hの最小値T
Dの少なくとも一方が、暖房を必要とする温度(以下、要暖房温度という)未満の場合は、バッテリ10を暖房する制御を行う。要暖房温度は、バッテリ10の暖房を行うか否かを判定するための閾値であり、使用される電池モジュールに応じて予め設定されるものであって、当然要冷却温度よりも低い温度である。要暖房温度は、第一電池31A〜Dに対する温度(以下、第一要暖房温度という)T
C0と、第二電池31E〜Hに対する温度(以下、第二要暖房温度という)T
D0とがあり、ここでは、第一要暖房温度T
C0と第二要暖房温度T
D0とが同じ温度に設定されている。
【0049】
言い換えると、温度制御部16aは、以下の温度条件(4)及び(5)の少なくともいずれか一方が成立した場合に、バッテリ10を暖房するための制御を実施する。
(4)第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0未満(T
C<T
C0)
(5)第二電池31E〜Hの最小値T
Dが第二要暖房温度T
D0未満(T
D<T
D0)
【0050】
温度制御部16aは、バッテリ10を暖房する場合は、BMU15に対して以下の指令2を伝達する。
(指令2)ヒータ11をオン,ファン26をオン,上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25を開状態とする。
【0051】
当該指令2により、バッテリケース30内には、循環流路23においてヒータ11により加熱された空気が供給され、バッテリ10は暖房される。なお、温度制御部16aは、以下の温度条件(6)が成立した場合は、バッテリ10の暖房は必要ないと判定し、以下の適温保持の制御を実施する。
(6)第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0以上、且つ、第二電池31E〜Hの最小値T
Dが第二要暖房温度T
D0以上(T
C≧T
C0、且つ、T
D≧T
D0)
【0052】
ここでいう適温とは、バッテリ10の冷却も暖房も必要ない、バッテリ10の使用に適した温度範囲のことである。すなわち、上記の温度条件(3)及び(6)が成立した場合である。温度制御部16aは、この温度範囲のときは冷却も暖房も実施せず、現状の状態を保持する制御を行う。
【0053】
温度制御部16aは、バッテリ10を保持する場合は、BMU15に対して以下の指令3を伝達する。
(指令3)ヒータ11をオフ,ファン26をオフ,上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25は現状の開閉状態を保持する。
当該指令3により、バッテリケース30内には空気が供給されない(循環しない)ため、バッテリ10は冷却も暖房もされず、現状の状態が保持される。
【0054】
流量変更部16bは、BMU15から伝達された第一電池31A〜Dの第一温度と第二電池31E〜Hの第二温度とに基づいて、温度制御部16aによりバッテリ10の温度調節制御が行われるときに流量変更バルブ33の開度を制御するものである。本実施形態の流量変更バルブ33は、空気の流れを第一流路21a及び第二流路21bのいずれか一方に切り替える弁となっている。すなわち、流量変更バルブ33は、第一流路21a側の流量を増加させる場合は、第一流路21a側が全開、第二流路21b側が全閉となるように制御され、第二流路21b側の流量を増加させる場合は、第一流路21a側が全閉、第二流路21b側が全開となるように制御される。
【0055】
まず、冷却の場合を説明する。流量変更部16bは、温度制御部16aによりバッテリ10の冷却が必要であると判定されたら、第一電池31A〜Dの最大値T
Aと第一要冷却温度T
A0とを比較し、第二電池31E〜Hの最大値T
Bと第二要冷却温度T
B0とを比較する。ここで、温度制御部16aによりバッテリ10の冷却が必要であると判定されると、通常はバッテリケース30全体に空気を流すために、上流側から空気が流れるようにする(すなわち、第一流路21aから空気を供給する)。しかし、このように空気を供給すると、バッテリケース30内の上流側の電池モジュール31A〜Dは冷却されやすいが、下流側の電池モジュール31E〜Hは冷却されにくいため、上流側の電池モジュール31A〜Dと下流側の電池モジュール31E〜Hとの間に温度差が生じてしまう。
【0056】
これに対して、本温度調節装置の流量変更部16bは、以下の表1に示すように流量変更バルブ33を制御する。以下の表1は、温度制御部16aによりバッテリ10の冷却が必要であると判定された場合の、第一電池及び第二電池の温度に対する、ヒータ11のオンオフ状態,上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25の開閉状態,流量変更バルブ33の開閉状態及びファン26の作動状態を示す。
【0057】
表1に示すように、流量変更部16bは、第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0以上のときは、第二電池31E〜Hの温度にかかわらず、第一流路21a側に流れる空気の流量を増加させる(表1の1及び3)。また、第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0未満で第二電池31E〜Hの最大値T
Bが第二要冷却温度T
B0以上のときは、第二流路21b側に流れる空気の流量を増加させる(表1の2)。
【0058】
これは、第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0未満であって第二電池31E〜Hの最大値T
Bが第二要冷却温度T
B0以上の場合に、第一流路21aからバッテリケース30内へ空気を供給すると、第一電池31A〜Dのほうが第二電池31E〜Hよりも冷えやすい(温度低下しやすい)ため、第一温度と第二温度との温度差がより増大してしまうからである。流量変更部16bは、このように第一温度と第二温度との温度差が増大傾向にある場合には、第二流路21b側に流れる空気の流量を増加させる。
【0060】
なお、ここでは、表1の1の場合(第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0以上で第二電池31E〜Hの最大値T
Bも第二要冷却温度T
B0以上の場合)は、第一温度と第二温度との温度差はないと解釈し、表1の3の場合(第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0以上で第二電池31E〜Hの最大値T
Bが第二要冷却温度T
B0未満の場合)は、第一温度と第二温度との温度差が減少傾向にあると解釈する。
【0061】
また、上記したように第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0未満であって、第二電池31E〜Hの最大値T
Bも第二要冷却温度T
B0未満の場合(すなわち、上記の温度条件(3)の場合)は、温度制御部16aによるバッテリ10の冷却は実施されず、暖房が必要であるか否かの判定が行われる。
【0062】
流量変更部16bは、温度制御部16aによりバッテリ10の暖房が必要であると判定されたら、第一電池31A〜Dの最小値T
Cと第一要暖房温度T
C0とを比較し、第二電池31E〜Hの最小値T
Dと第二要暖房温度T
D0とを比較する。ここで、温度制御部16aによりバッテリ10の暖房が必要であると判定された場合に、バッテリケース30全体に空気を流すために、上流側から空気を流すと、冷却時と同様、上流側の電池モジュール31A〜Dと下流側の電池モジュール31E〜Hとの間に温度差が生じてしまう。
【0063】
これに対して、本温度調節装置の流量変更部16bは、以下の表2に示すように流量変更バルブ33を制御する。以下の表2は、温度制御部16aによりバッテリ10の暖房が必要であると判定された場合の、第一電池及び第二電池の温度に対する、ヒータ11のオンオフ状態,上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25の開閉状態,流量変更バルブ33の開閉状態及びファン26の作動状態を示す。
【0064】
表2に示すように、流量変更部16bは、第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0未満のときは、第二電池31E〜Hの温度にかかわらず、第一流路21a側に流れる空気の流量を増加させる(表2の1及び3)。また、第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0以上であって第二電池31E〜Hの最小値T
Dが第二要暖房温度T
D0であれば、第二流路21b側に流れる空気の流量を増加させる(表2の2)。
【0065】
これは、第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0以上であって第二電池31E〜Hの最小値T
Dが第二要暖房温度T
D0未満の場合に、第一流路21aからバッテリケース30内へ空気を供給すると、第一電池31A〜Dのほうが第二電池31E〜Hよりも暖まりやすい(温度上昇しやすい)ため、第一温度と第二温度との温度差がより増大してしまうからである。流量変更部16bは、冷却の場合と同様、このように第一温度と第二温度との温度差が増大傾向にある場合に、第二流路21b側に流れる空気の流量を増加させる。
【0067】
なお、冷却の場合と同様、表2の1の場合(第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0未満で第二電池31E〜Hの最小値T
Dも第二要暖房温度T
D0未満の場合)は、第一温度と第二温度との温度差はないと解釈し、表2の3の場合(第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0未満で第二電池31E〜Hの最小値T
Dが第二要暖房温度T
D0以上の場合)は、第一温度と第二温度との温度差が減少傾向にあると解釈する。
【0068】
また、上記したように第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0以上であって、第二電池31E〜Hの最小値T
Dも第二要暖房温度T
D0以上の場合(すなわち、上記の温度条件(6)の場合)は、温度制御部16aによるバッテリ10の暖房は実施されず、適温保持制御が実施される。すなわち、この場合は、温度制御部16aによる保持制御とともに、流量変更部16bは流量変更バルブ33を現状の状態に保持する制御を実施する。
【0069】
[1−4.作用]
本実施形態にかかる温度調節装置は上述のように構成されているので、バッテリ10の温度調節は、例えば以下のように行われる。
イグニッションスイッチがオンにされると、温度センサ32は各電池モジュール31の温度を検出し、この温度情報をBMU15へ伝達する。BMU15は、この温度情報から第一電池31A〜Dの最大値T
A及び最小値T
Cと、第二電池31E〜Hの最大値T
B及び最小値T
Dとを選択する。BMU15は、選択したこれらの温度情報を車両ECU16へ伝達する。車両ECU16の温度制御部16aは、この温度情報からバッテリ10の冷却が必要か、暖房が必要か、或いは、現状を保持する必要があるかを判断して温度調節制御を実施する。
【0070】
例えば、車両1の始動時はバッテリ10が低温のため、温度制御部16aは、上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25を開状態とし、ヒータ11のスイッチをオンにして暖房制御を実施する。このとき、流量変更部16bは、第一温度(最小値)T
C及び第二温度(最小値)T
Dがともに要暖房温度T
C0,T
D0未満であれば、流量変更バルブ33を第一流路21a側が全開、第二流路21b側が全閉となるように制御する。これにより、第一電池31A〜D側へ流れる空気の流量が増加されるため、第一電池31A〜Dは暖まりやすく、第一電池31A〜Dの第一温度(最小値)T
Cが第一要暖房温度T
C0以上まで上がりやすくなる。これに対して、第二電池31E〜Hは第一電池31A〜Dを通過した空気が流れるため暖まりにくく、第一電池31A〜Dの第一温度(最小値)T
Cが第一要暖房温度T
C0以上となったときは未だ第二温度(最小値)T
Dは第二要暖房温度T
D0未満となる。
【0071】
流量変更部16bは、第一温度(最小値)T
Cが第一要暖房温度T
C0以上で第二温度(最小値)T
Dが第二要暖房温度T
D0未満であると判定したら、流量変更バルブ33を第一流路21a側が全閉、第二流路21b側が全開となるように制御する。これにより、ヒータ11で加熱された空気の流量を第二電池31E〜H側に増加させ、第二電池31E〜Hを効率よく暖房する。そして、流量変更部16bは、第一温度(最小値)T
Cも第二温度(最小値)T
Dもともに要暖房温度T
C0,T
D0以上になったと判定したら、現状の状態に保持する。
【0072】
また、例えば、流量変更部16bは、第二流路21bを流れる空気の流量を増加させたことにより第一温度(最小値)T
Cが再び第一要暖房温度T
C0未満となってしまったと判定したら、流量変更バルブ33を再び第一流路21a側が全開、第二流路21b側が全閉となるように制御して、第一電池31A〜Dを暖房する。すなわち、流量変更部16bは、第一温度(最小値)T
C及び第二温度(最小値)T
Dに応じて、第一流路21aを流れる流量と第二流路21bを流れる流量とを制御して、第一電池31A〜D及び第二電池31E〜Hが適温になるよう温度調節する。
【0073】
一方、例えば車両1が走行中にバッテリ10が高温となったら、温度制御部16aは、上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25を閉状態とし、ヒータ11のスイッチをオフにして冷却制御を実施する。このとき、流量変更部16bは、第一温度(最大値)T
A及び第二温度(最大値)T
Bがともに要冷却温度T
A0,T
B0以上であれば、流量変更バルブ33を第一流路21a側が全開、第二流路21b側が全閉となるように制御する。これにより、第一電池31A〜D側へ流れる空気の流量が増加されるため、第一電池31A〜Dは冷却されやすく、第一電池31A〜Dの第一温度(最大値)T
Aが第一要冷却温度T
A0未満まで下がりやすくなる。これに対して、第二電池31E〜Hは第一電池31A〜Dを通過した空気が流れるため冷却されにくく、第一電池31A〜Dの第一温度(最大値)T
Aが第一要冷却温度T
A0未満となったときは未だ第二温度(最大値)T
Bは第二要冷却温度T
B0以上となる。
【0074】
流量変更部16bは、第一温度(最大値)T
Aが第一要冷却温度T
A0未満で第二温度(最大値)T
Bが第二要冷却温度T
B0以上であると判定したら、流量変更バルブ33を第一流路21a側が全閉、第二流路21b側が全開となるように制御する。これにより、エアコン9により冷やされた車室1a内の空気が第二電池31E〜H側に流れる量を増加させ、第二電池31E〜Hを効率よく冷却する。そして、流量変更部16bは、第一温度(最大値)T
Aも第二温度(最大値)T
Bもともに要冷却温度T
A0,T
B0未満になったと判定したら、現状の状態に保持する。
【0075】
また、例えば、流量変更部16bは、第二流路21bを流れる空気の流量を増加させたことにより第一温度(最大値)T
Aが再び第一要冷却温度T
A0以上となってしまったと判定したら、流量変更バルブ33を再び第一流路21a側が全開、第二流路21b側が全閉となるように制御して、第一電池31A〜Dを冷却する。すなわち、流量変更部16bは、第一温度(最大値)T
A及び第二温度(最大値)T
Bに応じて、第一流路21aを流れる流量と第二流路21bを流れる流量とを制御して、第一電池31A〜D及び第二電池31E〜Hが適温になるよう温度調節する。
【0076】
[1−5.効果]
したがって、本温度調節装置によれば、第一温度及び第二温度に応じて、流量変更部16bが第一流路21a及び第二流路21bを流通する各空気の流量を変更するため、上流側に位置する第一電池31A〜Dと下流側に位置する第二電池31E〜Hとの間の温度差を解消することができる。これにより、バッテリ10を適切な温度範囲内で使用することができる。
【0077】
また、流量変更部16bが、温度変化しやすい第一電池31A〜Dの温度(第一温度)及び温度変化しにくい第二電池31E〜Hの温度(第二温度)の温度差が増大傾向にある場合に、第二流路21b側の空気の流量を増加させるため、効率よく第一電池31A〜Dと第二電池31E〜Hとの間の温度差を解消することができる。
また、流量変更部16bが、第一温度と第二温度の温度差が増大傾向であり、且つ、温度変化しにくい第二電池31E〜Hの第二温度が所定の要冷却温度T
B0以上である場合、及び、要暖房温度T
D0未満の場合に、第二流路21b側の空気の流量を増加させるため、第一電池31A〜Dと第二電池31E〜Hとの間に生じる温度差を解消できるとともに、温度変化しにくい第二電池31E〜Hを適切な温度範囲内にすることができる。
【0078】
また、温度制御部16aが、第一温度及び第二温度の少なくとも一方が所定の要冷却温度以上となった場合にバッテリ10を冷却するため、バッテリ10の自己放電の増加を防ぎ、残容量が減少することによる充電性能の低下を防ぐことができる。これにより、バッテリ10の寿命への悪影響を防ぐことができる。
このとき、第一電池31A〜D及び第二電池31E〜Hがそれぞれ複数個あり、これらの最大温度(最大値)T
A,T
Bを要冷却温度T
A0,T
B0と比較してバッテリ10を冷却するため、冷却が必要な電池モジュールが一つでも存在する場合に確実に冷却することができ、バッテリ10の充電性能の低下や寿命の悪化を防止することができる。また、電池が複数ある場合の温度のばらつきに対応することができる。
【0079】
また、温度制御部16aが、第一温度及び第二温度の少なくとも一方が所定の要暖房温度未満となった場合にバッテリ10を暖房するため、放電容量の減少を防ぎ、十分な放電特性を得ることができる。そのため、例えば電動車両の駆動用バッテリとして車両1に搭載された場合に、入出力性能の低下を防止し、電費の悪化を防止することができる。
このとき、第一電池31A〜D及び第二電池31E〜Hがそれぞれ複数個あり、これらの最小温度(最小値)T
C,T
Dを要暖房温度T
C0,T
D0と比較してバッテリ10を暖房するため、暖房が必要な電池モジュールが一つでも存在する場合に確実に暖房することができ、バッテリ10の放電特性を確保することができ、入出力性能の低下や電費の悪化を確実に防止することができる。また、電池が複数ある場合の温度のばらつきに対応することができる。
【0080】
また、供給流路21と排出流路22とを接続する循環流路23上に空気を加熱するヒータ11を設け、上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25により供給流路21と排出流路22の流通状態を切り替えるため、バッテリ10を暖房した空気を再循環させて利用でき、効率よくバッテリ10を暖房することができる。また、車室1a内の空気(冷気)とヒータ11により加熱された空気(暖気)とを同じ供給流路21からバッテリ10に供給できるため、流路構成を簡素にすることができる。
【0081】
さらに、本実施形態では、供給流路21の分岐点に設けられた流量変更バルブ33が空気の流量を変更するため、第一流路21aを流れる空気の流量と第二流路21bを流れる空気の流量とを容易に変更することができる。また、第一電池31A〜Dのみを温度調節したい場合は、第一流路21aを流れる空気の流量を増加させれば、第二電池31E〜Hには第一電池31A〜Dを流通した空気が流れてくるため、第二電池31E〜Hの温度変化を抑制することができる。また、第二電池31E〜Hのみを温度調節したい場合は、第二流路21bを流れる空気の流量を増加させれば、第二電池31E〜Hのみに空気を流すことができ、第一電池31A〜Dには空気の温度影響はない。これにより、第一電池31A〜Dと第二電池31E〜Hとの間に生じる温度差をより早く解消することができる。
【0082】
[2.第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態にかかる組電池の温度調節装置について、
図3を用いて説明する。
図3は第二実施形態に係る組電池の温度調節装置の構成を示すブロック図である。なお、第一実施形態と同じ部材等は、第一実施形態の説明と同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0083】
図3に示すように、本実施形態にかかる温度調節装置は、流量変更バルブを除いて第一実施形態のものと同様に構成されている。本実施形態では、流量変更バルブ33′は、第一流路21a上に設けられ、空気の流れを第一流路21a及び第二流路21bの両方(すなわち、電池モジュール31全体)と、第二流路21bとに切り替える弁となっている。すなわち、流量変更バルブ33′は、電池モジュール31全体へ空気を流す場合は第一流路21a側が全開となるように制御され、第二流路21b側の流量を増加させる場合は、第一流路21a側が全閉となるように制御される。
【0084】
本実施形態に係る流量変更部16bは、温度制御部16aによりバッテリ10の冷却が必要であると判定されたら、第一電池31A〜Dの最大値T
Aと第一要冷却温度T
A0とを比較し、第二電池31E〜Hの最大値T
Bと第二要冷却温度T
B0とを比較する。そして、以下の表3に示すように流量変更バルブ33′を制御する。以下の表3は、上記の表1に対応し、温度制御部16aによりバッテリ10の冷却が必要であると判定された場合の、第一電池及び第二電池の温度に対する、ヒータ11のオンオフ状態,上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25の開閉状態,流量変更バルブ33′の開閉状態及びファン26の作動状態を示す。
【0085】
表3に示すように、流量変更部16bは、第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0以上のときは、第二電池31E〜Hの温度にかかわらず、流量変更バルブ33′を開けて第一流路21a及び第二流路21bの両方(電池モジュール全体)に空気が流れるようにする(表3の1及び3)。また、第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0未満であって第二電池31E〜Hの最大値T
Bが第二要冷却温度T
B0以上であれば、流量変更バルブ33′を閉じて第二流路21b側に流れる空気の流量を増加させる(表3の2)。これは、第一実施形態と同様、第一温度と第二温度との温度差が増大傾向にある場合に、第二流路21b側に流れる空気の流量を増加させるためである。
【0087】
また、流量変更部16bは、温度制御部16aによりバッテリ10の暖房が必要であると判定されたら、第一電池31A〜Dの最小値T
Cと第一要暖房温度T
C0とを比較し、第二電池31E〜Hの最小値T
Dと第二要暖房温度T
D0とを比較する。そして、以下の表4に示すように流量変更バルブ33′を制御する。以下の表4は、上記の表2に対応し、温度制御部16aによりバッテリ10の暖房が必要であると判定された場合の、第一電池及び第二電池の温度に対する、ヒータ11のオンオフ状態,上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25の開閉状態,流量変更バルブ33′の開閉状態及びファン26の作動状態を示す。
【0088】
表4に示すように、流量変更部16bは、第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0未満のときは、第二電池31E〜Hの温度にかかわらず、流量変更バルブ33′を開けて第一流路21a及び第二流路21bの両方(電池モジュール全体)に空気が流れるようにする(表4の1及び3)。また、第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0以上であって第二電池31E〜Hの最小値T
Dが第二要暖房温度T
D0未満であれば、流量変更バルブ33′を閉じて第二流路21b側に流れる空気の流量を増加させる(表4の2)。これは、第一実施形態と同様、第一温度と第二温度との温度差が増大傾向にある場合に、第二流路21b側に流れる空気の流量を増加させるためである。
【0090】
また、第一実施形態と同様、第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0以上であって、第二電池31E〜Hの最小値T
Dも第二要暖房温度T
D0以上の場合は、温度制御部16aによるバッテリ10の暖房は実施されず、適温保持制御が実施される。すなわち、この場合は、温度制御部16aによる保持制御とともに、流量変更部16bは流量変更バルブ33′を現状の状態に保持する制御を実施する。
【0091】
したがって、本実施形態に係る温度調節装置によれば、第一実施形態に記載した流量変更バルブ33以外の効果に加え、第一流路21aに設けられた流量変更バルブ33′が空気の流量を変更するため、第一流路21a及び第二流路21bに流れる空気の流量と、温度変化しにくい第二流路21bに流れる空気の流量とを容易に変更することができる。
【0092】
また、本流量変更バルブ33′は、空気が流れる方向を電池モジュール31全体か第二電池31E〜Hかに切り替えるため、第一温度が要冷却温度以上又は要暖房温度未満であれば、第二温度にかかわらず第二電池にも空気が流れる。そのため、第二温度も要冷却温度以上又は要暖房温度未満も場合は、電池モジュール31全体を冷却又は暖房することができ、温度調節の効率がよい。反対に第二温度が要冷却温度未満又は要暖房温度以上の場合は、第二電池31E〜Hは冷却又は暖房の必要はないが、第一電池31A〜Dのみに冷気又は暖気を流している間に第二電池31E〜Hが熱くなりすぎたり冷えすぎたりすることを防ぐことができる。したがって、第一電池31A〜Dと第二電池E〜Hとの間の温度差を解消することができる。
【0093】
[3.第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態にかかる組電池の温度調節装置について、
図4を用いて説明する。
図4は第三実施形態に係る組電池の温度調節装置の構成を示すブロック図である。なお、第一実施形態と同じ部材等は、第一実施形態の説明と同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0094】
図4に示すように、本実施形態にかかる温度調節装置は、流量変更バルブの構成とファン26の配置を除いて第一実施形態のものと同様に構成されている。本実施形態では、第一流路21aと第二流路21bとに流れる流量を変更する手段として、流量変更バルブの代わりに、第一流量変更ファン(第一ファン)34と第二流量変更ファン(第二ファン)35とが設けられている。第一流量変更ファン34は第一流路21aに設けられ、第一電池31A〜Dに空気を送風する。第二流量変更ファン35は第二流路21bに設けられ、第二電池31E〜Hに空気を送風する。流量変更部16bは、第一流路21a側の流量を増加させる場合は第一流量変更ファン34のスイッチをオンにし、第二流路21b側の流量を増加させる場合は第二流量変更ファン35のスイッチをオンにするように制御する。
【0095】
また、ファン26は、排出流路22の下流側(循環流路23との接続点よりも下流側)に設けられ、下流側シャッタバルブ25が閉状態の場合(すなわち、バッテリ10の暖房時)はスイッチがオフにされて、下流側シャッタバルブ25が開状態の場合(すなわち、バッテリ10の冷却時)のみ使用される。これは、流量変更ファン34及び35により配管20内に空気を流すことができるためである。なお、ファン26を設けることにより、空気の流れをよりスムーズにすることができるが、ファン26は省略してもよい。特に、排出流路22が短い場合は、流量変更ファン34及び35により十分空気を流すことができるため、ファン26を設ける必要はない。
【0096】
本実施形態に係る流量変更部16bは、温度制御部16aによりバッテリ10の冷却が必要であると判定されたら、第一電池31A〜Dの最大値T
Aと第一要冷却温度T
A0とを比較し、第二電池31E〜Hの最大値T
Bと第二要冷却温度T
B0とを比較する。そして、以下の表5に示すように流量変更ファン34及び35を制御する。以下の表5は、温度制御部16aによりバッテリ10の冷却が必要であると判定された場合の、第一電池及び第二電池の温度に対する、ヒータ11のオンオフ状態,上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25の開閉状態,流量変更ファン34及び35の作動状態及びファン26の作動状態を示す。
【0097】
表5に示すように、流量変更部16bは、第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0以上で第二電池31E〜Hの最大値T
Bも第二要冷却温度T
B0以上のときは、第一流路21a及び第二流路21bの両方(電池モジュール全体)に空気が流れるように、流量変更ファン34及び35をともにスイッチオンとする(表5の1)。
また、第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0未満で第二電池31E〜Hの最大値T
Bが第二要冷却温度T
B0以上であれば、第一流量変更ファン34のスイッチをオフとし、第二流量変更ファン35のスイッチをオンにして第二流路21b側に流れる空気の流量を増加させる(表5の2)。これは、第一,第二実施形態と同様、第一温度と第二温度との温度差が増大傾向にある場合に、第二流路21b側に流れる空気の流量を増加させるためである。
【0098】
また、第一電池31A〜Dの最大値T
Aが第一要冷却温度T
A0以上で第二電池31E〜Hの最大値T
Bが第二要冷却温度T
B0未満であれば、第一流量変更ファン34のスイッチをオンとし、第二流量変更ファン35のスイッチをオフにして第一流路21a側に流れる空気の流量を増加させる(表5の3)。これは、第一温度と第二温度との温度差が減少傾向にある場合には、第一流路21a側に流れる空気の流量を増加させるためである。
【0100】
また、流量変更部16bは、温度制御部16aによりバッテリ10の暖房が必要であると判定されたら、第一電池31A〜Dの最小値T
Cと第一要暖房温度T
C0とを比較し、第二電池31E〜Hの最小値T
Dと第二要暖房温度T
D0とを比較する。そして、以下の表6に示すように流量変更ファン34及び35の作動を制御する。以下の表6は、温度制御部16aによりバッテリ10の暖房が必要であると判定された場合の、第一電池及び第二電池の温度に対する、ヒータ11のオンオフ状態,上流側シャッタバルブ24及び下流側シャッタバルブ25の開閉状態,流量変更ファン34及び35の作動状態及びファン26の作動状態を示す。
【0101】
表6に示すように、流量変更部16bは、第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0未満で第二電池31E〜Hの最小値T
Dが第二要暖房温度T
D0未満のときは、第一流路21a及び第二流路21bの両方(電池モジュール全体)に空気が流れるように流量変更ファン34及び35をともにスイッチオンとする(表6の1)。
また、第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0以上で第二電池31E〜Hの最小値T
Dが第二要暖房温度T
D0未満であれば、第一流量変更ファン34のスイッチをオフとし、第二流量変更ファン35のスイッチをオンにして第二流路21b側に流れる空気の流量を増加させる(表6の2)。これは、第一,第二実施形態と同様、第一温度と第二温度との温度差が増大傾向にある場合に、第二流路21b側に流れる空気の流量を増加させるためである。
【0102】
また、第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0未満で第二電池31E〜Hの最小値T
Dが第二要暖房温度T
D0以上であれば、第一流量変更ファン34のスイッチをオンとし、第二流量変更ファン35のスイッチをオフにして第一流路21a側に流れる空気の流量を増加させる(表6の3)。これは、第一温度と第二温度との温度差が減少傾向にある場合には、第一流路21a側に流れる空気の流量を増加させるためである。
【0104】
また、第一,第二実施形態と同様、第一電池31A〜Dの最小値T
Cが第一要暖房温度T
C0以上であって、第二電池31E〜Hの最小値T
Dも第二要暖房温度T
D0以上の場合は、温度制御部16aによるバッテリ10の暖房は実施されず、適温保持制御が実施される。すなわち、この場合は温度制御部16aによる保持制御とともに、流量変更部16bは流量変更ファン34及び35のスイッチをともにオフにして現状の状態に保持する制御を実施する。
【0105】
したがって、本実施形態に係る温度調節装置によれば、第一実施形態に記載した流量変更バルブ33以外の効果に加え、第一流路21aに設けられた第一流量変更ファン34及び第二流路21bに設けられた第二流量変更ファン35が空気の流量を変更するため、ファンのスイッチのオンオフ制御により、第一流路21aのみ,第二流路21bのみ,第一流路21a及び第二流路21bの両方、の三種類に空気の流れを容易に変更することができる。
【0106】
また、暖房時にはファン26の作動を停止させることができるため、電力消費量を抑えることができ節電効果がある。さらに、冷却時であってもファン26を省略することが可能であるため、さらなる節電効果も期待できる。
【0107】
[4.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0108】
例えば、第一,第二実施形態における流量変更バルブ33,33′は、いずれも空気の流れる方向を切り替える弁として構成されているが、第一流路21a及び第二流路21bに流れる空気の流量を可変に制御されるものであってもよい。すなわち、流量変更部16bが流量変更バルブ33,33′の開度を制御することにより、例えば第一実施形態において、第一流路21aの流量を少なくし(例えば3割程度)、第二流路21bの流量を多くして(例えば7割程度)、各流路21a,21bに空気が流れるように構成してもよい。
【0109】
また、同様に、第三実施形態における流量変更ファン34及び35もスイッチのオンオフ制御だけでなく、それぞれの回転数を制御できるように構成してもよい。このように各流路21a,21bに流れる空気の流量を可変に制御可能な構成にすることにより、より細かい温度調節をすることができる。また、例えば、第二電池31E〜Hを暖房又は冷却したい場合に、第二電池31E〜Hだけでなく第一電池31A〜Dにも空気が流れるため、第二電池31E〜Hの暖房又は冷却をしているときに第一電池が再び冷えたり暖まりすぎたりすることを防ぐことができる。
【0110】
また、上記実施形態では、温度制御部16aが、バッテリ10の冷却が必要であるか否かを優先して判定しているが、暖房が必要であるか否かを優先して判定してもよい。また、温度制御部16aがなくても、流量変更部16bにより各流路21a,21bに流れる空気の流量が変更されればバッテリ10の温度調節を行うことができるため、温度制御部16aを省略してもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、第一要冷却温度T
A0と第二要冷却温度T
B0とが同じ温度に設定され、第一要暖房温度T
C0と第二要暖房温度T
D0とが同じ温度に設定されているが、これらが異なる温度に設定されていてもよい。例えば、第一電池と第二電池の性質に応じて異なる温度にしてもよい。
また、上記実施形態では、バッテリ10は、バッテリケース30内に複数の電池モジュール31が収容された組電池として構成されているが、組電池は容器内に複数の電池セルを収容した電池モジュールとして構成してもよく、また、収容される電池セルや電池モジュールの数は任意に選択可能である。
【0112】
また、バッテリ10は車室1a内に設けられていなくてもよく、例えば車体下等の車室1a外に設けられていてもよい。この場合は、外気を取り入れてバッテリ10を冷却することになる。また、ヒータ11やBMU15、車両ECU16も車室1a内に設けられていなくてもよい。
また、上記実施形態では、パラレル式のハイブリッド車に搭載されたバッテリ10を例として説明したが、車両1はハイブリッド車に限られず、電気自動車等の電動車両であればよい。また、バッテリ10は車両に搭載されたものでなくてもよい。