(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁ハウジングに複数段にわたって設けられた媒体挿入口の各々を通して複数の信号伝送媒体が重なり合うように挿入される構成になされた複数段挿入型電気コネクタにおいて、
前記複数段の媒体挿入口に挿入される各信号伝送媒体には、当該信号伝送媒体の挿入位置を示す位置表示片がそれぞれ設けられ、
それらの位置表示片は、前記各信号伝送媒体の挿入が完了した状態において互いに重なり合わない位置にずらして配置されていることを特徴とする複数段挿入型電気コネクタ。
前記位置表示片は、前記信号伝送媒体の幅方向において当該信号伝送媒体のそれぞれ異なる側の端縁部から外方に突出するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の複数段挿入型電気コネクタ。
前記位置表示片は、前記信号伝送媒体の挿入方向において当該信号伝送媒体ごとに位置ズレするように設けられていることを特徴とする請求項1記載の複数段挿入型電気コネクタ。
前記位置表示片は、前記絶縁ハウジングへの前記各信号伝送媒体の挿入が完了した状態において、当該信号伝送媒体の挿入方向に略同一の位置に並列されるように設けられていることを特徴とする請求項2記載の複数段挿入型電気コネクタ。
前記媒体挿入口の幅方向の端縁から前記絶縁ハウジングの端面に至るまでの外方側端面、及び前記信号伝送媒体の位置表示片には、一定の切欠き形状からなる挿入判定部がそれぞれ凹設され、
前記媒体挿入口に対する前記信号伝送媒体の挿入が完了されて前記信号伝送媒体の位置表示片が前記絶縁ハウジングの外方側端面に接触した状態において、前記両挿入判定部同士が合体して特定の形状をなすように構成されていることを特徴とする請求項1記載の複数段挿入型電気コネクタ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、簡易な構成で、重なり合って挿入される複数の信号伝送媒体の挿入状態を容易に判別可能として良好な作業性を得ることができるようにした複数段挿入型電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明では、絶縁ハウジングに複数段にわたって設けられた媒体挿入口の各々を通して複数の信号伝送媒体が重なり合うように挿入される構成になされた複数段挿入型電気コネクタにおいて、前記複数段の媒体挿入口に挿入される各信号伝送媒体には、当該信号伝送媒体の挿入位置を示す位置表示片がそれぞれ設けられ、それらの位置表示片は、前記各信号伝送媒体の挿入が完了した状態において互いに重なり合わない位置にずらして配置された構成が採用されている。
【0007】
このときの位置表示片は、前記信号伝送媒体の幅方向において当該信号伝送媒体のそれぞれ異なる側の端縁部から外方に突出するように設けられたり、前記信号伝送媒体の挿入方向において当該信号伝送媒体ごとに位置ズレするように設けられることが可能である。
【0008】
このような構成を有する本発明によれば、各信号伝送媒体ごとに設けられた位置表示片の位置を目視するだけで、複数段の各媒体挿入口に対して信号伝送媒体が最終位置まで挿入されているか、各媒体挿入口に対応する信号伝送媒体が入れ替わることなく適正に挿入されているか、又は挿入された信号伝送媒体の表裏の向きが適正になっているか否か等の判別が直ちに行われる。
【0009】
また、本発明における前記位置表示片は、前記信号伝送媒体の幅方向において当該信号伝送媒体の反対側の縁部に設けられる場合には、前記絶縁ハウジングへの前記各信号伝送媒体の挿入が完了した状態において当該信号伝送媒体の挿入方向に略同一の位置に並列されるように設けられていることが望ましい。
【0010】
このような構成を有する本発明によれば、信号伝送媒体の挿入が完了した状態において位置表示片が一直線上に並列されるため、信号伝送媒体の適正な挿入状態が直感的に把握される。
【0011】
また、本発明においては、前記各媒体挿入口に、当該媒体挿入口から前記信号伝送媒体の挿入方向に延出する媒体挿入通路がそれぞれ設けられているとともに、それらの各媒体挿入通路であって前記信号伝送媒体の挿入方向の奥側端部には、前記信号伝送媒体の挿入側の端部が当接する媒体当接面が形成され、前記媒体挿入口から前記媒体当接面までの距離が、前記各媒体挿入通路ごとに異ならされていることが望ましい。
【0012】
このような構成を有する本発明によれば、複数段にわたって挿入された信号伝送媒体の挿入状態が、媒体挿入口と位置表示片との位置関係を目視することによって容易に判断される。
【0013】
また、本発明においては、前記媒体挿入口の幅方向の両端縁から前記絶縁ハウジングの両端面に至るまでの外方側距離が、前記各媒体挿入口ごとに異ならされ、前記媒体挿入口に前記信号伝送媒体の挿入が完了された状態において前記信号伝送媒体の位置表示片における突出側の端面が、前記絶縁ハウジングの両端面の位置と略一致するように構成されていることが望ましい。
【0014】
このような構成を有する本発明によれば、複数段にわたって挿入された信号伝送媒体の挿入状態が、絶縁ハウジングの壁面と位置表示片との位置関係を目視することによって容易に判断される。
【0015】
また、本発明においては、前記各媒体挿入口が形成されている前記絶縁ハウジングの壁面に、前記信号伝送媒体が挿入を完了した際に前記位置表示片を載置する表示部支持面が段差状をなすように設けられていることが望ましい。
【0016】
このような構成を有する本発明によれば、信号伝送媒体の位置表示片が表示部支持面上に載置されるために、信号伝送媒体が安定的に保持される。
【0017】
また、本発明においては、前記媒体挿入口の幅方向の端縁から前記絶縁ハウジングの端面に至るまでの外方側端面、及び前記信号伝送媒体の位置表示片には、一定の切欠き形状からなる挿入判定部がそれぞれ凹設され、前記媒体挿入口に対する前記信号伝送媒体の挿入が完了されて前記信号伝送媒体の位置表示片が前記絶縁ハウジングの外方側端面に接触した状態において、前記両挿入判定部同士が合体して特定の形状をなすように構成されていることが望ましい。
【0018】
このような構成を有する本発明によれば、複数段にわたって挿入された信号伝送媒体の挿入状態が、両挿入判定部により特定の形状が形成されているか否かを外観で判断することによって目視で容易に判別される。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように本発明にかかる複数段挿入型電気コネクタは、複数の媒体挿入口に挿入される信号伝送媒体に、位置表示片を位置ズレさせて設けることにより、各信号伝送媒体ごとに設けられた位置表示片の位置を目視するだけで、複数段の各媒体挿入口に対して信号伝送媒体が最終位置まで挿入されているか、各媒体挿入口に対応する信号伝送媒体が入れ替わることなく適正に挿入されているか、又は挿入された信号伝送媒体の表裏の向きが適正になっているか否か等の判別が直ちに行われるように構成したものであるから、簡易な構成で、重なり合って挿入される複数の信号伝送媒体の挿入状態が容易に判別可能となって良好な作業性を得ることができ、複数段挿入型電気コネクタの信頼性を低廉かつ大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体の接続を行うために配線基板上に実装して使用される複数段挿入型電気コネクタに本発明を適用した実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
[電気コネクタの全体構成について]
まず、
図1〜
図17に示されている本発明の一実施形態にかかる電気コネクタ10は、いわゆるノン・ジフ(NON-ZIF)タイプのワンアクションオートロック機構を備えた複数段挿入型の電気コネクタからなるものであって、絶縁ハウジング11の前端側(
図4及び
図5の左端側)に複数段(上下2段)にわたって設けられた媒体挿入口11a,11bを通して、複数枚(2体)の信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の端末部分が絶縁ハウジング11の内部の所定位置まで挿入され、信号伝送媒体F1,F2の表面に設けられた導電路F1b,F2bが、導電コンタクト12,13を介して図示を省略した主印刷配線基板(図示省略)上に形成された導電路に電気的に接続される。
【0023】
[絶縁ハウジングについて]
このとき、前記絶縁ハウジング11は、横長状に延在する中空枠体状の絶縁部材から形成されているが、その絶縁ハウジング11における長手の横幅方向を、以下において、単に「横幅方向」又は「コネクタ長手方向」と呼び、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の端末部分を挿入及び抜去する方向を「コネクタ後方」及び「コネクタ前方」と呼ぶこととする。また、「コネクタ長手方向」及び「コネクタ前後方向」の双方に直交する方向を「コネクタ上下方向」と呼び、さらに上述した「コネクタ長手方向」において、コネクタの中心側から外方側へ向かう方向を「コネクタ外方」、その反対方向を「コネクタ内方」と呼ぶこととする。
【0024】
その絶縁ハウジング11のコネクタ前端側(
図4左端側)の壁面には、上述したようにフレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体F1,F2の端末部分が挿入される上媒体挿入口11a及び下媒体挿入口11bが、上下方向に2段にわたって略平行に重なり合うように設けられている。これら上下の媒体挿入口11a,11bは、コネクタ長手方向に沿って細長状をなすように設けられているが、これらの両媒体挿入口11a,11bは、後述する導電コンタクト12,13の配置ピッチの半ピッチ分だけコネクタ長手方向に位置ズレした配置関係になされている。
【0025】
また、それら上下の媒体挿入口11a,11bの各々からは、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の媒体挿入通路11c,11dが、コネクタ後方側に向かってそれぞれ延出している。それらの各媒体挿入通路11c,11dのコネクタ後端部、すなわち信号伝送媒体F1,F2の挿入方向における奥側の端部には、信号伝送媒体F1,F2の挿入側の端部が当接する媒体当接面11e,11fが形成されている。それらの媒体当接面11e,11fは、各媒体挿入通路11c,11dのコネクタ後端部を閉塞する絶縁ハウジング11の立壁面から形成されており、当該媒体当接面11e,11fに、各媒体挿入通路11c,11d内に挿入された信号伝送媒体F1,F2の先端部が当接し、それらの媒体当接面11e,11fにより規定される最終的な挿入位置で信号伝送媒体F1,F2が停止されるようになっている。
【0026】
上述したように上下の両媒体挿入口11a,11bは、絶縁ハウジング11の前端側壁面に形成されているが、その絶縁ハウジング11の前端側壁面には、挿入位置基準面11g,11hが形成されている。これらの挿入位置基準面11g,11hは、上下の両媒体挿入口11a,11bの横幅方向において外方側に相当する部位に形成されており、それらの挿入位置基準面11g,11hに対して、後述するように各信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の端縁部から突出する位置表示片F1c,F2cが接触される関係になされている。これらの部材同士の接触関係ついては後段において詳細に説明することとするが、本実施形態では、上述した上下の媒体挿入通路11c,11dの奥行き長さが互いに異ならされている。
【0027】
すなわち、上述した上下の両媒体挿入口11a,11bの横幅方向両側に配置された挿入位置基準面11g,11hは、信号伝送媒体F1,F2の挿入方向においてほぼ同位置となるように配置されているが、それらの挿入位置基準面11g,11hから媒体当接面11e,11fまでの距離L1,L2(
図4,
図5参照)は、各媒体挿入通路11c,11dごとに異ならされている。より具体的には、上媒体挿入口11aから延びる上媒体挿入通路11cの奥行き長さ、すなわち挿入位置基準面11g,11hから媒体当接面11eまでの距離L1が、下媒体挿入口11bから延びる下媒体挿入通路11dの奥行き長さ、すなわち挿入位置基準面11g,11hから媒体当接面11fまでの距離L2よりも大きくなるように設定されている(L1>L2)。従って、特に
図11に示されているように、上段側の媒体挿入通路11c内に挿入された信号伝送媒体F1は、下段側の媒体挿入通路11d内に挿入された信号伝送媒体F2よりもコネクタ後方側まで挿入される構成になされている。
【0028】
さらにまた、上述した上下の媒体挿入口11a,11bから延出する信号伝送媒体F1,F2の媒体挿入通路11c,11dの内部には、適宜の形状をなす薄板状金属製部材により形成された導電コンタクト12,13が複数体にわたって装着されている。それらの導電コンタクト12,13は、絶縁ハウジング11の内部に向かってコネクタ後端側及びコネクタ前端側からそれぞれ挿入されており、コネクタ長手方向に沿って適宜の間隔をなして多極状に配置されている。これらの導電コンタクト12,13の各々は、信号伝送用又はグランド接続用のいずれかとして、主印刷配線基板(図示省略)上に形成された導電路(図示省略)に対して半田接合により実装された状態で使用されるようになっている。
【0029】
[導電コンタクトについて]
上述したように導電コンタクト12,13は、絶縁ハウジング11のコネクタ後端側及び前端側からコネクタ前方(
図4及び
図5の左方側)及びコネクタ後方(
図4及び
図5の右方側)に向かって挿入されて装着されているが、そのようにして絶縁ハウジング11の内部に装着された各導電コンタクト12,13は、上下の媒体挿入口11a,11bを通して絶縁ハウジング11の内部に挿入された各信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の配線パターンに対応した位置に配置されている。それらの信号伝送媒体F1,F2に形成された配線パターンは、信号伝送用導電路(信号線パッド)又はシールド用導電路(シールド線パッド)を適宜のピッチ間隔で配置したものである。
【0030】
すなわち、各導電コンタクト12,13は、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の挿入・抜去の方向(
図4の左右方向)であるコネクタ前後方向に沿って略平行に延在する一対の細長状ビーム部材からなる可動コンタクトビーム12a,13a及び固定コンタクトビーム12b,13bをそれぞれ有している。これらの可動コンタクトビーム12a,13a及び固定コンタクトビーム12b,13bは、上述した絶縁ハウジング11の各媒体挿入通路11c,11dの内部空間において図示上下方向に適宜の間隔をなして互いに対向するように配置されている。
【0031】
そのうちの固定コンタクトビーム12b,13bは、前記絶縁ハウジング11の媒体挿入通路11c,11dの底壁面に沿って略不動状態となるように固定されているが、当該固定コンタクトビーム12b,13bの図示上方位置に略平行に延在する可動コンタクトビーム12a,13aは、後端部分に配置された連結支柱ビーム12c,13cを介して固定コンタクトビーム12b,13bに一体的に連結されている。
【0032】
その連結支柱ビーム12c,13cは、細幅の柱状部材から形成されており、当該連結支柱ビーム12c,13cの図示上端部分に連結された可動コンタクトビーム12a,13aが、連結支柱ビーム12c,13cの弾性可撓性に基づいて、上述した固定コンタクトビーム12b,13bに対して弾性変位可能となるように構成されており、可動コンタクトビーム12a,13aが、連結支柱ビーム12c,13c又はその近傍を回動中心として揺動可能となるように構成されている。そのときの可動コンタクトビーム12a,13aの揺動は、
図4及び
図5の紙面内において上下の方向に行われることとなる。
【0033】
また、上述した可動コンタクトビーム12a,13aの前端側部分(
図4及び
図5の左端側部分)には、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の図示上面側に形成された配線パターン(信号伝送用又はシールド用の導電路)のいずれかに接続される上端子接触凸部12a1,13a1が図示下向きの突形状をなすように設けられている。
【0034】
一方、固定コンタクトビーム12b,13bは、前述したように絶縁ハウジング11の底面板の内壁面に沿ってコネクタ前後方向に延在するように配置されているが、それらの固定コンタクトビーム12b,13bにおける前方側部分(
図4及び
図5の左方側部分)には、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の図示下面側に形成された配線パターン(信号伝送用又はシールド用の導電路のいずれか)に接続される下端子接触凸部12b1,13b1が図示上向きの突形状をなすように設けられている。これらの下端子接触凸部12b1,13b1は、上述した可動コンタクトビーム12a,13a側の上端子接触凸部12a1,13a1の図示直下位置に対面するように配置されている。
【0035】
これらの導電コンタクト12,13に設けられた上端子接触凸部12a1,13a1及び下端子接触凸部12b1,13b1は、上述したように信号伝送媒体F1,F2が絶縁ハウジング11の内部に挿入されて来た際に、当該信号伝送媒体F1,F2に設けられた配線パターン上に乗り上げる配置関係になされており、その信号伝送媒体F1,F2が所定の最終位置まで挿入されたときに、固定コンタクトビーム12b,13bの弾性力によって圧接されることにより、それらの上端子接触凸部12a1,13a1と下端子接触凸部12b1,13b1との間に信号伝送媒体F1,F2が挟持されて電気的に接続された状態に維持される構成になされている。
【0036】
なお、これらの可動コンタクトビーム12a,13aの上端子接触凸部12a1,13a1、及び固定コンタクトビーム12b,13bの下端子接触凸部12b1,13b1は、コネクタ前後方向における互いの位置を、コネクタ前方側(
図4及び
図5の左方側)或いはコネクタ後方側(
図4及び
図5の右方側)にずらして配置することも可能であり、また、電気的に接続される状態になされるのは、上端子接触凸部12a1,13a1、あるいは下端子接触凸部12b1,13b1のいずれか一方でも良い。
【0037】
また、上述した固定コンタクトビーム12bの後端側部分(
図5の右端側部分)、すなわち連結支柱ビーム12cの下端部分には、主印刷配線基板(図示省略)上に形成された導電路に半田接続される基板接続部12b2が設けられている。一方、固定コンタクトビーム13bの前端側部分(
図4の左端側部分)、すなわち連結支柱ビーム13cと反対側の下端部分には、主印刷配線基板(図示省略)上に形成された導電路に半田接続される基板接続部13b2が設けられている。
【0038】
ここで、上述したように複数段(2段)にわたって設けられた上媒体挿入口11a及び下媒体挿入口11bにそれぞれ挿入される各信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2には、板厚状に形成された端末接続部F1a,F2aがそれぞれ設けられている。それらの端末接続部F1a,F2aの表面又は裏面には、信号伝送用又はシールド用の導電路(端子部)F1b,F2bがそれぞれ外方に露出するように形成されていて、それらの導電路F1b,F2bが、前述した可動コンタクトビーム12a,13aの上端子接触凸部12a1,13a1と、固定コンタクトビーム12b,13bの下端子接触凸部12b1,13b1との間に挟持されて電気的に接続される。
【0039】
また、それらの各信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の端末接続部F1a,F2aには、信号伝送媒体F1,F2の挿入位置、すなわち当該信号伝送媒体F1,F2が上下の両媒体挿入口11a,11bからどれだけの量にわたって挿入されているかを示す上下の位置表示片F1c,F2cがそれぞれ設けられている。それら上下の各位置表示片F1c,F2cは、各信号伝送媒体F1,F2の横幅方向(コネクタ長手方向)における両端縁部のうちの一方側から外方側(コネクタ外方側)に向かって略矩形状をなして突出しており、それら上下の位置表示片F1c,F2cが、互いに異なる側の端縁部に配置されていることによって、信号伝送媒体F1,F2の挿入が完了した状態での上方側からの平面視で互いに重なり合わないように位置ズレした配置になされている。
【0040】
より具体的には、上述したように信号伝送媒体F1側に設けられた上位置表示片F1cと、信号伝送媒体F2側に設けられた下位置表示片F2cとは、互いに異なる側の端縁部に離した配置関係になされており、各信号伝送媒体F1,F2の挿入が完了した状態、すなわち媒体挿入通路11c,11dの内部に挿入された信号伝送媒体F1,F2が媒体当接面11e,11fに当接した状態において、上述した上下の位置表示片F1c,F2c同士が、互いに反対側の方向に突出する構成になされている。これによって、両信号伝送媒体F1,F2同士が上下に重なり合って挿入された状態においても上下の位置表示片F1c,F2cの各位置が上方側から直ちに確認されるようになっている。
【0041】
さらに、本実施形態における上下の位置表示片F1c,F2cは、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の端末先端部からの位置が互いにずらされた配置関係になされている。より具体的には、上段側に挿入されるべき信号伝送媒体F1に設けられた上位置表示片F1cが、下段側に挿入されるべき信号伝送媒体F2に設けられた下位置表示片F2cよりも後方側にずらして設けられており、特に
図6に示されているように、信号伝送媒体F1の端末先端部から上位置表示片F1cの前端縁までの距離L3は、信号伝送媒体F2の端末先端部から下位置表示片F2cの前端縁までの距離L4よりも大きくなるように設定されている(L3>L4)。
【0042】
また、前述したように上下の両媒体挿入口11a,11bを有する絶縁ハウジング11の前端側壁面には、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の両位置表示片F1c,F2cが接触する挿入位置基準面11g,11hが形成されている。これらの挿入位置基準面11g,11hは、上下の両媒体挿入口11a,11bの横幅方向において外方側に相当する部位に形成されており、信号伝送媒体F1,F2の挿入を完了した際に前記上下の両位置表示片F1c,F2cの接触面を構成するものである。そして、それらの挿入位置基準面11g,11hに上下の両位置表示片F1c,F2cが接触した状態において、当該上下の両位置表示片F1c,F2c同士が、コネクタ長手方向(横幅方向)に並列するように構成されている。
【0043】
さらに、上述した挿入位置基準面11g,11hの下方側には、当該挿入位置基準面11g,11hの下端縁から前方に向かって段差状をなすように突出する表示部支持面11i,11jが設けられており、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の挿入が完了した状態において、それらの表示部支持面11i,11jに対して上下の位置表示片F1c,F2cが上方側から載置されるようになっている。
【0044】
さらに、それらの挿入位置基準面11g,11hのコネクタ長手方向の長さW1,W2、すなわち上述した上下の両媒体挿入口11a,11bにおける横幅方向(コネクタ長手方向)の端縁部から絶縁ハウジング11の両側外端面までの各距離に対して、上述した信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2に設けられた上下の両位置表示片F1c,F2cの突出長さが略同一となるように形成されており、これによって信号伝送媒体F1,F2が挿入を完了した際に、上下の位置表示片F1c,F2cの突出側先端縁が、絶縁ハウジング11の両側外端面と一致するように構成されている。
【0045】
このとき、上述した挿入位置基準面11g,11hの長さW1,W2は、互いに異ならされているとともに(W1≠W2)、それらの挿入位置基準面11g,11hの長さW1,W2に対応して上述した各信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2に設けられた上下の両位置表示片F1c,F2cの突出長さも異ならされている。より具体的には、上段側の上媒体挿入口11aに差し込まれる信号伝送媒体F1の上位置表示片F1c、及びその上位置表示片F1cが接触する挿入位置基準面11gの長さW1に対して、下段側の下媒体挿入口11bに差し込まれる信号伝送媒体F2の下位置表示片F2c、及びその下位置表示片F2cが接触する挿入位置基準面11hの長さW2が長くなるように形成されている(W1<W2)。従って、信号伝送媒体F1と信号伝送媒体F2とを誤って入れ違えて挿入したり、各信号伝送媒体F1,F2の表裏を反転して挿入した場合には、上下の位置表示片F1c,F2cの突出側先端縁部が、絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向の外端面に一致しなくなることから、誤った挿入状態であることが視覚的に直ちに認識される構成になされている。
【0046】
このような構成を有する本実施形態によれば、上下の両媒体挿入口11a,11bに対して、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2が最終位置まで正常に挿入されているか、或いは上下の両媒体挿入口11a,11bに対応して信号伝送媒体F1,F2が入れ替わることなく適正に挿入されているか、さらには挿入された信号伝送媒体F1,F2の表裏の向きが適正になっているか否か等の判別が、各信号伝送媒体F1,F2に設けられた上下の位置表示片F1c,F2c同士の位置関係を外観で判断するのみによって容易に行われる。
【0047】
例えば、上下の両媒体挿入口11a,11bに対して、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2が最終位置まで十分に挿入されていない場合には、
図13に示されているように、各信号伝送媒体F1,F2に設けられた上下の位置表示片F1c,F2cが、絶縁ハウジング11の前端側挿入位置基準面11g,11hから前方側に離間した状態となって両者間に隙間が形成される。従って、そのような隙間を作業者が目視で観察することにより、信号伝送媒体F1,F2が、最終位置まで正常に挿入されていないことが容易に確認される。
【0048】
また、上下の両媒体挿入口11a,11bに対して、信号伝送媒体F1,F2が入れ替わって誤挿入されている場合には、上下の位置表示片F1c,F2cが絶縁ハウジング11の両側外端面と一致しなくなる。例えば、下媒体挿入口11bに挿入されるべき信号伝送媒体F2が、誤って上段側の上媒体挿入口11aに誤挿入された場合には、
図14に示されているように、信号伝送媒体F2に設けられた下位置表示片F2cの突出側先端縁が、絶縁ハウジング11の片側外端面からやや引き込んだ位置に配置されるとともに、信号伝送媒体F2に設けられた導電路(端子部)F2bの一部が外方に露出した状態となってしまい、そのような下位置表示片F2cの不一致状態や、露出した導電路F2bを作業者が目視で観察することによって、信号伝送媒体F2が誤挿入になっていることが容易に確認される。
【0049】
同様に、上段側の上媒体挿入口11aに挿入されるべき信号伝送媒体F1が、誤って下段側の下媒体挿入口11bに誤挿入された場合には、
図15に示される様にその信号伝送媒体F1の上位置表示片F1cの突出側先端縁部が、絶縁ハウジング11の片側外端面からやや引き込んだ位置に配置されるとともに、上位置表示片F1cと絶縁ハウジング11の前端側挿入位置基準面11gとの間に隙間が形成されるため、そのような上位置表示片F1cの不一致状態や隙間を作業者が目視で観察することによって、信号伝送媒体F1が誤挿入になっていることが容易に確認される。
【0050】
一方、上述した第1の実施形態と同一の構成部材に対して同一の符号を付した
図16にかかる第2の実施形態では、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の適正な挿入状態を表す形状からなる挿入判定部14,15が設けられている。これらの挿入判定部14,15は、前述した信号伝送媒体F1,F2に設けられた上下の両位置表示片F1c,F2cと、それら上下の位置表示片F1c,F2cが接触する挿入位置基準面11g,11hとの接触部分に、一定の切欠き形状をなすように設けられている。
【0051】
より具体的には、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の両位置表示片F1c,F2cの一方の側に、円形状を二分割した半円形状をなすようにして一方側の挿入判定部14が切り欠くように凹設されているとともに、絶縁ハウジング11の挿入位置基準面11g,11h、すなわち両媒体挿入口11a,11bにおける横幅方向の端縁から絶縁ハウジング11の一方の外方端面にも、同様な円形状を二分割した半円形状をなすようにして他方側の挿入判定部15が切り欠くように凹設されている。そして、信号伝送媒体F1,F2の挿入が完了されて、上下の両位置表示片F1c,F2cが、絶縁ハウジング11の外方側端面である挿入位置基準面11g,11hに接触した状態において、双方側の挿入判定部14,15同士が合体し、それによって特定の円形状が構成される。
【0052】
このような第2の実施形態においても、複数段(2段)にわたって挿入された信号伝送媒体(FPC又はFFC等)F1,F2の挿入状態が、両挿入判定部14,15により特定の円形状が形成されているか否かを外観で目視しつつ判断することによって、容易に判別される。さらに本実施形態においても、第1の実施形態同様に挿入不足と、上下の両媒体挿入口11a,11bに対して、信号伝送媒体F1,F2が入れ替わって誤挿入されているかを容易に確認することが出来る。尚、両挿入判定部14,15は一方の外方端面に特定の円形状としたが、両側外方端面それぞれに特定の個別形状を形成しても良い。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0054】
例えば、上述した各実施形態では、媒体挿入口及び媒体挿入通路を上下に2段にわたって設けているが、3段以上にわたって設ける場合に対しても、本発明は同様に適用することが可能である。
【0055】
また、上述した各実施形態では、複数段挿入型電気コネクタに固定される信号伝送媒体として、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)、及びフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)を採用しているが、その他の信号伝送用媒体等を用いた場合に対しても本発明は同様に適用することができる。
【0056】
さらに、上述した実施形態にかかる複数段挿入型電気コネクタには、各媒体挿入通路に単一形状の導電コンタクトが取り付けられているが、異なる形状の導電コンタクトを交互に配置した構造であっても本発明は同様に適用することが可能である。