【実施例】
【0021】
本発明の燃料消費削減量算定装置及び二酸化炭素排出削減量算定装置を図に基づいて説明する。
図1は、本発明に用いる燃焼改善装置の一例を表わす図である。
図2は、本発明に用いる燃焼改善装置の原理と燃焼改善効果を表わす図であり、同図(a)は燃焼改善装置の原理、同図(b)は燃焼改善装置の燃焼改善効果を表わす図である。
図3は、本発明の燃料消費削減量算定装置及び二酸化炭素排出削減量算定装置のブロック図である。
図4は、本発明の燃料消費削減量算定装置及び二酸化炭素排出削減量算定装置において動作する本発明の燃料消費削減量算定表示プログラム及び二酸化炭素排出削減量算定表示プログラムのフロー図である。
図5は、燃料消費削減量算定装置及び二酸化炭素排出削減量算定装置の出力手段に表示される燃料消費削減量及び二酸化炭素排出削減量等の表示内容の一例である。
本発明の燃料消費削減量算定装置は、ある位置に所在する事業所に常備されている車輛の年間走行距離及び年間燃料消費量からなる走行データであって、車輛の内燃機関に燃料の燃焼を改善する燃焼改善装置を装着する前の前記車輛のベースラインデータと、前記燃焼改善装置を装着した後の前記車輛のプロジェクトデータとを入力手段を介して入力し、前記プロジェクトデータの年間走行距離を前記ベースラインデータの年間走行距離を当該年間燃料消費量で除算し算出されるベースライン燃費で除算したベースライン消費量から、前記プロジェクトデータの年間燃料消費量を減算し、その減算値を出力手段を介して表示させるものである。
また、上記燃料消費削減量算定装置により実行される本発明の燃料消費削減量算定表示プログラムは、ベースラインデータの年間走行距離を当該年間燃料消費量で除算したベースライン燃費を算出するステップと、プロジェクトデータの年間走行距離をベースライン燃費で除算したベースライン消費量を算出するステップと、ベースライン消費量からプロジェクトデータの年間燃料消費量を減算し、燃料消費削減量を算出するステップと、その燃料消費削減量を出力手段に表示するステップとを実行させるものである。
【0022】
本発明における「ある位置に所在する事業所に常備されている車輛」とは、たとえば、常に同じ一の事業所(同じ地点)から運行を開始する車輛、常に同じ一の整備工場でメンテナンス(車輛の修理、定期点検等)を受ける車輛である。ベースラインデータ及びプロジェクトデータの両者の一方を欠く若しくはそのデータの一部を欠く車輛、例えば廃車車両や新規登録車輛は含まれない。ベースラインデータとプロジェクトデータは、同一車輛の走行データである。
本発明における「年間」とは、少なくとも12か月であり、12か月の整数倍であってもよい。
なお、本発明の二酸化炭素排出削減量算定装置並びに二酸化炭素排出削減量算定表示プログラムにおける「ある位置に所在する事業所に常備されている車輛」及び「年間」についても、同様である。
【0023】
本実施例において用いる上記燃焼改善装置を
図1に基づいて説明する。
図1の燃焼改善装置は、本願特許出願人が製造販売するものである(製品名:E−S/V(Eco-Supporter/Vehicle)。この燃焼改善装置は、帯状のものであり、基材の裏面に遮熱材を設け、その遮熱材上に電磁波を照射する照射体を備える。燃焼改善装置は、車輛のエンジン吸気系パイプ(エンジンエアダクトホース)に巻き付け、面ファスナーAに面ファスナーBを貼り付けて、取り付ける(
図1(a))。燃焼改善装置の照射体(
図1(b))からは、電磁波(4〜24μmの遠赤外線の波長)が照射される(
図2(a))。燃焼改善装置をエンジン吸気系パイプに取り付けることによって、電磁波が吸入空気中の水蒸気(H
2O)に吸収され、最適な燃焼を得ることができる(
図2(a))。また、燃料燃焼性試験による燃料の着火性の指標であるFIAセタン価は、燃焼改善装置を設置することにより向上する。さらに、燃焼性を示す主燃焼期間や燃焼後期の燃焼特性を判断する後燃え期間は短縮される(
図2(b))。このような効果を有する燃焼改善装置は、車輛の内燃機関に装着することにより、燃料の燃焼を改善し、燃費を向上させ、CO
2等の排出量を低減させることは従来より知られている(例えば、特公平7−59972号)。
なお、
図1の燃焼改善装置は、装着する車輛の排気量・燃料種に応じた型式のものが用いられるものとする。
図1(b)の燃焼改善装置は、排気量
2500cc、燃料種別・軽油の車輛に装着するものである。
また、本願発明における燃焼改善装置は、本願特許出願人の製品に限定するものではなく、車輛の内燃機関に燃料の燃焼を改善するものであればよい。
【0024】
図3の燃料消費削減量算定装置10は、ある位置に所在する事業所に設置されるコンピュータである。燃料消費削減量算定装置10は、登録車輛データ12、燃焼改善装置装着前の登録車両の走行距離データ14、燃焼改善装置装着前の登録車両の燃料消費量データ16、燃焼改善装置装着後の登録車両の走行距離データ18、燃焼改善装置装着前の登録車両の燃料消費量データ20及び燃料消費削減量算定表示プログラム22と、入力手段24と、出力手段26とを備えるものである。
入力手段24は、燃料消費削減量算定装置10にデータを入力し指示を与えるものであり、キーボードやマウス等のコンピュータに接続される入力用機器である。出力手段26は、ディスプレイ(モニタ装置)やプリンタ等のコンピュータに接続される出力用機器である。ディスプレイには、CPU28(中央演算処理装置)からの命令に従って入力画面や出力画面が表示される。図示しない入力インタフェースには、キーボードやマウス等が接続されており、入力インタフェースはキーボードやマウス等から送信される信号をバス30(信号線)を介してCPU28に送信する。
CPU28は、記憶装置32にある燃料消費削減量算定表示プログラム22を読み込んで実行し、各種データ12,14,16,18,20等の情報の加工を行う。CPU28は、バス30を介して各種データ12,14,16,18,20を蓄積する記憶装置や入出力回路に接続され、入出力回路を介してモニタ装置等が接続され、データやプログラム等のデータのやりとりを行うようになっている。
【0025】
登録車輛データ12は、一の事業所(複数の地域に事業所をもつ運送事業者のそれぞれの事業所も含む。)に常備されている車輛の識別データである。識別データとは、例えば、装着される燃焼改善装置の種別、車輛ナンバー(登録番号)、車輛メーカー名及び型番、納車時期、直近の車検日、排気量等である。
【0026】
燃焼改善装置装着前の登録車両の走行距離データ14は、登録車輛データ12に記録(登録)された車輛の年間走行距離である。走行距離データ14は、車輛ごとに毎月の走行距離を入力し12か月分の合計走行距離を算出し、登録車両すべての合計走行距離を加算して算出される。
【0027】
燃焼改善装置装着前の登録車両の燃料消費量データ16は、登録車輛データ12に記録(登録)された車輛の年間燃料消費量である。燃料消費量データ16は、車輛ごとに毎月の燃料消費量を入力し12か月分の合計燃料消費量を算出し、登録車両すべての合計燃料消費量を加算して算出される。
【0028】
走行距離データ14を燃料消費量データ16で除算することにより、ベースライン燃費(燃料消費削減量算定装置10を設置した営業所における登録車輛全体の燃料消費率)が算出される。
なお、本願において、燃焼改善装置装着前の走行データ(車輛の年間走行距離及び年間燃料消費量)をベースラインデータという。また、ベースラインデータに係る車輛の年間走行距離をD
BL(単位キロメートルkm/年)で表し、年間燃料消費量をF
BL(単位リットルL/年)で表す。ベースライン燃費は、D
BL/F
BL(単位km/L)により算出される。
【0029】
燃焼改善装置装着後の登録車両の走行距離データ18は、燃焼改善装置装着前の登録車両の走行距離データ14と同様、登録車輛データ12に記録(登録)された燃焼改善装置装着済み車輛の年間走行距離である。走行距離データ18は、車輛ごとに毎月の走行距離を入力し12か月分の合計走行距離を算出し、登録車両すべての合計走行距離を加算して算出される。
【0030】
燃焼改善装置装着前の登録車両の燃料消費量データ20は、燃焼改善装置装着前の登録車両の燃料消費量データ16と同様、登録車輛データ12に記録(登録)された燃焼改善装置装着済み車輛の年間燃料消費量である。燃料消費量データ20は、車輛ごとに毎月の燃料消費量を入力し12か月分の合計燃料消費量を算出し、登録車両すべての合計燃料消費量を加算して算出される。
【0031】
走行距離データ18を燃料消費量データ20で除算することにより、プロジェクト燃費(燃料消費削減量算定装置10を設置した営業所における燃焼改善装置装着済みの登録車輛全体の燃料消費率)が算出される。
なお、本願において、燃焼改善装置装着後の走行データ(車輛の年間走行距離及び年間燃料消費量)をプロジェクトデータという。また、プロジェクトデータに係る車輛の年間走行距離をD
PJ(単位km/年)で表し、年間燃料消費量をF
PJ(単位L/年)で表す。また、プロジェクトデータの年間燃料消費量F
PJをプロジェクト消費量という。プロジェクト燃費は、D
PJ/F
PJ(単位km/L)で算出される。
【0032】
図3において、CPU28が実行する燃料消費削減量算定表示プログラム22の動作を
図4に基づいて説明する。
図4のフローは、ベースラインデータ及びプロジェクトデータが蓄積された状態でスタートする。
ベースラインデータの年間走行距離D
BLを年間燃料消費量F
BLで除算し、ベースライン燃費D
BL/F
BLを算出する(ステップS1)。
次に、プロジェクトデータの年間走行距離D
PJをベースライン燃費D
BL/F
BLで除算しベースライン消費量(D
PJ×F
BL÷D
BL)を算出する(ステップS2)。
次に、ベースライン消費量(D
PJ×F
BL÷D
BL)からプロジェクト消費量F
PJを減算し、燃料消費削減量を算出して(ステップS3)、その削減量を出力手段26に表示する(ステップS4)。
これにより、燃料消費削減量算定装置10を設置した事業所における燃料消費削減量を可視化することができる。
【0033】
(試験例)
軽油を燃料として走行する車輛(バス)106台を常備する一の事業所の燃料消費削減量を燃料消費削減量算定装置10により算出し、表示したところ、走行データ(ベースラインデータ及びプロジェクトデータ)、燃費および燃費向上率、燃料消費削減量は、
図5のように表示された。
なお、上記車輛(バス)106台は、同車輛を所有する運輸業者が運営する一の整備工場でメンテナンス(車輛の修理、定期点検等)を受けている車輛である。
また、プロジェクトデータは燃焼改善装置装着後1年間の走行データであり、ベースラインデータは燃焼改善装置装着前1年間の走行データである。
(走行データ)
ベースラインデータは、年間走行距離D
BL(登録車輛の年間総走行距離)3,989,750(km/年)、登録車輛の年間燃料消費量F
BL(登録車輛の年間燃料消費量)927,977(L/年)である。
プロジェクトデータは、年間走行距離D
PJ(燃焼改善装置装着済み登録車輛の年間総走行距離)3,950,683(km/年)、プロジェクト消費量F
PJ(燃焼改善装置装着済み登録車輛の年間燃料消費量)868,234(L/年)である。
(燃費および燃費向上率)
ベースライン燃費D
BL/F
BLは4.30(km/L)、プロジェクト燃費D
PJ/F
PJは4.55(km/L)である。燃費向上率は、プロジェクト燃費からベースライン燃費を減算した値をベースライン燃費で除算することにより算出される。上記試験例における燃費向上率は、5.83%となる。
(燃料消費削減量)
ベースライン消費量(D
PJ×F
BL÷D
BL)は、918,890(L/年)と算出され、プロジェクト消費量は、868,234(L/年)であるため、燃料消費削減量は、50,656(L/年)と表示される。
以上のとおり、燃料消費削減量算定装置10により、事業所の燃料消費削減量を数値化(算出)し、表示することができた。
なお、燃料消費削減量は、プロジェクト消費量と燃費向上率の積算によっても算出される。
【0034】
続いて、本発明の二酸化炭素排出削減量算定装置並びに二酸化炭素排出削減量算定表示プログラムについて、
図3及び
図4に基づいて説明する。
本発明の二酸化炭素排出削減量算定装置は、ある位置に所在する事業所に常備されている車輛の年間走行距離及び年間燃料消費量からなる走行データであって、車輛の内燃機関に燃料の燃焼を改善する燃焼改善装置を装着する前の前記車輛のベースラインデータと、前記燃焼改善装置を装着した後の前記車輛のプロジェクトデータとを入力手段を介して入力し、前記プロジェクトデータの年間走行距離を前記ベースラインデータの年間走行距離を当該年間燃料消費量で除算し算出されるベースライン燃費で除算したベースライン消費量に前記車輛の燃料の排出係数を乗算して算出されるベースライン排出量から、前記プロジェクトデータの年間燃料消費量に前記排出係数を乗算して算出されるプロジェクト排出量を減算し、その減算値を出力手段を介して表示させるものである。
また、上記二酸化炭素排出削減量算定装置により実行される本発明の二酸化炭素排出削減量算定表示プログラムは、ベースラインデータの年間走行距離を当該年間燃料消費量で除算したベースライン燃費を算出するステップと、プロジェクトデータの年間走行距離をベースライン燃費で除算したベースライン消費量を算出するステップと、ベースライン消費量に前記車輛の燃料の排出係数を乗算して算出されるベースライン排出量から前記プロジェクトデータの年間燃料消費量に前記排出係数を乗算して算出されるプロジェクト排出量を減算し、二酸化炭素排出削減量を算出するステップと、その二酸化炭素排出削減量を出力手段に表示するステップとを実行させるものである。
【0035】
図3の二酸化炭素排出削減量算定装置34において、記憶装置32には、二酸化炭素(CO
2)排出削減量算定表示プログラム36が記憶されている。その他の構成部については、燃料消費削減量算定装置10において既に説明したため、その説明を省略する。
また、前記排出係数は、車輛の燃料に関する、単位使用料当たりの発熱量HV(単位GJ/L)×単位発熱量当たりの炭素排出量CF(単位tC/GJ)×CO
2換算44/12(単位tCO
2/tC)で表されるものである(地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づく温室効果ガス排出量の算定式における排出係数)。なお、燃料が軽油の場合、発熱量HVは39.1(GJ/kL)であり、炭素排出量CFは0.0189tC/GJ)である。
【0036】
図3において、CPU28が実行するCO
2排出削減量算定表示プログラム36の動作を
図4に基づいて説明する。
図4のフローは、ベースラインデータ及びプロジェクトデータが蓄積された状態でスタートする。
ベースラインデータの年間走行距離D
BLを年間燃料消費量F
BLで除算し、ベースライン燃費D
BL/F
BLを算出する(ステップS1)。
次に、プロジェクトデータの年間走行距離D
PJをベースライン燃費D
BL/F
BLで除算しベースライン消費量(D
PJ×F
BL÷D
BL)を算出する(ステップS2)。
次に、ベースライン消費量に前記車輛の燃料の排出係数を乗算して算出されるベースライン排出量から前記プロジェクト消費量F
PJに前記排出係数を乗算して算出されるプロジェクト排出量を減算し、CO
2排出削減量を算出して(ステップS5)、その削減量を出力手段26に表示する(ステップS6)。
これにより、二酸化炭素排出削減量算定装置34を設置した事業所におけるCO
2排出削減量を可視化することができる。
【0037】
(試験例)
図5の走行データについて、CO
2排出削減量を二酸化炭素排出削減量算定装置34により算出し、表示したところ、CO
2排出削減量は、
図5のように表示された。
(CO
2排出削減量)
ベースライン排出量(D
PJ×F
BL÷D
BL×排出係数)は、2,406(tCO
2)と算出され、プロジェクト排出量(D
PJ×F
BL÷D
BL×排出係数)は、2,274(tCO
2)と算出され、CO
2排出削減量は132(tCO
2)と表示される。
以上のとおり、二酸化炭素排出削減量算定装置34により、事業所のCO
2排出削減量を数値化(算出)し、表示することができた。
【0038】
上記試験例において、
図5の表示画面に表れる数値(表示値)は、入力される数値(入力値)から燃料消費削減量算定装置10及び二酸化炭素排出削減量算定装置34が算出した数値(算出値)の端数を処理したものである。また、算出値は入力値に基づいて算出されるものであり、表示値に基づいて算出されたものではない。
【0039】
燃料消費削減量及びCO
2排出削減量の算定にあたり、年間の車両データを使用とすること及び同じ位置(事業所)からスタートする車輛に限定することにより、4つのシーズンの走行条件による燃料消費削減のばらつきの影響を受けることなく、上記削減量を算出することができる。
また、上例の実施例におけるCO
2排出削減量の算定方法(算定式)が客観的に合理的な算定方法であることについて、本願の特許出願人は、温室効果ガス排出量の第三者審査機関(株式会社日本スマートエナジー、東京都港区西新橋1−4―9)の認証を受けた(株式会社日本スマートエナジー認証番号2305003(自主的排出量認証)、事業名「Eco-Supporter/VehicleによるCO
2排出削減量の算定方法に関する第三者認証」、認証書発行日2012年1月23日)。
【0040】
本発明を用いた燃料消費削減量や二酸化炭素排出削減量の算出によると、事業所によっては、その削減量がマイナスの数値で表示される場合もある。マイナスの数値となる原因としては、例えば、装着された車輛にその燃焼改善装置(の型式)が適合していないケース、その装着車輛の内燃機関に欠陥があるケース等が考えられる。従って、本発明による燃料消費削減量や二酸化炭素排出削減量の可視化(見える化)により、上記各ケースを発見でき、そのケースへの対応が可能になる。
【0041】
また、上記実施例では、車輛の燃料消費削減量や二酸化炭素排出削減量の可視化について述べたが、乾燥機その他の燃焼機器の内燃機関に燃焼改善装置を装着した場合においても、その燃焼機器の燃料消費削減量や二酸化炭素排出削減量を可視化できる。
乾燥機その他の燃焼機器の場合、車輛の場合における「ある位置に所在する事業所に常備されている車輛の年間走行距離及び年間燃料消費量からなる走行データ」は、「ある位置に常設されている乾燥機その他の燃焼機器の年間燃焼時間及び年間燃料消費量からなる燃焼データ」となる。なお、上記実施例において、「走行距離」は、燃焼機器の「燃焼時間」と読み替えるものとする。