(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748046
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/013 20060101AFI20150625BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
F28F9/013 E
F28F9/02 301E
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-13086(P2011-13086)
(22)【出願日】2011年1月25日
(65)【公開番号】特開2012-154540(P2012-154540A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晶
【審査官】
▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−317034(JP,A)
【文献】
特開2001−336835(JP,A)
【文献】
特開2007−232339(JP,A)
【文献】
特開2003−301986(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0046184(US,A1)
【文献】
特開2007−333343(JP,A)
【文献】
特開2004−271109(JP,A)
【文献】
特開2008−039318(JP,A)
【文献】
特開2010−048424(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/024855(WO,A2)
【文献】
特開昭59−170696(JP,A)
【文献】
特開昭60−078297(JP,A)
【文献】
特開2008−286500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/013
F28F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管と、
これら複数の伝熱管の端部に連結された流体流入用または流出用のヘッダと、
を備えている、熱交換器であって、
前記複数の伝熱管をクランプし、または前記複数の伝熱管に外嵌した状態で取り付けられることにより、前記複数の伝熱管どうしの相対移動を規制するようにしてこれら複数の伝熱管どうしを連結するコネクタを、さらに備えており、
前記ヘッダは、前記コネクタと嵌合可能に形成され、かつ前記コネクタと嵌合されたときに、前記複数の伝熱管と前記ヘッダとが連結されるように前記複数の伝熱管を一括して内部に進入させることが可能な開口部を有しており、
前記複数の伝熱管の外周面には、凸状部が形成され、かつ前記コネクタには、前記凸状部に係合する凹溝部が設けられ、これら凹溝部と凸状部との係合により、前記コネクタと前記複数の伝熱管との位置決め固定が図られていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記コネクタは、前記複数の伝熱管を互いに対向する2方向からクランプし、かつこのクランプ状態を保持できるように互いに連結可能な第1および第2の部材を有しており、
これら第1および第2の部材の互いに対向する部分には、前記クランプ状態時において前記複数の伝熱管が個々に嵌入する複数の凹状部が形成されている、熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記コネクタは、複数の貫通孔を有し、かつこれら複数の貫通孔に前記複数の伝熱管を挿通させることにより前記複数の伝熱管に外嵌装着可能である、熱交換器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の熱交換器であって、
前記複数の伝熱管のうち、前記コネクタよりも先端側には、前記複数の伝熱管のそれぞれに外嵌する複数のOリング部が一連に繋がったシール部材が装着されており、
前記コネクタと前記ヘッダとが嵌合されたときには、前記複数の伝熱管の外周面と前記開口部の内周面との隙間が、前記シール部材によってシールされるように構成されている、熱交換器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の熱交換器であって、
前記複数の伝熱管を囲み、かつ内部に加熱用流体が供給されるケースを備えており、
このケースの側壁部には、前記複数の伝熱管の端部を前記ケースの外部に引き出すための孔部として、前記複数の伝熱管の端部を一括して挿通させることが可能な長孔状の孔部が形成されており、
前記コネクタの一部は、前記孔部に嵌入していることにより、前記孔部のうち、前記複数の伝熱管の周囲に形成されている隙間を閉塞している、熱交換器。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の熱交換器であって、
前記複数の伝熱管を囲み、かつ内部に加熱用流体が供給されるケースを備えており、
このケースの側壁部に、前記ヘッダが一体的に形成されている、熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の伝熱管の端部にヘッダが連結された構成を有し、たとえば給湯装置における湯水加熱用途などに用いられる熱交換
器に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置用の熱交換器においては、複数の伝熱管にヘッダを連結し、このヘッダを利用して複数の伝熱管への入水や出湯を行なわせる場合が多い(たとえば、特許文献1を参照)。従来において、複数の伝熱管にヘッダを連結する場合、ヘッダに複数の孔部を形成しておき、これら複数の孔部に複数の伝熱管の端部を個々に挿入して連結する手段がよく採用されている。
【0003】
しかしながら、前記した手段によれば、ヘッダに設けられた複数の孔部に複数の伝熱管を個々に挿入する作業が煩雑である。また、ヘッダに対する各伝熱管の連結固定を確実にするには、ヘッダの孔部と伝熱管との嵌合箇所にロウ付けまたは溶接を施すといった必要も生じる。このため、熱交換器の組み立て作業は煩雑であり、その製造コストが高価となる。さらに、ヘッダの孔部と伝熱管との嵌合箇所にロウ付けまたは溶接を施す構造を採用した場合には、ロウ付けまたは溶接を施すための領域を複数の伝熱管どうしの間に確保しなければならない。したがって、複数の伝熱管の配列ピッチを比較的大きくせざるを得ず、伝熱管の配列ピッチを小さくする上で苦慮する場合もある。従来においては、このような点において改善すべき余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−317034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、複数の伝熱管とヘッダとの連結を容易に行なうことができ、しかも複数の伝熱管の配列ピッチを小さくすることも可能な熱交換
器を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発
明により提供される熱交換器は、複数の伝熱管と、これら複数の伝熱管の端部に連結された流体流入用または流出用のヘッダと、を備えている、熱交換器であって、前記複数の伝熱管をクランプし、または前記複数の伝熱管に外嵌した状態で取り付けられることにより、前記複数の伝熱管どうしの相対移動を規制するようにしてこれら複数の伝熱管どうしを連結するコネクタを、さらに備えており、前記ヘッダは、前記コネクタと嵌合可能に形成され、かつ前記コネクタと嵌合されたときに、前記複数の伝熱管と前記ヘッダとが連結されるように前記複数の伝熱管を一括して内部に進入させることが可能な開口部を有して
おり、前記複数の伝熱管の外周面には、凸状部が形成され、かつ前記コネクタには、前記凸状部に係合する凹溝部が設けられ、これら凹溝部と凸状部との係合により、前記コネクタと前記複数の伝熱管との位置決め固定が図られていることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、コネクタを利用して複数の伝熱管を連結するとともに、このコネクタをヘッダに嵌合させることにより、複数の伝熱管を一括してヘッダに連結するこ
とができる。したがって、従来技術とは異なり、ヘッダに設けられた複数の孔部のそれぞれに伝熱管を個別に挿入してロウ付けまたは溶接を施すような必要がなく、複数の伝熱管に対するヘッダの連結作業が容易化される。したがって、熱交換器の製造コストを低減することができる。加えて、本発明によれば、複数の伝熱管をヘッダに連結するための手段として、複数の伝熱管どうしの間にロウ付けまたは溶接用の領域を確保する必要がなくなるため、複数の伝熱管の配列ピッチを小さくできるという利点も得られる。
【0010】
また、このような構成によれば、複数の伝熱管とコネクタとの位置決め固定が容易かつ的確に図られる。たとえば、コネクタをヘッダに固定させているにも拘わらず、複数の伝熱管がヘッダに対して不用意に位置ずれするといったことを無くすことができる。なお、伝熱管の凸状部は、たとえば伝熱管に拡管加工を施すことにより、容易に形成することが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記コネクタは、前記複数の伝熱管を互いに対向する2方向からクランプし、かつこのクランプ状態を保持できるように互いに連結可能な第1および第2の部材を有しており、これら第1および第2の部材の互いに対向する部分には、前記クランプ状態時において前記複数の伝熱管が個々に嵌入する複数の凹状部が形成されている。
【0012】
このような構成によれば、コネクタを用いて複数の伝熱管を連結する場合に、コネクタを構成する第1および第2の部材によって複数の伝熱管をクランプすればよく、コネクタの装着作業が容易である。コネクタによって複数の伝熱管をクランプする際には、各伝熱管をコネクタの凹状部に嵌入させることができるために、クランプ状態を安定したものとなる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記コネクタは、複数の貫通孔を有し、かつこれら複数の貫通孔に前記複数の伝熱管を挿通させることにより前記複数の伝熱管に外嵌装着可能である。
【0014】
このような構成によれば、コネクタの構造をシンプルにしながらも、複数の伝熱管をコネクタによって的確に連結固定することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記複数の伝熱管のうち、前記コネクタよりも先端側には、前記複数の伝熱管のそれぞれに外嵌する複数のOリング部が一連に繋がったシール部材が装着されており、前記コネクタと前記ヘッダとが嵌合されたときには、前記複数の伝熱管の外周面と前記開口部の内周面との隙間が、前記シール部材によってシールされるように構成されている。
【0016】
このような構成によれば、複数の伝熱管とヘッダとの連結部分から漏水などを生じることを適切に防止することができる。シール部材は、複数のOリング部が繋がった構成であるために、たとえば複数のOリングを用いる手段と比較すると、シール部材の部品点数を少なくし、その取り扱いを容易なものにできる。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記複数の伝熱管を囲み、かつ内部に加熱用流体が供給されるケースを備えており、このケースの側壁部には、前記複数の伝熱管の端部を前記ケースの外部に引き出すための孔部として、前記複数の伝熱管の端部を一括して挿通させる
ことが可能な長孔状の孔部が形成されており、前記コネクタの一部は、前記孔部に嵌入していることにより、前記孔部のうち、前記複数の伝熱管の周囲に形成されている隙間を閉塞している。
【0018】
このような構成によれば、複数の伝熱管の端部をケースの外部に引き出すように設定する際には、複数の伝熱管の端部を長孔状の孔部に一括して挿通させればよい。このため、たとえばケースの側壁部に複数の孔部を形成し、これらの孔部に複数の伝熱管を個々に挿通させる場合と比較して、熱交換器の組み立て作業が容易となる。また、長孔状の孔部に形成される隙間は、コネクタを利用して閉塞されるために、ケース内に供給された加熱用流体が前記隙間からケース外部に漏出するといった不具合も生じないようにすることができる。さらに、コネクタの一部を前記孔部に嵌入させれば、コネクタの位置決めも図られる。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記複数の伝熱管を囲み、かつ内部に加熱用流体が供給されるケースを備えており、このケースの側壁部に、前記ヘッダが一体的に形成されている。
【0020】
このような構成によれば、ケースの側壁部とヘッダとの一体化により、部品点数の削減、およびそれらの部品の組み付け作業の省略などを図り、熱交換器の製造コストを低減するのに好ましいものとなる。本発明でいうヘッダには、ケースの側壁部と一体的に形成されたものも含まれる。
【0023】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(a)は、本発明に係る熱交換器の一例を示す平面断面図であり、(b)は、その正面断面図である。
【
図5】
図1(a),(b)に示す熱交換器の要部分解斜視図である。
【
図6】
図1(a),(b)に示す熱交換器に用いられているコネクタの一例を示し、(a)は、分解斜視図であり、(b)は、分解正面図である。
【
図7】
図1(a),(b)に示す熱交換器に用いられているシール部材の一例を示し、(a)は、(b)のVIIa−VIIa断面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、(b)のVIIc−VIIc断面図であり、(d)は、(b)のVIId−VIId断面図である。
【
図13】(a)は、本発明に係る熱交換器の他の例を示す平面断面図であり、(b)は、その正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
図1〜
図7は、本発明が適用された熱交換器およびこれに関連する構成の一例を示している。
図1によく表われているように、本実施形態の熱交換器HE1は、略直方体状のケース2と、このケース2内に収容された複数の伝熱管1と、一対のヘッダ3(3A,3B)とを具備している。これら一対のヘッダ3と複数の伝熱管1との連結手段として、後述するコネクタ5を用いた連結構造部C1,C2が設けられている。
【0027】
複数の伝熱管1は、平面視長円状の複数の螺旋状管体部を有している。これら複数の螺旋状管体部は、互いにサイズが異なっており、略同心の重ね巻き状に配されている。各伝熱管1の上端側および下端側部分は、略水平に延びる直状管体部10a,10bであり、これらの端部がヘッダ3に連結されている。ケース2内には、各伝熱管1を加熱するための加熱用媒体が流入可能である。より具体的には、加熱用媒体としては、たとえばバーナ(図示略)により発生された燃焼ガスが利用され、この燃焼ガスは、ケース2の後壁部20aの給気口21からケース2内に流入し、その後は前壁部20bの排気口22から排ガスとして外部に排出される。このような燃焼ガスの進行過程において、燃焼ガスは複数の伝熱管1の各部に作用し、各伝熱管1内を流通する湯水が加熱される。ヘッダ3は、入水口または出湯口としての開口部30を有している。この熱交換器HE1においては、下側のヘッダ3(3B)の開口部30に供給された湯水が、各伝熱管1内に流れ込み、燃焼ガスとの熱交換によって加熱される。この加熱された湯水は、上側のヘッダ3(3A)の開口部30から外部に出湯し、所望の給湯先に供給される。
【0028】
各伝熱管1の端部寄り領域は、ケース1の側壁部20cに設けられた孔部23に挿通してケース2の外部に引き出されており、略平行に並んでいる。孔部23は、複数の伝熱管1を一括して挿通させることが可能な長孔状である(
図5を参照)。
図2〜
図5に示すように、連結構造部C1においては、複数の伝熱管1の端部とヘッダ3との連結手段として、コネクタ5、シール部材4、およびシート状のパッキン6が用いられている。連結構造部C1,C2の構成は同様であるため、以下においては連結構造部C1を説明し、連結構造部C2の説明は省略する(図面においては、連結構造部C1,C2の互いに対応する要素には、同一の符号を付している)。
【0029】
コネクタ5は、複数の伝熱管1どうしを連結し、かつこれら複数の伝熱管1をヘッダ3に連結させるための部材である。
図6によく表われているように、このコネクタ5は、第1および第2の部材50A,50Bを有している。これら第1および第2の部材50A,50Bは、ともに樹脂成形品であり、好ましくは、これらの形状およびサイズは同一である。燃焼ガスに晒される熱交換器は、一般的に比較的高温環境になるものの、コネクタ5は、被加熱流体の通路に接触して設けられているため、樹脂成形品とすることが可能であり、熱損傷は無い、または殆ど無い(ヘッダ3についても同様)。第1および第2の部材50A,50Bは、各伝熱管1を嵌入させるための複数の半円状の凹状部51に加え、第1および第2の部材50A,50Bどうしを上下組み合わせる際に互いに嵌合して第1お
よび第2の部材50A,50の位置決めを図るための凸部52aならびに凹部52bを有している。さらに、第1および第2の部材50A,50Bの組み合わせ状態が保持されるように互いに係合する係合用突起53aならびに被係合部53bも有している。
【0030】
コネクタ5は、
図2および
図3に示すように、第1および第2の部材50A,50Bによって複数の伝熱管1をその上下からクランプするようにして複数の伝熱管1の端部近傍領域に装着される。複数の伝熱管1は、コネクタ5の凹状部51に嵌入し、
図4に示すように、複数の伝熱管1どうしの間には、コネクタ5の一部(
図6に示した複数の凹状部51どうしの間の凸状部分51a)が介在している。このことにより、複数の伝熱管1がそれらの配列方向に相対移動することが確実に規制され、伝熱管1の配列ピッチPが規定される。もちろん、複数の伝熱管1が上下方向に相対移動することもコネクタ5により規制される。第1および第2の部材50A,50Bを用いて複数の伝熱管1をクランプした際には、
図6に示した係合用突起53aと被係合部53bとが係合し、前記のクランプ状態が維持されるために、複数の伝熱管1からコネクタ5が不用意に脱落するといった不具合はない。各伝熱管1には、フレア加工により形成された凸状部15が設けられている。これに対し、コネクタ5の内面(各凹状部51の内面)には、凸状部15を内部に進入させる凹溝部55が形成されている。この凹溝部55と凸状部15との係合作用により、各伝熱管1の軸長方向における各伝熱管1とコネクタ5との相対的な位置決めが図られている。
【0031】
ヘッダ3は、入水用または出湯用の開口部30が形成されたチャンバ31に加え、このチャンバ31に一端側が繋がった比較的短寸の複数の流路32、およびこれら複数の流路32の他端側に繋がった開口部33を有している。この開口部33は、コネクタ5を嵌入させるとともに、複数の伝熱管1の端部寄り領域を一括して内部に進入させることが可能な形状およびサイズに形成されている。コネクタ5が開口部33に嵌入されて、複数の伝熱管1が開口部33内に進入することにより、各伝熱管1とヘッダ3との連結が図られる。各伝熱管1の内部は、ヘッダ3の流路32を介してチャンバ31に連通しており、チャンバ31と各伝熱管1の内部との間で湯水の流通が可能である。
【0032】
シール部材4は、たとえばニトリルゴム(NBR)やその他のゴムなどの弾性素材を用いて構成されている。このシール部材4は、
図7に示すように、孔部48を有する複数のOリング部40が、同一平面上において一定方向に並ぶようにして繋がり、かつそれらの全体が一体成形された構成である。
図2〜
図4に示すように、シール部材4は、各Oリング部40に伝熱管1が挿通した状態とされて、開口部33の奥部(
図2および
図4の右方)の段部34とコネクタ5との間に配される。このことにより、各伝熱管1の外周面と開口部33の内周面との隙間がシールされる。開口部33の内面のうち、コネクタ5と接触する部分は、コネクタ5の外周円の輪郭と同様な形状であるが、シール部材4の外周縁と接触する部分は、シール部材4の外周縁の輪郭と同様な形状である。このシール部材4を利用したシール構造により、連結構造部C1における漏水が適切に防止される。
【0033】
ヘッダ3は、ボルトなどのネジ体90を利用してケース2の側壁部20cに取り付けられている。側壁部20cには、ネジ体90の螺合用のネジ孔90aが形成されている。このネジ孔90aはネジ体90との螺合により塞がれるために、ケース2内の燃焼ガスがネジ孔90aを介して外部に漏れる虞は殆どない。ただし、そのような虞を一層徹底して防止すべく、たとえば
図8に示すような構造を採用してもよい。同図の構造では、ボルトなどのネジ体91を側壁部20cに溶接し、このネジ体91に螺合するナット92を用いてヘッダ3の固定を図っている。
【0034】
コネクタ5の一端に設けられた凸部57は、孔部23に嵌入しており、この孔部23のうち、複数の伝熱管1の周囲に形成されている隙間を閉塞している。このことにより、ケ
ース2内の燃焼ガスが孔部23を介して外部に漏出することが防止される。また、凸部57と孔部23との嵌合作用により、コネクタ5の位置決めをより的確に図ることが可能である。シート状のパッキン6は、側壁部23cとヘッダ3との間に介装されており、このパッキン6の存在によって、燃焼ガスの外部への漏出をより確実に防止することが可能である。
【0035】
次に、前記した熱交換器HE1の作用について説明する。
【0036】
まず、この熱交換器HE1においては、複数の伝熱管1どうしはコネクタ5を利用して互いに相対移動しないように固定連結され、かつコネクタ5はヘッダ3の開口部33に嵌入してヘッダ3との固定が図られている。このため、複数の伝熱管1およびヘッダ3も、互いに相対移動しないように適切に連結される。このような連結構造を得るには、コネクタ5を利用して複数の伝熱管1どうしを連結した後に、コネクタ5をヘッダ3の開口部30に嵌入し、その際に複数の伝熱管1についても開口部30に一括して進入させればよい。したがって、たとえばヘッダ3に複数の孔部を設けて、これら複数の孔部に伝熱管1を個々に嵌入させるといった煩雑さがなく、熱交換器HE1の組み立て作業が容易となる。また、本実施形態においては、伝熱管1とヘッダ3との連結に際して、これらをロウ付けまたは溶接する必要もない。すなわち、本実施形態とは異なり、ヘッダ3に設けられた複数の孔部に伝熱管1を個々に嵌入させてそれらの周囲にロウ付けや溶接を施す場合には、それらロウ付けや溶接を施すための余分の領域を伝熱管1どうしの間に確保する必要があるが、本実施形態では、そのような必要はない。したがって、複数の伝熱管1の配列ピッチP(
図4を参照)を小さくする上でも有利となる。熱交換器HE1においては、熱交換効率を高めることを目的として伝熱管1の配列ピッチPを小さくしたい場合があるが、本実施形態はそのような場合にも好適である。
【0037】
コネクタ5を利用して複数の伝熱管1どうしを連結する場合には、既述したように、第1および第2の部材50A,50Bによって、複数の伝熱管1をその上下からクランプすればよい。このため、コネクタ5を利用して複数の伝熱管1どうしを連結する作業も容易である。さらに、複数の伝熱管1の端部をケース2の内部から外部に引き出す場合には、複数の伝熱管1の端部を長孔状の孔部23に一括して挿通させればよいために、やはりこの作業も容易である。シール部材4は、単一のシール部材として構成されているために、たとえば複数個のOリングを伝熱管1に外嵌させる場合と比較すると、その装着作業は容易となる。このようなことからも、熱交換器HE1の組み立て作業性は良好なものとなり、製造コストの低減を図ることができる。コネクタ5は、既述したように、ケース2の孔部23から燃焼ガスが外部に漏出することを適切に防止する役割も発揮するため、その構造は合理的である。
【0038】
図8〜
図15は、本発明の他の実施形態を示している(
図8は、既に説明したため、以降の説明では省略)。これらの実施形態において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0039】
図9〜
図12に示す実施形態で用いられているコネクタ5Aは、
図11によく表われているように、単一部材により形成され、複数の貫通孔58が略一定間隔で列状に並んで設けられた構成である。各貫通孔58には、伝熱管1が挿通され、コネクタ5Aは、複数の伝熱管1に外嵌した状態に装着される。
図10に示すように、伝熱管1には、コネクタ5Aの凹溝部55に係合する凸状部15が形成されているが、この凸状部15は、伝熱管1をコネクタ5Aの貫通孔58に挿通させた後において、伝熱管1に拡管処理を施すことにより形成されたものである。
【0040】
ヘッダ3には、
図11に示すように、櫛歯状の複数の突起70を有する位置決め部材7
を保持するための保持部38が設けられている。この保持部38は、上部開口状の細幅な孔部38aを有しており、この孔部38a内にその上側から位置決め部材7を差し込むことが可能である。保持部38には、コネクタ5Aが嵌入し、かつ複数の伝熱管1を一括して進入させることが可能な開口部33が形成されており、位置決め部材7が上方に抜け外れることを防止するための係止用突起38bも設けられている。
図12によく表われているように、位置決め部材7の複数の突起70は、複数の伝熱管1どうしの間に位置して、これら複数の伝熱管1に当接可能である。また、
図10に示すように、複数の突起70は、コネクタ5Aの一端に当接可能である。
【0041】
本実施形態によれば、コネクタ5や複数の伝熱管1の位置が、位置決め部材7を利用して規制される。このため、ヘッダ3を熱交換器のケースに固定させない場合であっても、伝熱管1とヘッダ3との固定連結を的確に図ることができる。コネクタ5Aは、先に述べたコネクタ5とは異なり、単一部材により構成され、その構造は簡素であるために、その製造コストを廉価にすることが可能である。本発明でいうコネクタは、コネクタ5Aのような単一部材として構成することも可能である。
【0042】
図13に示す熱交換器HE2においては、ケース2の側壁部27Aおよびヘッダ3(3A,3B)が、ともに樹脂製とされて一体的に形成されている。とくに、このような構成は、燃焼ガス温度が比較的低くなる潜熱回収用の熱交換器に適する。ケース2の主要部である筒状のケース本体部28の両端は、このケース本体部28の中央寄り部分よりも縦横の幅が大きい拡開部26として形成されており、この拡開部26に側壁部27A,27Bがシール部材60とともに嵌入されている。側壁部27Bは、側壁部27Aと同様に、ケース本体部28の端部の開口部25を閉塞するためのものであるが、側壁部27Aとは異なり、ヘッダ3が一体的に形成された構成ではなく、たとえば単なる平板状である。
【0043】
本実施形態の熱交換器HE2においては、
図14および
図15に示すように、コネクタ5が嵌入して複数の伝熱管1が進入する開口部33は、側壁部27Aの内側面に開口するように設けられている。本実施形態では、側壁部27Aとヘッダ3とが一体的に形成されているために、開口部33が側壁部27Aの内側面に開口した構成であったとしても、この開口部33はヘッダ3に設けられた開口部であるものと解釈することが可能である。側壁部27Aの内面には、押さえ板8がたとえばネジ体(図示略)を用いて取り付けられ、この押さえ板8の一部分はコネクタ5の一端に当接している。この押さえ板8の存在により、コネクタ5と側壁部27Aとの固定が図られている。
【0044】
本実施形態によれば、側壁部27Aとヘッダ3とが一体的に形成されているために、部品点数の削減により製造コストの低減を図ることができるばかりか、ヘッダ3をケース2に取り付けるような必要もなくなり、熱交換器HE2の組み立て作業性も容易となる。したがって、製造コストをより低減することができる。しかも、ヘッダ3とケース2との間に隙間が生じないため、燃焼ガスが外部に漏出するリスクも低減することができる。本実施形態から理解されるように、本発明でいうヘッダは、ケースの一部分と一体的な形成された構成とすることができる。
【0045】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換
器の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0046】
本発明でいうコネクタは、複数の伝熱管に対してこれらをクランプし、または外嵌した状態で取り付けられて、それら伝熱管どうしの相対移動を規制するように複数の伝熱管どうしを連結する機能を有していればよい。コネクタとヘッダとは互いに嵌合して連結されるが、これらが互いに離脱することを確実に防止するための手段として、たとえばこれらコネクタとヘッダとを接着剤を用いて接着させる手段、融着させる手段、あるいはネジ止
めするといった手段を採用することもできる。
【0047】
本発明でいう伝熱管は、螺旋状のものに限らず、たとえば蛇行状や直管状などの他の形態のものとすることができる。本発明に係る熱交換器は、給湯装置用のものに限定されない。したがって、伝熱管内を流通する流体や、この流体と熱交換される媒体の種類なども限定されない。
【符号の説明】
【0048】
HE1,HE2 熱交換器
1 伝熱管
3 ヘッダ
4 シール部材
5,5A コネクタ
15 凸状部
27A 側壁部
33 開口部
50A,50B 第1および第2の部材
51 凹状部
55 凹溝部
58 貫通孔(コネクタの)