特許第5747950号(P5747950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747950
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/73 20110101AFI20150625BHJP
   H01R 12/79 20110101ALI20150625BHJP
【FI】
   H01R12/73
   H01R12/79
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-129672(P2013-129672)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-5395(P2015-5395A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2014年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】浅井 清
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−033439(JP,A)
【文献】 特開2005−190818(JP,A)
【文献】 特開2008−097851(JP,A)
【文献】 特開2011−113823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/73
H01R 12/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグとレセプタクルとを備える、コネクタであって、
前記プラグは、
幅方向と奥行き方向と厚さ方向を有する板形状のハウジングと、
前記ハウジングの前記奥行き方向の各側面に、前記幅方向に平行に配置されたコンタクトと、
前記ハウジングの前記奥行き方向の中央に、前記幅方向に配置された細板形状の補強板と、
前記ハウジングの前記幅方向の両側面から突出した位置に設けられた係止部とを備え
前記レセプタクルは、
幅方向と奥行き方向と厚さ方向を有する板形状のハウジングと、
前記ハウジングの前記奥行き方向の各側面に、前記幅方向に平行に配置されたコンタクトであって、前記プラグの前記コンタクトの個数および位置に対応する個数および位置を有するコンタクトと、
前記ハウジングの前記幅方向の各側面から突出した位置に設けられたホールドダウン部であって、各々が、前記プラグの前記係止部が前記奥行き方向に沿って挿入可能な挿入開口部および内部空間を有するとともに、前記係止部を所定の位置に保持する保持部とを備え、前記挿入開口部と前記内部空間とが、前記ハウジングの奥行き方向に連通するホールドダウン部とを備える、
コネクタ。
【請求項2】
前記補強板が導電性である請求項に記載のコネクタ
【請求項3】
前記レセプタクルの前記ハウジングは、前記幅方向の各端部に案内部を有し、前記案内部が、各ホールドダウン部の前記内部空間の一部を画定する、請求項に記載のコネクタ
【請求項4】
前記レセプタクルの前記ハウジングに、前記プラグおよび前記レセプタクルの嵌合開始時のための基準面が形成されていて、前記基準面および前記案内部によって、前記挿入開口部が形成されている、請求項に記載のコネクタ
【請求項5】
前記レセプタクルの前記ホールドダウン部に係合突起部が形成されており、前記プラグの前記係止部に前記係合突起部が嵌る凹部が形成されており、前記レセプタクルまたは前記係止部が弾性を有していて、前記プラグと前記レセプタクルを相対的に各ハウジングの前記奥行き方向に沿って移動させた際に、前記係合突起部が前記凹部と嵌合でき、また、該嵌合が解除できる、請求項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記プラグの前記係止部および前記レセプタクルの前記ハウジングにそれぞれ基準面が形成されていて、前記プラグおよび前記レセプタクルの嵌合の開始時に、それらの基準面を平行に近づけて配置することにより、前記プラグおよび前記レセプタクルの嵌合のための位置合わせが達成される、請求項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板と基板とを電気的に接続するために、2つの基板上にそれぞれプラグおよびソケットを設け、基板同士を近づけながらプラグをソケットに挿入することによって、2つの基板上のプリント配線同士を電気的に接続するためのコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、基板に固定されているコネクタに板状ケーブルが装着されるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2のコネクタは、上面部、第1側部および第2側部を有し、中空に形成されたハウジングを備え、ハウジングは板状ケーブルの通過を許容する上面開口部と、第2側部側に動こうとする板状ケーブルの補強板の翼部の端面に干渉する第1抜止部と、上面部側に動こうとする補強板に干渉する第2抜止部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−41771号公報
【特許文献2】特開2012−252864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては低背化が望まれている。特許文献2においては、多数の配線同士の接続に対応することができず、板状ケーブルを基板のコネクタに装着する際のそれらの位置合わせの精度を高めることができず、さらに、補強板を有する板状ケーブルのコストの削減を図ることができないという課題を有している。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、基板対基板、基板対FPC等に用いることができ、低背化を図ることができ、多数の配線同士の接続に対応し、一方を他方に電気的に接続する際の位置合わせの精度を高めることができ、コストの削減を図ることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコネクタに用いられるプラグは、幅方向と奥行き方向と厚さ方向を有する板形状のハウジングと、前記ハウジングの前記奥行き方向の各側面に、前記幅方向に等間隔で平行に配置されたコンタクトと、前記ハウジングの前記奥行き方向の中央に、前記幅方向に配置された導電性の細板形状の補強板と、前記ハウジングの前記幅方向の両側面から突出した位置に設けられた係止部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るコネクタに用いられるレセプタクルは、幅方向と奥行き方向と厚さ方向を有する板形状のハウジングと、前記ハウジングの前記奥行き方向の各側面に、前記幅方向に等間隔で平行に配置されたコンタクトであって、上記のプラグの前記コンタクトの個数および位置に対応する個数および位置を有するコンタクトと、前記ハウジングの前記幅方向の各側面から突出した位置に設けられたホールドダウン部であって、各々が、上記の前記プラグの前記係止部が前記奥行き方向に沿って挿入可能な挿入開口部および内部空間を有するとともに、前記係止部を所定の位置に保持する保持部とを備え、前記挿入開口部と前記内部空間とが、前記ハウジングの奥行き方向に連通する、ホールドダウン部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るコネクタは、上記のプラグと上記のレセプタクルとを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の構成により、低背化を図ることができ、多数の配線同士の接続に対応し、一方を他方に電気的に接続する際の位置合わせの精度を高めることができ、コストの削減を図ることができる。
【0011】
上記のプラグにおいて、前記補強板は導電性であってもよい。
【0012】
上記のレセプタクルにおいて、前記レセプタクルの前記ハウジングは、前記幅方向の各端部に案内部を有し、前記案内部が、各ホールドダウン部の前記内部空間の一部を画定するようにしてもよい。
【0013】
上記のレセプタクルにおいて、前記レセプタクルの前記ハウジングに、前記プラグおよび前記レセプタクルの嵌合開始時のための基準面が形成されていて、前記基準面および前記案内部によって、前記挿入開口部が形成されているようにしてもよい。
【0014】
上記のコネクタにおいては、前記レセプタクルの前記ホールドダウン部に係合突起部が形成されており、前記プラグの前記係止部に前記係合突起部が嵌る凹部が形成されており、前記レセプタクルまたは前記係止部が弾性を有していて、前記プラグと前記レセプタクルを相対的に各ハウジングの前記奥行き方向に沿って移動させた際に、前記係合突起部が前記凹部と嵌合でき、また、該嵌合が解除できるようにしてもよい。
【0015】
また、上記のコネクタにおいては、前記プラグの前記係止部および前記レセプタクルの前記ハウジングにそれぞれ基準面が形成されていて、前記プラグおよび前記レセプタクルの嵌合の開始時に、それらの基準面を平行に近づけて配置することにより、前記プラグおよび前記レセプタクルの嵌合のための位置合わせが達成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板対基板、基板対FPC等に用いることができ、低背化を図ることができ、多数の配線同士の接続に対応し、一方を他方に電気的に接続する際の位置合わせの精度を高めることができ、コストの削減を図ることができるコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るプラグとレセプタクルとを嵌合したコネクタを示す斜視図であり、(a)は、プラグ組立体側から見た斜視図、(b)は、レセプタクル側から見た斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るプラグをFPCに固定したプラグ組立体を示す斜視図である。
図3図2のA−A線から矢印方向に見た断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るプラグに設けられている補強板の一例を示す斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係るレセプタクルの斜視図であり、(a)は、本発明の実施の形態に係るプラグ組立体が取り付けられる側から見た、本発明の実施の形態に係るレセプタクルの斜視図、(b)は、(a)とは異なる方向から見た、本発明の実施の形態に係るレセプタクルの斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係るプラグ組立体が取り付けられている側から見た、図5(a)のレセプタクルの分解斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係るプラグおよびレセプタクルを嵌合する際の手順を説明するための一部拡大斜視図で、本発明の実施の形態に係るプラグおよびレセプタクルの位置合わせを行っている状態を示す一部拡大斜視図である。
図8】本発明の実施の形態に係るプラグおよびレセプタクルを嵌合する際の手順を説明するための一部拡大斜視図で、本発明の実施の形態に係るプラグをレセプタクルに押し付けた状態を示す一部拡大斜視図である。
図9】本発明の実施の形態に係るプラグおよびレセプタクルを嵌合する際の手順を説明するための一部拡大斜視図で、本発明の実施の形態に係るプラグをレセプタクル上でスライドさせて嵌合を完了させた状態を示す一部拡大斜視図である。
図10】本発明の実施の形態に係るプラグおよびレセプタクルの嵌合の状態を確認する手順を説明するための一部拡大斜視図で、(a)は、不完全な嵌合状態を示す一部拡大斜視図、(b)は、正常な嵌合状態を示す一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係るコネクタについて、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るプラグ10とレセプタクル20とが嵌合されたコネクタ1を示す斜視図である。
【0020】
プラグ10のコンタクト11cが、FPC(flexible printed circuits:フレキシブルプリント配線板)100の図示していないコンタクトにはんだ付けされていて、プラグ組立体が構成されている。
【0021】
FPC100は、例えば、絶縁性のある薄くて柔軟なポリイミド等のベースフィルムと銅箔等の導電性金属を貼り合わせた基材に回路を形成した基板である。後述のとおり、プラグ10に補強板13を設けるため、FPC100に、補強板を設けるか否かは任意である。
【0022】
プラグ10とレセプタクル20との嵌合は、後述のとおり、レセプタクル20のホールドダウン部24,25の内部の空間に、プラグ10の補強板13の両端部に設けられている係止部12が挿入され、係止部12の凹部14にホールドダウン部24,25の係合突起部245が係合することによって行われている。凹部14および係合突起部245によって保持部が構成される。
【0023】
図2および図3は、プラグ10とレセプタクル20との嵌合が解除されたときのプラグ組立体を示す。
【0024】
プラグ10は、ハウジング11と、ハウジング11に埋設された複数のコンタクト11cと、補強板13とを備える。
【0025】
ハウジング11は、合成樹脂からなり、FPC100の長手方向に奥行き方向を有し、FPC100の幅方向に幅方向を有し、FPC100の厚さ方向と同じ方向に厚さ方向を有する板形状にモールド成形されている。
【0026】
複数のコンタクト11cは、ハウジング11の奥行き方向の各側面に、幅方向に沿って、それぞれ等間隔で平行に配置されている。各コンタクト11cは、ハウジングから図2において見える側に露出している接点部と、FPC100側に露出して、FPC100の導電性金属にはんだ付けされている接点部とを有する。図2において見える側に露出する接点部は、レセプタクル20のコンタクト22,23の対応する接点部と接触する。
【0027】
ハウジング11の奥行方向の中央、つまり、両側面に設けられているコンタクト22,23のコンタクト列の間には、幅方向に沿って、補強板13が埋め込まれている。補強板13は、例えば、ステンレス鋼の板材から細板形状に形成されている。
【0028】
図4に示すように、補強板13は、強度を高めるため、幅方向に沿って表側に突出する凸部を有するように形成されており、その裏面側には、その凸部に沿った空間からなる凹部14が形成されている。
【0029】
ただし、補強板13の形状はそのような凸部を有するものに限定されず、所定の強度を発揮できるのであれば、例えば、短手方向の断面形状がL字型のものでもI型のものでもよい。
【0030】
また、補強板13は、導電性を有しており、接地プレートとして機能することにより、コネクタ1として組み立てられた際に、クロストーク等の通信障害の防止を図るように機能することができる。
【0031】
図2に示すように、補強板13の長手方向の両端部は、ハウジング11の幅方向の両端部から突出しており、その突出した部分には、ハウジング11と同一の素材の合成樹脂によって矩形形状の係止部12が設けられている。このため、係止部12は、プラグ10がFPC100に固定されると、図2に示すように、FPC100の幅方向の位置から飛び出る位置に配置される。
【0032】
係止部12は、ハウジング11を形成する際に一体成型することができ、また、レセプタクル20のホールドダウン部24,25の内部の空間に挿入できる大きさに形成されている。
【0033】
また、係止部12は、図3に示すように、コンタクト11cのレセプタクル20の接点部と接触する側(図3の上側)の接点部が露出する面より上方の位置にある滑動面12sと、滑動面12sの両縁部からFPC100に向かって延在する側面を有する。滑動面12sは、後述するように、レセプタクル20の案内部212の案内面212g上を滑動する。側面の一方は、プラグ10とレセプタクル20とを嵌合させる際の位置決めのための基準面として機能する。
【0034】
図5(a)および図5(b)は、それぞれ異なる方向から見たレセプタクル20の斜視図であり、図6は、レセプタクル20の分解斜視図である。これらの図を参照しながらレセプタクル20の構造の詳細を説明する。
【0035】
レセプタクル20は、ハウジング21とコンタクト22,23とホールドダウン部24,25とを備える。
【0036】
ハウジング21は、例えば、LCP(Liquid Crystal Polymer:液晶ポリマー)等の合成樹脂により形成した枠状体で、幅方向と奥行き方向と厚み方向を有する板形状に形成されていて、コンタクト装着部211と、コンタクトの嵌合時にプラグ10の係止部12を案内するための案内部212とからなる。
【0037】
レセプタクル20のハウジング21の幅方向、奥行き方向および厚さ方向は、プラグ10とレセプタクル20とを嵌合させたときのプラグ10のハウジング11の幅方向、奥行き方向および厚さ方向に一致する。
【0038】
コンタクト装着部211は、奥行き方向の各側面に、幅方向に沿って平行で等間隔に形成された複数の溝22aを有する。各溝22aには、1つのコンタクト22,23が装着される。コンタクト22,23の個数および位置は、プラグ10のコンタクト11cの個数および位置に対応する。
【0039】
各コンタクト22,23は、プラグ10のコンタクト11cの接点部と接触するための湾曲した接点部22c,23cと、図示していない基板の接点に接続するための接点部22b,23bと、コンタクト装着部211の溝22a内に固定される固定部22f,23fと、固定部と湾曲した接点部との間の弾性変形部22s,23sとからなる。
【0040】
また、コンタクト装着部211の幅方向の両端部であって、案内部212の近傍には、ホールドダウン部24,25を取り付けるための貫通孔243h,244h,253h,254hが形成されている。これらの貫通孔には、ホールドダウン部24,25の取付部243a,244a,253a,254aが挿入されて固定されている。
【0041】
ホールドダウン部24,25は、向かい合った場合に鏡像の関係、つまり、それらの間の平面に関して対称の形状である。
【0042】
ホールドダウン部24,25は、例えば、銅合金材により、概略、中空の角柱形状に形成されており、具体的には、コンタクト装着部211の面に対し直交する方向に配置された本体壁部241,251と、本体壁部241,251の図6において上端側からコンタクト装着部211の面と平行に互いに対向する方向に延在する押壁部242,252とを有する。
【0043】
さらに、本体壁部241,251の図6において下端側からコンタクト装着部211の面と平行に互いに対向する方向に固定壁243,253が延在し、固定壁243,253の端部から脚部243a,253aが上方に延在している。
【0044】
また、押壁部242,252の対向側の端面から本体壁部241,251と平行に下方に向かって停止壁244,254が延在し、停止壁244,254の下端からコンタクト装着部211の面と平行に互いに対向する方向に固定壁246,256が延在し、固定壁246,256の端部から上方に向かって脚部244a,254aが延在している。
【0045】
ホールドダウン部24,25の脚部243a,253aが、それぞれ、コンタクト装着部211の貫通孔243h,244hに挿入されて固定されている。また、ホールドダウン部25の脚部253a,254aが、それぞれ、コンタクト装着部211の貫通孔253h,254hに挿入されて固定されている。
【0046】
押壁部242,252には、固定壁246,256側に向かって突出する係合突起部245,255が形成されている。係合突起部245,255は例えばプレス加工によって形成することができる。押壁部242,252は、変形可能で弾性を有し、これにより、係合突起部245,255は、外側に向けて持ち上げられる力が加えられた後にその力が除かれると、原位置に復帰することができる。
【0047】
ホールドダウン部24,25を構成する隔壁部241,242,243等と案内部212の案内面212gとによって、ホールドダウン部24,25の内部空間が画定されている。
【0048】
プラグ10とレセプタクル20とが嵌合する際に、係合突起部245,255は、係止部12の補強板13の部分を乗り越えて凹部14に嵌ることができ、これにより、プラグ10とレセプタクル20とを正しい位置で嵌合させることができる。
【0049】
連続する押壁部242,252、本体壁部241,251、固定壁243,253および脚部243a,253aの端面によって、嵌合の際にプラグ10およびレセプタクル20の位置合わせのための基準面241b,251bが形成されている。
【0050】
基準面241b,251bと案内部212とによって、プラグ10の係止部12が挿入されるための挿入開口部が形成されている。挿入開口部は、ホールドダウン部24,25の内部空間とハウジング21の奥行き方向に連通している。
【0051】
また、停止壁244,254の挿入開口部側の端面によって停止部244b,254bが形成されている。これらの停止部は、プラグ10とレセプタクル20とを嵌合する際に、プラグ10の係止部12が適正な嵌合の位置を越えないように、係止部12を所定の位置に停止させるように機能する。
【0052】
図5(a)において、ホールドダウン部24,25の固定壁243,253,246,256の下側の面が、図示しない基板にリフローはんだ付け等されることによって、コンタクト20が基板に固定されている。
【0053】
次に、図7から図9を参照しながら、本発明の実施の形態に係るプラグ10およびレセプタクル20を各ハウジングの奥行き方向に沿ってスライド嵌合させる際の手順を説明する。なお、これらの図には、プラグ10の一方側の係止部12およびレセプタクル20のホールドダウン部24側のみが示されているが、プラグ10の他方側の係止部12およびレセプタクル20のホールドダウン部25にも、図に表示されているものと同様な手順が適用される。
【0054】
最初に、概略、プラグ組立体のプラグ10の幅方向とレセプタクル20の幅方向とを整列してそれらを対向させた状態で近づけ、それらを少しずらして平行に保持する。レセプタクル20にプラグ10が近づくと、図7に示すように、レセプタクル20のホールドダウン部24,25の基準面241b,251bに、プラグ10の係止部12の一方の側面(図7において右側の側面)を平行に近づけて配置する。これにより、嵌合の際にプラグ10の係止部12とレセプタクル20のホールドダウン部24,25との位置決めを確実に行うことができる。
【0055】
図7の状態では、プラグ10の平面とレセプタクル20の平面とが対向し、プラグ10のレセプタクル20に対向した平坦な面に、レセプタクル20のコンタクト22,23の湾曲した接点部22c,23cが接触した状態にある。ただし、コンタクト22,23の湾曲した接点部22c,23cは、プラグ10のコンタクト11cに適正に接触してはいない。
【0056】
次に、図8において、矢印Bで示すように、プラグ組立体のFPC100をレセプタクル20に向かって押すと、プラグ10のレセプタクル20に対向した平坦な面によってレセプタクル20のコンタクト22,23の湾曲した接点部22c,23cが溝22aに向かって押し付けられる。これにより、レセプタクル20のコンタクト22,23の弾性変形部22s,23sが変形して、図8に示すように、ホールドダウン部24,25の挿入開口部に、係止部12が対向するように配置されることになる。この状態では、プラグ10の係止部12の滑動面12sが、レセプタクル20の案内部212の案内面212gに乗っかっている。
【0057】
次に、プラグ組立体をレセプタクル20に押し付けながら、図9において矢印Cで示すように、係止部12の滑動面12sを、レセプタクル20の案内部212の案内面212g上をスライド移動して、係止部12を、ホールドダウン部24,25の挿入開口部から内部の空間に挿入する。このとき、係止部12の内側の面(ハウジング11の幅方向に対して垂直な面)が、レセプタクル20の案内部212の内側の面(ハウジング21の幅方向に対して垂直な面)によって案内される。
【0058】
一方、係止部12がホールドダウン部24,25の挿入開口部から内部の空間に挿入されるとき、ホールドダウン部24,25の押壁部242,252の係合突起部245,255は、係止部12の補強板13の短手方向の側端部に当接する。
【0059】
さらに、係止部12がホールドダウン部24,25の内部の空間に押し込まれると、係合突起部245,255は、係止部12の補強板13の短手方向の側端部に乗り上げ、さらにそれを乗り越えて凹部14に嵌り込む。
【0060】
これにより、係合突起部245,255は原位置に復帰することになる。これは、係合突起部245,255が形成されている押壁部242,252が変形可能で弾性を有するからである。
【0061】
プラグ10とレセプタクル20との嵌合を解除する際には、プラグ組立体をFPC100の面に沿った方向にレセプタクル20と相対的にスライド移動させて、ホールドダウン部24,25の内部から係止部12を引き出すようにする。
【0062】
このとき、係合突起部245,255が、凹部14から補強板13の曲面に沿って外側に向かって押し上げられ、補強板13の端部を乗り越えて係止部12から外れると、係合突起部245,255は、押壁部242,252の弾性により原位置に復帰する。この時点で、プラグ10とレセプタクル20との嵌合が解除されたことになる。
【0063】
次に、図10を参照しながら、プラグ10およびレセプタクル20の嵌合が適正か否かを確認する手順を説明する。
【0064】
図10(a)では、レセプタクル20のホールドダウン部24の係合突起部245とプラグ10の係止部12の凹部14との位置がずれているのが目視で確認することができる。これは、係合突起部245が、凹部14に適切に嵌り込んでなく、原位置に復帰できていない状態を意味する。このため、この状態では、嵌合は未完了である。
【0065】
図10(b)では、レセプタクル20のホールドダウン部24の係合突起部245が、プラグ10の係止部12の凹部14に嵌り込んでいることが目視で確認することができる。これは、係合突起部245が、凹部14に適切に嵌り込んでいて、原位置に復帰できている状態である。この状態は正常な嵌合である。
【0066】
上記の実施の形態では、レセプタクル20のホールドダウン部24,25に係合突起部245,255を設け、プラグ10の係止部12に凹部14を形成して、係合突起部245,255が、凹部14に嵌り込むようにした。これに代えて、例えば、係止部12に係合突起部を形成し、ホールドダウン部24,25の押壁部242,252に、その係止部12に係合突起部が嵌り込む凹部を形成するようにしてもよい。この場合、係止部12に、係合突起部が突出したり引っ込んだりするような弾性を持たせてもよく、または、押壁部242,252の一部を弾性変形できるようにして、その部分に、係合突起部が嵌り込むような凹部が形成されるようにしてもよい。
【0067】
また、上記の実施の形態では、レセプタクル20のホールドダウン部24,25の係合突起部245,255が、プラグ10の係止部12の凹部14に嵌り込むことによって、プラグ10とレセプタクル20との嵌合の確認を行えるようにした。これに代えて、ホールドダウン部24,25に係合突起部245,255を形成せず、また、係止部12に凹部14を形成せずに、係止部12の基準面となる側面が、ホールドダウン部24,25の停止壁244,254の挿入開口部側の端面に形成した停止部244b,254bに当接すると、嵌合が完了したと判断するようにしてもよい。この場合には、停止部244b,254bが保持部として機能する。
【0068】
この構成の場合には、係合突起部と凹部との係合がなくても、レセプタクル20のコンタクト22,23の弾性力によって、プラグ10の係止部12の補強板13が設けられている面が、ホールドダウン部24,25の押壁部242,252の内側の面に押し付けられるため、その位置における摩擦力により、プラグ10とレセプタクル20との嵌合は容易に解除されることはない。
【0069】
なお、本発明に係るコネクタの技術的範囲は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限り、種々の変更や改変を含むものである。
【符号の説明】
【0070】
1 コネクタ
10 プラグ
11,21 ハウジング
11c,22,23 コンタクト
12 係止部
12s 滑動面
13 補強板
14 凹部
20 レセプタクル
24,25 ホールドダウン部
100 FPC
212 案内部
212g 案内面
242 押壁部
245 係合突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10