【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のスイッチング電源では、スイッチング動作のオンタイミングが制御回路20のゼロ電流検出端子の閾値に対する電圧レベルにより決定されるが、スイッチング電源の起動時においては、出力電圧がまだ低い状態であるため、二次巻線Nsに誘起される電圧が低い。そのため、スイッチングの際に発生したリンギングにより、本来オフ状態であるべき期間でオンしてしまう現象が生じる。このとき、スイッチング素子に過大な電圧および電流が印加され、スイッチング素子が破壊に至るという問題があった。
【0006】
つまり、
図6に示すように、スイッチング電源の起動時に、出力電圧がまだ低い状態では、二次巻線Nsに誘起される電圧が低く、二次巻線Nsの電圧波形が、
図6(a)に示すようになるために、波形のリンギング部分が本来の閾値を超えてしまいスイッチングトランジスタQ1のゲート−ソース間に、
図6(b)に示すような電圧波形が発生する。これにより、スイッチングトランジスタQ1のドレイン−ソース間には、
図6(c)に示すような振幅の大きな電圧波形が発生し、これに伴い、
図6(d)に示すような大きなドレイン電流が発生する。
【0007】
また、スイッチング素子の破壊を防止するために、破壊耐性が強いスイッチング素子を使用することもできるが、コストが高くなるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、スイッチング電源の起動時において、スイッチング素子に印加される過大な電圧および電流を簡易な回路構成で防止するスイッチング電源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0010】
(1)本発明は、1次側主巻線(例えば、
図1のチョークコイルNpに相当)、2次側主巻線(例えば、
図1の2次巻線Nsに相当)、および補助巻線(例えば、
図1の制御巻線Ncに相当)とを備えたトランスと、スイッチング素子(例えば、
図1のスイッチングトランジスタQ1に相当)を駆動して前記トランスの2次側主巻線から直流電力を出力する第1の整流回路(例えば、
図1の出力平滑回路40に相当)と、前記スイッチング素子の駆動を制御する制御回路(例えば、
図1の制御回路20に相当)と、前記補助巻線に発生する交流を整流して直流電圧を出力する補助電源(例えば、
図1の制御巻線Nc、ダイオードD1、電源供給用平滑コンデンサC2に相当)と、を備え、前記制御回路は、前記補助電源に接続される電源端子と、前記補助巻線に接続されるゼロ電流検出端子(例えば、
図1のZ/C端子に相当)とを備えたスイッチング電源において、前記電源端子とゼロ電流検出端子との間に設けられ、起動時に、この間の電圧波形をオフセットする波形オフセット回路(例えば、
図1の波形オフセット回路30に相当)を備えたことを特徴とするスイッチング電源を提案している。
【0011】
この発明によれば、スイッチング電源において、制御回路の電源端子とゼロ電流検出端子との間に、起動時に、この間の電圧波形をオフセットする波形オフセット回路が設けられている。したがって、制御回路の電源端子とゼロ電流検出端子との間の電圧波形をオフセットすることにより、等価的に、ゼロ電流検出端子に入力される電圧波形に対する閾値が従来よりも高くなる。そのため、補助巻線における電圧波形のリンギング部分が本来の閾値を超えることがなくなるため、スイッチング素子のドレイン−ソース間に、過大な電圧が印加されたり、過大なドレイン電流が流れることを防止できる。
【0012】
(2)本発明は、(1)のスイッチング電源について、前記波形オフセット回路が、前記ゼロ電流検出端子と電源端子間に接続された抵抗(例えば、
図3の抵抗R7に相当)からなることを特徴とするスイッチング電源を提案している。
【0013】
この発明によれば、波形オフセット回路が、ゼロ電流検出端子と電源端子間に接続された抵抗から構成されている。つまり、電源端子よりゼロ電流検出端子の電圧が低い場合は、抵抗に電流が流れ、ゼロ電流検出端子の電圧を引き上げるので、補助巻線における電圧波形のリンギング部分が本来の閾値を超えることがなくなるため、スイッチング素子のドレイン−ソース間に、過大な電圧が印加されたり、過大なドレイン電流が流れることを防止できる。
【0014】
(3)本発明は、(1)のスイッチング電源について、前記波形オフセット回路が、抵抗、(例えば、
図4の抵抗R7に相当)とカソードが該抵抗の一端に接続されたダイオード(例えば、
図4のダイオードD3に相当)からなり、前記抵抗の他端が前記ゼロ電流検出端子に接続され、前記ダイオードのアノードが前記電源端子に接続されていることを特徴とするスイッチング電源を提案している。
【0015】
この発明によれば、波形オフセット回路が、抵抗とカソードがこの抵抗の一端に接続されたダイオードからなり、抵抗の他端がゼロ電流検出端子に接続され、ダイオードのアノードが電源端子に接続されている。つまり、電源端子よりゼロ電流検出端子の電圧が低い場合は、波形オフセット回路を介してバイアス電流が流れ、ゼロ電流検出端子の電圧を引き上げるので、補助巻線における電圧波形のリンギング部分が本来の閾値を超えることがなくなるため、スイッチング素子のドレイン−ソース間に、過大な電圧が印加されたり、過大なドレイン電流が流れることを防止できる。
【0016】
(4)本発明は、(1)のスイッチング電源について、前記波形オフセット回路が、抵抗(例えば、
図5の抵抗R7に相当)とアノードが該抵抗の一端に接続されたダイオード(例えば、
図5のダイオードD3に相当)からなり、前記抵抗の他端が前記電源端子に接続され、前記ダイオードのカソードが前記ゼロ電流検出端子に接続されていることを特徴とするスイッチング電源を提案している。
【0017】
この発明によれば、波形オフセット回路が、抵抗とアノードがこの抵抗の一端に接続されたダイオードからなり、抵抗の他端が電源端子に接続され、ダイオードのカソードがゼロ電流検出端子に接続されている。つまり、電源端子よりゼロ電流検出端子の電圧が低い場合は、波形オフセット回路を介してバイアス電流が流れ、ゼロ電流検出端子の電圧を引き上げるので、補助巻線における電圧波形のリンギング部分が本来の閾値を超えることがなくなるため、スイッチング素子のドレイン−ソース間に、過大な電圧が印加されたり、過大なドレイン電流が流れることを防止できる。
【0018】
(5)本発明は、(1)から(4)のスイッチング電源について、前記制御回路が専用のICからなることを特徴とするスイッチング電源を提案している。
【0019】
この発明によれば、制御回路が専用のICからなる、つまり、制御回路が専用ICからなる他励式フライバック型スイッチング電源においても、起動時の不安定な状況から生じるスイッチング素子のドレイン−ソース間への過大な電圧の印加や過大なドレイン電流によるスイッチング素子へのストレスを防止できる。