特許第5748179号(P5748179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5748179炉心シュラウド、炉心シュラウドを有する原子炉および炉心シュラウドの組立て方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748179
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】炉心シュラウド、炉心シュラウドを有する原子炉および炉心シュラウドの組立て方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 5/00 20060101AFI20150625BHJP
   G21C 5/16 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   G21C5/00 AGDP
   G21C5/16
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-542290(P2011-542290)
(86)(22)【出願日】2009年12月14日
(65)【公表番号】特表2012-512417(P2012-512417A)
(43)【公表日】2012年5月31日
(86)【国際出願番号】US2009067802
(87)【国際公開番号】WO2010071763
(87)【国際公開日】20100624
【審査請求日】2012年4月19日
(31)【優先権主張番号】61/138,140
(32)【優先日】2008年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/634,836
(32)【優先日】2009年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ギルモア,チャールズ,ビイ
(72)【発明者】
【氏名】フォーサイス,デービッド,アール
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許第01271594(GB,B)
【文献】 特開平04−254793(JP,A)
【文献】 特開2000−111682(JP,A)
【文献】 特開昭59−137882(JP,A)
【文献】 実開昭63−048192(JP,U)
【文献】 特開昭54−155390(JP,A)
【文献】 米国特許第04199403(US,A)
【文献】 特開2004−132835(JP,A)
【文献】 特開2003−322698(JP,A)
【文献】 特開平01−296193(JP,A)
【文献】 特開2008−101356(JP,A)
【文献】 特開2008−055461(JP,A)
【文献】 特開2001−305261(JP,A)
【文献】 特開昭52−066196(JP,A)
【文献】 特開平11−109077(JP,A)
【文献】 特開2004−085373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 5/00
G21C 5/16
G21C 5/10
G21C 1/08
G21C 15/02
G21C 13/00
G21C 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の平坦部材と、
多数の単体構造コーナー部材と、
各々が前記平坦部材及び前記単体構造コーナー部材の組み合わせより成る多数の副組立体とより成り、
前記単体構造コーナー部材の各々は単体構造押出し加工部材であり、
前記単体構造コーナー部材はそれぞれ第1の平坦部分と、前記第1の平坦部分に垂直方向に位置する第2の平坦部分とを含み、
前記副組立体の少なくとも1つは複数の前記単体構造コーナー部材より成り、前記単体構造コーナー部材の1つの第1の平坦部分は前記単体構造コーナー部材の別の1つの第2の平坦部分に前記単体構造コーナー部材が交番並置関係になるように接合される炉心シュラウド。
【請求項2】
前記平坦部材は第1の平坦部材と第2の平坦部材とを含み、前記第1の平坦部材及び前記第2の平坦部材はそれぞれ第1の端縁部と、前記第1の端縁部とは遠隔で反対側の第2の端縁部と、第1の端縁部と第2の端縁部との間の距離としての幅とを有し、各第2の平坦部材の幅は前記各第1の平坦部材の幅より大きい請求項1の炉心シュラウド。
【請求項3】
前記副組立体のうちの少なくとも1つは前記単体構造コーナー部材の1つと、前記第1の平坦部材のうちの1つとより成り、前記単体構造コーナー部材の第1の平坦部分は前記第1の平坦部材の第1及び第2の端縁部のうちの対応する端縁部に接合されている請求項の炉心シュラウド。
【請求項4】
前記副組立体のうちの少なくとも1つは前記単体構造コーナー部材のうちの1つと、前記第2の平坦部材のうちの1つとより成り、前記単体構造コーナー部材の第1の平坦部分は前記第2の平坦部材の第1及び第2の端縁部のうちの対応する端縁部に接合される請求項の炉心シュラウド。
【請求項5】
前記複数の副組立体は前記炉心シュラウドの四半周セグメントを形成するように組合わされ、前記四半周セグメントは11個の前記単体構造コーナー部材と、2個の前記第1の平坦部材と、1個の前記第2の平坦部材とを含む請求項の炉心シュラウド。
【請求項6】
多数の流れ偏向手段をさらに備え、前記単体構造コーナー部材はそれぞれ曲面部分と、前記曲面部分とは反対側の多数の実質的平坦部分とを含み、前記曲面部分は前記内向き曲面接合部と外向き曲面接合部のうち対応する接合部とを係合する構造である請求項1の炉心シュラウド。
【請求項7】
圧力容器と、
前記圧力容器内に位置して該圧力容器により支持される環状の炉心槽と、
前記炉心槽内に支持された請求項1の炉心シュラウドとより成る原子炉。
【請求項8】
前記炉心シュラウドは多数の流れ偏向手段をさらに備え、前記炉心シュラウドの前記単体構造コーナー部材はそれぞれ内向き曲面部分と、外向き曲面部分とを含み、前記流れ偏向手段はそれぞれ曲面部分と、前記曲面部分とは反対側の多数の実質的平坦部分とを含み、前記曲面部分は前記内向き曲面接合部と外向き曲面接合部のうち対応する接合部とを係合する構造である請求項の原子炉。
【請求項9】
前記炉心シュラウド内に位置する多数のグリッドをさらに備え、前記流れ偏向手段の前記実質的平坦部分は前記グリッドのうちの対応するグリッドの一部と係合してそれを支持する構造である請求項の原子炉。
【請求項10】
炉心シュラウドを組立てる方法であって、
多数の平坦部材を用意し、
複数の単体構造コーナー部材を押出し加工し、
前記平坦部材と前記単体構造コーナー部材とを組合せて接合することにより多数の副組立体を形成し、
前記複数の副組立体を接合して前記炉心シュラウドの少なくとも一部を形成するステップより成り、
前記単体構造コーナー部材の各々は単体構造押出し加工部材であり、
前記単体構造コーナー部材はそれぞれ第1の平坦部分と、前記第1の平坦部分に垂直方向に位置する第2の平坦部分とを含み、
前記方法はさらに、前記単体構造コーナー部材のうちの1つの第1の平坦部分を前記単体構造コーナー部材のうちの別の1つの第2の平坦部分と前記単体構造コーナー部材が交番並置関係になるように接合するステップを含む炉心シュラウドの組立て方法。
【請求項11】
前記複数の副組立体を接合して前記炉心シュラウドの四半周セグメントを形成するステップをさらに含む請求項10の方法。
【請求項12】
前記四半周セグメントを4個接合して前記炉心シュラウドを形成するステップをさらに含む請求項11の方法。
【請求項13】
前記接合ステップはレーザー溶接により行なわれる請求項10の方法。
【請求項14】
前記接合ステップはさらに前記平坦部材、前記単体構造コーナー部材及び前記副組立体のうちの少なくとも1つを多数の取付け具に対して所望の位置に固定するステップを含む請求項10の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に原子炉に係り、さらに詳細には、原子炉の炉心シュラウドに係る。本発明はまた、炉心シュラウドを組み立てる関連の方法に係る。
【背景】
【0002】
加圧水で冷却される原子力発電システムの一次側は、二次側から隔離され且つ該二次側と熱交換関係にあって有用エネルギーを発生させる閉回路を含む。
【0003】
図1は炉心14を包む上蓋12(図2にも示す)を備えたほぼ円筒形の原子炉圧力容器10を有する原子炉一次系を略示する。水のような液状原子炉冷却材がポンプ16によって容器10内へ圧入され、炉心14を通過する間に熱エネルギーが吸収されて、一般に蒸気発生器と呼称される熱交換器へ放出されるが、この蒸気発生器では、熱が蒸気駆動タービン発電機のような利用回路(図示しない)へ伝達される。次いで、原子炉冷却材はポンプ16へ還流することで一次ループが完成する。典型的には、複数の上述したループが原子炉冷却材配管系20を介して単一の原子炉容器10と接続する。
【0004】
図2及び3はそれぞれ圧力容器10の単純化した側及び頂立面図であり、ともに圧力容器10の各部を断面で示す。炉心14は、図示を容易にする目的で2個だけを示す、複数の、互いに平行で、垂直に延びる燃料集合体22より成る。説明の目的で、その他の容器内部構造は下部炉内構造物24と、上部炉内構造物26とに区分することができる。従来設計では、下部炉内構造物の機能は炉心を支持し、整列させ、計装手段を案内するとともに、容器内の流れ方向を制御することにある。上部炉内構造物は、燃料集合体22を制限し拘束する燃料集合体の二次的拘束手段を提供するとともに、計装手段及び制御棒28のような炉心コンポーネントを支持し案内する。動作については、冷却材は1つまたはそれ以上の入口ノズル30から原子炉容器10に流入し、容器10と炉心槽32の間の環状部を流下し、下部プレナム34において180°方向変換した後、燃料集合体22が着座している下部支持板37及び下部炉心板36を上向きに貫流し、集合体の中及び周りを流動する。下部支持板37及び下部炉心板36の代わりに、単一の構造を配置する設計もある。炉心及びその周辺域38を流動する冷却材の流量は大きく、典型的には毎秒約20フィートの速度で毎分400,000ガロンのオーダーである。その結果生じる圧力降下及び摩擦力が燃料集合体を浮揚させようとするが、この動きは円形の上部炉心板40を含む上部炉内構造物によって制限される。炉心14を出た冷却材は上部炉心板40の下側に沿って流れ、複数の細孔42を通って上昇する。次いで、冷却材は1つまたはそれ以上の出口ノズル44に向かって上方及び半径方向へ流れる。
【0005】
図3の簡略図に示すように、炉心シュラウド17は円形の炉心槽32の内側に位置し、炉心槽32の内側形状を炉心14内の燃料集合体22(図3に略示する)の外周にほぼマッチする段付き周囲形状に変換する複数の垂直方向に延びるプレート19を含む。図3の簡略化した断面図は、圧力容器10と炉心槽32との間に介在する熱遮蔽体15も示す。一部の発電所は熱遮蔽体の変わりに中性子パッドを有する。
【0006】
一般的に、段付き周囲形状を構成するプレート19はほぼ平坦であり、交差するコーナーで直角に当接する。切削及び/または成形加工の結果として、原子炉容器の一部の炉内構造物には非定型のコーナー接合部がある。これらの非定型コーナー接合部は例示的に、外側が丸みを帯びているか、内側に、例えば、限定の意図なしに溝があるキー状であるかそして/または比較的大きな開放領域のポケットがあるものとして特徴付けることができる。各非定型コーナー接合部は、これらのコーナーの液圧抵抗が小さいために流れが隣接
する燃料集合体をバイパスするための領域を提供する。事実、流れ計算を行なった結果、炉心シュラウドの非定型コーナーにおいて比較的大きい軸方向速度が存在することがわかっている。他の問題点としては、受け入れ不可の燃料棒振動の原因となって燃料集合体のグリッドと燃料棒とのフレッチングを発生させるか、この領域に大きな交差流速度を生ぜしめることがある。
【0007】
従って、炉心シュラウド及びそのコーナー接合部に改良の余地が存在する。
【発明の概要】
【0008】
上記及び他の需要は本発明の実施例により充足されるが、これは原子炉の炉心シュラウドの改良型設計及びその組立て方法を提供し、他の利点として、炉心シュラウド組立体のコーナーが継目または関連のギャップもしくは空所のない1つの単一連続材料片より成る好ましい単体構造設計である。
【0009】
本発明の1つの局面として、炉心シュラウドが提供される。この炉心シュラウドは、多数の平坦部材と、多数の単体構造コーナー部材と、各々が平坦部材及び単体構造コーナー部材の組み合わせより成る多数の副組立体とより成る。
【0010】
各単体構造コーナー部材は実質的に同一である。各単体構造コーナー部材は、第1の平坦部分と、第1の平坦部分に垂直方向に位置する第2の平坦部分とを含む単体構造押出し加工部材である。副組立体の少なくとも1つは複数の単体構造コーナー部材より成り、単体構造コーナー部材の1つの第1の平坦部分は単体構造コーナー部材の別の1つの第2の平坦部材に、単体構造コーナー部材が交番並置関係になるように接合される。
【0011】
本発明の別の局面として、圧力容器と、圧力容器内に位置して該圧力容器により支持される環状の炉心槽と、炉心槽内に支持された炉心シュラウドとより成り、炉心シュラウドが、多数の平坦部材と、多数の単体構造コーナー部材と、各々が平坦部材及び単体構造コーナー部材の組み合わせより成る多数の副組立体とより成る原子炉が提供される。
【0012】
炉心シュラウドはさらに多数の流れ偏向部材を有し、炉心シュラウドの各単体構造コーナー部材はそれぞれ内向き曲面部分と、外向き曲面部分とを含む。流れ偏向手段はそれぞれ曲面部分と、曲面部分とは反対側の多数の実質的平坦部分とを含み、曲面部分は内向き曲面接合部と外向き曲面接合部のうちの対応する接合部とを係合する構造である。原子炉はさらに、炉心シュラウド内に位置する多数のグリッドを備え、流れ偏向手段の実質的平坦部分はグリッドのうちの対応するグリッドの一部と係合してそれを支持する構造である。
【0013】
本発明のさらに別の局面として炉心シュラウドを組立てる方法が提供される。この方法は、多数の平坦部材を用意し、複数の単体構造コーナー部材を押出し加工し、平坦部材と単体構造コーナー部材とを組合せて接合することにより多数の副組立体を形成し、複数の副組立体を接合して炉心シュラウドの少なくとも一部を形成するステップより成る。
【0014】
この方法はさらに、複数の副集合体を接合して炉心シュラウドの四半周セグメントを形成するステップを含み、さらに4つの四半周セグメントを結合して炉心シュラウドを形成するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明を適用可能な原子炉の一部を示す概略図である。
図2図2は原子炉容器及び本発明を適用可能な内部コンポーネントの部分断面側立面図である。
図3図3は原子炉容器の断面平面図であり、圧力容器、熱遮蔽体、炉心槽、炉心シュラウド及び炉心の燃料集合体を示す。
図4図4は炉心シュラウド及び炉心周辺部にある数個の燃料集合体を示す頂部平面図である。
図5図5図4の1つのセグメントの拡大図である。
図6図6は本発明の一実施例による炉心シュラウドの1対の単体構造コーナー部材を示す斜視図である。
図7図7は3対の単体構造コーナー部材より成る、本発明の一実施例による副集合体の斜視図である。
図8図8は単体構造コーナー部材と比較的狭い平坦部材とより成る、本発明の一実施例による副集合体の斜視図である。
図9図9は単体構造コーナー部材と比較的広い平坦部材とより成る、一実施例による副集合体の斜視図である。
図10図10は本発明による炉心シュラウドの別の副集合体を示す斜視図である。
図11図11は本発明による炉心シュラウドの四半周セグメントの斜視図である。
図12図12は本発明による炉心シュラウドの完全な組立体を示す斜視図である。
図13A図13Aは本発明の別の実施例による炉心シュラウドのコーナーの内側に用いる流れ偏向部材の前面斜視図である。
図13B図13Bは本発明の別の実施例による炉心シュラウドのコーナーの内側に用いる流れ偏向部材の後方斜視図である。
図14図14図13A及び13Bの内側流れ偏向部材を用いた炉心シュラウドのコーナーの内側を示す拡大斜視図である。
図15図15は3つの内側流れ偏向部材を用いる、図14の炉心シュラウドコーナー内側の斜視図であり、燃料集合体グリッドの一部を仮想線で示す。
図16A図16Aは本発明の別の実施例による炉心シュラウドのコーナーの外側に用いる流れ偏向部材を一方の側から見た斜視図である。
図16B図16Bは本発明の別の実施例による炉心シュラウドのコーナーの外側に用いる流れ偏向部材を反対の側から見た斜視図である。
図17図17は2つの外側流れ偏向部材を用いる炉心シュラウドコーナー外側の斜視図である。
図18図18は本発明の別の実施例による流れ偏向部材を用いる、図17の炉心シュラウドコーナー外側の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示の目的で、本発明の実施例を炉心シュラウドに適用するものとして説明するが、他の炉内構造物の組立体(例えば、限定の意図なしに、バッフル・フォーマ組立体)の接合コンポーネント間のコーナー接合部に取って代わるかまたはそれを不要にしてそれらに付随する問題(例えば、限定の意図なしにバッフル噴流)を解消するために適用可能なことが明らかである。
【0017】
本明細書に使用する方向指示用語、例えば、内部、外部、内側、外側、頂部、底部及びそれらの派生語は図示する要素の配向に係り、特に明示しない限り特許請求の範囲を限定するものではない。
【0018】
本明細書に使用する用語「単体構造」は、継目、接合部または接続部がなく、例えば、限定の意図なしに、押出し加工のような任意公知または適当な方法もしくはプロセスにより成形可能な1個の単一連続材料片を意味する。
【0019】
本明細書に使用する用語「多数」は1または1より大きい整数(即ち、複数)を意味するものである。
【0020】
図4は炉心シュラウド100を示す。図示の幾つかの燃料集合体102は炉心シュラウド100の内周106に接した場所(図4のA、B、Cで総括的に示す)にあり、そこで燃料集合体は炉心シュラウドの内向きコーナー108または外向きコーナー110に隣接する。例えば、そして限定の意図なく、図4の非限定的実施例には、燃料集合体102が内向きコーナー108又は外向きコーナー110若しくは内向き及び外向きコーナー108、110の両方に隣接する場所が44個ある(図示を容易にするため10個だけを示す)。図5は炉心シュラウド100の内向きコーナー108と外向きコーナー110の拡大図である。
【0021】
図6−12に示すように、本発明の思想は、炉心シュラウドの各コーナーを、例えばそして限定の意図なく、所望のコーナー形状を有する単体構造押出し部材のような単体構造コーナー部材200として製造することに係る。したがって、従来の内向きコーナー108及び外向きコーナー110(図4及び5)にあった開放領域がなくなっている。かかる開放領域は、成形(例えば、限定の意図なく曲げ加工)及び/または2つの平坦な部分を当接させ接合することによりコーナー接合部を製造する継目の溶接(図4及び5には図示せず)に起因するものである。押出し加工技術における最近の変化はこれを可能にしている。例えば、限定の意図なく、最大4.75インチ×4.75インチ×1インチまたはそれよりも大きい全長(図6の長さLが、例えば、限定の意図なく、約180インチ(実尺で図示していない))押出し加工部材が可能である。従って、図6に示すように、各々の単体構造コーナー部材200(2個示す)は第1の平坦部分202とその第1の平坦部分202とは垂直な第2の平坦部分204とより成り、それらの間に継目もしくは他の接続部が存在しない。図6の例のように、同様な押出し加工部材200に溶接した時の幅は単一の燃料集合体102(例えば、図4の場所Aにある燃料集合体102を参照)がある内周場所を提供するに十分に広い場合特に有利である。単体構造押出し加工部材200(例えば、単体構造コーナー部材)はその後、レーザー溶接または他の適当な方法により接合して図6に示すような副組立体210にすることが可能である。
【0022】
図4のAで示す一対の燃料集合体102の近くの炉心シュラウドの周囲部を完成させるために、単体構造コーナー部材200を3対連続溶接すると、図7に示すような副集合体212が形成される。2または3個の燃料集合体が1列に並ぶそれ以外の2つの典型的な周囲部では(例えば、図4のB及びCで示す場所の燃料集合体102を参照)、異なる幅218(図8)及び220(図9)の平坦部材214(図8)及び216(図9)を単体構造コーナー部材200に溶接してそれぞれ図8及び9に示す副集合体222、224を形成する。詳説すると、図8及び9は幅218を有する平坦部材214と、幅220を有する平坦部材216をそれぞれ示しており、これらの平坦部材はそれぞれ図4の炉心の燃料集合体場所B及びCを提供するために単体構造コーナー部材200にレーザー溶接または他の適当な方法により接合可能である。図8の例では、第1の平坦部材214は互いに互いに反対の端縁部215、217とそれらの間の距離である第1の幅218を有するが、図9の第2の平坦部材216は互いに反対の端縁部219、221とそれらの間の距離である第2の幅220を有し、第2の幅220は第1の平坦部材214の第1の幅218よりも大きい。
【0023】
炉心シュラウド100(図4)の周囲部106を形成する方法の一例は図8に示す副集合体222を2個、図7に示す副集合体212に溶接または他の適当な方法で接合して図10に示す副集合体226を形成する工程を含む。最後に、炉心シュラウド100(図4及び図12の300で総括表示)の四半周セグメントまたは副集合体228を完成させるために、図6の単体構造コーナー副集合体210と図9に示す副集合体224とを図10の副集合体226に溶接または他の適当な方法で接合する。図示説明した例では、四半周セグメント228の各々は、図11に示すように、11個の単体構造コーナー部200、
2個の第1の平坦部材214及び1個の第2平坦部材216を含む。最後に、4個の四半周セグメント228を溶接または他の適当な方法により互いに接合して図12に示す完全な炉心シュラウド300(図4の炉心シュラウド100も参照)を形成する。
【0024】
本発明の範囲から逸脱することなく、コンポーネント(例えば、限定の意図なく、単体構造コーナー部材200、第1の平坦部材214、第2の平坦部材216)及び副集合体(例えば、限定の意図なく、210、212、222、224、226、228)を任意公知または適当な構成、数及び/または順序で組立て可能であることがわかるであろう。
【0025】
図6において単純化した形で一般的に示すように、コンポーネント(例えば、限定の意図なく、単体構造コーナー部材200、第1の平坦部材214、第2の平坦部材216)をレーザー技術を用いて溶接するのが好ましいが、炉心シュラウドのコンポーネント(例えば、限定の意図なく、単体構造コーナー部材200、第1の平坦部材214、第2の平坦部材216)及び/または副集合体(例えば、限定の意図なく、210、212、222、224、226、228)を適切に接合するために任意公知または適当な他の方法、プロセスまたは機構を利用できることがわかるであろう。
【0026】
他の利点として、本発明は公知設計の炉心シュラウドに付随する内向き及び外向きコーナーの空所をなくす。この空所は広範な切削加工、曲げ加工及び/または成形加工の結果生じるものである。本発明は単体構造コーナー部材を提供するため、コーナーにあった全ての継目をなくし、また、アクセス性に欠けるため点検が困難な溶接コーナー接続部をなくする。溶接部はコーナーから離れた場所だけに存在するため、実質的に平坦でそして/またはアクセスが比較的容易で点検し易い。
【0027】
さらに、各単体構造コーナーを形成する押出し部材200は、同様な押出し加工部材200(例えば、図6及び7を参照)及び/または関連の平坦部材214、216(例えば、図8及び9を参照)にレーザー溶接または他の適当な方法により段階的に接合することが可能である。各単体構造コーナー部材200は実質的に同一であり、1つの単体構造コーナー部材の第1の平坦部分202を別の単体構造コーナー部材200の第2の平坦部分204に接合して、図7から最もよくわかるように、単体構造コーナー部材を交番並置関係にする。加えて、この組立て方法は押出し加工単体構造コーナー部材200、平坦部材214、216及び/または副集合体210、212、222、224、226、228を保持するために剛性の工具及び/または取付け具(図示せず)を使用できることがわかるであろう。従って、例えば、熱により生じる可能性のある溶接歪みが最小限に抑えられる。さらに、消耗電極を使用する従来式溶接法と比較して、レーザー溶接の熱入力は最小であるため、寸法制御性が向上するはずである。このため、特に、4つの四半周セグメント228(図11及び12)を溶接する最終段階における炉心キャビティー寸法の精度が改善されるが、現在の方法では炉心キャビティーの寸法条件を満足させるために溶接後かなりの切削加工が必要である。
【0028】
本発明の押出し加工単体構造コーナー部材を用いる設計によると、コーナー接続部の溶接が全て不要になるため有意な量の切削加工作業とそれに付随する時間及びコストがなくなる。さらに、溶接後に必要な切削加工が少なくなる可能性があるため、薄い押出し加工部材を使用することが可能であり、コストさらに節減できる。上述した副集合体210、212、222、224、226、228を高い能力を持った供給業者に製造させ、炉心シュラウド組立体の一部または全部を所定の製造施設に搬送して、炉心シュラウド100(図4、また図12の炉心シュラウド組立体300も参照)の最終的な組立てを行い完成させる可能性も存在する。
【0029】
原子炉炉心構造の他の組立体(例えば、限定の意図なく、バッフル・フォーマ組立体の
コーナー接続部(図示せず))に関して本発明の単体構造コーナーの考え方を取入れる可能性があることもわかるであろう。例えば、限定の意図なく、既存の設計のバッフル・フォーマを押出し加工単体構造コーナーで改造することによりバッフル・フォーマ組立体(図示せず)のバッフルプレート(図示せず)の間のコーナー接続部をなくすことができる。従って、望ましくないバッフル噴流が発生する可能性がなくなる。バッフル噴流は、コーナー接続部にギャップまたは開口が存在する結果、バッフル・フォーマの炉心キャビティーの内側から炉心へ向かって水の噴流が発生するものである。
【0030】
図13A−15及び16−18はそれぞれ、本発明の非限定的で例示的な別の実施例による内向き流れ偏向部材302及び外向き流れ偏向部材304、304´を示す。図13A−15の例では、ホッケーパック型挿入材とも呼ばれる流れ偏向部材302は、図14及び15に示すように、炉心シュラウドのコーナー108の内向き接続部112に設置する構造を有する。詳説すると、各流れ偏向部材302は曲面部分306と、多数の実質的平坦部分308(図13A−15では2個)とを有する。曲面部分306は図14及び15に示すように炉心シュラウドの内向きコーナー108の内向き曲面接続部112と係合する構造である。従って、流れ偏向部材302の寸法特性(例えば、限定の意図なく、流れ偏向部材302の高さ)を燃料集合体グリッド46(例えば、限定の意図なく、図15において一部を仮想線で示す燃料集合体のグリッド46)の高さに合うように設定できることがわかるであろう。かくして、流れ偏向部材302はコーナー(例えば、108)の開放領域を充填して、冷却材の流れを偏向させることにより軸方向速度を減少させ、望ましくない流れがバイパスするのを抑制するだけでなく、グリッド46にさらなる支持を提供することが可能である。流れ偏向部材302を炉心シュラウド100に固定するために、例えば、図15に示すように、すみ肉溶接(図15において一般的に参照番号310で示す)を用いることも可能である。
【0031】
それぞれ図16A−17及び18の非限定的な例として、炉心シュラウド100の外向きコーナー110のための上述した外向き流れ偏向部材304及び304´を示す。上述した内向き流れ偏向部材302と同様に、外向き流れ偏向部材304、304´の高さは燃料集合体グリッド46(図15において一部を仮想線で示す)の高さに合わせることが可能である。外向き流れ偏向部材304、304´はそれぞれ、曲面部分312と多数の実質的に平坦な部分314(図示の例では2つ)とが互いに反対側に位置するものである。曲面部分312は、図17及び18に示すように、炉心シュラウドの外向きコーナー110の外向き曲面接続部114に係合し、それに適当な方法により(例えば、限定の意図なく、溶接を用いて)接合される構造である。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、図示説明したもの以外の流れ偏向部材(図示せず)、またはそれらに加えて、任意公知のまたは適当な数、形状及び/または構成を使用できることがわかるであろう。例えば、そして限定の意図なく、図17は炉心シュラウド100の外向きコーナー110上の長さが異なる2つの外向き流れ偏向部材304、304´を示す。さらに、図18に誇張して示すように、流れ偏向部材304は面取り部316を有する。例えば、すみ肉溶接部の一部として形成されるかかる面取り部316は、例えば、燃料集合体の装荷及び取出し時に望ましくない相互作用(例えば、限定の意図なく、“スナッグ”)を回避する助けとなる。かかる流れ偏向部材(例えば、限定の意図なく302、304、304´)を既存設計の炉心シュラウドに独立に(例えば、本発明の単体構造コーナー思想とは別の解決法として)採用することにより、そのコーナー接続部に付随する流れの問題を改善できることもわかるであろう。従って、かかる流れ偏向部材(例えば、限定の意図なく302、304、304´)は少なくとも本発明の実施例の一部では必要とされないことがさらにわかるであろう。
【0032】
本発明を特定の実施例につき詳細に説明したが、図示説明した種々の変形例及び設計変更を開示全体に照らして想到できることがわかるであろう。従って、図示説明した特定の
構成は例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びその全ての均等物の全幅を与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18