特許第5748163号(P5748163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5748163迅速交換機能を備えたステント送出カテーテル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748163
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】迅速交換機能を備えたステント送出カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20150625BHJP
   A61M 25/01 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   A61F2/966
   A61M25/01 500
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-535082(P2013-535082)
(86)(22)【出願日】2011年10月20日
(65)【公表番号】特表2013-544564(P2013-544564A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】US2011057067
(87)【国際公開番号】WO2012054709
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2013年12月6日
(31)【優先権主張番号】61/394,935
(32)【優先日】2010年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
(73)【特許権者】
【識別番号】511087006
【氏名又は名称】ストライカー エヌヴイ オペレイションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】STRYKER NV OPERATIONS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,スティーブン,シー.
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−517735(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0233117(US,A1)
【文献】 特開2000−279529(JP,A)
【文献】 特表平10−503411(JP,A)
【文献】 特表2007−512061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61M 25/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント送出システムであって、
ハブアッセンブリから遠位に延在する細長シャフトであって、前記細長シャフトの近位端から前記細長シャフトの遠位端に延在する管腔を有し、前記細長シャフトの前記近位端と前記遠位端との間の位置で前記管腔へのアクセスを与えるガイドワイヤポートを側壁に有する細長シャフトを有する送出カテーテルと;
前記管腔の中に配置され、前記ガイドワイヤポートを越えて延在する凹ませ可能なシースであって、ガイドワイヤが前記ガイドワイヤポートを通って延在しないときに、前記ガイドワイヤポートを閉鎖するよう構成され、これにより、ステントが前記ガイドワイヤポートから干渉されずに前記細長シャフトの管腔を通過し得る、凹ませ可能なシースと;
前記細長シャフトの前記管腔に摺動するよう配置可能な導入シースと;
前記導入シースに配置されたステントと;
を具え、
前記導入シースが、前記ステントが前記導入シースを通過して前記凹ませ可能なシースの中に入ることができ、
前記凹ませ可能なシースの遠位部が、ガイドワイヤが前記ガイドワイヤポートを通って通過し得るために、前記ガイドワイヤポートから離れるよう凹んで、前記ガイドワイヤポートを開放できるように、構成されることを特徴とするステント送出システム。
【請求項2】
さらに、前記ステント送出システムが、
前記ガイドワイヤポート及び前記ガイドワイヤポートの遠位の前記細長シャフトの前記管腔を通って延在するガイドワイヤと;
前記細長シャフトの前記管腔の中に向けて前記凹ませ可能なシースを通るよう構成されたステントであって、送出ワイヤの遠位部に配置された前記ステントを有する、前記導入シースに部分的に配置された送出ワイヤと;
を具えることを特徴とする請求項1に記載のステント送出システム。
【請求項3】
前記導入シースの前記近位端が、前記送出カテーテルの前記ハブアッセンブリと係合するよう構成されたハブアッセンブリを有することを特徴とする請求項に記載のステント送出システム。
【請求項4】
前記送出カテーテルの前記細長シャフトが、前記細長シャフトの前記管腔が第1の直径を有する近位部と、前記細長シャフトの前記管腔が前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有する遠位部とを有する特徴とする請求項1に記載のステント送出システム。
【請求項5】
前記導入シースが、前記細長シャフトの前記管腔の前記第2の直径とほぼ等しい直径を有する管腔を有することを特徴とする請求項に記載のステント送出システム。
【請求項6】
前記近位部が、前記細長シャフトの近位端から前記ガイドワイヤポートに延在し、
前記遠位部が、前記細長シャフトの遠位端から前記ガイドワイヤポートに延在することを特徴とする請求項に記載のステント送出システム。
【請求項7】
前記細長シャフトが、
a)前記細長シャフトの前記ガイドワイヤポートと前記遠位端との間で前記細長シャフトの1つの管腔を通り、前記ガイドワイヤポートの近位で前記細長シャフトの外側の領域を延在するガイドワイヤ;又は
b)前記細長シャフトの1つの管腔の中に向けて前記導入シースを通って前進可能なステントであって、送出ワイヤの遠位部に配置された前記ステントを有する送出ワイヤ;
のいずれかを受容するよう構成された1つの管腔を有することを特徴とする請求項1に記載のステント送出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、迅速交換機能を有する送出カテーテルでステントといった人工器官を送出するための送出システムに関するものである。特に、本開示は、体腔の標的位置にステントを送出するための、迅速交換式の送出カテーテルを利用したステント送出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステントは、一般に、血管又は他の体腔の一部分を開けるよう及び/又は拡張するよう構成された、円筒形の器具である。例えば、ステントを使用して、経皮経管的血管形成(PTA)又は経皮経管冠動脈形成(PCTA)手術、又は閉塞した体腔を開けるよう使用される他の処置の後に、血管といった体腔の開存性を保持し得る。
【0003】
自己拡張型のステントとして知られるステントの1つのタイプは、管状の拘束部材の中に閉じ込められて弾性的に圧縮した状態でされ、その後、管状の拘束部材を除去したときに弾性的に拡張して体腔の内側に係合するよう構成される。
【0004】
カテーテル送出システムの一実施例は、「ワイヤに沿った」送出システムと称され、カテーテルが、前もって導入されたガイドワイヤの上から患者の中に導入される。この実施例では、ガイドワイヤが、カテーテルの管腔を通してカテーテルの長さ全体にわたって延在する。カテーテル送出システムの別の実施例は、「迅速交換」送出システムと称され、ガイドワイヤが、遠位先端から遠位先端の近位に位置するガイドワイヤポートまで、カテーテルの遠位部のみを通って延在する。
【0005】
自己拡張型ステントを送出するための従来の「ワイヤに沿った」ステント送出システムは、このシステムが、ガイドワイヤの上から迅速に前進し及び/又は医療処置の間に迅速交換方式で別の送出システムと交換されるための性能を有しないため、望ましくない。さらに、このようなワイヤに沿ったシステムは、迅速交換システムよりも、交換のために長いワイヤの使用を要する。いくつかのこのようなシステムが、米国特許第6,019,778号;第5,702,418号;第5,026,377号に記載されている。
【0006】
自己拡張型ステントを送出するための従来の「迅速交換」ステント送出システムは、患者の体の中に挿入する前に、ガイドワイヤがステント又はカテーテルの別の管腔を通って延びるように、ガイドワイヤポートの遠位の送出カテーテルにステントを予装填することを要するため、送出カテーテルの遠位部の柔軟性及び/又は操作性が低くなる。いくつかのこのようなシステムが、米国特許第7,527,643号;第7,468,053号及び第5,690,644号及び米国特許公開第2005/0113902,第2009/0105808、及び第2010/0125322に記載されている。
【0007】
送出カテーテルの管腔を通して標的位置にステントを送出するために管腔を空にする一方で、標的位置に近付けるために迅速交換機能を有する送出システムを用いて標的位置に自己拡張型ステントを送出するための、ステント送出システムを提供する必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、医療器具の構造体及び組立品を製造するいくつかの代替的な構成、材料及び方法を扱うものである。
【0009】
このため、1つの具体的な実施例は、送出カテーテル及び送出カテーテルの管腔に配置可能なシースを有するステント送出システムである。送出カテーテルは、ハブアッセンブリから遠位に延在する細長シャフトを有する。細長シャフトは、細長シャフトの近位端から細長シャフトの遠位端にそれを通って延在する管腔を有する。細長シャフトは、細長シャフトの近位端と遠位端との中間の位置で管腔へのアクセスを与えるガイドワイヤポートを有する。シースがガイドワイヤポートを越えて延在してガイドワイヤポートを閉鎖し、ステントがガイドワイヤポートの近位からガイドワイヤポートの遠位にシースを通過し得るように、シースを送出カテーテルの管腔に配置可能である。ある例では、ステント送出システムが、さらに、細長シャフトの前記ガイドワイヤポートと遠位端との間で細長シャフトの管腔を通り、ガイドワイヤポートの近位で細長シャフトの外側を延在するよう構成されたガイドワイヤと、ガイドワイヤポートの近位からガイドワイヤポートの遠位に細長シャフトの管腔の中に向けてシースを通るよう構成されたステントであって、送出ワイヤの遠位部に配置されたステントを有する送出ワイヤと、を有する。ガイドワイヤが、ガイドワイヤポートのそばをシースを前進させる前に及び/又はシースを通してステントを細長シャフトの管腔の中に通す前に、細長シャフトの管腔から引き出される。
【0010】
別の具体的な実施例は、迅速交換機能を有するステント送出システムである。このステント送出システムは、送出カテーテルと送出カテーテルの管腔に配置可能なシースとを有する。送出カテーテルは、ハブアッセンブリから遠位に延在する細長シャフトを有する。細長シャフトは、細長シャフトの近位端から細長シャフトの遠位端にそれを通って延在する管腔を有する。細長シャフトは、細長シャフトの近位端と遠位端との中間の位置で細長シャフトの側壁を通って延在し、細長シャフトのガイドワイヤポートと遠位端との間で管腔を通り、ガイドワイヤポートの近位で細長シャフトの外側を延在するガイドワイヤの上からの送出カテーテルの前進のために管腔へのアクセスを与えるガイドワイヤポートを有する。シースは、ガイドワイヤが管腔を通って延在していない場合に、シースがガイドワイヤポートを越えて延在してガイドワイヤポートを閉鎖し、ステントがガイドワイヤポートの近位からガイドワイヤポートの遠位にシースの細長シャフトの管腔に向けてシースを通過し得るように、送出カテーテルの管腔に配置可能である。ある実施例では、ステント送出システムが、さらに、ガイドワイヤポートの近位からガイドワイヤポートの遠位に細長シャフトの管腔の中に向けてシースを通るよう構成されたステントであって、送出ワイヤの遠位部に配置されたステントを有する送出ワイヤを有する。ガイドワイヤが、ガイドワイヤポートのそばをシースを前進させる前に及び/又はシースを通してステントを細長シャフトの管腔の中に通す前に、細長シャフトの管腔から引き出される。
【0011】
上記のようないくつかの実施例の概要は、本発明の各実施例又は総ての実施形態を説明することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面とともに様々な実施例の以下の詳細な説明を考慮して、本発明を、より十分に理解できるであろう。
【0013】
図1図1は、典型的なステント送出システムの構成要素の長手方向の断面図である。
図2図2は、組み立てられた形態の、図1の典型的なステント送出システムの構成要素の長手方向の断面図である。
図3図3は、図1及び2のステント送出システムを用いて血管の閉塞部にステントを送出する典型的な方法を示す。
図4図4は、図1及び2のステント送出システムを用いて血管の閉塞部にステントを送出する典型的な方法を示す。
図5図5は、図1及び2のステント送出システムを用いて血管の閉塞部にステントを送出する典型的な方法を示す。
図6図6は、図1及び2のステント送出システムを用いて血管の閉塞部にステントを送出する典型的な方法を示す。
図7図7は、図1及び2のステント送出システムを用いて血管の閉塞部にステントを送出する典型的な方法を示す。
図8図8は、ステント送出システムの送出カテーテルとともに使用するための付属品を示す長手方向の断面図である。
図9図9は、別の典型的なステント送出システムの構成要素を示す。
図10図10は、組み立てられた形態の、図9の典型的なステント送出システムの構成要素を示す長手方向の断面図である。
図10A図10Aは、図10のライン10A−10Aに沿った横方向の断面図である。
図11図11は、別の典型的なステント送出システムの構成要素の長手方向の断面図である。
図12図12は、ステント送出システムの送出カテーテルの典型的な強化構造を示す。
図13図13A−Eは、典型的なステント送出システムの別の形態を示す。
図14図14A−Dは、典型的なステント送出システムのさらに別の形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義された以下の用語に関して、これらの定義は、異なる定義が特許請求の範囲又は本明細書で与えられない限り、適用されるものとする。
【0015】
ここに記載される総ての数値は、明示的に表示されているか否かに係わらず、「約」という言葉によって変更されると考えられる。「約」という言葉は、一般的に、記載された値と等価なもの(すなわち、同じ機能又は効果を有する)と考えられる、ある数値の範囲に関する。多くの例において、「約」という言葉は、有効数字まで四捨五入される数値を含むものとして示される。
【0016】
端点による数値範囲の表示は、その範囲内の総ての数値を含んでいる(例えば、1乃至5は、1、1.5、2、2.5、2.75、3、3.80、4及び5を含んでいる)。
【0017】
様々な部品、態様及び/又は仕様に関する、ある適切な寸法、範囲及び/又は値を記載するが、所望の寸法、範囲及び/又は値は、明示的に記載された値から逸脱してもよいことが、理解されよう。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、「1つの」、「1つの」、及び「その」という単数形は、内容がそれ以外を明らかに示さない限り、複数形を含むものである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、「又は」という用語は、一般に、内容がそれ以外を明らかに示さない限り、その意味において「及び/又は」を含むよう採用される。
【0019】
以下の詳細な説明は、図面を参照して解釈すべきであり、同じ構成要素が異なる図面において同じ符号が付けられている。詳細な説明及び図面は、必ずしも原寸に比例していないが、具体的な実施例を示す。示される具体的な実施例は、単に、具体例を意図するものである。具体的な実施例の選択された態様を、正反対の事項に明らかに言及しない限り、追加の実施例に組み込んでもよい。
【0020】
ここで、図1を参照すると、血管又は胆管といった体腔の標的位置にステント又は他の人工器官を送出するための、典型的なステント送出システム10の構成要素を示す。ステント送出システム10は、血管系の遠隔位置に到達するような寸法のマイクロカテーテルといった、送出カテーテル12を含んでおり、閉塞した血管といった標的位置にステント20を送出するよう構成される。送出カテーテル12は、ハブアッセンブリ24から遠位に延在する細長シャフト22を有する。細長シャフト22は、近位端26及び遠位端28を有しており、管腔30がそれらを通して延在してハブアッセンブリ24に連通する。このため、管腔30が、ハブアッセンブリ24から細長シャフト22の遠位端28に、送出カテーテル12の長さ全体に延在する。送出カテーテル12は、1つの管腔(例えば、管腔30のみ)を有することで、それを通って延在する複数の管腔を有するカテーテルと比較して、送出カテーテル12の断面を小さくする。管腔30は、細長シャフト22を通して、細長シャフト22の中央の長手軸に沿って位置する軸方向に延在する。
【0021】
送出カテーテル12は、細長シャフト22の近位端26と遠位端28の中間に位置するガイドワイヤポート32を有しており、送出カテーテル12に「迅速交換」機能を与える。ガイドワイヤポート32を、送出カテーテル12の細長シャフト22の遠位端28から比較的短い距離に、且つ近位端26から比較的長い距離に設けることができる。ある実施例では、細長シャフト22が、約80cm乃至約150cmの範囲の長さを有しており、ガイドワイヤポート32が、遠位端28から約15cm乃至約35cmだけ近位の位置にある。ガイドワイヤポート32は、細長シャフト22の側壁を通って延在しており、細長シャフト22の外側から管腔30にアクセスを与える。このため、細長シャフト22のガイドワイヤポート32と遠位端28との間で細長シャフト22の管腔30を通り、ガイドワイヤポート32の近位で細長シャフト22の外側を延在するガイドワイヤ18の上から、迅速交換方式で送出カテーテル12を前進させ得る。
【0022】
細長シャフト22は、細長シャフト22の長さ方向に沿って、様々な構成及び/又は特性を有する、1又はそれ以上、又は複数の領域を有する。例えば、細長シャフト22は、近位部34及び近位部34の遠位に延在する遠位部36を有する。ある実施例では、遠位部36が、近位部34の外径よりも小さい外径を有しており、細長シャフト22の遠位部の断面を小さくして、曲がりくねった血管系の中を案内し易くする。さらに、遠位部36は、近位部34よりも曲げ易くすることができる。近位部34を通って延在する管腔30の部分は、遠位部36を通って延在する管腔30の部分と同軸である。ある実施例では、近位部34を通って延在する管腔30の部分が、遠位部36を通って延在する管腔30の部分の直径よりもわずかに大きい直径を有する。細長シャフト22は、近位部34と遠位部36との間に遷移領域38を有する。ガイドワイヤポート32を遷移領域38の近位に、すなわち、細長シャフト22の近位部34に配置することができる。
【0023】
細長シャフト22、又はその部分を、ステンレス鋼又はニッケルチタンハイポチューブ、及び/又はポリエチレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート(polyethylterpthalate)、ナイロン、ポリウレタン、フッ素化ポリマ、エラストマポリエステル、等を含むポリマ材料で形成し得る。一般に、近位部34が十分な押圧能力を有して患者の血管系を通して前進するように、近位部34の多くの部分を遠位部36よりも堅い材料で形成し得る一方、遠位部36を柔軟なままにして、ガイドワイヤ18をより簡単に辿って、血管系の曲がりくねった領域の遠隔位置にアクセスするように、遠位部36の多くの部分を、より柔軟な材料で形成し得る。ある実施例では、近位部34が、網状の層又はコイル状の層といった強化層を有しており、送出カテーテル12の押圧能力を増大させる。
【0024】
また、ステント送出システム10は、標的位置への送出のために半径方向に圧縮された形態にステント20を保持するための、導入シース14といったシースを有する。導入シース14は、ハブアッセンブリ42から遠位に延在する細長シャフト40を有する。細長シャフト40は、近位端44及び遠位端46を有しており、管腔48がそこを通って延在し、ハブアッセンブリ42と流通する。細長シャフト40は、上述した適切な材料で形成される。
【0025】
ステント送出システム10は、さらに、導入シース14を通って延在可能な送出ワイヤ16及び送出カテーテル12を有しており、送出カテーテル12の遠位端28からステント20を配置する。送出ワイヤ16は、コアワイヤ50、又は近位端52から遠位端54に延在する他の細長部材を有する。ある実施例では、遠位端54が、コイルチップ(coil tip)又は半田チップ(solder tip)といった無外傷性の先端部を有する。送出ワイヤ16は、近位緩衝部材56及び近位緩衝部材56から遠位に間隔を空けた遠位緩衝部材58を有しており、それらの間に半径方向に圧縮された態様でステント20を配置し得る。ある実施例では、近位緩衝部材56及び/又は遠位緩衝部材58を、コアワイヤ50に取り付けられたコイル状部材とし得る。送出ワイヤ16を、導入シース14の管腔48及び送出カテーテル12の管腔30を通って前進するような大きさにして、標的位置で送出カテーテル12の遠位端28からステント20を配置し得る。
【0026】
ステント20を、半径方向に拘束されている時に半径方向に圧縮した態様から、非拘束のときに半径方向に拡張した態様に、自動的に拡張するよう構成された自己拡張型ステントとし得る。ステント20を、ポリマ材料、ステンレス鋼、タンタル、又はニチノールとして知られる超弾性ニッケルチタン合金のようなニッケルチタン合金といったといった金属、及び金属合金を含む生体適合材料で形成できる。
【0027】
半径方向に圧縮した形態にステント20を拘束する導入シース14とともに使用する前に、ステント20は、半径方向に圧縮した態様で、送出ワイヤ16の近位緩衝部材56と遠位緩衝部材58との間に位置するよう導入シース14に予装填される。他の実施例では、ステント20を別のシースの中に予装填し、その後で、医療処置の間に導入シース14の中に挿入することができ、又はステント20を半径方向に圧縮して、その後で、医療処置の間に導入シース14の中に挿入し得る。
【0028】
近位緩衝部材56がステント20に接触して遠位にステント20を押しやるように、送出ワイヤ16を操作することによって、ステント20を導入シース14の管腔48を通して遠位に押すことができる。ステント20を近位に引くことが望ましい場合には、遠位緩衝部材58がステント20に接触して近位にステント20を押し付けるように、送出ワイヤ16を近位に操作できる。
【0029】
図2に移ると、導入シース14の細長シャフト40は、送出カテーテル12のハブアッセンブリ24を通して送出カテーテル12の管腔30の中に挿入できる大きさとなっている。例えば、導入シース14を送出カテーテル12の管腔30の中に摺動可能に配置できる。導入シース14の近位部が送出カテーテル12の近位にとどまる一方で、導入シース14の遠位端46が送出カテーテル12のガイドワイヤポート32の遠位に延在するように、細長シャフト40を送出カテーテル12の管腔30の中に挿入できるように、導入シース14は、十分な長さを有する。このため、導入シース14は、ガイドワイヤポート32を越えて延在してガイドワイヤポート32を閉鎖し、ガイドワイヤポート32がガイドワイヤポート32のそばを通るステント20の前進又は後退を妨害せずに、ステント20が、ガイドワイヤポート32の近位からガイドワイヤポート32の遠位に向けて、導入シース14を通過し得る。
【0030】
導入シース14を、導入シース14の管腔48の直径が送出カテーテル12の遠位部36を通って延在する管腔30の部分の直径にほぼ等しくなるような大きさにすることができる。これにより、圧縮したステント20の直径がそれ程変わることなく、ステント20が導入シース14の管腔48から送出カテーテル12の管腔30に通り抜け、導入シース14から送出カテーテル12への滑らかな移行を与える。したがって、導入シース14が送出カテーテル12の管腔30に配置された状態では、アッセンブリ(すなわち、送出カテーテル12の遠位部36の管腔30の中に連なる導入シース14の管腔48)を通る通路が、全体を通してほぼ一定の直径を有する。
【0031】
ある実施例では、導入シース14が管腔30を通って完全に前進したときに、導入シース14の遠位端46がガイドワイヤポート32の遠位に位置するように、導入シース14のハブアッセンブリ42が、送出カテーテル12のハブアッセンブリ24に係合及び/又は結合するよう構成される。例えば、図2に示すように、ハブアッセンブリ42が、ハブアッセンブリ24のネジ部にネジで結合するようなネジ部を有する。他の実施例では、ハブアッセンブリ42が、ハブアッセンブリ24の係合部と締まり嵌めを形成する係合部を有し、又は、導入シース14が管腔30の中を十分に前進して導入シース14でガイドワイヤポート32を閉鎖したときに、ハブアッセンブリ42が、ハブアッセンブリ24のインタロック部と連結する、インタロック部を有する。このような構成により、送出システム10を通してステント20を前進させる前に導入シース14が十分に前進し、導入シース14がガイドワイヤポート32を越えて確実に前進したことを、使用者が確認できる。
【0032】
さらに、導入シース14の細長シャフト40を、細長シャフト40の遠位端46が遷移領域38の遠位部36の近位端に隣接又は接触するような、又はそうでなければ、細長シャフト40がさらに遠位に前進できないようにストッパとして機能する送出カテーテル12の細長シャフト22の一部に接触するような、大きさとすることができる。このような構成により、追加的に又は代替的に、導入シース14が、送出システム10を通してステント20を前進させる前に、十分に前進して導入シース14がガイドワイヤポート32を越えて確実に前進したことを、使用者が確認できる。このため、導入シース14は、導入シース14の遠位部がガイドワイヤポート32の遠位に位置するような長さを有する一方、導入シース14のハブアッセンブリ42の少なくとも一部が、送出カテーテル12のハブアッセンブリ24の近位に位置する。
【0033】
図3−7は、ステント送出システム10を用いて血管90の閉塞部92にステント20を送出する典型的な方法を示す。患者の血管系に到達した後、図3に示すように、血管90の管腔94を通して閉塞部92の近くの位置にガイドワイヤ18を前進させ、ガイドワイヤ18を介して送出カテーテル12を前進させ、閉塞部92の近くに送出カテーテル12の遠位端28を配置する通路を確立する。
【0034】
ガイドワイヤ18が配置された後、図4に示すような迅速交換方式でガイドワイヤ18の上から送出カテーテル12を前進させる。ガイドワイヤ18は、送出カテーテル12の遠位端28の管腔30の開口部の中に挿入され、ガイドワイヤポート32の遠位の管腔30に通され、ガイドワイヤポート32を通して送出カテーテルの外に出される。このため、ガイドワイヤ18を、遠位部36にわたって送出カテーテル12の管腔30を通して、ガイドワイヤポート32の近位の送出カテーテル12の外側に送ることができる。ある実施例では、送出カテーテル12の管腔30がステント20を収容しない状態で、送出カテーテル12が閉塞部92に向けてガイドワイヤ18の上から前進する。
【0035】
図5を参照すると、送出カテーテル12が閉塞部92の近くの治療部位に適切に前進すると、ガイドワイヤ18を送出カテーテル12の管腔30にこれ以上配置せず、ガイドワイヤ18を近位に引き出すことができる。ある実施例では、送出カテーテル12からガイドワイヤ18を引き出す前に、送出カテーテル12が、閉塞部92の遠位に、又は閉塞部92を横切るように、前進する。このため、ガイドワイヤポート32の外にガイドワイヤ18が近位に引き出され、管腔30からガイドワイヤ18が除去される。処置のこの時点では、送出カテーテル12の管腔30が空になる。
【0036】
管腔30からガイドワイヤ18が除去された状態で、その後、導入シース14をハブアッセンブリ24の中に送出カテーテル12の管腔30を通して前進させる。図6に示すように、導入シース14の遠位端46が管腔30の中でガイドワイヤポート32を越えて遠位に通過し、ガイドワイヤポート32を閉鎖するように、導入シース14を遠位に前進させる。導入シース14の中にステント20を予装填することで、導入シース14が管腔30を通って前進するときに導入シース14の中を前進し、又は、導入シース14が管腔30を通って前進してガイドワイヤポート32を越えて配置された後に、ステント20が導入シース14の近位端から導入シース14の中に装填される。
【0037】
導入シース14がガイドワイヤポート32を越えて配置された状態で、ステント20を、導入シース14の遠位の送出カテーテル12の管腔30の中に、導入シース14を通して遠位に前進させ、図7に示すように、治療部位で送出カテーテル12の遠位端28の外に出す。遠位方向に送出ワイヤ16を動作させことによって、ステント20を遠位に前進させ、これにより、近位緩衝部材56が半径方向に圧縮したステント20に接触し、遠位にステント20を押しやる。ステント20は、圧縮したステント20の直径をそれ程変えることなく、導入シース14の管腔48から送出カテーテル12の管腔30に通り抜け、導入シース14から送出カテーテル12への滑らかな移行をもたらす。導入シース14は、ガイドワイヤポート32を越えて延在して、ガイドワイヤポート32を閉鎖し、ガイドワイヤポート32がガイドワイヤポート32のそばを通るステント20の前進又は後退を妨害せずに、ステント20が、ガイドワイヤポート32の近位の位置からガイドワイヤポート32の遠位の位置に導入シース14を通過し得る。ステント20が、閉塞部92の近くで送出カテーテル12の遠位端28を出ると、ステント20は、外側に向けて半径方向に自動的に拡張し、閉塞部92と係合する。
【0038】
ステント20が、治療部位に配置されると、半径方向に拡張したステント20を血管90の閉塞部92に残した状態で、送出カテーテル12、導入シース14及び送出ワイヤ16を患者の血管系から引き出す。
【0039】
ある実施例では、送出カテーテル12に、図8に示すように、ガイドワイヤ装填スタイレット60及び/又はガイドワイヤ装填シース70を設けて、管腔30を通してガイドワイヤ18を装填しガイドワイヤポート32の外に出す際に使用者を補助する。例えば、ガイドワイヤ装填スタイレット60は、送出カテーテル12の管腔30の中に挿入されるよう構成された管状又は中実の細長シャフトである。ガイドワイヤ装填スタイレット60は、使用者がスタイレット60を操作するための近位端に設けられた操作部62、及び湾曲した又は角度を成す面を有して送出カテーテル12の管腔30からガイドワイヤポート32を通して外にガイドワイヤを向け易くする傾斜部64を有する。これにより、送出カテーテル12の遠位部36の管腔30を通して近位に進むガイドワイヤ18が、傾斜部64と係合し、管腔30の中央の長手軸から離れるようガイドワイヤポート32の外に向けられ、ガイドワイヤ18の近位端の向きを変える。
【0040】
ある実施例では、送出カテーテル12が迅速交換形式でガイドワイヤ18に装填された後に、ガイドワイヤ装填スタイレット60を送出カテーテル12から除去する。他の実施例では、送出カテーテル12がガイドワイヤ18の上から血管系を通して遠位に前進する際に、ガイドワイヤ装填スタイレット60が管腔30に配置されたままの状態であり、送出カテーテル12の近位部34の全体に付加的な支持を与える。
【0041】
追加的に又は代替的に、送出カテーテル12にガイドワイヤ装填シース70を設けて、迅速交換形式での送出カテーテル12へのガイドワイヤ18の装填をし易くする。ガイドワイヤ装填シース70は、近位端72、遠位端74及びそれらを通る管腔76を有する細長い管状部材を有する。ガイドワイヤ装填シース70は、送出カテーテル12の遠位端28における管腔30の遠位の開口部から、送出カテーテル12の遠位部36の管腔30を通って、ガイドワイヤポート32の外に出るように延在しており、ガイドワイヤ装填スタイレット70の近位部が、送出カテーテル12の外側のガイドワイヤポート32の近位に延在し、ガイドワイヤ装填シース70の遠位部が、送出カテーテル12の遠位端28の遠位に延在する。
【0042】
ガイドワイヤ18を、ガイドワイヤ装填シース70の遠位端74から近位端72の外に、ガイドワイヤ装填シース70の管腔76を通して近位に進ませ、ガイドワイヤポート32の外にガイドワイヤ18を送ることができる。ある実施例では、ガイドワイヤ装填シース70の遠位端74が、外側に拡がっており、又はガイドワイヤ装填シース70の遠位端74に、漏斗状の構造が設けられており、管腔76の中にガイドワイヤ18を入れ易くする。ガイドワイヤ18が送出カテーテル12の遠位部36を通ってガイドワイヤポート32の外に進んだ後に、ガイドワイヤ装填シース70を除去する。例えば、ガイドワイヤ装填シース70をガイドワイヤ18から剥がす。ある実施例では、ガイドワイヤ装填シース70が、ガイドワイヤ装填シース70の長さに沿って長手方向に延在する、優先的な引き裂き線、スリット、切り取り線、薄壁、又は弱くなった領域を有しており、それらに沿ってガイドワイヤ18を引いて、ガイドワイヤ18からガイドワイヤ装填シース70を除去する。
【0043】
ガイドワイヤの装填のためにスタイレット60及びガイドワイヤ装填シース70をいずれも使用する実施例では、それらを結合してもよい。例えば、図9に示すように、ステント送出システム10が、スタイレット部61及びガイドワイヤシース部71を有する一体化したスタイレット及びガイドワイヤシース98を有する。このケースでは、一体化したスタイレット/シース98が、送出カテーテル12の管腔30の所定の位置に位置しており、支持部及び直径的及び剛性的移動を容易にする送出カテーテル12の遠位端28の遠位に延在する遠位先端部を与え、曲がりくねった解剖学的構造へのシステムのアクセスを改善する。
【0044】
一体化したスタイレット/シース98は、送出カテーテル12の管腔30の中に挿入される大きさの近位のスタイレット部61を有する。スタイレット部61は、ハイポチューブ67であって、側壁を通る削り出しポート65を具えたハイポチューブ67といった遠位の管状部材に結合された近位シャフト63を有する。近位シャフト63は中実又は管状であり、近位シャフト63に所望の大きさの剛性を与えて、送出カテーテル12の近位部34全体に付加的な支持を与える。ある実施例では、一体化したスタイレット/シース98が、近位シャフト63とハイポチューブ67との間に回転結合部96を有しており、近位シャフト63とハイポチューブ67との間に相対回転運動を与える。回転結合部96により、使用中に削り出しポート65と送出カテーテル12のガイドワイヤポート32と揃え、揃った状態を維持することができる。
【0045】
一体型スタイレット/シース98は、ガイドワイヤシース部71の近位部が中に延在する管腔69を有する。ガイドワイヤシース部71は、ガイドワイヤ18を受容するために管状部材の遠位端73から近位端75に延在する管腔77を有する管状部材である。ガイドワイヤシース部71の管腔77を通って延在するガイドワイヤ18が送出カテーテル12の削り出しポート65及びガイドワイヤポート32を通って外に向けられるように、ガイドワイヤシース部71の近位端75をハイポチューブ67の削り出しポート65の近くに配置する。
【0046】
図10は、ガイドワイヤ18がガイドワイヤシース部71を通って配置された状態で、送出カテーテル12の管腔30の中に挿入される一体型スタイレット/シース98を示す。図9及び図10に示すように、送出カテーテル12は、ガイドワイヤポート32の近くの送出カテーテル12の側壁に形成されたガイドワイヤ傾斜部33を有しており、ガイドワイヤ傾斜部33がガイドワイヤシース部71の近位端75と実質的に関連して、送出カテーテル12の削り出しポート65及びガイドワイヤポート32の外にガイドワイヤ18を向けるための連続的な軌跡を与える。図10Aは、送出カテーテル12のガイドワイヤポート32を出てガイドワイヤ傾斜部33の外に位置するガイドワイヤ18を示す断面図である。
【0047】
ガイドワイヤシース部71の遠位部は、送出カテーテル12の遠位端28の遠位に延在し、システムの直径及び剛性の段階的な移行部を与え、曲がりくねった生体構造の中へのアクセスを改善する。例えば、ガイドワイヤシース部71の遠位に延在する部分は、送出カテーテル12よりも柔軟性があるため、曲がりくねった血管系を案内する能力を高める。
【0048】
このような構成で、標的位置に血管系を通して送出カテーテル12を前進させつつ、送出カテーテル12の管腔30に配置された一体型スタイレット/シース98でガイドワイヤ18を辿る。適切に配置されると、ガイドワイヤ18を近位に移動させ、続いて送出カテーテル12の管腔30から一体型スタイレット/シース98を引き出す。一体型スタイレット/シース98の除去に続いて、ハブアッセンブリ24の中に送出カテーテル12の管腔30を通して導入シース14を前進させ、ここで説明するように標的位置にステント20を配置する。
【0049】
図11に示すように、ある実施例では、送出カテーテル12及び/又は導入シース14が、導入シース14が送出カテーテル12の管腔30の中に十分に前進し、送出カテーテル10を通してステント20を前進させる前に、導入シース14の遠位端46がガイドワイヤポート32を越えて前進したことを確認又は確かめるよう使用される、放射線不透過性のマーカ又は帯80及び/又は可視マーカ82といった目印を有する。例えば、導入シース14は、導入シース14の近位端の近くに可視マーカ82を有する。導入シース14の可視マーカ82の参照ポイントと、送出カテーテル12の参照ポイント(例えば、送出カテーテル12の可視マーカ82及び/又は送出カテーテル12のハブアッセンブリ24の近位端)とを揃えて、導入シース14がガイドワイヤポート32を越えて前進したことを使用者に示すことができる。例えば、導入シース14の可視マーカ82の遠位端と送出カテーテル12のハブアッセンブリ24の近位端との整列により、導入シース14がガイドワイヤポート32を越えて前進したことを使用者に示す。
【0050】
代替的又は追加的に、送出カテーテル12及び導入シース14が、導入シース14がガイドワイヤポート32を越えて前進したことを使用者に示すように揃う、放射線不透過性のマーカ80を有する。例えば、送出カテーテル12が、ガイドワイヤポート32の遠位に放射線不透過性のマーカ80を有し、導入シース14が導入シース14の遠位端46の近くに放射線不透過性のマーカ80を有する。蛍光透視技術又は他の画像技術を用いて、導入シース14の放射線不透過性のマーカ80と、送出カテーテル12のハブアッセンブリ24の放射線不透過性のマーカ80とを整列させ、医療処置の間に部品の相対位置を可視化することで、導入シース14がガイドワイヤポート32を越えて前進したことを使用者に示す。
【0051】
ある実施例では、送出カテーテル12が、図12に示すようにガイドワイヤポート32の近くに設けられた強化部材86を有する。強化部材86は、例えば、ガイドワイヤポート32を跨いでおり、ガイドワイヤポート32の近位及び/又は遠位に延在する。強化部材86は、送出カテーテル12のガイドワイヤポート32での細長シャフト22の強化を補助し及び/又はガイドワイヤポート32の近くにねじれ抵抗を与える。ある実施例では、強化部材86が、網状又はコイル状部材、又はレーザカット又はマイクロマシンで作製され、強化部材86の柔軟性を高めるために(直交する又はらせん状の長穴といった)1又はそれ以上又は複数の長穴が形成されたハイポチューブといった管状部材である。ある実施例では、強化部材86を、送出カテーテル12のポリマの管状部材の内部に、又は送出カテーテル12のポリマの管状部材の外部に、又は送出カテーテル12のポリマ材料の内層と外層との間に入れ込むように配置する。強化部材86は、ガイドワイヤポート32と整合する強化部材86の側壁を通って延在する側面開口を有する。
【0052】
血管又は胆管といった体腔の標的位置にステント又は他の人工器官を送出するための、他の典型的なステント送出システム110の構成要素を図13Aに示す。ステント送出システム110は、血管系の遠隔位置に達するような大きさのマイクロカテーテルといった送出カテーテル112を有しており、血管の閉塞部といった標的位置にステント20を送出するよう構成される。送出カテーテル112は、ハブアッセンブリ124から遠位に延在する細長シャフト122を有する。細長シャフト122は、近位端126及び遠位端128を有しており、それらを通って管腔130が延在してハブアッセンブリ124と液通する。これにより、管腔130が、ハブアッセンブリ124から細長シャフト122の遠位端128まで送出カテーテル112の長さ全体にわたって延在する。送出カテーテル112は、1つの管腔(例えば、管腔130のみ)を有することで、それを通って延在する複数の管腔を有するカテーテルと比較して、送出カテーテル112の断面を小さくする。管腔130は、細長シャフト122を通して、細長シャフト122の中央の長手軸に沿って位置する軸方向に延在する。
【0053】
送出カテーテル112は、細長シャフト122の近位端126と遠位端128との中間に位置するガイドワイヤポート132を有しており、送出カテーテル112に「迅速交換」機能を与える。ガイドワイヤポート132を、送出カテーテル112の細長シャフト122の遠位端128から比較的短い距離に、且つ近位端126から比較的長い距離に設けることができる。ある実施例では、細長シャフト122が、約80cm乃至約150cmの範囲の長さを有しており、ガイドワイヤポート132が、遠位端128から約15cm乃至約35cmだけ近位の位置にある。ガイドワイヤポート132は、細長シャフト122の側壁を通って延在しており、細長シャフト122の外側から管腔130にアクセスを与える。このため、細長シャフト122のガイドワイヤポート132と遠位端128との間で細長シャフト122の管腔130を通り、ガイドワイヤポート132の近位で細長シャフト122の外側を延在するガイドワイヤ18の上から、迅速交換方式で送出カテーテル112を前進させ得る。
【0054】
細長シャフト122は、細長シャフト122の長さに沿って、様々な構成及び/又は特性を有する1又はそれ以上、又は複数の領域を有する。例えば、細長シャフト122は、近位部134及び近位部134の遠位に延在する遠位部136を有する。ある実施例では、遠位部136が、近位部134の外径よりも小さい外径を有しており、細長シャフト122の遠位部の断面を小さくして、曲がりくねった血管系の中を案内し易くする。さらに、遠位部136は、近位部134よりも曲げ易くすることができる。近位部134を通って延在する管腔130の部分は、遠位部136を通って延在する管腔130の部分と同軸である。細長シャフト122は、近位部134と遠位部136との間に遷移領域138を有する。ガイドワイヤポート132を遷移領域138の近位に、すなわち、細長シャフト122の近位部134に配置することができる。
【0055】
細長シャフト122は、外側の管状部材121と外側の管状部材121の内側に設けられた凹ませ可能なシース123とを有する。凹ませ可能なシース123の遠位部は、外側の管状部材121の側壁を通って延びているガイドワイヤポート132を越えて延びている。図13Dに示すように、凹ませ可能なシース123は十分に柔軟性があり、ガイドワイヤポート132から離れるよう内側に凹ませ可能なシース123の遠位部が曲げられ、ガイドワイヤ18が、ガイドワイヤポート132の遠位の管腔130から、ガイドワイヤポート132を通って、ガイドワイヤポート132の外側のその近位の位置に、延在し得る。このため、ガイドワイヤ18を、凹ませ可能な123の外側に向けて、ガイドワイヤポート132の外に出すことができる。ガイドワイヤ18は、送出カテーテル112の遠位部を通って配置されると、外側の管状部材121とガイドワイヤポート132の遠位の凹ませ可能なシース123との間を延在し、ガイドワイヤ18は、凹ませ可能なシース123の内部に位置しない。ガイドワイヤ18がガイドワイヤポート132に位置しない場合、凹ませ可能なシース123の遠位部を外側の管状部材121に対して移動させ、送出カテーテル112の管腔130に通じないようガイドワイヤポート132を閉鎖できる。
【0056】
また、ステント送出システム110は、標的位置に送出するために半径方向に圧縮された形態にステント20を保持するための導入シース114といったシースを有する。導入シース114は、ハブアッセンブリ142から遠位に延在する細長シャフト140を有する。細長シャフト140は、近位端144及び遠位端146を有しており、管腔148がそれらの間を延在してハブアッセンブリ142と液通する。細長シャフト140を、上記のようなものを含む適切な材料で形成することができる。
【0057】
さらに、ステント送出システム110は、ステント送出システム10に関して上記と同じような、送出カテーテル112の遠位端128からステント20を送出するための、送出カテーテル112の管腔130を通って延在可能な送出ワイヤ116を有する。
【0058】
ステント20を、半径方向に拘束されている時に半径方向に圧縮した態様から、非拘束のときに半径方向に拡張した態様に、自動的に拡張するよう構成された自己拡張型ステントとし得る。ステント20を、ポリマ材料、ステンレス鋼、タンタル、又はニチノールとして知られる超弾性ニッケルチタン合金のようなニッケルチタン合金といったといった金属、及び金属合金を含む生体適合材料で形成できる。
【0059】
半径方向に圧縮した形態にステント20を拘束する導入シース114とともに使用する前に、ステント20は、半径方向に圧縮した態様で、送出ワイヤ116の近位緩衝部材156と遠位緩衝部材158との間に位置するよう導入シース114に予装填される。他の実施例では、ステント20を別のシースの中に予装填し、その後で、医療処置の間に導入シース114の中に挿入することができ、又はステント20を半径方向に圧縮して、その後で、医療処置の間に導入シース114の中に挿入し得る。代替的に、導入シース114を使用せずに、医療処置の間に、ステント20を送出カテーテル12の管腔130の中に直接挿入できる。
【0060】
近位緩衝部材156がステント20に接触して遠位にステント20を押しやるように、送出ワイヤ116を操作することによって、ステント20を導入シース114の管腔148を通して遠位に押すことができる。ステント20を近位に引くことが望ましい場合には、遠位緩衝部材158がステント20に接触して近位にステント20を押し付けるように、送出ワイヤ116を近位に操作できる。
【0061】
図13Bに移ると、導入シース114の細長シャフト140を、送出カテーテル112のハブアッセンブリ124を通して送出カテーテル112の管腔130の中に挿入できる大きさにすることができる。例えば、導入シース114を送出カテーテル112の管腔130の中に摺動可能に配置できる。
【0062】
ある実施例では、導入シース114のハブアッセンブリ142が、導入シース114が管腔130を通って完全に前進したときに、送出カテーテル112のハブアッセンブリ124に係合及び/又は結合するよう構成され、導入シース114のハブアッセンブリ142に、導入シース114が送出カテーテル112の中に十分に前進したことを使用者が確認又は確かめるために、上記のような補完的な目印を設けることができる。
【0063】
図13Cに示すように、ガイドワイヤ18が送出カテーテル112の管腔130から除去されると、凹ませ可能なシース123の遠位部が、ガイドワイヤポート132の近くの外側の管状部材121に向けて半径方向に移動する。このため、図13Eに示すように、ガイドワイヤ18がガイドワイヤポート132から除去された状態で、凹ませ可能なシース123が、ガイドワイヤポート132にわたって延在して、ガイドワイヤポート132を閉鎖し、ガイドワイヤポート132がガイドワイヤポート132のそばを通るステント20の前進又は後退を妨害せずに、ステント20が、ガイドワイヤポート132の近位からガイドワイヤポート132の遠位に向けて送出カテーテル112の管腔130を通過できる。このため、ステント20が取り付けられた状態の送出ワイヤ116を、送出ワイヤ116及びステント20が凹ませ可能なシース123の内部に位置する状態で、ガイドワイヤポート132のそばを前進させることができる。
【0064】
図14Aは、血管又は胆管といった体腔の標的位置にステント又は他の人工器官を送出するための、ステント送出システム210の別の実施例を示す。本実施例では、患者の血管系を通して送出カテーテル212を前進させる前に、ステント20を送出カテーテル212の管腔230に予装填できる。
【0065】
送出カテーテル212は、ハブアッセンブリ224から遠位に延在する細長シャフト222を有する。細長シャフト222は、近位端226及び遠位端228を有しており、それらを通って管腔230が延在してハブアッセンブリ224と液通する。これにより、管腔230が、ハブアッセンブリ224から細長シャフト222の遠位端228まで送出カテーテル212の長さ全体にわたって延在する。送出カテーテル212は、1つの管腔(例えば、管腔230のみ)を有することで、それを通って延在する複数の管腔を有するカテーテルと比較して、送出カテーテル212の断面を小さくする。管腔230は、細長シャフト222を通して、細長シャフト222の中央の長手軸に沿って位置する軸方向に延在する。
【0066】
送出カテーテル212は、細長シャフト222の近位端226と遠位端228との中間に位置するガイドワイヤポート232を有しており、送出カテーテル212に「迅速交換」機能を与える。ガイドワイヤポート232を、送出カテーテル212の細長シャフト222の遠位端228から比較的短い距離に、且つ近位端226から比較的長い距離に設けることができる。ある実施例では、細長シャフト222が、約80cm乃至約150cmの範囲の長さを有しており、ガイドワイヤポート232が、遠位端228から約15cm乃至約35cmだけ近位の位置にある。ガイドワイヤポート232は、細長シャフト222の側壁を通って延在しており、細長シャフト222の外側から管腔230にアクセスを与える。このため、細長シャフト222のガイドワイヤポート232と遠位端228との間で細長シャフト222の管腔230を通り、ガイドワイヤポート232の近位で細長シャフト222の外側を延在するガイドワイヤ18の上から、迅速交換方式で送出カテーテル212を前進させ得る。
【0067】
細長シャフト222は、外側の管状部材221と外側の管状部材221の内部に設けられた凹ませ可能なシース223とを有する。凹ませ可能なシース223の遠位部は、外側の管状部材221の側壁を通って延びているガイドワイヤポート232を越えて延びている。図14Cに示すように、凹ませ可能なシース223は十分に柔軟性があり、ガイドワイヤポート232から離れるよう半径方向内側に凹ませ可能なシース223の遠位部が曲げられを、ガイドワイヤポート232の遠位の管腔230から、ガイドワイヤポート232の近位の位置に、ガイドワイヤポート232の外側に向けてガイドワイヤを通過させ得る。このため、ガイドワイヤ18を、凹ませ可能なシース223の外側に向けて、ガイドワイヤポート232の外に出すことができる。ガイドワイヤ18は、送出カテーテル212の遠位部を通って配置されると、外側の管状部材221とガイドワイヤポート232の遠位の凹ませ可能なシース223との間を延在し、ガイドワイヤ18は、凹ませ可能なシース223の内部に位置しない。ガイドワイヤ18がガイドワイヤポート232に位置しない場合、凹ませ可能なシース223の遠位部を外側の管状部材221に対して移動させ、送出カテーテル212の管腔230に通じないようガイドワイヤポート232を閉鎖できる。
【0068】
ステント送出システム210は、ステント送出システム10に関して上記と同じような、送出カテーテル212の遠位端228からステント20を送出するための、送出カテーテル212の管腔230を通って延在可能な送出ワイヤ216を有する。
【0069】
ステント20を、半径方向に拘束されている時に半径方向に圧縮した態様から、非拘束のときに半径方向に拡張した態様に、自動的に拡張するよう構成された自己拡張型ステントとし得る。ステント20を、ポリマ材料、ステンレス鋼、タンタル、又はニチノールとして知られる超弾性ニッケルチタン合金のようなニッケルチタン合金といったといった金属、及び金属合金を含む生体適合材料で形成できる。
【0070】
半径方向に圧縮した形態にステント20を拘束する送出カテーテル212とともに使用する前に、ステント20は、半径方向に圧縮された態様で、送出ワイヤ216の近位緩衝部材256と遠位緩衝部材258との間に位置するよう送出カテーテル212に予装填される。ガイドワイヤポート232の近位の位置に向けてステント20を送出カテーテル212に予装填して、送出カテーテル212が迅速交換形式でガイドワイヤ18の上から前進すると、ガイドワイヤ18がステント20を通って延在しなくなる。
【0071】
近位緩衝部材256がステント20に接触して遠位にステント20を押しやるように、送出ワイヤ216を操作することによって、ステント20を遠位に押すことができる。ステント20を近位に引くことが望ましい場合には、遠位緩衝部材258がステント20に接触して近位にステント20を押し付けるように、送出ワイヤ216を近位に操作できる。
【0072】
図14Bに示すように、ガイドワイヤ18が送出カテーテル212の管腔230から除去されると、凹ませ可能なシース223の遠位部が、ガイドワイヤポート232の近くの外側の管状部材221に向けて半径方向に移動する。このため、図14Dに示すように、ガイドワイヤ18がガイドワイヤポート232から除去された状態で、凹ませ可能なシース223が、ガイドワイヤポート232にわたって延在して、ガイドワイヤポート232を閉鎖し、ガイドワイヤポート232がガイドワイヤポート232のそばを通るステント20の前進又は後退を妨害せずに、ステント20が、ガイドワイヤポート232の近位からガイドワイヤポート232の遠位に向けて送出カテーテル212の管腔230を通過できる。このため、ステント20が取り付けられた状態の送出ワイヤ216を、送出ワイヤ216及びステント20が凹ませ可能なシース223の内部に位置する状態で、ガイドワイヤポート232のそばを前進させることができる。
【0073】
ここで説明した、標的位置に自己拡張型ステントを送出するためのステント送出システムは、迅速交換機能の効果を有する一方、血管系内の遠隔及び/又は曲がりくねった位置に到達させるために遠位の柔軟性及び/又は操作性が改善された送出カテーテルを提供する。
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