【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1及び2における金属製の収納家具の側板と背板を示すもので背面から見た斜視図である。
図1には、キッチン等に配置される流し台、調理台あるいは戸棚を構成する金属製の収納家具1の側板2及び背板3が示されており、この金属製収納家具1は、肉薄のステンレス製の板材で構成された側板2、背板3、底板(図示略)及び天板(図示略)の端部同士を互いに接合させて組み立てられるようになっている。
【0016】
図2は、実施例1における金属製収納家具1の側板2と背板3との接合構造を示すものである。
図2において、側板2と背板3とは互いに端部において接合されるものであって、弾性変形可能な材料より形成された背板3の両側の接合部は、それぞれ、内側に曲折された第1の曲折部4に続いて第2の曲折部5、第3の曲折部6及び第4の曲折部7が形成されることにより本体8の内面に沿う端面9が形成されている。すなわち、背板3の両側の接合部は、横断面形状が矩形状をなし、本体8から内側に曲折された第1の曲折面10、第2の曲折面11、第3の曲折面12及び本体8の内面に沿う端面9を有し、側板2と一体に接合された場合、接合端部において十分な剛性を有する構造となっている。
そして、例えば、第3の曲折面12を外側あるいは内側に押圧すると、弾性変形により端面9は本体8の面に沿って移動可能となっている。
【0017】
背板3の端面9及び端面9と対向する本体8の共通する個所に、それぞれ、端面9が弾性変形により移動される方向と直交する方向にスリット13、14が形成される。
図2において、端面9のスリット13は、第4の曲折部7のコーナーに形成され、本体8のスリット14は、端面9のスリット13の本体8に平行な部分と共通する位置に形成されている。端面9のスリット13の位置は、
図2のように第4の曲折部7のコーナーに形成されるものに限らず、本体8と対向する位置であればよい。また、スリット13及び14は、背板3と側板2との接合を確実なものとするため背板3及び側板2の縦方向に複数設けられる。
【0018】
背板3の外側から当接する側板2の接合部は、内側に曲折された第1の曲折部15に続いて第2の曲折部16において再度曲折されることにより背板3のスリット13及び14に対向する対向端面17を有している。対向端面17には背板3の端面9及び本体8のスリット13、14に嵌入可能な突片18が形成されている。突片18は先端部より基部が小なるフック形状に形成されている。
【0019】
突片18の形成される位置は、背板3のスリット13及び14に対応する位置であり、
例えば上下方向において、
図2において側板2と背板3の天端を一致させて接合する場合には、側板2の天端から突片18の基部の下端までの距離と、背板3の天端からスリット13及び14の下端までの距離とが一致するように設定される。
また、突片18の数も背板3のスリット13及び14と同じである。
【0020】
図3は、
図2のA−A断面図であって、背板3における端面9のスリット13が本体8のスリット14より幅方向内側にズレて形成されている場合を示すものである。
図3において、実線は、側板2と背板3とが接合される前の状態を示しており、2点鎖線は、側板2と背板3とが接合された後の状態を示している。実線で示す接合前の状態において、側板2の突片18は背板3のスリット13及び14に対向するように形成され、厚さtを有している。背板3の本体8に形成されたスリット14は、突片18が嵌入可能な大きさを有し、突片18が嵌入できる状態にある。一方、背板3の端面9に形成されたスリット13は、突片18が嵌入可能な大きさを有しているが、突片18及びスリット14に対してわずかに幅方向内側にズレて形成されている。このように、スリット13がズレている状態においては、両スリット13及び14の重畳する幅の大きさdは、側板2の突片18の厚さtより小さく設定されている。したがって、この状態で側板2の突片18を背板3のスリット13に嵌入することはできない。
【0021】
スリット13の幅方向内側へのズレは、背板2の成形時において第3の曲折面12をわずかに幅方向内側に変位させておいてもよく、あるいは、スリット13の穿孔位置を突片18及びスリット14に対してわずかに幅方向内側にズラして形成してもよい。
図3では、第3の曲折面12をわずかに内側に変位させた場合を示している。
【0022】
側板2の突片18を背板3のスリット13及び14に嵌入するには、背板2の第3の曲折面12を内側から矢印Pで示すように押圧して第3の曲折面12を弾性変形させ、スリット13を突片18及びスリット14に整合させた状態で、側板2の突片18をスリット14及びスリット13に嵌入するように矢印Qで示すように移動し、側板2の内面が背板3の外面に当接するまで突片18をスリット13及び14に嵌入させる。この状態で側板2を下方に移動すると、突片18の基部の下端がスリット13及び14の下端に当接し、両板材が接合される。
【0023】
側板2の突片18がスリット14及びスリット13に嵌入された状態においては、背板3の端面9は弾性により元に戻ろうとする力が働くため、側板2の突片18は、スリット13及びスリット14と間で挟着されている。また、突片18のフック形状の先端部がスリット13の内面の下方にまで嵌入されている。したがって、両板材2及び3は、ガタつきのない状態でしっかりと接合され、抜けにくくなっているとともに、側板2が背板3に対して上方に移動されない限り、両板材の接合が解除されることはない。
【0024】
図4は、
図2のA−A断面図であって、背板3における端面9のスリット13が本体8のスリット14より幅方向外側にズレて形成されている場合を示すものであって、
図3と同じ符号は
図3の部材と同じ部材を指しており、詳しい説明は省略する。
図4において、実線は、側板2と背板3とが接合される前の状態を示しており、2点鎖線は、側板2と背板3とが接合された後の状態を示している。
スリット13の幅方向外側へのズレは、背板2の成形時において第3の曲折面12をわずかに幅方向外側に変位させておいてもよく、あるいは、スリット13の穿孔位置を突片18及びスリット14に対してわずかに幅方向外側にズラして形成してもよい。
図4では、第3の曲折面12をわずかに幅方向外側に変位させた場合を示している。
【0025】
側板2の突片18を背板3のスリット13及び14に嵌入するには、背板2の第3の曲折面12を外側から矢印Pで示すように押圧して第3の曲折面12を弾性変形させ、スリット13を突片18及びスリット14に整合させた状態で、側板2の突片18をスリット14及びスリット13に嵌入するように矢印Qで示すように移動し、側板2の内面が背板3の外面に当接するまで突片18をスリット13及び14に嵌入させる。この状態で側板2を下方に移動すると、突片18の基部の下端がスリット13及び14の下端に当接し、両板材が接合される。
【0026】
側板2の突片18がスリット14及びスリット13に嵌入された状態においては、背板3の端面9は弾性により元に戻ろうとする力が働くため、側板2の突片18は、スリット13及びスリット14と間で挟着されている。また、突片18のフック形状の先端部がスリット13の内面の下方にまで嵌入されている。したがって、両板材2及び3は、ガタつきのない状態でしっかりと接合され、抜けにくくなっているとともに、側板2が背板3に対して上方に移動されない限り、両板材の接合が解除されることはない。
【実施例2】
【0027】
図5は、実施例2における金属製の収納家具の側板2と背板3との接合構造を示すものであって、
図1と同じ符号は
図1の部材と同じ部材を指しており、詳しい説明は省略する。
図5において、背板3における端面9のスリット20は、長手方向の一部である上部に幅方向の外側に向けて拡張された幅広部21を有している。また、背板3における本体8のスリット22は、スリット20の幅広部21と同じ幅を有し、長さもスリット20と同じである。
【0028】
一方、側板2における対向端面17の突片23は、基部24がスリット20の幅広部21に対応するように形成され、幅広部21の長さより短い長さを有するとともに、基部24に続き下方に延出された先端部25がスリット20の幅広部21の長さより長く、スリット20の長さより短い長さを有している。
したがって、側板3の突片23の先端部25は、スリット20には嵌入可能であるが、幅広部21に嵌入することはできず、突片23の基部24のみが、幅広部21に嵌入可能である。
図5では、スリット20の幅広部21が上部に設けられた場合を示しているが、上部に限らず、下部あるいは中央でもよい。この場合、側板3の突片23の形状もスリット20の形状に合わせて形成されることはもちろんである。
【0029】
図6は、
図5のB−B断面図であって、背板3における端面9のスリット20が本体8のスリット22及び突片23より幅方向内側にズレて形成されている場合を示すものである。
図6において、実線は、側板2と背板3とが接合される前及び接合された後の状態を示しており、2点鎖線は、側板2と背板3とが接合される時の状態を示している。
【0030】
スリット20の幅方向内側へのズレは、背板2の成形時において、スリット20の穿孔位置を突片23及びスリット22に対してわずかに内側にズラして穿孔されるか、あるいは、背板2の成形時において第3の曲折面12をわずかに幅方向内側に変位させておいてもよい。すなわち、スリット20の穿孔位置は、スリット20の幅広部21が突片23及びスリット22に対向する位置と同じかそれ以上内側にズラして形成される。
図6では、スリット20の穿孔位置を幅広部21が突片23及びスリット22に対向する位置になるようわずかに内側にズラして穿孔した場合を示している。
したがって、この状態では、側板2の突片23を背板3のスリット21及び22に嵌入することはできない。
【0031】
実線で示す状態から側板2の突片23を背板3のスリット20及び22に嵌入するには、背板2の第3の曲折面12を内側から矢印Pで示すように押圧して第3の曲折面12を弾性変形させ、スリット20を突片23及びスリット22に整合させた状態で、側板2の突片23の先端部25がスリット20及びスリット22に嵌入するように矢印Qで示すように移動し、突片23の基部24をスリット20に嵌入する。
【0032】
側板2の突片23の基部24がスリット20に嵌入された状態で第3の曲折面12に対する押圧を解除すると、背板3の端面9は弾性により元に戻るため、側板2の突片23の基部24がスリット20の幅広部21に嵌入する。突片23の基部24がスリット20の幅広部21に嵌入した状態では、突片23の先端部25の長さがスリット20の幅広部21の長さより大きいため、突片23がスリット20から抜けることはできない。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0034】
例えば、上記実施例では、背板3の外側から側板2を接合する方式としているため、背板3に本体8に沿う端面9を形成して端面及び本体にスリット13及び14を設け、側板にスリット13及び14に対向する対向端面17を形成しているが、これに限らず、側板2の外側から背板3を接合する方式とし、側板2に本体に沿う端面を形成して端面及び本体にスリットを設け、背板3にスリットに対向する対向端面を形成するようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施例では、背板3の両側の接合部は、横断面形状が矩形状をなし、本体8から内側に曲折された第1の曲折面10、第2の曲折面11、第3の曲折面12及び本体8の内面に沿う端面9を有する構造となっているが、横断面形状が略三角形状、あるいは、略楕円状でもよく、要は、背板3の両側の接合部の先端に、本体8の内面に沿う端面9が形成されていればよい。
【0036】
また、スリット13及び14の内周面に鋸刃状の凹凸を形成し、突片18の表面をゴムなどの軟かい材料で被覆し、スリット13及び14と突片18との接合が解除されにくいようにしてもよい。