特許第5748086号(P5748086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5748086-デュアルクラッチの係脱機構 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5748086
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】デュアルクラッチの係脱機構
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/10 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   F16D25/10 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-241130(P2014-241130)
(22)【出願日】2014年11月28日
【審査請求日】2014年11月28日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514184201
【氏名又は名称】▲高▼野 昌克
(74)【代理人】
【識別番号】100134050
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 昌克
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−220016(JP,A)
【文献】 特開2011−185412(JP,A)
【文献】 特開2005−201372(JP,A)
【文献】 特開2013−079675(JP,A)
【文献】 特開2011−179637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
奇数段のギアセットに繋がる出力軸と偶数段のギアセットに繋がる出力軸とを同軸に配置し、この2つの出力軸に対して動力の伝達を切り替えるデュアルクラッチの係脱機構であって、
前記2つの出力軸のうち内側に位置する第1軸が外側に位置する第2軸よりも突出して配置され、
前記第1軸の突出部分に第1のクラッチディスクが接続され、
前記第2軸にスリーブを介して第2のクラッチディスクが接続され、
前記スリーブは、前記第2軸と回転方向には固定されつつ当該第2軸に対して軸方向に相対移動可能な状態で結合され、
前記第2のクラッチディスクは、前記スリーブと回転方向には固定されつつ当該スリーブに対して軸方向に相対移動可能な状態で結合され、
更に、前記スリーブの一端側に前記第1のクラッチディスクを押圧する為の押圧部材が接続され、他端側にアクチュエータが接続される
ことを特徴とするデュアルクラッチ係脱機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記スリーブと前記押圧部材の間、及び、前記スリーブと前記アクチュエータの間には、軸受が配置されている
ことを特徴とするデュアルクラッチ係脱機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるクラッチの技術分野に関し、特に、奇数段と偶数段とで2系統のクラッチを持つデュアルクラッチの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動力伝達効率の良さや、変速時ショックの小ささ、更には変速時間の短さ等の観点から、奇数段のギアセットに繋がる出力軸と偶数段のギアセットに繋がる出力軸とを同軸に配置し、この2つの出力軸に対して動力の伝達を切り替えるデュアルクラッチの普及が進んでいる。
【0003】
デュアルクラッチには様々な構造のものが存在するが、例えば、特許文献1に記載のデュアルクラッチ40(符号は特許文献1で使用されている符号をそのまま使用している。)においては、エンジンからの動力が伝達されるハウジング41の両面に第1のクラッチディスク42と第2のクラッチディスク43を配置し、第1のクラッチディスク42は第1軸12と接続され、第2のクラッチディスク43は第2軸13(第1軸と同軸に(同芯に)配置されている。)と接続される(特許文献1の特に図2を参照)。
【0004】
第1のプレッシャープレート44は、アクチュエータによってスリーブ27が押されると(特許文献1の図2において左方に押されると)ダイヤフラムスプリング46や作動板44a等を介して連結された第1のプレッシャープレート44を右側に移動させ、これにより第1のクラッチディスク42がハウジング41に押しつけられる。その結果、ハウジング41の回転が第1軸12に伝達される。
【0005】
第2のプレッシャープレート45は、アクチュエータによってスリーブ26が押されると(特許文献1の図2において左方に押されると)ダイヤフラムスプリング47等を介して連結された第2のプレッシャープレート45を左側に移動させ、これにより第2のクラッチディスク43がハウジング41に押しつけられる。その結果、ハウジング41の回転が第2軸13に伝達される。
【0006】
即ち、同軸に配置された2つの出力軸のうち内側に配置された軸(上記従来例においては第1軸12がこれに相当。)に繋がるクラッチを係脱するための操作力を、同軸に配置された2つの出力軸のうち外側に配置された軸(上記従来例においては第2軸13がこれに相当。)に繋がるクラッチの外側から伝えて係脱操作を行う機構となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−281570公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されるデュアルクラッチの係脱機構では、押方向の力をテコの原理を利用して引方向の力に反転させる必要がある。また、第1のプレッシャープレート44に力(操作力)を伝達するために、第2のクラッチディスク43や第2のプレッシャープレート45を覆うように作動板44aを配置する必要がある。その結果、構造が複雑となり部品点数が増加する。また、それに伴い整備性が悪化すると共にコストも増大する。更に、第2のクラッチディスク43や第2のプレッシャープレート45を覆うように作動板44aを配置していることから、第2のクラッチディスク43や第2のプレッシャープレート45の放熱が十分に行われ難いという問題もある。
【0009】
そこで本発明は、同軸に配置された2つの出力軸のうち内側に配置された軸に繋がるクラッチを係脱するための操作力を、同軸に配置された2つの出力軸のうち外側に配置された軸に繋がるクラッチの外側(外周側)から行うことなく伝達でき、構造的にシンプルで整備性がよく、放熱性にも優れ、クラッチディスク径を大きく設計できるため同じサイズであっても動力伝達性能に優れたデュアルクラッチの係脱機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するべく、本願発明は、奇数段のギアセットに繋がる出力軸と偶数段のギアセットに繋がる出力軸とを同軸に配置し、この2つの出力軸に対して動力の伝達を切り替えるデュアルクラッチの係脱機構であって、前記2つの出力軸のうち内側に位置する第1軸が外側に位置する第2軸よりも突出して配置され、前記第1軸の突出部分に第1のクラッチディスクが接続され、前記第2軸にスリーブを介して第2のクラッチディスクが接続され、前記スリーブは、前記第2軸の回転と共に回転し且つ当該第2軸に対して軸方向に相対移動可能な状態で結合され、前記第2のクラッチディスクは、前記スリーブの回転と共に回転し且つ当該スリーブに対して軸方向に相対移動可能な状態で結合され、更に、前記スリーブの一端側に前記第1のクラッチディスクを押圧する為の押圧部材が接続され、他端側にアクチュエータが接続されることを特徴とする。
【0011】
このように、本発明においては、第2軸とスリーブ、及び、スリーブと第2のクラッチディスクを「回転方向には共に回転するも軸方向には相対的に移動可能な結合」、例えば、二重のスプライン結合で結合している。その結果、スリーブが軸方向に動くことが許容されるので、その軸方向の移動を利用して、第1のクラッチディスクを係脱する為の操作力を伝達するのである。
【0012】
このような構成を採用したことによって、第1クラッチディスクを係脱するための操作力の伝達を、第2軸側に接続されるクラッチディスクや押圧部材(プレッシャープレート)を覆うように配置する必要がない。その結果、放熱性に優れると共に、構造的にシンプルで部品点数も少なくて済む。また、第1のクラッチディスクを係脱する為の操作力を伝達する為の部材を、第2軸側に接続されるクラッチディスクや押圧部材(プレッシャープレート)を覆うように配置する必要が無いので、第2のクラッチディスクや押圧部材(プレッシャープレート)が容易に外部から目視でき、整備性も向上する。更に、クラッチディスク径を大きく設計できるため同じサイズであっても動力伝達性能に優れるという利点もある。
【0013】
また、スリーブと押圧部材の間、及び、スリーブとアクチュエータの間に、それぞれ軸受を配置することが望ましい。
【0014】
第1軸と第2軸には、異なる減速比をもつギアセットが接続されるので、第1軸と第2軸は基本的に異なる回転数で回転することになる。しかしながら、このように軸受を配置して構成することによって、軸受部分でその回転差を吸収でき、スリーブ自体は第2軸と常に連動して回転しながらアクチュエータの動きに応じて軸方向に移動することが可能となる。即ち、スムーズな切り替え(第1軸と第2軸の動力伝達の切り替え)が可能となっている。
【発明の効果】
【0015】
本発明を適用することで、同軸に配置された2つの出力軸のうち内側に配置された軸に繋がるクラッチを係脱するための操作力を、同軸に配置された2つの出力軸のうち外側に配置された軸に繋がるクラッチの外側から行うことなく伝達でき、構造的にシンプルで整備性がよく、放熱性にも優れたデュアルクラッチの係脱機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るデュアルクラッチ係脱機構を備えたデュアルクラッチの概略構造図である。
図2図1のA−A線に沿う端面図である。
図3】本発明に係るデュアルクラッチ係脱機構を備えたデュアルクラッチの概略構造図であって、第1軸側に動力が伝達されている状態を示した図である。
図4】本発明に係るデュアルクラッチ係脱機構を備えたデュアルクラッチの概略構造図であって、第2軸側に動力が伝達されている状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例であるデュアルクラッチ係脱機構を備えたデュアルクラッチ100について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際の製品と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。
【0018】
〈デュアルクラッチ係脱機構を備えたデュアルクラッチの構成〉
図1に示すデュアルクラッチ100は、奇数段のギアセットに繋がる出力軸と偶数段のギアセットに繋がる出力軸とを同軸に配置し、この2つの出力軸に対してエンジンからの動力の伝達を切り替える為の装置である。
【0019】
同軸配置された2つの出力軸のうち内側に位置するのが第1軸102、外側に位置するのが第2軸である。第1軸102は、第2軸104よりも突出するように配置構成されている。奇数段のギアセットが第1軸102及び第2軸104のいずれに繋げられるのかは自由である。同様に、偶数段のギアセットが、第1軸102及び第2軸104のいずれに繋げられるのかも自由である。
【0020】
第1軸102は、その先端部分において、ラジアル軸受138を介してエンジンの動力が伝達されてくる回転部材(例えばフライホイール130)に軸支されている。本実施形態におけるフライホイール130は、第1フライホイールディスク132と、この第1フライホイールディスク132から複数の支柱134によって一定の間隔(軸方向間隔)を空けて配置された第2フライホイールディスク136を備える。支柱134は、例えば、円柱形状に構成されている。第2フライホイールディスク134は、ドーナツ形状の部材である。第1フライホイールディスクと支柱134、及び、支柱134と第2フライホイールディスクは、例えばボルトにより連結固定されている。
【0021】
第1フライホイールディスク132に接近して、第1クラッチディスク116が配置されている。第1クラッチディスク116は、第1クラッチディスクリンク部材116a及び第1クラッチディスク基台115を介して第1軸102に固定されており、第1軸102が回転するとそれに伴って第1クラッチディスク116は回転する。また、第1クラッチディスク116は、自由状態では、第1フライホイールディスク132から僅かな隙間をもって離れるように構成されている。
【0022】
第1クラッチディスク116の反第1フライホールディスク132側には、第1プレッシャープレート118が配置される。この第1プレッシャープレート118に軸方向の押圧力が加わると、第1クラッチディスク116を第1フライホイールディスク132に押し当て、それによってフライホイール130の回転が第1軸102に伝達される構成となっている。
【0023】
同様に、第2フライホイールディスク136に接近して、第2クラッチディスク110が配置されている。第2クラッチディスク110は、第2クラッチディスクリンク部材110a及び第2クラッチディスク基台108及びスリーブ106を介して第2軸104に固定されており、第2軸104が回転するとそれに伴って第2クラッチディスク110は回転する。また、第2クラッチディスク110は、自由状態では、第2フライホイールディスク136から僅かな隙間をもって離れるように構成されている。
【0024】
第2クラッチディスク110の反第2フライホールディスク136側には、第2プレッシャープレート112が配置される。この第2プレッシャープレート112に軸方向の押圧力が加わると、第2クラッチディスク110を第2フライホイールディスク136に押し当て、それによってフライホイール130の回転が第2軸104に伝達される構成となっている。また、第2プレッシャープレート112は、第2プレッシャープレートカバー114を介して軸方向に進退動する第2アクチュエータ120に繋がっている。なお、第2プレッシャープレートカバー114と第2アクチュエータ120の間にはスラスト軸受124が配置される。このスラスト軸受124は、第2アクチュエータ120によって軸方向に引かれても分解せず、第2アクチュエータ120の引っ張り力を第2プレッシャープレートカバー114に伝えることが可能となっている。
【0025】
上述した通り、第2クラッチディスク110は、第2クラッチディスクリンク部材110a及び第2クラッチディスク基台108及びスリーブ106を介して第2軸104に固定されているが、第2軸104とスリーブ106の結合及びスリーブ106と第2クラッチディスク基台108の結合は、いずれも、スプライン結合(回転方向には固定されているが軸方向には相対的に移動可能な状態で結合)されている(図2参照)。本実施形態では、スプライン結合によって結合されているが、回転方向に固定されつつ軸方向に相対的に移動可能な結合である限り、それ以外の結合様式を採用することも可能である。
【0026】
スリーブ106は、一端側がスラスト軸受128を介して第1プレッシャープレートカバー119に連結される。またスリーブ106の他端側は、スラスト軸受126を介して軸方向に進退動する第1アクチュエータ122に繋がっている。なお、これらスラスト軸受126、128は、第1アクチュエータ122によって軸方向に引かれても分解せず、第1アクチュエータ122の引っ張り力を第1プレッシャープレートカバー119に伝えることが可能となっている。
【0027】
このように、第2軸104に対して二重にスプライン結合を施すことによって、第2軸104の回転を、スリーブ106を介して第2クラッチディスク基台108に伝達しつつ、スリーブ106自体は、第1アクチュエータ122の進退動に連動して軸方向に自由に動くことができる構成となっている。
【0028】
〈デュアルクラッチ係脱機構の作用・機能〉
図1は、所謂ニュートラル状態にあり、フライホイール130の回転は、第1軸102にも第2軸104にも伝達されていない。
【0029】
図3に示しているように、第1アクチュエータ122が作動して軸方向に進動すると、スラスト軸受126、スリーブ106、スラスト軸受128及び第1プレッシャープレートカバー119を介して第1プレッシャープレート118が軸方向に進動し、第1クラッチディスク116を第1フライホイールディスク132に押し当てる。これにより、フライホイール130の回転が、第1軸102に伝達されることとなる。
【0030】
所望の段階で、動力の伝達を、第1軸102側から第2軸104側へ切り替える必要が生じるが、その場合は、第1アクチュエータ122を退動させると共に第2アクチュエータを進動させることによって切り替えられる。
【0031】
図4に示しているように、第2アクチュエータ120が作動して軸方向に進動すると、スラスト軸受124及び第2プレッシャープレートカバー114を介して第2プレッシャープレート112が軸方向に進動し、第2クラッチディスク110を第2フライホイールディスク136に押し当てる。これにより、フライホイール130の回転が、第2軸104に伝達されることとなる。
【0032】
以降はこの繰り返しによって、フライホイール130の回転が、第1軸102若しくは第2軸104のいずれかに伝達されるように切り替えられる。
【0033】
このように、第2軸104とスリーブ106、及び、スリーブ106と第2クラッチディスク基台108とはそれぞれスプライン結合、換言すると「回転方向には共に回転するも軸方向には相対的に移動可能な結合」によって結合されている。その結果、スリーブ106が軸方向(スラスト方向)に自由に動くことが許容されるので、その軸方向の移動を利用して、第1クラッチディスク116を係脱する為の操作力(第1アクチュエータ122が進退動する力)を伝達するのである。
【0034】
換言すると、同軸配置された2つの出力軸のうち内側に位置する第1軸102を外側に位置する第2軸104よりも突出して配置し、第1軸102の突出部分に第1クラッチディスク116を接続し、第2軸104にスリーブ106を介して第2クラッチディスク110を接続し、第2軸104とスリーブ106及びスリーブ106と第2クラッチディスク110をそれぞれスプライン結合することによって、スリーブ106の軸方向の移動を構造的に許容させ、このスリーブ106の軸方向の動きによって、第1クラッチディスク116の係脱を行うのである。
【0035】
このような構成を採用したことによって、第1クラッチディスク116を係脱するための操作力の伝達を、第2軸104側に接続される第2クラッチディスク110や押圧部材(第2プレッシャープレート112)を覆うように配置する必要がない。その結果、放熱性に優れると共に、構造的にシンプルで部品点数も少なくて済む。また、第1クラッチディスク116を係脱する為の操作力を伝達する為の部材を、第2軸104側に接続される第2クラッチディスク110や押圧部材(第2プレッシャープレート112)を覆うように配置する必要が無いので、第2クラッチディスク110や押圧部材(第2プレッシャープレート112)が容易に外部から目視でき、整備性も向上する。更に、クラッチディスク径を大きく設計できるため同じサイズであっても動力伝達性能に優れるという利点もある。
【0036】
また、スリーブ106と第1プレッシャープレートカバー119の間にスラスト軸受128を配置し、更に、スリーブ106と第1アクチュエータ122の間にもスラスト軸受126を配置している。
【0037】
第1軸102と第2軸104には、異なる減速比をもつギアセット(図示していない)が接続されるので、第1軸102と第2軸104は基本的に異なる回転数で回転することになる。しかしながら、このようにスラスト軸受126、128を配置して構成することによって、これら軸受126、128部分でその回転差を吸収でき、スリーブ106自体は第2軸104と常に連動して回転しながら第1アクチュエータ122の動きに応じて軸方向に移動することが可能となる。即ち、スムーズな切り替え(第1軸102と第2軸104の動力伝達の切り替え)が可能となっている。
【0038】
〈その他の構成例〉
なお上記は、あくまで本発明を適用した一つの具体的な実施例であって、本発明は上記説明した具体的な構造に限定されるものではない。例えば、上記は第1軸側のクラッチも第2軸側のクラッチも、所謂「単板」の構成として説明しているが、「多板」の構成にも問題なく適用することが可能である。また、上記では特段説明していないが、本発明のデュアルクラッチ係脱機構は、乾式のデュアルクラッチにも湿式のデュアルクラッチにも問題なく適用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
100・・・デュアルクラッチ
102・・・第1軸
104・・・第2軸
106・・・スリーブ
108・・・第2クラッチディスク基台
110・・・第2クラッチディスク
110a・・・第2クラッチディスクリンク部材
112・・・第2プレッシャープレート
114・・・第2プレッシャープレートカバー
115・・・第1クラッチディスク基台
116・・・第1クラッチディスク
116a・・・第1クラッチディスクリンク部材
118・・・第1プレッシャープレート
119・・・第1プレッシャープレートカバー
120・・・第2アクチュエータ
122・・・第1アクチュエータ
124、126、128・・・スラスト軸受
130・・・フライホイール
132・・・第1フライホイールディスク
134・・・支柱
136・・・第2フライホイールディスク
138・・・ラジアル軸受
【要約】
【課題】
構造的にシンプルで整備性がよく、放熱性にも優れたデュアルクラッチの係脱機構を提供する。
【解決手段】
同軸配置された2つの出力軸のうち内側に位置する第1軸102を外側に位置する第2軸104よりも突出して配置し、第1軸102の突出部分に第1クラッチディスク116を接続し、第2軸104にスリーブ106を介して第2クラッチディスク110を接続し、第2軸104とスリーブ106及びスリーブ106と第2クラッチディスク110をそれぞれスプライン結合することによって、スリーブ106の軸方向の移動を構造的に許容させ、このスリーブ106の軸方向の動きによって、第1クラッチディスク116の係脱を行う。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4