特許第5748241号(P5748241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748241
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】スライド弁アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F01L 5/02 20060101AFI20150625BHJP
   F16K 3/02 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   F01L5/02
   F16K3/02 E
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-504869(P2013-504869)
(86)(22)【出願日】2010年4月15日
(65)【公表番号】特表2013-533410(P2013-533410A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】US2010001116
(87)【国際公開番号】WO2011129799
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2013年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】512264666
【氏名又は名称】ドラゴン アメリカ モーター テクノロジーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DRAGON AMERICA MOTOR TECHNOLOGIES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クラール,クレイグ,ダブリュ.
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/136614(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 5/02
F16K 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム内に圧力を含むエネルギ変換機関用の、往復ピストンを収容するシリンダに対して、流体媒体を導入および/または排出するためのスライド弁アセンブリであって、
弁空洞によって分離された第1の流体流通路および第2の流体流通路を有する弁ハウジングと、
前記弁ハウジングの前記弁空洞に収容され、流体不浸透性面に隣接する流体流通ポートを有する弁本体と、
前記弁本体の前記流体流通ポートにより、前記弁ハウジングの前記第1の流体流通路と前記第2の流体流通路との間の流体流通関係が可能になる流体流通位置と、前記弁本体の前記流体不浸透性面が、前記弁ハウジングの前記第1の流体流通路と前記第2の流体流通路との間の流体流通関係を妨げる流体遮断位置とに、前記弁ハウジングの前記弁空洞内の前記弁本体を並進移動させるアクチュエータと、
を含み、
前記弁ハウジングおよび前記弁本体は、前記弁ハウジングの前記弁空洞内にある弁本体が、前記弁本体の前記流体流通位置と前記流体遮断位置との間で並進移動する間、前記弁本体を拘束するための協働面を有し、前記スライド弁アセンブリは、
前記弁本体と前記弁ハウジングとの間に第1の封止関係を形成するために、前記弁本体の前記流体不浸透性面内に配置された少なくとも第1の封止アセンブリをさらに含み、
前記第1の封止アセンブリは、主シールリングと、前記主シールリングの周縁を囲む補助シールリングと、前記主シールリングを前記弁本体の前記シール空洞の壁に当てて担持するために、前記主シールリングと前記弁本体の前記シール空洞の前記壁との間に弾性力を加えるように配置された弾性部材とを含むことを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記第1の封止アセンブリは、前記システム内の圧力とつながり、前記第1の封止アセンブリの効果を高めるために、前記システム内の圧力を受けるように構成されることを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項3】
請求項1に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記第1の封止アセンブリは、前記弁本体のシール空洞内に配置され、少なくとも、前記弁本体が、前記弁ハウジングの前記弁空洞内で前記流体遮断位置にある場合で、かつ前記システム内の圧力が前記第1の封止アセンブリにかかる場合に、前記弁本体と前記弁ハウジングとの間に前記第1の封止関係を形成することを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項4】
請求項に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記第1の封止アセンブリは、円筒形状、D字形状、扁球形形状、および円形形状の変形型からなる群から選択される形状を有することを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項5】
請求項に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記第1の封止アセンブリは円筒形状を有することを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項6】
請求項に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記第1の封止アセンブリの前記補助シールリングは、前記弁本体の前記シール空洞に対して自由に移動できることを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項7】
請求項1に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記弁ハウジングと前記弁本体との間に第2の封止関係を形成するために、前記弁ハウジング内に配置された第2の封止アセンブリをさらに含むことを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項8】
請求項に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記第2の封止アセンブリは、前記システム内の圧力とつながり、前記第2の封止アセンブリの効果を高めるために、前記システム内の圧力を受けるように構成されることを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項9】
請求項に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記第2の封止アセンブリは、前記弁ハウジングのシール空洞内に配置され、少なくとも、前記弁本体が、前記弁ハウジングの前記弁空洞内で前記流体遮断位置にある場合で、かつ前記システム内の圧力が前記第2の封止アセンブリにかかる場合に、前記弁本体と前記弁ハウジングとの間に前記第2の封止関係を形成することを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項10】
請求項に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記第2の封止アセンブリは、主シールリングと、前記主シールリングの周縁を囲む補助シールリングと、前記主シールリングを前記弁ハウジングの壁に当てて担持するために、前記主シールリングと前記弁ハウジングの前記シール空洞の前記壁との間に弾性力を加えるように配置された弾性部材とを含むことを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項11】
請求項10に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記第2の封止アセンブリは、円筒形状、D字形状、扁球形形状、および円形形状の変形型からなる群から選択される形状を有することを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記第2の封止アセンブリは円筒形状を有することを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項13】
請求項10に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記第2の封止アセンブリの前記補助シールリングは、前記弁ハウジングの前記シール空洞に対して自由に移動できることを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項14】
請求項に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記弁ハウジングは、前記弁ハウジングの前記シール空洞内の前記第2の封止アセンブリをさらに押しつけるために、前記第2の封止アセンブリにかかるシステム圧力が通過する通路を形成する少なくとも1つのチャネルをさらに含むことを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項15】
請求項に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記弁ハウジングは、第1の流体流通路を画定するキャップであって、前記弁ハウジングの前記シール空洞内の前記第2の封止アセンブリをさらに押しつけるために、前記第2の封止アセンブリにかかるシステム圧力が通過するための、前記第1の流体流通路に対して平行に延びる複数のチャネルを含むキャップをさらに含むことを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項16】
請求項1に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記協働面は、前記スライド弁アセンブリがその遮断位置にある場合に、少なくとも第1の封止アセンブリの封止圧力を前記弁ハウジングから解放するための、前記アクチュエータに対応するカムおよびカム従動子を含むことを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項17】
請求項16に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記カム従動子は、前記弁本体の側面に取り付けられ、前記カムは、前記弁本体の側面に沿って配置され、前記カム従動子が係合するカム面を含むことを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【請求項18】
請求項16に記載のスライド弁アセンブリにおいて、前記カム従動子は、前記弁本体の幅にわたる前部カム従動子と、前記弁本体の幅にわたって延びる後部カム従動子とを含み、前記カムは、前記弁ハウジング上のカム面を含み、そのカム面は前記カム従動子が係合することを特徴とするスライド弁アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力アクチュエータを含む圧力システム、例えば、エネルギ変換機関、例として、ディーゼルエンジン、スターリングサイクル機関、ミラーサイクル機関、オットーサイクル機関などの内燃機関または熱機関で使用するのに適した弁アセンブリに関する。より詳細には、本発明は、封止部品に関連する弁および本体に作用する摩擦、熱、および摩耗を抑制するように構成された、改良した封止システムを有する、圧力システムで使用するスライド弁アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の内燃機関のほとんどは、オットーサイクルとして公知の4行程動作シーケンスを利用する。オットーサイクルは、吸気弁が開き、空気および燃料からなる混合物がエンジンのシリンダに送られる吸気行程を含む。次いで、シリンダ内の圧力を高めるために、ピストンが燃料および空気の混合物を圧縮する圧縮行程が行われる。発動行程では、ピストンがシリンダの最高点に到達する直前に、スパークプラグから発生したスパークにより混合物が点火されて、ピストンをシリンダ内の下方に押しやる。次いで、排気行程で排気弁が開き、燃焼済みガスがシリンダの外に押し出される。4つの行程は、エンジンの動作中に連続して繰り返される。
【0003】
オットーサイクルのプリンシパルに基づいて動作する内燃機関は、通常、各サイクル中に吸気および排気ポートを選択的に開閉するスプリング懸架式ポペット弁を利用する。ほとんどのエンジンでは、クランクシャフトがタイミングベルトまたはチェーンに連結され、次に、タイミングベルトまたはチェーンがカムシャフトに連結され、カムシャフトは、吸気および排気行程時にそれぞれ吸気弁および排気弁を開くように回転する。各弁に対応するスプリングは、他のサイクル時には弁を閉じている。
【0004】
そのようなスプリング懸架式ポペット弁の使用にまつわる幾つかの欠点がある。1つの欠点は、各サイクル中に弁がシリンダの中に突出し、ピストンが、開いた弁に大きな力で接触し、エンジンにかなりの損傷をもたらす恐れがあるという特有の危険が存在することである。さらに、弁ヘッドがシリンダの中に突出しているために、弁タイミング事象が制限されることがある。
【0005】
従来の内燃機関でポペット弁を使用することの別の欠点は、弁を閉じるのに比較的高剛性のスプリングが使用されることである。したがって、各サイクル中にスプリングの抵抗力に打ち勝って各弁を開くのに比較的強い力が必要とされ、エンジンの効率が低下する。さらに、スプリングによる高剛性の抵抗力のために、弁タイミング事象が制限されることがある。例えば、従来のポペット弁および高剛性スプリングが採用された場合、吸気弁および排気弁がともに開いた短い期間が存在するのが一般的である。この重複した期間中に、未燃焼の炭化水素分子が次のサイクルにわたって燃焼室に残ることがあり、それにより、動的圧縮に悪影響を及ぼし、エンジン効率を低下させる。
【0006】
従来のポペット弁の使用にまつわるさらに別の欠点は、オリフィスに障害物がある結果として、すなわち、ポペット弁の一部がオリフィスを通ってシリンダの中に突出するために、エネルギが失われることである。さらに、吸気ポートからシリンダに入る流れが、ポペット弁のヘッド部、すなわち、閉じた状態でオリフィスを封止する弁の部分に接触した場合にその流れが乱れる。吸気弁のヘッド部により、シリンダ内に乱流および空所が発生することがあり、それによって、エンジンの効率が低下する。さらに、排気弁のヘッド部が、排気行程中にシリンダの中に突出すると、燃焼済みのガスがシリンダから効率的に流れ出ることができず、燃焼能力がさらに低下する。
【0007】
従来のポペット弁にまつわる複数の欠点を解決するために、内燃機関と併用することができる様々なスライド弁構造が開発されてきた。スライド弁アセンブリの主要な利点の1つは、実質的に妨げられない流路を有することができることである。具体的には、従来のポペット弁が採用されず、したがって、吸気ポートまたは排気ポートを通る流路を妨害しないので、スライド弁は、空気流のシリンダに入る能力を大幅に高める可能性がある。さらに、従来のポペット弁と併用される高剛性スプリングをなくすことができるので、スライド弁アセンブリは、機械負荷を低減することができる。
【0008】
スライド弁アセンブリの中には、回転ディスク、シリンダ、スリーブ、およびその他の回転楕円体回転機構を有するものがある。そのような公知のスライド弁は、吸気および排気行程時に、それらの開孔がシリンダと重なるようにタイミングを合わせることができる。しかし、スライド弁は連続的にシールと接触するため、これらの公知のスライド弁には、高い温度と極端に大きな摩擦がかかることがあり、その結果、弁および関連する封止機構が受ける摩耗の速度が速くなる。
【0009】
さらに、そのようなスライド弁アセンブリは通常、開孔の大きさが固定される、すなわち、シリンダと位置を合わされる開孔の大きさは、弁が並進または移動する、すなわち、回転ではなくて平面内を前後に移動するときに変えることができない。相応して、ポート開孔を比較的大きくするために、燃料消費および排出ガスが増えることがあり、結果として、低いエンジン回転数において、特に、アイドリング状態時に、エンジン性能に悪影響を及ぼすガス速度の低下をもたらす。
【0010】
スライド弁アセンブリの例は、米国特許第1,722,873号明細書、同第1,922,678号明細書、同第2,074,487号明細書、および同第5,694,890号明細書に開示されている。
【0011】
先行技術のスライド弁システムの一部にまつわる他の欠点は、多数のシールを採用する封止システムの複雑さである。きわめて少数の部品を採用するスライド弁システム用の効果的な封止システムを提供することが望ましい。
【0012】
したがって、圧力システム、例として、例えば、内燃機関などのエネルギ変換機関に容易に組み込まれるように構成されたスライド弁アセンブリを提供することが必要である。
【0013】
弁本体および関連する封止部品に作用する摩擦、熱、および摩耗を低減するように構成されたスライド弁アセンブリを提供することがさらに必要である。
【0014】
エネルギ変換機関に付属する弁および/またはピストンシリンダアセンブリの燃焼室を効果的に封止するように構成された、改良した封止システムを有する、あるいは圧力システムに付属する弁および/または圧力チャンバを効果的に封止するように構成された、改良した封止システムを有するスライド弁アセンブリを提供することがさらに必要である。
【発明の概要】
【0015】
本発明はこれらの必要性を満たした。本発明は、エネルギ変換機関、例えば、内燃機関用の、往復ピストンを収容する燃焼室またはシリンダに対して、流体媒体を導入および/または排出するためのスライド弁アセンブリを提供する。スライド弁アセンブリは、弁空洞によって分離された第1の流体流通路および第2の流体流通路を有する弁ハウジングと、弁ハウジングの弁空洞に収容され、流体不浸透性面に隣接する流体流通ポートを有する弁本体と、弁本体の流体流通ポートにより、弁ハウジングの第1の流体流通路と第2の流体流通路との間の流体流通関係が可能になる流体流通位置、および弁本体の流体不浸透性面が、弁ハウジングの第1の流体流通路と第2の流体流通路との間の流体流通関係を妨げる流体遮断位置に、弁ハウジングの弁空洞内の弁本体を並進移動させるアクチュエータと、弁ハウジングの弁空洞内の弁本体が、弁本体の流体流通位置と流体遮断位置との間で並進移動する間、弁本体を拘束するための弁本体および弁ハウジング上の協働面と、弁本体と弁ハウジングとの間に封止関係を形成するために、弁本体の流体不浸透性面内に配置された第1の封止アセンブリを含む封止システムとを含み、前記第1の封止アセンブリは、システム内の圧力とつながり、システム内の圧力を受けるように構成され、それによって、第1の封止アセンブリの効果が高まる。封止システムはまた、弁ハウジングと弁本体との間に第2の封止関係を形成するために、弁ハウジング内に配置された第2の封止アセンブリを含む。
【0016】
第1の封止アセンブリおよび第2の封止アセンブリは、主シールリングと、主シールリングの周縁を囲む補助シールリングと、主シールリングをそのそれぞれの封止面に当てて担持するために、主シールリングとそのそれぞれの封止面との間に弾性力を加えるように配置された、例えば、テンションスプリングなどの弾性部材とを含む。第1の封止アセンブリに関して、封止面は弁本体のシール空洞の壁を含むことができ、一方、第2の封止アセンブリに関しては、封止面は、弁ハウジングのシール空洞の壁を含むことができる。
【0017】
第1の封止アセンブリ、第2の封止アセンブリ、およびその主シールリングは、例えば、円筒状または非円筒状、例として、扁球形およびD字形などの多数の形状の1つを有することができ、補助シールリングは、そのそれぞれのシール空洞内で主シールリングに対して自由に移動可能である。
【0018】
弁ハウジングはまた、上側弁ハウジングの環状部材内に取り付けられたキャップを有する。このキャップは、弁ハウジング内に配置された少なくとも第2の封止アセンブリに圧力を供給して、弁ハウジングの封止面に対する封止効果を高めるために、システム内に流体媒体および/または圧力用の流路をそれぞれが形成する複数の平行ポートまたはチャネルを含むことができる。シリンダの燃焼室内の高圧を封止アセンブリに送るためのポートまたはチャネルをこのように配置することは、この第2のアセンブリの封止効果を高めるように作用する。これらのポートがない場合、システム内の圧力は、第1および/または第2の封止リングを含むシール空洞内に移動して、第1および/または第2の封止アセンブリの主シールリングおよび補助シールリングを第1および/または第2の封止アセンブリを含むシール空洞の1つまたは複数の封止面に押しつけて、または圧接して、第1および/または第2の封止アセンブリの主シールリングおよび補助シールリングを弁本体または弁ハウジングの1つまたは複数の封止面に押しつける、またはさらに圧接する。
【0019】
協働面は、弁本体アクチュエータに対応する1つまたは複数のカムおよびカム従動子を含むことができる。カムおよびカム従動子のこれらの協働面は、弁アセンブリを開閉するための、弁ハウジング内での並進移動中に弁本体を拘束するように機能することができる。カムは、ハウジング内で弁本体の両側に、または弁本体自体の中に配置された面を有することができ、従動子は、カム面と係合するように弁本体の側面に取り付けられる。カム面は水平であってよいし、または傾斜部分を有してもよい。カム面が傾斜部分を有する場合、従動子は、弁本体の並進移動中に上昇して、弁本体を弁ハウジングから離れる方向に持ち上げ、それにより、弁本体を弁ハウジングから効果的に分離させ、ひいては、少なくとも第1の封止アセンブリを弁ハウジングの下側部分から遠ざける。
【0020】
さらなる実施形態は、弁本体の幅に沿って取り付けられた前部カム従動子および後部カム従動子を含み、これらのカム従動子は、スライド弁アセンブリの封止システムの接触面および/または封止面間の摩擦を小さくするために、弁ハウジングのカム面と協働する。
【0021】
有利にも、弁本体は、アクチュエータによる、弁ハウジングに対する弁本体の並進移動または揺動中に、直線カムおよびカム従動子によって弁ハウジングの封止面から強制的に遠ざけられるので、従来のスライド弁と比較して、弁、弁本体、および関連する封止部品に作用する摩擦、熱、および摩耗を大幅に低減することができる。
【0022】
弁本体は、実質的に弁ハウジングの弁空洞または穴内に配置される。弁本体は、カムシャフトおよびクランクシャフトの回転のタイミングに基づいて、カムおよびアクチュエータシステムにより、弁ハウジング内で並進または揺動するように構成され、それにより、弁本体の流路と内燃機関のシリンダとの間の流体連通を選択的に可能にするか、または阻止する。具体的には、弁本体の第1の方向の並進移動により、流体連通が可能になり、一方、弁本体の反対方向の並進移動により、シリンダとの流体連通が阻止される。弁アセンブリのこの後者の位置または閉じた位置において、システム内の圧力、例えば、シリンダ圧力と、弾性部材、例えば、1つまたは複数の封止アセンブリのスプリングとが圧力システムの封止を効果的にする。
【0023】
弁本体を並進移動させるのに様々なタイプのアクチュエータを使用することができる。例えば、カムシャフト、ソレノイド、ロッカアーム、チェーン、ギヤ、ベルト、および油圧式、空気式、電気式アクチュエータ、ならびに/または他の手段を採用して、弁本体に並進移動をさせることができる。このように、本発明はさらに、特に、弁を並進移動させるのに従来の機構のみに依存する先行技術のスライド弁アセンブリと比較して、採用され得る様々なタイプのアクチュエータに対してかなり融通を利かすことができる。そのような設計の融通性により、弁本体の並進移動のほかに、例えば、本明細書において下記に概略的に説明するように、可変開孔径およびタイミング事象の実現など様々な利点がもたらされる。
【0024】
従来の内燃機関で使用される場合、本発明の第1のスライド弁アセンブリは吸気弁として採用され、本発明の第2のスライド弁アセンブリは排気弁として採用される。
【0025】
本発明の弁アセンブリはまた、様々な圧力システムで効果的に使用することができる。弁アセンブリは、例えば、スライド弁アセンブリ、回転弁アセンブリ、半回転弁アセンブリ、または揺動弁アセンブリなどの多数の弁アセンブリの任意の1つとすることができる。
【0026】
したがって、本発明の目的は、エネルギ変換機関または熱機関などの圧力システム、例えば、内燃機関で使用する、改良した封止システムを含む弁アセンブリを提供することである。
【0027】
本発明のさらなる目的は、封止部品に関連する弁および本体に作用する摩擦、熱、および摩耗を低減するように構成された、改良した封止システムを有するスライド弁アセンブリなどの弁アセンブリを提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、システムの圧力が上昇したときに、圧力により、シールが封止面に圧接され、それにより封止システムの効果が高まるような改良した封止システムを有するスライド弁アセンブリなどの弁アセンブリを提供することである。
【0029】
本発明のさらに別の目的は、様々な手段を使用して駆動することができ、それにより、より高い設計融通性をもたらすスライド弁アセンブリなどの弁アセンブリを提供することである。
【0030】
添付の図面を考慮して読むことで、本発明のこれらのおよび他の利点および目的が、より深く認識および理解される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A図1Aは、標準的な内燃機関の吸気行程時に、吸気弁および排気弁として使用される、本発明によるスライド弁アセンブリの部分的に切り取った斜視図である。
図1B図1Bは、標準的な燃焼機関の圧縮または発動行程時に、吸気弁および排気弁として使用される、本発明によるスライド弁アセンブリの部分的に切り取った斜視図である。
図1C図1Cは、標準的な内燃機関の排気行程時に、吸気弁および排気弁として使用される、本発明によるスライド弁アセンブリの部分的に切り取った斜視図である。
図2図2は、本発明のスライド弁アセンブリの分解斜視図である。
図3図3は、加圧ガスが、圧縮シリンダに関連する本発明のスライド弁アセンブリの弁本体内の、封止アセンブリを収容するシール空洞に流入するときの加圧ガスの経路を示す概略的な拡大断面図である。
図4図4は、標準的な内燃機関の斜視図であり、シリンダヘッドがエンジンブロックに組み込まれ、本発明のスライド弁アセンブリを吸気弁および排気弁として組み込みつつある。
図5図5は、本発明の1つまたは複数のスライド弁アセンブリを組み込むことができる内燃機関用の構造の立断面図である。
図6A図6Aは、図5の内燃機関の吸気行程時に、吸気弁および排気弁として使用される、本発明によるスライド弁アセンブリの部分的に切り取った斜視図である。
図6B図6Bは、図5の内燃機関の排気行程時に、吸気弁および排気弁として使用される、本発明によるスライド弁アセンブリの部分的に切り取った斜視図である。
図7図7は、本発明の教示によるスライド弁アセンブリのさらなる実施形態の斜視図である。
図8図8は、図7のスライド弁アセンブリの底面図である。
図9図9は、図7のスライド弁アセンブリの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の改良した封止システムを含む弁アセンブリは、圧力アクチュエータを含んでよいし、または含まなくてもよい圧力システム、例えば、エネルギ変換機関、例として、ディーゼルエンジン、スターリングサイクル機関、ミラーサイクル機関、オットーサイクル機関などの内燃機関または熱機関で使用するスライド弁アセンブリ、回転弁アセンブリ、半回転弁アセンブリ、または揺動弁アセンブリとすることができる。
【0033】
図1A図1B図1Cおよび図2を参照して、本発明のスライド弁アセンブリ30、130は、標準的な内燃機関において吸気弁および/または排気弁として使用することができる。好ましい実施形態では、吸気弁および排気弁の構成は実質的に同一である。それに応じて、図1A〜1Cでは、本発明の吸気弁は吸気弁30として全体的に示され、一方、排気弁は排気弁130として全体的に示されるが、各弁は、図2のスライド弁アセンブリ30に準じて提供されるのが好ましい。図1A図1Cでは、吸気弁30および排気弁130は、本発明のスライド弁アセンブリ内の封止システムの位置がより明確に分かるように、明確化目的で破断されている。
【0034】
図1A〜1Cにおいて、標準的な内燃機関31は、シリンダ33、燃焼室35、およびピストン37を含み、ピストン37は、当業者に公知の態様で、連接棒(図示せず)を介してクランクシャフトに連結される。吸気弁30および排気弁130は、シリンダヘッド43の頂上またはヘッド43内に配置された独立したモジュール部品として設けられてよいし、あるいは、吸気弁30および排気弁130は、図4に示すように、単一ユニットとしてシリンダヘッド43内に形成されてもよい。弁アセンブリ30、130は、それらのコンパクトな特徴のために、エンジンブロック43と一体化することができ、したがって、分離可能なシリンダヘッドの必要性がなくなる。単体ヘッド/ブロック構成には幾つかの利点がある。例えば、ヘッドボルトをなくすか、またはヘッドボルトの数量を減らすことができる。エンジンブロックは、より強度が高く、かつより頑丈に構築することができる。ヘッドガスケットおよび取り付け用のハードウェアをなくすことができ、したがって、保守のために保守対象物に容易に接触すること、すなわち、容易なサービスおよびアクセスを可能にし、ひいては、製造および保守のコストを削減することができる。
【0035】
図2は、内燃機関で使用する、本発明の1つのスライド弁アセンブリを示しており、本明細書で上記したように、スライド弁アセンブリ30、130は、吸気弁30および排気弁130として使用することができる。したがって、本発明の2つのスライド弁アセンブリがシリンダ33に対して設けられている。スライド弁アセンブリ30、130は、上側弁ハウジング45および下側弁ハウジング47で構成される弁ハウジングと、弁ハウジングに収容される弁本体49と、主シールリング53、補助シールリング55、および弾性部材またはスプリング57を含む封止アセンブリ51、ならびに主シールリング59a、補助シールリング59b、および弾性部材またはスプリング59cを含む封止アセンブリ59を含む封止システムとを有する。図2に示すように、下側弁ハウジング47は、シリンダ33の燃焼室35上に広がる単一プレートである。また、図2に示すように、各スライド弁アセンブリ30、130用の上側弁ハウジング45は、下側弁ハウジングプレート47の全長の約半分である。上側弁ハウジング45は、溶接などの適切な手段を通じて下側弁ハウジングプレート47に固定して連結される。下側弁ハウジングプレート47およびシリンダ33は、下側弁ハウジングプレート47の開孔47aおよびシリンダ33の開孔33aに受け入れられる、ねじなどの留め具(図示せず)によって互いに連結される。
【0036】
引き続き図2を参照して、スライド弁アセンブリ30、130は、弁駆動ロッド61、直線カム63、65、および弁本体49の側面49a、49bに取り付けられるローラベアリングまたはカム従動子67、69、71、73をさらに含む。直線カム63は、カム従動子67、69がそれぞれ係合する協働カム面63a、63bを有し、直線カム65は、カム従動子71、73が係合する協働カム面65a、65bを有する。カム従動子67、69、71、73は、弁本体49が弁ハウジング内でアクチュエータロッド61の駆動によって並進または揺動する場合に、カム面63a、63b、65a、65bに接して移動する。アクチュエータロッド61は、弁本体49の開孔49cに受け入れられ、保持ピン74によって保持される。当然のことながら、弁駆動ロッド61を保持ピン74によって開孔49c内に配置することは、弁ハウジング内での弁本体49の移動時に、駆動ロッド61が、弁本体49に対して自由に移動する、またはトグル式に動作することができるということである。このトグルとしての機能は、直線カム63、65および従動子67、69、71、73が使用されるときに、特に、カム63、65のカム面63a、63b、65a、65bが傾斜している場合に特に重要になる。
【0037】
図2にさらに示すように、弁本体49は、開口または流体流通ポート75を有し、上側弁ハウジング45は、開口または第1の流体流通路79を有し、下側弁ハウジングプレート47は、開口または第2の流体流通路77を有する。上側弁ハウジング45は、第1の流体流通路79を画定するキャップ45bを受け入れる環状部材45aを有する。上側弁ハウジング45はまた、弁本体49が上側弁ハウジング45内に組み込まれる場合に、カム63、65をそれぞれ受け入れる2つのチャネル45c、45dを含む。
【0038】
標準的な内燃機関に属する図1A図1B、および図1Cに最もよく示すように、キャップ45bは、上側弁ハウジング45の環状部材45a内に取り付けられ、封止アセンブリ51を保持するためのシール空洞45eを形成しており、封止アセンブリ51は、図2に最もよく示されている。同様に図1A図1B、および図1Cに示すように、弁本体49は、弁本体49の流体流通ポート75に隣接する、または並列する下側流体不浸透性面49dを有する。弁本体49は、封止アセンブリ59を保持するためのシール空洞49eをさらに含み、封止アセンブリ59は図2に最もよく示されている。
【0039】
下側弁ハウジングプレート47、上側弁ハウジング45、および弁本体49が図1A図1B、および図3Cに示すように組み立てられると、弁本体49の流体流通ポート75、上側弁ハウジング45の第1の流体流通路79、および下側弁ハウジングプレート47の第2の流体流通路77は、弁本体49の流体流通ポート75が流路79、77と一列に整列した場合に、協働してスライド弁アセンブリ30を開く。スライド弁アセンブリ30のポート75と流路77、79のこの一列整列は、スライド弁アセンブリ30の流体流通位置、または開いた位置であると称される。
【0040】
反対に、弁本体49の流体流通ポート75が、上側弁ハウジング45および下側弁ハウジングプレート47のそれぞれ第1の流体流通路79および第2の流通路77と一列に整列しない場合、スライド弁アセンブリ30は遮断位置または閉じた位置にある。スライド弁アセンブリ30のこの遮断位置または閉じた位置は、本明細書では、スライド弁アセンブリ30の流体遮断位置または閉じた位置であると称される。さらに、上側弁ハウジング45、下側弁ハウジングプレート47、および弁本体49が、図1A図1B、および図1Cに示すように組み立てられると、本明細書で上記したように、封止アセンブリ51は、上側弁ハウジング45の陥凹部分またはシール空洞45eに受け入れられ、封止アセンブリ59は、弁本体49の下側流体不浸透性面49dの陥凹部分またはシール空洞49eに受け入れられる。
【0041】
図1Aの標準的な内燃機関の場合、吸気弁30がその流体流通位置またはその吸気行程位置にあるとして示されており、吸気弁30が開き、空気および燃料の混合物がシリンダ33に送られて、ピストン37を矢印で示すように下方に押している。スライド弁アセンブリ30のこの吸気行程の場合、排気弁130は、その流体遮断位置または閉じた位置にあり、弁本体49は、上側弁ハウジング45の流体流通路79および下側弁ハウジングプレート47の流体流通路77を完全に遮断している。この例では、ならびに吸気弁30および排気弁130の両方に関して、弁本体49のシール空洞49e内の封止アセンブリ59は主シールになり、上側弁ハウジング45内の封止アセンブリ51は、一般的に「エプロンシール」と呼ばれる補助シールになる。また、図3に示す例では、燃焼室35内の圧力が上昇し、矢印で示すように、加圧された空気またはガスが、弁本体49のシール空洞49eに流入し、封止アセンブリ59、特に第2の封止リング59bに作用して、両方の弁スライドアセンブリ30、130に対する封止アセンブリ59の効果を高めるように、封止アセンブリ59をシール空洞49eの壁面に押しつける。さらに明らかなように、空気および燃料の混合物は、スライド弁アセンブリ30の吸気行程時に燃焼室35に送られ、そのそれぞれの封止アセンブリ51、59において、特に、弁本体49内の封止アセンブリ59の強化された性能と、図3に示すように、封止アセンブリ59に作用する圧力とにより、排気弁アセンブリ130から漏出するのを阻止される。
【0042】
さらに当然のことながら、図3を参照して、封止アセンブリ59は、図1A〜2を参照して本明細書で上記したものと同様に構築される。すなわち、図3の封止アセンブリ59は、主シールリング59a、主シールリング59aの周縁を囲んで配置された補助シールリング59b、および弾性部材59cを含む。図3では、圧力がチャンバ35から移動する経路をより明瞭に示すために、明瞭化目的で弾性部材59cが示されていない。
【0043】
図1Bは、標準的な内燃機関31の圧縮行程または発動行程を示している。示すように、吸気弁30および排気弁130はともに閉じている。この圧縮行程では、ピストン37が空気および燃料を圧縮してシリンダ33内の圧力を上げる。ピストン37がシリンダ33の最高点に到達する前に、スパークが混合物に点火して、ピストン37が、矢印で示すように、その発動行程においてシリンダ33内で下方に押される。この場合も同様に、各スライド弁アセンブリ30、130の封止アセンブリ59は主シールとして機能し、上側弁ハウジング45内の封止アセンブリ51は、補助シールまたは「エプロンシール」として機能する。この場合も同様に、シリンダ33内の圧力は、図3に示すように、シール空洞49eに移動して、両方のスライド弁アセンブリ30、130に対する封止アセンブリ59の性能を高めるために、封止アセンブリ59をシール空洞49eの壁に押しつける。
【0044】
図1Cは、標準的な内燃機関31の排気行程を示している。示すように、吸気弁30は閉じ、一方、排気弁130は開いている。ピストン37のこの排気行程では、燃焼済みガスが、排気弁130を通ってシリンダ33から押し出される。排気弁130のこの開いた位置では、流体流通ポート75は、上側弁ハウジング45の第1の流体流通路79、および下側弁ハウジングプレート47の第2の流体流通路77と一列に整列している。この場合も同様に、シリンダ33内の圧力は、図3に示すように、弁本体49のシール空洞49eに移動して、吸気弁30および排気弁130の両方の封止アセンブリ59の性能を高める。排気弁130の場合、封止アセンブリ59の向上した性能は、燃焼済みガスを上側弁ハウジング45の第1の流体流通路79から送り出す助けとなる。
【0045】
引き続き図1A図1B、および図1Cを参照して、封止アセンブリ51が組み立てられるときに、補助シールリング55が、主シールリング53の周縁を囲んで配置され、主シールリング53の周縁は、補助シールリング55を受け入れる(図2に参照数字53aで示す)外側溝を有する。本明細書で上記したように、封止アセンブリ51は、上側弁ハウジング45の陥凹溝またはシール空洞45eに収容される。少なくとも補助シールリング55がシール空洞45e内を自由に移動できるように、シール空洞45e内に十分な隙間が設けられるのが好ましい。フープスプリングの形態の弾性部材57は、シール空洞45e内に配置されて、主シールリング53を上側弁ハウジング45内のシール空洞45eの壁に当てて担持するように、主シールリング53とシール空洞45eの壁との間に弾性力を加える。スプリングアセンブリ51の弾性部材57は、円筒形状を有するように示されているが、当然のことながら、弾性部材57は、他の形状、例えば、非円筒形状、例として、扁球形形状、D字形状、または円形形状の変形型を有することができる。主シールリング53および補助シールリング55は分割リングであるのが好ましく、弾性部材57に対応する形状を有することができるのも当然のことである。同様に当然のことながら、封止アセンブリ51の主シールリング53、補助シールリング55、および弾性部材57は、他の形状、例えば、非円筒形状、例として、扁球形形状、D字形状、または円形形状の変形型を有することができる。
【0046】
引き続き図1A図1B、および図1Cを参照して、封止アセンブリ59を組み立てる際に、補助シールリング59bが、主シールリング59aの周縁を囲んで配置され、主シールリング59aの周縁は、補助シールリング59bを受け入れる(図2に参照数字59dで示す)外側溝を有する。封止アセンブリ59は、弁本体49の陥凹溝またはシール空洞49eに収容される。少なくとも補助シールリング49bがシール空洞49e内を自由に移動できるように、シール空洞49eに十分な隙間が設けられるのが好ましい。フープスプリングの形態の弾性部材59cは、シール空洞49e内に配置されて、主シールリング59aを弁本体49内のシール空洞49eの壁に当てて担持するように、主シールリング59aとシール空洞49eの壁との間に弾性力を加える。スプリングアセンブリ59の弾性部材59cは、円筒形状を有するように示されているが、当然のことながら、弾性部材59cは、他の形状、例えば、非円筒形状、例として、扁球形形状、D字形状、または円形形状の変形型を有することができる。主シールリング59aおよび補助シールリング59bは分割リングであるのが好ましいことも当然のことである。同様に当然のことながら、主シールリング59aおよび補助シールリング59bは弾性部材59cに対応する他の形状を有することができる。同様に当然のことながら、封止アセンブリ59の主シールリング59a、補助シールリング59b、および弾性部材59cは、他の形状、例えば、非円筒形状、例として、扁球形形状、D字形状、または円形形状の変形型を有することができる。
【0047】
図4は、内燃機関78内の吸気弁30および排気弁130の例を示しており、シリンダヘッド43が、ピストン37を収容するエンジンブロックに組み込まれている。単体ヘッドブロック概念のこの考え方は、例えば、ヘッドボルトおよび/またはヘッドガスケットなどのエンジン部品の点数を減らし、ひいては、エンジンブロックをより強化し、製造コストを削減するなどの幾つかの利点を有する。さらなる利点は、サービスおよび/または交換のための、モジュール式弁機構へのアクセスが容易になることである。
【0048】
図5は、米国特許出願公開第2007/0289562A1号明細書に開示されたものと同様であり得る内燃機関で使用される、本発明のスライド弁アセンブリを示している。図5では、エンジン81は、燃焼室84の両端とつながる圧縮シリンダ82および膨張シリンダ83を有し、往復ピストン85、86は、容積可変の圧縮チャンバを形成する2つのシリンダ内にある。ピストン85、86は、シリンダ内において上死点(TDC)位置と下死点(BDC)位置との間で連携して動作するために、連接棒88、89によってクランクシャフト87に連結されており、ピストン85、86のそれぞれは、クランクシャフト87の各回転時に、1つは上り行程、1つは下り行程を行う。圧縮シリンダ82は、吸気管90および吸気弁91を介して外気を受け入れ、出口弁92を介して燃焼室84の入り口端とつながる。燃料は、燃料噴射装置93または他の適切な燃料注入口から燃焼室84に噴射され、その燃料は、燃焼室84で圧縮シリンダ82からの空気と混合される。混合物は燃焼室84で燃焼および膨張し、膨張したガスは燃焼室84の出口端から入り口弁95を通って膨張シリンダ83に流入する。排気ガスは、膨張シリンダ83から出口弁または排気弁96を通り、排気管97を通って放出される。
【0049】
図5の吸気弁91、出口弁92、入り口弁95、および排気弁96は、図1A図1B図1C、および図2を参照して説明したものと同様な本発明のスライド弁アセンブリとすることができる。この例では、吸気弁91、出口弁92、および排気弁96は、図1A図1B図1C、および図2を参照して上記に説明したものと同様な上側弁ハウジング45を有するのが好ましく、キャップ45bは、これらの図で示したように構成され、図5の圧縮シリンダ82内の圧力は主に封止アセンブリ51に作用し、この封止アセンブリ51を主シールにし、封止アセンブリ59を補助シールまたはエプロンシールにする。図5図6A、および図6Bを参照すると、膨張ガスは、燃焼室84から膨張シリンダ83の入り口弁95に流入するので、スライド弁アセンブリ95の上側弁ハウジング98(図6Aおよび図6B)は、図6Aおよび図6Bに示すような構成を有し、図5の燃焼室84からの膨張ガスは、吸気スライド弁アセンブリ95の上側弁ハウジング98内に収容された封止アセンブリ51に作用する。
【0050】
図6Aは、下向きの矢印で示すように、図5のエンジン81の膨張シリンダ83および往復ピストン86の吸気行程を示し、図6Bは、上向きの矢印で示すように、図5の往復ピストン86および膨張シリンダ83の排気行程を示している。図6Aでは、スライド弁アセンブリ95は開いており、流体流通路98c、77および弁本体49の流体流通ポート75は一列に整列している。図6Aでは、スライド弁アセンブリ96は閉じており、流体流通路99c、77および弁本体49の流体流通ポート75は一列に整列していない。図6Bは、図5の往復ピストン86および膨張シリンダ83の排気行程を示しており、スライド弁アセンブリ95は閉じており、一方、スライド弁アセンブリ96は開いている。
【0051】
特に、図6Aおよび図6Bを参照すると、吸気スライド弁アセンブリ95は、環状部材98aを有する上側弁ハウジング98と、環状部材98aに取り付けられ、第1の流体流通路98cを有するキャップ98bと、封止アセンブリ51を保持するシール空洞98dとを含む。当然のことながら、上側弁ハウジング95は、図2のカム63、65と同様なカム、およびカム従動子67、69、71、73をさらに含み、カム従動子67は図6Aに示されている。さらに、スライド弁アセンブリ95は、封止アセンブリ59を有する弁本体49および下側弁ハウジング47をさらに含む。スライド弁アセンブリ95に関して、上側弁ハウジング98、封止アセンブリ51、弁本体49、弁本体49内の封止アセンブリ59、および弁ハウジング47は、図1A〜2に示すものと同様に構築されている。一方、相違点は、キャップ98bが少なくとも6つのポートまたはチャネル98eを有することであり、そのうちの4つが図6Aおよび図6Bに示されている。これらのポート98eは、キャップ98bの第1の流体流通路98cに対して平行に延びている。特に、図6Aを参照して、図5の燃焼室84からの膨張ガスはポート98eに入って、封止アセンブリ51の性能を高めるように封止アセンブリ51に作用する。この例では、封止アセンブリ51が主シールになり、一方、弁本体49のシールアセンブリ59が、システムの第2のシールまたは「エプロンシール」になる。
【0052】
特に、図6A、および図6Bを参照すると、図5の排気スライド弁アセンブリ96は、環状部材99aと環状部材99aに取り付けられたキャップ99bとを有する上側弁ハウジング99と、キャップ99b内の第1の流体流通路99cと、環状部材99a内に形成されたシール空洞99dと、上側弁ハウジング99の環状部材99aに保持された封止アセンブリ51とを含む。この場合も、弁本体49、封止アセンブリ51、および弁本体49内の封止アセンブリ59を有する排気スライド弁アセンブリ99は、図5のスライド弁アセンブリ91、92と同様に構築され、さらには、図1A〜2のスライド弁アセンブリ30、130と同様に構築されている。すなわち、図6Aおよび図6Bの膨張シリンダ83内の圧力は、主に排気スライド弁アセンブリ96の封止アセンブリ59に作用して、それにより、排気スライド弁アセンブリ96の封止アセンブリ59を主シールにし、排気スライド弁アセンブリ96の封止アセンブリ51を補助シールまたは「エプロンシール」にする。
【0053】
図2を参照すると、弁アセンブリ30、130はまた、カム従動子67、69、71、73の面と協働する面を有するカム63、65を含む。これらの協働面は、構成が実際に1つまたは複数の機能を実行するように設計された駆動ロッド61に対応している。例えば、カム63、65およびカム従動子67、69、71、73は、駆動ロッド61による、弁ハウジング内での弁本体49の揺動時に、1)弁アセンブリ30、130を開閉するための、弁ハウジング内での弁本体49の並進移動中に弁本体49を拘束し、2)弁アセンブリ30、130が閉じた位置または遮断位置にある場合に下側弁ハウジングまたはプレート47の上部封止面にかかる封止アセンブリ59の封止圧力を解放するように働く。カム63、65は、ハウジング内で弁本体49の両側49a、49bに配置された面を含み、従動子67、69、71、73は、カム面と係合するように弁本体の側面49a、49bに回転可能に取り付けられるのが好ましい。カム面は水平であってよいし、または傾斜部分を有してもよい。カム面が傾斜部分を有する場合、弁本体49の並進移動時に、カム従動子67、69、71、73は、弁本体49を弁ハウジングから離れる方向に持ち上げ、それにより、弁本体49を弁ハウジングから効果的に隔て、ひいては、少なくとも封止アセンブリ59を下側弁ハウジングプレート47から間隔を置いて配置する。弁本体49および封止アセンブリ59の下側弁ハウジング47から遠ざかる移動により、封止アセンブリ59がまだ弁本体49の流体不浸透性面49aと係合しているとしても、本来なら2つの封止面間に存在し得る摩擦が小さくなる。直線カム63、65およびカム従動子67、69、71、73は、封止アセンブリ59を有する弁本体49を封止面から傾斜させ、封止リングアセンブリ59と封止面との間の接触を断ち、それにより、2つの面間の摩擦を小さくし、また、弁本体49と封止アセンブリ51との間の摩擦接触をなくし、それにより、本発明のスライド弁アセンブリのより効果的な開閉を可能にする。
【0054】
特に、図1A〜1Cを参照すると、本発明のスライド弁アセンブリの封止システムの封止アセンブリ51、59は、少なくとも半径方向にスライド弁アセンブリ30、130を封止するように構成されている。有利にも、封止アセンブリ51、59は、これまでの公知のスライド弁アセンブリと比較して、採用している封止部品が比較的少ない。さらに、封止アセンブリ51、59の特性、およびそのそれぞれのスライド弁アセンブリ内の封止アセンブリ51、59の位置により、スライド弁アセンブリ30、130の封止効果がさらに改善されることが予測されると考えられる。
【0055】
当業者には明らかなように、図1A〜1Cに示すエンジンの動作中に、駆動ロッド61を駆動して吸気弁30および排気弁130の動作を制御する様々な手段を採用することができる。例えば、カムシャフト、ソレノイド、ロッカアーム、チェーン、ギヤ、ベルト、および油圧式、空気式、電気式アクチュエータ、ならびに/または他の手段を採用して、アクチュエータ61により、弁本体49に並進移動をさせるができる。
【0056】
再度図1A〜1Cを参照して、エンジン31の動作は、本発明のスライド吸気弁30およびスライド排気弁130と併用した場合に、2005年12月20日に登録された米国特許第6,976,462B2号明細書に開示したものと同様とすることができ、この特許の教示は、参照によりその全体を本明細書に援用される。この特許では、吸気弁20および排気弁120が、スライド弁アセンブリではなくて半回転弁アセンブリである。図1A〜1Cに示す本発明のエンジン31およびスライド弁アセンブリ30、130は、4行程オットーサイクルの環境で示されるが、本発明のスライド弁アセンブリ30、130は、2工程サイクルなどの他のサイクルで動作するエンジンに採用できることが当業者には明らかであろう。
【0057】
図7図8、および図9は、本発明のスライド弁アセンブリの弁本体のさらなる実施形態を示している。この実施形態では、弁本体100は、両方が実質的に弁本体100の幅にわたって延びる前部カム従動子101および後部カム従動子103を含む。さらに、弁本体100は、流体流通路105と、図1A〜2を参照して上記したものと同様な弁ハウジング内で弁本体100に並進移動をさせるアクチュエータロッド107とを含む。弁本体100は、その下側面111に封止アセンブリ109をさらに含み、封止アセンブリ109は、図1A〜2の封止アセンブリ59のものと同様に構築され、同様に機能する。弁本体100は、本明細書で上記したものと同様な弁ハウジング内で動作し、流体流通ポート105は、弁ハウジングの第1の流体流通路および第2の流体流通路と一列に整列し、また、整列から外れる。特に、図9に示すように、前部カム従動子101および後部カム従動子103は、それぞれカム面112、114と協働して、弁ハウジング内で弁本体100を上下させ、接触面間の摩擦力を小さくし、封止アセンブリ109の寿命を延ばし、弁が効果的に開閉するのを可能にする。カム面112、114は水平な輪郭を有することもできる。
【0058】
本発明のスライド弁アセンブリの封止アセンブリ51、59、109は動的シールである、すなわち、圧力で動作するシールと見なすことができる。動的シールの利点は、比較的狭い領域が動的表面と接触し、それにより、摩擦が小さくなり、その結果、エンジンの寿命が長くなり、特に、エンジンの高回転数時の封止が改善される。燃焼ガスの圧力がない場合、本発明の封止アセンブリ51、59、109は、そのそれぞれの弾性部材またはテンションスプリングから連続的な荷重を受けて封止線を形成する。システム圧力が大きくなると、これらの封止アセンブリ51、59、109は、システム内の増大した圧力によって封止面に押しつけられ、それにより、シールの効果を維持および/または改善する。
【0059】
上記から、封止アセンブリ59は、通常燃焼室とつながっており、圧力がシステム内で高くなり、この高くなった圧力が封止アセンブリ59に作用して、封止の効果を高めることがさらに分かる。一方、図6Aおよび図6Bでは、圧力は燃焼室84からキャップ98bのポートまたはチャネル98eに向けられ、封止アセンブリ51にかかる。上側弁ハウジングに取り付けられたキャップは取り外し可能であり、圧力が上側弁ハウジングに対してかかるか、または下側弁ハウジングに対してかかるかに応じて交換可能であるのは明らかである。すなわち、システム内の圧力が図6Aおよび図6Bの燃焼室84から得られる場合、圧力を直接封止アセンブリ51に供給するチャネル98eを有するキャップ98bを上側弁ハウジング98に設けることができ、一方、システム内の圧力が図5の圧縮シリンダ82から得られる場合、図1A〜1Cの上側弁ハウジング45のキャップ45bなどの、チャネルのないキャップを上側弁ハウジングに設けることができる。
【0060】
本明細書で上記に説明したように、本発明の弁アセンブリが、エネルギ変換機関で使用するスライド弁アセンブリに関して開示されたが、本発明の弁アセンブリは、様々な用途、特に、本発明の封止アセンブリを効果的に動作させる圧力システムで使用される回転弁アセンブリ、半回転弁アセンブリ、揺動弁アセンブリ、または他の任意のタイプの弁アセンブリとすることができるのも当然のことである。
【0061】
本発明が、様々な図の実施形態と関連して説明されたが、当然のことながら、他の同様の実施形態を使用することができるし、または本発明から逸脱することなく、本発明の同じ機能を実行するために、説明した実施形態に対して修正および追加を行うこともできる。したがって、本発明は、任意の単一の実施形態に限定されるべきではなくて、むしろ添付の特許請求の範囲の記載に従った広さおよび範囲にあると解釈すべきである。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9