(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748270
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ディスク式スチームトラップ
(51)【国際特許分類】
F16T 1/16 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
F16T1/16 B
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-113291(P2011-113291)
(22)【出願日】2011年5月20日
(65)【公開番号】特開2012-241816(P2012-241816A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智行
【審査官】
関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭50−8809(JP,B2)
【文献】
特開平6−241394(JP,A)
【文献】
米国特許第4736886(US,A)
【文献】
実開昭61−70698(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外輪弁座と蓋部材とにより形成する変圧室内に弁ディスクを配置し、外輪弁座の外周に形成した円錐状の斜面部に有端のバイメタル環を配置すると共に、弁ディスクとバイメタル環の間に一箇所のみが所定の厚み寸法に形成され他の箇所の厚み寸法が狭く形成された介在環を配置し、斜面部と温度変化によるバイメタル環の拡開縮閉作用との協働によって低温時に介在環を介して弁ディスクを内外輪弁座から離座せしめてエアバインディングを解消することを特徴とするディスク式スチームトラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧室すなわち熱力学的蒸気室の圧力変化に応じて弁ディスクが開閉することにより、蒸気配管系に発生する復水を自動的に排出するディスク式スチームトラップに関し、特に、バイメタルを用いてエアバインディングを解消できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク式スチームトラップは内外輪弁座からなる弁座面に対して離着座する弁ディスクを、弁ディスクの背後に形成した変圧室の圧力変化によって自力的に制御して開閉弁させ復水を自動的に排出するものである。このものにおいては、始動時に空気が流入してきても、蒸気の場合と同様に瞬時に閉弁してしまい、一旦閉弁すると空気は蒸気と異なり凝縮作用を起こさないので、その後は開弁できない、いわゆるエアバインディングが起こる。そこで、従来からバイメタルを用いてこのエアバインディングを解消することが行なわれている。これは、バイメタルの温度変化による湾曲作用を利用して、低温時に弁ディスクを強制的に持上げて開弁させ、高温時に弁ディスクに干渉しない様にしたものである。この一例が特許文献1に示されている。これは、外輪弁座の外周に形成した円錐状の斜面部に有端のバイメタル環を配置すると共に、弁ディスクとバイメタル環の間に介在環を配置し、斜面部と温度変化によるバイメタル環の拡開縮閉作用との協働によってエアバインディングを解消するものである。すなわち、バイメタル環は低温時に斜面部に沿って上動し、介在環を介して弁ディスクを持上げて内外輪弁座から離座開弁させるもので、高温時には斜面部に沿って下動し、弁ディスクに干渉しなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭50−8809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のディスク式スチームトラップは、エアバインディング解消時に、外輪弁座の上方外側が弁ディスクと介在環で閉じられた状態になるので、外輪弁座の上方に達したゴミやスケール等の異物が外輪弁座と弁ディスクの間に溜り、その後弁ディスクが閉弁するときに外輪弁座と弁ディスクの間に噛込んでしまうために、完全閉弁できなくなって蒸気漏洩を生じる問題がある。また、バイメタル環が大きな操作力を発揮しなければ弁ディスクを持上げることができないために、バイメタル環が磨耗し易く、比較的早期にエアバインディングを解消できなくなる問題がある。
【0005】
したがって本発明が解決しようとする課題は、異物が外輪弁座と弁ディスクの間に溜らないようにすると共に、バイメタル環の小さな操作力で弁ディスクを持上げてエアバインディングを解消できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のディスク式スチームトラップは、内外輪弁座と蓋部材とにより形成する変圧室内に弁ディスクを配置し、外輪弁座の外周に形成した円錐状の斜面部に有端のバイメタル環を配置すると共に、弁ディスクとバイメタル環の間に一箇所のみが所定の
厚み寸法に形成され他の箇所の
厚み寸法が狭く形成された介在環を配置し、斜面部と温度変化によるバイメタル環の拡開縮閉作用との協働によって低温時に介在環を介して弁ディスクを内外輪弁座から離座せしめてエアバインディングを解消することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エアバインディングの解消は、バイメタル環が低温時に斜面部に沿って上動し、介在環を介して弁ディスクを持上げて内外輪弁座から離座開弁させることによって行なわれる。このとき、外輪弁座と弁ディスクの間の異物は介在環の
厚み寸法が狭く形成された部分を通して外輪弁座の外側に流れ去るので、外輪弁座の上方に溜ることがないという優れた効果を生じる。また、介在環の所定の
厚み寸法に形成された部分を力の作用点として弁ディスクを揺動させて持上げるので、バイメタル環の小さな操作力で弁ディスクを持上げてエアバインディングを解消することができるという優れた効果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係わるディスク式スチームトラップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、
図1を参照して説明する。本体1に同一軸上に入口2と出口3を形成し、この入口2及び出口3と連通する変圧室4を蓋部材5と本体1とで形成する。入口2と出口3の変圧室4側開口端に内輪弁座6と外輪弁座7を同心円状で同一平面に形成してその間に環状溝8を形成する。内外輪弁座6,7に離着座する円板状の弁ディスク11を変圧室4内に配置する。入口2と変圧室4は内輪弁座6に形成した入口通路9を介して連通し、変圧室4と出口3は環状溝8の一部から形成した出口通路10を介して連通する。
【0010】
外輪弁座7の外周に円錐状の斜面部12と斜面部12の上端部及び下端部にそれぞれ上側平面部15及び下側平面部16を形成し、有端のバイメタル環13を配置すると共に、バイメタル環13と弁ディスク11の間に一箇所のみ所定の
厚み寸法に形成された部分14aを有し他の箇所の
厚み寸法を狭く形成した介在環14を配置する。低温時にバイメタル環13が縮閉して斜面部12を上動し、介在環14の所定の
厚み寸法に形成された部分14aを力の作用点として弁ディスク11を揺動させて持上げて内外輪弁座6,7から離座開弁させ、上側平面部15に載る。弁ディスク11を揺動させて持上げるので、バイメタル環13の小さな操作力でエアバインディングを解消することができる。また、外輪弁座7と弁ディスク11の間の異物は介在環14の
厚み寸法が狭く形成された部分を通して外輪弁座7の外側に流れ去る。
【0011】
上記実施例の作動を説明する。トラップ本体が低温の場合、バイメタル環13は
図1に示すように縮閉して上側平面部15に載り、介在環14を介して弁ディスク11を持上げて内外輪弁座6,7から離座開弁状態にし、低温の復水や空気を排出する。
【0012】
そして高温復水が流入すれば、バイメタル環13は拡開して斜面部14を下動して下側平面部16に載り、弁ディスク9に関与しなくなる。このようにしてエアバインディングを解消する。以後周知のディスク式スチームトラップの作動原理に基づいて蒸気は逃さず復水のみを自動的に排出する。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、蒸気配管系に発生する復水を自動的に排出するディスク式スチームトラップに利用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1 本体
2 入口
3 出口
4 変圧室
5 蓋部材
6 内輪弁座
7 外輪弁座
8 環状溝
9 入口通路
10 出口通路
11 弁ディスク
12 斜面部
13 バイメタル環
14 介在環
14a 所定の
厚み寸法に形成された部分
15 上側平面部
16 下側平面部