特許第5748251号(P5748251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5748251高層建物の排水縦管の洗浄装置及びそれを用いた排水縦管洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5748251
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】高層建物の排水縦管の洗浄装置及びそれを用いた排水縦管洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/304 20060101AFI20150625BHJP
   B08B 9/043 20060101ALI20150625BHJP
   B05B 15/00 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   E03C1/304
   B08B9/043 433
   B05B15/00
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-187519(P2014-187519)
(22)【出願日】2014年9月16日
【審査請求日】2014年10月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成26年7月11日〜8月16日を施工期間とする、兵庫県西宮市高須町の武庫川団地4号棟、5号棟、9号棟、28号棟における雑排水縦管清掃工事の際に、発明者自ら、先端に高圧水噴出ノズルを備える耐圧ホースと、耐圧ホースに沿って配される繊維強化プラスチックを含む弾性ロッドと、排水縦管内で低層階側から上層階側に向かって、耐圧ホース及び弾性ロッドを送り上げる送りローラと、耐圧ホースに接続されて、高圧水噴出ノズルから高圧水を噴射させるための高圧水洗浄機と、を備える排水縦管洗浄装置を用いて複数回の試験を行った。最初に試験を行った日は平成26年7月11日であり、上記施工期間内に複数回同様の試験を実施した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (2)平成26年9月2日〜9月20日を施工期間とする、大阪市北区長柄東3丁目のリバーサイド長柄3号棟及び4号棟における雑排水縦管清掃工事の際に、発明者自ら、先端に高圧水噴出ノズルを備える耐圧ホースと、耐圧ホースに沿って配される繊維強化プラスチックを含む弾性ロッドと、排水縦管内で低層階側から上層階側に向かって、耐圧ホース及び弾性ロッドを送り上げる送りローラと、耐圧ホースに接続されて、高圧水噴出ノズルから高圧水を噴射させるための高圧水洗浄機と、を備える排水縦管洗浄装置を用いて複数回の試験を行った。最初に試験を行った日は平成26年9月2日であり、平成26年9月2日から平成26年9月16日(出願日)までに複数回同様の試験を実施した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514234333
【氏名又は名称】河原田 祥正
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 勝
(72)【発明者】
【氏名】河原田 祥正
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3085078(JP,U)
【文献】 実開昭62−012075(JP,U)
【文献】 特開2008−006314(JP,A)
【文献】 特開平10−286540(JP,A)
【文献】 特開2006−314926(JP,A)
【文献】 特開平11−128865(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3187588(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/304
B08B 9/043
B05B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄装置であって、
先端に高圧水噴出ノズルを備える耐圧ホースと、
前記耐圧ホースに沿って配される直進性支持材と、
前記排水縦管に形成された低層階側の開口部から上層階側に向かって、前記耐圧ホースに前記直進性支持材を配して形成された直進性支持材付耐圧ホースを送り上げる少なくとも一対の送りローラと、
前記耐圧ホースに接続されて、前記高圧水噴出ノズルから高圧水を噴射させるための高圧水洗浄機と、を備えることを特徴とする排水縦管洗浄装置。
【請求項2】
前記直進性支持材は、グラスファイバー,カーボンファイバー,スチールファイバー及びセラミックファイバーから選ばれる少なくとも1種を含む繊維強化プラスチックを含む弾性ロッドである請求項1に記載の排水縦管洗浄装置。
【請求項3】
前記直進性支持材付耐圧ホースは被覆管で被覆されている請求項1または2に記載の排水縦管洗浄装置。
【請求項4】
前記先端近傍に、前記高圧水噴出ノズル付近の映像または画像を撮影するカメラをさらに備える請求項1〜3の何れか1項に記載の排水縦管洗浄装置。
【請求項5】
前記開口部に接続される接続管をさらに備え、
前記直進性支持材付耐圧ホースが、前記接続管を通過して前記低層階側から前記上層階側に向かって送り上げられる請求項1〜4の何れか1項に記載の排水縦管洗浄装置。
【請求項6】
前記接続管は、前記開口部に接続される主路,前記主路から分岐する分岐路及び前記分岐路へ向かって送風するための送風口を備えた分岐管であり、
前記送風口に接続され、前記分岐路に向かって送風するためのブロアーをさらに備え、
前記直進性支持材付耐圧ホースは、前記主路を通過して前記低層階側から前記上層階側に向かって送り上げられる請求項5に記載の排水縦管洗浄装置。
【請求項7】
前記分岐管に接続された固液分離手段をさらに備える請求項6に記載の排水縦管洗浄装置。
【請求項8】
前記接続管の前記直進性支持材付耐圧ホースを送り込む部分に、止水シールをさらに備える請求項5〜7の何れか1項に記載の排水縦管洗浄装置。
【請求項9】
高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄方法であって、
前記排水縦管の低層階側に、開口部を形成する工程と、
前記低層階側の開口部から上層階側に向かって、先端に高圧水噴出ノズルを備える耐圧ホースに沿って直進性支持材を配して形成された直進性支持材付耐圧ホースを、前記高圧水噴出ノズルから前記高圧水を噴射させながら、少なくとも一対の送りローラで送り上げる工程と、を備えることを特徴とする排水縦管洗浄方法。
【請求項10】
高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄方法であって、
前記排水縦管の低層階側に、開口部を形成する工程と、
前記開口部に、主路,前記主路から分岐する分岐路及び前記分岐路へ向かって送風するための送風口を備えた分岐管を接続する工程と、
前記開口部から上層階側に向かって、先端に高圧水噴出ノズルを備える耐圧ホースに沿って直進性支持材を配して形成された直進性支持材付耐圧ホースを、前記主路を通過させて前記高圧水噴出ノズルから前記高圧水を噴射させながら送り上げる工程と、
前記送風口から前記分岐路へ向かって送風する工程と、を備えることを特徴とする排水縦管洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅等の高層建物に設置されている排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄装置及びそれを用いた排水縦管洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅等の高層建物の流し台、洗面所、浴室、トイレ等の設備から発生する排水は、各設備の配された室内から通じる横枝管を経て、各階を貫通する共用の排水縦管から汚水槽等に流される。
【0003】
排水には多量の残渣や油脂等が含まれている。排水縦管の内壁には、排水の通過する時間の経過に伴い、排水中の残渣や油脂等が凝集して形成された固形物であるスラッジ(固形物)が徐々に固着し、管径を徐々に減少させる。スラッジをそのまま放置した場合にはスラッジが成長して排水縦管を閉塞させることもある。このような排水縦管の閉塞を防ぐために、高層建物に設置されている排水縦管は一定期間ごとに清掃される必要がある。
【0004】
排水縦管を清掃する方法として、高圧水噴出ノズルを先端に取り付けた耐圧ホースを排水縦管内に挿入し、ノズルから噴射される高圧水を排水縦管の内壁に固着したスラッジに当てることにより、スラッジを崩すようにして清掃する方法(以下、単に、高圧洗浄方法とも称する)が広く用いられている。
【0005】
高圧洗浄方法としては、高層階の排水縦管の開口から高圧水噴出ノズルを挿入し、耐圧ホースをホースリールから徐々に繰り出して、高圧水噴出ノズルから高圧水を噴出させてスラッジを崩しながら低層階に向けて進行させて、高層階側から低層階側に向かって洗浄していく方法が広く用いられている。
【0006】
図9は、高層階側から低層階側に向かって洗浄していく方法の様子を示す説明図である。高層階側から低層階側に向かって高圧水噴出ノズル2を排水縦管H内で進行させる方法によれば、高層階側で破壊されたスラッジSは、洗浄水Wとともに、排水縦管Hで下向きに落下する。高層階側から低層階側に向かって高圧水噴出ノズル2を排水縦管H内で進行させる方法の場合、高層階側からスラッジSを崩していくために、低層階側に成長したスラッジSが存在するときには、上から落下してきたスラッジSがその部分に堆積し、閉塞部Aを形成することがあった。そして、閉塞部Aが形成された場合、排水縦管H内から低層階側に水が抜けなくなり、流し台,トイレ,浴室等の部屋に配された排水口Bに通じる横枝管Rに水が逆流し、排水口Bから水があふれ出し、その部屋を汚水で水浸しにする等の被害を発生させることがあった。
【0007】
上述した方法とは逆に、低層階側から高層階側に向かって排水縦管を洗浄する方法も提案されている。例えば、下記特許文献1は、次のような方法を開示する。まず、高圧水噴出ノズルが先端に取り付けられたホースをビルの屋上から排水管内に挿入し、排水管の最下部まで降ろし、高圧水噴出ノズルから高圧の水を噴射しながらホースを引き上げる方法を開示する。
【0008】
また、下記特許文献2は、高圧水噴出ノズルを備えたホースを排水管に屋上側から、高圧水噴出ノズルをワイヤーに係止した状態で地面に向かって降ろした後、ワイヤーで上方に引上げながら高圧水を噴射して排水管内を洗浄する洗浄方法において、固形物を除去すると共に、その除去状況をCCDカメラで撮影し、その映像によって確認する排水管の洗浄方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−342661号公報
【特許文献2】特開2002−275984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1や特許文献2に開示されたような、高層階側から高圧水噴出ノズルを一旦低層階側まで降ろした後、低層階側から高層階側に向かって排水縦管を洗浄する方法においては、次のような問題があった。
【0011】
通常の高層建物は、上述したように排水縦管の閉塞を防ぐために、一定期間ごとに清掃されている。このように、一定期間ごとに清掃されている比較的メンテナンスの行き届いた排水縦管の場合には、排水縦管に付着したスラッジは一定期間ごとに除去されているために、高層階側から高圧水噴出ノズルを一旦低層階側まで降ろすことができる程度の内径を排水縦管は保持している。しかしながら、例えば、築年数が30年を超えるような老朽化した高層建物において、種々の事情から一定期間ごとに排水縦管が清掃されておらず、メンテナンスの不充分な建物もある。例えば、排水縦管の清掃には、居住している住民宅への立ち入り等の協力が欠かせないが、住民の協力が得られなかった場合には、長期間清掃されていないまま排水縦管の内壁に大量のスラッジが固着している場合があった。このような長期間清掃されずに放置された排水縦管の場合、その内径はスラッジの固着により小さくなっていたり、殆ど閉塞している部分が形成されていたりすることがあった。このような場合、高層階側から高圧水噴出ノズルを低層階側まで降ろすことができなかった。そのために、特許文献1や特許文献2に開示されたような方法は、排水縦管の内壁に大量のスラッジが固着して内径が小さくなっていたり、殆ど閉塞している部分が形成されていたりする排水縦管の清掃には適用することができなかった。
【0012】
本発明は、高層建物に設置されている排水縦管において、内壁に大量のスラッジが固着して内径が小さくなっているような排水縦管でも洗浄することができる、排水縦管洗浄装置及びそれを用いた排水縦管洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一局面は、高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄装置であって、先端に高圧水噴出ノズルを備える耐圧ホースと、耐圧ホースに沿ってそれを支持するように配される直進性支持材と、排水縦管に形成された低層階側の開口部から上層階側に向かって、耐圧ホースに直進性支持材を配して形成された直進性支持材付耐圧ホースを送り上げる少なくとも一対の送りローラと、耐圧ホースに接続されて、高圧水噴出ノズルから高圧水を噴射させるための高圧水洗浄機と、を備える排水縦管洗浄装置である。このような排水縦管洗浄装置においては、直進性支持材が耐圧ホースを支持するために、耐圧ホースを撓ませないで、高圧水噴出ノズルを排水縦管に形成された低層階側の開口部から上層階側に向かって送り上げることができる。このような排水縦管洗浄装置によれば、高層建物の排水縦管内を低層階側からの作業だけで、低層階側から上層階側に向かって排水縦管を洗浄することができる。直進性支持材としては、例えば、グラスファイバー,カーボンファイバー,スチールファイバー,セラミックファイバー等で補強された繊維強化プラスチックを含む弾性ロッドが好ましく用いられる。
【0014】
また、排水縦管洗浄装置においては、直進性支持材付耐圧ホースは被覆管で被覆されていることが作業性がよく、また、送りローラで送り上げやすい点から好ましい。
【0015】
また、排水縦管洗浄装置においては、耐圧ホースの先端近傍に、高圧水噴出ノズル付近の映像または画像を撮影するカメラをさらに備える場合には、作業者がモニター等により映像や画像を見ることにより、高圧水噴出ノズルが到達した部分付近のスラッジの固着状態や洗浄結果等を確認できる点から好ましい。
【0016】
また、排水縦管洗浄装置においては、排水縦管の低層階側に形成された開口部に接続される接続管をさらに備え、直進性支持材付耐圧ホースが、接続管を通過して低層階側から上層階側に向かって送り上げられることが好ましい。また、とくには、接続管は、開口部に接続される主路,主路から分岐する分岐路及び分岐路へ向かって送風するための送風口を備えた分岐管であり、送風口に接続され、分岐路に向かって送風するためのブロアーをさらに備え、直進性支持材付耐圧ホースは、主路を通過して低層階側から上層階側に向かって送り上げられことが好ましい。このような構成によれば、排水縦管内で落下するスラッジや水を分岐管から排水縦管の外に吹き飛ばすことができる。その結果、排水縦管が落下するスラッジで閉塞する等の問題が解決される。また、分岐管に接続された固液分離手段を備える場合には、排水縦管内で落下したスラッジ及び水の処理が容易になる。さらに主路の分岐管の耐圧ホース及び直進性支持材が挿入される部分は止水構造をさらに備えることが、落下してきた水や崩されたスラッジ等が送りローラ等にぶつかることを防ぐことができる点から好ましい。
【0017】
また、本発明の他の一局面は、高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄方法であって、排水縦管の低層階側に、開口部を形成する工程と、低層階側の開口部から上層階側に向かって、先端に高圧水噴出ノズルを備える耐圧ホースに沿って直進性支持材を配して形成された直進性支持材付耐圧ホースを、高圧水噴出ノズルから高圧水を噴射させながら送り上げる工程と、を備える排水縦管洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の排水縦管洗浄装置及びそれを用いた排水縦管洗浄方法によれば、高層建物に設置されている排水縦管において、内壁に大量のスラッジが固着して内径が小さくなっているような排水縦管でも洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態の排水縦管Lを洗浄するための、排水縦管洗浄装置20の全体構成を説明する模式説明図である。
図2図2は、耐圧ホース1と直進性支持材4とケーブル5aとそれらを被覆する被覆管6の、高圧水噴出ノズル2に接続される先端付近を長手方向に断面視した模式断面図である。
図3図3は、図2のII−II’断面を断面視したときの模式断面図である。
図4図4は、排水縦管洗浄装置20の送りローラ7付近の部分構成を拡大して示す模式説明図である。
図5図5は、排水縦管洗浄装置20の分岐管8、ブロアー9及び固液分離装置10付近の部分構成を拡大して示す模式説明図である。
図6図6は、低層階側から高層階側に向かって洗浄していくときに生じる問題点を説明する説明図である。
図7図7は、排水縦管洗浄方法の一実施形態を説明するための説明図である。
図8図8は、他の実施形態の排水縦管洗浄装置30の全体構成を説明する模式説明図である。
図9図9は、従来の、高層階側から低層階側に向かって洗浄していく方法の様子を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る排水縦管洗浄装置の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る一実施形態の、排水縦管Lを洗浄するための排水縦管洗浄装置20の全体構成を示す模式説明図である。図1中、1は耐圧ホースであり、2は耐圧ホースの先端に装着された高圧水噴出ノズル2であり、3は耐圧ホース1に接続されて高圧水噴出ノズル2から高圧水を噴射させるための高圧水洗浄機であり、4は耐圧ホース1に沿って配される可撓性を有する直進性支持材であり、5はモニター11にケーブル5aで接続されたカメラであり、6は耐圧ホース1と直進性支持材4とケーブル5aを被覆する被覆管である。カメラ5は、高圧水噴出ノズル2付近の映像または画像を撮影する。また、7は被覆管6で束ねられた耐圧ホース1と直進性支持材4とカメラ5のケーブル5aとを上方に送り上げる送りローラである。また、8は分岐管8であり、分岐管8は排水縦管Lに一端が接続される主路8a,主路8aから分岐する分岐路8b及び分岐路8bへ向かって送風するための送風口8c,止水シール材8dを備える。9は、送風口8cに接続され、分岐路8bに向けて送風するためのブロアーである。また、10は、分岐管8から排出されるスラッジS及び水Wを固液分離する固液分離装置である。固液分離装置10は、スラッジSを捕捉する網10aと排水ポンプ10bとを備える。13は、被覆管6で束ねられた耐圧ホース1と直進性支持材4とカメラ5のケーブル5aとを巻回させてまとめるためのホースリールである。
【0021】
図2は、耐圧ホース1と直進性支持材4とケーブル5aとそれらを被覆する被覆管6の、高圧水噴出ノズル2に接続される先端付近を長手方向に断面視した模式断面図である。また、図3は、図2のII−II’断面を断面視したときの模式断面図である。
【0022】
図2及び図3に示すように、耐圧ホース1と直進性支持材4とケーブル5aとは、それらをまとめて束ねるように被覆管6で被覆されている。図3に示すように、被覆管6の内部には空隙Gが形成される。図3に示すように、被覆管6の先端は耐圧ホース1とカメラ5とを外部に導出させるようにして封止蓋14で閉じることにより、被覆管6の内部に水や崩したスラッジの破片が侵入することを防いでいる。
【0023】
本実施形態における直進性支持材とは、弾性ロッドまたは弾性管のような、巻回可能な可撓性と巻回状態から解放したときに直進性を有する線状または管状の部材である。このような直進性支持材は、可撓性を有するために作業現場へ巻回した状態で運搬することができるとともに、排水縦管に撓ませながら入線させた後は、排水縦管内で直線状に伸びる。このような直進性支持材としては、弾性ロッドが特に好ましく用いられる。弾性ロッドの具体例としては、例えば、グラスファイバー,カーボンファイバー,スチールファイバー,セラミックファイバー等で補強された繊維強化プラスチックを主体とし、1〜15mm、さらには3〜10mm程度の直径を有するようなロッドが好ましく用いられる。このような弾性ロッドの市販品としては、例えば、株式会社マーベル性のスーパーイエロー、スーパースネーク等が挙げられる。また、弾性管としては、アルミニウム管の内層と外層をポリエチレン等の樹脂で被覆したアルミニウム三層管等が挙げられる。
【0024】
耐圧ホースを支持する直進性支持材の本数は、1本以上であれば特に限定されず、直進性支持材の特性や作業する排水縦管の長さ等により適宜選択される。具体的には、高層建物が高ければ高いほど、耐圧ホースを支持するための直進性支持材の剛性が求められるために、高い高層建物の排水縦管を清掃する場合には、例えば2〜4本、さらには2〜3本程度であることが好ましい。
【0025】
また、被覆管は、耐圧ホース1と直進性支持材4とをまとめて束ねることができ、束ねた状態で巻回可能なものである限り、特に限定されない。その素材としては、ゴム、軟質プラスチック等が挙げられる。また、本実施形態においては、耐圧ホース1と直進性支持材4とケーブル5aとを被覆管6で被覆して束ねたが、被覆管6で被覆する代わりに、耐圧ホース1の長手方向の一定長さ毎にテープ等で固定して束ねる等、直進性支持材を耐圧ホース1に沿って支持するように配する方法は特に限定されない。また、アルミニウム三層管は、直進性支持材と被覆管の機能を兼ね備えることもできる。
【0026】
図4は、排水縦管洗浄装置20の、被覆管6で束ねられた耐圧ホース1と直進性支持材4とカメラ5のケーブル5aとを送り上げる送りローラ7付近の部分構成を拡大して示す模式説明図である。図4に示すように、排水縦管洗浄装置20には、4組の送りローラ7が配設されている。各組の送りローラ7を形成するローラは、耐圧ホース1と直進性支持材4とカメラ5のケーブル5aとを上方に送り出すように、一方が時計回り、他方が反時計回りに回転している。送りローラ7は、排水縦管L内において、低層階側から上層階側に向かって、耐圧ホース1と直進性支持材4とカメラ5のケーブル5aとを挟持しながら送り上げる。送りローラ7の駆動機構は特に限定されない。例えば、送りローラ7に駆動力を与えるための、人がハンドルを回すことにより回転力を与えるハンドルを有する巻き上げギア機構や、電動モータで回転力を与える等、駆動力が供給されるものであれば、特に限定されない。
【0027】
図5は、排水縦管洗浄装置20の分岐管8、ブロアー9及び固液分離装置10付近の部分構成を拡大して示す模式説明図である。また、図5中の破線の円で囲った部分は高圧水噴射ホース1等を送り込む部分を止水シール材8dでシールしている様子を示す説明図である。図5に示すように、排水縦管洗浄装置20は、排水縦管Lに一端が接続される主路8a,主路8aから分岐する分岐路8b及び分岐路8bへ向かって送風するための送風口8cを備える分岐管8が配置されている。また、分岐管8の送風口8cには、分岐路8bに向かって送風するためのブロアー9が接続されている。また、分岐管8の分岐路8bには、網10a及び排水ポンプ10bを備えた固液分離装置10が接続されている。図5に示す構造は、以下に説明するような、低層階側から高層階側に向かって洗浄していくときに生じる問題点を解決するために任意に設けられる。
【0028】
例えば、図6に示すように、低層階側から高層階側に高圧水噴射ホース1を排水縦管Hを進行させる方法によれば、低層階側で破壊されたスラッジSは、洗浄水Wとともに、排水縦管H内を下向きに落下する。このような場合、低層階側からスラッジSを崩していくために、上から落下してきたスラッジSが排水縦管H内の高圧水噴射ホース1を送り込む部分に堆積して堆積部Cが形成されることがあった。そして、堆積部Cが形成された場合、高圧水噴射ホース1をさらに送り込むことが困難になる。また、排水縦管H内から水が排水されない場合には、低層階の各設備の配された室内へ通じる横枝管に逆流して部屋の配管から水をあふれ出すおそれがある。
【0029】
図5に示す構造は、上述した問題を解決するために用いられる。このような構造を設けることにより、次のような効果が奏される。すなわち、高圧水噴出ノズル2から高圧水を噴射させて排水縦管L内のスラッジSを破壊したとき、図5に示すように、排水縦管L内をスラッジS及び水Wが落下してくる。このとき、止水シール材8dにより高圧水噴射ホース1を送り込む部分をシールすることにより、落下してきたスラッジS及び水Wが分岐管8の直下に漏出することを抑制できる。さらに、ブロアー9を用いて、分岐管8の送風口8cから分岐路8bへ向けて風の流れを作ることにより、落下してきたスラッジS及び水Wは分岐管8側に吹き飛ばされる。従って、排水縦管Lの管内からスラッジS及び水Wを外部に排出できる。
【0030】
また、図5に示すような構造においては、分岐路8bの一端には、網10a及び排水ポンプ10bを備えた固液分離装置10が接続されている。このような固液分離装置10を配設することにより、分岐路8bから排出されたスラッジSと水Wを分離することができる。そして、固液分離装置10で分離された水Wはそのまま既設の排水縦管や排水横管12等に排出することができる。また、固液分離装置10で分離されたスラッジSは回収した後、産業廃棄物として簡単に処理することができる。
【0031】
次に、上述したような排水縦管洗浄装置20を用いた排水縦管洗浄方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0032】
図7は、本発明に係る排水縦管洗浄方法の一実施形態を説明するための説明図である。本実施形態の排水縦管洗浄方法においては、はじめに、排水縦管洗浄装置20を設置する。具体的には、高層建物の洗浄される排水縦管Lの周囲に排水縦管洗浄装置20を配置する。そして、低層階、好ましくは1階で排水縦管Lを切断する。そして、排水縦管Lの切断により形成された開口部と、排水縦管洗浄装置20の分岐管8とをカップリング継手8e等を用いて接続する。このとき、耐圧ホース1の先端に装着された高圧水噴出ノズル2及びカメラ5を排水縦管Lの根元に侵入させておく。
【0033】
そして、図4を参照して説明したように、送りローラ7に被覆管6で束ねられた耐圧ホース1と直進性支持材4とカメラ5のケーブル5aを挟持させ、送りローラ7を回転させることにより、排水縦管L内において、それらを低層階側から上層階側に向かって送り上げる。ホースリール13から、被覆管6で束ねられた耐圧ホース1と直進性支持材4とカメラ5のケーブル5aが順次繰り出される。
【0034】
このとき、被覆管6で束ねられた耐圧ホース1と直進性支持材4とカメラ5のケーブル5aを送り出す際に、高圧水洗浄機3から高圧水を送ることにより、高圧水噴出ノズル2から高圧水を噴射させる。なお、高圧水噴出ノズル2が、図7の高圧水噴出ノズル2付近の拡大図に示すように、進行方向に対して逆方向に高圧水を噴射する逆噴射ノズルである場合には、管内で逆噴射による進行方向への推進力が発生するために、低層階側から上層階側に向かって送りやすくなる。
【0035】
そして、図7に示すように、1階(1F)から、2F、3F・・・と、排水縦管L内において、耐圧ホース1と直進性支持材4とカメラ5のケーブル5aを送りローラ7に挟持させ、低層階側から上層階側に向かって送り上げる。排水縦管洗浄装置20においては、耐圧ホース1が直進性支持材4で支持されている。そのために、耐圧ホース1を撓ませずに、直立姿勢を維持したまま低層階側から上層階側に向かって容易に送り出すことができる。
【0036】
図7の高圧水噴出ノズル2付近の拡大図に示すように、排水縦管Lの内壁面に固着したスラッジSは、高圧水噴出ノズル2から噴射される高圧の水Wにより破壊される。高圧水噴出ノズル2は、排水縦管L内の低層階側から上層階側に送り出されながら、排水縦管L内を低層階側から上層階側に向かって清浄化していく。このように、排水縦管LのスラッジSを低層階側から上層階側に向かって崩していくことにより、落下するスラッジSが落下途上の固着したスラッジSにせき止められ、その部分を閉塞させるような問題が生じなくなる。
【0037】
図7に示すように、高圧水噴出ノズル2の近傍には高圧水噴出ノズル2付近の映像または画像を撮影するカメラ5が配設されている。カメラ5で撮影された映像や画像は、ケーブル5aを介して接続されたモニター11に表示される。作業者は、モニター11の映像や画像を見ることにより、高圧水噴出ノズル2が到達した部分付近のスラッジSの固着状態や洗浄結果を確認することができる。
【0038】
そして、図7の高圧水噴出ノズル2付近の拡大図に示すように、排水縦管Lの内壁面に固着したスラッジSは、高圧水噴出ノズル2からの高圧水の噴射により崩されて排水縦管Lを水Wとともに落下する。そして、落下するスラッジSと水Wとは、図5に示すように、分岐管8の主路8aと分岐路8bとの分岐点に達したときに、ブロアー9からの風により分岐路8bへ吹き飛ばされる。そして、分岐路8bから排出されたスラッジS及び水Wは、固液分離装置10へ送られ、固液分離された後、処理される。
【0039】
以上、本発明に係る排水縦管洗浄装置及び排水縦管洗浄方法の実施形態を詳しく説明したが、本発明に係る排水縦管洗浄装置及び排水縦管洗浄方法は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更して用いられてもよい。
【0040】
例えば、上述した実施形態においては、分岐管8、ブロアー9及び固液分離装置10を配設することにより、落下するスラッジSと水Wとを分岐路8bへ吹き飛ばして固液分離装置10へ送り固液分離して処理した。このような形態の代わりに、排水縦管Lが短かったり、直径が太かったりして、落下するスラッジSと水Wによる悪影響が小さい場合には、図8に示すように、分岐管8、ブロアー9及び固液分離装置10を省略した排水縦管洗浄装置30のような形態を選択してもよい。このような場合には、設備構成をシンプルにすることができる点から好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の排水縦管洗浄装置及びそれを用いた排水縦管洗浄方法は、高層建物に設置されている排水縦管において、内壁に大量のスラッジが固着して内径が小さくなっているような排水縦管を効率的に洗浄することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 耐圧ホース
2 高圧水噴出ノズル
3 高圧洗浄機
4 直進性支持材
5 カメラ
6 被覆管
7 送りローラ
8 分岐管
8a 主路
8b 分岐路
8c 送風路
8d 止水シール
9 ブロアー
10 固液分離装置
11 モニター
20,30 排水縦管洗浄装置
H 高層建物
L 排水縦管
W 水
S スラッジ

【要約】
【課題】高層建物に設置されている排水縦管において、内壁に大量のスラッジが固着して内径が小さくなっている排水縦管を効率的に洗浄するための排水縦管洗浄装置及びそれを用いた排水縦管洗浄方法を提供する。
【解決手段】高層建物の排水縦管の内壁に付着したスラッジを洗浄するための排水縦管洗浄装置であって、高圧水噴出ノズルを備える耐圧ホースと、耐圧ホースに沿って配される、直進性支持材と、排水縦管内で低層側から上層側に向かって、それらを挟持しながら送り上げる送りローラと、高圧水噴出ノズルから高圧水を噴射させるための高圧水洗浄機と、を備える排水縦管洗浄装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9