(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該空気通路を開放または閉鎖する弁部材と、該弁部材を該空気通路を開放する位置、または該空気通路を閉鎖する位置に切り替える切替ノブとを有する切替部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の打込機。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の第1の実施の形態に係る打込機について、図面を参照して説明する。
図1に示される打込機の一例である釘打機1は、止具である釘を打ち込む工具であり、その動力として、圧縮空気が用いられる。
【0019】
図1及び
図2に示すように、釘打機1は、本体2と、後述するピストン21の摺動方向に対して略垂直方向に延びるハンドル部3と、打ち込み時に被打込材(図示せず)に対して略垂直方向に位置するノーズ部4と、ノーズ部4に供給する釘を保持するマガジン5と、打ち込み力を切り替えるための切替部6と、から主に構成されている。なお、以下では、ピストン21の摺動方向であって、本体2からノーズ部4に向かう方向を下方向、その反対方向を上方向と呼ぶ。また、本体2及びハンドル部3によりハウジングが構成されている。
【0020】
図2に示すように、釘打機1の本体2及びハンドル部3内には、圧縮空気を蓄積する蓄圧室2aが形成されている。蓄圧室2aは、エアホース(図示せず)を介して空気圧縮機(図示せず)と接続され、空気圧縮機からの圧縮空気を蓄積する。本体2の切替部6近傍には、第1空気通路2b及び第2空気通路2cが形成されている。また、本体2の上部には、外部と連通する図示せぬ排気口が形成されている。
【0021】
本体2とハンドル部3との接続部には、作業者によって操作されるトリガ10と、ノーズ部4の下端から突き出しトリガ10近傍まで延びるプッシュレバー11と、後述するヘッドバルブ室2gに連通して圧縮空気を送排気する切替弁であるトリガバルブ部12と、が設けられている。
【0022】
プッシュレバー11は、本体2からノーズ部4側に付勢されてノーズ部4に沿って上下方向に移動可能である。本体2には図示せぬ制御通路が形成されており、トリガバルブ部12は制御通路によって後述のヘッドバルブ室2gと繋がっている。プッシュレバー11の下端部を被打込材に押し当てる操作を行うことにより、プッシュレバー11の上端部は、プッシュレバープランジャを上方向に移動させる。上方向に移動したプッシュレバープランジャの上端部は、アームプレートと当接する。この状態でトリガ10の引き操作を行うことにより、アームプレートはトリガバルブ部12のプランジャ123と当接して上方向に移動させる。これにより、圧縮空気がピストン21に作用し、打ち込み動作が行われる。
【0023】
トリガ10の引き操作と、プッシュレバー11の被打込材への押し当て操作との両方が行われた時に、プランジャ123が押し上げられるように構成される。
【0024】
トリガバルブ部12は、バルブブッシュ121と、バルブピストン122と、プランジャ123と、スプリング124と、Oリング125、126とから構成される。トリガ10の引き操作及びプッシュレバー11の押し当て操作が行われていない状態において、バルブピストン122は上死点に位置し、プランジャ123は下死点に位置する。この状態において、バルブピストン122とOリング125との間の隙間が閉じ、トリガバルブ室127は大気から遮断されるとともに、プランジャ123とOリング126との隙間から蓄圧室2a内の圧縮空気がトリガバルブ室127内に流入する。そして、トリガバルブ室127と連通するヘッドバルブ室2g内にも圧縮空気が流入する。また、トリガ10の引き操作及びプッシュレバー11の押し当て操作が行われた状態において、バルブピストン122は下死点に位置し、プランジャ123は上死点に位置する。この状態において、バルブピストン122とOリング125との間の隙間が生じ、トリガバルブ室127と大気とが連通してトリガバルブ室127内の圧縮空気が排気される。また、プランジャ123とOリング126との隙間が閉じ、トリガバルブ室127は蓄圧室2aから遮断される。そして、トリガバルブ室127と連通するヘッドバルブ室2gは図示せぬ制御通路を介して大気と連通し、ヘッドバルブ室2g内の圧縮空気が排気される。
【0025】
本体2は、その内部に、円筒状のシリンダ20と、シリンダ20内で上下に摺動(往復動)可能なピストン21と、略ピストン21と一体に形成されたドライバブレード22と、シリンダ20の下端部に設けられたピストンバンパ23と、ピストンバンパ23の下方に設けられたバンパホルダ24と、ヘッドバルブ25とを備える。ヘッドバルブ25は、本発明における「メインバルブ」に相当する。
【0026】
シリンダ20は、上死点(
図8)と、下死点(
図7)とに位置することが可能である。シリンダ20は、その内面でピストン21を摺動可能に支持し、シリンダ20外周と本体2内面との間には、環状のシリンダプレート2Dが設けられている。シリンダプレート2Dは、シリンダ20と本体2との間の空間を上下に分割するとともに、上の空間と下の空間との間をOリングによりシールする。上の空間はハンドル部3内の空間とともに蓄圧室2aを形成する。また、下の空間は、ピストン3を上死点に復帰させるための圧縮空気を貯める戻り空気室2eを形成する。シリンダ20の軸方向中央部には逆止弁20Aが備えられ、シリンダ20内からシリンダ20外の戻り空気室2eへの一方向にのみ圧縮空気の流入が許容されている。また、シリンダ20の下方には、戻り空気室2eに常時開放されている第3空気通路20bが形成されている。また、シリンダ20には、シリンダプレート2Dの下方に位置し、外周面から半径方向外方に突出する当接部20Cが設けられている。更に、シリンダ20の下端部は突き当て部20Dを有している。
【0027】
ピストン21は、シリンダ20内において上死点と下死点との間を上下方向に摺動可能に設けられている。ピストン21の外周には、Oリング21Aが設けられている。Oリング21Aは、ピストン21とシリンダ20との間をシールする。また、ドライバブレード22は、ピストン21の下面の略中心から下方に延びるように、ピストン21と一体的に形成される。また、シリンダ20内は、ピストン21により、ピストン上室とピストン下室とに区画されている。打ち込み時において、ピストン21に圧縮空気が作用すると、ピストン21とともにドライバブレード22が急激に下降し、射出通路40a内を移動して、釘に打込力を与える。
【0028】
ピストンバンパ23は、シリンダ20の下端部であって、ピストン21の下死点付近に設けられている。ピストンバンパ23は、ゴム等の可撓性材料から形成され、圧縮空気により下降するピストン21が有する打ち込みエネルギーから釘の打ち込みにより消費されたエネルギーを差し引いたエネルギー(余剰エネルギー)を吸収する。また、ピストンバンパ23は、シリンダ20の中心軸に沿って貫通し、ドライバブレード22が挿通されている貫通孔を有し、ピストンバンパ23の外周面は、上に向かうにつれて外径が小さくなるように傾斜したテーパ状をなしている。
【0029】
図3に示すように、バンパホルダ24は、ピストンバンパ23の下方に設けられ、ピストンバンパ23を支持し、上下方向に摺動するものである。バンパホルダ24は、環状に構成され、その中心部には、ドライバブレード22が挿通されている貫通孔24aが形成されている。また、バンパホルダ24は、環状に下方向に凹み、ピストンバンパ23の下端部を支持する凹部24bを有する。また、バンパホルダ23の外周上端部は、シリンダ20の突き当て部20Dに当接している。
【0030】
また、バンパホルダ24は、その下方に圧縮空気が流入した際に、
図4に示すように、上方に移動し後述するノーズ部4の凹部41bとともにバンパ下室41cを画成する。バンパホルダ24が上方に移動したときには、シリンダ20を上方に押し上げるように構成されている。しかし、シリンダ20の当接部20Cがシリンダプレート2Dに当接すると、バンパホルダ24及びシリンダ20上昇が停止し、シリンダ20のヘッドバルブ25への接近が規制される。なお、当接部20Cがシリンダプレート2Dに当接した状態において、シリンダ20は上死点に位置している。バンパ下室41cは、バンパホルダ24の周囲に設けられたOリングにより本体2内部との間をシールされ、切替部6により、バンパ下室41c内部への圧縮空気の流入を制御される。
【0031】
図2に示すように、ヘッドバルブ25は、シリンダ20の上側に配置されていて、図示せぬ排気口と連通可能な図示せぬ空気通路が形成されている。本体2には、ヘッドバルブ25が収容されるヘッドバルブ室2gが形成され、ヘッドバルブ室2gは、図示せぬ制御通路を介してトリガバルブ部12と連通している。ヘッドバルブ室2gには、ヘッドバルブ25を下方に付勢するヘッドバルブスプリング26が配置されている。
図2に示す初期状態では、ヘッドバルブ室2gは圧縮空気で満たされており、ヘッドバルブ25はヘッドバルブ室2g内の圧縮空気とヘッドバルブスプリング26とによって下側に付勢されている。ヘッドバルブスプリング26がヘッドバルブ25を下方に付勢する力は、蓄圧室2aの圧縮空気がヘッドバルブ25を上方向に押上げる力よりも小さい。従って、
図7に示すようにヘッドバルブ室2gの圧縮空気が放出されて大気圧となった時、圧縮空気によりヘッドバルブ25はヘッドバルブスプリング26の付勢力に抗して上方向に移動する。なお、
図2においてヘッドバルブ25は、シリンダ20に当接し圧縮空気のピストン21への作用を遮断する遮断位置に位置し、
図7及び
図8においてヘッドバルブ25は、シリンダ20から離間し圧縮空気をピストン21へ作用させる作用位置に位置している。
【0032】
ノーズ部4は、
図2に示すように、ドライバブレード22が釘に好適に接触し、被打込材の所望の位置に打ち込むことができるように、釘及びドライバブレード22をガイドする。ノーズ部4は、射出部40と、射出部40と本体2とを接続する接続部41とから構成されている。なお、プッシュレバー11は射出部40の外面に沿って上下方向に移動可能に設けられている。
射出部40は、釘が複数本束ねられて連結された釘の束を内蔵するマガジン5から供給される釘が下方向に打ち込まれるように、ドライバブレード22及び釘を案内する。射出部40は、釘2及びドライバブレード22がガイドされる射出通路40aを内部に有する。また、射出部40は、下方向先端部に、釘が射出される射出孔40bを有する。
【0033】
接続部41は、本体2の下方開口部を覆うように設けられている。接続部41の上面には、
図2及び
図3に示すように、ドライバブレード22が挿通する管状部41Aが、本体2の内方に突出するように設けられている。また、管状部41Aの周囲には、環状に下方向に凹んだ凹部41bが形成されている。凹部41bには、ダンパホルダ24が嵌合する。また、
図4に示すように、凹部41bと、ダンパホルダ24の下面とにより、バンパ下室41cが画成される。
【0034】
マガジン5は、複数本の釘を収容し、
図2に示すように、ハンドル部3の下方に設けられる。マガジン5内に収容された釘は、圧縮空気と弾性部材により往復動可能なフィーダにより、射出通路40aへ順次、給送される。
【0035】
切替部6は、蓄圧室2aと連通する第1空気通路2bと、バンパ下室41cと連通する第2空気通路2cとの連通または遮断を切り替えるバルブである。
図5及び
図6に示すように、切替部6は、切替ノブ60と、弁部材61と、スプリング62と、回転軸部63とから構成される。
【0036】
切替ノブ60は、作業者が打ち込み力を調整するために操作する部分であって、回転軸部63を中心に本体2に対して回転可能に設けられている。切替ノブ60の弁部材61に対向する端部は、回転軸部63の中心軸に対して傾斜するテーパ面60Aをなしている。また、切替ノブ60は、テーパ面60Aのうち弁部材61に向かって突出している突出部60Bを有する。
【0037】
弁部材61は、切替ノブ60の回転操作により、本体2に形成された通路2f内を摺動し、第1空気通路2bと第2空気通路2cとを連通または遮断するものである。弁部材61の切替ノブ60に対向する端部は、回転軸部63の中心軸に対して傾斜するテーパ面61Aをなしている。また、弁部材61は、テーパ面61Aのうち切替ノブ60に向かって突出している突出部61Bを有する。また、弁部材61の外周部には、内径方向に凹む凹部61cが環状に形成されている。また、弁部材61には、凹部61cを挟むように、凹部61cにより形成される圧縮空気の通路と大気との間をシールするためのOリング64、65が設けられる。
【0038】
スプリング62は、通路2f内に設けられ、弁部材61を切替ノブ60に向かう方向(
図5及び
図6において左方向)に付勢している。また、回転軸部63は、回転ノブ60を本体2に対して回転可能に支持する。
【0039】
図5に示す状態において、切替ノブ60は、テーパ面60Aの傾斜方向と弁部材61のテーパ面61Aの傾斜方向とが略等しい状態で、弁部材61と当接している。この状態では、第1空気通路2bと第2空気通路2cとの連通は遮断されている。そして、第2空気通路2cは、排気口66を介して大気と連通している。この状態から、切替ノブ60が略180°回転操作されると、切替ノブ60のテーパ面60Aのうち弁部材61に向かって突出している突出部60Bは、弁部材61のテーパ面61Aに沿って移動するため、弁部材61はスプリング62に抗して切替ノブ60から離れる方向(
図6において右方向)に移動する。そして、
図6に示すように、切替ノブ60の突出部60Bは、弁部材61の突出部61Bと当接する。この状態では、第1空気通路2bと第2空気通路2cとは凹部61cを介して連通する。そして、蓄圧室2a内の圧縮空気は、第1空気通路2b、切替部6の凹部61cを通って、第2空気通路2cへ流入する。これにより、バンパホルダ41が上方へ移動し、凹部41bと、ダンパホルダ24の下面とにより、バンパ下室41cが画成される。
【0040】
次に、本実施形態に係る釘打機1の動作について説明する。
【0041】
まず、比較的長い釘を打ち込む際の釘打機1の動作について説明する。この場合、作業者は、切替ノブ60を回転操作することにより、切替ノブ60を、
図5に示す状態、すなわち切替ノブ60のテーパ面60Aと弁部材61のテーパ面61Aとが傾斜方向が略等しい状態で当接している状態に位置させる。これにより、第1空気通路2bと第2空気通路2cとは、遮断された状態になる。従って、蓄圧室2a内の圧縮空気は、バンパホルダ24の下方に流入せず、バンパ下室41cは画成されない。よって、バンパホルダ24及びシリンダ20は上方に移動しない。また、蓄圧室2a内の圧縮空気は、図示せぬ制御通路を介してヘッドバルブ室2gへ流入し、ヘッドバルブ25を下方に押下げることでヘッドバルブ25とシリンダ20を密着させ、シリンダ20に圧縮空気が流入することを防止する。すなわち、圧縮空気により、ヘッドバルブ25は遮断位置に位置している。また、シリンダ20は、ヘッドバルブ25及びヘッドバルブスプリング26によって下側に付勢され、下死点に位置している。
【0042】
作業者がプッシュレバー11を被打込材に押し付けた状態でトリガ10を引くと、プランジャ123が押上げられてトリガバルブ部12が図示せぬ制御通路を外気と連通させ、ヘッドバルブ室2gが大気圧となる。蓄圧室2aに蓄えられた圧縮空気とヘッドバルブ室2gとの差圧によって、ヘッドバルブ25が、遮断位置(
図2)から離間位置(
図7)に移動する。これにより、
図7の矢印に示すように、蓄圧室2aに蓄えられた圧縮空気が、ヘッドバルブ25とシリンダ20との間から流入しピストン21に作用して、ピストン21を押し下げる。
【0043】
これにより、ピストン21がシリンダ20内を下降するとともに、ドライバブレード22が射出通路40a内を下降し、射出通路40a内の釘を打撃する。このとき、ピストン下室の空気は、空気通路20bを介して戻り空気室2eに流入する。そして、ピストン21が逆止弁20Aを通過すると、ピストン上室内の圧縮空気の一部が逆止弁20Aを介して戻り空気室2eに流入し、ピストン21を上死点に復帰させるために用いられる。また、ドライバブレード22とともに下降した釘は、被打込材に打ち込まれる。このとき、釘打機1は、バンパ下室41cが画成されていないため、ドライバブレード22の先端部が射出孔40bから突出する量が大きく、長い釘であっても、被打込材に対し十分打ち込むことができる。そして、下死点において、ピストン22はピストンバンパ23と衝突する。ピストン22と衝突したピストンバンパ23は、変形することによりピストン22の打ち込み後の余剰エネルギーの一部を吸収する。
【0044】
その後、作業者がトリガ10を戻すと、プランジャ123が戻り圧縮空気が図示せぬ制御通路を介してヘッドバルブ室2gに供給される。これにより、ヘッドバルブ25は、下方向(遮断位置)へと移動する。そして、ピストン上室が図示せぬ空気通路を介して図示せぬ排気口と連通して、ピストン上室は大気圧となる。そうすると、戻り空気室2eに蓄えられた圧縮空気は空気通路20bを介してピストン下室に流入する。これにより、ピストン22が上方に押上げられて、
図2に示す初期状態となる。
【0045】
次に、比較的短い釘を打ち込む際の釘打機1の動作について説明する。この場合、作業者は、切替ノブ60を回転操作することにより、切替ノブ60を、
図6に示す状態、すなわち切替ノブ60の突出部60Bと弁部材61の突出部61Bとが当接している状態に位置させる。これにより、第1空気通路2bと第2空気通路2cとは、連通した状態になる。従って、蓄圧室2a内の圧縮空気は、バンパホルダ24と凹部41bの上面との間に流入し、バンパホルダ24が圧縮空気により上方向に移動し、
図4に示すバンパ下室41cが画成される。バンパホルダ24の上昇に伴い、シリンダ20も上昇するが、シリンダ20の当接部20Cがシリンダプレート2Dに当接すると、バンパホルダ24及びシリンダ20上昇が停止し、シリンダ20のヘッドバルブ25への接近が規制される。当接部20Cがシリンダプレート2Dに当接した状態において、シリンダ20は上死点に位置している。
【0046】
この状態において、作業者がプッシュレバー11を被打込材に押し付けた状態でトリガ10を引くと、上記と同様にヘッドバルブ25が、遮断位置(
図2)から離間位置(
図8)に移動する。これにより、
図8の矢印に示すように、蓄圧室2aに蓄えられた圧縮空気が、ヘッドバルブ25とシリンダ20との間から流入しピストン21に作用して、ピストン21を押し下げる。シリンダ20が上死点に位置しているので、
図8に示すシリンダ20の位置は、
図7に示すシリンダ20の位置よりもヘッドバルブ25に近接している。よって、シリンダ20とヘッドバルブ25との間に形成される開口部の面積が狭くなり、比較的長い止具を打ち込む場合(
図7に示した場合)に比べて、ピストン21に作用する圧縮空気の量が少なくなり、ピストン21を押し下げる力(ピストン21の釘に対する打撃エネルギー)が弱くなる。
【0047】
そして、ピストン21がシリンダ20内を下降するとともに、ドライバブレード22が射出通路40a内を下降し、射出通路40a内の釘を打撃する。ピストン22は下死点においてピストンバンパ23と衝突する。ピストン22と衝突したピストンバンパ23は、変形することによりピストン22の打ち込み後の余剰エネルギーの一部を吸収する。更に、ピストンバンパ23を介してバンパホルダ24が下方向に移動し、バンパ下室41c内の圧縮空気がピストン22の余剰エネルギーの一部を吸収する。なお、バンパホルダ24の圧縮空気に対する受圧面積は、ピストン22の面積よりも適当量大きく設定されており、ピストン22がピストンバンパ23に衝突した瞬間、その衝撃力によりバンパホルダ24若干下方へ移動するが、バンパ下室41c内の圧縮空気により瞬時に上方へ復帰する。
【0048】
以上のように、第1の実施の形態における釘打機1では、ヘッドバルブ25が作用位置にある状態において、シリンダ20が、下死点と、下死点よりヘッドバルブ25に近接する上死点とに位置することが可能に構成されている。そのため、ピストン21へ作用する圧縮空気の量を切替えることができ、即ち、ピストン21の釘に対する打撃エネルギーを切替えることができ、打ち込み深さを調整することができる。よって、比較的長い釘を打ち込む場合はシリンダ20を下死点に位置させて、ピストン21へ作用する圧縮空気の量を多くして、ピストン21の釘に対する打撃エネルギーを大きくし、比較的短い釘を打ち込む場合はシリンダ20を上死点に位置させて、ピストン21へ作用する圧縮空気の量を少なくして、ピストン21の釘に対する打撃エネルギーを少なくすることができる。従って、短い釘を打ち込む場合に、シリンダ20を上死点に位置させて打ち込み動作を行なえば釘の打込み過ぎを防止することができる。
【0049】
また、圧縮空気によりバンパホルダ24が移動し、バンパホルダ24の下方にバンパ下室41cが画成されるので、射出孔40bからのドライバブレード22の突出量を切替えることができ、止具の打ち込み深さを調整することができる。さらに、打ち込み後のピストン21の余剰エネルギーはピストンバンパ23とバンパ下室41c内の圧縮空気により吸収される。従って、バンパ下室41cが無い場合よりもピストンバンパ23が吸収する余剰エネルギーが少なくなるため、ピストンバンパ23の損耗が低減され、衝突の際の騒音も低減される。また、シリンダ20を上死点に位置する場合には、シリンダ20内への圧縮空気の流入量が減少するので、打込みエネルギーが減少すると同時に、釘1本あたりの空気消費量も減少させることが出来る。
【0050】
また、切替ノブ60を回転操作することにより、第1空気通路2bと第2空気通路2cとの間の連通または遮断が切替えられ、シリンダ20を上死点または下死点に位置させることができる。よって、容易にピストン21の釘に対する打撃エネルギーを切替えることができ、打ち込み深さを調整することができる。
【0051】
次に、第2の実施形態に係る打込機101について、図面を参照して説明する。尚、第1の実施の形態と同一の部材については同一の番号を付し説明を省略し、異なる部分についてのみ説明をする。
【0052】
図9に示すように、シリンダ20には、その外周面から半径方向外方に突出するフランジ部20Eが設けられている。フランジ部20Eは、シリンダ20と本体2との間の空間を上下に分割するとともに、上の空間と下の空間との間をOリングによりシールする。上の空間はハンドル部3内の空間とともに蓄圧室2aを形成する。また、下の空間は、ピストン3を上死点に復帰させるための圧縮空気を貯める戻り空気室2eを形成する。
【0053】
また、シリンダ20の下端部は、バンパホルダ24の上端部を受け入れる受け入れ部20Fをなすと共に、接続部41の上端に当接している。そして、シリンダ20は、フランジ部20Eが受ける圧縮空気による空気圧により、下方へ押圧されている。また、
図11に示すように、バンパホルダ24が圧縮空気により上方向に移動しバンパ下室41cが画成された場合、バンパホルダ24の上端部は、受け入れ部20Fに受け入れられ、バンパホルダ24がシリンダ20を下から押す状態となる。しかし、フランジ部20Eの圧縮空気に対する受圧面積は、パンパホルダ24の圧縮空気に対する受圧面積(バンパホルダ24の下面)よりも大きく構成されているため、バンパホルダ24がシリンダ20を押し上げることは無い。従って、バンパホルダ24は、シリンダ20の受け入れ部20Fにより上方への移動が規制される。
【0054】
また、第2の実施の形態において、
図10に示すように、バンパ下室41cを画成しない状態では、ピストンバンパ23は、ピストン21の下降によるシリンダ20から戻り空気室2eへ空気の排出を規制しない位置に位置する。一方、
図11に示すように、バンパ下室41cを画成した状態では、ピストンバンパ23は、
図10に示したピストンバンパ23の位置よりも、シリンダ20から戻り空気室2eへ空気の排出を規制する位置に位置する。即ち、
図11に示すシリンダ20から第3空気通路20bへの空気の通路の断面積は、
図10に示す空気の通路の断面積よりも狭くなっている。
【0055】
次に、本実施形態に係る釘打機101の動作について説明する。
【0056】
比較的長い釘を打ち込む際は、切替ノブ60を回転操作することにより、第1空気通路2bと第2空気通路2cとの間の連通を遮断し、蓄圧室2a内の圧縮空気を、バンパホルダ24の下方に流入させないようにする。この状態では、
図10に示すように、ピストンバンパ23及びバンパホルダ24を上方へ移動せず、バンパ下室41cは画成されない。よって、ピストンバンパ23は、ピストン21の下降によるシリンダ20から戻り空気室2eへ空気の排出を規制しない位置に位置する。
【0057】
この状態において、作業者がプッシュレバー11を被打込材に押し付けた状態でトリガ10を引き、ヘッドバルブ25を遮断位置から離間位置に移動させると、圧縮空気によりピストン21が押し下げられ、ピストン21がシリンダ20内を下降するとともに、ドライバブレード22が射出通路40a内を下降し、射出通路40a内の釘を打撃する。このとき、ピストン下室の空気は、ピストンバンパ23に規制されずに空気通路20bを介して戻り空気室2eに流入する。即ち、シリンダ下室から戻り空気室2eへの空気の通路の断面積は、十分確保されているため、ピストン下室内の背圧はあまり上昇しない。
【0058】
一方、比較的短い釘を打ち込む際は、切替ノブ60を回転操作することにより、第1空気通路2bと第2空気通路2cとを連通させて、蓄圧室2a内の圧縮空気を、バンパホルダ24の下方に流入させる。この状態では、
図11に示すように、ピストンバンパ23及びバンパホルダ24が上方へ移動し、バンパ下室41cは画成される。よって、ピストンバンパ23は、ピストン21の下降によるシリンダ20から戻り空気室2eへ空気の排出を規制する位置に位置する。
【0059】
この状態において、作業者がプッシュレバー11を被打込材に押し付けた状態でトリガ10を引き、ヘッドバルブ25を遮断位置から離間位置に移動させると、圧縮空気によりピストン21が押し下げられ、ピストン21がシリンダ20内を下降するとともに、ドライバブレード22が射出通路40a内を下降し、射出通路40a内の釘を打撃する。このとき、空気通路20bを介するピストン下室の空気の戻り空気室2eへの流入は、ピストンバンパ23により規制される。即ち、シリンダ下室から戻り空気室2eへの空気の通路の断面積は、
図10に示される空気の通路の断面積と比較して狭いため、ピストン下室内の背圧は上昇する。よって、
図10に示す状態と比べてピストン21の釘へ打撃エネルギーが減少する。さらに、
図11に示す状態では、バンパ下室41cが画成されているので、
図10に示す状態と比べて射出孔40bからのドライバブレード22の突出量が減少する。
【0060】
以上のように、第2の実施の形態における釘打機101では、ピストンバンパ23及びバンパホルダ24により、シリンダ20(ピストン下室)から戻り空気室2eへの空気の通路の断面積を切替え可能に構成されている。そのため、打ち込み動作時のピストン下室内の背圧を切替えることができ、即ち、ピストン21の釘に対する打撃エネルギーを切替えることができ、打ち込み深さを調整することができる。よって、比較的長い釘を打ち込む場合は、シリンダ20から戻り空気室2eへ空気の排出を規制せずに、ピストン下室内の背圧の上昇を抑えて、ピストン21の釘に対する打撃エネルギーを大きくし、比較的短い釘を打ち込む場合は、シリンダ20から戻り空気室2eへ空気の排出を規制して、ピストン下室内の背圧を上昇させて、ピストン21の釘に対する打撃エネルギーを少なくすることができる。
【0061】
更に、第2の実施の形態の釘打機101においても、圧縮空気によりバンパホルダ24が移動し、バンパホルダ24の下方にバンパ下室41cが画成されるので、射出孔40bからのドライバブレード22の突出量を切替えることができ、止具の打ち込み深さを調整することができる。その他の効果についても、第1の実施の形態の釘打機1と同様である。
【0062】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。例えば、上記の第2の実施の形態では、バンパ下室41cの画成時に、バンパホルダ24は、シリンダ20の受け入れ部20Fにより上方への移動が規制されていたが、本体2又は接続部41に、バンパホルダ24の上方への移動を規制する部材を設けてもよい。また、メインバルブの一例としてシリンダの上方に位置するヘッドバルブを採用したが、シリンダ上方の側面にメインバルブを配置する構造であってもよい。