特許第5748238号(P5748238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5748238性機能不全の治療におけるテストステロンおよび5−HT1Aアゴニストの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748238
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】性機能不全の治療におけるテストステロンおよび5−HT1Aアゴニストの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/568 20060101AFI20150625BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20150625BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20150625BHJP
   A61P 5/24 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   A61K31/568
   A61K31/506
   A61P15/00
   A61P5/24
【請求項の数】25
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-185156(P2013-185156)
(22)【出願日】2013年9月6日
(62)【分割の表示】特願2009-535226(P2009-535226)の分割
【原出願日】2007年11月2日
(65)【公開番号】特開2014-1235(P2014-1235A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2013年10月1日
(31)【優先権主張番号】06076976.7
(32)【優先日】2006年11月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515098772
【氏名又は名称】イービー アイピー ライブリドス ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】テュイテン ジャン ジョアン アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ブロエメーズ ジョアンズ マルティヌス マリア
(72)【発明者】
【氏名】デランジェ ロバートス ペトルス ジョアンズ
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/007166(WO,A1)
【文献】 特表2005−500347(JP,A)
【文献】 特表2005−503374(JP,A)
【文献】 Amstislavskaya, T. G. et al,Effect of serotonin 5-HT1A receptor agonists on sexual motivation of male mice,Bulletin of Experimental Biology and Medicine,1999年,No.127,Vol.2,p.203-205
【文献】 Rasia-Filho AA et al,Effects of 8-OH-DPAT on sexual behavior of male rats castrated at different ages.,Horm Behav.,1996年,vol.30,No.3,p.251-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61P 5/24
A61P 15/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストステロンよびブスピロンを組み合わせてなる、女性の対象における性機能不全治療薬。
【請求項2】
該治療薬が、テストステロン性行為の3.5〜5.5時間前に対象に提供されるように用いられることを特徴とする、請求項1載の治療薬。
【請求項3】
該治療薬が、ブスピロン行為の1時間から1.5時間前に対象中で放出されるように用いられることを特徴とする、請求項1または2記載の治療薬。
【請求項4】
該治療薬が、テストステロン性行為の3.5〜5.5時間前に対象に提供され、且つブスピロン行為の1時間から1.5時間前に対象中で放出されるように用いられることを特徴とする、請求項3記載の治療薬。
【請求項5】
該治療薬が、テストステロン効果の発現と、ブスピロンの効果の発現が、部分的に重複するように用いられることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項記載の治療薬。
【請求項6】
該治療薬が、テストステロンよびブスピロンが同時にまたは別々に対象に投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項記載の治療薬。
【請求項7】
該治療薬が、テストステロンよびブスピロンを含む単一の薬学的組成物が対象に投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項記載の治療薬。
【請求項8】
該単一の薬学的組成物が、ブスピロンが、テストステロン放出の後に遅れて、対象中で放出されるように製剤化されていることを特徴とする、請求項7記載の治療薬。
【請求項9】
該単一の薬学的組成物が、ブスピロン行為の1時間から1.5時間前に対象中で放出されるように製剤化されていることを特徴とする、請求項7または8記載の治療薬。
【請求項10】
該単一の薬学的組成物が、さらにシクロデキストリンを含む、請求項7乃至9のいずれか一項記載の治療薬。
【請求項11】
該治療薬が、テストステロン舌下で、頬粘膜で、または鼻内で対象に投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項記載の治療薬。
【請求項12】
該治療薬が、応需(on demand)で使用されることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項記載の治療薬。
【請求項13】
女性の対象における性機能不全の治療用の医薬の調製における、テストステロンよびブスピロンの組み合わせの使用。
【請求項14】
該医薬が、テストステロン性行為の3.5〜5.5時間前に対象に提供されるように用いられることを特徴とする医薬である、請求項13記載の使用。
【請求項15】
該医薬が、ブスピロン行為の1時間から1.5時間前に対象中で放出されるように用いられることを特徴とする医薬である、請求項13または14記載の使用。
【請求項16】
該医薬が、テストステロン性行為の3.5〜5.5時間前に、且つブスピロン行為の1時間から1.5時間前に対象中で放出されるように用いられることを特徴とする医薬である、請求項15記載の使用。
【請求項17】
該医薬が、テストステロン効果の発現と、ブスピロンの効果の発現が、部分的に重複するように用いられることを特徴とする医薬である、請求項13乃至16のいずれか一項記載の使用。
【請求項18】
該医薬が、テストステロンよびブスピロンが同時にまたは別々に対象に投与されるように用いられることを特徴とする医薬である、請求項13乃至17のいずれか一項記載の使用。
【請求項19】
該医薬が、テストステロンよびブスピロンを含む単一の薬学的組成物が対象に投与されるように用いられることを特徴とする医薬である、請求項13乃至18のいずれか一項記載の使用。
【請求項20】
該単一の薬学的組成物が、ブスピロンが、テストステロン放出の後に遅れて、対象中で放出されるように製剤化されていることを特徴とする、請求項19記載の使用。
【請求項21】
該単一の薬学的組成物が、ブスピロン行為の1時間から1.5時間前に対象中で放出されるように製剤化されていることを特徴とする、請求項19または20記載の使用。
【請求項22】
該単一の薬学的組成物が、さらにシクロデキストリンを含む、請求項19乃至21のいずれか一項記載の使用。
【請求項23】
該医薬が、テストステロン、舌下で、頬粘膜で(bucomucosally)または鼻内で対象に投与されるように用いられることを特徴とする医薬である、請求項13乃至22のいずれか一項記載の使用。
【請求項24】
該医薬が、応需(on demand)で用いられることを特徴とする、請求項13乃至23のいずれか一項記載の使用。
【請求項25】
請求項12記載の治療薬および該応需での使用に関する指示書を含む性機能不全治療用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性および/または女性の性機能不全の分野に関する。具体的には本発明は、任意でPDE5阻害剤と組み合わせた、テストステロンおよび5-HT1Aアゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
男性の性機能不全(MSD)とは、性的関心欠損症(ISD)、勃起不全(ED)すなわちインポテンス、および早漏(premature ejaculation;PE、早漏(rapid ejaculation)、早漏(early ejaculation)、または早漏(ejaculatio praecox)としても知られる)、および無オルガスム症を含む、男性の性機能のさまざまな障害または機能障害を意味する。EDは、シルデナフィル、バルデナフィル、およびタダラフィルなどのPDE5阻害剤を使用して治療が成功している。PEについて現在成功している治療は、陰茎における感覚を低減する麻酔クリーム(リドカイン、プリロカイン、および配合剤など)、ならびにパロキセチン、フルオキセチン、およびセルトラリンなどのSSRI系抗うつ薬を含む。現在、ISDについて成功している投薬法は知られていない。
【0003】
女性の性機能不全(FSD)とは、性行為に対する関心の欠如、性的興奮への到達またはその持続の度重なる失敗、十分な興奮後にオルガスムに到達できないことを含む、性機能のさまざまな障害もしくは機能障害を意味する。最近の研究では、米国では女性の43%が性機能不全を有すると推定されている[1]。性欲低下(罹患率22%)および性的興奮異常(罹患率14%)は、女性の性機能不全の最も一般的なカテゴリーに属する。これらのカテゴリーは、研究者および治療専門家に対して実用的な定義および受け入れられている語彙(accepted lexicon)を提供するのに好都合である。しかしながら、これらの障害が相互に完全に独立したものであると仮定することは正しくない可能性がある。これらの障害が重複しうることおよび相互に依存する可能性があることを、症例研究および疫学研究の両方が実証している。場合によっては、他の障害に至る一次障害を同定することが可能でありうるが、多くの場合は不可能であろう。
【0004】
男性および/または女性の性的障害(もしくは機能不全)の治療に関しては、成功の度合いが大きいまたは小さいいくつかの異なる治療が提案されており、かつ使用されている。例えば、国際公開公報第2005/107810号(特許文献1)には、性行為に関して特定の順序および時間枠で成分が放出されなければならない、テストステロンおよび5型ホスホジエステラーゼ(PDE5)阻害剤の使用について記載されている。この治療は有望な結果を提供するが、代替的な治療法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報第2005/107810号
【発明の概要】
【0006】
態様の1つでは、本発明は、性機能不全の治療用の医薬の調製における、テストステロンおよび5-HT1Aアゴニストの使用であって、該5-HT1Aが本質的に性行為の1時間前に放出されかつ該テストステロンが性行為の3.5〜5.5時間前に放出される使用を提供する。好ましい態様では、該テストステロンは舌下テストステロンである。

[発明101]
性機能不全の治療用の医薬の調製における、テストステロンおよび5-HT1Aアゴニストの使用であって、該5-HT1Aが本質的に性行為の1時間前に放出されかつ該テストステロンが性行為の3.5〜5.5時間前に放出される、使用。
[発明102]
性機能不全の治療用の医薬の調製における、テストステロン、PDE5阻害剤、およびHT1Aアゴニストの使用であって、該5-HT1Aが本質的に性行為の1時間前に放出され、該PDE5阻害剤が性行為の1〜2時間前に放出され、かつ該テストステロンが性行為の3.5〜5.5時間前に放出される、使用。
[発明103]
性機能不全が女性の性機能不全である、発明101または102記載の使用。
[発明104]
テストステロンおよび5-HT1Aアゴニストを含む薬学的組成物であって、該5-HT1Aを本質的に性行為の1時間前に放出しかつ該テストステロンを性行為の3.5〜5.5時間前に放出するように製剤が設計されている、薬学的組成物。
[発明105]
テストステロン、PDE5阻害剤、および5-HT1Aアゴニストを含む薬学的組成物であって、該5-HT1Aを本質的に性行為の1時間前に放出し、該PDE5阻害剤を性行為の1〜2時間前に放出し、かつ該テストステロンを性行為の3.5〜5.5時間前に放出するように製剤が設計されている、薬学的組成物。
[発明106]
テストステロンを含む少なくとも1種類の薬学的組成物と、5-HT1Aアゴニストを含む少なくとも1種類の組成物とを含むパーツのキットであって、該キットが、該組成物の投与に関する指示書をさらに含む、パーツのキット。
[発明107]
テストステロンを含む少なくとも1種類の薬学的組成物と、PDE5阻害剤を含む少なくとも1種類の組成物と、5-HT1Aアゴニストを含む少なくとも1種類の組成物とを含むパーツのキットであって、該キットが該組成物の投与に関する指示書をさらに含む、パーツのキット。
[発明108]
性機能不全が男性の性機能不全である、発明101または102記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0007】
テストステロンは、さまざまな方法で得られる、化学名17-β-ヒドロキシアンドロスト-4-エン-3-オンとしても知られ:これは、天然から単離および精製され得るか、または任意の方法で合成的に作製され得る。テストステロンのほかに、「テストステロンの類似体」を使用することもできる。「またはその類似体」という用語は、テストステロンの任意の有用な代謝物または前駆体、例えば代謝物であるジヒドロテストステロンを含む。テストステロンの代謝物または前駆体を使用する場合には例えば5-HT1aアゴニスト(および任意でPDE5阻害剤も)の投与時期を再検討する必要があることは、当業者には明らかである。例えばジヒドロテストステロンを使用する場合は、5-HT1aアゴニストの投与時期を約30分早くする(なぜならこれは、過剰なテストステロンがジヒドロテストステロンに変換されるのに要するおおよその時間だからである)。
【0008】
本発明では、遊離テストステロンのレベルは、典型的にはテストステロンの投与から1〜20分後に生じる、少なくとも約0.010 nmol/Lの遊離テストステロンのピーク血漿レベルとすべきである。この血漿テストステロンピークから約3.5時間〜5.5時間後に、テストステロン効果のピークが存在する。すなわち、性機能障害のない(sexually functional)女性における性器興奮に対するテストステロンの効果には時間差が存在する。
【0009】
テストステロンは好ましくは、投与を受ける対象の血液循環中で短期間型で高ピークのテストステロンを示す製剤として投与される。したがって本発明は、テストステロンまたはその類似体が、担体としてシクロデキストリンを含む舌下製剤などの舌下製剤の形状で提供される、使用を提供する。適切な投与経路の別の例は、シクロデキストリン製剤または他の通常の賦形剤および希釈剤などを使用しても実施可能である、頬粘膜(buco-mucosally)経路または鼻内経路である。製剤の典型的な例はヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン中に含まれる状態で投与されるが、本質的に全てのテストステロンを1回の短いバーストの間に放出する、テストステロンまたはその類似体を含む製剤の調製に関して、他のβシクロデキストリン、および他の通常の賦形剤および希釈剤などが当技術分野の範囲に含まれる。該バーストは典型的には、投与後の短い期間(例えば60〜120秒以内、より好ましくは60秒以内)であり、約1〜20分後にテストステロンの血液ピークレベルに達する。好ましい態様では、薬剤は舌下投与用に設計され、かつさらにより好ましい該組成物は、ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリンなどのシクロデキストリンを含む。(0.5 mgのテストステロン用に)調製されるテストステロン試料の典型的な例は、0.5 mgのテストステロン、5 mgのヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン(担体)、5 mgのエタノール、および5 mlの水からなるが、これらの物質の個々の量は増減する場合がある。
【0010】
循環中のテストステロンは典型的には、SHBG(ステロイドホルモン結合グロブリン)と、およびアルブミンと結合している。本発明で定義するテストステロンのピーク血漿レベルが存在すること、ならびに遊離のテストステロンすなわちアルブミンおよびSHBGと結合していない画分として計算されることは重要である。したがって、投与されるテストステロンの用量は、アルブミンおよびSHBGを飽和させるのに十分なほどに高くすべきである(すなわちテストステロンの濃度は、SHBGもしくはアルブミンとテストステロンとの完全な結合を上回るように十分に高くなければならない)か、またはSHBG上のテストステロン結合部位に対する競合因子の使用などの、アルブミンもしくはSHBGとの結合を回避する別の方法を設計しなければならない。
【0011】
テストステロンに基づく他の性機能不全の治療とは対照的に、本明細書に記載された使用(および方法)は、治療を受ける対象におけるテストステロンレベルの一時的な上昇を目的としている。他の方法の大半は、テストステロンレベルを回復/置換/補充して(正常対象に見られるような)正常(すなわち生理的)レベルにすることを目的としている。好ましい態様では、テストステロンは、投与を受ける対象の血液循環中で短期間型で高ピークのテストステロンが得られるように適用される。「短期間型」という用語は、血清テストステロンレベルが投与後2時間以内にベースラインレベルまで戻るようなテストステロンの適用を意味する。
【0012】
好ましくは、使用される5-HT1Aアゴニストは、他の5-HT受容体ならびにα-アドレナリン受容体およびドーパミン受容体よりも5-HT1A受容体に対して選択的である。5-HT1Aアゴニストの非制限的な例は、8-OH-DPAT、アルネスピロン(Alnespirone)、AP-521、バスパー(Buspar)、ブスピロン(Buspirone)、ジプロピル(Dippropyl)-5-CT、DU-125530、E6265、エバルゾタン(Ebalzotan)、エプタピロン(Eptapirone)、フレシノキサン(Flesinoxan)、フリバンセリン(Flibanserin)、ゲピロン(Gepirone)、イプサピロン(Ipsapirone)、レソピトロン(Lesopitron)、LY293284、LY301317、MKC242、R(+)-UH-301、レピノタン(Repinotan)、SR57746A、スネピトロン(Sunepitron)、SUN-N4057、タンドスピロン(Tandosporine)、U-92016A、ウラピジル(Urapidil)、VML-670、ザロスピロン(Zalospirone)、またはザプラシドン(Zaprasidone)である。
【0013】
5-HT1aアゴニストの適用は、テストステロンと同様に、血中にピークが存在するような適用である。好ましい態様では、使用される5-HT1aアゴニストは、テストステロンの(バースト放出)投与の約4時間後に血中にピークが存在するように適用される。
【0014】
テストステロンならびに5-HT1aアゴニストの適用は急性型すなわち応需型(on demand)であり、長期型ではない。換言すれば、テストステロンおよび/または5-HT1aアゴニストの投与は、レベルを生理的レベルまで回復させることを目的とした長期型の投与レジメン/状況/適用と比較して、性行為の直前にのみ行われる。
【0015】
本明細書における性機能不全への言及は、男性および/または女性の機能不全を含む。男性の性機能不全への言及は、性的関心欠損症(ISD)、勃起不全(ED)、および早漏(PE)を含む。
【0016】
女性の性機能不全への言及は、性的欲求低下障害(HSDD)、女性の性的興奮障害(FSAD)、および女性のオルガスム障害(FOD)を含む。
【0017】
これに拘束されるわけではないが、本発明者らは、それを必要とする対象にテストステロンおよび5-HT1aアゴニストを提供することによる性機能不全の治療に関して、以下の説明を提供する。テストステロンは、性的なきっかけに対する脳の感受性をより高め、かつ主観的な性的興奮を高める。それが不適切と見なされる状況においてヒトがそのような興奮に対して反応することを防ぐために、前頭前野は自動的/反射的な反応を抑制することができ、それによって身体的な性的興奮も抑制する。FSDの女性、特にFSADの女性は前頭前野による過度の抑制作用に苦しんでおり、これは5-HT1Aアゴニストを使用することで緩和される(抑制の抑制)ことを、本発明者らは提起する。
【0018】
5-HT1Aアゴニストに関する態様は好ましくは、女性の性機能不全の治療のために、すなわち主観的および身体的な性的興奮(女性の性的興奮障害)を改善するために使用され、かつこれは特に、脳による性行動の抑制を脱抑制することによって、女性の性的興奮障害を患う女性に有効である。
【0019】
好ましい態様では、本発明は、女性の性機能不全の治療用の医薬の調製における、テストステロンおよび5-HT1Aアゴニストの使用であって、該5-HT1Aが本質的に性行為の1時間前に放出されかつ該テストステロンが性行為の3.5〜5.5時間前に放出される使用を提供する。さらに別の好ましい態様では、本発明は、女性の性機能不全の治療用の医薬の調製における、テストステロン、PDE5阻害剤、およびHT1Aアゴニストの使用であって、該5-HT1Aが本質的に性行為の1時間前に放出され、該PDE5阻害剤が性行為の1〜2時間前に放出され、かつ該テストステロンが性行為の3.5〜5.5時間前に放出される使用を提供する。好ましくは、該女性の性機能不全は、女性の性的興奮障害(FSAD)である。
【0020】
さらに別の好ましい態様では、該性機能不全は、男性の性機能不全である。
【0021】
5-HT1aアゴニストの(最大)効果とテストステロンの(最大)効果とが(完全に)一致することが好ましいことは明らかである。しかしながら、テストステロンおよび5-HT1aアゴニストの最大効果が部分的に重複するだけである場合でもなお、望ましい作用がもたらされることに注目されたい。全てのテストステロンを本質的に1回の短いバーストの間に(例えば女性の)対象に放出するようにテストステロンが提供される場合は、5-HT1aアゴニストは好ましくは、テストステロンの投与の少なくとも3時間後に最高血漿濃度をもたらすように提供される。さらにより好ましくは、5-HT1aアゴニストの効果は、テストステロンの摂取の3.5〜5.5時間後に現れる。5-HT1aアゴニスト投与の正確な時間が、使用される製剤のタイプに依存することは明らかである。5-HT1aアゴニスト製剤が投与直後に放出される場合は、テストステロンの提供と同時に5-HT1aアゴニストを提供することは役に立たない。なぜなら効果がほとんど重複しないからである。使用される製剤由来の5-HT1aアゴニストが利用可能となる前に、ある程度の時間(例えば3.5〜4.5時間)がかかるならば、テストステロンが投与されるのと同時にこれを投与することができる/投与する。
【0022】
理論に拘束されるわけではないが、本明細書の実験パートでは、性機能不全の治療における5-HT1aアゴニストの効果に関する、本発明者らの現在の仮説について記載する。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、性機能不全の治療用の医薬の調製における、テストステロン、PDE5阻害剤、および5-HT1Aアゴニストの使用であって、該5-HT1Aが本質的に性行為の1時間前に放出され、該PDE5阻害剤が性行為の1〜2時間前に放出され、かつ該テストステロンが性行為の3.5〜5.5時間前に放出される使用を提供する。好ましい態様では、該テストステロンは舌下テストステロンである。
【0024】
多数のPDE5阻害剤が利用可能である。PDE5阻害剤の一例は、化学的にはピペラジン,1-[[3-(1,4-ジヒドロ-5-メチル-4-オキソ-7-プロピルイミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-2-イル)-4-エトキシフェニル]スルホニル]-4-エチル-の一塩酸塩と表記される塩酸バルデナフィルである。活性成分である塩酸バルデナフィルに加えて、個々の錠剤は、微結晶性セルロース、クロスポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、黄色酸化鉄、および赤色酸化鉄を含む。他の例には、化学的に、1-[[3-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-オキソ-3-プロピル-1Hピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル)-4-エトキシフェニル]スルホニル]-4-メチルピペラジンのクエン酸塩と表記されるクエン酸シルデナフィルがある。活性成分であるクエン酸シルデナフィルに加えて、個々の錠剤は以下の成分を含む:微結晶性セルロース、無水リン酸水素カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、二酸化チタン、乳糖、トリアセチン、およびFD & C 青色二号アルミニウムレーキ。他の例には、化学的に、ピラジノ[1',2':1,6]ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオン,6-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2,3,6,7,12,12a-ヘキサヒドロ-2-メチル-,(6R,12aR)-と表記されるタダラフィルがある。活性成分であるタダラフィルに加えて、個々の錠剤は以下の成分を含む:クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、酸化鉄、乳糖一水和物、ステアリン酸マグネシウム、微結晶性セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、二酸化チタン、およびトリアセチン。
【0025】
PDE5阻害剤の数は現在でも増え続けており、他の非制限的な例には以下がある:E-4021、E-8010、E-4010、AWD-12-217(ザプリナスト)、AWD 12-210、UK-343,664、UK-369003、UK-357903、BMS-341400、BMS-223131、FR226807、FR-229934、EMR-6203、Sch-51866、IC485、TA-1790、DA-8159、NCX-911、もしくはKS-505a、またはWO 96/26940に開示された化合物。
【0026】
活性成分が好ましくは、その最大効果(すなわちその活性)が少なくとも部分的に重複/一致しかつ好ましくは完全に重複するように活性成分が投与/放出されることが好ましいことは、当業者には明らかである。テストステロンに関して、最大効果とは、性愛刺激に対する関心および性的動機付けの最大の亢進を意味する。PDE5阻害剤に関して、最大効果とは、自律神経系のNANC(非アドレナリン・非コリン作動性)経路の活性の最大の亢進であり、かつ5-HT1Aアゴニストに関して、これは最大の行動脱抑制を意味する。この目的は、さまざまな戦略を用いることによって達成可能である。
【0027】
上記で概説したように、テストステロン、5-HT1aアゴニスト、およびPDE5阻害剤の最適な効果に関しては、該化合物の最大効果が一致することが望ましい。しかしながら、たとえ仮に最大効果が部分的に重複するだけであっても、望ましい効果(例えばFSDの治療)がもたらされる。5-HT1aアゴニストの効果には、約1時間の時間差が存在し、かつ5-HT1aアゴニストの効果は数時間にわたって持続する(例えばフレシノキサンは1〜2時間後に最高血漿濃度に達し、単回投与時の半減期は5.5時間である)。バルデナフィルおよびシルデナフィルなどのPDE5阻害剤は、典型的には、投与の約1時間後にそれらの最高血漿濃度(シルデナフィルでは少なくとも35 ng/ml、バルデナフィルでは2 μg/l、かつタダラフィルでは40 μg/lとなるはずである)に達し、かつその効果はその後も存在する。5-HT1aアゴニストおよびPDE5阻害剤をほぼ同時に放出することによって、それらの効果は少なくとも部分的には一致する。5-HT1aアゴニストおよびPDE5阻害剤をそれらの放出が遅延するように製剤化できることは、当業者に明らかである。例えば活性成分は、2時間後に溶解するコーティングとともにまたはそれにより被覆された状態で、提供される。このような場合、活性成分は、性行為の1.5〜3.5時間前に摂取されなければならない。他の変形形態は当業者によって容易に実施され、かつこれは本発明の範囲に含まれる。
【0028】
本発明に関して、選択される投与経路は、侵襲性が最も低い経路(例えば経口、頬粘膜、または鼻内)である。性行動に対する意欲は、侵襲的な投与経路による負の影響を受けないようにすべきである。
【0029】
本明細書に記載された使用は、
(i) 性機能不全の治療用の方法における使用のためのテストステロンおよび5-HT1aアゴニスト;または
(ii) 性機能不全の治療用の方法における使用のためのテストステロン、PDE5阻害剤、および5-HT1aアゴニスト
として代替的に製剤化され得る。
【0030】
本発明はさらに、テストステロンおよび5-HT1Aアゴニストを含む薬学的組成物であって、本質的に該5-HT1Aを性行為の1時間前に放出しかつ該テストステロンを性行為の3.5〜5.5時間前に放出するように製剤が設計されている薬学的組成物を提供する。
【0031】
テストステロンを含む薬学的組成物あたりのテストステロンの量は、少なくとも0.3 mgのテストステロンでありかつ最大で2.5 mgのテストステロンである。アルブミンおよびSHBGのレベルならびに治療される対象の体重に依存して、より高いかまたはより低い用量が必要な場合がある。5-HT1aアゴニストの適切な量は、使用される5-HT1aアゴニストならびに例えば患者の体重に依存する。フレシノキサンは例えば、典型的には1 mgの量で提供される。
【0032】
本発明は、テストステロン、PDE5阻害剤、および5-HT1Aアゴニストを含む薬学的組成物であって、本質的に該5-HT1Aを性行為の1時間前に放出し、該PDE5阻害剤を性行為の1〜2時間前に放出しかつ該テストステロンを性行為の3.5〜5.5時間前に放出するように製剤が設計されている薬学的組成物も提供する。5-HT1Aアゴニストのある適切な量は、約1 mgである。少なくとも3種類の異なる活性成分を使用することの利点とは、個々の使用量を、2種類の活性成分に基づく治療と比較して低減してもよいことである。
【0033】
活性成分(例えばテストステロン、PDE5阻害剤、または5-HT1Aアゴニスト)は、錠剤、カプセル剤、多粒子剤(multi-particulate)、ゲル剤、フィルム剤、液剤、または懸濁剤の形状などの任意の適切な形状で存在してもよく、かつ希釈剤および/または賦形剤および/または結合剤および/または崩壊剤および/または潤滑剤および/または着色剤を含んでもよい。直接放出または遅延放出などの、異なる種類の放出パターンを使用することもできる。
【0034】
異なる活性成分の効果が少なくとも部分的に一致しかつ好ましくは完全に一致しなければならないので、本発明は好ましくは、投与に関する指示書も提供する。したがって本発明は、テストステロンを含む少なくとも1種類の薬学的組成物と、5-HT1Aアゴニストを含む少なくとも1種類の組成物とを含むパーツのキット(kit of parts)であって、該キットが該組成物の投与に関する指示書をさらに含むパーツのキットも提供する。さらに別の態様では、本発明は、テストステロンを含む少なくとも1種類の薬学的組成物と、PDE5阻害剤を含む少なくとも1種類の組成物と、5-HT1Aアゴニストを含む少なくとも1種類の組成物とを含むパーツのキットであって、該キットが該組成物の投与に関する指示書をさらに含むパーツのキットも提供する。
【0035】
さまざまな活性成分の処方に依存して、さまざまな投与レジメンを使用可能なことが明らかであろう。
【0036】
本発明のパーツのキットの効果をさらに高めるために、該キットは、認知的介入および認知的刺激の手段をさらに含んでもよい。このような情報は、任意のデータ記憶媒体(紙、CD、DVD)で提示されてもよく、受動的であっても双方向的であってもよく、または該認知的刺激の目的で少なくとも部分的に設計されたウェブサイトにリンクされていてもよい。場合によっては、該認知的刺激情報を意識下に、例えば潜在意識的に提示することが好ましい。
【0037】
本明細書に記載された、活性成分の組み合わせは、他の適切な活性成分をさらに伴ってもよい。
【0038】
本発明はさらに、性機能不全を患う男性または女性にテストステロンと5-HT1Aアゴニスト(および任意でPDE5阻害剤)との組み合わせを提供することによって、該男性または該女性を治療する方法を提供する。
【0039】
本発明を、以下の非制限的な例において、さらに詳細に説明する。
【0040】
実験パート
FSDを対象としたテストステロンおよびブスピロンの併用投薬に関する症例報告
理論的根拠
本発明者らのFSD投薬試験に参加した数人の女性が、性交しようと思った時または性交時に、強い抑制感情を抱いたと報告した。これらの女性のうち3人には、検査施設において有資格医師によって、テストステロン(T)の単回投与とブスピロン(B)の単回投与の組み合わせが処方された。Tは、性的刺激に対する脳の認知性を高めることが知られている。Bは、該抑制を低減させるために、その5-HT1A受容体活性化作用のために投与された。
【0041】
設定
全ての女性が、プラセボまたはT/B投薬を無作為に、かつ別の日に受けた。T(0.5 mg、懸濁剤、舌下)は測定の4時間前に、B(5 mg、錠剤、経口)は測定の1.5時間前に投与された。身体的な興奮は、陰核血液量(Clitoral Blood Volume;CBV)の測定により評価し;主観的な性的興奮は、性的興奮反応自己評価質問票(Sexual Arousal Response Self-Assessment Questionnaire;SARSAQ)を使用して評価した。加えて、性行為に対する身体的な期待の尺度として、膣のパルス振幅(Vaginal Pulse Amplitude;VPA)を測定した。CBVおよびVPAは、ニュートラルな(neutral)映像(film clip)の間、および続いて官能的な映像の間に測定した。ニュートラルな映像と官能的な映像の各セッションの後にSARSAQを実施した。官能的な映像は、後の(計4回の)セッションにおいて、徐々に性表現の露骨さを高めた。以下に示す結果は、プラセボ条件およびT/B条件下での、官能的な映像の間の身体的な興奮(CBVおよびVPA、パーセントポイントで表記)および主観的な性的興奮(SARSAQ、Likert尺度ポイントで表記)の全体的かつ相対的な上昇として記載されている。
【0042】
症例A
この女性は、性的欲求低下障害(HSDD、DSM-IV TRの試験対象患者基準(inclusion criteria))と女性の性的興奮障害(FSAD、DSM-IV TRの試験対象患者基準)の両方をもつと診断された。この女性は、過度の飲酒によってしか開放されない性的抑制感を感じている。この女性は、自分の外見に対する賛辞は性行為の直接的な誘いであると解釈しており、このことが直ちに抑制の感情につながる。
【0043】
SARSAQの平均上昇は0.44ポイントであり、第3セッションのニュートラル/官能的な映像の間の0.9ポイントが最高であった。VPAの平均上昇は1.3ポイントであり、第2セッションの間の3.9が最高であった。CBVの平均上昇は10.2であり、第3セッションの間の12.6が最高であった。
【0044】
症例B
この女性もHSDDとFSADの両方をもつと診断された。この女性は、かつては持っていた性行為に対する欲望を失ったと語っており、かつリラックスすることが極めて困難であると感じており、かつ極めて取り乱しやすくなっており、結果として身体的に興奮することがなくなっている。SARSAQの平均上昇は2.03ポイントであり、第2セッションのニュートラル/官能的な映像の間の6.23ポイントが最高であった。VPAの平均上昇は-0.4ポイントであり、第1セッションの間の-0.0が最高であった。CBVの平均上昇は4.0であり、第1セッションの間の5.8が最高であった。
【0045】
症例C
症例Cは、HSDDを有するがFSADは有さない。この女性は、性行為に対する欲望を取り戻そうと熱心に試みているが、くっつきすぎる(overly clingy)と彼女が主張しているそのパートナーによって意欲を失わされることが多い。
【0046】
SARSAQの平均上昇は-0.44ポイントであり、第1セッションのニュートラル/官能的な映像の間の0.01ポイントが最高であった。女性は医師に対して、自分は実際の行為(verum)中にはより強く性的に興奮すると医師に報告している。VPAの平均上昇は0.3ポイントであり、第1セッションの間の0.3が最高であった。CBVの平均上昇は17.5であり、第1セッションの間の19.3が最高であった。
【0047】
全体的な結論
T/Bの併用治療は、全3症例において、身体的な性的興奮(CBV)をプラセボ以上に高めた。性行為に対する身体的な期待(VPA)は、3症例のうち2症例で亢進した。以上を総合すると、これらの測定値は、身体的な性的興奮の大きな改善を示す。CBVは両FSAD患者で上昇し、VPAは2人のうち1人で上昇した。
【0048】
SARSAQによって測定される主観的な性的興奮は、3症例のうち2例(いずれもHSDDおよびFSADを合併している患者)で上昇した。症例CのSARSAQスコアは上昇しなかったが、この女性は実際の行為中に、より強く性的興奮を感じると報告した。
【0049】
本発明者らは、5-HT1A受容体の部分アゴニストではなく完全アゴニスト(ブスピロンに代えてフレシノキサン)を使用することにより、5-HT1A受容体アゴニストの用量を変えることにより、かつT/B治療とPDE5阻害剤とを組み合わせることにより、これらの結果がさらに改善されると予想した。
【0050】
実験1
FSDにおけるテストステロンおよびフレシノキサン
FSDの女性における、官能的な映画の抜粋への反応時のVPAに対するテストステロンおよび5-HT1A受容体アゴニスト(フレシノキサン)の併用投与の有効性
二重盲検無作為割付プラセボ対照クロスオーバーデザインで、女性の性機能不全(FSD)をもつ女性16人の集団に、以下を、異なる4日の実験日に投与する:
1.テストステロン(0.5 mg)およびフレシノキサン(1 mg)
2.テストステロン(0.5 mg)のみ
3.フレシノキサン(1 mg)のみ
4.プラセボ。
【0051】
4日の実験日には(少なくとも)3日間の期間、間隔を空ける。全ての薬物投与に関して、対象は、フレシノキサンまたはプラセボのいずれかからなる1種類のカプセル剤と、テストステロンまたはプラセボのいずれかを含む1種類の液剤との投与を受ける。ニュートラルなおよび官能的な映画の抜粋への反応時の膣のパルス振幅を、液剤の投与の直後および液剤の投与の4時間後に測定する。したがって、液剤は試験の4時間前に摂取され、カプセル剤は試験の1時間前に摂取される。舌下テストステロンおよびフレシノキサンの効果は、これらの異なる時間差(それぞれ3.5〜4.5時間と0〜1時間)のために重複する。
【0052】
実験2
FSDにおけるテストステロン、フレシノキサンおよびシルデナフィル
FSDの女性における、官能的な映画の抜粋への反応時のVPAに対するテストステロン、5-HT1A受容体アゴニスト(フレシノキサン)、およびPDE5阻害剤(シルデナフィル)の併用投与の有効性
二重盲検無作為割付プラセボ対照クロスオーバーデザインで、女性の性機能不全(FSD)をもつ女性16人の集団に、以下を、異なる6日の実験日に投与する:
1.テストステロン(0.5 mg)、フレシノキサン(1 mg)、およびシルデナフィル(10 mg)
2.テストステロン(0.5 mg)およびフレシノキサン(1 mg)
3.フレシノキサン(1 mg)およびシルデナフィル(10 mg)
4.テストステロン(0.5 mg)のみ
5.フレシノキサン(1 mg)のみ
6.プラセボ。
【0053】
6日の実験日には(少なくとも)3日間の期間、間隔を空ける。全ての薬物投与に関して、対象は、フレシノキサンおよび/もしくはシルデナフィル、またはプラセボのいずれかを含む1種類のカプセル剤と、テストステロンまたはプラセボのいずれかを含む1種類の液剤との投与を受ける。ニュートラルなおよび官能的な映画の抜粋への反応時の膣のパルス振幅を、液剤の投与の直後および液剤の投与の4時間後に測定する。したがって、液剤は試験の4時間前に摂取され、カプセル剤は試験の1時間前に摂取される。舌下テストステロン、フレシノキサン、およびシルデナフィルの効果は、これらの異なる時間差(それぞれ3.5〜4.5時間、0〜1時間、および0〜1時間)のために重複する。
【0054】
実験1〜2の実験セッションの際、VPAを測定するために、対象にタンポン形の膣プローブ(フォトプレチスモグラフ)が挿入されなければならない。次に対象は、10分間のニュートラルな映像の断片と、これに続く5分間の官能的な映像の断片を眺める。これらのベースライン測定の後に、上述の4種類の併用投薬のうち1種類を対象に投与する。投薬後に、別の一連のニュートラルな映像の断片(5分間)および官能的な映像の断片(5分間)が示される。次に膣プローブを取り外す。4時間後に、ニュートラルな映像の断片(5分間)および官能的な映像の断片(5分間)への反応時のVPA測定を再度行う。血圧(仰臥位および立位)、脈拍、呼吸速度、および体温は、実験日を通してモニターする。
【0055】
実験セッション後にスクリーニング受診が行われる。このスクリーニング受診では、対象は、Flevo病院(Almere)の婦人科のレジデントにより、FSDの診断のためおよび試験参加の適格性の判定のための問診および検査を受ける。対象は、質問票すなわち女性性機能指数(Female Sexual Function Index;FSFI)に記入することが求められる。対象は、妊娠もしくは授乳、膣感染症、膣および/または外陰部の大手術、未検出の重い婦人科疾患もしくは未解明の婦人科の愁訴を除外するためのスクリーニングを受ける。体重、身長、血圧(仰臥位および立位)が測定される。心血管状態が検査され、ECGによって重大な異常がないか調査を受ける。
【0056】
内分泌的、神経学的、もしくは精神医学的な疾患の病歴および/または治療歴を有する対象。標準的な血液化学検査および血液病学検査が行われる。参加者は、実験前日の晩および実験日当日にアルコールまたは向精神薬を摂取しないよう求められる。月経期間中は、対象の検査は実施されない。
【0057】
実験3
MSDにおけるテストステロンおよびフレシノキサン
MSDの男性における、官能的な映画の抜粋への反応時の男性性機能に対するテストステロンおよび5-HT1A受容体アゴニスト(フレシノキサン)の併用投与の有効性
二重盲検無作為に割付プラセボ対照クロスオーバーデザインで、男性の性機能不全(MSD)をもつ男性16人の集団に、以下を、異なる4日の実験日に投与する:
1.テストステロン(0.5 mg)およびフレシノキサン(1 mg)
2.テストステロン(0.5 mg)のみ
3.フレシノキサン(1 mg)のみ
4.プラセボ。
【0058】
薬物投与の直後および薬物投与の1時間後に、ニュートラルなおよび官能的な映像による視聴覚刺激(VSTR)への反応時の陰茎の腫脹(tumescence)および堅さ(rigidity)を測定し、続いてすぐに振動触覚刺激射精潜時間(vibrotactile stimulation ejaculatory latency time;VTS-ELT)および射精後勃起不応時間(postejaculatory erectile refractory time)を測定する。4日の実験日には(少なくとも)3日間の期間、間隔を空ける。全ての薬物投与に関して、対象は、フレシノキサンまたはプラセボのいずれかからなる1種類のカプセル剤と、テストステロンまたはプラセボのいずれかを含む1種類の液剤との投与を受ける。液剤の投与の直後および液剤の投与の4時間後に、ニュートラルなおよび官能的な映画の抜粋への反応時のVSTRを測定し、そのときVTS-ELTも測定する。したがって、液剤は試験の4時間前に摂取され、カプセル剤は試験の1時間前に摂取される。舌下テストステロンおよびフレシノキサンの効果は、これらの異なる時間差(それぞれ3.5〜4.5時間および0〜1時間)のために重複する。
【0059】
実験4
MSDにおけるテストステロン、フレシノキサン、およびシルデナフィル
MSDの男性における、官能的な映画の抜粋への反応時の男性性機能に対するテストステロン、5-HT1A受容体アゴニスト(フレシノキサン)、およびPDE5阻害剤(シルデナフィル)の併用投与の有効性
二重盲検無作為割付プラセボ対照クロスオーバーデザインで、男性の性機能不全(MSD)をもつ男性16人の集団に、以下を、異なる6日間の実験日に投与する:
1.テストステロン(0.5 mg)、フレシノキサン(1 mg)、およびシルデナフィル(10 mg)
2.テストステロン(0.5 mg)およびフレシノキサン(1 mg)
3.フレシノキサン(1 mg)およびシルデナフィル(10 mg)
4.テストステロン(0.5 mg)のみ
5.フレシノキサン(1 mg)のみ
6.プラセボ。
【0060】
薬物投与の直後および薬物投与の1時間後に、ニュートラルなおよび官能的な映像による視聴覚刺激(VSTR)への反応時の陰茎の腫脹および堅さを測定し、続いてすぐに振動触覚刺激射精潜時間(VTS-ELT)および射精後勃起不応時間を測定する。6日の実験日には(少なくとも)3日間、間隔を空ける。全ての薬物投与に関して、対象は、フレシノキサンまたはプラセボのいずれかからなる1種類のカプセル剤と、テストステロンまたはプラセボのいずれかを含む1種類の液剤との投与を受ける。液剤の投与の直後および液剤の投与の4時間後に、ニュートラルなおよび官能的な映画の抜粋への反応時のVSTRを測定し、そのときVTS-ELTも測定する。したがって、液剤は試験の4時間前に摂取され、カプセル剤は試験の1時間前に摂取される。舌下テストステロン、フレシノキサン、およびシルデナフィルの効果は、これらの異なる時間差(それぞれ3.5〜4.5時間、0〜1時間、および0〜1時間)のために重複する。
【0061】
実験3〜4の後にスクリーニング受診を行う。このスクリーニング受診では、対象は、Flevo病院(Almere)の婦人科のレジデントにより、MSDの診断のためおよび試験参加の適格性の判定のための問診および検査を受ける。対象は、質問票すなわち国際勃起機能スコア(IIEF)質問票に記入するよう求められる。体重、身長、血圧(仰臥位および立位)が測定される。心血管状態が検査され、ECGによって重大な異常がないか調査を受ける。参加者は、実験前日の晩および実験日にアルコールまたは向精神薬を摂取しないよう求められる。
【0062】
参考文献