(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5748010
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】複合熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/26 20060101AFI20150625BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20150625BHJP
F28F 13/06 20060101ALI20150625BHJP
F01P 3/18 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
F28F9/26
F28F1/32 V
F28F13/06
F01P3/18 U
F01P3/18 V
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-32787(P2014-32787)
(22)【出願日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】河上 浩布
【審査官】
藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−262330(JP,A)
【文献】
特開2008−080995(JP,A)
【文献】
特開2004−125204(JP,A)
【文献】
特開2006−015980(JP,A)
【文献】
特開2006−021749(JP,A)
【文献】
特開2010−152886(JP,A)
【文献】
特開2010−235001(JP,A)
【文献】
特開2007−120329(JP,A)
【文献】
特開2008−069756(JP,A)
【文献】
特開2013−220783(JP,A)
【文献】
特開2003−127653(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/005986(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/26
F01P 3/18
F28F 1/32
F28F 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気とエンジン冷却水との間で熱交換を行うメインラジエータ(2)と、
前記メインラジエータ(2)の空気流れ方向の上流位置に配置され、空気と車載電子部品冷却水との間で熱交換を行うサブラジエータ(4)と、
前記メインラジエータ(2)の空気流れ方向の上流位置で、前記サブラジエータ(4)と重ならない位置に配置され、空気との間で熱交換を行うコンデンサ(3)とを備える複合熱交換器(1)であって、
前記メインラジエータ(2)、前記コンデンサ(3)及び前記サブラジエータ(4)は、間隔を置いて配置された複数のチューブ(9,15,21)と、隣接する前記チューブ(9,15,21)の間に設ける波形のフィン(11,17,23)を備え、
前記メインラジエータ(2)、前記コンデンサ(3)及び前記サブラジエータ(4)を通る空気と前記チューブ(9,15,21)内を流れる各冷媒との間でそれぞれ熱交換を行い、
前記サブラジエータ(4)に対向する前記メインラジエータ(2)の領域(A)のフィン(11A)の間隔が、前記コンデンサ(3)に対向する前記メインラジエータ(2)の領域(B)のフィン(11B)の間隔よりも大きいことを特徴とする複合熱交換器(1)。
【請求項2】
請求項1記載の複合熱交換器(1)であって、
前記メインラジエータ(2)、前記コンデンサ(3)及び前記サブラジエータ(4)は、前記チューブ(9,15,21)の両端にそれぞれ一対のタンク(7,13,19)を有し、一対の前記タンク(7,13,19)は、略同じ幅を有することを特徴とする複合熱交換器(1)。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の複合熱交換器(1)であって、
前記サブラジエータ(4)及び前記コンデンサ(3)の一対のタンク(13,19)は、前記メインラジエータ(2)のタンクに固定することを特徴とする複合熱交換器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される複合熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
図6,7や特許文献1,2に示すように、従来より複合熱交換器は種々提案されている。
【0003】
図6に示すように、複合熱交換器が用いられる冷却サイクル100は、車両の駆動源であるエンジンEと、車両に配置される電子機器等の駆動を制御する駆動回路101と、冷媒を冷却する熱交換器102と、冷媒の循環を駆動する第1ポンプP1、第2ポンプP2とを備えている。
【0004】
図7に示すように、熱交換器102は、エンジンEを冷却するメインラジエータ103と、駆動回路101を冷却するサブラジエータ105と、冷媒を冷却するコンデンサ104とを備えている。
【0005】
メインラジエータ103は、左右一対のタンク106と、タンク106間を連結する図示しない複数のチューブと、チューブの間に配置されるフィンとを備えており、一対のタンク106には、それぞれ冷媒入口部106aと、冷媒出口部106bとが設けられている。
【0006】
サブラジエータ105は、メインラジエータ103の冷却風上流側に配置され、メインラジエータ103と同様に一対のタンク112と、チューブ113と、フィン114とを備えており、一対のタンク112にはそれぞれ冷媒入口部112aと、冷媒出口部112bとが設けられている。
【0007】
コンデンサ104は、メインラジエータ103の冷却風上流側に配置されるとともに、サブラジエータ105と並列になるように配置されている。また、コンデンサ104もメインラジエータ103とサブラジエータ105と同様に、一対のタンク109と、チューブ110と、フィン111とを備えており、一対のタンク109にはそれぞれ冷媒入口部109aと、冷媒出口部109bとが設けられている。
【0008】
このような複合熱交換器を用いる冷却サイクル100は、第1ポンプP1が駆動することによりエンジンEを介した冷媒がメインラジエータ103の冷媒入口部106aから一方のタンク106へ流入し、チューブを介して他方のタンク106へ冷媒が流れ、他方のタンク106から冷媒出口部106bを介した冷媒が第1ポンプP1に流入し、エンジンEとメインラジエータ103間を冷媒が循環する。また、冷媒がメインラジエータ103のチューブを流れる際に、冷却風との間で熱交換することで冷媒が冷却される。
【0009】
また、第2ポンプP2が駆動することにより駆動回路101を介した冷媒がサブラジエータ105の冷媒入口部112aから一方のタンク112へ流入し、チューブ113を介して他方のタンク112へ冷媒が流れ、他方のタンク112から冷媒出口部112bを介した冷媒が第2ポンプP2に流入し、駆動回路101とサブラジエータ105間を冷媒が循環する。
【0010】
さらに、図示しないコンプレッサによって圧縮された冷媒が、コンデンサ104の冷媒入口部109aから一方のタンク109へ流入し、チューブ110を介して他方のタンク109へ冷媒が流れ、他方のタンク109から冷媒出口部109bを介して図示しないエバポレータへ冷媒が流れる。また、冷媒がチューブ110を流れる際に、冷却風との間で熱交換することで、コンデンサ104内を流れる冷媒を冷却している。
【0011】
また、特許文献2に開示されているように、ハイブリッド車に搭載される複合熱交換器102は、従来の自動車に比べて車両に搭載される部品が多くなるため、熱交換器に省スペース化が求められており、メインラジエータの冷却風上流側に空調用コンデンサとサブラジエータが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−262330号公報
【特許文献2】特開2006−21749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の複合熱交換器102では、コンデンサ104とサブラジエータ105と並列に並べ、メインラジエータ103と略同等の面積となるように上下に配置している。
【0014】
ところが、コンデンサ104とサブラジエータ105のどちらか一方の冷却性能を向上させたい場合がある。例えば、ハイブリッド車に搭載される場合等は多数の電機製品が車両に搭載されるため、従来よりも駆動回路を冷却する必要があり、駆動回路を冷却する冷媒が流れるサブラジエータ105の高い冷却性能が求められるという課題があった。
【0015】
そこで、本発明では、第1熱交換器の冷却風上流に第2熱交換器と第3熱交換器を配置した複合熱交換器において、第2熱交換器と第3熱交換器のいずれか一方の冷却性能を向上させることのできる複合熱交換器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明では、空気と
エンジン冷却水との間で熱交換を行う
メインラジエータ2と、前記
メインラジエータ2の空気流れ方向の上流位置に配置され、空気と
車載電子部品冷却水との間で熱交換を行う
サブラジエータ4と、前記
メインラジエータ2の空気流れ方向の上流位置で、前記
サブラジエータ4と重ならない位置に配置され、空気との間で熱交換を行う
コンデンサ3とを備える複合熱交換器1であって、前記
メインラジエータ2、前記コンデンサ3及び前記サブラジエータ4は、間隔を置いて配置された複数のチューブ9,15,21と、隣接する前記チューブ9,15,21の間に設ける波形のフィン11,17,23を備え、前記
メインラジエータ2、前記コンデンサ3及び前記サブラジエータ4を通る空気と前記チューブ9,15,21内を流れる各冷媒との間でそれぞれ熱交換を行い、前記
サブラジエータ4に対向する
前記メインラジエータ2の領域
Aのフィン
11Aの間隔
が、前記
コンデンサ3に対向する
前記メインラジエータ2の領域
Bのフィン
11Bの間隔
よりも大きいことを特徴とする。また
、前記
メインラジエータ2、前記コンデンサ3及び前記サブラジエータ4は、前記チューブ9,15,21の両端にそれぞれ一対のタンク7,13,19を有し、一対の前記タンク7,13,19は、略同じ幅を有することを特徴とする。さらにまた、前記
サブラジエータ4及び前記
コンデンサ3の一対
のタンク13,19は、前記
メインラジエータ2のタンクに固定することを特徴とす
る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、
メインラジエータ2のフィン間隔を広くした領域では、複合熱交換器1を通過する空気抵抗が小さくなるために、その領域に配置された
サブラジエータ4の冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明のメインラジエータの分解正面図である。
【
図3】本発明の複合熱交換器の前方側斜視図である。
【
図4】本発明の複合熱交換器の後方側斜視図である。
【
図6】従来の複合熱交換器が用いられた冷却サイクルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態及び変形例について、
図1〜5を用いて詳細に説明する。
【0020】
〔実施形態〕
図1〜5に示すように、冷却サイクルに用いられる複合熱交換器1は、メインラジエータ2と、メインラジエータ2の冷却風上流側に配置されるコンデンサ3と、メインラジエータ2の冷却風上流側に配置され、かつ、コンデンサ3の上方に配置されるサブラジエータ4とを備えている。
【0021】
図2に示すように、メインラジエータ2は、一対のタンク7と、一対のタンク7間を連結する複数のチューブ9と、複数のチューブ9間に配置されるフィン11(11A,11B)とを備えている。
【0022】
一対のタンク7は、冷却風の送風方向に対して左右方向に配置されており、一対のタンク7の一方側のタンク7には、冷媒入口部7aが形成され、他方側のタンク7には、冷媒出口部7bが形成されている。
【0023】
フィン11(11A,11B)は、チューブ9間において波形状に形成されている。この波形状のフィン間隔(以下「フィンピッチ」)は、
図1に示すようにA領域とB領域とで異なっており、A領域のフィン11AのフィンピッチP2は、B領域のフィン11BのフィンピッチP1よりも波形の幅が広く形成されている。
【0024】
B領域のフィン11Bは、従来のメインラジエータにおいて使用されているものと同様のフィンピッチを適用し、A領域のフィン11Aについては、B領域のフィンピッチよりも広ければよく、通風抵抗によってフィンピッチは適宜設計変更可能である。
【0025】
なお、A領域とは、後述するサブラジエータ4に対向する領域であり、B領域は、後述するコンデンサ3に対向する領域である。
【0026】
メインラジエータ2の冷却風上流側に配置されるコンデンサ3は、一対のタンク13と、一対のタンク13間を連結する複数のチューブ15と、複数のチューブ15間に積層するように配置される波形のフィン17とを備えている。
【0027】
コンデンサ3の一対のタンク13には、図示しない冷媒入口部と冷媒出口部がそれぞれ形成されている。
【0028】
メインラジエータ2の冷却風上流側で、かつ、コンデンサ3の上方に配置されるサブラジエータ4は、一対のタンク19と、一対のタンク19間を連結する複数のチューブ21と、複数のチューブ21間に積層するように配置される波形のフィン23とを備えている。一対のタンク19の一方側のタンク19には、冷媒入口部19aが形成され、他方側のタンク19には、冷媒出口部19bが形成されている。
【0029】
コンデンサ3のタンク13とサブラジエータ4とタンク19とを連結するように連結ブラケット6がボルトにより固定されており、コンデンサ3のタンク13とサブラジエータ4のタンク19との間に跨るようにしてリキッドタンク5が固定されている。
【0030】
次に、本実施形態の複合熱交換器1内を流れる冷媒の冷却について説明する。
【0031】
図示しないエンジン等を介した冷媒は、冷媒入口部7aから一方側のタンク7に流入し、タンク7からチューブ9を介して他方側のタンク7へ流入する。他方側のタンク7へ流入した冷媒は、冷媒出口部7bから図示しないエンジン等へ冷媒が流れる。
【0032】
図示しないコンプレッサによって圧縮された冷媒は、図示しない冷媒入口から一方側のタンク13に流入し、タンク13からチューブ15を介して他方側のタンク13へ流入する。他方側のタンク13へ流入した冷媒は、図示しない冷媒出口からリキッドタンク5を介して図示しないエバポレータへ冷媒が流れる。
【0033】
図示しない駆動回路を介した冷媒は、冷媒入口部19aから一方側のタンク19に流入し、タンク19からチューブ21を介して他方側のタンク19へ流入する。他方側のタンク19へ流入した冷媒は、冷媒出口部19bから図示しない駆動回路へ冷媒が流れる。
【0034】
なお、上述したメインラジエータ2、コンデンサ3、サブラジエータ4のチューブ9,15,21内を冷媒が流れる際、
図5に示すように冷却風がチューブ9,15,21及びフィン11,17,23を通過することにより、チューブ9,15,21内を流れる冷媒と冷却風との間で熱交換が行われ、冷媒を冷却している。
【0035】
本実施形態によれば、メインラジエータ2のコンデンサ3に対向するB領域よりも、メインラジエータ2のサブラジエータ4に対向するA領域のフィン11Aの波形の間隔を大きくしたことにより、メインラジエータ2のA領域を通過する冷却風の通風抵抗が小さくなるため、サブラジエータ4を通過する冷却風の風速が早くなる。
【0036】
すなわち、サブラジエータ4内を流れる冷媒と冷却風との間の熱交換が促進され、サブラジエータ4内を流れる冷媒を十分に冷却することができるため、冷却性能を向上させることができる。なお、メインラジエータ2のフィンピッチP2はフィンピッチP1よりも広くなるが、サブラジエータ4を通過する冷却風が、通風抵抗の減少により従来の熱交換器よりも通過する冷却風の風速が早くなることによって、サブラジエータ4での放熱量が小さくなることなく、従来と遜色なく冷却性能を確保することができる。
【0037】
さらに、メインラジエータ2のタンク7と、サブラジエータ4及びコンデンサ3のタンク13,19とが固定されることにより、レイアウト性を高めることができ、さらに、複合熱交換器1を車両に取り付ける際の固定が容易となる。
【0038】
また、本実施形態においては、サブラジエータ4とコンデンサ3とが冷却風の送風方向に対して上下方向(天地方向)に並べられた例について説明したが、冷却風の送風方向に対して左右方向(天地方向に対して直交方向)に並べたものであってもよい。なお、サブラジエータとコンデンサを左右方向に並べた場合、本実施形態と同様に、サブラジエータと対向するメインラジエータの領域のフィンピッチを広くすればよい。
【0039】
さらに、サブラジエータ4のタンク19内に水冷コンデンサを配置してもよく、タンク19内に水冷コンデンサを配置することで、より効果的に冷媒を冷却することができる。
【0040】
〔変形例〕
上述した実施形態では、サブラジエータ4の冷却性能を向上させるため、サブラジエータ4に対向するメインラジエータ2のフィンピッチを広くしているが、本変形例ではコンデンサ3の冷却性能を向上させることができる。すなわち、コンデンサ3の冷却性能を向上させる場合には、コンデンサ3に対向するメインラジエータ2のフィンピッチを広く形成すればよい。
【0041】
つまり、本変形例によれば、コンデンサ3に対向するメインラジエータ2の領域を通過する冷却風の風速を早くすることができるため、コンデンサ3を通過する冷却風によって、コンデンサ3内を流れる冷媒を十分に冷却することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 複合熱交換器
2 第1熱交換器(メインラジエータ)
3 第3熱交換器(コンデンサ)
4 第2熱交換器(サブラジエータ)
【要約】
【課題】第1熱交換器の上流に第2熱交換器と第3熱交換器を配置した複合熱交換器において、第2熱交換器と第3熱交換器のいずれか一方の冷却性能を向上させることのできる複合熱交換器の提供を目的とする。
【解決手段】本発明では、空気との間で熱交換を行う第1熱交換器と、第1熱交換器の上流位置に配置され、空気との間で熱交換を行う第2熱交換器と、第1熱交換器の上流位置で、第2熱交換器と重ならない位置に配置され、空気との間で熱交換を行う第3熱交換器とを備える複合熱交換器であって、第1〜3熱交換器は、間隔を置いて配置された複数のチューブと、隣接するチューブの間に設ける波形のフィンを備え、第1〜3熱交換器を通る空気とチューブ内を流れる各冷媒との間でそれぞれ熱交換を行い、第2熱交換器に対向する領域の第1熱交換器のフィン間隔と、第3熱交換器に対向する領域の第1熱交換器のフィン間隔とを異ならせたことを特徴とする。
【選択図】
図2