(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748271
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】無収縮AEコンクリート組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20150625BHJP
C04B 24/32 20060101ALI20150625BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20150625BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20150625BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20150625BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20150625BHJP
C04B 111/34 20060101ALN20150625BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B24/32 A
C04B22/06 Z
C04B24/26 E
C04B18/14 C
C04B20/00 B
C04B111:34
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-114331(P2011-114331)
(22)【出願日】2011年5月23日
(65)【公開番号】特開2012-197212(P2012-197212A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2014年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2011-47726(P2011-47726)
(32)【優先日】2011年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081798
【弁理士】
【氏名又は名称】入山 宏正
(72)【発明者】
【氏名】井上 和政
(72)【発明者】
【氏名】三井 健郎
(72)【発明者】
【氏名】見澤 大介
(72)【発明者】
【氏名】木之下 光男
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 和秀
(72)【発明者】
【氏名】小林 竜平
【審査官】
小川 武
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−285290(JP,A)
【文献】
特開2011−006305(JP,A)
【文献】
特開2010−006626(JP,A)
【文献】
特開2010−001208(JP,A)
【文献】
特開2012−116712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメント、細骨材、粗骨材、乾燥収縮低減剤、膨張材、セメント分散剤、空気量調節剤及び水を含有する無収縮AEコンクリート組成物であって、ポルトランドセメントの少なくとも一部として下記の高炉スラグ微粉末を単位量
90〜280kg/m
3となる割合で用い、また細骨材の少なくとも一部として下記の高炉スラグ細骨材を単位量180〜830kg/m
3となる割合で用いて、同時
に下記の乾燥収縮低減剤を単位量
7〜30kg/m
3となる割合で用い、また膨張材を単位量
12〜27kg/m
3となる割合で用いて、且つ下記の数1で求められる単位量率が
30〜50%となるようにして成ることを特徴とする無収縮AEコンクリート組成物。
高炉スラグ微粉末:JIS−A6206に記載されたものであって、粉末度が
5000〜9000cm
2/gの高炉スラグ微粉末。
高炉スラグ細骨材:JIS−A5011−1に記載されたものであって、高炉スラグ細骨材の粒度による区分に含まれるもの。
乾燥収縮低減剤:(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル
【数1】
【請求項2】
ポルトランドセメントが早強ポルトランドセメントである請求項1記載の無収縮AEコンクリート組成物。
【請求項3】
高炉スラグ細骨材が、粒度による区分が5mm高炉スラグ細骨材及び/又は2.5mm高炉スラグ細骨材であって、粗粒率を2.0〜3.1の範囲に調製したものである請求項1又は2記載の無収縮AEコンクリート組成物。
【請求項4】
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルがジエチレングリコールモノブチルエーテルである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の無収縮AEコンクリート組成物。
【請求項5】
膨張材が石灰系膨張材である請求項1〜4のいずれか一つの項記載の無収縮AEコンクリート組成物。
【請求項6】
セメント分散剤がポリカルボン酸塩系セメント分散剤である請求項1〜5のいずれか一つの項記載の無収縮AEコンクリート組成物。
【請求項7】
空気量が4〜7容量%となるようにした請求項1〜6のいずれか一つの項記載の無収縮AEコンクリート組成物。
【請求項8】
得られる硬化体の収縮率が50×10−6以下となるものである請求項1〜7のいずれか一つの項記載の無収縮AEコンクリート組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無収縮AEコンクリート組成物に関し、更に詳しくは得られる硬化体の収縮率が極めて小さく、具体的には収縮率が50×10
−6(以下、10
−6をマイクロという)以下となり、したがって実質的に乾燥収縮を無視できる無収縮AEコンクリート組成物に関する。近年、コンリート構造物の長寿命化や高品質化の観点から、コンリート構造物には特に乾燥収縮によるひび割れの発生を抑制することが要求されている。コンリート構造物の乾燥収縮によるひび割れを抑制するためには、一般建築物において乾燥収縮率を600マイクロ以下程度にする必要があり、また拘束部材断面が大きい部位においては乾燥収縮率を400マイクロ以下程度にする必要があるといわれていて、更に実際の建築現場において乾燥収縮によるひび割れの発生を完全に防止するためには、開口部や特に拘束部材からの影響が大きい部位においては収縮率を50マイクロ以下の実質的に無収縮に抑える必要があることが指摘されている。その一方で、寒冷地のコンリート構造物では、同時に耐凍害性を確保する必要があることから、特に凍結融解抵抗性に優れることが要求される。本発明は、得られる硬化体の収縮率を50マイクロ以下に低減することによって乾燥収縮によるひび割れの発生を完全に防止することができ、同時に優れた凍結融解抵抗性を示す無収縮AEコンクリート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、得られる硬化体の収縮を低減する手段として、コンクリート組成物の調製時に各種の乾燥収縮低減剤を使用することが知られており(例えば特許文献1参照)、また膨張材を使用することも知られていて(例えば特許文献2参照)、更に乾燥収縮低減剤と膨張材を併用することも知られている。また得られる硬化体の乾燥収縮率を200マイクロ以下に抑える方法(例えば特許文献3〜5参照)も知られている。しかし、これらの従来手段には、無収縮と凍結抵抗とを両立させる観点でいずれも不充分という問題がある。すなわち、AEコンクリート組成物から得られる硬化体の収縮率を低減することと凍結融解抵抗性を強くすることは二律背反現象であり、収縮率を無収縮の領域にまで完全に抑えると同時に凍結融解抵抗性の優れたAEコンクリート組成物を得る技術は大変難しく、有効な手段がないというのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−37259号公報
【特許文献2】特開平11−302047号公報
【特許文献3】特開2004−168606号公報
【特許文献4】特開2009−249228号公報
【特許文献5】特開2010−6626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、調製したAEコンクリート組成物の流動性や空気連行量、また得られる硬化体の圧縮強度に悪影響を及ぼすことなく、得られる硬化体の収縮率を50マイクロ以下に抑えて該硬化体を実質的に無収縮にすると同時に、該硬化体に優れた凍結融解抵抗性を付与することができる無収縮AEコンクリート組成物を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、ポルトランドセメント、細骨材、粗骨材、乾燥収縮低減剤、膨張材、セメント分散剤、空気量調節剤及び水を含有する無収縮AEコンクリート組成物であって、ポルトランドセメントの少なくとも一部として特定の高炉スラグ微粉末を特定割合で用い、また細骨材の少なくとも一部として特定の高炉スラグ細骨材を特定割合で用いて、同時に特定の乾燥収縮低減剤及び膨張材を特定割合で用い、且つ単位量率が特定範囲となるようにして成るものが正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、ポルトランドセメント、細骨材、粗骨材、乾燥収縮低減剤、膨張材、セメント分散剤、空気量調節剤及び水を含有する無収縮AEコンクリート組成物であって、ポルトランドセメントの少なくとも一部として下記の高炉スラグ微粉末を単位量90〜280kg/m
3となる割合で用い、また細骨材の少なくとも一部として下記の高炉スラグ細骨材を単位量180〜830kg/m
3となる割合で用いて、同時に下記の乾燥収縮低減剤を単位量7〜30kg/m
3となる割合で用い、また膨張材を単位量12〜27kg/m
3となる割合で用いて、且つ下記の数1で求められる単位量率が30〜50%となるようにして成ることを特徴とする無収縮AEコンクリート組成物に係る。
【0007】
高炉スラグ微粉末:JIS−A6206に記載されたものであって、粉末度が5000〜9000cm
2/gの高炉スラグ微粉末。
【0008】
高炉スラグ細骨材:JIS−A5011−1に記載されたものであって、高炉スラグ細骨材の粒度による区分に含まれるもの。
【0009】
乾燥収縮低減剤:(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル
【0010】
【数1】
【0011】
本発明に係る無収縮AEコンクリート組成物(以下、単に本発明のAEコンクリート組成物という)は、ポルトランドセメント、細骨材、粗骨材、乾燥収縮低減剤、膨張材、セメント分散剤、空気量調節剤及び水を含有して成るものである。
【0012】
本発明のAEコンクリート組成物において、ポルトランドセメントとしては早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント及び中庸熱ポルトランドセメントから選ばれるものを使用できる。なかでも、より優れた凍結融解抵抗性の硬化体を得るために、早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0013】
本発明のAEコンクリート組成物では、前記したポルトランドセメントの少なくとも一部として高炉スラグ微粉末を用いる。用いる高炉スラグ微粉末はJIS−A6206に記載されたものであって、粉末度が5000〜9000cm
2/gのものである。かかる特定の粉末度の高炉スラグ微粉末をポルトランドセメントの少なくとも一部に置き換えて使用する理由は優れた凍結融解抵抗性を有する硬化体を得るためである。一般に高炉スラグ微粉末の粉末度は4000cm
2/g程度であるが、粉末度が小さい高炉スラグ微粉末を用いると、十分な凍結融解抵抗性を有する硬化体が得られない。かかる高炉スラグ微粉末は、調製するAEコンクリート組成物1m
3当たりの使用量、すなわち単位量が90〜280kg/m
3となる割合で用いる。
【0014】
また本発明のAEコンクリート組成物では、細骨材の少なくとも一部として高炉スラグ細骨材を用いる。用いる高炉スラグ細骨材はJIS−A5011−1に記載されたものであって、高炉スラグ細骨材の粒度による区分に含まれるものである。なかでも、高炉スラグ細骨材としては、粒度による区分が5mm高炉スラグ細骨材及び/又は2.5mm高炉スラグ細骨材が好ましく、更に粗粒率を2.0〜3.1の範囲に調製したものが好ましい。本発明では、かかる高炉スラグ細骨材を単位量が180〜830kg/m
3となる割合、好ましくは単位量が200〜750kg/m
3となる割合で用いる。またかかる高炉スラグ細骨材としては、その由来は特に制限されないが、高炉水砕スラグ細骨材が好ましい。以上説明した高炉スラグ細骨材以外の細骨材としては、川砂、海砂、山砂、砕砂等の天然の細骨材が挙げられる。
【0015】
本発明のAEコンクリート組成物において、粗骨材としては、公知の川砂利、砕石、石灰砕石、軽量骨材等を使用でき、また水としては水道水を使用できる。
【0016】
本発明のAEコンクリート組成物において、乾燥収縮低減剤としては(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを用いるが、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。本発明のAEコンクリート組成物において、かかる乾燥収縮低減剤は、単位量が7〜30kg/m
3となる割合で用いる。
【0017】
更に本発明のAEコンクリート組成物では膨張材を用いるが、かかる膨張材としては、石灰系膨張材やカルシウムスルホアルミネート(以下、CSAと略す)/石灰複合系等の市販のものが使用できる。すなわち、3CaO・3Al
2O
3・CaSO
4、CaO及びCaSO
4の三成分を含有するもの等が使用できる。これらの石灰系膨張材やCSA/石灰複合系膨張材によって得られる硬化体が膨張するのは、かかる膨張材がポルトランドセメントとの水和反応によりエトリンガイト及び水酸化カルシウムを生成し、これらの水和物がコンクリート中で膨張するためとされている。本発明のAEコンクリート組成物において、他の必須材料との組み合わせによる相乗効果の観点から、膨張材としては石灰系膨張材が好ましい。またかかる膨張材は、単位量が12〜27kg/m
3となる割合で用いる。
【0018】
本発明のAEコンクリート組成物において、セメント分散剤としてはその種類を限定するものではないが、好ましくはポリカルボン酸塩系のものを用い、より好ましくは水溶性ビニル共重合体から成るポリカルボン酸塩系のものを用いる。ポリカルボン酸塩系のセメント分散剤としては、公知のもの(例えば、特開昭58−74552号公報や特開平1−226757号公報に記載のもの)が挙げられる。かかるセメント分散剤は通常、セメント100質量部当たり、0.05〜2質量部となる割合で用いる。
【0019】
本発明のAEコンクリート組成物において、空気量調節剤としてはその種類を限定するものではなく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルベンゼンスルホン酸塩、ロジン石けん、高級脂肪酸石けん、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等の空気量調節剤が使用できる。かかる空気量調節剤は通常、セメント100質量部当たり、0.001〜0.01質量部となる割合で用いる。
【0020】
本発明のAEコンクリート組成物は通常、以上説明したようなポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、水、高炉スラグ細骨材、天然細骨材、粗骨材、乾燥収縮低減剤、膨張材、セメント分散剤、空気連行剤及び水を含有して成るものである。
【0021】
本発明のAEコンクリート組成物は公知の方法で調製できるが、先ずポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、高炉スラグ細骨材、天然細骨材、乾燥収縮低減剤、膨張材、セメント分散剤及び空気量調節剤を練り混ぜ水と共に練り混ぜておき、その後に粗骨材を投入して再度練り混ぜることによりAEコンクリート組成物を調製する方法が好ましい。
【0022】
本発明のAEコンクリート組成物は、前記した数1で求められる単位量率が30〜50%となるように調製する。単位量率がかかる範囲を外れると、本発明の所期の効果が得られない。
【0023】
本発明のAEコンクリート組成物において、連行空気量は通常3〜8容量%とするが、4〜7容量%とするのが好ましい。
【0024】
本発明のAEコンクリート組成物の調製に際しては、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて消泡剤、防錆剤、急結剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、防水剤等の添加剤を併用することができる。以上説明した本発明のAEコンクリート組成物によると、得られる硬化体は収縮率が50マイクロ以下の実質的に無収縮のものとなる。
【0025】
本発明のAEコンクリート組成物によると、得られる硬化体の収縮率が大幅に低減して実質的に無収縮のものとなり、同時に凍結融解抵抗性が優れたものとなる理由は、以下の1)〜5)のようなことが相乗的に作用するためと推察される。すなわち、1)ポルトランドセメントの少なくとも一部を粉末度の高い高炉スラグ微粉末に置換して用いることによって、得られる硬化体の内部組織が疎水化し、凍結融解抵抗性が強くなる。2)天然細骨材の少なくとも一部を高炉スラグ細骨材に置換することによって、得られる硬化体の収縮率を低減することができる。3)前記1)の効果により得られる硬化体が強い凍結融解抵抗性を保持できるため、乾燥収縮低減剤の使用量を制限せずに所定量を使用でき、結果として得られる硬化体の収縮率を大幅に低減することができる。4)膨張材の膨張効果により得られる硬化体が一定量膨張することによって、得られる硬化体の収縮率を低減することができる。5)単位量率を所定の範囲内となるようにし、単位水量を少なくすることによって、得られる硬化体の収縮率を低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、調製したAEコンクリート組成物の流動性や空気連行量、また得られる硬化体の圧縮強度に悪影響を及ぼすことなく、得られる硬化体の収縮率を50マイクロ以下に抑えて該硬化体を実質的に無収縮にすると同時に、該硬化体に優れた凍結融解抵抗性を付与することができるという効果がある。
【0027】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【実施例】
【0028】
試験区分1(AEコンクリート組成物の調製)
実施例1
表1及び表2の実施例1に記載した単位量率40.0%の調合条件で、50Lのパン型強制練りミキサーに、早強ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度=3.14g/cm
3、粉末度4520cm
2/g)、高炉スラグ微粉末(日鐵セメント社製、商品名スピリッツ6000、密度=2.90g/cm
3、粉末度6000cm
2/g)、石灰系膨張材(太平洋マテリアル社製、商品名ハイパーエクスパン、密度=3.16g/cm
3)、高炉スラグ細骨材(JFEミネラル社製、粒度による区分=5mm高炉スラグ細骨材、粗粒率=2.55、密度=2.77g/cm
3)、砕砂(津久見産砕砂、密度=2.67g/cm
3)、空気量調節剤(竹本油脂社製のAE調節剤、商品名AE−300、以下同じ)、高性能AE減水剤(竹本油脂社製のポリカルボン酸塩系セメント分散剤、商品名チューポールHP−11、以下同じ)及び乾燥収縮低減剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)のそれぞれ所定量を練り混ぜ水(水道水)と共に投入して、45秒間練り混ぜた。次に、粗骨材(秩父産石灰砕石、密度=2.70g/cm
3)を投入して60秒間練り混ぜ、目標スランプが12±1cm、目標空気量が4.5±0.5%の範囲とした実施例1のAEコンクリート組成物を調製した。
【0029】
実施例2〜10
実施例1と同様にして、それぞれ表1及び表2に記載した単位量率40.0%の調合条件で実施例2〜10のAEコンクリート組成物を調製した。
【0030】
実施例11
表1及び表2の実施例11に記載した単位量率33.3%の調合条件で、50Lのパン型強制練りミキサーに、早強ポルトランドセメント(実施例1と同じ)、高炉スラグ微粉末(実施例1と同じ)、石灰系膨張材(実施例1と同じ)、高炉スラグ細骨材(JFEミネラル社製、粒度による区分=2.5mm高炉スラグ細骨材、粗粒率=2.71、密度=2.72g/cm
3)、砕砂(実施例1と同じ)、空気量調節剤(実施例1と同じ)、高性能AE減水剤(実施例1と同じ)及び乾燥収縮低減剤(ジエチレンジプロピレングリコールモノブチルエーテル)のそれぞれ所定量を練り混ぜ水(水道水)と共に投入して、45秒間練り混ぜた。次に、粗骨材(実施例1と同じ)を投入して90秒間練り混ぜ、目標スランプが18±1cm、目標空気量が4.5±0.5%の範囲とした実施例11のAEコンクリート組成物を調製した。
【0031】
実施例12〜17
実施例11と同様にして、それぞれ表1及び表2に記載した単位量率33.3%の調合条件で実施例12〜17のAEコンクリート組成物を調製した。
【0032】
比較例1
表1及び表2の比較例1に記載した単位量率40.0%の調合条件で、50Lのパン型強制練りミキサーに、早強ポルトランドセメント(実施例1と同じ)、砕砂(実施例1と同じ)、空気量調節剤(実施例1と同じ)及び高性能AE減水剤(実施例1と同じ)のそれぞれ所定量を練り混ぜ水(水道水)と共に投入して、45秒間練り混ぜた。次に、粗骨材(実施例1と同じ)を投入して60秒間練り混ぜ、目標スランプが12±1cm、目標空気量が4.5±0.5%の範囲とした比較例1のAEコンクリート組成物を調製した。
【0033】
比較例2〜17
比較例1と同様にして、それぞれ表1及び表2に記載した単位量率40.0%の調合条件で比較例2〜17のAEコンクリート組成物を調製した。
【0034】
比較例18〜22
比較例1と同様にして、それぞれ表1及び表2に記載した単位量率33.3%の調合条件で比較例18〜22のAEコンクリート組成物を調製した。
【0035】
比較例23及び24
比較例1と同様にして、表1及び表2に記載した単位量率24.4%又は単位量率60.0%の調合条件で比較例23及び24のAEコンクリート組成物を調製した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1及び表2において、
C−1:早強ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度=3.14g/cm
3、粉末度4520cm
2/g)
C−2:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度=3.16g/cm
3、粉末度3300cm
2/g)
P−1:高炉スラグ微粉末(日鐵セメント社製、商品名スピリッツ6000、密度=2.90g/cm
3、粉末度6000cm
2/g)
P−2:高炉スラグ微粉末(日鐵セメント社製、商品名スピリッツ8000、密度=2.88g/cm
3、粉末度8000cm
2/g)
PR−1:高炉スラグ微粉末(日鐵セメント社製、商品名スピリッツ4000、密度=2.91g/cm
3、粉末度4000cm
2/g)
E−1:石灰系膨張材(太平洋マテリアル社製、商品名ハイパーエクスパン、密度=3.16g/cm
3)
E−2:CSA/石灰複合系膨張材(電気化学工業社製、商品名パワーCSA、密度=3.12g/cm
3)
SG−1:高炉スラグ細骨材(JFEミネラル社製、粒度による区分=5mm高炉スラグ細骨材、粗粒率=2.55、密度=2.77g/cm
3)
SG−2:高炉スラグ細骨材(JFEミネラル社製、粒度による区分=2.5mm高炉スラグ細骨材、粗粒率=2.71、密度=2.72g/cm
3)
砕砂:津久見産砕砂(密度=2.67g/cm
3)
粗骨材:秩父産石灰砕石(密度=2.70g/cm
3)
A−1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
A−2:ジエチレングリコールジプロピレングリコールモノブチルエーテル
【0039】
試験区分2(AEコンクリート組成物の評価)
試験区分1で調製した各例のAEコンクリート組成物について、連行空気量、スランプを下記のように求め、結果を表3にまとめて示した。また各例のAEコンクリート組成物の硬化体について、収縮率、凍結融解抵抗性及び圧縮強度を下記のように求め、結果を表3にまとめて示した。
【0040】
・連行空気量(容量%):練り混ぜ直後のAEコンクリート組成物について、JIS−A1128に準拠して測定した。
・スランプ(cm):連行空気量の測定と同時にJIS−A1101に準拠して測定した。
【0041】
・収縮率(マイクロ):本発明では、下記(1)の方法によって、乾燥収縮低減剤による乾燥収縮率(収縮ひずみ)を測定し、また下記(2)の方法によって、用いた膨張材の膨張率(膨張ひずみ)を測定した。そして乾燥収縮率(マイクロ)から膨張率(マイクロ)を差し引いた値を収縮率とした。この収縮率の数値が小さいほど、AEコンクリート組成物から得られる硬化体の収縮が小さいことを示す。
(1)JIS−A1129に準拠し、各例のAEコンクリート組成物を20℃×60%RHの条件下で保存した材齢26週の硬化体(供試体)について、コンパレータ法により長さ変化を測定し、乾燥収縮率を求めた。
(2)JIS−A6202に準拠し、各例のAEコンクリート組成物に用いた膨張材の拘束膨張試験により膨張率を測定した。
【0042】
・凍結融解耐久性指数(300サイクル):各例のAEコンクリート組成物について、JIS−A1148に準拠して測定した値を用い、ASTM−C666−75の耐久性指数で計算した値を示した。この数値は、最大値が100で、100に近いほど、凍結融解に対する抵抗性が優れていることを示す。
・圧縮強度(N/mm
2):各例のAEコンクリート組成物について、JIS−A1108に準拠し、材齢7日と材齢28日で測定した。
【0043】
結果を表3にまとめて示した。各実施例の無収縮AEコンクリートは、流動性が確保されると同時に、得られる硬化体の収縮率が50マイクロよりも小さく、同時に凍結融解耐久性指数が高く、必要とされる充分な圧縮強度が得られている。一方、比較例のAEコンクリートの場合では、すなわち、高炉スラグ微粉末を使用しない場合、或いは高炉スラグ微粉末の粉末度が所定の範囲外で使用した場合、また高炉スラグ細骨材を使用しない場合、或いは高炉スラグ細骨材の単位量を所定の範囲外で使用した場合、膨張材を使用しない場合、或いは膨張材の単位量を所定の範囲外で使用した場合、更に高炉スラグ細骨材を使用しない場合、或いは乾燥収縮低減剤の単位量を所定の範囲外で使用した場合、また更に単位量率が所定の範囲から外れる場合などでは、本発明が目的とする無収縮AEコンクリートが得られ難いことが明らかである。
【0044】
【表3】
【0045】
表3において、
*1:評価1では、収縮率が50マイクロ以下のものを○(合格)、50マイクロを超えるものを×(不合格)と判定した。
*2:評価2では、凍結融解耐久性指数が80以上のものを○(合格)、80を下回るもの、或いは破壊したものを×(不合格)と判定した。
*3:材料分離して所望の流動性が得られなかったので測定しなかった。
【0046】
表1及び表2に対応する表3の結果からも明らかなように、各実施例のAEコンクリート組成物は、流動性や連行空気量、また得られる硬化体の圧縮強度に悪影響を及ぼすことなく、得られる硬化体の収縮率を50マイクロ以下に抑えて該硬化体を実質的に無収縮にすると同時に、該硬化体に優れた凍結融解抵抗性を付与することができる。