特許第5748141号(P5748141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748141
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20150625BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   H01L21/30 509
   H01L21/30 515F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-122277(P2011-122277)
(22)【出願日】2011年5月31日
(65)【公開番号】特開2012-252040(P2012-252040A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2014年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100090158
【弁理士】
【氏名又は名称】藤巻 正憲
(72)【発明者】
【氏名】上野 博康
(72)【発明者】
【氏名】西須 進一
【審査官】 関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−266764(JP,A)
【文献】 特開2009−210919(JP,A)
【文献】 特開平05−160004(JP,A)
【文献】 特開2005−331542(JP,A)
【文献】 特開平11−297595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20− 7/24
G03F 1/00− 1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光を出射する光源と、露光対象の基板に転写すべきパターンが形成され前記光源からの露光光を透過させることにより前記パターンを前記基板に露光するマスクと、このマスクを保持する枠状のホルダと、前記基板を前記マスクに対して水平の第1方向に相対的に移動させる搬送部と、この搬送部を制御する制御部と、前記ホルダに設けられ少なくとも鉛直方向における前記マスクの加速度を検出する加速度検出部と、この加速度検出部が検出した前記マスクの鉛直方向における加速度が所定の閾値を超えたか否かを判定する判定部と、を有し、
前記加速度検出部は、前記マスクの鉛直方向の加速度として、前記基板の搬送に伴って発生する加速度成分を除外して検出し、
前記制御部は、前記判定部が前記マスクの鉛直方向における加速度が所定の閾値を超えたと判定した場合に、前記マスクに対する前記基板の相対的移動を停止させることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記基板が前記マスクに対して相対的に前記第1方向に移動されていないときには、前記マスクの鉛直方向における加速度が前記閾値を超えたか否かの判定を行わないことを特徴とする請求項に記載の露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光対象の基板とマスクとの間に形成された隙間が極めて小さいプロキシミティ方式の露光装置に関し、特に、基板をマスクに対して相対的に移動させて露光する場合に、基板とマスクとの間に付着物を噛み込んだことを検出でき、マスクの疵付きを防止でき高い露光精度を維持できる露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイパネル等のガラス基板等を露光する際には、光源から出射した露光光をマスクに入射させ、マスクに形成されたパターンを介して透過光を基板に照射して露光することが行われている。このような露光装置としては、レンズ及びミラー等を使用してマスクのパターンを露光対象の基板上に投影するプロジェクション方式の露光装置と、マスクと基板との間に例えば数十乃至200μm程度と極めて小さい隙間を設け、マスクのパターンを基板上に転写するプロキシミティ方式の露光装置とが一般的に使用されている。
【0003】
マスクと基板との隙間が極めて小さいことから、プロキシミティ方式の露光装置においては、微小な振動により、マスクと基板とが接触しやすい。また、連続露光の場合には、マスク又は基板に付着した微小な付着物が、マスクに対する基板の相対的移動により、基板とマスクとの間に噛み込まれた状態で移動されやすい。よって、プロキシミティ方式の露光装置は、基板とマスクとの接触、又は付着物とマスク又は基板との接触により、露光精度が低下したり、マスクが疵付きやすい。
【0004】
特許文献1においては、マスクに薄膜状の保護材(ペリクル)を装着し、マスクパターンへの微小な汚染物質の付着を防止した露光装置が開示されている。また、特許文献2には、地震の発生又は露光装置の周辺に発生した振動により、マスクと基板とが接触してマスクが疵付くことが開示されており、振動に起因するマスクの疵付きを防止するために、露光装置の基台又は枠体に加速度センサを設置し、この加速度センサが検出した振動が大きい場合に、マスクの側部を支持するエアクッションを膨張させ、マスクと基板との間隔を広げるか、又はマスクに設けたエアバッグ(干渉部材)を膨張させる技術が開示されている。
【0005】
特許文献3には、基板を支持するウエハステージ及びマスクを支持するマスクステージを夫々エアマウント(空気バネ)を介して基台に取り付けた露光装置が開示されており、マスクステージに設置された加速度センサにより振動を検出し、検出した振動に基づいて、各エアマウントへの空気圧を調節し、これにより、露光装置の振動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−33258号公報
【特許文献2】特開2010−266764号公報
【特許文献3】特開2009−283790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1乃至3は、いずれも、マスク又は基板に例えばガラスの欠片等の付着物が付着していた場合においては、これを検出することができず、連続露光の場合には、マスクに対する基板の相対的移動により、付着物がマスクと基板との間に噛み込まれた状態で移動されてしまう。特許文献1においては、マスクに保護材を設けているものの、この薄膜状の保護材は、微小な汚染物質の付着の防止を目的とするものであり、ガラスの欠片等の硬質な付着物をマスク及び基板間に噛み込んだ場合には、容易に疵付いてしまう。よって、特許文献1乃至3の技術によっても、付着物によるマスクの疵付きを防止することはできない。
【0008】
また、疵付いたマスクにより露光された基板は、液晶ディスプレイパネル等の表示装置に組み立てるまで、露光領域に所定の露光精度が得られていないことを検査することができない。また、従来の露光装置は、マスクが疵付いた時点を特定できる構成を有しないことから、マスクが疵付いて所定のパターンを露光できない状態で、一度に数千枚程度の基板が露光されてしまう。よって、所定のパターンが形成されていない基板を装着した液晶ディスプレイパネルが多数製造されることになり、歩留まりが大きく低下するという問題点がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、基板とマスクとの隙間への付着物の噛み込みを検出でき、マスクの疵付きを防止でき高い露光精度を維持できる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る露光装置は、露光光を出射する光源と、露光対象の基板に転写すべきパターンが形成され前記光源からの露光光を透過させることにより前記パターンを前記基板に露光するマスクと、このマスクを保持する枠状のホルダと、前記基板を前記マスクに対して水平の第1方向に相対的に移動させる搬送部と、この搬送部を制御する制御部と、前記ホルダに設けられ少なくとも鉛直方向における前記マスクの加速度を検出する加速度検出部と、この加速度検出部が検出した前記マスクの鉛直方向における加速度が所定の閾値を超えたか否かを判定する判定部と、を有し、
前記加速度検出部は、前記マスクの鉛直方向の加速度として、前記基板の搬送に伴って発生する加速度成分を除外して検出し、
前記制御部は、前記判定部が前記マスクの鉛直方向における加速度が所定の閾値を超えたと判定した場合に、前記マスクに対する前記基板の相対的移動を停止させることを特徴とする。なお、本発明において、マスクの鉛直方向における加速度の閾値とは、各露光装置に固有の数値であり、マスク及び露光対象物にガラスの切片等の付着物がない場合に、露光光に対して基板を連続的にスキャンする際に発生しうる加速度の最大値を意味する。
【0011】
本発明に係る露光装置において、例えば前記判定部は、前記基板が前記マスクに対して相対的に前記第1方向に移動されていないときには、前記マスクの鉛直方向における加速度が前記閾値を超えたか否かの判定を行わない。

【発明の効果】
【0012】
本発明の露光装置は、マスクを保持するホルダには、マスクの鉛直方向における加速度を検出する加速度検出部が設けられており、判定部は、加速度検出部が検出したマスクの鉛直方向の加速度が所定の閾値を超えたか否かを判定する。そして、制御部は、判定部がマスクの鉛直方向における加速度を所定の閾値を超えたと判定した場合には、マスクに対する基板の相対的移動を停止させる。これにより、基板又はマスクに付着した付着物が基板とマスクとの隙間に噛み込まれた場合には、マスクが鉛直方向に大きく振動し、制御部は、搬送部による基板の搬送を停止するため、付着物の噛み込みを速やかに検出することができる。また、仮に、付着物によりマスクが疵付いた場合においても、付着物を噛み込んだ時点でマスクの疵付きを検出することができるため、疵付いたマスクを取り換えることにより、製造される基板の露光精度を高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)及び(b)は、本発明の実施形態に係る露光装置を示す正面図である。
図2】(a)は、本発明の実施形態に係る露光装置による付着物の噛み込みの検出を示す平面図、(b)は従来の露光装置により付着物を噛み込んだ状態を示す平面図である。
図3】(a)は大型の基板を露光する際におけるマスクのシフトを示す平面図、(b)は共取りを行う場合におけるマスクのシフトを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1(a)及び図1(b)は、本発明の実施形態に係る露光装置を示す正面図である。図1に示すように、本発明の露光装置1は、従来の露光装置と同様に、光源11及びマスク12が設けられており、マスク12は、露光対象の基板2に露光すべきパターンが形成されており、その縁部を枠状のマスクホルダ13により保持されている。本実施形態に係る露光装置は、所謂プロキシミティ方式(近接露光)の露光装置であり、光源11から出射した露光光110をマスク12に透過させてパターンを基板2に転写する。露光装置1は、基板2を載置するステージ10を有し、光源11から露光光110を出射した状態で、ステージ10をマスク12に対して相対的に1方向に移動させることにより、ステージ10上の基板2を露光光にスキャンさせることができる。このステージ10の移動は、制御部15により制御されている。
【0015】
本実施形態のようなプロキシミティ方式の露光装置においては、基板2とマスク12との間の隙間が例えば数十乃至200μm程度と極めて小さく設けられている。よって、基板2又はマスク12に例えばガラスの欠片等の付着物3が付着している場合には、連続露光により、この付着物3がマスク12に対してスキャン方向に搬送され、やがて、付着物3が基板2とマスク12との間に噛み込まれてしまう。従来のプロキシミティ方式の露光装置においては、この付着物3の噛み込みを検出する構成は設けられておらず、従って、基板2とマスク12との間に付着物3が噛み込まれても、露光は継続される。これにより、図2(b)に示すように、位置3aにて基板2とマスク12との間に噛み込まれた付着物3は、マスク12と連続的又は断続的に接触してマスク12の下面に疵を付けながら、マスク12の下方領域から排出される(位置3b)。しかし、従来の露光装置においては、マスクが疵付いた時点を検出する構成を有しないため、付着物3により疵が付いたマスク12を使用して、多数の基板が露光されてしまい、これにより、液晶ディスプレイパネル等の歩留まりが大きく低下するという問題点があった。
【0016】
本実施形態においては、マスクホルダ13の側部に加速度センサ14が設けられており、この加速度センサ14により、マスク12の少なくとも鉛直方向における加速度を検出する。即ち、基板2とマスク12との間に異物を噛み込んだ場合には、マスク12の鉛直方向における加速度が瞬間的に増大するが、加速度センサ14により、この鉛直方向の加速度を検出する。図1に示すように、加速度センサ14は判定部16に接続されており、加速度センサ14が検出したマスク12の鉛直方向の加速度が所定値よりも大きいか否かを判定する。判定部16はステージ10を制御する制御部15に接続されており、判定部16による前記判定結果が制御部15に送信される。
【0017】
制御部15は、判定部16から送信された判定結果に基づいて、ステージ10の駆動を継続又は停止させるように構成されている。即ち、図1(a)に示すように、基板2又はマスク12に付着物がない場合には、付着物の噛み込みがないことから、マスク12の鉛直方向における加速度の急激な増加はなく、マスク12が疵付く虞もないため、制御部15は、ステージ10の駆動を継続させ、基板2に対する露光光110のスキャンを継続させる。一方、図1(b)に示すように、基板2とマスク12との間に付着物3が噛み込まれた場合には、マスク12は、鉛直方向の加速度成分が瞬間的に増大し、通常の連続露光の際に発生しうる鉛直方向の加速度よりも大きくなる。よって、判定部16は、制御部15に、マスク12の鉛直方向の加速度が所定値よりも大きくなったという信号を送信する。この場合には、制御部15は、マスク12が疵付いた虞があることから、ステージ10の駆動を停止させ、基板2に対する露光光110のスキャンも停止される。なお、マスク12の鉛直方向の加速度成分の所定値とは、各露光装置に固有の数値であり、マスク12及び基板2にガラスの切片等の付着物がない場合に、露光光110に対して基板を連続的にスキャンする際に発生しうる加速度の最大値である。
【0018】
本実施形態の露光装置は、マスクホルダ13にマスク12の鉛直方向における加速度を検出する加速度センサ14が設けられており、この加速度センサ14による検出結果を判定する判定部16と、判定部16による判定結果に基づいてステージ10の駆動を継続又は停止させる制御部15とが設けられていることにより、付着物3が基板2とマスク12との間に噛み込まれた場合には、これを即時、検出することができる。よって、マスク12の疵付きを最小限に抑えることができる。
【0019】
また、仮に、付着物3の噛み込みによりマスク12が疵付いたとしても、正常な露光精度が得られない基板2は、露光が進行していた基板2だけで済む。そして、疵付いたマスク12を交換すれば、高精度の露光を再開することができ、基板2の露光精度を高く維持できる。よって、マスク12に疵がついた状態で、無駄に基板2を露光することが防止され、基板2の歩留まりを著しく向上させることができる。
【0020】
なお、露光装置1には、加速度センサ14に接続されるように、マスク12の加速度の時間的変化を記録するロギング装置を設けることができ、ロギング装置に記録されたマスク12の加速度データを解析に使用することができる。例えば、マスク12の鉛直方向における加速度をデータ解析することにより、付着物3の噛み込みの検出精度を向上させることができる。
【0021】
また、マスク12を取り付けるか、又は交換するためのマスク取付装置が設けられている場合においては、マスク取付装置のシーケンス回路は、制御部15及び判定部16に接続されることができる。即ち、マスク12をマスクホルダ13に取り付けるシーケンスが進行している間は、制御部15は、ステージ10の駆動を停止させ、また、判定部16によるマスク12の加速度の判定を行わない。
【0022】
次に、本実施形態に係る露光装置の動作について説明する。通常の連続露光の場合と同様に、先ず、ステージ10上に基板2を載置する。次に、基板2の露光開始位置がマスク12の下方となるように、制御部15による制御によりステージ10を移動させる。そして、この状態で、光源11からの露光光110の出射を開始する。すると、光源11から出射された露光光110は、マスク12のパターンに透過され、基板2には、このパターンが転写される。
【0023】
この状態で、露光光110の照射を継続しながらステージ10を移動させていくと、図2(a)に示すように、露光領域21がスキャン方向に沿って帯状に延びるように形成されていく。この基板2に対する露光光のスキャン時においても、マスク12は、鉛直方向に微小な振幅で振動しており、加速度センサ14は、マスク12の鉛直方向における加速度を検出し、検出結果を判定部16に送信する。判定部16は、加速度センサ14による検出結果が所定の閾値を超えたか否かを判定する。付着物の噛み込みがない場合には、マスク12の鉛直方向における加速度は急激に増大することはなく、よって、マスク12の加速度が前記閾値を超えることはない。よって、判定部16は、マスク12の加速度が閾値以下であるという信号を制御部15に送信する。制御部15は、判定部16から受信した信号に基づき、マスク12が疵付く虞がないことから、ステージ10の駆動を継続させ、基板2のスキャンを継続させる。
【0024】
基板2上又はマスク12の下面に例えばガラスの切片等の付着物3が付着している場合には、この付着物3は、マスク12に対する基板2の相対的スキャンに伴い、基板2のスキャン方向に移動されていく。そして、図2(a)に示すように、付着物3は、マスク12と基板2との間に噛み込まれる(位置3a)。すると、加速度センサ14が検出するマスク12の鉛直方向における加速度が急激に増大し、前記閾値を超える。判定部16は、加速度センサ14から受信した加速度の検出結果に基づき、マスク12の鉛直方向の加速度が閾値を超えたという信号を制御部15に送信する。制御部15は、判定部16から受信した信号に基づき、ステージ10の駆動を停止させ、基板2のスキャンを停止させる。また、光源11からの露光光110の出射も停止される。
【0025】
このように、本実施形態においては、付着物3の噛み込みにより、マスク12が疵付いた虞がある場合には、基板2の搬送が停止されるため、付着物3によるマスク12の疵付きを最小限に抑えることができる。そして、ステージの駆動が停止されたら、例えばマスク12が疵付いたか否かを確認でき、付着物3がある場合には、その除去も円滑に行うことができる。マスク12を例えば目視により確認した際に、疵付きが発生していない場合、又は疵付きの度合いが極めて小さく、同じマスク12を使用して露光を継続しても所定のパターンを露光できる場合は、付着物3を除去するだけで同じマスク12を使用して、露光を再開することができる。一方、マスク12が所定のパターンを露光できない程度まで疵付いている場合には、マスク12が疵付いた時点で露光が進行していた基板2のみを廃棄し、疵が付いたマスク12を交換することにより、高精度の露光を再開できる。
【0026】
よって、本実施形態の露光装置によれば、マスクの疵付きを速やかに検出でき、マスクが疵付いて所定のパターンを露光できない状態で数千枚もの基板が露光されるというようなことがないため、液晶ディスプレイパネル等の表示装置の歩留まりを著しく向上させることができる。
【0027】
なお、本発明においては、加速度センサ14は、マスク12の鉛直成分の加速度のうち、基板2の搬送に伴って発生する加速度成分を除外した加速度を検出するように構成することができる。即ち、通常の連続露光時に発生するマスク12の鉛直方向の加速度は、付着物3の噛み込みが発生した際の加速度の変化に比して極めて小さい。そこで、基板2の搬送に伴って発生する微小な加速度については、例えばフィルタリングにより除去し、噛み込み等によりマスク12に発生する大きな加速度のみを加速度センサ14により検出できるように構成してもよい。
【0028】
また、露光装置には、露光装置の周囲に発生する振動を検出する第2の加速度センサを設けることができる。即ち、例えば地震等の振動により、露光装置の周囲に鉛直方向の大きな加速度が生じた場合には、この第2の加速度センサによる検出結果を加速度センサ14の位置における加速度に補正した上で、加速度センサ14が鉛直方向におけるマスク12の加速度として検出した数値から前記補正値を差し引いて、判定部16における判定に使用することができる。
【0029】
更に、本実施形態においては、加速度センサ14により、マスク12の鉛直方向における加速度のみが検出された場合を説明したが、加速度センサ14は、マスク12の水平方向における加速度を検出可能に構成されていてもよい。例えば、加速度センサ14は、3軸方向(鉛直方向、第1方向(スキャン方向)、第1方向に垂直の水平方向)におけるマスク12の加速度を検出可能である。但し、付着物の噛み込みの検出には、マスク12の鉛直方向における加速度のみを使用する。加速度センサ14を3軸方向における加速度を検出可能に構成することにより、例えば大型の基板を露光する場合において、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0030】
即ち、図2に示すように、本実施形態における基板2は、スキャン方向に垂直な水平の第2方向の幅が、マスク12よりも若干大きく設けられているが、大型の基板を露光する際には、マスク12の大きさを基板に対して大きくできない場合に、分割露光という手法が採用されている。即ち、図3(a)に示すように、大型の基板20を露光する際には、基板20を露光光に第1方向にスキャンした後、マスク12及び光源11の位置を基板20に対して第1方向に垂直の第2方向にシフトし、その後、第1方向への露光光のスキャンを再開する。又は、基板20の位置をマスク12及び光源11に対して第2方向にシフトする。マスク12及び光源11に対して基板2を相対的に第2方向にシフトするシーケンスが進行している間は、判定部16によるマスク12の加速度の判定を行わない。即ち、マスク12の第2方向へのシフトの際には、基板20とマスク12との間に付着物を噛み込む虞はない。そして、ステージ10により、基板20に対して露光光をスキャンするシーケンスが進行している場合にのみ、付着物の噛み込みを判定できるように構成すれば、他の要因による噛み込みの誤検知を防止しながら、本発明の効果を十分に得ることができる。
【0031】
また、図3(b)に示すように、マスク120に複数種のパターン(図3(b)においては2種類)が形成されており、マスク120を第1方向にシフトして、露光光が透過されるパターンを切り替える手法(共取りと称されている)においても、マスク120を第1方向にシフトするシーケンスが進行している間には、基板2とマスクとの間に付着物を噛み込む虞はない。よって、例えばマスク12の第2方向における加速度が大きい場合には、判定部16は、マスク12が第2方向にシフトされていると判定し、鉛直方向におけるマスク12の加速度の大小の判定を行わない。この場合においても、上記第2方向へのシフトの場合と同様に、他の要因による噛み込みの誤検知を防止でき、本発明の効果を十分に得ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1:露光装置、10:ステージ、11:光源、110:露光光、12,120:マスク、13:マスクホルダ、14:加速度センサ、15:制御部、16:判定部、2,20:基板、21:露光領域、3:付着物
図1
図2
図3