特許第5748136号(P5748136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミマキエンジニアリングの特許一覧

<>
  • 特許5748136-インクジェットプリンタ 図000002
  • 特許5748136-インクジェットプリンタ 図000003
  • 特許5748136-インクジェットプリンタ 図000004
  • 特許5748136-インクジェットプリンタ 図000005
  • 特許5748136-インクジェットプリンタ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748136
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   B41J2/165 203
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-7272(P2010-7272)
(22)【出願日】2010年1月15日
(65)【公開番号】特開2011-143657(P2011-143657A)
(43)【公開日】2011年7月28日
【審査請求日】2012年12月7日
【審判番号】不服2014-4522(P2014-4522/J1)
【審判請求日】2014年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100077621
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100146075
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100092819
【弁理士】
【氏名又は名称】堀米 和春
(74)【代理人】
【識別番号】100141634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 善博
(74)【代理人】
【識別番号】100141461
【弁理士】
【氏名又は名称】傳田 正彦
(72)【発明者】
【氏名】一之瀬 達也
【合議体】
【審判長】 黒瀬 雅一
【審判官】 藤本 義仁
【審判官】 江成 克己
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−88468(JP,A)
【文献】 特開2007−130925(JP,A)
【文献】 特開2003−39758(JP,A)
【文献】 特開平11−138777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/165,2/18,2/185
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査方向に移動可能に設けられ、インクを吐出するヘッドユニットと、
メディアを前記ヘッドユニットとの間の間隔が印刷中一定に保たれるように載置するフラットな載置部と、
前記ヘッドユニットを前記走査方向に移動可能に保持するYバーの後方側で且つ前記載置部の上方に設けられ、前記ヘッドユニットと前記メディアとの間に気流を発生させる気流発生機構と、を備え、
前記Yバーの前側に前記ヘッドユニットが前記Yバーに沿って移動可能に取り付けられると共に、前記Yバーの後側に前記気流発生機構が固定状態で取り付けられ、且つ、前記Yバー、前記ヘッドユニット、および前記気流発生機構は、前後方向に重なるように配設されており、
前記気流発生機構は、
前記載置部側に設けられた第1通気口及び当該第1通気口に連通する第2通気口が形成され、その上部と前記メディアとの間隔が前記間隔に比べて大きい筺体と、
前記筺体内の前記Yバーから後方に所定の距離離れた位置に設けられ、気流を発生させる気流発生手段と、を有し、
前記気流発生手段は、前記第1通気口に対して前記気流発生機構の前記Yバーへの取り付け位置と反対側の位置に配設されており、
前記筺体内には、
前記Yバー側と前記気流発生手段との間に設けられ、
前記Yバーの底面と同等の高さ位置に配置され、前記筺体の側部に一端が当接して設けられた底面と、前記載置部に対して前記Yバーの下端側から前記筺体の上部に向かって登り勾配で傾斜する傾斜面と、前記筺体の上部に一端が当接して設けられた側面とが連接して一体化され、
前記筺体内において前記Yバー側で且つ前記筺体の上部側に形成される隅部の全体を覆うことにより気流を整流する整流手段が設けられ、
前記筺体の前記走査方向の幅は、前記ヘッドユニットの前記走査方向におけるインクの吐出領域の幅以上であること
を特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記気流発生手段は、前記第1通気口側から前記第2通気口側に向かう気流を発生させることを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記気流発生手段は、前記第2通気口側から前記第1通気口側に向かう気流を発生させることを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出し、印刷対象となるメディアに印刷を行っている。このとき、ノズルから吐出されたインクが霧状となったいわゆるインクミストが発生する。このインクミストは、非常に粒径が小さいため飛散し易く、メディア、インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタの内部等に付着するおそれがある。特に、印刷対象となるメディアにインクミストが付着した場合、画像不良となるといった問題がある。
【0003】
そこで、従来からインクジェットプリンタには、インクミストを回収するための機構が設けられている。例えば特許文献1に記載のインクジェットプリンタには、インクを吸着する吸着体とファンとを備えた空吐出受け部が設けられている。このインクジェットプリンタでは、フラッシング処理において空吐出受け部内にインクが吐出されると、吐出されたインクを吸着体に吸着させると共に、ノズルから吐出された際に浮遊したインクミストをファンによって吸引して用紙の裏側に付着させることでインクミストの飛散を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−101609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のインクジェットプリンタのインクミスト回収機構は、フラッシング処理時に発生したインクミストに対応するものであり、印刷中に発生したインクミストの回収については考慮されていない。したがって、従来のインクジェットプリンタでは、印刷中に発生したインクミストがメディアに付着し、印刷品質が低下するといった問題を解決できない。また、印刷中には、インクミストだけでなく塵や埃等が発生し、この塵や埃がメディアの印刷面に付着するといった問題もある。特に、クリアインクを用いる場合には、印刷面に塵や埃が現れるため、印刷品質を著しく低下させるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、印刷品質を維持することができるインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るインクジェットプリンタは、走査方向に移動可能に設けられ、インクを吐出するヘッドユニットと、メディアをヘッドユニットとの間の間隔が印刷中一定に保たれるように載置するフラットな載置部と、ヘッドユニットを走査方向に移動可能に保持するYバーの後方側で且つ載置部の上方に設けられ、ヘッドユニットとメディアとの間に気流を発生させる気流発生機構と、を備え、Yバーの前側にヘッドユニットがYバーに沿って移動可能に取り付けられると共に、Yバーの後側に気流発生機構が固定状態で取り付けられ、且つ、Yバー、ヘッドユニット、および気流発生機構は、前後方向に重なるように配設されており、気流発生機構は、載置部側に設けられた第1通気口及び第1通気口に連通する第2通気口が形成され、その上部とメディアとの間隔が前記間隔に比べて大きい筺体と、筺体内のYバーから後方に所定の距離離れた位置に設けられ、気流を発生させる気流発生手段と、を有し、気流発生手段は、第1通気口に対して気流発生機構のYバーへの取り付け位置と反対側の位置に配設されており、筺体内には、Yバー側と気流発生手段との間に設けられ、Yバーの底面と同等の高さ位置に配置され、筺体の側部に一端が当接して設けられた底面と、載置部に対してYバーの下端側から筺体の上部に向かって登り勾配で傾斜する傾斜面と、筺体の上部に一端が当接して設けられた側面とが連接して一体化され、筺体内においてYバー側で且つ筺体の上部側に形成される隅部の全体を覆うことにより気流を整流する整流手段が設けられ、筺体の前記走査方向の幅は、ヘッドユニットの走査方向におけるインクの吐出領域の幅以上であることを特徴とする。
【0008】
このインクジェットプリンタでは、第1通気口、第2通気口及び気流発生手段によりヘッドユニットとメディアとの間に気流を発生させる気流発生機構が設けられている。この気流発生機構によって発生した気流は、印刷中に発生したインクミストや塵・埃を運ぶため、メディア上に飛散するインクミスト等を除去し、インクミスト等がメディアに付着することを防止する。さらに、気流発生手段を収納する筺体内には、気流を整流する整流手段が設けられている。そのため、例えば筺体内において発生する気流の滞留を抑制できるので、効果的にヘッドユニットとメディアとの間に気流を発生させることができる。したがって、インクミスト、塵、埃等を効果的に除去することができる。以上により、本発明のインクジェットプリンタでは、インクミスト等を効果的に除去することができるため、インクミスト等がメディアの印刷面に付着することを防止でき、印刷品質を維持することができる。
【0009】
また、気流発生手段は、Yバー側から後方に所定の距離離れた位置に設けられており、整流手段は、Yバー側と気流発生手段との間に設けられ、載置部に対してYバーの下端側から気流発生手段の上端側に傾斜する傾斜面を有する傾斜部であることが好ましい。ヘッドユニットと載置部との間の間隔は、印刷中一定に保たれており、その間隔は、例えば数mm〜百数十mm程度である。そのため、載置部の上方に設けられる気流発生手段は、Yバーの下端部よりも上方に配置されることになる。そこで、載置部に対してYバーの下端側から気流発生手段の上端側に傾斜する傾斜面を有する傾斜部を設けることで、Yバーと気流発生手段との間において気流を流れに沿って誘導できる。また、ヘッドユニットとメディアとの間の間隔に比べて、気流発生機構の筺体の上部とメディアとの間の間隔は非常に大きくなる。そのため、急激に間隔が広がる部分、すなわち筺体のYバー側の上部の隅部(角部)にて乱流が発生して気流が滞留する。これに対し、傾斜面を有する傾斜部を筺体のYバー側に設けることにより、気流が気流発生手段側に向かって徐々に拡散、又は気流発生手段側からヘッドユニット側に向かって徐々に収縮するため、筺体内における乱流の発生を抑制できる。
【0010】
また、気流発生手段は、第1通気口側から第2通気口側に向かう気流を発生させることが好ましい。これにより、気流発生手段が筺体において載置部側に設けられる第1通気口側、つまりヘッドユニット側から第2通気口側に吸引する気流を発生させるので、ヘッドユニットとメディアとの間の空間から飛散するインクミストを吸引除去できる。特に、ヘッドユニットよりも後方(Yバー側)の空間、つまりメディアにインクが吐出された印刷面上において飛散するインクミスト等を吸引できる。そのため、印刷後のメディアにインクミスト等が付着することを防止できる。
【0011】
また、気流発生手段は、第2通気口側から第1通気口側に向かう気流を発生させることが好ましい。これにより、気流発生手段が筺体に形成される第2通気口側から筺体において載置部側に設けられる第1通気口側、つまりヘッドユニット側に向かう気流を発生させるので、ヘッドユニットとメディアとの間の空間に気流を送り込むことができる。特に、ヘッドユニットの前方に位置する印刷前のメディアの表面に付着した塵や埃を送風によって除去することができる。したがって、インクが吐出される印刷面を良好に維持することができる。
【0012】
また、筺体の走査方向の幅は、ヘッドユニットの走査方向におけるインクの吐出領域の幅以上であることが好ましい。この場合には、ヘッドユニットの走査方向におけるインクの吐出領域の全域に亘って気流を発生させることができる。そのため、インクジェットプリンタにおいて印刷される様々なサイズのメディアに対応でき、これらメディア全ての印刷品質を維持することができる。
【0013】
ここで、特に大型のインクジェットプリンタにあっては、例えば家庭用のインクジェットプリンタに比べてヘッドユニットの走査方向における印刷領域の幅が非常に大きい。そのため、例えばメディアの印刷領域の中央部分等に気流発生機構を設ける構成では、インクミスト等を除去することができない領域が存在する。そこで、気流発生手段が設けられる筺体の走査方向の幅、すなわち気流を発生させる幅をインクの吐出領域の幅以上とすることで、大型のインクジェットプリンタであっても、インクの吐出領域の全域に亘ってインクミスト等を除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インクジェットプリンタにおける印刷品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタを示す斜視図である。
図2図1に示すインクジェットプリンタを後方から見た図である。
図3図1に示すインクジェットプリンタの断面図である。
図4】気流発生機構によって発生する気流を模式的に示す図である。
図5】従来のインクジェットプリンタにおけるヘッド面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタを示す斜視図であり、図2は、図1に示すインクジェットプリンタを後方から見た図であり、図3は、図1に示すインクジェットプリンタの断面図である。各図に示すように、インクジェットプリンタ1は、例えばフラットベッド型のUV硬化インクジェットプリンタであり、印刷ヘッド2を走査方向に移動しつつインクを吐出させながら、メディア(印刷対象物)を載置したテーブル3を印刷に応じて副走査方向(走査方向に直交する方向)に移動させる構成となっている。
【0018】
具体的には、インクジェットプリンタ1は、インクを吐出する印刷ヘッド(ヘッドユニット)2と、メディアを載置するテーブル(載置部)3と、長尺状のロール型印刷用紙(以下、ロール紙)をテーブル3に繰り出す繰出ローラ4と、繰出ローラ4側に配設され、ロール紙に張力を付与する第1テンションバー5と、テーブル3からロール紙を巻き取る巻取ローラ6と、巻取ローラ6側に配設され、ロール紙に張力を付与する第2テンションバー7とを備えている。このような構成により、インクジェットプリンタ1では、カットされたメディアの他に、ロール紙への印刷が可能となっている。なお、以下の説明においては、図3における左側を「前」、右側を「後」とする。
【0019】
インクジェットプリンタ1には、印刷ヘッド2とメディア(テーブル3)との間に気流を発生させる気流発生機構10が設けられている。この気流発生機構10は、印刷ヘッド2とメディアとの間に気流を発生させることにより、例えば印刷ヘッド2のノズル(図示しない)からインクが吐出された際に発生するインクミストや、塵及び埃を回収する。具体的には、気流発生機構10は、筺体11と、この筺体11内に設けられる吸気ファン12とを備えている。
【0020】
筺体11は、インクジェットプリンタ1の後部に設けられている。具体的には、筺体11は、印刷ヘッド2を走査方向に移動可能に保持するYバー13の後方側で且つテーブル3の上方の位置において、Yバー13に例えばボルトによって取り付けられている。筺体11のテーブル3側には、開口部(第1通気口)11Aが形成されている。また、筺体11の底面11aは、Yバー13の底面13aと同等の高さ位置に設けられている。また、筺体11の走査方向の幅は、図2に示すように、テーブル3の幅と略同等、つまり印刷ヘッド2における走査方向の印刷領域の幅と同等となっている。
【0021】
また、筺体11内には、傾斜部14が設けられている。この傾斜部14は、Yバー13に沿って筺体11の側部11b側に設けられており、テーブル3に平行な底面14aと、テーブル3に対してYバー13の下端側から後述する吸気ファン12の上端側に登り勾配で傾斜する傾斜面14bと、テーブル3に垂直な側面14cとから構成されている。底面14aは、Yバー13の底面13aと同等の高さ位置に配置され、筺体の側部11bに当接して設けられている。傾斜面14bは、テーブル3に対して例えば40°傾斜している。側面14cは、筺体11の上部11cに当接して設けられている。そして、これら底面14a、傾斜面14b及び側面14cが連設されて一体化されていることにより、傾斜部14は、筺体11内においてYバー13側で且つ上部11c側に形成される隅部(角部分)の全体を覆っている。
【0022】
また、筺体11の側部(後面)11dには、図2に示すように、吸気ファン12の取り付け位置に対応して、複数(ここでは3つ)の排気部(第2通気口)15が設けられている。この排気部15は、開口部11Aと連通している。排気部15には、例えば不織布等からなるフィルター(図示しない)が設けられている。
【0023】
吸気ファン12は、気流を発生させる部分である。この吸気ファン12は、例えばシロッコファン(多翼ファン)であり、筺体11内に複数(ここでは3つ)設けられている。具体的には、吸気ファン12は、筺体11の排気部15側(Yバー13とは反対側)に、Yバー13から所定の距離離れて設けられており、筺体11の幅方向に所定の間隔を設けて配置されている。また、吸気ファン12と傾斜部14の側面14cとの間には、所定の間隔が設けられている。この吸気ファン12は、図示しない電源に接続されており、インクジェットプリンタ1の電源のON/OFFに応じて動作する。
【0024】
続いて、図4を参照しながら、気流発生機構10における気流の発生について説明する。図4は、気流発生機構によって発生した気流を模式的に示す図である。同図に示すように、吸気ファン12が作動すると、吸気ファン12の吸引力によって例えば矢印で示すように印刷ヘッド2側から吸気ファン12側に向かう気流が発生する。この気流により、印刷ヘッド2からのインクの吐出によって発生したインクミストや、塵及び埃が吸気ファン12によって吸気されて排気部15から排気される。また、気流発生機構10では、傾斜部14により筺体11内のYバー13側の隅部における滞留の発生が抑制されて乱流の発生が防止されると共に、傾斜面14bにより気流に運ばれるインクミスト等を吸気ファン12に誘導できるため、気流に運ばれるインクミスト等を吸気ファン12によって効果的に吸引できる。なお、インクミストや塵・埃は、排気部15に設けられたフィルターによって回収される。
【0025】
図5は、従来のインクジェットプリンタにおける印刷ヘッドのヘッド面を示す図である。同図に示すように、気流発生機構10が設けられていない従来のインクジェットプリンタでは、印刷ヘッド20からインクが吐出された際に発生したインクミストMがノズルプレート面21やヘッド面22に付着している。つまり、従来のインクジェットプリンタでは、印刷中にインクミストがインクジェットプリンタ内に飛散している。そのため、印刷対象となるメディアにインクミストが付着し、印刷品質が低下するおそれがある。また、ノズルプレート面21に付着したインクミストMは、堆積すると固まりとなることがあり、ノズル抜け等の画像不良の原因となるおそれがある。
【0026】
これに対して、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1では、開口部11A、排気部15及び吸気ファン12により印刷ヘッド2とメディアとの間に気流を発生させる気流発生機構10が設けられている。この気流発生機構10によって発生した気流は、印刷中に発生したインクミストや塵・埃を運ぶため、メディア上に飛散するインクミスト等を除去し、インクミスト等がメディアに付着することを防止する。さらに、吸気ファン12を収納する筺体11内には、気流を整流する傾斜部14が設けられている。そのため、筺体11内において発生する気流の滞留を抑制できるので、効果的に印刷ヘッド2とメディアとの間に気流を発生させることができる。したがって、インクミスト、塵、埃等を効果的に除去することができる。以上により、本発明のインクジェットプリンタ1では、インクミスト等を効果的に除去することができるため、インクミスト等がメディアの印刷面に付着することを防止でき、印刷品質を維持することができる。
【0027】
また、インクミストだけでなく、吸気ファン12によって塵や埃を吸引することもできるので、クリアインクを用いた印刷において、印刷面に付着した塵や埃が現れるといった問題を回避することができる。
【0028】
また、筺体11内に設けられる傾斜部14は、Yバー13側の側部11bと吸気ファン12との間に配置され、テーブル3に対してYバー13の下端側から吸気ファン12の上端側に傾斜する傾斜面14bを有している。印刷ヘッド2とテーブル3との間の間隔は、印刷中一定に保たれており、その間隔は、例えば数mm〜150mm程度である。そのため、テーブル3の上方に設けられる吸気ファン12は、Yバー13の底面13aよりも上方に配置されることになるため、気流発生機構10により発生する気流は、Yバー13の下端側から吸気ファン12側に向けて上昇する(図4参照)。そこで、テーブル3に対してYバー13の下端側から吸気ファン12の上端側に傾斜する傾斜面14bを有する傾斜部14を設けることで、Yバー13と吸気ファン12との間において気流を流れに沿って誘導できる。
【0029】
また、印刷ヘッド2とメディアとの間の間隔に比べて、気流発生機構10の筺体11の上部11cとメディアとの間の間隔は非常に大きくなる。そのため、印刷ヘッド2とメディアとの間を通過した気流が気流発生機構10の筺体11内に流入した際、圧力の変動により気流が拡散流となり乱流が発生するおそれがある。これにより、急激に間隔が広がる部分、すなわち筺体11のYバー13側の上部11cの隅部(角部)にて滞留が発生することがある。これに対し、傾斜面14bを有する傾斜部14を筺体11のYバー13側の上記隅部を覆うように設けることで、気流が吸気ファン12側に向かって徐々に拡散するため、筺体11内における乱流の発生を抑制できる。
【0030】
また、吸気ファン12により、印刷ヘッド2側から排気部15側に向かう気流を発生させるため、印刷ヘッド2とメディアとの間の空間に飛散するインクミストを吸引除去することができる。特に、印刷ヘッド2よりも後方(Yバー13側)の空間、つまりメディアにインクが吐出された印刷面上において飛散するインクミスト等を吸引できる。そのため、印刷後のメディアにインクミスト等が付着することを防止できる。
【0031】
また、筺体11の走査方向の幅は、印刷ヘッド2走査方向におけるインクの吐出領域の幅と同等となっているので、印刷ヘッド2の走査方向におけるインクの吐出領域の全域に亘って気流を発生させることができる。そのため、インクジェットプリンタ1において印刷される様々なサイズのメディアに対応でき、これらメディア全ての印刷品質を維持することができる。
【0032】
ここで、特に本実施形態に係る大型のインクジェットプリンタ1にあっては、例えば家庭用のインクジェットプリンタに比べてヘッドユニットの走査方向における印刷領域の幅が非常に大きい。そのため、例えば印刷領域の中央部分等に気流発生機構を設ける構成では、インクミスト等を除去することができない領域が存在する。そこで、吸気ファン12が設けられる筺体11の走査方向の幅、すなわち気流を発生させる幅をインクの吐出領域の幅以上とすることで、本実施形態に係る大型のインクジェットプリンタ1であっても、インクの吐出領域の全域に亘ってインクミスト等を除去することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、印刷ヘッド2が走査方向に移動し、メディアを載置したテーブル3がメディアの搬送方向に移動する構成となっている。このような構成の場合、テーブル3の移動に伴い、飛散したインクミストや空中の塵・埃もテーブル3の移動方向に引きずられることがある。そこで、テーブル3の上方に気流発生機構10を設けることにより、テーブル3の移動に伴いメディア上を移動するインクミスト等を気流によって吸引して除去することができる。このように、走査方向に幅の広いテーブル3が搬送方向に移動する構成のインクジェットプリンタ1では、印刷ヘッド2を保持するYバー13の後方側で且つテーブル3の上方に気流発生機構10を設けることが特に有効となる。
【0034】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、開口部11A側から排気部15側に向かう気流を吸気ファン12によって発生させているが、気流の方向は、排気部15側から開口部11A側に向かう方向であってもよい。この場合、吸気ファン15に換えて送風機を設けてもよいし、吸気ファン15に送風機能を持たせてもよい。このような構成にすると、排気部15(ファン)側から開口部11A(印刷ヘッド2)側に向かう気流が、印刷ヘッド2よりも前方に位置する印刷前のメディアに付着する塵や埃等を除去する。そのため、インクが吐出される印刷面を良好に維持することがでる。
【0035】
また、上記実施形態では、筺体11の走査方向の幅を印刷ヘッド2の走査方向における印刷領域の幅と同等としているが、筺体11の走査方向の幅は、印刷ヘッド2における走査方向の印刷領域の幅よりも大きくてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、開口部11Aを筺体11の下部全体に亘って形成しているが、Yバー13側だけ(筺体11の下面の一部)に設けられてもよい。要は、筺体11において気流を流入又は排気する構成であればよい。
【0037】
また、上記実施形態では、排気部15が側部(後面)11dに設けられているが、排気部15は、開口部11Aと連通し且つ筺体11内の空気を排気、又は流入させればよく、取り付け位置は例えば上部11c等であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…インクジェットプリンタ、2…印刷ヘッド(ヘッドユニット)、3…テーブル(載置部)、10…気流発生機構、11…筺体、12…吸気ファン(気流発生手段)、13…Yバー、14…傾斜部(整流手段)、14b…傾斜面。
図1
図2
図3
図4
図5