特許第5747844号(P5747844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5747844充填材、充填材ユニット、及び空気浄化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747844
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】充填材、充填材ユニット、及び空気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/18 20060101AFI20150625BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20150625BHJP
   C02F 1/78 20060101ALI20150625BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20150625BHJP
   F24F 7/00 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   B01D53/18 C
   A61L9/16 Z
   C02F1/78
   C02F1/50 510A
   C02F1/50 520J
   C02F1/50 531R
   C02F1/50 540B
   C02F1/50 550B
   C02F1/50 550C
   C02F1/50 550H
   F24F7/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-50523(P2012-50523)
(22)【出願日】2012年3月7日
(65)【公開番号】特開2013-184104(P2013-184104A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100157118
【弁理士】
【氏名又は名称】南 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100095980
【弁理士】
【氏名又は名称】菅井 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100091971
【弁理士】
【氏名又は名称】米澤 明
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良延
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 弥
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−285357(JP,A)
【文献】 特開平08−131759(JP,A)
【文献】 特開昭50−016670(JP,A)
【文献】 特開2011−016043(JP,A)
【文献】 特開2008−104919(JP,A)
【文献】 米国特許第03927165(US,A)
【文献】 米国特許第05174935(US,A)
【文献】 特開昭53−019471(JP,A)
【文献】 実開昭60−001401(JP,U)
【文献】 特開昭61−291017(JP,A)
【文献】 特開平08−318126(JP,A)
【文献】 特開2003−083623(JP,A)
【文献】 特開2001−071405(JP,A)
【文献】 特開2002−307612(JP,A)
【文献】 特開平11−156148(JP,A)
【文献】 特開平08−108022(JP,A)
【文献】 特開2002−233726(JP,A)
【文献】 特開2004−313888(JP,A)
【文献】 特開2008−212858(JP,A)
【文献】 特開2003−340268(JP,A)
【文献】 米国特許第02615699(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00〜53/96
A61L 9/00〜 9/22
C02F 1/00〜 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維を含み表面が400℃以上で1日以上加熱され、端部が溶融処理又はミシン縫いされたロービングクロスと、
前記ロービングクロスの間にそれぞれ挟持され、ポリプロピレンからなるメッシュを波型に形成したスペーサと、
を有する
ことを特徴とする充填材。
【請求項2】
前記ロービングクロスを交互に折り畳み、交互に折り畳まれた前記ロービングクロスの間にそれぞれ前記スペーサを挟持する
ことを特徴とする請求項1に記載の充填材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の前記充填材と、
下方で前記充填材を支持するメッシュ、前記充填材の側面を囲む側面部、及び前記側面部に囲まれていない面の蓋をする蓋部を有するケースと、
を備える
ことを特徴とする充填材ユニット。
【請求項4】
筒状の充填塔と、
ガラス繊維を含み表面が400℃以上で1日以上加熱され、端部が溶融処理又はミシン縫いされたロービングクロス及び前記ロービングクロスの間にそれぞれ挟持され、ポリプロピレンからなるメッシュを波型に形成したスペーサを有し、前記充填塔の内部に水平又は略水平に上下を仕切るように配置される充填材と、
前記充填材の上方から液体を供給する液体供給部と、
を備え、
前記充填塔の下方から汚染空気を導入し、前記液体供給部から供給された液体で濡れた前記充填材に前記空気を通過接触させて、前記充填塔の上方から浄化空気として送風する
ことを特徴とする空気浄化装置。
【請求項5】
前記液体はオゾンを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の空気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染空気中に含まれる汚染物質を吸収させる液体を保持する充填材、充填材ユニット、及び汚染空気を液体と接触させて清浄化する空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームの空気中に存在する汚染物質を含む空気を、液体と接触させることにより除去し、空気を浄化するシステムが、特許文献1に開示されている。
【0003】
また、充填材によって水又は薬液と汚染空気との接触効率を向上させた空気浄化装置が、特許文献2に開示されている。
【0004】
さらに、布地とプラスチックメッシュとからなる充填材が、特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−33221号公報
【特許文献2】特開2004−305919号公報
【特許文献3】特開2011−016043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機物除去性を向上させると共に、手間のかからない簡単な作業により製造することができ、コストの低減が図れると共に、耐久性も向上させた充填材、充填材ユニット、及び空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決する充填材であって、ガラス繊維を含み表面が400℃以上で1日以上加熱され、端部が溶融処理又はミシン縫いされたロービングクロスと、前記ロービングクロスの間にそれぞれ挟持され、ポリプロピレンからなるメッシュを波型に形成したスペーサと、を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記ロービングクロスを交互に折り畳み、交互に折り畳まれた前記ロービングクロスの間にそれぞれ前記スペーサを挟持することを特徴とする。
【0009】
さらに、充填材ユニットは、前記充填材と、下方で前記充填材を支持するメッシュ、前記充填材の側面を囲む側面部、及び前記側面部に囲まれていない面の蓋をする蓋部を有するケースと、を備えることを特徴とする。
【0010】
さらに、空気浄化装置は、筒状の充填塔と、ガラス繊維を含み表面が400℃以上で1日以上加熱され、端部が溶融処理又はミシン縫いされたロービングクロス及び前記ロービングクロスの間にそれぞれ挟持され、ポリプロピレンからなるメッシュを波型に形成したスペーサを有し、前記充填塔の内部に水平又は略水平に上下を仕切るように配置される充填材と、前記充填材の上方から液体を供給する液体供給部と、を備え、前記充填塔の下方から汚染空気を導入し、前記液体供給部から供給された液体で濡れた前記充填材に前記空気を通過接触させて、前記充填塔の上方から浄化空気として送風することを特徴とする。
【0011】
また、前記液体はオゾンを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる充填材は、ガラス繊維を含み表面が400℃以上で1日以上加熱され、端部が溶融処理又はミシン縫いされたロービングクロスと、前記ロービングクロスの間にそれぞれ挟持され、ポリプロピレンからなるメッシュを波型に形成したスペーサと、を有するので、ガラス繊維表面の付着物を加熱により分解・揮発させて、ガラスそのものの表面を露出させることで、元々高親水性であるのに加えて、表面張力の効果も加わり、極めて高い親水性を有することにより有機物除去性が向上し、さらに高温で加熱するため、無菌状態となり、微生物の増殖を防止できる。
【0013】
また、前記ロービングクロスを交互に折り畳み、交互に折り畳まれた前記ロービングクロスの間にそれぞれ前記スペーサを挟持するので、手間のかからない簡単な作業により製造することができ、コストの低減が図れる。
【0014】
さらに、充填材ユニットは、前記充填材と、下方で前記充填材を支持するメッシュ、前記充填材の側面を囲む側面部、及び前記側面部に囲まれていない面の蓋をする蓋部を有するケースと、を備えるので、容易に運搬することができ、他の装置等へ簡単に取り付けることが可能となる。
【0015】
さらに、空気浄化装置は、筒状の充填塔と、ガラス繊維を含み表面が400℃以上で1日以上加熱され、端部が溶融処理又はミシン縫いされたロービングクロス及び前記ロービングクロスの間にそれぞれ挟持され、ポリプロピレンからなるメッシュを波型に形成したスペーサを有し、前記充填塔の内部に水平又は略水平に上下を仕切るように配置される充填材と、前記充填材の上方から液体を供給する液体供給部と、を備え、前記充填塔の下方から汚染空気を導入し、前記液体供給部から供給された液体に浸漬された前記充填材に前記空気を通過させて、前記充填塔の上方から浄化空気として送風するので、ガラス繊維表面の付着物を加熱により分解・揮発させて、ガラスそのものの表面を露出させることで、元々高親水性であるのに加えて、毛管現象の効果も加わり、極めて高い親水性を有することにより有機物除去性が向上し、さらに高温で加熱するため、無菌状態となり、微生物の増殖を防止できる。
【0016】
また、前記液体はオゾンを含むので、充填材中の微生物の増殖を防止でき、長期間の使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】空気浄化装置を示す図である。
図2】充填材ケースを示す図である。
図3】充填材を示す図である。
図4】ロービングクロスを示す図である。
図5】充填材ユニットを示す図である。
図6図5の充填材ユニットの蓋を取り外して見た図である。
図7】充填材として本実施形態のロービングクロス片を使用した場合と、ポリエステル片を使用した場合のオゾン水に対する耐久性を示すグラフである。
図8】充填材として本実施形態のロービングクロスを使用した充填材の空気中の有機物の除去率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明にかかる空気浄化装置による有機物質の除去の実施形態を説明する。
【0019】
図1は、空気浄化装置を示す図である。
【0020】
本実施形態の空気浄化装置1は、図1に示すように、送風側空調機2と、空気浄化部3と、排気側空調機4と、液体供給部5、排水部6と、を備える。
【0021】
送風側空調機2は、クリーンルームから第1通路11を介して汚染されたレターン空気RAを取り入れる部分である。送風側空調機2は、通過するレターン空気RA内の微生物、ごみ、又は塵埃等を除去する第1HEPAフィルタ21と、第1HEPAフィルタ21を通過したレターン空気RAを冷却する冷却コイル22と、を有する。冷却コイル22にはコイル用冷水導入路15から冷水が導入され、レターン空気RAを冷却した後、コイル用冷水排水路16から排水される。
【0022】
空気浄化部3は、第2通路12を介して送風側空調機2からレターン空気RAが導入されてレターン空気RAを浄化した後、第3通路13を介して排気側空調機4へ浄化されたサプライ空気SAを送風する部分である。空気浄化部3は、筒状の充填塔30と、充填塔30の内部の下方に水平又は略水平に上下を仕切るように配置されて整流用の孔が設けられた整流板31と、整流板31の上方で充填塔30の内部に水平又は略水平に上下を仕切るように配置されて親水性の充填材を含む充填材ユニット32と、充填材ユニット32の上方で充填塔30の内部に水平又は略水平に上下を仕切るように配置されてミストの除去を行うエリミネータ34と、を有する。
【0023】
排気側空調機4は、第3通路13を介して空気浄化部3から送風された浄化されたサプライ空気SAをクリーンルームへ第4通路14を介して送風する部分である。排気側空調機4は、浄化されたサプライ空気SAをクリーンルームへ送風するファン41と、ファン41を通過したサプライ空気SAをクリーンルームに要求される所定温度に温める加熱コイル42と、サプライ空気SA内の微生物、ごみ、又は塵埃等をさらに除去する第2HEPAフィルタ43と、を有する。加熱コイル42にはコイル用温水導入路17から温水が導入され、サプライ空気SAを加熱した後、コイル用温水排水路18から排水される。
【0024】
液体供給部5は、空気浄化部3の充填材ユニット32に空気を浄化するための液体を供給する部分である。液体供給部5は、補給水が供給される第1供給管51と、熱交換器用冷水導入路19から導入された冷水によって第1供給管51内の補給水を冷却する熱交換器52と、熱交換器52によって冷却された補給水を送るポンプ53と、ポンプ53によって送られた補給水を浄化液としてのオゾン水に変換するオゾン水発生機54と、オゾン水発生機54で生成されたオゾン水を空気浄化部3へ送る第2供給管55と、ポンプ53によって送られた補給水をオゾン水発生機54を通さずに迂回させるバイパス管56と、バイパス管56を通る補給水の量を調整しオゾン水発生機54で生成されたオゾン水の濃度を調整する電磁バルブ57と、空気浄化部3の充填材ユニット32の上方に複数配置されて第2供給管55から送られたオゾン水を充填材ユニット32に噴射するノズル58と、を有する。
【0025】
オゾン水濃度の設定又はオゾン水散水時間の設定は、電磁バルブ57の設定により行われる。
【0026】
第1の方法は、電磁バルブ57をon-off制御で運転する方法である。1日のうちt時間でオゾン水を散水し、残りの(24−t)時間で補給水のみ散水する方法が第1の方法である。
【0027】
第2の方法は、電磁バルブ57の開度により、オゾン水発生機54から送水されるオゾン水と補給水とを混合させて、一定濃度のオゾン水とし、このオゾン水を散水する方法である。一日中一定濃度のオゾン水を散水する方法が第2の方法である。
【0028】
第3の方法は、第2の方法に時間スケジュール管理の制御を組み込んだ電磁バルブ57により、一日のt時間で比較的濃度の高いオゾン水を散水し、補給水及び充填材を殺菌する時間帯とし、残りの(24−t)時間で低濃度のオゾン水を散水し、補給水を殺菌する時間帯とする。
【0029】
第1、第2及び第3の方法の選択は、補給水中に含まれる微生物生菌数濃度及び充填材32内で繁殖する微生物増殖速度を勘案して決められる。なお、補給水中の微生物濃度は、補給水を平板希釈法等により、細菌濃度、真菌濃度として求めることができる。また、充填材32内の微生物増殖速度は、排水部6の排水中の微生物濃度を、補給水中の微生物濃度と同様の方法で継続的に測定することにより求めることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、レターン空気RA内の汚染物質の除去のために水を使用したが、レターン空気RA内の汚染物質の種類に応じて、アルカリ性液剤、酸性液剤等を使用してもよい。また、オゾン水は、微生物殺菌のために用いている。
【0031】
排水部6は、空気浄化部3の充填塔30から流れる使用後の汚染水を貯留する貯留部材61と、貯留部材61に貯留した汚染水を排水する排水管62と、を有する。
【0032】
なお、排水部6には、空気浄化部3から流れる使用後の汚染水の状態をモニタリングするセンサ等のモニタリング部材を設置してもよい。そして、汚染水の状態に応じて、送水ポンプ53及び電磁バルブ57を制御し、散水量を調整することが好ましい。例えば、汚染水の汚染度が所定の指標値よりも高い場合には、散水量を増し、汚染水の汚染度が所定の指標値よりも低い場合には、散水量を減らすと省エネの運転が可能となる。
【0033】
次に、空気浄化部3の充填材ユニット32について詳しく説明する。
【0034】
図2は、充填材ユニット32のケース321を示す図である。また、図3は、充填材322を示す図である。
【0035】
図1に示した充填材ユニット32は、図2に示すようなケース321と、図3に示すような充填材322と、を有する。
【0036】
図2に示すように、ケース321は、下方で充填材322を支持し空気及び液体を通過させるメッシュ321aと、充填材322の側面を囲む側面部321bと、側面部321bに囲まれていない面の蓋をする蓋部321cと、を有する。
【0037】
図3に示すように、充填材322は、無機物の素材からなるロービングクロス322aと、ポリプロピレンのメッシュを波型に折り曲げたスペーサ322bと、を有する。スペーサ322bは、特許文献3に記載されたものと同様に作製されたものを使用してよい。なお、スペーサ322bは、図3に示すように、波の頂部が横方向に平行な横波型としてもよいし、波の頂部が縦方向に平行な図示しない縦波型としてもよい
【0038】
図4は、ロービングクロス322aを示す図である。
【0039】
ロービングクロス322aは、繊維を横に並べて太い束としたよこ束322a1と、繊維をたてに並べて太い束としたたて束322a2と、を有し、よこ束322a1とたて束322a2とを平織りした布である。
【0040】
ロービングクロス322aは、製造工程でガラス繊維に有機物などを付着させて製造するために、一般には撥水性を有する。このロービングクロス322aを400℃以上で1日以上加熱することによって、ガラス繊維表面の付着物を分解・揮発させて、ガラスそのものの表面を露出させることができる。ガラスは、元々高親水性であるのに加えてガラス細繊維間の毛管現象による効果も加わる。つまり、ロービングクロス322aは、高親水性を有する。また、ロービングクロス322aは、高温で加熱するため、無菌状態となる。さらに、ガラスは、無機物であるので、ロービングクロス322aは、耐オゾン性が強い。したがって、ロービングクロス322aは、充填材として好適なものである。
【0041】
なお、ロービングクロス322aは、上下の端部をガスバーナ等で焼き、端部がほつれないように溶融処理をすると好ましい。また、ほつれを防止するために上下端部をミシン縫いしてもよい。
【0042】
図5は、ケース321に充填材322を充填した充填材ユニット32を上方から見た図である。また、図6は、蓋部321cを開放した充填材ユニット32を側方から見た図である。
【0043】
充填材322は、図3に示すように、ロービングクロス322aを交互に折り畳んでスペーサ322bを包み形成する。ロービングクロス322aを交互に折り畳み、交互に折り畳まれたロービングクロス322aの間にそれぞれスペーサ322bを挟持することで、ロービングクロス322aを切断する工程を少なくすることが可能となり、手間のかからない簡単な作業により製造することができ、コストの低減を図ることが可能となる。
【0044】
なお、図5に示すように、折り畳む際にケース321と当接する部分は、ロービングクロス322aとすることが好ましい。
【0045】
次に、ロービングクロス322a及びスペーサ322bをSUS(Steel Use Stainless)棒323によって串刺しにする。このように、SUS棒323によって充填材322を串刺しにすることによって、ロービングクロス322aやスペーサ322bが変形したり、ケース321に対してずり落ちたりすることを低減する。
【0046】
次に、図5に示すように、折り畳まれた充填材322をケース321に入れる。この時、ロービングクロス322aのケース321からはみ出た部分は、切断される。次に、蓋部材321cを閉めビス等で止めて充填材ユニット32が完成する。なお、充填材322をケース321に入れた後、SUS棒323によって充填材322を串刺しにしてもよい。
【0047】
このように、充填材ユニット32は、充填材322と、下方で充填材を支持するメッシュメッシュ321a、充填材メッシュ321の側面を囲む側面部321b、及び側面部321bに囲まれていない面の蓋をする蓋部321cを有するケース321と、を備えるので、容易に運搬することができ、他の装置等へ簡単に取り付けることが可能となる。
【0048】
次に、このような充填材322を使用した空気浄化装置1の作動について説明する。
【0049】
まず、ノズル58から噴射する液体の流れについて第2の方法で説明する。
【0050】
第1供給管51から供給される補給水が熱交換器52及びポンプ53を経てオゾン水発生機54に送られる。オゾン水発生機54に注水された補給水は、オゾン水となって第2供給管55からノズル58へ送られる。ここで、オゾン水発生機54を迂回しバイパス管56に通る補給水は、電磁バルブ57によって流量を調整されて第2供給管55へ送られる。すなわち、第2供給管55でオゾン水と補給水が混合されてノズル58へ送られる。そして、濃度の調整されたオゾン水が充填材ユニット32の上方に配置されたノズル58から充填材ユニット32へ噴射される。
【0051】
充填材ユニット32に噴射されたオゾン水は下方に流れて整流板31を通過し、排水部6の貯留部材61に貯留される。その後、排水管62から排水される。
【0052】
次に、レターン空気RAとして導入し、浄化されて、サプライ空気SAとして送風されるまでの空気の流れについて説明する。
【0053】
まず、クリーンルームから第1通路11を介して送風側空調機2にレターン空気RAを取り入れる送風側空調機2では、第1HEPAフィルタ21でレターン空気RA内のごみや塵埃等を除去し、冷却コイル22でレターン空気RAを冷却する。
【0054】
次に、送風側空調機2から第2通路12を介して空気浄化部3の充填塔30の下方にレターン空気RAが導入される。レターン空気RAは、下方からまず整流板31を通過する。整流板31を通過したレターン空気RAは、充填材ユニット32に入る。
【0055】
充填材ユニット32には、ノズル58から噴射されたオゾン水がロービングクロス表面に濡れ面を形成し流下する。したがって、充填材ユニット32は、レターン空気RAが通過する際に、レターン空気RA内の有機物を除去することが可能となる。
【0056】
充填材ユニット32を通過して浄化された空気は、エリミネータ34でミストを除去される。そして、充填塔30から排出され空気浄化部3を出る。
【0057】
次に、空気浄化部3で浄化された空気は、サプライ空気SAとして第3通路13を介して、排気側空調機4に送風される。排気側空調機4では、ファン41によって送風され、加熱コイル42でクリーンルームに要求される所定温度に温められ、第2HEPAフィルタ43でごみや塵埃等をさらに除去されたサプライ空気SAを、第4通路14を介してクリーンルームへ送風する。
【0058】
次に、このような充填材を使用した実施例について説明する。
【0059】
まず、実施例の仕様について説明する。
【0060】
本実施例では、まず、ロービングクロス322aを400℃で7日間焼成し表面の付着物を取り除いて親水性を高くした。ロービングクロス322aの幅は、1000mm、長さ50mである。充填材322のケース321は、断面300×300mm、長さ1040mmとした。スペーサ322bの波の高さは5mm、目開きは2mmとした。SUS棒は、先端を鋭角に研磨しれ充填材322に12本横刺しした。
【0061】
このような充填材322に使用したロービングクロス322aの耐オゾン性を測定した。本実施例では、オゾン10ppmの液を2.5L/minで供給した容器の中に、ロービングクロス片及びポリエステル片を浸漬させて、両者の重量の変化を測定した。
【0062】
図7は、充填材として本実施形態のロービングクロス片を使用した場合と、ポリエステル片を使用した場合のオゾン水に対する耐久性を示すグラフである。図7の●はロービングクロス片、■はポリエステル片の場合を示している。
【0063】
図7に示すように、ポリエステル片は、浸漬時間が長くなるにつれて重量減少率が高くなるのに対し、ロービングクロス片は、浸漬時間が長くても重量減少率がほとんど増加していないことがわかる。したがって、明らかに、ロービングクロス片は、ポリエステル片よりもオゾンに対する耐久性が強く、長期間の使用が可能である。
【0064】
次に、ロービングクロスを使用した充填材の空気中の有機物の除去率を測定した。上述した空気浄化部3に対して、有機溶剤PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を含む露点約10℃の空気を、充填塔30内での風速が1.5m/sとなるように送風する。また、ロービングクロスを使用した充填材ユニット32の上方からノズル58によって、10℃の水を液ガス比が0.12L/m3になるように散水した。そして、運転の経過時間512時間まで有機物除去性能を測定した。
【0065】
図8は、充填材として本実施形態のロービングクロスを使用した充填材の空気中の有機物の除去率を示すグラフである。
【0066】
その結果、図8に示すように、有機物の除去率は、運転時間中、90%以上で安定していた。また、散水量を変えて、液ガス比を0.1L/m3や、0.08L/m3としても有機物の除去率は、運転時間中、90%以上で安定していた。
【0067】
すなわち、本実施形態のロービングクロスを使用した充填材の空気中の有機物の除去率は、安定して高い除去率を保持することができた。
【0068】
このように、本実施形態にかかる充填材322は、表面が加熱されたガラス繊維を含むロービングクロス322aと、ロービングクロス322aの間にそれぞれ挟持され、ポリプロピレンからなるメッシュを波型に形成したスペーサ322bと、を有するので、ガラス繊維表面の付着物を加熱により分解・揮発させて、ガラスそのものの表面を露出させることで、元々高親水性であるのに加えて、表面張力の効果も加わり、極めて高い親水性を有すると共に、高温で加熱するため、無菌状態となり、有機物除去性が向上する。
【0069】
また、ロービングクロス322aを交互に折り畳み、交互に折り畳まれたロービングクロス322aの間にそれぞれスペーサ322bを挟持するので、手間のかからない簡単な作業により製造することができ、コストの低減が図れる。
【0070】
さらに、充填材ユニット32は、充填材322と、下方で充填材を支持するメッシュ321a、充填材322の側面を囲む側面部321b、及び側面部321bに囲まれていない面の蓋をする蓋部321cを有するケース321と、を備えるので、容易に運搬することができ、他の装置等へ簡単に取り付けることが可能となる。
【0071】
さらに、空気浄化装置1は、筒状の充填塔30と、ガラス繊維を含むロービングクロス322a及びロービングクロス322aの間にそれぞれ挟持され、ポリプロピレンからなるメッシュを波型に形成したスペーサ322bを有し、充填塔30の内部に水平又は略水平に上下を仕切るように配置される充填材322と、充填材322の上方から液体を供給する液体供給部5と、を備え、充填塔30の下方から汚染空気を導入し、液体供給部5から供給された液体に浸漬された充填材322に空気を通過させて、充填塔30の上方から浄化空気として送風するので、ガラス繊維表面の付着物を加熱により分解・揮発させて、ガラスそのものの表面を露出させることで、元々高親水性であるのに加えて、毛管現象の効果も加わり、極めて高い親水性を有することにより有機物除去性が向上し、さらに、高温で加熱するため、無菌状態となり、微生物の増殖を防止できる
【0072】
また、液体はオゾンを含むので、有機物除去性がさらに向上すると共に、充填材322のオゾンに対する耐久性が向上し、長期間の使用が可能となる。
【0073】
なお、この実施形態によって本発明は限定されるものではない。すなわち、実施形態の説明に当たって、例示のために特定の詳細な内容が多く含まれるが、当業者であれば、これらの詳細な内容に色々なバリエーションや変更を加えても、本発明の範囲を超えないことは理解できよう。従って、本発明の例示的な実施形態は、権利請求された発明に対して、一般性を失わせることなく、また、何ら限定をすることもなく、述べられたものである。
【符号の説明】
【0074】
1…空気浄化装置
2…送風側空調機
3…空気浄化部
30…充填塔
32…充填材ユニット
321…ケース
322…充填材
4…排気側空調機
5…液体供給部
6…排水部
図1
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図8