【実施例】
【0035】
先ず、実施例及び比較例で得られた共重合体の重量平均分子量及び重合収率、DADMACとSO
2との共重合体の共重合比、並びにpHの測定方法を以下に示す。
【0036】
(i)共重合体の重量平均分子量
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、日立L−6000型高速液体クロマトグラフを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC法)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L−6000、検出器はショーデックスRI−101示差屈折率検出器、カラムはショーデックスアサヒパックの水系ゲル濾過タイプのGS−220HQ(排除限界分子量3,000)とGS−620HQ(排除限界分子量200万)とを直列に接続したものを用いた。サンプルは溶離液で0.5g/100mlの濃度に調製し、20μlを用いた。溶離液には、0.4モル/リットルの塩化ナトリウム水溶液を使用した。カラム温度は30℃で、流速は1.0ml/分で実施した。標準物質として、分子量106、194、440、600、1470、4100、7100、10300、12600、23000などのポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に共重合体の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0037】
(ii)共重合体の重合収率
GPC法により得られたピーク面積比により求めた。
【0038】
(iii)DADMACとSO
2との共重合体の共重合比
DADMACとSO
2との共重合体溶液をメタノールにて再沈精製し、得られた再沈物をガラスフィルターにて濾過し、次いで、減圧乾燥機にて1時間乾燥させて、白色結晶を得た。得られた結晶を水に溶かして1%溶液とし、燃焼型前処理装置付イオンクロマトグラフィーにより塩素イオン濃度及び硫黄イオン濃度の測定を行った。測定された塩素イオン濃度と硫黄イオン濃度との比より共重合比を求めた。
【0039】
(iv)pHの測定方法
室温条件下(23±5℃)でpHメーター(HORIBA社製)により測定した。
【0040】
次に、実施例1から7及び比較例1として、DADMAC(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)とSO
2との共重合体の合成方法を示す。
なお、実施例1から7で用いた酸は、そのpKaが4.0以下の酸である。
【0041】
[実施例1]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた300mlセパラブルフラスコ中に65wt%DADMAC溶液198.99g(DADMAC0.80モル相当分)及び35wt%塩酸16.67g(塩酸0.16モル相当分;全単量体の合計モルに対して10mol%)を仕込み、均一攪拌させた。
次いで、20℃以下に冷却した後、SO
251.25g(SO
20.80モル相当分)を添加して均一溶液とした。
次いで、28.5%APS(過硫酸アンモニウム)水溶液7.60g(全単量体の合計質量対して1.2wt%相当分APS)を加えて共重合させ、DADMACとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
なお塩酸のpKaは、−3.7(化学便覧基礎編 改訂5版 丸善株式会社)である。
【0042】
[実施例2]
35wt%塩酸16.67gに代えて、35wt%塩酸33.33g(塩酸0.32モル相当分;全単量体の合計モルに対して20mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、DADMACとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
【0043】
[実施例3]
35wt%塩酸16.67gに代えて、35wt%塩酸50.00g(塩酸0.48モル相当分;全単量体の合計モルに対して30mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、DADMACとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
【0044】
[実施例4]
35wt%塩酸16.67gに代えて、95wt%硫酸16.52g(硫酸0.16モル相当分;全単量体の合計モルに対して10mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、DADMACとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
なお硫酸のpKaは、−3.0(Kolthoff,Treatise on Analytical Chemistry,New York,Interscience Encyclopedia,Inc.,1959)である。
【0045】
[実施例5]
35wt%塩酸16.67gに代えて、99wt%メタンスルホン酸15.53g(メタンスルホン酸0.16モル相当分;全単量体の合計モルに対して10mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、DADMACとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
なおメタンスルホン酸のpKaは、−0.6(Brownstein,S.;Stillman,A.E.J.P.C.1959,63,2061)である。
【0046】
[実施例6]
35wt%塩酸16.67gに代えて、97wt%アミド硫酸16.18g(アミド硫酸0.16モル相当分;全単量体の合計モルに対して10mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、DADMACとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
なおアミド硫酸のpKaは、0.99(化学便覧基礎編 改訂5版 丸善株式会社)である。
【0047】
[実施例7]
35wt%塩酸16.67gに代えて、70wt%グリコール酸15.21g(グリコール酸0.16モル相当分;全単量体の合計モルに対して10mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、DADMACとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
なおグリコール酸のpKaは、3.65(化学便覧基礎編 改訂5版 丸善株式会社)である。
【0048】
[比較例1]
35wt%塩酸16.67gに代えて、水16.67gを用いた以外は実施例1と同様にして、DADMACとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
【0049】
実施例1により得られたDADMACとSO
2との共重合体のIRスペクトルを
図1にGPCチャートを
図2に示す。なお、IRスペクトルについては、得られた溶液の一部をアセトンで再沈殿させ、得られた白色固体を濾別し、50℃で48時間真空乾燥して得られた白色粉末状の共重合体のIRスペクトルを測定した。
図1より1120cm
−1と1300cm
−1付近に−SO
2−に起因する吸収が見られることから、得られた共重合体がDADMACとSO
2との共重合体であることを支持する。
【0050】
また、実施例1〜7及び比較例1により得られたDADMACとSO
2との共重合体の製造条件、重量平均分子量、重合収率及び共重合比を表1に示す。なお、表1において酸混合後DADMAC溶液pHとは、DADMAC溶液と酸を混合した後であってSO
2導入前のDADMAC溶液のpHであり、比較例1においては酸が混合されていないDADMAC溶液のpHを意味する。
表1に示されるように、DADMAC溶液と酸とを混合させることによって、酸と混合させない場合と比較して、得られるDADMACとSO
2との共重合体の分子量が上昇することが確認された。また、酸の量及び種類を選択することによって、得られる共重合体の分子量を制御可能なことが確認された。
また、得られた共重合体は、DADMACとSO
2とのモル比1:1の共重合体に近いものであることが確認された。
【0051】
【表1】
【0052】
次に、実施例8〜9及び比較例2として、DAEMAES(ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェート)とSO
2との共重合体の合成方法を示す。
なお、実施例8及び9で用いた酸は、そのpKaが4.0以下の酸である。
【0053】
[実施例8]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた300mlセパラブルフラスコ中に69.32wt%DAEMAES溶液191.42g(DAEMAES0.50モル相当分;特開2006−45363号公報の方法に従い合成)及び35wt%塩酸10.42g(塩酸0.10モル相当分;全単量体の合計モルに対して10mol%)を仕込み、均一攪拌させた。
次いで、20℃以下に冷却した後、SO
232.03g(SO
20.50モル相当分)を添加して均一溶液とした。
次いで、28.5%APS水溶液7.60g(全単量体の合計モルに対して1.2wt%相当分APS)を加えて共重合させ、DAEMAESとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
【0054】
[実施例9]
35wt%塩酸10.42gに代えて、95wt%硫酸10.33g(硫酸0.10モル相当分;全単量体の合計モルに対して10mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、DAEMAESとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
【0055】
[比較例2]
35wt%塩酸10.42gに代えて、水10.42gを用いた以外は実施例8と同様にして、DAEMAESとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
【0056】
実施例8〜9及び比較例2により得られたDAEMAESとSO
2との共重合体の製造条件、重量平均分子量、重合収率及び共重合比を表2に示す。なお、表2において酸混合後DAEMAES溶液pHとは、DAEMAES溶液と酸を混合した後であってSO
2導入前のDAEMAES溶液のpHであり、比較例2においては酸が混合されていないDAEMAES溶液のpHを意味する。
表2に示されるように、DAEMAES溶液と酸とを混合させることによって、酸と混合させない場合と比較して、得られるDAEMAESとSO
2との共重合体の分子量が上昇することが確認された。
【0057】
【表2】
【0058】
次に、実施例10及び比較例3として、DAMA−HCl(ジアリルメチルアミン塩酸塩)とSO
2との共重合体の合成方法を示す。
なお、実施例10で用いた酸は、そのpKaが4.0以下の酸である。
【0059】
[実施例10]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた300mlセパラブルフラスコ中に68.15wt%DAMA−HCl溶液173.32g(DAMA−HCl0.80モル相当分)及び35wt%塩酸16.67g(塩酸0.16モル相当分;全単量体の合計モルに対して10mol%)、及び希釈水41.04gを仕込み、均一攪拌させた。
次いで、20℃以下に冷却した後、SO
251.25g(SO
20.80モル相当分)を添加して均一溶液とした。
次いで、28.5%APS水溶液1.92g(全単量体の合計モルに対して0.15mol%相当分APS)を加えて共重合させ、DAMA−HClとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
【0060】
[比較例3]
35wt%塩酸16.67gに代えて、水16.67gを用いた以外は実施例10と同様にして、DAMA−HClとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
【0061】
実施例10及び比較例3により得られたDAMA−HClとSO
2との共重合体の製造条件、重量平均分子量、重合収率及び共重合比を表3に示す。なお、表3において酸混合後DAMA−HCl溶液pHとは、DAMA−HCl溶液と酸を混合した後であってSO
2導入前のDAMA−HCl溶液のpHであり、比較例3においては酸が混合されていないDAMA−HCl溶液のpHを意味する。
表3に示されるように、DAMA−HCl溶液と酸とを混合させることによって、酸と混合させない場合と比較して、得られるDAMA−HClとSO
2との共重合体の分子量が上昇することが確認された。
【0062】
【表3】
【0063】
次に、実施例11及び比較例4として、DAA−HCl(ジアリルアミン塩酸塩)とSO
2との共重合体の合成方法を示す。
なお、実施例11で用いた酸は、そのpKaが4.0以下の酸である。
【0064】
[実施例11]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた300mlセパラブルフラスコ中に66.76wt%DAA−HCl溶液130.10g(DAA−HCl0.65モル相当分)及び35wt%塩酸13.55g(塩酸0.13モル相当分;全単量体の合計モルに対して10mol%)、及び希釈水28.87gを仕込み、均一攪拌させた。
次いで、20℃以下に冷却した後、SO
241.64g(SO
20.65モル相当分)を添加して均一溶液とした。
次いで、28.5%APS水溶液2.08g(全単量体の合計モルに対して0.2mol%相当分APS)を加えて共重合させ、DAA−HClとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
【0065】
[比較例4]
35wt%塩酸13.55gに代えて、水13.55gを用いた以外は実施例11と同様にして、DAA−HClとSO
2との共重合体を水溶液として得た。
【0066】
実施例11及び比較例4により得られたDAA−HClとSO
2との共重合体の製造条件、重量平均分子量、重合収率及び共重合比を表4に示す。なお、表4において酸混合後DAA−HCl溶液pHとは、DAA−HCl溶液と酸を混合した後であってSO
2導入前のDAA−HCl溶液のpHであり、比較例4においては酸が混合されていないDAA−HCl溶液のpHを意味する。
表4に示されるように、DAA−HCl溶液と酸とを混合させることによって、酸と混合させない場合と比較して、得られるDAA−HClとSO
2との共重合体の分子量が上昇することが確認された。
【0067】
【表4】