特許第5747829号(P5747829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747829
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】洗車機
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/06 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   B60S3/06
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-11852(P2012-11852)
(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公開番号】特開2013-151182(P2013-151182A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128842
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 温
(74)【代理人】
【識別番号】100149179
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】萩巣 保志
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−273753(JP,A)
【文献】 特開平08−169307(JP,A)
【文献】 実開平01−180354(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00−06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗車機本体と被洗浄車両とを前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、
洗車に用いる洗浄手段は、被洗浄車両の上面を洗浄するトップブラシを有し、乾燥に用いる乾燥手段は、被洗浄車両の上面を乾燥するトップ送風ノズルを有し、
前記トップブラシが被洗浄車両の上面形状に沿って移動するブラシ軌跡を記憶する記憶手段と、前記トップ送風ノズルの高さ位置を検知するノズル位置検知手段と、前記記憶手段に記憶されたブラシ軌跡と前記ノズル位置検知手段により検知されたノズル高さ位置とを比較する比較手段とを備え、
前記比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて、当該差を補正するように前記トップ送風ノズルを昇降移動させる移動制御と、洗車機本体と被洗浄車両との相対移動速度を変化させる移動制御と、を含む複数の異なるノズル移動制御を行うことを特徴とする洗車機。
【請求項2】
洗車機本体と被洗浄車両とを前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、
洗車に用いる洗浄手段は、被洗浄車両の上面を洗浄するトップブラシを有し、乾燥に用いる乾燥手段は、被洗浄車両の上面を乾燥するトップ送風ノズルを有し、
前記トップブラシが被洗浄車両の上面形状に沿って移動するブラシ軌跡を記憶する記憶手段と、前記トップ送風ノズルの高さ位置を検知するノズル位置検知手段と、前記記憶手段に記憶されたブラシ軌跡と前記ノズル位置検知手段により検知されたノズル高さ位置とを比較する比較手段とを備え、
前記比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて、当該差を補正するように前記トップ送風ノズルを昇降移動させる移動制御と、洗車機本体と被洗浄車両との相対移動速度を変化させる移動制御と、を含む複数の異なるノズル移動制御を行い、
前記トップ送風ノズルは、当該ノズルの空気吹出口の下方に装着され車体および装着物を検知する光電センサを備え、当該センサは、主に車体検知するために用いる下側センサと、主に車体検知しないために用いる上側センサとを備え、通常は、下側センサが車体検知し上側センサが車体検知しない状態で、且つ、前記ブラシ軌跡に応じた高さ位置に沿って移動制御されることを特徴とする洗車機。
【請求項3】
前記空気吹出口は被洗浄車両の幅方向に細長い下向きの吹出口を有し、前記光電センサは、前記空気吹出口の長さ方向と直交する前後方向の左右の上下にそれぞれ設けられ、移動する前側の上側センサが車体検知した時には、トップ送風ノズルを第一の速度で上昇することを特徴とする請求項2に記載の洗車機。
【請求項4】
洗車機本体と被洗浄車両とを前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、
洗車に用いる洗浄手段は、被洗浄車両の上面を洗浄するトップブラシを有し、乾燥に用いる乾燥手段は、被洗浄車両の上面を乾燥するトップ送風ノズルを有し、
前記トップブラシが被洗浄車両の上面形状に沿って移動するブラシ軌跡を記憶する記憶手段と、前記トップ送風ノズルの高さ位置を検知するノズル位置検知手段と、前記記憶手段に記憶されたブラシ軌跡と前記ノズル位置検知手段により検知されたノズル高さ位置とを比較する比較手段とを備え、
前記比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて、当該差を補正するように前記トップ送風ノズルを昇降移動させる移動制御と、洗車機本体と被洗浄車両との相対移動速度を変化させる移動制御と、を含む複数の異なるノズル移動制御を行い、
前記比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさが予め定める第一の所定値よりも大きくなると、洗車機本体と被洗浄車両との相対移動速度を低速にすることを特徴とする洗車機。
【請求項5】
洗車機本体と被洗浄車両とを前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、
洗車に用いる洗浄手段は、被洗浄車両の上面を洗浄するトップブラシを有し、乾燥に用いる乾燥手段は、被洗浄車両の上面を乾燥するトップ送風ノズルを有し、
前記トップブラシが被洗浄車両の上面形状に沿って移動するブラシ軌跡を記憶する記憶手段と、前記トップ送風ノズルの高さ位置を検知するノズル位置検知手段と、前記記憶手段に記憶されたブラシ軌跡と前記ノズル位置検知手段により検知されたノズル高さ位置とを比較する比較手段とを備え、
前記比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて、当該差を補正するように前記トップ送風ノズルを昇降移動させる移動制御と、洗車機本体と被洗浄車両との相対移動速度を変化させる移動制御と、を含む複数の異なるノズル移動制御を行い、
前記比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさが予め定める第二の所定値よりも大きくなると、洗車機本体と被洗浄車両との相対移動速度をゼロにすることを特徴とする洗車機。
【請求項6】
洗車機本体と被洗浄車両とを前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、
洗車に用いる洗浄手段は、被洗浄車両の上面を洗浄するトップブラシを有し、乾燥に用いる乾燥手段は、被洗浄車両の上面を乾燥するトップ送風ノズルを有し、
前記トップブラシが被洗浄車両の上面形状に沿って移動するブラシ軌跡を記憶する記憶手段と、前記トップ送風ノズルの高さ位置を検知するノズル位置検知手段と、前記記憶手段に記憶されたブラシ軌跡と前記ノズル位置検知手段により検知されたノズル高さ位置とを比較する比較手段とを備え、
前記比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて、当該差を補正するように前記トップ送風ノズルを昇降移動させる移動制御と、洗車機本体と被洗浄車両との相対移動速度を変化させる移動制御と、を含む複数の異なるノズル移動制御を行い、
前記トップ送風ノズルの移動制御は、
前記記憶手段に記憶されたブラシ軌跡に応じた高さ位置と前記光電センサを介して行う第一の移動制御と、
第一の移動制御中に前記上側センサが車体検知した際に、第一の移動制御より高速な第一の速度で前記トップ送風ノズルを上昇させる第二の移動制御と、
ブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさが予め定める第一の所定値よりも大きい場合に前記相対移動速度を低速にする第三の移動制御と、
ブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさが予め定める第二の所定値よりも大きい場合に前記相対移動速度をゼロにする第四の移動制御との、複数の異なるノズル移動制御を行うことを特徴とする洗車機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車に使用される洗車機に関し、特に、車両の上面を洗車するトップブラシと車両の上面を乾燥するトップ送風ノズルを備える洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗車に使用される洗車機としては、給油所などに設置されて、被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら、被洗浄車両に貯液タンクに貯留された液剤や洗浄水を噴射して、また、ブラッシングして洗車を行う構成とされる門型洗車機が知られている。
【0003】
従来の門型洗車機の洗浄工程においては、先ず、洗浄水を用いて汚れを落とし、次いでシャンプーなどの液剤を用いて洗浄し、さらに洗浄水を用いて水洗いする。この洗浄工程の後で、各送風ノズルから送風して乾燥する乾燥工程が行われる。また、必要に応じてワックスや撥水コートなどの液剤塗布工程を適宜組み合わせて洗車を行う。このように、洗車の際に用いる液剤としては、各種のシャンプーやワックスやコート類が用いられており、それぞれ専用の貯液タンクに貯留され、タンク内に挿入されたチューブを介して、洗車工程の処理に応じて噴射され消費される。また、複数の洗車モードから所望のモードを選択し、使用する液剤の種類を選択して所定の洗車モードに設定する操作パネルやリモートパネルを備えている。操作パネルは洗車機本体に配設しているが、リモートパネルは洗車機本体から離れた位置に設置して、このリモートパネルと操作パネルとを電気的に接続して、リモートパネルに設定された洗車モードにより、洗車機を駆動可能にしている。
【0004】
上記した洗車機においては、被洗浄車両の上面を洗浄するためのトップブラシと、洗浄した後で乾燥するためのトップ送風ノズルを備えているものが知られている。また、トップブラシを被洗浄車両に軽く当接させた状態で洗浄を行うために、トップブラシを上下に昇降自在に支持すると共に前後に揺動自在に支持し、さらに、トップブラシを回転駆動するモータの回転電流を検知し、この電流値を所定範囲内に抑制するように昇降移動制御することにより、被洗浄車両の上面形状に沿って洗浄することが行われている。
【0005】
また、トップ送風ノズルも被洗浄車両の上面に近接して移動させながら送風して乾燥することが好ましいので、車両の上面形状に沿って昇降するトップ(送風)ノズルと、このトップノズルに設けられて車両を検出する車両検出手段と、トップノズルが車両の所定位置に達したことを検出する位置検出手段とを備えて、洗浄工程終了後に、トップノズルを一旦下限位置まで下降させて、車両検出手段と位置検出手段の検出信号を介して昇降操作して乾燥工程を行う構成とした車両の乾燥装置が既に出願されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、車両の上面を検知するセンサを用いることにより、トップ送風ノズルを車両の上面形状に沿って移動させながら乾燥することも行われており、例えば、乾燥用ブロワ装置(トップ送風ノズル)の下方に、上昇用のセンサと下降禁止用のセンサとを設けて、往復移動の際にそれらの機能を切り替えるとした車体上面乾燥方法が既に出願されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
さらに、洗浄工程の際に車両の上面に沿って移動するトップブラシの移動軌跡に応じて乾燥ノズル(トップ送風ノズル)を移動させることも行われており、ブラシ位置検出手段と乾燥ノズルの作動位置設定手段と乾燥ノズル位置検出手段とを備えて、乾燥ノズルの作動位置設定手段の設定位置と乾燥ノズル位置検出手段の出力信号とに基づいて乾燥ノズルの駆動手段を制御するとした乾燥ノズルの移動制御装置が既に出願されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−80060号公報
【特許文献2】特開平8−169307号公報
【特許文献2】特開平5−147505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
被洗浄車両の上面形状がなだらかな傾斜面の場合や、洗車機本体の走行速度が比較的低速の場合には、トップ送風ノズルの下端部に設けるセンサを介して、トップ送風ノズルを車体に対して非接触状態に移動させることができる。
【0010】
しかし、被洗浄車両の上面形状がなだらかでなく急に立ち上がる角度の立った形状の場合や、洗車機本体の走行速度が比較的高速の場合には、トップ送風ノズルの下端部に設けるセンサを介してトップ送風ノズルを昇降させても、移動が間に合わずに、車体に接触してしまう虞が生じていた。そのために、トップ送風ノズルと被洗浄車両との接触を防止するための緊急停止手段等を設けておく必要があった。
【0011】
また、トップブラシの移動軌跡に応じて乾燥ノズル(トップ送風ノズル)を移動させることにより、トップ送風ノズルを車両の上面形状に沿って移動させながら乾燥することが可能である。しかし、この場合でも、被洗浄車両の上面形状がなだらかでなく急に立ち上がる角度の立った形状の場合や、洗車機本体の走行速度が比較的高速の場合には、単に、トップブラシの移動軌跡に応じてトップ送風ノズルを移動させるだけでは、トップ送風ノズルと被洗浄車両とが接触しないように安全に、また、効率よく乾燥することは困難である。
【0012】
これは、トップブラシは比較的小径のブラシ軸に、布(織布、編布、不織布等)や樹脂繊維から成るブラシ毛を放射状に固着して大径のブラシ体を形成しているので、ブラシ体の先端が被洗浄車両の車体表面に接触してからブラシ軸が接触するまでの時間が比較的長いため、このトップブラシ(ブラシ軸)の動きに直接的に対応させてトップ送風ノズルを移動させると、トップ送風ノズルが被洗浄車両に接触する虞が生じるためである。
【0013】
また、被洗浄車両の上面形状や洗車機本体の走行速度すなわち洗車速度に係らずに、良好で安定した乾燥工程を実施するためには、トップ送風ノズルを車体表面に所定距離内に近接させながら乾燥することが好ましいことは明らかである。
【0014】
そのために、トップブラシの移動軌跡に応じて乾燥ノズル(トップ送風ノズル)を移動させる構成であっても、被洗浄車両の上面形状がなだらかでなく急に立ち上がる角度の立った形状の場合や、洗車機本体の走行速度が比較的高速の場合においては、さらなる工夫を用いて、トップ送風ノズルと被洗浄車両との接触を確実に防止して、安全で効率のよい安定した乾燥工程を実施可能な洗車機が望まれる。
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑み、被洗浄車両の上面を洗浄するトップブラシと乾燥するために乾燥用エアを吹き付けるトップ送風ノズルとを有する洗車機において、トップ送風ノズルと被洗浄車両との接触を確実に防止して、安全で安定した乾燥工程を実施可能な洗車機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、洗車機本体と被洗浄車両とを前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、洗車に用いる洗浄手段は、被洗浄車両の上面を洗浄するトップブラシを有し、乾燥に用いる乾燥手段は、被洗浄車両の上面を乾燥するトップ送風ノズルを有し、前記トップブラシが被洗浄車両の上面形状に沿って移動するブラシ軌跡を記憶する記憶手段と、前記トップ送風ノズルの高さ位置を検知するノズル位置検知手段と、前記記憶手段に記憶されたブラシ軌跡と前記ノズル位置検知手段により検知されたノズル高さ位置とを比較する比較手段とを備え、前記比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて複数の異なるノズル移動制御を行うことを特徴としている。
【0017】
この構成によると、被洗浄車両の上面形状に沿って移動するトップブラシの軌跡に沿うようにトップ送風ノズルを移動制御することができる。また、トップブラシの移動変位量が大きい角度の立った急傾斜面では、より安全な方向に素早くトップ送風ノズルを移動制御することができる。すなわち、トップ送風ノズルと被洗浄車両との接触を確実に防止して、安全で安定した乾燥工程を実施可能な洗車機を得ることができる。
【0018】
また本発明は上記構成の洗車機において、前記トップ送風ノズルは、当該ノズルの空気吹出口の下方に装着され車体および装着物を検知する光電センサを備え、当該センサは、主に車体検知するために用いる下側センサと、主に車体検知しないために用いる上側センサとを備え、通常は、下側センサが車体検知し上側センサが車体検知しない状態で、且つ、前記ブラシ軌跡に応じた高さ位置に沿って移動制御されることを特徴としている。この構成によると、空気吹出口の下方に装着される下側センサが車体検知して上側センサが車体検知しない状態で移動するので、トップ送風ノズルの空気吹出口の高さ位置を車体表面から所定範囲内に維持した状態で移動させながら乾燥を行うことができる。また、このノズル高さ位置はブラシ軌跡に応じた高さ位置なので、安全で安定した乾燥工程となる。
【0019】
また本発明は上記構成の洗車機において、前記空気吹出口は被洗浄車両の幅方向に細長い下向きの吹出口を有し、前記光電センサは、前記空気吹出口の長さ方向と直交する前後方向の左右の上下にそれぞれ設けられ、移動する前側の上側センサが車体検知した時には、トップ送風ノズルを第一の速度で上昇することを特徴としている。この構成によると、通常は車体検知しない上側センサが車体検知すると、トップ送風ノズルを直ちに第一の速度で上昇することにより、車体との接触を回避することができる。
【0020】
また本発明は上記構成の洗車機において、前記比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさが予め定める第一の所定値よりも大きくなると、洗車機本体と被洗浄車両との相対移動速度を低速にすることを特徴としている。この構成によると、角度の立った急傾斜面のような、比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさが第一の所定値よりも大きくなる場合には、例えば、走行移動しながら洗車を行う洗車機本体の移動速度を低速にしながらトップ送風ノズルを上昇移動することができる。すなわち、トップ送風ノズルを素早く上昇移動することが可能になって、安全で安定した乾燥を行うことができる。
【0021】
また本発明は上記構成の洗車機において、前記比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさが予め定める第二の所定値よりも大きくなると、洗車機本体と被洗浄車両との相対移動速度をゼロにすることを特徴としている。この構成によると、角度の立った急傾斜面を高速で洗車するような、比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさが第二の所定値よりも大きくなる場合には、例えば、走行移動しながら洗車を行う洗車機本体の移動速度をゼロにしてトップ送風ノズルを上昇移動することができる。すなわち、トップ送風ノズルを車体に接触させることなく安全に上昇移動することが可能になって、安全で安定した乾燥を行うことができる。
【0022】
また本発明は上記構成の洗車機において、前記比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて、前記光電センサを介して行う第一の移動制御と、該第一の移動制御に加えてより高速で上昇させる第二の移動制御と、この第二の移動制御に加えて前記相対移動速度を低速にする第三の移動制御と、前記第二の移動制御に加えて前記相対移動速度をゼロにする第四の移動制御との、複数の異なるノズル移動制御を行うことを特徴としている。この構成によると、ブラシ軌跡とノズル高さ位置との差が小さいときは、トップ送風ノズル自体が備える光電センサを介して被洗浄車両の車体表面から所定距離離れた位置から乾燥用エアを吹き付ける通常乾燥工程を行い、車体の傾斜角度と相対移動速度に応じてブラシ軌跡とノズル高さ位置との差が大きくなる時には、その程度に応じて、第一の移動制御に加えてより高速で上昇させる第二の移動制御と、第二の移動制御に加えて相対移動速度を低速にする第三の移動制御と、第二の移動制御に加えて相対移動速度をゼロにする第四の移動制御とを行うことができる。すなわち、傾斜角度が略90°の直角に立った傾斜角度でも、このような車両を比較的高速で洗車を行う場合でも、相対移動させながら乾燥用空気を吹き付けるトップ送風ノズルを車体に接触させることなく安全で安定した乾燥工程を実施可能な洗車機となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車両の上面を洗車するトップブラシと車両の上面を乾燥するトップ送風ノズルを備える洗車機において、トップブラシが被洗浄車両の上面形状に沿って移動するブラシ軌跡を記憶する記憶手段と、トップ送風ノズルの高さ位置を検知するノズル位置検知手段と、記憶手段に記憶されたブラシ軌跡とノズル位置検知手段により検知されたノズル高さ位置とを比較する比較手段とを備え、比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて複数の異なるノズル移動制御を行う構成としたので、トップ送風ノズルと被洗浄車両との接触を確実に防止して、安全で安定した乾燥工程を実施可能な洗車機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る洗車機の全体構成を示す概略側面図である。
図2】洗車機の全体構成を示す概略正面図である。
図3】トップブラシとトップ送風ノズルの動作を説明する概略側面図である。
図4】トップ送風ノズルが備える光電センサを示す概略斜視図である。
図5】トップ送風ノズルの概略説明図である。
図6】洗車の際のブラシ軌跡とノズル高さ位置を示す側面図であって、(A)はなだらかな傾斜面の車両を洗車する時の状態を示し、(B)は急傾斜面で角度の立った車両を洗車する時の状態を示す。
図7】ブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて行う複数の異なるノズル移動制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1図2は一実施形態の洗車機WAを示す側面図、概略正面図である。洗車機WAは左右の対向する2つのスタンド部90の上端を連結する天井部91を有して門型に形成される洗車機本体(本体部)1を備える。洗車機本体1の進入経路上にはリモートパネル7Aが配される。被洗浄車両CAはリモートパネル7Aの面前で停車し、リモートパネル7Aの操作によって洗車の受け付け等を行う。
【0026】
洗車機本体1の底面には地面に設けられた左右一対のレール2上に配される車輪3が設けられる。これにより、洗車機本体1はレール2上を走行して被洗浄車両CAに対して前後に相対移動するように立設される。
【0027】
洗車機本体1には被洗浄車両CAをブラッシングする複数の回転するブラシを設けている。ブラシはトップブラシ4、サイドブラシ5及びロッカーブラシ6から成っている。トップブラシ4は被洗浄車両CAの上面を洗浄し、布(織布、編布、不織布等)や樹脂繊維から成るブラシ体を放射状に固着して形成される。
【0028】
サイドブラシ5は左右一対設けられ、被洗浄車両CAの両側面と前後面に摺動して被洗浄車両CAを洗浄する。ロッカーブラシ6は左右一対設けられ、被洗浄車両CAのタイヤを含む側面下部を洗浄する。サイドブラシ5及びロッカーブラシ6もトップブラシ4と同様の回転軸及びブラシ体を有している。
【0029】
洗車機本体1の一方の側方には洗剤やワックス等の各種液剤を貯液する複数の貯液タンク(不図示)を収納するタンク収納部50が配される。タンク収納部50の上方には市水及び各貯液タンクからの液剤を電磁弁等を介して分配する分配配管部51が設けられる。分配配管部51には第1、第2浄水ノズル11、13、第1、第2洗剤ノズル12、15、撥水コートノズル14、ワックスノズル16が導出される。洗車機本体1の後方には洗浄液や高圧空気を供給する供給部(不図示)が設けられ、分配配管部51に接続される。洗浄液は市水だけでなく、洗剤やワックス等の各種液剤と混合されてもよい。
【0030】
第1、第2浄水ノズル11、13は洗車機本体1の手前側及び奥側にそれぞれ配され、被洗浄車両CAに対して市水を噴射する。第1、第2洗剤ノズル12、15は洗車機本体1の手前側及び奥側にそれぞれ配され、被洗浄車両CAに対して洗剤を噴射する。撥水コートノズル14は洗車機本体1の奥側に配され、被洗浄車両CAに対して撥水コート剤を噴射する。ワックスノズル16は洗車機本体1の奥側に配され、被洗浄車両CAに対してワックスを噴射する。
【0031】
また、洗車機本体1には被洗浄車両CAを乾燥させるトップ送風ノズル21とサイド送風ノズル22とを設けている。洗車機本体1の中央上部にはトップ送風ノズル21が設けられ、両側方にはサイド送風ノズル22が設けられる。トップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22はブロワ20からの送風を被洗浄車両CAに対して吹き付けて乾燥させる。
【0032】
洗車機本体1の前面上部には車両センサ8が設けられている。車両センサ8は光電センサや超音波センサ等から成り、洗車機本体1に進入する被洗浄車両CAの外面形状を検知する。
【0033】
洗車機本体1の一方の側方の前面には操作パネル7が配される。操作パネル7はリモートパネル7Aと同様の操作ボタンを備え、被洗浄車両CAから降車したユーザ等の操作により洗車の受け付けや洗車条件の設定を行う。
【0034】
洗車条件の設定としてはシャンプー、ワックス掛け、撥水コート等を水洗いに追加するボタンが操作パネル7及びリモートパネル7Aに設けられる。また、高級なシャンプー、高級なワックス(例えば、艶出しコーティング)、高級な撥水コート、特殊なコート等を行うボタンも設けられている。さらに、フロントガード有り、フェンダーポール有り、ドアミラー有り、リヤワイパー有り、該当装備品無し等の装備品設定ボタンが設けられている。
【0035】
上記したように、本実施形態の洗車機WAは、洗車機本体1と被洗浄車両CAとを前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、洗車に用いる洗浄手段は、被洗浄車両CAの上部の左右方向に延設され前後の揺動自在に支持されたトップブラシ4を有する。また、洗浄後に乾燥用空気を吹き付ける乾燥手段として、被洗浄車両CAの上面に接近する方向に昇降自在に支持されるトップ送風ノズル21を有する。
【0036】
トップブラシ4は、駆動モータを介して回転駆動され、回転するブラシ体を被洗浄車両CAの車体表面に当接させることで洗浄する。そのために、トップブラシ4が被洗浄車両CAの車体に当接する程度により駆動モータの電流値が変化する。すなわち、当たりが強くなると電流値が上がり、当たりが弱くなると電流値が低下する。
【0037】
そこで、この電流値を所定範囲内に維持するようにトップブラシ4の高さ位置を制御することで、トップブラシ4の被洗浄車両CAの車体に対する当接力を所定範囲内に抑えることができる。すなわち、被洗浄車両CAの上面形状に沿ってトップブラシ4を移動させながら、被洗浄車両CAの上面を洗浄することができる。
【0038】
そのために、このトップブラシ4の軌跡は被洗浄車両CAの上面形状に対応した形状となる。確かに、トップブラシ4の被洗浄車両CAに対する当接部はブラシ体であるので、トップブラシ4の軌跡が、そのまま被洗浄車両CAの上面形状に一致するとは限らないが、被洗浄車両CAの上面形状に略合致していることは明らかである。従って、このトップブラシ4の軌跡を記憶させておくことで、洗浄後に駆動する乾燥手段(例えば、トップ送風ノズル21)を被洗浄車両CAの上面形状に沿って移動させることが可能になる。
【0039】
トップ送風ノズル21は、被洗浄車両の幅方向に細長い空気吹出口を有する硬質部材から成るので、被洗浄車両CAの車体表面に近接させるが接触させないことが望ましく、常時、一定距離以上離間した状態を維持しながら被洗浄車両CAの上面形状に沿って移動させることが望まれる。
【0040】
また、トップブラシ4は、弾性を有するブラシ体が被洗浄車両CAの車体表面に当接するので、車体の平坦部と傾斜部とでは、その当接状態が変化し、傾斜角度によっては、その角度変化部において、平坦部と傾斜部とに同時に接触して回転するために電流値が高くなってしまい、実際の被洗浄車両CAの形状とトップブラシ4の軌跡とのズレが大きくなってしまう。
【0041】
そのために、弾性を有するブラシ体が当接するトップブラシ4の軌跡に直接一致させてトップ送風ノズル21を移動させるのではなく、平坦から傾斜面に移動する角度変化に応じて、トップ送風ノズル21を移動させる制御を変化させることが望ましい。
【0042】
そこで、本実施形態においては、トップブラシ4が被洗浄車両CAの上面形状に沿って移動するブラシ軌跡を記憶する記憶手段と、トップ送風ノズル21の高さ位置を検知するノズル位置検知手段と、前記記憶手段に記憶されたブラシ軌跡と前記ノズル位置検知手段により検知されたノズル高さ位置とを比較する比較手段とを備え、比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて複数の異なるノズル移動制御を行う構成としたものである。
【0043】
上記の構成であれば、被洗浄車両CAの上面形状に沿って移動するトップブラシ4の軌跡に沿うようにトップ送風ノズル21を移動制御することができる。また、トップブラシ4の移動変位量が大きい角度の立った急傾斜面では、より安全な方向に素早くトップ送風ノズル21を移動制御することができる。すなわち、トップ送風ノズル21と被洗浄車両CAとの接触を確実に防止して、安全で安定した乾燥工程を実施可能な洗車機を得ることができる。
【0044】
図3に示すように、洗車機本体1にトップブラシ4が昇降自在に装着されている。また、トップブラシ4から所定距離離れた位置にトップ送風ノズル21が洗車機本体1に昇降自在に装着されている。このトップ送風ノズル21は、下方に乾燥用空気を吹出す空気吹出口を有し、その吹出口を挟む両側に側板210が装着されている。また、トップブラシ4およびトップ送風ノズル21の高さ位置を検知するセンサが設けられており、洗車機本体1の移動履歴とトップブラシ4の高さ位置とからトップブラシ4の被洗浄車両CAに対する移動軌跡を検知することができる。
【0045】
トップ送風ノズル21とトップブラシ4との離間距離は予め規定されているので、検知されたトップブラシ4の移動軌跡、すなわちブラシ軌跡に応じた高さ位置にトップ送風ノズル21を移動させることができる。トップ送風ノズル21は側板210と一体に昇降移動される。また、側板210に光電センサS(S1〜S4)が設けられている。
【0046】
光電センサS(S1〜S4)は、車体および装着物を検知する光電センサであって、当該センサは、主に車体検知するために用いる下側センサと、主に車体検知しないために用いる上側センサとを備え、通常は、下側センサが車体検知し上側センサが車体検知しない状態で、且つ、ブラシ軌跡に応じたノズル高さ位置に沿って移動制御される。このような構成であれば、通常は、空気吹出口の下方に装着される下側センサが車体検知して上側センサが車体検知しない状態で移動するので、トップ送風ノズル21の空気吹出口の高さ位置を車体表面から所定範囲内に維持した状態で移動させながら乾燥を行うことができる。また、このノズル高さ位置はブラシ軌跡に応じた高さ位置の基準となる。このように、ブラシ軌跡に沿ってトップ送風ノズル21を移動させることで、安全で安定した乾燥工程となる。
【0047】
次に、本実施形態のトップ送風ノズル21について図4および図5を用いてさらに説明する。
【0048】
トップ送風ノズル21は、被洗浄車両CAの幅方向に延在した形状の空気吹出口を車両の上面に沿って移動して被洗浄車両CAの上面を乾燥する送風ノズルであって、支持部材(不図示)を介して、図中の矢印に示す被洗浄車両の表面に接離する上下方向に昇降自在に支持されている。また、洗浄後の車両の乾燥を良好に行うためには、車両の表面に接近し送風することが望ましいので、トップ送風ノズル21の空気吹出口21a下方に、車両や装備品を検知するための光電センサS(S1〜S4)を備えている。
【0049】
また、本実施形態では、図4に示すように、トップ送風ノズル21の空気吹出口21a下方の前後に、下側第一投光器A1と下側第一受光器B1を備える下側第一センサS1と、下側第二投光器A2と下側第二受光器B2を備える下側第二センサS2との2対の光電センサSを配設している。また、その上方に、上側第一投光器A3と上側第一受光器B3を備える上側第一センサS3と、上側第二投光器A4と上側第二受光器B4を備える上側第二センサS4との2対の光電センサSを配設している。すなわち上下前後に計4対の光電センサS(S1〜S4)を配設している。
【0050】
また、この光電センサS(S1〜S4)を介して、トップ送風ノズル21の空気吹出口21aを車両の表面から所定距離離間した状態を維持して送風するので、上側第一センサS3および上側第二センサS4は、トップ送風ノズル21の空気吹出口21aから予め定める所定距離H離間した下方位置に設けている。
【0051】
また、投光器と受光器との距離を被洗浄車両の車体幅よりも大きな距離Lとすることで、これらの投受光器間に進入する車両表面を検知可能となり、支持部材を介して、トップ送風ノズル21と光電センサS(S1〜S4)を一体に昇降移動して、トップ送風ノズル21を被洗浄車両CAの車体表面に近接した位置に維持しておくことができる。また、車両表面から突出した装備品や突起物などがあっても、光電センサS(S1〜S4)が先にこれらの障害物を検知することができ、障害物を検知した位置でトップ送風ノズル21の移動を停止して、トップ送風ノズル21の障害物への当接を防止することができる。
【0052】
下側(上側)第一センサS1(S3)と下側(上側)第二センサS2(S4)は、トップ送風ノズル21の空気吹出口21a下方側の前後に所定間隔離間して略平行に配設している。この離間幅Wは、トップ送風ノズル21の下降移動や乾燥工程中の前後移動の際に、車体や装備品などとの当接を防止するためには、トップ送風ノズル21本体の前後方向幅よりも広いことが好ましく、側板210の下方の両端部に所定の離間幅Wの位置にそれぞれ設けられている。
【0053】
この構成であれば、トップ送風ノズル21の空気吹出口21aを被洗浄車両CAの幅方向に延在させ、車両の車体表面に接近する方向、または車両の上面に沿って前後方向に移動したときに、前後のいずれか一方の光電センサが障害物を検知したときに、トップ送風ノズル21の移動方向に車体や装備品などの障害物が有ると判定することができる。つまり、トップ送風ノズル21の移動中に第一受光器B1および第二受光器B2のいずれか一方の受光器が受光しないときに、障害物有りと判定する。
【0054】
また、この2対の光電センサS1、S2は、それぞれ個別に投光受光を行う1:1構成でも、第一受光器B1が第一投光器A1および第二投光器A2の光を受光し、第二受光器B2が第二投光器A2および第一投光器A1の光を受光して、この第一および第二投光器を交互にオン・オフ制御する1:2構成であってもよい。
【0055】
光電センサS1〜S4としては、車体検知用センサとして用いられる透過形の光電センサを用いることができる。例えば、最大検出距離が5〜10mで、投受光間距離が2mのときに動作領域が±150〜200mm程度の仕様を満足する透過形光電センサを用いることができる。
【0056】
そのために、最大検出距離が7mで、投受光間距離が2mのときに動作領域が±160mm程度となる光電センサを用いて、図中に示す投受光間距離Lを2mとし、離間幅Wを160mmとすることができる。
【0057】
上記の構成であれば、第一投光器A1が発する光を、第一受光器B1と第二受光器B2が共に検知可能となり、第二投光器A2が発する光を、第二受光器B2と第一受光器B1が共に検知可能となる。
【0058】
また、トップ送風ノズル21は、洗浄中は上限位置に上昇停止している。洗車機本体1が被洗浄車両CAを跨いで前後方向に走行移動して洗浄工程が終了すると直ちに乾燥工程を開始するので、被洗浄車両CAの一方の端部、例えば被洗浄車両後部の後方に移動している洗車機本体1を走行移動させて被洗浄車両CAに近づいていく道中にトップ送風ノズル21を予め定めた下降目標位置まで下降移動させる。この下降目標位置は、洗浄工程においてセンサ8Aにより検知する被洗浄車両後部の車高に応じて定まるものである。また、洗車機本体1の走行移動に応じて車両を検知すると、この検知が外れるまで上昇して、被洗浄車両CAの車体表面から所定距離離間させて送風を続行して乾燥を行う。
【0059】
そのために、上下方向に昇降自在とされるトップ送風ノズル21は、洗浄中の上方の停止位置である上限位置と、送風開始して乾燥を開始する下方の下降目標位置と、さらにこの下に設定している設計上の下限位置とが予め定められている。上限位置にあるトップ送風ノズル21は、洗浄工程中に作動するブラシ等と接触せず洗浄水や液剤などが掛からない位置である。また、洗浄工程が終了すると直ちに乾燥工程を開始して洗車のサイクルタイムを短くしたいので、洗浄工程が終了すると直ちにノズルの吐出口からの水の吐出を停止して、乾燥工程を開始する位置に洗車機本体1を走行移動させる。また、この移動の道中でトップ送風ノズル21を下降目標位置まで下降移動させる。
【0060】
また、下側センサを主に車体検知するために用いる光電センサとして用い、上側センサを主に車体検知しないために用いる光電センサとして用いることで、被洗浄車両CAの上面がこれらの上側センサと下側センサとの間に位置するように、トップ送風ノズル21の位置を制御することができる。
【0061】
すなわち、トップ送風ノズル21の下側に設ける光電センサを介して、トップ送風ノズル21を、被洗浄車両CAの上面に近接させて移動制御することができる。
【0062】
上記したように本実施形態では、光電センサSは、主に車体検知するために用いる下側センサと、主に車体検知しないために用いる上側センサとを備え、通常は、下側センサが車体検知し上側センサが車体検知しない状態で、且つ、ブラシ軌跡に応じたノズル高さ位置に沿って移動制御される。この構成であれば、通常は、空気吹出口の下方に装着される下側センサが車体検知して上側センサが車体検知しない状態で移動するので、トップ送風ノズル21の空気吹出口21aの高さ位置を車体表面から所定範囲内に維持した状態で移動させながら乾燥を行うことができる。また、このノズル高さ位置はブラシ軌跡に応じた高さ位置なので、安全で安定した乾燥工程となる。
【0063】
本実施形態では、乾燥工程に先立って行う洗浄工程で、被洗浄車両CAの上面形状に沿って移動するトップブラシ4の軌跡を記憶しているので、記憶されたトップブラシ4の軌跡に対応させてトップ送風ノズル21を移動制御することにより、トップ送風ノズル21を被洗浄車両CAの上面形状に沿って移動させることができる。
【0064】
しかし、前述したように、被洗浄車両CAの上面形状がなだらかでなく急に立ち上がる角度の立った形状の場合には、より精密にトップ送風ノズル21を移動制御することが望ましいので、本実施形態では、トップブラシ4が被洗浄車両CAの上面形状に沿って移動するブラシ軌跡を記憶する記憶手段と、トップ送風ノズル21の高さ位置を検知するノズル位置検知手段と、記憶手段に記憶されたブラシ軌跡とノズル位置検知手段により検知されたノズル高さ位置とを比較する比較手段とを備え、前記比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて複数の異なるノズル移動制御を行う構成としたものである。
【0065】
次に、図6図7を用いて各種形態のノズル移動制御について説明する。
【0066】
図6(A)には、傾斜角度がなだらかな上面形状を有する被洗浄車両CA1を洗車するトップブラシ4の軌跡K1とトップ送風ノズル21のノズル高さ位置K2を示し、図6(B)には、傾斜角度がなだらかでなく急に立ち上がる角度の立った上面形状を有する被洗浄車両CA2を洗車するトップブラシ4の軌跡K3とトップ送風ノズル21のノズル高さ位置K4を示す。
【0067】
図6(A)に示す傾斜角度がなだらかな上面形状を有する被洗浄車両CA1を洗車する際のトップブラシ4の軌跡K1とトップ送風ノズル21のノズル高さ位置K2とは略平行な軌跡を描いており、ブラシ軌跡K1とノズル高さ位置K2との差D1は、その全行程において変化が小さく略同じである。
【0068】
しかし、図6(B)に示す傾斜角度がなだらかでなく急に立ち上がる角度の立った上面形状を有する被洗浄車両CA2を洗車する際のトップブラシ4の軌跡K3とトップ送風ノズル21のノズル高さ位置K4とは、その傾斜角度変化部においてブラシ軌跡K3とノズル高さ位置K4との差D2、D3が前記D1よりも大きく変化している。
【0069】
平坦部においては、差D1であったものが、角度の立ち上がり部では差D2となり、さらに、差D3まで大きくなる。そのために、より効果的な乾燥工程を実行するためには、この差に応じて(言い換えればこの差を補正するように)トップ送風ノズル21の移動制御を行うことが望ましいといえる。
【0070】
すなわち、本実施形態では、比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさが第一の所定値よりも大きくなると、洗車機本体1と被洗浄車両との相対移動速度を低速にする制御を行う。この構成であれば、角度の立った急傾斜面のような、比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさが第一の所定値よりも大きくなる場合には、例えば、走行移動しながら洗車を行う洗車機本体1の移動速度を低速にしながらトップ送風ノズル21を上昇移動することができる。すなわち、トップ送風ノズルを素早く上昇移動することが可能になって、安全で安定した乾燥を行うことができる。
【0071】
また、比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさが第二の所定値よりも大きくなると、洗車機本体1と被洗浄車両との相対移動速度をゼロにする制御を行う。この構成であれば、角度の立った急傾斜面を高速で洗車するような、比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさが第二の所定値よりも大きくなる場合には、例えば、走行移動しながら洗車を行う洗車機本体1の移動速度をゼロにしてトップ送風ノズル21を上昇移動することができる。すなわち、トップ送風ノズル21を車体に接触させることなく安全に上昇移動することが可能になって、安全で安定した乾燥を行うことができる。
【0072】
これらの第一の所定値および第二の所定値は予め定めておく。また、通常時のブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさも、好ましいブラシ位置と好ましいノズル位置とに応じて予め定めておく。さらに、求められる洗車速度に応じて、これらの通常時の差と第一の所定値と第二の所定値と、の3つの数値を適当な所定値に設定変更できることが好ましい。
【0073】
従って、ブラシ軌跡とノズル高さ位置との差が予め定めておく差D1程度であれば、トップ送風ノズル21は通常の移動制御を行い、この通常の移動制御中に光電センサ(上側センサ)が車体を検知するとトップ送風ノズル21を第一の速度(この速度も予め定めておく)で上昇する移動制御を行い、通常の移動制御中に差D1よりも大きい予め定める差D2になると、洗車機本体1と被洗浄車両との相対移動速度を低速にする制御を行い、より大きな差D3になると、洗車機本体1と被洗浄車両との相対移動速度をゼロにする制御を行うなどの各種の制御を適宜採用することができる。
【0074】
すなわち、本実施形態に係る洗車機は、比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて、光電センサSを介して行う第一の移動制御と、該第一の移動制御に加えて第一の速度で上昇させる第二の移動制御と、この第二の移動制御に加えて相対移動速度を低速にする第三の移動制御と、第二の移動制御に加えて相対移動速度をゼロにする第四の移動制御との、複数の異なるノズル移動制御を行う構成としている。
【0075】
上記のような構成であれば、ブラシ軌跡とノズル高さ位置との差が小さいときは、トップ送風ノズル自体が備える光電センサを介して被洗浄車両の車体表面から所定距離離れた位置から乾燥用空気を吹き付ける通常乾燥工程を行い、車体の傾斜角度と相対移動速度に応じてブラシ軌跡とノズル高さ位置との差が大きくなる時には、その程度に応じて、第一の移動制御よりも高速で上昇させる第二の移動制御と、第二の移動制御に加えて相対移動速度を低速にする第三の移動制御と、第二の移動制御に加えて相対移動速度をゼロにする第四の移動制御と、を行うことができる。
【0076】
また、一旦相対移動速度を低速にする第三の移動制御を行いブラシ軌跡とノズル高さ位置との差が初期の差D1になると通常の相対速度に戻すとよい。また、一旦相対移動速度をゼロにする第四の移動制御を行いブラシ軌跡とノズル高さ位置との差が初期の差D1になると通常の相対速度に戻すとよい。すなわち、傾斜角度が略90°の直角に立った傾斜角度でも、このような車両を比較的高速で洗車を行う場合でも、相対移動させながら乾燥用空気を吹き付けるトップ送風ノズル21を車体に接触させることなく安全で安定した乾燥工程を実施可能な洗車機となる。
【0077】
上記したように、本実施形態に係る洗車機WAは、トップブラシ4が被洗浄車両CAの上面形状に沿って移動するブラシ軌跡を記憶する記憶手段と、トップ送風ノズル21の高さ位置を検知するノズル位置検知手段と、記憶手段に記憶されたブラシ軌跡とノズル位置検知手段により検知されたノズル高さ位置とを比較する比較手段とを備え、比較手段により検出されたブラシ軌跡とノズル高さ位置との差の大きさに応じて複数の異なるノズル移動制御を行う構成である。
【0078】
上記の構成であれば、平坦な面やなだらかな傾斜面では、被洗浄車両CAの上面形状に沿って移動するトップブラシ4の軌跡に応じた高さ位置にトップ送風ノズル21を移動制御することができる。また、トップブラシ4の移動変位量が大きい角度の立った急傾斜面では、より安全な方向に素早くトップ送風ノズル4を移動制御することができる。すなわち、トップ送風ノズル4と被洗浄車両CAとの接触を確実に防止して、安全で安定した乾燥工程を実施可能な洗車機WAを得ることができる。
【0079】
以上、説明したように、本実施形態に係る洗車機WAは、洗浄工程におけるトップブラシのブラシ軌跡と乾燥工程におけるトップ送風ノズルのノズル高さ位置との差の大きさに応じて複数の異なるノズル移動制御を行う構成としたので、傾斜角度がなだらかでなく急に立ち上がる角度の立った上面形状を有する被洗浄車両であっても、安全で安定した乾燥工程を実施可能な洗車機を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
そのために、本発明に係る洗車機は、多種多様な車両形状の洗車を行うと共に効率が良く安全に洗車を行うことが求められる洗車場の洗車機に好適に適用される。
【符号の説明】
【0081】
1 洗車機本体
2 レール
4 トップブラシ
5 サイドブラシ
21 トップ送風ノズル
K1、K3 ブラシ軌跡
K2、K4 ノズル高さ位置
D1〜D3 (ブラシ軌跡とノズル高さ位置との)差
S(S1〜S4) 光電センサ
CA 被洗浄車両
WA 洗車機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7