【実施例1】
【0045】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、循環仕様でタンク内にて被冷却物を冷却するウォータチラーについて説明する。
【0046】
<実施例1の構成>
図1は、本発明のチラーの実施例1を示す概略構成図である。本実施例1のチラー1は冷凍機2を備えており、この冷凍機2は圧縮式冷凍機とされる。圧縮式冷凍機は、圧縮機3、凝縮器4、前記第一流量制御膨張機構としての第一電子膨張弁5および蒸発器6を備え、冷媒の圧縮、凝縮、膨張および蒸発の冷凍サイクルを実行する。
【0047】
圧縮機3は、冷媒を圧縮して高温高圧のガスにする。圧縮機3からのガスは、油分離器(図示省略)を介して凝縮器4へ送られる。圧縮機3は、その形式を特に問わないが、たとえばスクロール圧縮機が用いられる。圧縮機3は、
図1では簡略化して図示しているが、複数台の圧縮機(図示省略)の台数制御と、1台の圧縮機(図示省略)回転数制御可能な圧縮機の回転数制御との組合せにより、第一運転および第二運転時の容量制御を可能に構成している。
【0048】
凝縮器4は、圧縮機3からのガスを凝縮液化する。本実施例1の凝縮器4は、ファン(
図示省略)を備える空冷式の熱交換器である。凝縮器4からの冷媒は、受液器7を介して第一電子膨張弁5へ送られる。受液器7は、凝縮器4で液化された冷媒を一時的に貯蔵する。
【0049】
第一電子膨張弁5は、閉止機能,蒸発器6の負荷に応じた開度調整による流量制御機能および減圧膨張機能を単一の弁で行うものであり、公知のものを用いる。第一電子膨張弁5は、つぎの構成で制御される。すなわち、受液器7の下流側の液冷媒温度を検出する第一温度センサ8と、蒸発器6の下流側の冷媒温度,冷媒圧力を検出する第二温度センサ9および第一圧力センサ10と、これらセンサ8,9,10の信号を入力する第一制御器11により、第一電子膨張弁5の開閉と開度とが制御される。第一温度センサ8の信号は、後記第三制御器25を介して第一制御器11へ入力される。
【0050】
第一電子膨張弁5は、凝縮器4からの液化冷媒を通過させることで、冷媒の圧力を低下させる。そして、蒸発器6は、冷媒の蒸発により、二次側の水から熱を奪う熱交換器である。蒸発器6は、一次側の冷媒流路12と二次側の水流路13とを有し、冷媒と水とを混ぜることなく、冷媒と水とで熱交換させる間接熱交換器である。本実施例1の蒸発器6は、プレート式熱交換器とされる。
【0051】
蒸発器6にて気化された冷媒は、アキュムレータ(図示省略)を介して圧縮機3へ戻される。冷凍機2は、以上のように構成されることで、冷凍サイクルを実行可能とされる。
【0052】
本実施例1の冷凍機2は、さらに、第一電子膨張弁5の上流側と蒸発器6の下流側とを接続し、前記第二流量制御膨張機構としての第二電子膨張弁14および大気から吸熱して液冷媒が蒸発する補助熱交換器15を設けたバイパス路16を備えている。
【0053】
第二電子膨張弁14は、閉止機能,補助熱交換器15の負荷に応じた開度調整による流量制御機能および減圧膨張機能を単一の弁で行うものであり、公知のものを用いる。第二電子膨張弁14は、つぎの構成で制御される。すなわち、受液器7の下流側の液冷媒温度を検出する第一温度センサ8と、補助熱交換器15の下流側の冷媒温度,冷媒圧力を検出する第三温度センサ17および第二圧力センサ18と、これらセンサ8,17,18の信号を入力する第二制御器19により、第二電子膨張弁14の開閉と開度とが制御される。第一温度センサ8の信号は、後記第三制御器25を介して第二制御器19へ入力される。
【0054】
図1において、二点鎖線で囲む部分がチラー1であり、このチラー1にユースポイントであり、冷水負荷としての冷水タンク20が設けられる。蒸発器6の二次側の水流路13と接続される被冷却水の導入路21には、蒸発器6の水流路13へ被冷却水を送り込むためのポンプ22が設けられる。冷水タンク20は、冷却水の導出路23を介して蒸発器6の一次側の水流路13と接続されている。冷水タンク20には、冷水タンク20と別の負荷(図示省略)へ冷水を供給する供給路(図示省略)と負荷からの戻り路(図示省略)を接続することができる。
【0055】
なお、
図1において、一点鎖線で囲む部分が、チラー1の凝縮ユニット24である。本実施例1では、バイパス路16を、凝縮器4の上流側に接続する必要がないので、凝縮ユニット24を凍結防止運転のために特別に改造する必要がない。
【0056】
第三制御器25は、第一温度センサ8,第一電子膨張弁5の下流側の冷媒温度を検出する第四温度センサ26などの信号を入力して、予め記憶した制御手順(制御プログラム)により、圧縮機3,第一電子膨張弁5,第二電子膨張弁14およびポンプ22などを制御する。
【0057】
第三制御器25の制御手順には、第一運転(冷却運転)を行う手順である第一運転制御手順と、第二運転(暖機運転)を行う手順である第二運転制御手順と、チラー起動時および第一運転時の暖機運転制御とが実行されるように構成されている。
【0058】
第一運転は、第一温度センサ8により検出される受液器7の下流側の液冷媒温度が第二設定値T2(第一設定値T1よりディファレンシャル分だけ高い値)以上の場合、第一電子膨張弁5を開き、第二温度センサ9および第一圧力センサ10からの信号に基づき開度調節をしながら蒸発器6へ液冷媒を導入すると共に、第二電子膨張弁14を閉じて補助熱交換器15への液冷媒の導入を停止する運転である。第一設定値T1は、第一設定値T1を下回ると蒸発器6で被冷却液である水が凍結するおそれのある温度で、本実施例1では6℃とし、第二設定値T2は、6℃+ΔT℃としている。ΔTは、例えば3℃とする。
【0059】
第二運転は、第一温度センサ8により検出される受液器7の下流側の液冷媒温度が第二設定値T1以下の場合、第一電子膨張弁5を閉じて蒸発器6への液冷媒の導入を停止すると共に、第二電子膨張弁14を開き、第三温度センサ17および第二圧力センサ18からの信号に基づき開度調節をしながら補助熱交換器15へ液冷媒を導入する運転である。
【0060】
暖機運転制御手順は、第一温度センサ8の検出値により第一運転と第二運転とを切り替える,すなわち第一温度センサ8の検出値が第一設定値T1以下の場合、第二運転を行い、前記検出値が第二設定値T2以上の場合、第一運転を行う手順であり、
図2に手順の一例を示す。この暖機運転制御手順には、第四温度センサ26の検出値が第三設定値T3(第一設定値T1より低い値,例えば−4.5℃に設定)以下となると、チラーの運転を停止して(具体的には、圧縮機3を停止し、ポンプ22を運転)、蒸発器6での凍結を防止する凍結防止運転制御が含まれている。凍結防止運転は、第二運転を第一凍結防止運転とすれば、第二凍結防止運転ということができる。
【0061】
<実施例1の動作>
本実施例1の動作を説明する。
図2を参照して、処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNという。)において、チラー1の運転開始かどうかを判定する。チラー1の運転開始および停止は、運転スイッチ(図示省略)の開始操作および停止操作により行われる。
【0062】
S1にてYESが判定されると、S2へ移行して、第一温度センサ8による検出値Tが第一設定値T1以下かどうかを判定する。今、外気温が低く、第一電子膨張弁8の上流側の液冷媒温度が第一設定値未満になっていたとする。今の場合、S2でYESが判定され、S3へ移行して第二運転が行われる。
【0063】
この第二運転では、
図1を参照して、第一電子膨張弁5を閉じ、第二電子膨張弁14を開き、凝縮器4のファンを停止した状態で、圧縮機3を起動する。なお、ポンプ22は、S1にてYESが判断されたときから起動され、第二運転中および後記第一運転中停止されることなく、運転を続ける。第一電子膨張弁5を閉じるので、蒸発器6への液冷媒の導入が停止される。その結果、蒸発器6では、蒸発作用が停止され、凍結が防止される。
【0064】
また、第二電子膨張弁14の開度が第二温度センサ9と第一圧力センサ10からの信号を入力した第一制御器11により調整され、補助熱交換器15へ液冷媒が減圧して導入される。また、圧縮機3は、回転数制御可能な圧縮機の回転数を補助熱交換器15の容量に合わせた所定の回転数で回転制御される。
【0065】
その結果、補助熱交換器15にて蒸発作用が行われ、大気より吸熱されるとともに、凝縮器4での放熱がファンの停止により最小限とされる。また、蒸発器6での放熱もない。
このため、補助熱交換器15での吸熱量と、圧縮機3による仕事量に相当する熱量とで、前記第一膨張弁5の上流側の液冷媒の温度が速やかに上昇することになる。
【0066】
また、圧縮機3を所定の容量で運転するので、補助熱交換器15へ過剰に冷媒が供給されることが防止され、補助熱交換器15の容量を小さくしても第二運転を支障なく行える。
【0067】
図2を参照して、第二運転中において、S4の処理が実行される。S4では、運転停止操作が行われたか、または運転停止が必要な異常が生じたかどうかを判定する。運転停止が必要な異常の一つは、第四温度センサ26による検出温度が第三設定値T3以下を検出した場合である。S4でYESが判定されると、S8へ移行して、運転停止処理が行われる。運転停止処理は、圧縮機3、ポンプ22を停止し、第一電子膨張弁5および第二電子膨張弁14を閉じる処理である。
【0068】
S4でNOが判定されると、S5へ移行し、第一温度センサ8による検出値Tが第二設定値T2以上かどうかを判定する。第二運転により、第一電子膨張弁5の上流側の液冷媒温度が上昇し、第二設定値T2以上(YES)が判定されると、S6へ移行する。S5でNOが判定されると、S3の第二運転が継続される。
【0069】
S6では、第一運転が行われる。この第一運転では、第一電子膨張弁5が開き、蒸発器6の冷媒流路12へ液冷媒が減圧されて導入される。上述のように、S1でYESが判断されたときから、ポンプ22が運転され、蒸発器6の水流路13には、冷水タンク20から水が循環供給されている。その結果、冷媒流路12での冷媒の蒸発作用により水流路13の水が冷却される。同時に、第二電子膨張弁14が閉じられ、補助熱交換器15への液冷媒の導入が停止される。その結果、補助熱交換器15での蒸発作用は行われないので、無駄な吸熱が防止される。
【0070】
第一運転中において、S7の処理が実行される。S7は、S4と同様の処理である。S7でYESが判定されると、S8へ移行して運転停止処理が行われる。S7でNOが判定されると、S2に戻って、S2の処理が行われる。
【0071】
これは、第一運転中において、第一温度センサ8の検出温度Tが第一設定値T1以下となり、蒸発器6の凍結する場合があるので、これを防止する第二運転をおこなうためである。S2でYESが判定されると、前述のようにS3で第二運転が行われる。その結果、第一電子膨張弁5の上流側の液冷媒の温度を速やかに上昇させた後、S6の第一運転に復帰することができる。
【0072】
次に、実施例1の好ましい具体的適用例を
図3に基づき説明する。
図3では、実施例1のチラー1と同じ複数台のチラー1A,1B,1Cを冷水タンク20に対して並列に接続したチラーシステムとしている。このチラーシステムは、各チラー1A,1B,1C毎にポンプ22を設けるのではなく、共通の1台のポンプ22としてシステム構成を簡素化した点に特徴がある。
【0073】
従来のチラーでは、チラー1A,1B,1Cのいずれかで凍結防止運転をするためにポンプを停止する必要が生じ、他のチラーでは凍結防止運転を行う必要がなく、ポンプを停止する必要がない事態が生ずる。こうした場合、1台のポンプで水を供給するように構成することができないが、本実施例1のチラー1によれば、第二運転時もポンプ22を停止することがないので、
図3のようにチラーシステムを簡素化して構成することができる。
【0074】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではなく、例えば、第一電子膨張弁5、第
二電子膨張弁14は、開閉のみを行う液電磁弁(図示省略)と、これと別体の開度調整を行う膨張弁(図示省略)との組合せに代えることができる。この場合、第一制御器11,第二制御器19は、不要となり、第三制御器25により液電磁弁の開閉を制御することで、液冷媒の導入、停止の制御を実現する。また、前記実施例1では、第一電子膨張弁5、第二電子膨張弁14の上流側の液冷媒温度を検出する第一温度センサ8により第一電子膨張弁5と第二電子膨張弁14への液冷媒の流れを切り替えるように構成しているが、第一電子膨張弁5、第二電子膨張弁14の上流側の液冷媒圧力を検出する圧力センサ(図示省略)により液冷媒の流れ切り替えるように構成することができる。