特許第5748009号(P5748009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748009
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】固体粒子、固体潤滑剤及び金属部材
(51)【国際特許分類】
   C10M 103/00 20060101AFI20150625BHJP
   C10M 103/06 20060101ALN20150625BHJP
   C10M 103/02 20060101ALN20150625BHJP
   C10N 10/06 20060101ALN20150625BHJP
   C10N 10/08 20060101ALN20150625BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20150625BHJP
   C10N 20/06 20060101ALN20150625BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20150625BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20150625BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20150625BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20150625BHJP
   C10N 50/08 20060101ALN20150625BHJP
   C10N 70/00 20060101ALN20150625BHJP
【FI】
   C10M103/00 Z
   !C10M103/06 C
   !C10M103/06 Z
   !C10M103/06 A
   !C10M103/02 A
   C10N10:06
   C10N10:08
   C10N10:12
   C10N20:06 A
   C10N30:06
   C10N40:02
   C10N40:04
   C10N40:25
   C10N50:08
   C10N70:00
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-21192(P2014-21192)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2014-169438(P2014-169438A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2014年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-21498(P2013-21498)
(32)【優先日】2013年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高 明天
(72)【発明者】
【氏名】茂内 普巳子
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 智弘
【審査官】 馬籠 朋広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−256008(JP,A)
【文献】 特開昭62−148384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二硫化モリブデン、窒化アルミ、アルミナ及びチタンオキシドからなる群より選択される少なくとも1種からなる母材粒子の表面にフッ化カーボン粒子が付着していることを特徴とする固体粒子。
【請求項2】
フッ化カーボン粒子と母材粒子との質量比が60/40〜1/99である請求項1記載の固体粒子。
【請求項3】
フッ化カーボン粒子がメカノケミカル法により母材粒子に付着させられた請求項1又は2記載の固体粒子。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の固体粒子からなることを特徴とする固体潤滑剤。
【請求項5】
表面に請求項1、2若しくは3記載の固体粒子、又は、請求項4記載の固体潤滑剤を有することを特徴とする金属部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子、固体潤滑剤及び金属部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フッ化カーボンは固体潤滑剤として知られている(例えば、特許文献1〜2参照。)。
【0003】
しかしフッ化カーボンは、高真空下や高温下等の特定の環境下では優れた潤滑性を発揮するものの、大気圧下や低温下では、二硫化モリブデン等の他の固体潤滑剤に対する優位性がない。
【0004】
一方、特許文献3には、合成樹脂を基材とし、二硫化モリブデンとフッ化カーボンとを混合した添加材を混練した混練材を付着させた産業用金属製品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−25490号公報
【特許文献2】特許第3948572号公報
【特許文献3】実開平6−59449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の固体潤滑剤には、更に潤滑性を改善するための工夫の余地があった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、潤滑性が向上した固体粒子、該固体粒子からなる固体潤滑剤、及び、表面に該固体粒子又は該固体潤滑剤を有する金属部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、母材粒子の表面にフッ化カーボン粒子が付着している構造を有する固体粒子が、幅広い条件下で良好な潤滑性を示すことを見いだした。そして、該固体粒子が固体潤滑剤に特に好適に適用できることや、金属部材の表面に該固体粒子又は該固体潤滑剤を適用すると、表面の潤滑性が飛躍的に向上することも見いだし、本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明は、母材粒子の表面にフッ化カーボン粒子が付着していることを特徴とする固体粒子である。
【0010】
上記母材粒子は、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、窒化アルミ、二硫化タングステン、アルミナ、チタンオキシド、シリカ、シリケート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、及び、高密度ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
【0011】
本発明の固体粒子は、フッ化カーボン粒子と母材粒子との質量比が60/40〜1/99であることが好ましい。
【0012】
本発明の固体粒子は、フッ化カーボン粒子がメカノケミカル法により母材粒子に付着させられたものであることが好ましい。
【0013】
本発明は、上記固体粒子からなることを特徴とする固体潤滑剤でもある。
【0014】
本発明は、表面に上記固体粒子又は上記固体潤滑剤を有することを特徴とする金属部材でもある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の固体粒子は、母材粒子の表面にフッ化カーボン粒子が付着している構造を有することにより、極めて良好な潤滑性を示す。また、本発明の固体粒子からなる固体潤滑剤も、極めて良好な潤滑性を示す。また、表面に本発明の固体粒子又は本発明の固体潤滑剤を有する金属部材は、表面の潤滑性が極めて良好である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例9で得られたフッ化カーボン(CF)/二硫化モリブデン(MoS)複合化粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図2図2は、比較例3で得られた二硫化モリブデン(MoS)粒子とフッ化カーボン(CF)粒子との混合物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0018】
本発明の固体粒子は、母材粒子の表面にフッ化カーボン粒子が付着している構造を有する。このような構造を有する固体粒子においては、母材粒子が有する潤滑性と、フッ化カーボン粒子が有する潤滑性とが相乗的に発揮されるため、固体粒子全体として極めて優れた潤滑性を実現することができる。例えば、フッ化カーボンは高面圧/高温下での潤滑性がよく、母材粒子となる二硫化モリブデン等はフッ化カーボンに比べて低面圧下/低温での潤滑性がよい、といった特徴をもつが、これらを単に混合するのではなく複合化することで幅広い条件下で優れた潤滑性を示す粒子が得られる。つまり、個々の材料は面圧/温度といった条件では得意/不得意をもつが、それらを複合化することで広い条件下で潤滑性能が優れた固体粒子を得ることができる。
【0019】
本発明における母材粒子は、二硫化モリブデン(MoS)、窒化ホウ素、窒化アルミ、二硫化タングステン、アルミナ、チタンオキシド、シリカ、シリケート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、及び、高密度ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1種からなることが好ましい。上記化合物からなる母材粒子の表面にフッ化カーボンの粒子が付着していると、母材粒子が有する潤滑性と、フッ化カーボンの粒子が有する潤滑性との相乗効果により、固体粒子が全体として極めて優れた潤滑性を発揮することができる。母材粒子は、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、窒化アルミ、二硫化タングステン、アルミナ、チタンオキシド、及び、シリカからなる群より選択される少なくとも1種からなることがより好ましく、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、窒化アルミ、アルミナ、チタンオキシド、及び、シリカからなる群より選択される少なくとも1種からなることが更に好ましい。
【0020】
上記母材粒子は、平均粒子径が0.05〜80μmであることが好ましい。平均粒子径が上記範囲内にあることにより、分散性がよいという効果が得られる。母材粒子の平均粒子径の下限は、0.1μmがより好ましく、0.5μmが更に好ましい。母材粒子の平均粒子径の上限は、60μmがより好ましく、50μmが更に好ましい。
【0021】
本明細書において、平均粒子径は、電子顕微鏡写真上の無作為に選択した10個の粒子の粒子径の平均値として算出する。
【0022】
本発明の固体粒子においては、母材粒子の表面にフッ化カーボン粒子が付着している。フッ化カーボンは、炭素原子とフッ素原子とが化学的に共有結合した無機高分子フッ化カーボンから実質的になるものである。
【0023】
上記フッ化カーボン粒子は、平均粒子径が0.01〜40μmであることが好ましい。平均粒子径が小さ過ぎると、分散しにくい傾向があり、大き過ぎると、表面に付着しにくい傾向がある。平均粒子径の下限は0.05μmがより好ましく、0.1μmが更に好ましい。平均粒子径の上限は30μmがより好ましく、20μmが更に好ましい。
【0024】
上記フッ化カーボン粒子の形状は、原料カーボンの形状に依存するため、球状、繊維状、鱗片状などカーボン原料に応じて様々な形状のものができるが、いずれでもよい。
【0025】
上記フッ化カーボン粒子は、フッ素原子の含有量が、20〜65重量%であることが好ましい。フッ素原子の含有量が上記範囲内にあると、当該フッ化カーボン粒子が付着した固体粒子に、一層優れた潤滑性を付与することができる。フッ素原子の含有量が小さ過ぎると、固体粒子に優れた潤滑性を付与することができないおそれがあり、大き過ぎると、粒子が崩壊しはじめ球形を保持できず母材粒子への分散性が悪くなるおそれがある。フッ素原子の含有量の下限でより好ましいのは25重量%、更に好ましくは30重量%である。フッ素原子の含有量の上限でより好ましいのは64重量%、更に好ましくは63重量%である。
【0026】
上記フッ素原子の含有量は、以下の方法により測定することができる。フッ化カーボン粒子を、助燃剤Na及びポリエチレンフィルムとともに、酸素を充填したフラスコ内で燃焼し、発生したフッ化水素HFを水に吸収させる。フッ化物イオンメータ(オリオン社製:イオンアナライザ901)により発生したHFの量を測定する。この値から、フッ化カーボン粒子の残部はすべて炭素とみなして、含有されるフッ素原子の含有量がえられる。
【0027】
上記フッ化カーボン粒子は、公知の製法によって製造されたものであってよい。例えば、フッ素ガスの存在下にカーボン粒子を加熱し、所定の時間反応させて、カーボン粒子をフッ素化することにより製造することができる。加熱温度は通常150〜600℃、好ましくは200〜500℃、より好ましくは250〜400℃である。反応時間は通常1分間〜12時間、好ましくは5分間〜10時間、より好ましくは10分間〜8時間である。
【0028】
本発明の固体粒子において、フッ化カーボン粒子は、母材粒子の表面のどこかに付着していればよい。例えば、母材粒子の表面に散在していてもよく、母材粒子の表面の一部を覆うように付着していてもよく、全部を覆うように付着していてもよい。また、複数の母材粒子を覆うように付着していてもよい。
【0029】
母材粒子の表面に付着している粒子がフッ化カーボン粒子であることを確認するには、EDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy、エネルギー分散型X線分析)、またはESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis、化学分析用電子分光法)を用いることが好ましい。
EDXの場合、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影する粒子を固定し、撮影箇所における元素の分布を測定できるため、表面の粒子形状に沿った元素の分布が得られる。得られた元素分布からフッ素原子の存在が確認できれば、母材粒子の表面にフッ化カーボン粒子が付着しているといえる。
ESCAの場合は複合化の前後で粒子表面のフッ素原子の増減を調べることでフッ素原子が表面に存在するかどうかがわかる。フッ素原子の存在が確認できれば、母材粒子の表面にフッ化カーボン粒子が付着しているといえる。
【0030】
本発明の固体粒子において、フッ化カーボン粒子と母材粒子との質量比(フッ化カーボン粒子/母材粒子)は、60/40〜1/99であることが好ましい。フッ化カーボン粒子と母材粒子との質量比が上記範囲内にある固体粒子は、特に優れた潤滑性を示す。上記質量比の上限は、50/50がより好ましく、40/60が更に好ましい。上記質量比の下限は、3/97がより好ましく、5/95が更に好ましい。
【0031】
本発明の固体粒子は、平均粒子径が0.05〜100μmであることが好ましい。固体粒子の平均粒子径の下限は、0.1μmがより好ましく、0.5μmが更に好ましい。固体粒子の平均粒子径の上限は、80μmがより好ましく、60μmが更に好ましい。
【0032】
本発明の固体粒子は、フッ化カーボン粒子を付着させる対象となる母材粒子とフッ化カーボン粒子とを所定の条件下で混合し、母材粒子の表面にフッ化カーボン粒子を付着させることにより製造することができる。
【0033】
母材粒子の表面にフッ化カーボン粒子を付着させる方法としては、母材粒子の表面にフッ化カーボン粒子を均一に分散させることができる点で、メカノケミカル法が好ましい。すなわち、本発明の固体粒子は、フッ化カーボン粒子がメカノケミカル法により母材粒子に付着させられたものであることが好ましい。
【0034】
母材粒子とフッ化カーボン粒子とを単に混合するだけでは、母材粒子の表面にフッ化カーボン粒子を付着させることができず、母材粒子とフッ化カーボン粒子とを均一に分散させることが困難であり、摺動面内での分散状態にばらつきが生じる。また、母材粒子とフッ化カーボン粒子とで潤滑メカニズムが異なる場合には、単に母材粒子とフッ化カーボン粒子とを共存させるだけでは、それらの相乗的な効果は得られない。
【0035】
メカノケミカル法は、被処理物に主に圧縮力、剪断力、摩擦力、延伸力等の力をかけて、被処理物に高い機械的エネルギーを作用させることにより、被処理物を複合化する方法である。
【0036】
メカノケミカル法により本発明の固体粒子を製造する場合、容器に母材粒子及びフッ化カーボン粒子を仕込んだ後、圧縮力、剪断力、摩擦力、延伸力等の力をかけ、高い機械的エネルギーを作用させることにより母材粒子とフッ化カーボン粒子とを結合させる。
【0037】
メカノケミカル法に用いる装置は、被処理物に圧縮力、剪断力、摩擦力、延伸力等の力をかけることができる装置であれば、特に限定されず、ミルやブレンダーなどが用いられる。具体的には、ボールミル、遊星ボールミル、三本ロールミル、ジェットミル、アトライター、デイスクミル、ハンマーミル、容器固定型ブレンダー、容器回転型ブレンダー、複合型ブレンダー等を用いることができる。中でも、混合のエネルギーが大きく、短時間で上記フッ化カーボン粒子を母材粒子に付着させることができる点で、せん断/摩擦力をかける仕様のブレンダーを用いることが好ましい。
【0038】
メカノケミカル法で使用するフッ化カーボン粒子は、平均粒子径が0.01〜50μmであることが好ましい。上記平均粒子径は、目的の固体粒子において達成すべきフッ化カーボン粒子の平均粒子径に応じて決定すればよい。平均粒子径が小さ過ぎると、2次凝集する傾向が強くなり、母材粒子に均一に分散させることが困難となり、大き過ぎると、母材粒子への分散性が悪くなる傾向がある。平均粒子径の下限は0.05μmがより好ましく、0.1μmが更に好ましい。平均粒子径の上限は45μmがより好ましく、40μmが更に好ましい。
【0039】
メカノケミカル法で使用する母材粒子は、平均粒子径が0.05〜100μmであることが好ましい。上記平均粒子径は、目的の固体粒子において達成すべき母材粒子の平均粒子径に応じて決定すればよい。母材粒子の平均粒子径の下限は、0.1μmがより好ましく、0.5μmが更に好ましい。母材粒子の平均粒子径の上限は、80μmがより好ましく、60μmが更に好ましい。
【0040】
本発明の固体粒子は、極めて良好な潤滑性を有するため、単独で、又は、他の材料とともに、潤滑性が要求される種々の用途に好適に用いることができる。
【0041】
本発明の固体粒子は、例えば、固体潤滑剤として有用である。
【0042】
本発明は、本発明の固体粒子からなる固体潤滑剤でもある。本発明の固体潤滑剤は、本発明の固体粒子のみからなるものであってもよく、他の材料を更に含んでもよい。固体潤滑剤を分散して用いる材料との複合であってもよい。他の材料としては、エンジニアリングプラスチック、グリース、接着材等が挙げられる。
【0043】
エンジニアリングプラスチックとしては、ポリオキシベンゾイルポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。
【0044】
また、本発明の固体粒子及び固体潤滑剤は、種々の部材の表面に、優れた潤滑性を付与することができる。
【0045】
本発明は、表面に本発明の固体粒子又は本発明の固体潤滑剤を有する金属部材でもある。
【0046】
本発明の金属部材は、上記固体粒子又は固体潤滑剤を表面のどこかに有していればよく、表面に散在していてもよく、表面の一部を覆うように有していてもよく、全部を覆うように有していてもよい。
【0047】
本発明の金属部材を構成する金属としては特に限定されず、鉄、アルミ、SUS、銅、チタン等のあらゆる種類の金属を用いることができる。
【0048】
上記固体粒子又は固体潤滑剤を金属部材の表面に適用する方法としては、ショットピーニングによる方法、上記固体粒子又は固体潤滑剤を分散させたオイルを金属部材の表面に塗布する方法、上記固体粒子又は固体潤滑剤を含む塗料を金属部材の表面に塗布して塗膜を形成する方法、上記固体粒子又は固体潤滑剤を分散させたグリースを金属部材の表面に塗布する方法、上記固体粒子を含む樹脂又は金属を金属部材の表面に塗布/またはブラストして焼き付ける方法等が挙げられる。
【0049】
中でも、ショットピーニングによる方法、上記固体粒子又は固体潤滑剤を分散させたグリースを金属部材の表面に塗布する方法、又は、上記固体粒子又は固体潤滑剤を含む塗料を金属部材の表面に塗布して塗膜を形成する方法が好ましい。
【0050】
ショットピーニングとは、粉末を相手材に対して高圧高速で噴射し、コーティングする処理である。
【0051】
上記固体粒子又は固体潤滑剤を分散させたオイルを金属部材の表面に塗布する場合、使用可能なオイルとしては、鉱物油、合成油等が挙げられる。
【0052】
本発明の金属部材は、上記固体粒子又は固体潤滑剤を有することに起因して表面の潤滑性に優れるため、磁気ディスクの駆動装置、自動車用モーター、OA機器、エンジンシャフト、クランクシャフト等における摺動部位に好適に使用することができる。
【実施例】
【0053】
次に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0055】
(平均粒子径)
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察を行い、SEM画像から任意の10粒子を選び、その直径を測定し、平均粒子径を算出した。
【0056】
(フッ素含有量)
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ化物イオンメータ(オリオン社製:イオンアナライザ901))で測定することにより求めた。
【0057】
実施例1
フッ化カーボン粒子(フッ素含有量62重量%、平均粒子径20μm)を10g、二硫化モリブデン(MoS)(Aldrich社製、平均粒子径40.0μm)を40g用いてノビルタ((株)ホソカワミクロン製)で5000回転で5分処理を行い、二硫化モリブデン表面にフッ化カーボン粒子を被覆させた複合化粒子を得た。
【0058】
実施例2〜23
母材粒子の種類、フッ化カーボン粒子の種類及び重量を表1及び2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして母材粒子表面にフッ化カーボン粒子を被覆させた複合化粒子を得た。
【0059】
A:フッ化カーボン粒子、フッ素含有量62重量%、平均粒子径20μm
B:フッ化カーボン粒子、フッ素含有量62重量%、平均粒子径6μm
C:フッ化カーボン粒子、フッ素含有量46重量%、平均粒子径20μm
D:フッ化カーボン粒子、フッ素含有量55重量%、平均粒子径20μm
E:フッ化カーボン粒子、フッ素含有量61重量%、平均粒子径35μm
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
図1に、実施例9で得られたフッ化カーボン(CF)/二硫化モリブデン(MoS)複合化粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。母材粒子である二硫化モリブデン粒子の表面に、粉砕されたフッ化カーボン粒子が付着していることがわかる。
【0063】
複合化粒子は、基本的に、劈開性の低いほうが母材粒子に、高いほうが表面に複合化される。フッ化カーボンとこれら各種化合物との複合化粒子の場合は、フッ化カーボンのほうが劈開性が高いため、複合化粒子の表面にフッ化カーボンが複合化している。フッ化カーボンが質量比で60質量%以下である場合は、より多くのフッ化カーボンが複合化粒子の表面に複合化されている。
【0064】
比較例1、2
比較例1及び2では、二硫化モリブデン(Aldrich社製、平均粒子径40μm)、二硫化モリブデン(Aldrich社製、平均粒子径3.5μm)をそれぞれ用いた。
【0065】
比較例3
二硫化モリブデン粒子とフッ化カーボン粒子とをメカノケミカル法を用いずに混合したこと以外は実施例1と同様にして、二硫化モリブデン粒子とフッ化カーボン粒子との混合物を得た。
【0066】
図2に、比較例3で得られた二硫化モリブデン(MoS)粒子とフッ化カーボン(CF)粒子との混合物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。混合しただけでは、フッ化カーボン粒子が十分に劈開されず、粗大粒子として二硫化モリブデン粒子とばらばらに存在していることがわかる。
【0067】
本発明における試験方法及び測定方法は次のとおりである。
【0068】
(ショットピーニング試験)
市販の投射機を用いて、実施例1、2、5、12、13、15、17、19で得られた複合化粒子、比較例1、2の二硫化モリブデン、又は、比較例3で得られた混合物を被投射基材(アルミ板)に対して45°の角度になるように投射し、固体潤滑層を形成した。
【0069】
(摩耗試験)
得られた固体潤滑層における摩耗試験は、先端がR形状になったSKH51の焼入れ焼戻し材のブレード(硬度Hv750〜Hv850)が固定されたディスク状のホルダと、表面に固体潤滑層が形成されているディスク状の基材(外形Φ44mm、内径Φ32mm)とを用いて行った。なお、ブレードが固定されているホルダには、3つのブレード(先端がR6mm、幅4mm、奥行き5mm、長さ11mm)が、回転半径が19mmとなる位置にそれぞれ固定されている。
【0070】
ブレード先端と固体潤滑層とを摺接させるために、ホルダのブレードとディスク状基材とを、大気中で油のないドライ状態で、かつ、荷重70kgf、すべり速度0.5m/sの条件で摺動させ、摩擦係数が急上昇した時間を疲労寿命とした。上記試験温度は160℃で行った。結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
上記結果から、複合化されていない二硫化モリブデン単独の粒子、及び、メカノケミカル法を用いずに混合しただけの粒子に比べ複合化粒子は高温、高面圧下で摺動性に優れるため疲労寿命が向上することがわかった。
【0073】
(塗料の調製と固体潤滑層の形成)
ポリイミド前駆体溶液(UワニスA、宇部興産(株)製、固形分20重量%溶液)に対して、実施例1、2、5、12、13、15、17、19で得られた複合化粒子、比較例1、2の二硫化モリブデン、又は、比較例3で得られた混合物を10重量%混合し、アルミ基材上に80μmの厚みで塗布し、120℃で20分乾燥した後、更に300℃で1時間加熱して、固体潤滑層を形成した。
得られた固体潤滑層において上記同様の摩耗試験を行った。結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
上記結果から、複合化されていない二硫化モリブデン単独の粒子、及び、メカノケミカル法を用いずに混合しただけの粒子を含む固体潤滑層に比べ複合化粒子を含む固体潤滑層の性能がよいことがわかった。
図1
図2