【実施例】
【0050】
図1は、本発明のポリ硫酸第2鉄溶液の製造方法に用いられる装置の一例を示す概略図である。なお、本発明のポリ硫酸第2鉄溶液の製造方法に用いられる装置の構成は、本実施形態に限定されず、種々変更可能である。
【0051】
図1において、1は、撹拌機2と、pH計、酸化還元電位計、温度計を備えた計装3と、圧力計11と薬液を導入するための弁24を設けた配管25とを備え、硫酸第1鉄を含む溶液が収容されたPVC製円筒形状の反応槽(近似内径150mm、高さ140mm)である。4は、撹拌機5と、pH計、酸化還元電位計、温度計を備えた計装6と、圧力計12とを備え、硝酸を含む溶液が収容されたPVC製円筒形状の反応槽(近似内径150mm、高さ140mm)である。16は、硝酸性窒素ガスを硝酸として回収するための硝酸回収装置である。反応槽1と反応槽4は、密閉構造になっている。反応槽1と反応槽4の間には、反応槽4のヘッドスペースのガスを反応槽1に収容された溶液中に導入するための配管7と、反応槽1のヘッドスペースのガスを反応槽4に収容された溶液中に導入するためにエアーポンプ8を介して配管9と配管10が設けられている。なお、配管7と配管10のガス出口側の先端には、それぞれ反応槽1と反応槽4に収容された溶液と循環導入されるガスとの接触を効率よく行うための図示しないガス散気装置が設けられている。また、反応槽1には、反応槽1のヘッドスペースのガスを硝酸回収装置16に導入するための配管13、15が弁14を介して設けられている。配管9のガス入口側には弁17が設けられており、弁17とポンプ8の間において、配管9には空気を取り入れるための弁20を設けた配管22が設けられている。配管10のガス出口側には弁18が、配管7のガス入口側には弁19が設けられており、配管10と配管7の間には、反応槽4をバイパスする経路を形成するための弁21を設けた配管23が設けられている。反応終了後に弁18と弁19を閉じると配管9、エアーポンプ8、配管10、配管7、反応槽1内に残留する硝酸性窒素ガスをパージできる構造となっている。
【0052】
上記の装置を用いて本発明の第1の方法でポリ硫酸第2鉄溶液を製造する場合には、反応槽1に硫酸第1鉄を含む溶液を密閉収容し、反応槽4には硝酸を含む溶液を密閉収容し、弁14、20、21、24を閉じて、弁17、18、19を開け、計装3、6、圧力計11、12、撹拌器2、5、エアーポンプ8を作動させる。反応槽1と反応槽4からなる密閉系において、反応槽4に収容された硝酸を含む溶液から揮発した気体は、配管7を経由して反応槽1に収容された硫酸第1鉄を含む溶液に吹き込まれ、同時に、反応槽1に収容された硫酸第1鉄を含む溶液から揮発した気体は、反応槽4に収容された硝酸を含む溶液に吹き込まれ、反応槽4に収容された硝酸を含む溶液と反応槽1に収容された硫酸第1鉄を含む溶液の間で気体が循環する。
【0053】
そして、例えば、圧力計11による圧力値が所定の圧力を超えたときに弁14を開けて硫酸第1鉄を含む溶液から揮発した気体を配管13、15を経由して取り出す。その後、取り出した気体に含まれる窒素酸化物を硝酸回収装置16に導入し、窒素酸化物から硝酸を製造するための既知の方法により硝酸に変換して回収する。
【0054】
上記の装置を用いて本発明の第2の方法でポリ硫酸第2鉄溶液を製造する場合には、反応槽1に硫酸第1鉄を含む溶液を収容し、弁14、17、18、19、20、21を閉じて、計装3、圧力計11、撹拌器2を作動させる。反応槽1をこの状態に維持し、弁24を開けて、配管25から所定量の硝酸を添加する。
【0055】
そして、例えば、反応槽1への所定量の硝酸添加が終了した段階で、直ちに弁14を開けて、反応槽1内の溶液から揮発した気体を配管13、15を経由して取り出してもよく、あるいは、例えば、圧力計11による圧力値が所定の圧力を超えたときに弁14を開けて、反応槽1内の溶液から揮発した気体を配管13、15を経由して取り出してもよい。その後、取り出した気体に含まれる窒素酸化物を硝酸回収装置16に導入し、窒素酸化物から硝酸を製造するための既知の方法により硝酸に変換して回収する。
【0056】
(実施例1)
上記のように構成した反応槽1に水900mLと硫酸第1鉄7水塩1260g(和光純薬製試薬)と95%硫酸120mL(純正化学製試薬)で構成された硫酸第1鉄を含む硫酸溶液1690mLを硫酸第1鉄を含む溶液として収容し、反応槽4に水300mLと60%硝酸水溶液300mL(和光純薬製試薬)で構成された約600mLの硝酸水溶液を硝酸を含む溶液として収容した。そして、弁14、20、21、24を閉じ、弁17、18、19を開け、撹拌機2と撹拌器5とエアーポンプ8を作動させてガス吐出量約50L/分で密閉系内の気体を循環させることにより反応を開始させた。なお、反応槽1に収容した硫酸第1鉄7水塩は、溶解度の関係で常温ではほとんど溶解しないため、反応開始時において、反応槽1はスラリー状態で撹拌を行った。
【0057】
反応槽1と反応槽4での反応の進行監視や異常の有無を反応槽1と反応槽4に取り付けられた計装3、6、圧力計11、12で行い、反応槽1と反応槽4の間で循環する気体の量を圧力計11、12で監視した。
【0058】
圧力計11によるゲージ圧力値が0.15kg/cm
2を示した時点でエアーポンプ8を停止し、弁14を開放し、配管13、配管15から密閉反応系内の気体を取り出した。圧力計11のゲージ圧力値が0.00kg/cm
2を示した時点で弁14を閉じ、エアーポンプ8(ガス吐出量約50L/分)を作動させて反応を再開させた。
【0059】
この一連の密閉反応系内の気体取り出しの操作と反応再開の操作を繰り返し行なった。反応槽1のpHの変化、酸化還元電位の変化、温度の変化から反応が終点に達したと判断された段階で密閉反応系内の気体取り出し操作を行い、反応再開の操作後1分経過しても圧力計11のゲージ圧力値が0.00kg/cm
2を示したまま上昇しなくなったことを確認し、弁20、21を開け、弁17、18、19を閉じ、空気で1時間パージし、パージした気体を配管13、15を経由して取り出した。
【0060】
表1に実施例1の開始から終点までの反応時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液中の硝酸性窒素の濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。なお、溶液中の全鉄濃度はICP発光法(SII製SPS−3100)、溶液中の第1鉄イオンは、o−フェナントロリン吸光光度法、溶液中の硝酸性窒素濃度は触媒燃焼化学発光法(島津製TNM−1)で測定した。
【0061】
反応開始から約190分で反応終点まで達し、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が全て第2鉄に酸化されてポリ硫酸第2鉄溶液が製造されたことが確認された。また、反応終点において、反応開始時において溶解していなかった硫酸第1鉄7水塩はすべて溶解していた。また、製造されたポリ硫酸第2鉄溶液中の硝酸性窒素濃度も0.1%未満であった。また、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液から化4に示す化学反応のほぼ式量通りの硝酸性窒素ガスを取り出せた。
【0062】
【表1】
【0063】
また、
図2に、実施例1の開始から終点までの反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中のpH、酸化還元電位、温度を示す。ここで、横軸が開始から終点までの反応時間であり、縦軸がpH(単位:−)、酸化還元電位(単位;mV)、温度(単位;℃)である。
【0064】
図2において、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩が第2鉄塩に変換される反応の終点付近で酸化還元電位が急激に上昇し第1鉄塩が消失する変曲点が存在することが確認された。また、pHは、化4に示す化学反応式のとおり反応開始とともに酸が消費され、反応の終点付近において上昇した。なお、
図2において、0分から50分過ぎまでのpHは、マイナスの数値となっている。したがって、pHと酸化還元電位を監視することによって、反応の進行を監視できるとともに、反応の終点を判断することができることが確認された。
【0065】
(実施例2)
反応槽4に水400mLと60%硝酸水溶液200mL(和光純薬製試薬)で構成された約600mLの硝酸水溶液を硝酸を含む溶液として収容した以外は全て実施例1と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出した。
【0066】
表2に実施例2の開始から終点までの反応時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液中の硝酸性窒素濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0067】
実施例1の硝酸を含む溶液の液量をそのままに硝酸濃度を2/3の濃度でポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った結果、反応終点に達するまでの時間が630分と実施例1と比較し約3.3倍長くなったが、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が全て第2鉄に酸化されて硝酸性窒素濃度も0.1%未満のポリ硫酸第2鉄溶液が製造され、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液から化4に示す化学反応のほぼ式量通りの硝酸性窒素ガスを取り出せた。
【0068】
【表2】
【0069】
(実施例3)
反応槽4に60%硝酸水溶液600mL(和光純薬製試薬)を硝酸を含む溶液として収容した以外は全て実施例1と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出した。
【0070】
表3に実施例3の開始から終点までの反応時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液中の硝酸性窒素濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0071】
実施例1の硝酸を含む溶液の液量をそのままに硝酸濃度を2倍の濃度でポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った結果、反応終点に達するまでの時間が16分と実施例1と比較し約1/12の時間まで短縮され、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が全て第2鉄に酸化されて硝酸性窒素が0.17%のポリ硫酸第2鉄溶液が製造され、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液から化4に示す化学反応式量の86%の硝酸性窒素ガスを取り出せた。
【0072】
【表3】
【0073】
(実施例4)
反応槽4に60%硝酸水溶液300mL(和光純薬製試薬)を硝酸を含む溶液として収容した以外は全て実施例1と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出した。
【0074】
表4に比較例2の開始から終点までの反応時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液中の硝酸性窒素の濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0075】
実施例4の硝酸を含む溶液の濃度を変えず1/2の液量でポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った結果、実施例3と比較し、反応終点に達するまでの時間が47分と約3倍長くなり、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が全て第2鉄に酸化されて硝酸性窒素が0.18%のポリ硫酸第2鉄溶液が製造され、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液から化4に示す化学反応式量の86%の硝酸性窒素ガスを取り出せた。
【0076】
【表4】
【0077】
(実施例5)
反応槽4に実施例4のポリ硫酸第2鉄溶液の製造後に反応槽4に残留した約300mLの硝酸水溶液を硝酸を含む溶液としてそのまま収容した以外は全て実施例1と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出した。
【0078】
表5に実施例5の開始から終点までの反応時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液中の硝酸性窒素濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0079】
実施例4で反応槽4に残留し硝酸濃度の低下した硝酸水溶液を硝酸を含む溶液として更にポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った結果、反応終点に達するまでの時間が140分と実施例4と比較し約3倍長くなったが、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が全て第2鉄に酸化されて硝酸性窒素も0.1%未満のポリ硫酸第2鉄溶液が製造され、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液から化4に示す化学反応のほぼ式量通りの硝酸性窒素ガスを取り出せた。
【0080】
【表5】
【0081】
(実施例6)
反応槽4に硝酸ナトリウム335g(和光純薬製試薬)と95%硫酸110mL(純正化学製試薬)で構成された硝酸ナトリウム硫酸水溶液600mLを硝酸を含む溶液として収容した以外は全て実施例1と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出した。
【0082】
表6に実施例6の開始から終点までの反応時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液中の硝酸性窒素濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0083】
反応槽4に収容する液量と硝酸性窒素の濃度と酸の濃度が実施例1とほぼ同じ条件となるように水に硝酸塩と硫酸を加えて硝酸を含む溶液としてポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った結果、反応終点に達するまでの時間が750分で実施例1と比較し約3.9倍長くなったが、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が全て第2鉄に酸化されて硝酸性窒素も0.1%未満のポリ硫酸第2鉄溶液が製造され、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液から化4に示す化学反応のほぼ式量通りの硝酸性窒素ガスを取り出せ、実施例1とほぼ同様の結果を得た。
【0084】
【表6】
【0085】
(実施例7)
実施例1の反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液1690mLに硝酸ナトリウム50g(和光純薬製試薬)を収容した以外は全て実施例1と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出した。
【0086】
表7に実施例7の開始から終点までの反応時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、反応槽1と反応槽4に収容した硝酸性窒素の濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0087】
反応槽1に反応開始剤として硝酸ナトリウムを加えた以外は実施例1と同条件でポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った結果、反応終点に達するまでの時間が130分と実施例1と比較し約32%短くなり、反応槽1に反応開始剤を加えた効果が認められた。また、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が全て第2鉄に酸化されて硝酸性窒素が0.12%のポリ硫酸第2鉄溶液が製造され、反応槽1に収容した硝酸水溶液と反応槽4に収容した硝酸を含む溶液から化4に示す化学反応式量の91%の硝酸性窒素ガスを取り出せた。
【0088】
【表7】
【0089】
(比較例1)
反応槽1に水300mL、硫酸第1鉄7水塩1260g(和光純薬製試薬)、95%硫酸120mL(純正化学製試薬)で構成された硫酸第1鉄を含む溶液1130mLを収容した以外は全て実施例3と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出した。
【0090】
表8に比較例1の開始から終点までの反応時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液中の硝酸性窒素濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0091】
実施例3の反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の水の量を1/3に減らしてポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った結果、反応開始から180分で反応終点まで達し、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が全て第2鉄に酸化されてポリ硫酸第2鉄溶液が製造されたが、ポリ硫酸第2鉄溶液中に硝酸性窒素が1.1%残留した。また、反応槽4に収容した硝酸を含む溶液から揮発した気体が反応槽1内に残留し、製造されたポリ硫酸第2鉄溶液中に取り込まれ、化4に示す化学反応式量の40%の硝酸性窒素ガスしか取り出せなかった。
【0092】
【表8】
【0093】
(比較例2)
実施例1、実施例2、実施例3において、それぞれの反応が終点に達したと判断され確認された後も、エアーポンプ8を更に10分間作動させた以外は全て実施例1と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出し、ポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った。
【0094】
表9に比較例2でポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った時の反応槽1内の液中に残留した窒素濃度を示す。
実施例1、実施例2、実施例3と比較し、反応終了後も過剰に循環ポンプを作動させると、製造されたポリ硫酸第2鉄溶液中に硝酸性窒素がそれぞれ2倍以上残留した。
【0095】
【表9】
【0096】
(実施例8)
反応槽1に水340mLと硫酸第1鉄7水塩1260g(和光純薬製試薬)と95%硫酸100mL(純正化学製試薬)で構成された硫酸第1鉄を含む硫酸溶液1080mLを硫酸第1鉄を含む溶液として収容した。そして、弁17、18、19、20、21を閉じ、弁14、24を開け、撹拌機2を作動させて、配管25から60%硝酸125mLを少量ずつ添加導入した。硝酸を添加導入した段階で弁24を閉じ、弁14を開けたままの開放系とし、そのまま撹拌を継続させた。
【0097】
このときの反応槽1内の液量は1200mLであった。また、反応槽1内の液中の鉄(T−Fe)濃度が210g/lで、反応槽1内の鉄(T−Fe)と硝酸(T−NO
3)のモル比が1/2.76であった。反応槽1内の溶液から揮発した気体は、配管13、15を経由して取り出した。
【0098】
反応槽1の反応の進行監視や異常の有無を反応槽1に取り付けられた計装3で監視した。反応槽1のpHの変化、酸化還元電位の変化、温度の変化から、撹拌時間15分間で反応が終点に達していた。その後、撹拌機2を作動させたまま、弁20、21を開け、配管22から空気で30分間パージし、パージした気体を配管13、15を経由して取り出した。
【0099】
表10に実施例8の開始から終点までの反応時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、及び、反応槽1に添加導入した硝酸性窒素の濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0100】
反応開始から15分で反応終点まで達しており、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が全て第2鉄に酸化されてポリ硫酸第2鉄溶液が製造されたことが確認された。また、反応終点において、反応開始時において溶解していなかった硫酸第1鉄7水塩はすべて溶解していた。また、製造されたポリ硫酸第2鉄溶液中の硝酸性窒素も0.1%未満であった。また、反応槽1に添加導入した硝酸から化4に示す化学反応のほぼ式量通りの硝酸性窒素ガスを取り出せた。
【0101】
【表10】
【0102】
(実施例9)
反応槽1に水250mLと硫酸第1鉄7水塩1260g(和光純薬製試薬)と95%硫酸100mL(純正化学製試薬)で構成された硫酸第1鉄を含む硫酸溶液980mLを硫酸第1鉄を含む溶液として収容した以外は全て実施例8と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出した。
【0103】
このときの反応槽1内の液量は1100mLであった。また、反応槽1内の液中の鉄(T−Fe)濃度が230g/lで、反応槽1内の鉄(T−Fe)と硝酸(T−NO
3)のモル比が1/2.76であった。
【0104】
表11に実施例9の開始から終点までの反応時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、及び、反応槽1に添加導入した硝酸性窒素の濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0105】
実施例8の反応槽1内の液中の鉄(T−Fe)濃度を210g/lから230g/lに変更し、ポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った結果、反応開始から15分で反応終点まで達しており、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が全て第2鉄に酸化されてポリ硫酸第2鉄溶液が製造されたことが確認された。また、反応終点において、反応開始時において溶解していなかった硫酸第1鉄7水塩はすべて溶解していた。また、製造されたポリ硫酸第2鉄溶液中の硝酸性窒素も0.1%未満であった。また、反応槽1に添加導入した硝酸から化4に示す化学反応のほぼ式量通りの硝酸性窒素ガスを取り出せた。
【0106】
【表11】
【0107】
(比較例3)
反応槽1に水170mLと硫酸第1鉄7水塩1260g(和光純薬製試薬)と95%硫酸100mL(純正化学製試薬)で構成された硫酸第1鉄を含む硫酸溶液900mLを硫酸第1鉄を含む溶液として収容した以外は全て実施例8と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出した。
【0108】
このときの反応槽1内の液量は1020mLであった。また、反応槽1内の液中の鉄(T−Fe)濃度が250g/lで、反応槽1内の鉄(T−Fe)と硝酸(T−NO
3)のモル比が1/2.76であった。
【0109】
表12に比較例3の開始から終点までの反応時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、及び、反応槽1に添加導入した硝酸性窒素の濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0110】
実施例9の反応槽1内の液中の鉄(T−Fe)濃度を230g/lから250g/lに変更し、ポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った結果、反応開始から15分で反応終点まで達しており、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が全て第2鉄に酸化されてポリ硫酸第2鉄溶液が製造されたことが確認されたが、反応槽1内のポリ硫酸第2鉄溶液中に黄色の沈殿物が析出し、反応槽1内の鉄(T−Fe)濃度が230g/lより濃いと生成した第2鉄塩の一部が沈殿することが確認された。また、製造されたポリ硫酸第2鉄溶液中に硝酸性窒素が0.23%残留した。
【0111】
【表12】
【0112】
(比較例4)
反応槽1に水450mLと硫酸第1鉄7水塩1260g(和光純薬製試薬)と95%硫酸100mL(純正化学製試薬)で構成された硫酸第1鉄を含む硫酸溶液1170mLを硫酸第1鉄を含む溶液として収容した以外は全て実施例8と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出した。
【0113】
このときの反応槽1内の液量は1300mLであった。また、反応槽1内の液中の鉄(T−Fe)濃度が200g/lで、反応槽1内の鉄(T−Fe)と硝酸(T−NO
3)のモル比が1/2.76であった。
【0114】
表13に比較例4の開始から反応操作終了までの時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、及び、反応槽1に添加導入した硝酸性窒素の濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0115】
実施例8の反応槽1内の液中の鉄(T−Fe)濃度を210g/lから200g/lに変更し、ポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った結果、反応開始から15分で反応が略終了しており、その後撹拌を24時間継続しても、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が反応操作終了後も全て第2鉄に酸化されず、反応槽1内の液中に第1鉄(Fe(II))が7.5g/l残留し、反応槽1内の鉄(T−Fe)濃度が210g/lより薄いと第1鉄から第2鉄への酸化が不十分になることが確認された。
【0116】
【表13】
【0117】
(比較例5)
反応槽1に60%硝酸118mLを少量ずつ添加導入した以外は全て実施例8と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出した。
【0118】
このときの反応槽1内の液量は1190mLであった。また、反応槽1内の液中の鉄(T−Fe)濃度が210g/lで、反応槽1内の鉄(T−Fe)と硝酸(T−NO
3)のモル比が1/2.93であった。
【0119】
表14に比較例5の開始から反応操作終了までの時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、及び、反応槽1に添加導入した硝酸性窒素の濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0120】
実施例8の反応槽1内の鉄(T−Fe)と硝酸(T−NO
3)のモル比1/2.76から1/2.93に変更し、ポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った結果、反応開始から15分で反応が略終了しており、その後撹拌を24時間継続しても、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が反応操作終了後も全て第2鉄に酸化されず、反応槽1内の液中に第1鉄(Fe(II))が4.9g/l残留し、反応槽1内の鉄(T−Fe)と硝酸(T−NO
3)のモル比が1/2.9より小さくなると第1鉄から第2鉄への酸化が不十分になることが確認された。
【0121】
【表14】
【0122】
(比較例6)
反応槽1に60%硝酸130mLを少量ずつ添加導入した以外は全て実施例8と同様の操作を行い、配管13、15を経由して気体を取り出した。
【0123】
このときの反応槽1内の液量は1205mLであった。また、反応槽1内の液中の鉄(T−Fe)濃度が210g/lで、反応槽1内の鉄(T−Fe)と硝酸(T−NO
3)のモル比が1/2.65であった。
【0124】
表15に比較例6の開始から反応操作終了までの時間、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄塩と反応に伴って生成された第2鉄塩の濃度と量の変化、及び、反応槽1に添加導入した硝酸性窒素の濃度と量の変化、回収された硝酸性窒素の量と回収率を示す。
【0125】
実施例8の反応槽1内の鉄(T−Fe)と硝酸(T−NO
3)のモル比1/2.76から1/2.65に変更し、ポリ硫酸第2鉄溶液の製造を行った結果、反応開始から15分で反応終点まで達しており、反応槽1に収容した硫酸第1鉄を含む溶液中の第1鉄が全て第2鉄に酸化されてポリ硫酸第2鉄溶液が製造されたことが確認されたが、反応槽1内の鉄(T−Fe)と硝酸(T−NO
3)のモル比が1/2.7より大きくなると硝酸の添加導入量が増加し経済的ではないばかりか製造されたポリ硫酸第2鉄溶液中に硝酸性窒素も0.18%残留した。
【0126】
【表15】