特許第5747911号(P5747911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5747911-ポリアセタール樹脂組成物 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747911
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 59/00 20060101AFI20150625BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20150625BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20150625BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20150625BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20150625BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20150625BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20150625BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   C08L59/00
   C08L77/00
   C08K5/13
   C08K5/3492
   C08K5/3435
   C08L71/02
   C08K9/04
   C08K3/22
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-504538(P2012-504538)
(86)(22)【出願日】2011年3月11日
(86)【国際出願番号】JP2011055785
(87)【国際公開番号】WO2011111823
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2013年10月10日
(31)【優先権主張番号】特願2010-55414(P2010-55414)
(32)【優先日】2010年3月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】小林 大介
(72)【発明者】
【氏名】伊東 顕
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−323078(JP,A)
【文献】 特開平11−181305(JP,A)
【文献】 特開昭52−059643(JP,A)
【文献】 特開平08−325430(JP,A)
【文献】 特開2001−354832(JP,A)
【文献】 特開平10−204298(JP,A)
【文献】 特開2005−200300(JP,A)
【文献】 特表2009−532315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 59/00
C08K 3/00
C08K 5/00
C08K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、(B)立体障害性フェノール0.01〜10.0重量部、(C)BET比表面積が20m2/g以下で、且つ平均粒子径が2μm以下である水酸化マグネシウム0.001〜5重量部を配合してなることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
(C)水酸化マグネシムが、脂肪酸、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤から選ばれた少なくとも1種で表面処理された請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
更に、(D)窒素含有化合物0.01〜5.0重量部及び/又は(E)ポリエチレングリコール0.01〜5重量部を配合してなることを特徴とする請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
(D)窒素含有化合物が、アミノ置換トリアジン化合物、ポリアミド樹脂、及びヒンダードアミン系光安定剤から選ばれた少なくとも1種である請求項3記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
(E)ポリエチレングリコールの数平均分子量が10,000〜30,000である請求項3記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
アミノ置換トリアジン化合物が、メラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン及び水溶性メラミンーホルムアルデヒド樹脂から選ばれた少なくとも1種である請求項4に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
ポリアミド樹脂が、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂及び/又はポリアミドエラストマーである請求項4に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
ヒンダードアミン系光安定剤が、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート及びビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートから選ばれた少なくとも1種である請求項4に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物からなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性と耐熱性に優れたポリアセタール樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性などのバランスに優れ、構造材料や機構部品などとして電気機器、自動車部品、精密機械部品などに広く使用されている。しかしながら、耐衝撃性などの機械的特性や耐熱性が充分でない場合があり、用途によっては更に一層の改善を要する場合が多い。
【0003】
従来、耐熱性の向上のために、ポリオキシメチレン樹脂組成物に水酸化マグネシウムを配合してなるポリオキシメチレン樹脂組成物が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】

【特許文献1】特開平11−323078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物は、耐衝撃性及び耐熱性の点で未だ改良の余地があった。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、耐衝撃性と耐熱性に優れたポリアセタール樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような課題を解決するために水酸化マグネシウムの平均粒径及びBET比表面積に着目して鋭意検討を重ねた結果、ポリアセタール樹脂に対して、立体障害性フェノールを特定の割合で配合すると共に、特定の平均粒径及びBET比表面積を有する水酸化マグネシウムを特定の割合で配合してなるポリアセタール樹脂組成物が、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち本発明は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、(B)立体障害性フェノール0.01〜10.0重量部、(C)BET比表面積が20m2/g以下で、且つ平均粒子径が2μm以下である水酸化マグネシウム0.001〜5重量部を配合してなることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物である。
【0009】
本発明によれば、(C)BET比表面積が20m2/g以下で、且つ平均粒子径が2μm以下である水酸化マグネシウムを使用すると耐衝撃性と耐熱性に優れたポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、耐衝撃性と耐熱性が大きく改良されたものである。本発明のポリアセタール樹脂組成物は、このような優れた性能を有することから、自動車内装部品、家屋などの内装部品(熱水混合栓など)、衣料部品(ファスナー、ベルトバックルなど)や建材用途(配管・ポンプ部品など)、電気部品(歯車など)、燃料部品などに好適に使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の成形体の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における(A)ポリアセタール樹脂は、アセタール構造−(−O−CRH−)−(但しRは水素原子、有機基を示す。)を繰り返し構造に有する高分子であり、通常はRが水素原子であるオキシメチレン基(−CHO−)を主たる構成単位とするものである。本発明に用いるポリアセタール樹脂は、この繰り返し構造のみからなるアセタールホモポリマー以外に、前記オキシメチレン基以外の繰り返し構成単位を1種以上含むコポリマー(ブロックコポリマー)やターポリマー等も含み、更には線状構造のみならず分岐、架橋構造を有していてもよい。前記オキシメチレン基以外の構成単位としては例えば、オキシエチレン基(−CHCHO−)、オキシプロピレン基(−CHCHCHO−)、オキシブチレン基(−CHCHCHCHO−)等の炭素数2以上10以下の、分岐していてもよいオキシアルキレン基が挙げられる。中でも炭素数2以上4以下の、分岐していてもよいオキシアルキレン基が好ましく、特にオキシエチレン基が好ましい。またこの様な、オキシメチレン基以外のオキシアルキレン構造単位の含有量としては、ポリアセタール樹脂中において0.1重量%以上20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上15重量%以下である。
【0013】
本発明におけるポリアセタール樹脂の製造方法は任意であり、ポリアセタール樹脂は、従来公知の任意の方法によって製造すればよい。例えば、オキシメチレン基と、炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を構成単位とするポリアセタール樹脂の製造方法としては、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のオキシメチレン基の環状アセタールと、エチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキソカン、1,3−ジオキセパン等の炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を含む環状アセタールとを共重合することによって製造することができる。中でも本発明に用いるポリアセタール樹脂としては、トリオキサンやテトラオキサン等の環状アセタールと、エチレンオキサイドまたは1,3−ジオキソランとの共重合体であることが好ましく、中でもトリオキサンと1,3−ジオキソランとの共重合体であることが好ましい。
【0014】
本発明における(B)立体障害性フェノールとしては、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート及び1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。(B)立体障害性フェノールの配合量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜10.0重量部であり、好ましくは0.01〜2.0重量部、特に好ましくは0.02〜1.0重量部である。(B)立体障害性フェノールの配合量がポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01重量部未満であると、十分な安定化効果が得られない。(B)立体障害性フェノールの配合量がポリアセタール樹脂100重量部に対して10.0重量部を超えると、成形時のガス発生、成形品の外観不良を招き好ましくない。
【0015】
本発明における(C)水酸化マグネシムは、BET比表面積が20m2/g以下で、且つ平均粒子径が2μm以下であり、好ましくはBET比表面積が10m2/g以下で、且つ平均粒子径が1.5μm以下である。水酸化マグネシウムのBET比表面積が20m/gを超え、且つ水酸化マグネシウムの平均粒子径が2μmを超えると、耐熱性と耐衝撃性の低下が大きくなる。本発明における水酸化マグネシウムは未処理のものでも使用できるが、脂肪酸、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面処理された水酸化マグネシウムを使用する方が好ましい。
【0016】
脂肪酸は、RCOOH、脂肪酸金属塩はM(OOCR)nで表されるものである。尚、Rはアルキル基又はアルケン基であり、MはIA、IIB又はIIIA属金属であり、nは自然数である。IA族金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどが挙げられる。IIB族金属としては、亜鉛及びカドミウムなどが挙げられる。IIIA族金属としては、スカンジウム及びイットリウムなどが挙げられる。
【0017】
脂肪酸としては、具体的にはステアリン酸、エルカ酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸等の炭素数10以上の高級脂肪酸類などが挙げられる。
【0018】
脂肪酸金属塩としては、具体的には前記高級脂肪酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0019】
シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β―メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0020】
チタネートカップリング剤としては、イソプロピル−トリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、チタニウムジ(オクチルホスフェート)オクシアセテート等が挙げられる。
【0021】
(C)水酸化マグネシムの配合量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.001〜5.0重量部であり、好ましくは0.005〜3.0重量部であり、特に好ましくは0.01〜2.0重量部である。(C)水酸化マグネシウムの配合量が0.001重量部よりも少ないと耐熱性が低下し、5.0重量部より多いと耐衝撃性と耐熱性が低下する。
【0022】
本発明における(D)窒素含有化合物としては、アミノ置換トリアジン化合物、ポリアミド樹脂、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。(D)窒素含有化合物の配合量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して好ましくは0.01〜5.0重量部、より好ましくは0.01〜3.0重量部、特に好ましくは0.02〜2.0重量部である。(D)窒素含有化合物の配合量が、ポリアセタール樹脂100重量部に対して上記範囲内にあると、(D)窒素含有化合物の配合量が上記範囲を外れる場合に比べて、安定剤としての効果が大きいという利点がある。
【0023】
アミノ置換トリアジン化合物としては、グアナミン、メラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N”−トリフェニルメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン、水溶性メラミンーホルムアルデヒド樹脂、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、アメリン(N,N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン)などが挙げられる。中でも、メラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミンおよび水溶性メラミンーホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0024】
ポリアミド樹脂としては、ナイロン−6,ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、及びこれらの三元共重合体(6・6/6・10/6)、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂およびポリアミドエラストマーが挙げられる。中でも、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂およびポリアミドエラストマーが好ましい。なお、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂とは、重合脂肪酸及びジアミンから合成されるポリアミド樹脂を言う。また重合脂肪酸とは、オレイン酸、リノール酸等のような不飽和脂肪酸等の二量体等を言う。
【0025】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、N,N’,N”,N’”−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ)ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートおよびビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが挙げられる。中でも、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートおよびビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートが好ましい。
【0026】
本発明における(E)ポリエチレングリコールは、エチレンオキサイドを開環重合させて得られるものであり、末端にヒドロキシル基を有する数平均分子量が10,000以上のものであれば良く、好ましくは10,000〜30,000の範囲のものが使用される。本発明におけるポリエチレングリコールは線状でも分岐状のものでもよい。本発明における(E)ポリエチレングリコールの添加量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜5.0重量部であり、より好ましくは0.01〜3重量部、特に好ましくは0.02〜2.0重量部である。
【0027】
また、本発明を実施するとき、本発明のポリアセタール樹脂組成物は、本来の目的を損なわない範囲内で、各種の酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、核剤、充填剤、顔料、界面活性剤、帯電防止剤などを含んでもよい。
【0028】
本発明の成形体は、本発明のポリアセタール樹脂組成物を公知のポリアセタール樹脂の成形加工法に従って、成形加工することにより得ることができる。本発明のポリアセタール樹脂組成物からなる成形体1としては、例えば図1に示すようにシートが挙げられるが、シートに限られるものではなく、ペレット、丸棒、厚板等の素材、チューブ、各種容器、機械、電気、自動車、建材その他の各種部品等のポリアセタール樹脂の用途として知られる種々の製品であってもよい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例および比較例で得られた樹脂組成物は、以下の評価方法で評価した。
【0031】
<落錘衝撃試験>
実施例または比較例で得られた樹脂組成物を、東芝機械社製IS90Bを用いて、φ100mm×厚さ4mmの円板を成形し、CEAST社製フラクトビス試験機を用いて、100Jの衝撃エネルギーを加えた際の破壊エネルギーを測定した。耐衝撃性が高いほど、破壊エネルギーが高くなる。
【0032】
<熱重量減少率>
実施例または比較例で得られた樹脂組成物を、試験管に入れ、窒素置換後10Torr減圧下で240℃、1時間加熱した場合の重量減少率を示す。熱安定性、すなわち耐熱性が高いほど、この熱重量減少率は小さくなる。
なお、下記合格基準を満たす樹脂組成物については合格とし、それ以外については不合格とした。
耐衝撃性の合格基準:破壊エネルギーが10J以上
耐熱性の合格基準:熱重量減少率が2.5wt%以下
【0033】
また、本発明における水酸化マグネシウムの平均粒子径は、水酸化マグネシウムをエタノールに懸濁させ、超音波で3分間処理した後に、レーザー回折法により測定した。また、BET比表面積はN2吸着法により測定した。
【0034】
〈実施例1〜16及び比較例1〜5〉
(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対して(B)立体障害性フェノールが表1及び表2に示す割合で配合されたユピタールA20−03(商品名)を用意した。そして、100重量部のユピタールA20−03に対し、(C)水酸化マグネシウム、(D)窒素含有化合物及び(E)ポリエチレングリコールを表1及び表2に示す割合で配合し、ポリアセタール樹脂組成物を得た。そして、ポリアセタール樹脂組成物を二軸押出機にて、210〜230℃の温度範囲で加熱溶融しながら21.3kPaの減圧下で脱揮した後ペレットを調製した。そして得られたペレットについて、前記評価法にて物性評価を行なった。
【0035】
尚、表1及び表2中の記号は、下記の通りである。
B−1:IRGANOX245(チバ・ジャパン製)
C−1:水酸化マグネシウム(平均粒子径1.1μm、BET比表面積5.2m2/g)
C−2:水酸化マグネシウム(平均粒子径1.3μm、BET比表面積4.4m2/g)
C−3:水酸化マグネシウム(平均粒子径0.9μm、BET比表面積5.1m2/g)
C−4:水酸化マグネシウム(平均粒子径1.0μm、BET比表面積5.2m2/g)
C−5:水酸化マグネシウム(平均粒子径5μm、BET比表面積51m2/g)
C−6:水酸化マグネシウム(平均粒子径3.5μm、BET比表面積35m2/g)
D−1:メラミン(三井化学製)
D−2:重合脂肪酸系ポリアミド樹脂PA−100(富士化成工業)
D−3:アミノ基末端重合脂肪酸系ポリアミド樹脂TXM−78C(富士化成工業)
D−4:ポリアミド12エラストマー9040X1(宇部興産製)
D−5:TINUVIN770 (チバ・ジャパン製)
E−1:PEG−20000P(三洋化成工業製)
【表1】
【表2】
図1