特許第5747906号(P5747906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747906
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】複合型熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20150625BHJP
   F28F 9/26 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   F28F9/02 301G
   F28F9/26
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-274632(P2012-274632)
(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-119183(P2014-119183A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森 栄一
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−303977(JP,A)
【文献】 実開平06−030689(JP,U)
【文献】 韓国登録特許第0807749(KR,B1)
【文献】 特開2000−180089(JP,A)
【文献】 特開平01−123994(JP,A)
【文献】 実開平04−054935(JP,U)
【文献】 特開平02−082093(JP,A)
【文献】 特開2004−116911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F28F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱交換器(20)と、前記第1熱交換器(20)の第1タンク(23)内に収容される第2熱交換器(30)とを備え、前記第1タンク(23)内を流れる第1冷媒と前記第2熱交換器(30)内を流れる第2冷媒とが熱交換する複合型熱交換器(1)であって、
前記第1タンク(23)には、前記第2熱交換器(30)を内部に挿入する挿入口(23A1)が設けられ、
前記挿入口(23A1)より挿入された前記第2熱交換器(30)は、前記挿入口(23A1)の位置と、前記挿入口(23A1)とは異なる位置とで前記第1タンク(23)に固定され
前記第1タンク(23)には、前記挿入口(23A1)と対向する位置に形成された開口部(23A2)が設けられ、
前記第2熱交換器(30)は、第2チューブ(31)と、前記第2チューブ(31)の両端に設けられた一対の第2タンク(32,33)と、前記各第2タンク(32,33)にそれぞれ固定された一対の冷媒流入出部(37,38)とを有し、
一方の前記第2タンク(32)及び一方の前記冷媒流入出部(37)が設けられた一側が前記挿入口(23A1)の位置で固定され、他方の前記第2タンク(33)及び他方の前記冷媒流入出部(38)が設けられた他側が前記開口部(23A2)の位置で固定され、、
他方の前記冷媒流入出部(38)及び前記開口部(23A2)が円筒状の筒部によって形成され、他方の前記冷媒流入出部(38)が前記開口部(23A2)内を貫通し、
他方の前記冷媒流入出部(38)と前記開口部(23A2)との間が、リング状のシール部材(39)を円筒面固定用の態様で使用することでシールされており、
前記第2熱交換器(30)は、前記挿入口(23A1)を塞ぐシーリング部(35)をさらに有し、このシーリング部(35)は、一方の前記冷媒流入出部(37)、前記第2チューブ(31)、又は前記第2タンク(32)の何れかと固定され、前記シーリング部(35)と前記挿入口(23A1)との間が、Oリング(35)を平面固定用の態様で使用することでシールされていることを特徴とする複合型熱交換器(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の複合型熱交換器(1)であって、
一方の前記第2タンク(32)の一部は、前記第1タンク(23)の外部に露出することを特徴とする複合型熱交換器(1)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の複合型熱交換器(1)であって、
前記第2チューブ(31)は、押し出し成形によって形成されることを特徴とする複合型熱交換器(1)。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の複合型熱交換器(1)であって、
前記第1熱交換器(20)は、サブラジエータであり、
前記第2熱交換器(30)は、水冷コンデンサ又はオイルクーラであることを特徴とする複合型熱交換器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される複合型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に搭載された複合型熱交換器としては、エンジン用冷却水を冷却するメインラジエータと、水冷チャージエアクーラ用の水冷用冷却水を冷却するサブラジエータと、サブラジエータから流出される水冷用冷却水と空調用冷媒との間で熱交換を行う水冷コンデンサと、水冷コンデンサから流出される空調用冷媒を冷却する空冷コンデンサとを備えたものがある。
【0003】
この種の複合型熱交換器で使用される水冷コンデンサの一例について、図12を参照しながら説明する(例えば、特許文献1参照)。図12に示すように、水冷コンデンサ100は、サブラジエータ101から流出される水冷用冷却水を利用して空調用冷媒との間で熱交換を行うべく、サブラジエータ101の側部に設けられた流出側タンク103内に収容される。流出側タンク103の上面には、水冷コンデンサ100が挿入される円形状の挿入口105が形成されている。
【0004】
水冷コンデンサ100は、挿入口105の周縁に螺合されるネジ型キャップ110と、空調用冷媒が流入又は流出する一対の流入パイプ120A及び流出パイプ120Bと、空調用冷媒が通過するチューブ130と、チューブ130を等間隔で支持するバッフルプレート140と、チューブ130内を通過した空調用冷媒がUターンする小タンク150とによって大略構成されている。この水冷コンデンサ100は、ネジ型キャップ110により流出側タンク103の上面に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−180089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の水冷コンデンサ100では、ネジ型キャップ110により流出側タンク103の上面に固定されているものの、自動車からの振動(例えば、自動車の加速や減速による振動)によって、流出側タンク103内でネジ型キャップ110を支点に小タンク150側が揺動してしまう。このため、流出側タンク103の挿入口105や水冷コンデンサ100のネジ型キャップ110に大きな負荷が掛かってしまい、流出側タンク103や水冷コンデンサ100の故障などが生じるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、流出側タンク内での水冷コンデンサの揺動に起因する不具合を防止できる複合型熱交換器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、第1熱交換器と、前記第1熱交換器の第1タンク内に収容される第2熱交換器とを備え、前記第1タンク内を流れる第1冷媒と前記第2熱交換器内を流れる第2冷媒とが熱交換する複合型熱交換器であって、前記第1タンクには、前記第2熱交換器を内部に挿入する挿入口が設けられ、前記挿入口より挿入された前記第2熱交換器は、前記挿入口の位置と、前記挿入口と異なる位置との複数位置で前記第1タンクに固定されることを要旨とする。
【0009】
その他の特徴として、前記第1タンクには、前記挿入口と対向する位置に形成された開口部が設けられ、前記第2熱交換器は、第2チューブと、前記第2チューブの両端に設けられた一対の第2タンクと、前記各第2タンクにそれぞれ固定された一対の冷媒流入出部とを有し、一方の前記第2タンク及び一方の前記冷媒流入出部が設けられた一側が前記挿入口の位置で固定されるとともに、一方の前記冷媒流入出部が前記挿入口の外部に露出されており、他方の前記第2タンク及び他方の前記冷媒流入出部が設けられた他側が前記開口部の位置で固定されるとともに、他方の前記冷媒流入出部が前記開口部の外部に露出されるものであってもよい。
【0010】
その他の特徴として、他方の前記冷媒流入出部及び前記開口部が円筒状の筒部によって形成され、他方の前記冷媒流入出部が前記開口部内を貫通するものであってもよい。
【0011】
その他の特徴として、他方の前記冷媒流入出部が前記開口部内を貫通し、他方の前記冷媒流入出部の外周と前記開口部の内周との間にシール部材が介在されるものであってもよい。
【0012】
その他の特徴として、一方の前記第2タンクの一部は、前記第1タンクの外部に露出するものであってもよい。
【0013】
その他の特徴として、前記第2熱交換器は、前記挿入口塞ぐシーリング部をさらに有し、前記シーリング部は、一方の前記冷媒流入出部、前記第2チューブ、又は前記第2タンクの何れかと固定されるものであってもよい。
【0014】
前記第2熱交換器は、前記挿入口の周縁に当接して前記挿入口を閉塞する閉塞部をさらに有し、前記閉塞部は、前記第2チューブ、又は前記第2タンクと一体に形成されるものであってもよい。
【0015】
その他の特徴として、前記第2チューブは、押し出し成形によって形成されるものであってもよい。
【0016】
その他の特徴として、前記第1熱交換器は、サブラジエータであり、前記第2熱交換器は、水冷コンデンサ又はオイルクーラであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の特徴によれば、挿入口より挿入された第2熱交換器は、挿入口の位置と、挿入口と異なる位置との複数位置で第1タンクに固定される。これにより、自動車からの振動が生じても、第1タンク内で第2熱交換器が揺動することを防止できる。従って、第1タンク内での第2熱交換器の揺動に起因する不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1実施形態に係る複合型熱交換器を示す全体斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る複合型熱交換器を示す正面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る複合型熱交換器が適用される熱交換システムを示す構成図である。
図4図4は、第1実施形態に係るサブラジエータの流出側タンクの近傍を示す正面図である。
図5図5は、第1実施形態に係るサブラジエータの流出側タンク及び水冷コンデンサを示す分解斜視図である。
図6図6は、第1実施形態に係るサブラジエータの流出側タンク及び水冷コンデンサを示す拡大分解斜視図である。
図7図7は、第1実施形態に係るサブラジエータの流出側タンク及び空冷コンデンサの流入側タンクの近傍を示す断面図である。
図8図8は、第1実施形態に係るサブラジエータの流出側タンク及び空冷コンデンサの流入側タンクの近傍を示す斜視図である。
図9図9は、第1実施形態に係る水冷コンデンサを示す分解斜視図である。
図10図10は、第2実施形態に係るサブラジエータの流出側タンク及び空冷コンデンサを示す斜視図である。
図11図11(a)は、図10の一部断面図であり、図11(b)は、図11(a)の一部を拡大した断面図である。
図12図12は、背景技術に係る水冷コンデンサの近傍を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る複合型熱交換器の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0020】
[第1実施形態]
(複合型熱交換器の構成)
まず、第1実施形態に係る複合型熱交換器1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る複合型熱交換器1を示す全体斜視図である。図2は、第1実施形態に係る複合型熱交換器1を示す正面図である。図3は、第1実施形態に係る複合型熱交換器1が適用される熱交換システムを示す構成図である。図4図8は、第1実施形態に係るサブラジエータ20の流出側タンク23の近傍を示す図である。
【0021】
複合型熱交換器1は、メインラジエータ10(図3参照)と、第1熱交換器としてのサブラジエータ20と、サブラジエータ20の第1タンクとしての流出側タンク23内に収容される第2熱交換器としての水冷コンデンサ30と、サブラジエータ20の下側に設けられる空冷コンデンサ40とを備えている。そして、複合型熱交換器1では、流出側タンク23内を流れる第1冷媒としての水冷用冷却水と水冷コンデンサ30内を流れる第2冷媒としての空調用冷媒とが熱交換し、熱交換された空調用冷媒が空冷コンデンサ40の流入側タンク42に流入するようになっている。
【0022】
具体的には、メインラジエータ10は、エンジン2のエンジン用冷却水を冷却するものである。メインラジエータ10は、図3に示すように、モータファン4の冷却風の上流側に設けられている。メインラジエータ10は、その内部をエンジン用冷却水が流れる複数のチューブ(不図示)を有しており、このチューブの外側を流れる冷却風との間で熱交換している。エンジン用冷却水は、ポンプ5によって循環される(図3参照)。
【0023】
サブラジエータ20は、水冷チャージエアクーラ3(水冷CAC)用の水冷用冷却水を冷却するものである。サブラジエータ20は、図1図3に示すように、メインラジエータ10の冷却風の上流面側で、且つ、上半分領域に配置されている。サブラジエータ20は、水冷用冷却水が通過してその外側を流れる冷却風との間で熱交換する複数のサブラジチューブ21と、複数のサブラジチューブ21の両側端がそれぞれ連結される一対の第1タンクとしてのサブラジタンク(以下、流入側タンク22及び流出側タンク23)とを備えている。水冷用冷却水は、ポンプ6によって循環される(図3参照)。
【0024】
流入側タンク22には、水冷用冷却水が流入する流入部22inが形成されている。一方、流出側タンク23は、水冷用冷却水が流出する流出部23outが形成されている。この流出側タンク23には、図4図7に示すように、水冷コンデンサ30が収容される断面矩形状の収容室23Aが設けられている。
【0025】
収容室23Aの上側には、水冷コンデンサ30を内部に挿入する上側挿入口23A1が設けられている。図5図7に示すように、上側挿入口23A1の周縁には、水冷コンデンサ30の後述するOリング34が配置される段差部23Bが形成されている。また、上側挿入口23A1の周囲には、水冷コンデンサ30の後述するキャップ36が取り付けられる取付部23Tが設けられている。この取付部23Tには、水冷コンデンサ30の後述するキャップ36の回転をロック位置までガイドするガイド部23Cが設けられている。
【0026】
収容室23Aの下側には、上側挿入口23A1と対向する位置に形成された下側開口部23A2が設けられている。下側開口部23A2は、円筒状の筒部によって形成され、水冷コンデンサ30の後述する冷媒流出部38が挿入される。
【0027】
水冷コンデンサ30は、サブラジエータ20から流出される水冷用冷却水と空調用冷媒との間で熱交換を行うものである。水冷コンデンサ30は、図4図7に示すように、サブラジエータ20の流出側タンク23内に収容され、この水冷コンデンサ30及び空冷コンデンサ40は、水冷コンデンサ30を上流として冷凍サイクル内に直列に接続されている。水冷コンデンサ30の詳細については、後述する。
【0028】
空冷コンデンサ40は、水冷コンデンサ30から流出される空調用冷媒を冷却するものである。空冷コンデンサ40は、図1図3に示すように、メインラジエータ10の冷却風の上流面側で、且つ、サブラジエータ20の下側の下半分領域に配置されている。空冷コンデンサ40は、冷却風の流れと直交する方向に沿ってサブラジエータ20とほぼ同一面上に配置されている。空冷コンデンサ40は、空調用冷媒が通過してその外側を流れる冷却風との間で熱交換する空冷チューブ41と、空冷チューブ41の両側端がそれぞれ連結される空冷タンク(以下、流入側タンク42及び流出側タンク43)とを備えている。
【0029】
流入側タンク42には、空冷コンデンサ40で熱交換される前の空調用冷媒が流入する流入部42Aと、空冷コンデンサ40で熱交換された後の空調用冷媒が流出する流出部42Bとが形成されている。流入部42A及び流出部42Bは、流入側タンク42の長手方向に対して離間した位置に設けられている。流入部42Aには、流入側タンク42に連通する中継配管50が接続されている(図1図2及び図8参照)。中継配管50の一端は、水冷コンデンサ30の後述する冷媒流出部38と接続され、中継配管50の他端は、流入側タンク42にロウ付けされている。
【0030】
また、流出側タンク43の側部には、空冷コンデンサ40の上部領域を流れた空調用冷媒が滞留するリキッドタンク60が設けられている(図1及び図2)。つまり、リキッドタンク60は、空調用冷媒が流入する流入側タンク42と反対側に設けられた流出側タンク43に接続されている。このリキッドタンク60内の空調用冷媒は、空冷コンデンサ40の下部領域を通過して流出部42Bから流出する。
【0031】
(水冷コンデンサの構成)
次に、上述した水冷コンデンサ30の構成について、図面を参照しながら説明する。図9は、第1実施形態に係る水冷コンデンサ30を示す分解斜視図である。
【0032】
図5及び図9に示すように、上側挿入口23A1より挿入された水冷コンデンサ30は、上側挿入口23A1の位置と、上側挿入口23A1と異なる下側開口部23A2の位置との2カ所で流出側タンク23に固定されている。
【0033】
具体的には、水冷コンデンサ30は、複数の水冷チューブ31(第2チューブ)と、一対の水冷タンク32,33(第2タンク)と、Oリング34と、円盤状のシーリングプレート35(シーリング部材)と、キャップ36と、一対の冷媒流入出部(以下、冷媒流入部37及び冷媒流出部38)と、2つの軸シール39(シール部材)とを備えている。
【0034】
各水冷チューブ31は、内部を通過する空調用冷媒と、その外側の流出側タンク23を通過する水冷用冷却水との間で熱交換する。各水冷チューブ31は、一対の水冷タンク32,33の間に設けられている。各水冷チューブ31は、押し出し成形によって形成されている。
【0035】
各水冷タンク32,33には、各水冷チューブ31の両端がそれぞれ連結されている。各水冷タンク32,33は、各水冷チューブ31の両端が嵌合する嵌合孔32A1,33A1が形成された内側プレート32A,33Aと、各内側プレート32A,33Aに装着されて空調用冷媒が通過可能な冷媒通過部32B1,33B1が形成された外側プレート32B,33Bとによって構成されている。
【0036】
Oリング34は、流出側タンク23の上面に形成された段差部23B(図5図7参照)に配置される。このOリング34の上側には、シーリングプレート35が配置される。
【0037】
シーリングプレート35は、Oリング34の上側で且つ流出側タンク23の上側挿入口23A1の周縁に当接して上側挿入口23A1を塞ぐことで、流出側タンク23内を通過する水冷用冷却水の流出を防止している。シーリングプレート35には、冷媒流入部37と固定されて空調用冷媒が通過する冷媒通過孔35Aと、キャップ36側に向かって突出して円周方向に沿ったビード部35Bとが設けられている。このようなシーリングプレート35をOリング34に向かって押し付けるように、流出側タンク23の上面にキャップ36が装着される。
【0038】
キャップ36は、流出側タンク23の上部の外周面に形成されたガイド部23C(図5及び図6参照)に沿って回転してロック位置でロックされる爪部36Aを有している。キャップ36は、流出側タンク23に装着されることで、水冷コンデンサ30を流出側タンク23に固定している。
【0039】
冷媒流入部37及び冷媒流出部38は、水冷タンク32,33にそれぞれ固定されており、流出側タンク23の互いに対向する位置(上面及び下面)に設けられている。
【0040】
具体的には、冷媒流入部37は、水冷コンデンサ30へ空調用冷媒が流入する入口となっており、シーリングプレート35を挟んで上側の外側プレート32B(冷媒通過部32B1の周面)と固定される。そして、この冷媒流入部37及び上述した水冷タンク32が設けられた水冷コンデンサ30の一側(上側)は、上側挿入口23A1の位置で固定され、冷媒流入部37が上側挿入口23A1の外部に露出されている。
【0041】
一方、冷媒流出部38は、水冷コンデンサ30へ空調用冷媒が流出する出口となっており、下側の外側プレート33B(冷媒通過部33B1の周面)と固定される。冷媒流出部38は、円筒状の筒部によって形成されており、サブラジエータ20の流出側タンク23における円筒状の下側開口部23A2の内周に配置される。そして、この冷媒流出部38及び上述した水冷タンク33が設けられた水冷コンデンサ30の他側(下側)は、上側挿入口23A1と異なる下側開口部23A2の位置で固定され、冷媒流出部38が下側開口部23A2の外部に露出されている。この露出された冷媒流出部38は、中継配管50を介して流入側タンク42に接続されている。
【0042】
このような冷媒流出部38の外周には、軸シール39が挿入される軸シール溝38Aが形成されている。冷媒流出部38は、下側開口部23A2内に挿入されて支持される。
【0043】
軸シール39は、冷媒流出部38の軸シール溝38Aに挿入されることによって、冷媒流出部38が下側開口部23A2内を貫通した状態で下側開口部23A2の外周と下側開口部23A2の内周との間に介在されている。
【0044】
(冷媒の流れ)
次に、上述した複合型熱交換器1での各冷媒の流れについて、図3を参照しながら説明する。
【0045】
図3に示すように、エンジン2に供給する空気(吸気)は、排気を利用してターボ部7で圧縮されて高温になる。このため、この高温の圧縮された空気(吸気)は、水冷チャージエアクーラ3によって冷却されている。これにより、エンジン2に供給される空気(吸気)の密度が向上されて、エンジン2の燃焼効率が向上する。
【0046】
そして、水冷チャージエアクーラ3は、エンジン2に供給される空気(吸気)と冷却水の間で熱交換し、該エンジン2に供給される空気(吸気)を冷却している。水冷チャージエアクーラ3内の水冷用冷却水は、サブラジエータ20内を循環しており、流出側タンク23内で水冷コンデンサ30を通過する空調用冷媒との熱交換を行なった後、水冷チャージエアクーラ3に流入するようになっている。
【0047】
一方、冷凍サイクルの圧縮機(コンプレッサ)8によって高温高圧とされた空調用冷媒は、まず、水冷コンデンサ30に流入し、その後、空冷コンデンサ40へ流出する。そして、空冷コンデンサ40へ流入した空調用冷媒は、空冷コンデンサ40の上半領域及びリキッドタンク60を通過した後、空冷コンデンサ40の下半領域を通過して流出部42Bから流出するようになっている。
【0048】
(作用・効果)
以上説明した第1実施形態では、上側挿入口23A1より挿入された水冷コンデンサ30は、上側挿入口23A1の位置と、上側挿入口23A1と異なる下側開口部23A2の位置との2カ所で流出側タンク23に固定される。これにより、自動車からの振動が生じても、流出側タンク23内で水冷コンデンサ30が揺動することを防止できる。このため、水冷コンデンサ30の冷媒流入部37或いは冷媒流出部38や、流出側タンク23の上側挿入口23A1或いは下側開口部23A2に大きな負荷が掛かることない。従って、流出側タンク23内での水冷コンデンサ30の揺動に起因する不具合(例えば、流出側タンク103や水冷コンデンサ100の故障)を防止できる。
【0049】
第1実施形態では、水冷タンク32が設けられた水冷コンデンサ30及び冷媒流入部37の一側(上側)が上側挿入口23A1の位置で固定され、水冷タンク33が設けられた水冷コンデンサ30及び冷媒流出部38の他側(下側)が上側挿入口23A1と異なる下側開口部23A2の位置で固定される。つまり、水冷コンデンサ30が互いに対向する上側挿入口23A1及び下側開口部23A2の2カ所の位置で固定されているため、流出側タンク23内で水冷コンデンサ30が揺動することを確実に防止できる。
【0050】
第1実施形態では、冷媒流出部38及び下側開口部23A2は、円筒状の筒部によって形成される。これにより、冷媒流出部38及び下側開口部23A2が四柱状に設けられる場合と比較して、冷媒流出部38の向きに関わらず、下側開口部23A2に冷媒流出部38を容易に挿入できる。
【0051】
第1実施形態では、冷媒流出部38が下側開口部23A2内を貫通した状態で下側開口部23A2の外周と下側開口部23A2の内周との間に軸シール39が介在される。これにより、流出側タンク23内を通過する水冷用冷却水の流出を防止できる。その上、水冷コンデンサ30が熱膨張によって伸縮しても、冷媒流出部38の圧縮力に抗して移動可能であるため、水冷コンデンサ30の伸縮に対応できる。
【0052】
第1実施形態では、水冷チューブ31は、押し出し成形によって形成されている。これにより、水冷チューブ31内を通過する空調用冷媒の流出を防止することは勿論、水冷チューブ31を容易に製造できる。
【0053】
第1実施形態では、第2熱交換器が水冷コンデンサ30であることで、空冷コンデンサ40に流入する前の空調用冷媒を予備冷却でき、空冷コンデンサ40のコンパクト化に寄与する。
【0054】
第1実施形態では、キャップ36は、流出側タンク23の上側の外周面に形成されたガイド部23Cにガイドされながら回転することで、流出側タンク23内で水冷コンデンサ30を固定できる。このため、キャップ36を脱着するだけでサブラジエータ20の流出側タンク23から水冷コンデンサ30のみの取付や取外が可能であるため、水冷コンデンサ30のメンテナンスが容易となる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る水冷コンデンサ30について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した第1実施形態に係る複合型熱交換器1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0056】
(水冷コンデンサの構成)
まず、第2実施形態に係る水冷コンデンサ30の構成について、図面を参照しながら説明する。図10は、第2実施形態に係るサブラジエータ20の流出側タンク23及び水冷コンデンサ30を示す斜視図である。図11(a)は、図10の一部断面図であり、図11(b)は、図11(a)の一部を拡大した断面図である。
【0057】
第2実施形態では、水冷コンデンサ30の構成が上述した第1実施形態で説明した構成と若干異なっている。図10及び図11に示すように、水冷コンデンサ30の一方の水冷タンク32の一部は、サブラジエータ20の流出側タンク23の外側に露出している。
【0058】
具体的には、水冷コンデンサ30は、上述した実施形態と同様に、複数の水冷チューブ31と、一対の水冷タンク32,33と、Oリング34と、冷媒流入部37と、冷媒流出部38とを備えている。
【0059】
上側の水冷タンク32は、内側プレート32Aと、内側プレート32Aに装着される外側プレート32Bとによって構成されている。内側プレート32Aには、流出側タンク23の収容室23Aから外側に張り出すフランジ部70が設けられている。フランジ部70は、上述した実施形態で説明したシーリングプレート35とほぼ同様の構成である。
【0060】
このフランジ部70と流出側タンク23の上面に形成された段差部23Bとの間に、Oリング34が配置される。そして、フランジ部70は、互いに合体する一対の挟持分割体80によって流出側タンク23の取付部23T上に固定される。
【0061】
各挟持分割体80は、断面コ字状に形成されている。一対の挟持分割体80は、取付部23Tと取付部23T上に配置されたフランジ部70とを全周に渡って挟み込むことによって、水冷コンデンサ30が流出側タンク23に固定される。各挟持分割体80は、流出側タンク23にフランジ部70を固定した状態で、それぞれの嵌合固定部81,82によって互いに固定される。
【0062】
ここで、下側の水冷タンク33については、上側の水冷タンク32のフランジ部70が設けられていないこと以外は上述した第1実施形態とほぼ同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0063】
(作用・効果)
以上説明した第2実施形態では、水冷コンデンサ30の水冷タンク32の一部は、サブラジエータ20の流出側タンク23の外側に露出している。これにより、流出側タンク23内の水冷コンデンサ30の容積を小さくでき、流出側タンク23の小型化に寄与する。
【0064】
第2実施形態では、フランジ部70は、内側プレート32Aに設けられる。これにより、フランジ部70を別部材として別途設ける必要がなく、水冷コンデンサ30の軽量化及びコスト安を実現できる。
【0065】
ここで、第2実施形態では、フランジ部70は、内側プレート32Aに設けられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、水冷チューブ31と一体に形成されていてもよく、外側プレート32Bや冷媒流入部37と一体に形成されていてもよい。
【0066】
(その他の実施形態)
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0067】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、サブラジエータ20及び空冷コンデンサ40は、冷却風の流れと直交する方向に沿ってほぼ同一面上に配置されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、多少ずれた位置に配置されていてもよい。
【0068】
また、サブラジエータ20が空冷コンデンサ40の上側に配置されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、空冷コンデンサ40がサブラジエータ20の上側に配置されるものであってもよい。
【0069】
また、サブラジエータ20は、水冷チャージエアクーラ3用の水冷用冷却水を冷却するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、車両に搭載された各種電子機器に用いられる冷媒(例えば、インバーター等に用いられる冷却水)を冷却するものであってもよい。
【0070】
また、第2熱交換器としては、水冷コンデンサ30であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、オイルクーラなどであってもよい。
【0071】
また、水冷コンデンサ30は、サブラジエータ20の流出側タンク23内に収容されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、サブラジエータ20の流入側タンク22内に収容されるものであってもよい。すなわち、水冷コンデンサ30は、サブラジエータ20の流入側タンク22に流入される水冷用冷却水と空調用冷媒との間で熱交換を行うものであってもよい。
【0072】
また、水冷コンデンサ30は、サブラジエータ20の流出側タンク23における上側挿入口23A1から挿入されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、設計の変更等により流出側タンク23の下側から挿入されるものであってもよい。
【0073】
また、水冷コンデンサ30の冷媒流出部38は、中継配管50を介して空冷コンデンサ40の流入側タンク42に接続されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、流入側タンク42に直接連結されるものであってもよい。
【0074】
また、水冷コンデンサ30は、上側挿入口23A1の位置と下側開口部23A2の位置との2カ所で流出側タンク23に固定されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、上側挿入口23A1の位置と上側挿入口23A1と異なる位置との複数位置(2カ所以上)で固定されていてもよい。
【0075】
さらに、水冷チューブ31は、押し出し成形によって形成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、押し出し成形以外の方法によって形成されていてもよく、例えば、インナーフィンチューブや、冷媒通路を有するチューブ、管体などであってもよい。
【0076】
このように、本発明は、第1実施形態や第2実施形態の一部の構成を組み合わせてもよく、その上、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0077】
1…複合型熱交換器
10…メインラジエータ
20…サブラジエータ(第1熱交換器)
22…流入側タンク(第1タンク)
23A1…上側挿入口
23A2…下側開口部
30…水冷コンデンサ(第2熱交換器)
31…水冷チューブ(第2チューブ)
32,33…水冷タンク(第2タンク)
35…シーリングプレート
37…冷媒流入部(一方の冷媒流入出部)
38…冷媒流出部(他方の冷媒流入出部)
39…軸シール(シール部材)
40…空冷コンデンサ
70…フランジ部(閉塞部)
図1
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