(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748160
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】携帯診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0205 20060101AFI20150625BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20150625BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20150625BHJP
A61B 5/0404 20060101ALI20150625BHJP
A61B 5/0402 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
A61B5/02 B
A61B5/02 310F
A61B5/02 310A
A61B5/14 322
A61B5/04 310H
A61B5/04 310M
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-227943(P2013-227943)
(22)【出願日】2013年11月1日
(62)【分割の表示】特願2008-502292(P2008-502292)の分割
【原出願日】2006年3月16日
(65)【公開番号】特開2014-39875(P2014-39875A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2013年11月21日
(31)【優先権主張番号】102005013429.7
(32)【優先日】2005年3月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507314475
【氏名又は名称】フローレ,インゴ
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】チョ,オク・キュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユン・オク
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−299740(JP,A)
【文献】
特許第3223931(JP,B2)
【文献】
実用新案登録第2544324(JP,Y2)
【文献】
特開平08−257002(JP,A)
【文献】
特開2001−029318(JP,A)
【文献】
特開昭63−186623(JP,A)
【文献】
特開平04−276235(JP,A)
【文献】
特開2002−172094(JP,A)
【文献】
特開昭61−068027(JP,A)
【文献】
特許第2750023(JP,B2)
【文献】
特開2004−321253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0205
A61B 5/0245
A61B 5/0402
A61B 5/0404
A61B 5/1455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ECG信号(55)を記録するECGユニット(1)であって患者の体からの電気信号を取り出す二個以上のECG電極(27、28)に接続されているか或いは接続可能となっているECGユニット(1)と、
容積脈波信号(56)を同時に記録するためのパルスオキシメトリーユニット(2)であって患者の体組織の血管系における血液灌流の光学測定のために少なくとも一個の光源(17、18)と少なくとも一個の光センサ(20)を含むパルスオキシメトリーユニット(2)と、
ECG信号(55)及び容積脈波信号(56)を評価するためのプログラム制御される評価ユニット(4)と、
患者の体温及び周囲温度を測定するためのセンサ(53)と、
ECGユニット、パルスオキシメトリーユニット及び評価ユニットを収容するケースとを含む携帯診断装置であって、
ECG電極並びにパルスオキシメトリーユニットの光源と光センサが、患者が一方の手で第1のECG電極に触り、他方の手で第2のECG電極に触ると同時に光源及び光センサに触ることができるように前記ケースの外側に配置され、前記光源及び前記光センサが前記第2のECG電極内に一体化されており、パルスオキシメトリーユニットが第2のECG電極に触っている方の患者の手から容積脈波信号を得て、
前記評価ユニット(4)が、
−ECG信号(55)におけるRピーク(57)の自動認識、
−容積脈波信号(56)における極値(58)の自動認識、及び
−ECG信号(55)におけるRピーク(57)と容積脈波信号(56)における引き続く極値(58)との間の時間差(60)の測定
を可能とするために適切に構成され、
前記評価ユニット(4)はさらに、容積脈波信号(56)における主及び副ピーク値(58、59)の自動認識、主及び副ピーク値(58、59)の大きさの測定、及び主及び副ピーク値(58、59)の間の時間差(61)の測定を可能とするために適切に構成されていることを特徴とする携帯診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の診断装置であって、評価ユニット(4)は、更に
−容積脈波信号(56)からの血液酸素飽和度の測定、
−ECG信号(55)からの心室心拍数の測定、及び/又は
−容積脈波信号(56)からのプレシスモグラフィック心拍数の測定
を可能とするために適切に構成されていることを特徴とする診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の診断装置であって、測定中に評価ユニット(4)によって決定されたパラメータを記憶すると共に測定の日付及び/又は時間を同時に記憶するメモリユニット(6)によって特徴付けられた診断装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の診断装置であって、評価ユニット(4)によって決定されたパラメータから心臓血管系の状態を決定することを可能にするように適切に構成された診断ユニット(5)によって特徴付けられた診断装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の診断装置であって、診断ユニット(5)は、メモリユニット(6)に記憶されたパラメータの変化から患者の心臓血管系の状態の変化に関する傾向を判定できるように更に適切に構成されていることを特徴とする診断装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の診断装置であって、診断ユニット(5)が、ECG信号(55)におけるRピーク(57)と容積脈波信号(56)における引き続く極値(58)との間の時間差(60)から弾力性パラメータを計算するように適切に構成されていることを特徴とする診断装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の診断装置であって、診断装置をコンピュータに接続するインターフェース(8)によって特徴付けられた診断装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の診断装置であって、ECG信号(55)、容積脈波信号(56)、及び評価ユニット(4)によって決定されたパラメータを表示する表示ユニット(7)によって特徴付けられた診断装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の診断装置のためのコンピュータに、
−ECG信号(55)におけるRピーク(57)の自動認識、
−容積脈波信号(56)における極値(58)の自動認識、及び
−ECG信号(55)におけるRピーク(57)と容積脈波信号(56)における引き続く極値(58)との間の時間差(60)の測定
を実行させると共に、
容積脈波信号(56)における主及び副ピーク値(58、59)の自動認識、主及び副ピーク値(58、59)の間の時間差(61)の測定、及び主及び副ピーク値(58、59)の間の時間差からの第2の脈波伝播速度の計算
を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムであって、前記コンピュータに、ECG信号(55)におけるRピーク(57)と容積脈波信号(56)における引き続く極値(58)との間の時間差(60)から脈波伝播速度(PWG)の計算を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECG信号を記録するECGユニットであって患者の体からの電気信号を取り出す二個以上のECG電極に接続されているか或いは接続可能となっているECGユニットと、容積脈波信号を同時に記録するためのパルスオキシメトリー(pulsoximetry)ユニットであって患者の体組織の血管系における血液灌流の光学測定のために少なくとも一個の光源と少なくとも一個の光センサを含むパルスオキシメトリーユニットと、ECG信号及び容積脈波信号を評価するためのプログラム制御される評価ユニットとを含む携帯診断装に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓血管疾患は、良く知られているように殆ど全ての工業国において主要死因となっている。特に、顕著なのは動脈硬化、即ち血管の異常狭窄である。動脈硬化の患者の約50%は冠状動脈性心疾患にも罹患している。心臓血管疾患の進行は明確に確認できること及び遅い段階ではこれらの疾患の治療の可能性が制限されることに鑑み、出来るだけ早期に診断を行うよう努力が払われている。このため、心臓血管系における複雑な相関を認識して評価することが必要である。早期診断を可能にするためには、心臓と血管の両方の機能状態を等しく評価する必要がある。良く知られているように、健康な血管系は、何年にも亘って軽微な心機能不全を相殺することができるが、既に動脈硬化になっている血管系は循環の代償不全を進行させる。
【0003】
ECG(心電図)は、心臓血管疾患の診断のために最も頻繁に使用される検査方法である。ECG装置により、二個以上のECG電極を用いて検査対象の患者の体から電気信号を取り出す。このようにして得たECGは、心臓における興奮伝播及び回帰時に生じる生体電圧を反映している。ECGは、診断によって評価できる多くのパラメータを含んでいる。心拍動中に心筋が収縮すると、ECGはRピークとも呼ばれる明確なピークを示す。更に、ECGは、Rピークに先行するP波と呼ばれる波を含む。Rピークの後にはT波と呼ばれる波が続く。Rピークの直前及び直後におけるECGの最小レベルがそれぞれQ及びSと呼ばれる。心臓血管診断に関係するパラメータは、P波の長さと振幅、区間PQの長さ、複合区間QRSの長さ、区間QTの長さ及びT波の振幅である。上に述べたパラメータの絶対値及びこれらのパラメータの比率から、心臓血管系の健康状態を判断することができる。
【0004】
末梢心臓血管パラメータの獲得と記録は、所謂プレシスモグラフィー(体積変動測定法)によって可能である。プレシスモグラフィーでは、末梢血管の血液が流れている状態での容積変化を測定する。現在では、NIRP(near infrared photo plethysmography )が成功している。これにおいて使われている診断方法は、簡単にパルスオキシメーターと呼ばれている。このパルスオキシメーターは、一般に波長が異なる赤色光及び/又は赤外光を患者の人体組織内に放射する2個の光源を有している。光は患者の体組織内で拡散され、その一部が吸収される。拡散した光は、適切な光電セルの形態の光センサによって検出される。市販のパルスオキシメーターは、一つには、通常660nmの波長領域の光を使用するものがある。この波長領域では、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの光吸収が大幅に異なる。従って、光センサによって検出した拡散光の強度は、検査対象の人体組織に供給される血液中の酸素が多いか少ないかによって変化する。他方、810nmの波長領域の光を通常使用するものもある。この波長領域は、所謂近赤外スペクトル領域に入る。このスペクトル領域におけるオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの光吸収は本質的に等しい。従来のパルスオキシメーターは、心拍動中に変化しパルスオキシメーターによって捕捉された微細血管系を通過した血液容積を反映する容積脈波信号を発生することができる。前述のスペクトル領域において異なる光波長が使用された場合、光の吸収度の差から、血液の酸素含有量(酸素飽和度)を評価するための結論を導き出すことができる。通常用いられるパルスオキシメーターは患者の指先又は耳たぶに取り付けられる。人体組織のこれらの領域における微細血管系の血液の灌流から容積脈波信号が発生される。
【0005】
米国特許第4960126号に開示された従来技術は、ECG同期パルスオキシメーターである。この従来技術による装置は、ECGユニットとパルスオキシメトリーユニットとから構成されている。従来技術による診断装置では、ECG信号のRピークを検出することによって心拍動サイクルを決定するためにECGユニットが使用されている。そして、心拍動サイクルの長さに基づいて、パルスオキシメトリーユニットによる酸素飽和度の決定が行われる。これにより、信号の平均化を改善し、動きに起因するアーティファクトを減少させる。全体として、従来のパルスオキシメーターに比べて、血液の酸素飽和度の値をより高い信頼度で測定できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ECGとパルスオキシメトリーを組み合わせた公知の装置は、複数の心臓血管パラメータの決定を可能にする。これらのデータに基づいて、開業医は包括的な心臓血管診断を正確に行うことができる。しかし、従来技術による装置は、切迫した或いは既に起きている心臓血管疾患の予備診断を自動的に行うことが出来ないという欠点がある。このため、従来技術の装置は、患者による自己診断にも簡単に用いられるものでない。
【0007】
この様な背景技術に鑑み、本発明の目的は、心臓血管系の(少なくとも大雑把な)状態と傾向の診断を可能にする診断装置を提供することである。この装置は、複数の診断パラメータを評価することに関して患者に過剰な要求を課すことなく、心臓血管疾患の早期の自己診断の結果を患者に示すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上で述べたタイプと性質の携帯診断装置に基づいてこの課題を解決するものであり、この携帯診断装置は、
ECG信号(55)を記録するECGユニット(1)であって患者の体からの電気信号を取り出す二個以上のECG電極(27、28)に接続されているか或いは接続可能となっているECGユニット(1)と、
容積脈波信号(56)を同時に記録するためのパルスオキシメトリーユニット(2)であって患者の体組織の血管系における血液灌流の光学測定のために少なくとも一個の光源(17、18)と少なくとも一個の光センサ(20)を含むパルスオキシメトリーユニット(2)と、ECG信号(55)及び容積脈波信号(56)を評価するためのプログラム制御される評価ユニット(4)と、患者の体温及び周囲温度を測定するためのセンサ(53)と、ECGユニット、パルスオキシメトリーユニット及び評価ユニットを収容するケースとを含む携帯診断装置であって、ECG電極並びにパルスオキシメトリーユニットの光源と光センサが、患者が一方の手で第1のECG電極に触り、他方の手で第2のECG電極に触ると同時に光源及び光センサに触ることができるように前記ケースの外側に配置され、前記光源及び前記光センサが前記第2のECG電極内に一体化されており、パルスオキシメトリーユニットが第2のECG電極に触っている方の患者の手から容積脈波信号を得て、前記評価ユニット(4)が、
−ECG信号(55)におけるRピーク(57)の自動認識、
−容積脈波信号(56)における極値(58)の自動認識、及び
−ECG信号(55)におけるRピーク(57)と容積脈波信号(56)における引き続く極値(58)との間の時間差(60)の測定
を可能とするために適切に構成され、前記評価ユニット(4)はさらに、容積脈波信号(56)における主及び副ピーク値(58、59)の自動認識、主及び副ピーク値(58、59)の大きさの測定、及び主及び副ピーク値(58、59)の間の時間差(61)の測定を可能とするために適切に構成されている。
【0009】
本発明は、ECGユニットとパルスオキシメトリーユニットとを含む組み合わせ診断装置においてECG信号と容積脈波信号とを組み合わせることにより、心臓血管系の簡単な自動状態診断を行えるという発見に基づくものである。適切なプログラム制御により、本発明の携帯診断装置の評価ユニットはECG信号におけるRピークを自動的に認識することができる。これにより、心拍動の正確な瞬間を自動的に決定できる。更に、本発明によるプログラム制御に基づき、評価ユニットは容積脈波信号における極値(即ち、最小値又は最大値)を認識できる。容積脈波信号における極値に基づき、心拍動によって起動された脈波が到着した瞬間をパルスオキシメトリーユニットがカバーする末梢測定位置において確定できる。その結果、ECG信号におけるRピークと容積脈波信号における引き続く極値との間の時間間隔を測定することができる。この時間間隔は、所謂脈波伝播速度の測定値である。脈波伝播速度に基づき血圧に関する判断を述べることができる。脈波伝播速度が低下している場合には血圧が上昇しており、脈波伝播速度が増大している場合には血圧が低下していることを示す。しかし、脈波伝播速度に基づく正確な血圧の判定は不可能であり、単に傾向を示すことができるだけである。更に、脈波伝播速度は血液濃度に依存すると共に、特に血管壁の弾力性に依存している。そして、血管の弾力性から、存在している可能性のある動脈硬化についての結論を引き出すことができる。脈波伝播速度は動脈の内径にも依存する。これにより、弾力性が一定で且つ血液濃度が一定であると仮定して、検診を行っている箇所(例えば、患者の腕)における血液の供給を特徴づけることができる。自動評価においてECG信号と容積脈波信号とを組み合わせることにより、本発明の診断装置は、患者の血管系の機能評価を自律的に行うことができる。自動的に評価した信号に基づき、本発明の診断装置は、患者の心臓血管の状態を大まかに評価し、動脈硬化の徴候がある場合は、患者に適切な警告信号を発生する。従って、患者は自己診断のために本発明の診断装置を採用できる。殆どの場合患者に過大な要求を課すことになる、装置によって測定された種々の心臓血管パラメータの差別的評価が不要となる。
【0010】
本発明の診断装置の目的にかなった実施形態によれば、評価ユニットは、
−容積脈波信号からの血液酸素飽和度の測定、
−ECG信号からの心室心拍数の測定、及び/又は
−容積脈波信号からのプレシスモグラフィック心拍数の測定
を行えるように更に適切に構成されている。
【0011】
血液酸素飽和度、心室心拍数及びプレシスモグラフィック心拍数の測定により、心臓血管系の更なるより詳細な状態診断が可能となる。本発明の診断装置を用いれば、心拍数の絶対値、心拍数の変動性、及び対応する心臓の不整脈を自動的に判定できる。この様にして、洞性頻脈、洞性徐脈、洞性停止及び所謂補充収縮等の不整脈を確認できる。更に、ECG信号に基づいて、一拍動についての心耳収縮の時間、心室収縮の時間、及び心室弛緩の時間等に関する判断を述べることが可能となる。更に、心臓における電気刺激信号線の所謂ブロック(AVブロック、脚ブロック等)及び循環障害又は梗塞に関する予備診断を行うことができる。その他の脈波の進行(pulse course)における異常は容積脈波信号に基づいて検出可能である。血液酸素飽和度も心臓血管系の状態診断における重要なパラメータである。血液酸素飽和度に基づいて、心臓血管系の効率と順応性に関しての結論を導き出すことができる。
【0012】
更に、本発明の診断装置の評価ユニットは、容積脈波信号における主及び副ピーク値の自動認識、主及び副ピーク値の大きさの測定、及び主及び副ピーク値の間の時間間隔の測定を行えるように適切に構成されて
いる。これにより、容積脈波信号の重拍脈を自動的に検査することが可能となる。重拍脈は、遠隔にある血管中の血圧推移における二重ピークとして定義されている。重拍脈は、心臓から進行する脈波が、血管の隔壁又は弾力性の低い血管部分における脈波の反射による逆行パルス(regressive pulse)と干渉することによって引き起こされる。弾力性が消失し動脈硬化が進行するとプレシスモグラフィック信号における主及び副ピーク値の間の時間間隔が短くなり、副最大値も同時に低下することが知られている。主及び副ピーク値の間の時間間隔を測定すると共に主及び副ピーク値の相対的大きさを測定することにより、動脈硬化の徴候を自動的に検出するために本発明の診断装置で利用できる他の重要なパラメータが得られる。
【0013】
容積脈波信号における副最大値は、上記したように下肢における脈波の反射によって全て引き起こされる。従って、主及び副ピーク値の間の時間間隔は大動脈の性質によって主に決まる。これにより、第2の脈波伝播速度、即ち大動脈における脈波伝播速度を測定することが可能となり、第1の脈波伝播速度は、上で概説したように関連する測定点(例えば、患者の腕)で測定される。従って、本発明の診断装置によれば、二つの異なる脈波伝播速度を測定すると共に疾病を診断するためにこれらの速度を(個々に或いは組み合わせて)評価することができ有利である。
【0014】
本発明の診断装置
は、患者の体温、周囲温度、及び/又は空気中の湿度を測定するためのセンサを含んで
いる。これらのパラメータは、本発明の診断装置のECGユニット及びパルスオキシメトリーユニットを校正するために特に重要である。
【0015】
本発明の診断装置が、評価ユニットによる測定中に決定されたパラメータを記憶すると共に測定の日付及び/又は時間を同時に記憶するメモリユニットを含んでいる場合、本発明の診断装置の特に目的にかなった実施形態が提供される。メモリユニットにより、心臓血管系の疾患の原因と対応する治療の効果の追跡調査と記録が可能となる。また、開業医は診断装置のメモリユニットに記憶されたデータを読み出して評価することができ、これにより医師による心臓血管系の詳細な状態診断が可能となる。本発明の診断装置が、診断装置のメモリユニットに記憶されたデータを医師のパーソナルコンピュータに転送するデータ転送インターフェースを含んでいると都合がよい。このインターフェースは、通常の有線式インターフェース又は無線式インターフェース(例えば、ブルートゥース標準に従って動作するもの)とすることができる。
【0016】
更に、本発明の診断装置が、評価ユニットによって決定されたパラメータから患者の心臓血管系の状態を決定することを可能にするように適切に構成された診断ユニットを含んでいる場合、目的にかなっている。従って、診断装置は、モジュール構造を有している。評価装置は、前に述べた方法で診断に必要なパラメータを決定するために獲得した信号を評価するだけである。そして、これらのパラメータは、心臓血管系の状態に関する結論を導き出すために診断装置の診断ユニットによって処理される。また、診断ユニットは、必要であれば、動脈硬化の存在を自動的に認識し、対応する警告信号を患者に対して発する。
【0017】
更に、本発明の診断装置の診断ユニットが、メモリユニットに記憶されたパラメータの経時変化から患者の心臓血管系の状態の変化に関する傾向を判定できるように更に適切に構成されている場合は有利である。場合によっては、診断装置の評価ユニットによって決定されたパラメータから可能性のある疾患についての結論を直接導き出すことが可能である。しかし、パラメータの変化、例えば、脈波伝播速度の連続的な増加は、心臓血管疾患の初期段階であることの徴候である。診断装置が患者によって長い期間に亘って繰り返し使用され、評価ユニットによって自動的に決定されたパラメータが診断装置のメモリユニットに記憶される場合、上記のような傾向は疾患の自動認識に利用できる。
【0018】
本発明の診断装置の診断ユニットが、ECG信号におけるRピークと容積脈波信号における引き続く極値との間の時間間隔から弾力性パラメータを計算するように構成されていると都合がよい。弾力性パラメータは、患者の血管の弾力性についての測定値を表している。脈波伝播速度(PWG)は、血管の弾力性κ及び血液の特定の濃度ρの商の平方根に比例する。適用可能な式を次に示す。
【0019】
【数1】
【0020】
式中、κは血管の弾力性であり、hは静脈血管の厚さであり、dは血管の直径であり、ρ血液の濃度である。この相関より、もし血液の特定の濃度ρと他のパラメータが一定であると仮定すると、弾力性κは診断ユニットによって計算できる。弾力性パラメータのみ又は本発明の診断装置によって決定できる心臓血管系の他のパラメータとの組み合わせから、動脈硬化に関する結論を導き出すことができる。
【0021】
本発明の目的にかなった実施形態によれば、診断装置は、ECG信号、容積脈波信号、及び評価ユニットによって決定されたパラメータを表示する表示ユニットを含む。診断装置を利用する患者及び/又は開業医は表示ユニットから全ての値を不自由なく読み出すことができる。同時に、診断装置が適切に機能しているか否かを確認できる。
【0022】
本発明の診断装置によれば、ECGユニット、パルスオキシメトリーユニット及び評価ユニットが共通のケースに収容されている。診断装置はコンパクトであり、何時でも携帯可能な装置として利用できる。
【0023】
ECG電極並びにパルスオキシメトリーユニットの光源と光センサはケースの外側に配置する。患者は一方の手で第1のECG電極に触り、他方の手で第2のECG電極に触ると同時に光センサに触ることができる。患者は、このように構成された診断装置を両手でしっかり保持し、同時に診断装置の表示を見る。ECGの導出は、患者の左右の手から行われる。パルスオキシメトリーユニットは、ケースに接触している二本の手の内の一方において容積脈波信号を同時に獲得する。この構成は、追加の電極をケーブル接続を介して診断装置に接続する必要がないという利点がある。全ての構成要素がコンパクトなユニットを構成する。装置を動作させる上での誤り、より詳細には、ECG電極の接続及び患者の体へのパルスオキシメーターの取付けにおいて発生する誤りが除かれる。
【0024】
同様にECG信号は、患者の体に直接接着させることができる少なくとも2個の外部電極を介して取り出すことができる。この構成は、例えば、エルゴメーター上に位置を確保する又は支持を得るために、患者の手を自由にできるという利点がある。
【0027】
ECGユニットとパルスオキシメトリーユニットとを含む実際に知られた診断装置を、本発明による評価ユニットの適切なプログラム制御によって採用することが可能となる。そのような診断装置のためのコンピュータに実行させるためのプログラムは、
−ECG信号におけるRピークの自動認識、
−容積脈波信号における極値の自動認識、及び
−ECG信号におけるRピークと容積脈波信号における引き続く極値との間の時間間隔の測定
を実行させる
と共に、
容積脈波信号(56)における主及び副ピーク値(58、59)の自動認識、主及び副ピーク値(58、59)の間の時間差(61)の測定、及び主及び副ピーク値(58、59)の間の時間差からの第2の脈波伝播速度の計算
を実行させる。
【0028】
更に、プログラムは、コンピュータに、ECG信号におけるRピークと容積脈波信号における引き続く極値との間の時間間隔から脈波伝播速度を計算を実行させることができる。脈波伝播速度は、本発明の診断装置による心臓血管系の状態判定の基礎となる中心的なパラメータを表す。
【0029】
プログラムは、コンピュータに、容積脈波信号における主及び副ピーク値を自動的に認識して、主及び副ピーク値の間の時間間隔を測定すると共に主及び副ピーク値の間の時間間隔から第2の脈波伝播速度を計算を実行
させる。この第2の脈波伝播速度は動脈における脈波伝播速度である。
【0030】
上で述べたタイプのプログラムは、通常のPCによってECG信号及び容積脈波信号を評価するために本発明の趣旨で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明による診断装置の構成をブロック図に基づいて示す図。
【
図2】
図2は、本発明による診断装置のパルスオキシメトリーユニットを示すブロック図。
【
図4】
図4は、工程図に基づく脈波伝播速度の決定を示す図。
【
図5】
図5は、本発明による診断装置のECGユニットの回路図。
【
図5a】
図5aは、本発明による診断装置のECGユニットの回路図。
【
図6】
図6は、本発明による診断装置のパルスオキシメトリーユニットの回路図。
【
図6a】
図6aは、本発明による診断装置のパルスオキシメトリーユニットの回路図。
【
図7】
図7は、容積脈波信号をECG信号と共に示す図。
【0032】
本発明の実施形態の例を、関連する図面を参照して以下により詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1は、本発明による携帯診断装置の必須の構成要素とそれらの相互作用を明示している。診断装置はECGユニット1とパルスオキシメトリーユニット2とを含む。ECGユニット1は、患者の体から電気信号を取り出すためのECG電極(
図1には詳細に示されていない)に接続可能である。ECGユニット1によって獲得されたECG信号は分析ユニット3に送られる。パルスオキシメトリーユニット2は、患者の体組織の微細血管系における血液灌流を光学的に測定するものである。パルスオキシメトリーユニット2によって異なる2光波長で獲得された容積脈波信号も分析ユニット3に送られる。パルスオキシメトリーユニット2及びECGユニット1からの信号が分析ユニット3によって前処理される。即ち、50及び/又は60Hzからのネット周波数帯の干渉を除去するために信号がバンドパスフィルタを通される。更に、パルスオキシメトリーユニット2からの信号は、信号対雑音比を低減するために平均化される。分析ユニット3を通過した後、ECGユニット1及びパルスオキシメトリーユニット2からの前処理済信号は評価ユニット4に入る。評価ユニット4によって、心臓血管診断に必要なパラメータが信号から抽出される。このために、評価ユニット4は適切なプログラム制御を有する。このプログラム制御により、ECG信号におけるRピークが自動的に認識され、容積脈波信号における極値が自動的に認識され、ECG信号におけるRピークと容積脈波信号における引き続く極値(例えば、時間的に最も近い最小値)との間の時間間隔が測定される。更に、パルスオキシメトリーユニット2の容積脈波信号から血液酸素飽和度が測定される。ECG信号におけるRピーク間の時間間隔から心室心拍数が測定される。プレシスモグラフィック心拍数が容積脈波信号から測定される。更に、評価ユニット4は、そのプログラム制御により、容積脈波信号における主及び副ピーク値を自動的に認識すると共に主及び副ピーク値の大きさを測定するように適切に構成されている。それに加え、容積脈波信号における主及び副ピーク値の間の時間間隔が評価ユニット4によって測定され、これにより、上で概説したように、大動脈における脈波伝播速度を確定できる。評価ユニット4によってこのように決定されたパラメータは診断ユニット5に送られる。診断ユニット5は、評価ユニット4によって決定されたこれらのパラメータから心臓血管系の状態を決定できるように適切に構成されている。適切なプログラム制御により、診断ユニット5は関連するパラメータを解釈し、患者の血管系の質を評価すると共に、決定されたパラメータが動脈硬化の存在を示しているか否かを確定する。診断ユニット5は、心拍緩徐又は心急拍があるか否かを確定するために心拍数を評価する。例えば期外収縮等の他の拍動の異常も診断ユニット5によって確定できる。更に、診断ユニット5は、心室心拍数をプレシスモグラフィック心拍数と比較して脈拍欠損を検出する。しかし、特に、診断ユニット5はそのプログラム制御により、ECG信号におけるRピークと容積脈波信号における引き続く極値との間の時間間隔から弾力性パラメータを計算するように適切に構成されている。従って、弾力性パラメータは、患者の血管の弾力性についての測定値である。評価ユニット4によって決定された他のパラメータ、より詳細には容積脈波信号の重拍性に関するパラメータにより、診断ユニット5は、患者の心臓血管状態を自律的に高い信頼性で分析できる。したがって、本発明の診断装置は、冠状動脈性心疾患の早期診断を可能にするのに役立つ。評価ユニット4によって決定されたパラメータ及び診断ユニット5がこれから引き出したデータは、最終的には、本発明の診断装置のメモリユニット6に記憶される。各測定の日時も同時に記憶される。このようにして得た全てのデータ及びパラメータは表示ユニット7によって表示できる。特に、表示ユニット7は、ECG信号,容積脈波信号及び脈波伝播速度を表示する。それに加え、診断装置とコンピュータとの間の接続を確立するためにインターフェース8が設けられている。インターフェース8を介して、全てのデータとパラメータ、特にメモリユニット6に記憶されたデータとパラメータを開業医のPC(詳細には示されていない)に送ることができる。そこでデータをより詳細に分析することができる。特に、診断装置を用いて長期に亘って記録されたデータとパラメータの変化を調査し、患者の既に罹患している疾患の進行に関する特定の傾向を見出すことができる。更に、治療が成功したか否かを追跡調査できる。また、本発明の診断装置を単なるデータ収集及び伝送ユニットとして使用し、記録した信号を例えは医師のPCに直接送るようにすることも可能である。この場合、PCによって対応する評価、計算及び表示(次の更なる説明を参照のこと)を行うことができる(恐らく、より迅速により快適に行うことができる)。
【0034】
図2は、本発明の診断装置のパルスオキシメトリーユニット2の構成を示す。パルスオキシメトリーユニット2はマイクロコントローラ9を含む。このマイクロコントローラ9の不可欠な部分は、赤外変調器11と赤色変調器12とを駆動するタイミング発生器10である。変調器11、12により、調整可能電圧供給源13、14の供給電圧が変調される。変調された電圧は、電流/電圧変換器15、16を介して、赤外光を発光する発光ダイオード17及び赤色光を発光する発光ダイオード18に導かれる。タイミング発生器10は、発光ダイオード17、18が確実に交互にオンオフされるようにする。したがって、患者の体組織が赤色光と赤外光とによって交互に照射される。体組織19内において、光は分散され、組織19を通って流れる血液のオキシヘモグロビン及び/又はデオキシヘモグロビンの含有量に対応して吸収される。分散した光は光検出器(フォトダイオード)20によって記録される。光検出器20の光子束は変換器21によって電圧に変換され、この電圧が増幅器22によって増幅され、アナログ/デジタル変換器23によってデジタル信号に変換される。そして、デジタル信号は、マイクロコントローラ9の部品である赤外/赤色復調器24に送られる。赤外/赤色復調器24はタイミング発生器10に接続されている。復調器24は、デジタル信号を2個の容積脈波信号25、26に分割する。信号25は組織19における赤外光の吸収を表し、信号26は組織19における赤色光の吸収に割り当てられている。
【0035】
本発明の診断装置のECGユニット1の構成を
図3に基づいて説明する。2個のECG電極27、28がECGユニット1に接続されている。電極27、28によって獲得された信号は最初にハイパスフィルタ29、30を通過する。ハイパスフィルタ29、30の境界周波数は0.05Hzから0.5Hzの間でのあるのが好ましい。フィルタを通過した信号は差動増幅器31に送られる。それは、ECG信号におけるモーションアーティファクトを減少させる目的の高い同相除去によって特徴付けられる。差動増幅器31の後には増幅率が可変の別の増幅器32が設けられている。このようにして増幅されたアナログ信号はアナログ/デジタル変換器33によってデジタル信号に変換され、このデジタル信号はマイクロコントローラ34(マイクロコントローラ9と同一でもよい)に送られる。最後に、ECG信号から50及び/又は60Hzのネット周波数での信号の干渉を除去するためにデジタル信号のフィルトレーション35が行われる。
【0036】
本発明の診断装置の基本的な機能態様を
図4に示す。前に概説したように、ECGユニット1とパルスオキシメトリーユニット2によって獲得され分析ユニット3によって処理された信号は評価ユニット4によって評価される。このために、評価ユニットは適切なプログラム制御を含んでいる。このプログラム制御は、処理ステップ36において、最初にECG信号を分析し、PQRST複合波の種々の時間間隔を測定する。特に、ECG信号におけるRピークが処理ステップ36において認識される。本発明の診断装置のリアルタイムクロック(これらの図には詳細に示されていない)にアクセスすることにより、検出したRピークの正確な時点が処理ステップ37において決定される。更に、評価ユニット4のプログラム制御は、重拍性計算ルーチン38を含む。それは、デジタル容積脈波信号における主及び副ピーク値を自動的に認識すると共に、主及び副ピーク値の大きさと主及び副ピーク値の間の時間間隔を測定する。また、別のルーチン39は、診断装置のリアルタイムクロックにアクセスすることにより、検出した主最大値の各々について正確な時点を決定する。診断ユニット5のプログラム制御は、ルーチン37によって測定されたRピーク間の時間間隔と、容積脈波信号によって示されルーチン39によって決定された主最大値(及び/又は最小値)の時点とから弾力性パラメータを計算するためのルーチン40を含む。例えば、ルーチン40は、弾力性パラメータとして、ECG信号におけるRピークと容積脈波信号の内の一信号における引き続く最小値との間の時間間隔に反比例する脈波伝播速度を決定する。弾力性パラメータは患者の血管の弾力性についての測定値を表し、表示ユニット7によって表示される。更に、診断ユニット5は、デジタルECG信号から心室心拍動を評価するためのルーチン41と、デジタルのプレシスモグラフィク信号から血液の酸素飽和度を確定するルーチン42を含む。心室心拍数と酸素飽和度も表示ユニット7によって表示される。
【0037】
本発明の診断装置の最も重要な機能は、上で概説したように動脈硬化症を自動的に早期に認識することである。評価ユニット4の評価ルーチン38と診断ユニット5の診断ルーチン40とにより、患者の血管の弾力性についての特徴である3個の重要なパラメータが決定される。従って、これらの3個のパラメータに基づき、既に生じている動脈硬化及び現在の疾患の重篤度でさえも確定できる。これらの3個のパラメータは、容積脈波信号における主及び副ピーク値の間の時間差、主及び副ピーク値の相対的な大きさ、及びECG信号におけるRピークと容積脈波信号における引き続く極値との間の時間差から生じる脈波伝播速度である。これらの3個のパラメータを評価することにより、本発明の診断装置は、必要な場合、警告信号を発生し、患者に対し、例えば医師の診察を受けるように助言する。開業医は、装置のメモリユニット6に記憶されたデータを詳細に評価して、患者に対して適切な治療を行うことができる。
【0038】
図5による線図は本発明の診断装置のECGユニット1の基本的な回路エンジニアリング構成を示す。2個のECG電極27、28を介して患者の体から電気信号が取り出される。最初に、これらの電気信号は、ダイオード、コンデンサ及び抵抗器から成る受動ネットワークによってフィルタリングされる。その後、信号は差動増幅器31に送られる。これは高い同相除去によって特徴付けられる。従って、両方の電極で同期して生じる干渉をECG信号から除去できる。第3の電極43を介して反転同相信号を患者にフィードバックしてそのような信号の干渉を更に低減できる。可変増幅器32によって増幅されたアナログ信号はアナログ/デジタル変換器33によってデジタルECG信号に変換され、このデジタルECG信号がマイクロコントローラ34に送られる。アナログ/デジタル変換器33は基準電圧源44に接続されている。
図5aによれば、ECG信号からネット周波数(50Hz及び/又は60Hz)を除去するためにノッチフィルタ31aが更に設けられている。
図6と
図6aは本発明の診断装置のパルスオキシメトリーユニット2の基本的な回路エンジニアリング構成を示す。赤外LED17の相互接続は赤色LED18の相互接続と同一である。両方の部品には基準電圧源45を介して電流が供給されている。ダイオード17、18の駆動はデジタルポテンショメータ46、47を介して行われる。これらは、パルスオキシメトリーユニット2のマイクロコントローラ9によってトリガされる。演算増幅器48、49の出力における電圧とこれに続く抵抗器によって発光ダイオード17及び/又は18を通して流れる電流が決まる。光ダイオード50、51が設けられ、演算増幅器48、49に接続されている。
図6aによる回路の変形例では1個の光ダイオード50のみが必要とされる。これにより、ダイオード17、18から発光される光の温度に依存しない一定の強度が制御される。発光ダイオード17及び又は18からの光は光ダイオード20によって検出される。光ダイオード20は演算増幅器52に接続されている。この演算増幅器52は、光ダイオード20を通る電流を電圧に変換し、増幅する。この電圧がアナログ/デジタル変換器23によってデジタル化され、平均化された後パルスオキシメトリーユニットに送られる。更に、パルスオキシメトリーユニットの測定点において患者の体温を測定するためにNTC抵抗器53が設けられている。NTC抵抗器53はアナログ/デジタル変換器23に接続されている。NTC抵抗器53は、基準電圧源54を介して電圧が印加される単純な分圧器の構成部品である。基準電圧源54は同時にアナログ/デジタル変換器23のために使用される。
図6aでは、基準電圧源45のみが設けられている。
図5aによる回路は
図6aに示す変形例に対応し、
図6aには無いNTC抵抗器がアナログ/デジタル変換器33に接続されている。
【0039】
図7の上側は、ECG信号55を容積脈波信号56と共に時間の関数として示す。信号55、56は本発明による携帯診断装置によって同時に記録される。ECG信号55において複数のRピーク57を見ることができる。Rピーク57は心室拍動を示す。容積脈波信号において主最大値58及び副最大値59を見ることができる。重拍脈、即ちパルスオキシメトリーユニット2によってカバーされた血管における血圧の推移(blood pressure course)の二重ピーク形状を明示している。
図7の下側は、ECG信号55と容積脈波信号56からのタイムクリップを拡大して示す。この図では、Rピーク57と容積脈波信号56の主最大値58との間に時間差60があることが分かる。この時間差が本発明に従って測定される。時間差60は脈波伝播速度に依存する。時間差が大きいことは脈波伝播速度が低いことを示唆している。時間差が小さいことは脈波伝播速度が高いことを示唆している。脈波伝播速度の著しい増加は動脈硬化の存在を示す。何故なら、脈波伝播速度は血管の弾力性に依存するからである。脈波伝播速度を測定するために、Rピーク57と容積脈波信号56の引き続く最小値との間の時間差に頼ることもできる。この方法は、信号処理の点である程度の利点がある。それに加え、本発明の診断装置は、容積脈波信号56の主最大値58と副最大値59との間の時間差61並びに主最大値58と副最大値59の相対的な大きさを評価する。これらのパラメータから、心臓血管の状態、より詳しくは血管の弾力性に関する信頼性の高い結論を引き出すことができる。更に、P波62、最小値Q(S63)及び/又は最小値S(64)並びにT波65をECG信号55に見ることができる。ECG信号55のこれらの特徴部分の間の時間差が本発明による診断装置によって自動的に評価される。
【0040】
図8は本発明による診断装置の図を示す。この装置は、主に四角形のケース66を含み、この上側にLCD表示装置67が配置されている。それは診断装置の表示ユニット7を表す。LCD表示装置67には、ECG信号55と容積脈波信号56が時間の関数としてグラフィク表示される。同時に、心室心拍数HR、血液酸素飽和度SaO
2及び脈波伝播速度PWGが表示される。ケース66の外側には、2個の電極27、28が、患者が一方の手で電極27に触り、他方の手で電極28に触ることができるように配置されている。発光ダイオード17、18と光センサ、即ち光ダイオード20が電極28内に一体化されている。これにより、診断装置のパルスオキシメトリーユニットは、電極28を触っている患者の手の上で容積脈波信号を得る。ケース66の前側には診断装置を操作するためにスイッチ68が配置されている。
【0041】
ECG信号55を評価するために診断装置のプログラム制御が行うアルゴリズムを
図9に基づいて説明する。アルゴリズムは、デジタルECG信号を入力データ69として受け取る。最初に、信号対雑音比を減少させるために信号がローパスフィルトレーション70にかけられる。次の処理ステップ71において、ECG信号の第1の時間微分が形成される。処理ステップ72において、この導出した信号が正の値から負の値に変化して零を横切ったことに基づきRピークが自動的に認識される。Rピーク間の時間差から処理ステップ63において心室心拍数が決定される。連続して決定された二心拍数が互いに比較され、類似度がチェックされる。それらの値が所定の境界内であれば、心室心拍数が診断装置の表示ユニット7によって表示される。例えば、心拍数の10個の値が連続的に決定された後、質パラメータが計算される。この質パラメータQは下記式を適用して計算される。
【0042】
【数2】
【0043】
ここで、N
sは互いに類似していると考えられる心拍数の値の数であり、N
tは決定された心拍数の値の総数である。例えば、N
tは10である。質パラメータQも診断装置の表示ユニット7によって表示できる。小さいQ値は不整脈性の心拍動を示唆する。処理ステップ74において、ECG信号におけるRピークの直前及び直後の最小値を決定する。これにより、ステップ75においてECG信号のQRS複合波の全てのパラメータを計算できる。各Rピークの後の第1の最大値がステップ76において決定される。この最大値はECG信号のT波を表す。ステップ77において、間隔QT、即ち、QRS複合波とT波との間の時間差が計算される。最後にステップ78において、ステップ76で検出されたT波と次のRピークの間の最大値が決定される。これにより、区間PR、即ちP波とRピークとの間の時間差がステップ79において計算できる。
【0044】
図10は、プレシスモグラフィック心拍数を決定するための本発明の診断装置のアルゴリズムを示す。アルゴリズムはデジタル容積脈波信号80から始まる。この信号は、信号対雑音比を減少させるために処理ステップ81において最初にローパスフィルタを通される。これに続き、処理ステップ82において、容積脈波信号の第1の時間微分値の計算が行われる。この第1の時間微分値は、信号対雑音比を減少させるために処理ステップ83において再度ローパスフィルタを通される。処理ステップ84において閾値が規定される。それは、例えば、予め設定可能な時間間隔(例えば10秒)の間における容積脈波信号の絶対最小値に対応する。そして、処理ステップ85において、容積脈波信号が事前に規定された閾値を通過したことが判定される。処理ステップ86において、事前に規定された閾値を通過した時点の間における誘導した信号の極小値が決定される。誘導した信号の極小値の間の時間間隔は、元の容積脈波信号における連続する反転点の間の時間差に対応する。従って、処理ステップ87において、極小値の間の時間差からプレシスモグラフィック心拍数を計算できる。処理ステップ88において、心室心拍数の決定と同様に、時間的に連続して決定されたプレシスモグラフィック心拍数の値の類似性がチェックされる。処理ステップ89において、時間的に連続して決定された所定数の心拍数の値に対して質パラメータが計算される。これも心室心拍数の決定と同様にして行われる。質パラメータが処理ステップ90において評価され、もし必要であれば、処理ステップ91において閾値が増加され、処理が処理ステップ85から再度行われる。質パラメータが最大値に達すると繰り返しが終了する。そして、処理ステップ92において平均プレシスモグラフィック心拍数が個々の心拍数の値から計算される。この値が最大質パラメータと共に表示される。これにより、アルゴリズムが処理ステップ93で終わる。