(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747853
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ポリプロピレン組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/16 20060101AFI20150625BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20150625BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20150625BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
C08L23/16
C08L23/08
C08L23/06
C08K5/14
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-75895(P2012-75895)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-203937(P2013-203937A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅井 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】三輪 肇
【審査官】
安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−062861(JP,A)
【文献】
特開2001−171439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/16
C08L 23/06
C08L 23/08
C08K 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン含量4〜20重量%のポリプロピレン35〜45重量%と,エチレン−αオレフィン共重合体ゴム40〜50重量%と,前記エチレン−αオレフィン共重合体ゴム中に分散する密度が0.96g/cm3〜0.967のg/cm3の高密度ポリエチレン7〜12重量%と,相溶化剤5〜10重量%とからなる配合成分100重量部に,流動性調整剤0.05〜0.1重量部を配合してなるポリプロピレン組成物。
【請求項2】
請求項1のポリプロピレン組成物からなる射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンを主成分とした、剛性を保ちながら低温衝撃性に優れたポリプロピレン組成物および成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンを主成分にエチレン・プロピレン系ゴムや無機充填剤等を配合したPP組成物は、剛性や耐衝撃性に優れ高い成形性を有しているため自動車の内外装部品に広く使用されている。自動車のエアバッグパッド(以下、ABパッドと記す)にも使用されており、その要求性能として流動性、低温での衝撃性があるが、一般的にポリプロピレン組成物は剛性と低温衝撃性との両立化が難しく、一方の特性をある程度犠牲にせざるを得ないのが現状である。
【0003】
特許文献1には、剛性と低温衝撃性のバランスを得るため、ポリプロピレンをマトリックス相としエラストマーを分散相とする構造をなし、ポリエチレンが分散相中に存在しているポリプロピレン組成物が開示されている。しかし、この配合系では特に流動性が要求される成形品(例えば厚肉部と薄肉部を要するABパッド)への適用ができにくい。
【0004】
特許文献2には、厚肉部と薄肉部を持つABパッド材料として,ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体ゴム等とからなるPP組成物にパ−オキサイドを所定量配合した組成物が開示されている。しかし、この配合系では剛性と低温衝撃性とのバランス化が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−130923号公報
【特許文献2】特開2001−62861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、高流動性であり、剛性を保ちながら低温衝撃性に優れたポリプロピレン組成物およびその成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の
請求項1および請求項2は、エチレン含量4〜20重量%のポリプロピレン35〜45重量%と,
エチレン−αオレフィン共重合体ゴム40〜50重量%と,前記エチレン−αオレフィン共重合体ゴムに分散する密度が0.96g/cm3〜0.967g/cm3の高密度ポリエチレン7〜12重量%と,相溶化剤5〜10重量%とからなる配合成分100重量部に,流動性調整剤0.05〜0.1重量部を配合してなるポリプロピレン組成物およびその
射出成形品であることを特徴とする。
【0008】
本発明における各要素の態様を以下に例示する。
【0009】
1.ポリプロピレン
ポリプロピレンブロック共重合体でありエチレンを4〜20重量%含有する。エチレン量が4重量%未満では衝撃強度の低下やゴム分散性の低下によるフローマークの発生が生じるおそれがあり、20重量%を超えると耐熱性や剛性の低下が生じるおそれがある。
【0010】
2.高密度ポリエチレン
密度が0.96g/cm
3以上のポリエチレンである。ゴム中に分散しゴムを補強する事により、ポリプロピレン組成物の剛性を保ちさらに低温衝撃性も確保できる。密度が0.96g/cm
3未満ではそれらが困難となる。
【0011】
3.エチレン−αオレフィン共重合体ゴム
αオレフィンとしては、プロピレン、ブテン、ペンテンなどが挙げられるがエチレン−ブテン共重合体ゴムが好適である。低温衝撃性に大きく寄与する。
【0012】
4.相溶化剤
プロピレン−ブテン共重合体が好適であり、ポリプロピレンとゴム間の相溶性が高まり引張り伸びが向上する。
【0013】
5.流動性調整剤
ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルなどが挙げられるが、ジアルキルパーオキサイドが好適である。
ポリプロピレンやゴムの分子鎖を切断するためポリプロピレン組成物の流動性が向上する。
【0014】
6.配合量
ポリプロピレン,高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体ゴム,相溶化剤、パーオキサイドの配合量は、剛性を保ちながら低温衝撃性に優れた性能を確保できるよう適切に配合する。
【0015】
用途
本発明の成形品としては、ABパッドの他、インストルメントパネル、コンソールボックス、サイドモールなどの自動車用部品が例示できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、高流動性であり、剛性を保ちながら低温衝撃性に優れたポリプロピレン組成物およびその成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
表1の配合内容で配合量を変えて、3種類の実施例用と3種類の比較例用の試料を射出成形法で作成した。
【0018】
物性評価項目はメルトフローレート(MFR)、アイゾット衝撃強度、引張り強度・伸び、曲げ強度・弾性率である。
【0019】
各物性試験の測定法について説明する。
【0020】
MFRはISO 1133(測定温度230℃)に準じて測定した。
【0021】
アイゾット衝撃強度(ノッチ付き)はISO 180(測定温度23℃、−45℃)に準じて測定した。
【0022】
引張り強度・伸びはISO 527に準じて測定した。
【0023】
曲げ強度・弾性率はISO 178に準じて測定した。
【0024】
表1に物性評価結果を示すが、実施例は流動性が高く、曲げ弾性率を確保しながら低温での衝撃性も優れている。一方、比較例1、2は高密度ポリエチレンの配合量を少なくした事により低温での衝撃性が悪くなっている。さらに比較例3は相溶化剤を無配合にしたことにより、引張り伸びが低下する。
【0025】
【表1】