(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748300
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】エレクトロウェッティング表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/17 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
G02F1/17
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-557510(P2012-557510)
(86)(22)【出願日】2011年3月14日
(65)【公表番号】特表2013-522669(P2013-522669A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2011053783
(87)【国際公開番号】WO2011113787
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2014年3月10日
(31)【優先権主張番号】1004244.8
(32)【優先日】2010年3月15日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506255669
【氏名又は名称】リクアヴィスタ ビー. ヴィー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 行一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マサード, ロマリック
(72)【発明者】
【氏名】コメッティ, チアラ
(72)【発明者】
【氏名】フェーンストラ, ボッケ ヨハネス
【審査官】
佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−210738(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0223779(US,A1)
【文献】
特表2007−532942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/15−1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロウェッティング装置の為の支持板を作る為の方法であって、
疎水性の層を備えた支持板を準備するステップと、
前記疎水性の層上に親水性の材料のパターンを配置するステップと、
溶剤により前記疎水性の層の表面層を除去するステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記溶剤は、前記疎水性の層を選択的に溶かす為の溶剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶剤は、ガス性の溶剤である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面層を除去するステップは、前記溶剤の反応性成分を希釈するために、希釈剤を使用することを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶剤は、フルオロカーボンをベースとしたもの、更に/又は、希釈剤を使用する方法において、前記希釈剤は、オイルをベースとしたものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶剤及び前記希釈剤は、溶液を形成する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
表面層を除去するステップの後で、前記溶剤が乾燥する前に、前記溶剤が前記表面層を除去することを停止させる液体停止剤を塗布するステップを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
表面層を除去するステップの後で、前記溶剤または前記希釈剤が乾燥する前に、前記溶剤が前記表面層を除去することを停止させる液体停止剤を塗布するステップを含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
表面層を除去するステップの後で、前記支持板をアニールするステップを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記支持板上に、第1流体と、電気導体又は極性流体であり前記第1流体と混ざらない第2流体とを準備するステップと、
更なる支持板を準備するステップと、
前記支持板及び更なる支持板を密封し、前記第1及び第2流体を含む空洞を前記支持板及び前記更なる支持板間に形成するステップと、
を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記エレクトロウェッティング装置は、エレクトロウェッティング表示装置である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法により作られる支持板を含む、エレクトロウェッティング装置。
【請求項13】
一定の厚さを有する疎水性の層と、前記疎水性の層の第1領域に配置された親水性の材料パターンとを備える支持板を含むエレクトロウェッティング装置であって、前記疎水性の層の厚さが、前記第1領域内部では前記第1領域の外側より大きい、エレクトロウェッティング装置。
【請求項14】
前記疎水性の層の疎水度は、前記第1領域の外側では前記第1領域内部より高い、請求項13に記載のエレクトロウェッティング装置。
【請求項15】
前記エレクトロウェッティング装置は、エレクトロウェッティング表示装置である、請求項13又は14に記載のエレクトロウェッティング装置。
【請求項16】
複数のエレクトロウェッティング素子を含み、前記親水性の材料パターンが、前記エレクトロウェッティング素子の大きさを定める壁を形成する、請求項15に記載のエレクトロウェッティング装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、エレクトロウェッティング表示装置およびそれを作る方法に関する。
【0002】
Zhou et al, J. Micromech.Microeng. 19 (2009) 065029による記事に説明されたように、エレクトロウェッティング表示装置は、各々が基板を含む2つの支持板を含む。壁のパターンは、支持板の一つに配置され、そのパターンが表示装置の画素の大きさを定めている。画素の壁の間の領域は、画素としても知られているが、表示領域と呼ばれており、その全面に表示効果が生じる。表示効果は、電界の影響下にある画素内の2つの混ざらない流体(オイルや電解液)の移動により作り出される。何も電界が印加されていないとき、オイルは、支持板の表示領域を覆う層を形成する。電界が印加されると、オイルは収縮し、電界液は支持板の大部分を接合する。例えば、オイルが不透明体であるなら、画素は光のシャッターとして作用する。
【0003】
画素の壁は、親水性の材料パターンである。表示領域内の支持板の領域は、大抵が画素の適した動作の為に疎水性でなければならない。表示装置の製造中、画素が置かれる支持板の領域は、疎水性の層を含めることにより疎水性に作られる。疎水性の層上に壁材の層を堆積し、フォトリソグラフィ法を使用して壁材の層をパターニングすることにより、この層上に壁が作られる。
【0004】
壁材の層と疎水性の層との間の接着を改善する為に、疎水性の層の疎水度が、壁剤の層の塗布前に低下される。壁の形成後、支持板はアニールされ、壁間の疎水性の層の領域は、疎水度を回復する。しかしながら、この方法を使用して作られた表示装置の品質は、十分ではない。
【0005】
本発明の目的は、この欠点を持たないエレクトロウェッティング表示装置を作る方法を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1態様によると、エレクトロウェッティング装置の為の支持板を作る為の方法が提供され、その方法は、疎水性の層を備えた支持板を準備するステップと、前記疎水性の層上に親水性の材料パターンを準備するステップと、溶剤により疎水性の層の表面層を除去するステップと、を備える。
【0007】
従来技術の満足できない品質の主な理由の一つは、表示装置の拡張動作後の電界のスイッチオフ時の画素内にオイルの逆流が無いこと、或いは低速逆流のためであった。本発明によると、逆流は、表示装置の製造中に疎水性の層上に親水性の材料パターンが配置された後に疎水性の層の表面層を化学的に除去するステップを含むことにより、改善可能である。化学的な除去ステップは、疎水性の層が作られる材料の溶剤を使用することにより達成される。溶剤処置後の疎水性表面の品質は、従来の処置のどれよりも良好のようである。溶剤処置は、疎水性の層のガラス温度以上に支持板を加熱する必要がなく、予想外に、疎水性の層の表面粗さを減少させる。したがって、画素の性能は、強化されるので、表示される画像の品質も強化される。
【0008】
疎水性の層上に親水性の材料を配置する為のプロセスは、前記逆流問題を引き起こす疎水性の層に影響を与えると考えられる。その疎水度を回復する為に疎水性の層をアニールする既知のプロセスステップは、逆流の問題を十分に解決しない。
【0009】
当該方法の好ましい実施形態において、溶剤は、疎水性の層の材料を選択的に溶解する為の溶剤である。溶剤が選択的に親水性の材料を溶解し、壁パターンの親水性の材料を僅かに溶解あるいは全く溶解しなければ、壁は、疎水性の層の表面を除去するプロセスにより、あまり影響されないか全く影響されない。
【0010】
疎水性の層の表面層の除去は、支持板に液体溶剤又はガス溶剤を接触させることにより実施可能である。気相における溶剤の接触は、低いエッチング速度により、材料除去の制御を改善させることができる。さらに、除去された材料が表面に再び堆積される危険も減少される。他の利点は、乾燥段階中、どの材料も表面に再び堆積されないので、停止剤を使用する必要がない。ガスは、蒸気でもよい。
【0011】
表面層を除去するステップは、好都合にも、希釈剤の使用を含む。希釈剤は、実質的に疎水性の層の材料を溶解しない。希釈剤の含有は、溶剤の反応性成分を希釈し、その巨視的な効果を減少させるので、溶解速度を遅くし、疎水性の層の表面層の除去の良好な制御を可能にする。除去ステップの完了後に支持板から希釈剤の除去を容易にする為に、希釈剤は揮発性であることが好ましい。希釈剤の使用は、また、望ましくない場所、例えば壁の最上部において、除去ステップ中に親水性領域から放出されたリソグラフィ塗料または残りの壁材の表示領域における再堆積問題、或いは、除去ステップ中に溶解された疎水性の材料の再堆積問題を緩和する。従来技術の表示装置における表示領域の残部の存在は、従来技術の表示装置の低速逆流の原因の一つである場合がある。残部の存在は、XPS又はTOFSIMSのような表面分析技術を使用して決定可能である。
【0012】
溶剤は、フルオロカーボンベースのものが好ましく、更に/又は、希釈剤を使用する方法において、希釈剤はオイルベースのものが好ましい。
【0013】
表面層の除去後、時には僅かに多孔性である疎水性の層に閉じ込められる如何なる希釈剤又は溶剤も、それが、水溶性の溶剤又は希釈剤というよりオイルベースの溶剤又は希釈剤であるとき、疎水性の層における影響は少ない。
【0014】
溶剤及び希釈剤が溶液を形成するとき、溶液の均質性は、疎水性材料の除去の画一性を改善する。溶剤及び希釈剤のような溶液内の成分は、完全に混合され、例えばエマルジョン内のような粒子やミセルのような基礎構造を形成しない。
【0015】
当該方法は、液体を塗布することにより表面層の除去を停止するステップを含むのが好ましく、表面層を除去するステップと液体の塗布との間の時間は、前記液体が塗布される前に溶剤が乾燥しないように十分に短くなっている。溶剤が支持板で乾燥しないならば、表示領域内の残りの壁材の残部の再堆積及び壁における疎水性の材料の再堆積は、減少される。
【0016】
この方法は、支持板をアニールするステップを含んでもよいため、疎水性の層に対する親水性の材料パターンの接着性を改善する。アニーリングステップは、表面層の除去ステップ後に実施されるのが好ましい。本発明に従うプロセスで使用されるアニール温度は、従来技術のアニールステップで使用される温度より低くすることができる。従来技術は、疎水性の材料のガラス遷移温度より高く溶解温度よりちょっと低いアニール温度を使用し、例えば、アモルファスフルオロポリマーは、疎水性の層の疎水度を高める為に、220℃から260℃の間の温度でアニールされる。この増加は、本発明の溶媒ステップにより達成されてきた。そのため、アニールステップは、接着性だけを改善する為に使用可能である。アモルファスフルオロポリマーの為の本発明に従うアニールステップは、220℃以下の温度、好ましくは160℃以下の温度で実行可能である。この低温は、親水性の材料に影響しない。低温でのアニーリング、或いは、代替え的に、接着性を改善する為のアニーリングより他の方法を使用することにより、支持板でプラスチック基板を使うこと、更に、フレキシブル表示装置を作ることができる。
【0017】
この方法は、混ざらない、第1流体と、第2の、導電性又は極性流体とを支持板に準備するステップと、更なる支持板を準備するステップと、支持板及び更なる支持板を密閉し、もって、第1支持板及び更なる支持板間に、第1流体及び第2流体を含む空洞を形成するステップとを含むことが好ましい。
【0018】
層は、第2流体に対する湿潤性より第2流体に対し大きい湿潤性を有するならば、「疎水性」と呼ばれる。層は、第1流体に対する湿潤性より第2流体に対して大きい湿潤性を有するならば、「親水性」と呼ばれる。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、エレクトロウェッティング装置は、本発明に従って作られた支持板を好ましくは含むエレクトロウェッティング表示装置である。
【0020】
本発明の第1態様は、エレクトロウェッティング装置に関し、このエレクトロウェッティング装置は、一定の厚さを有する疎水性の層と、その疎水性の層の第1領域に配置された親水性の材料パターンとを含む支持板を含み、疎水性の層の厚さは、第1領域内部では第1領域の外側より大きくなっている。
【0021】
除去ステップは、親水性の壁材パターンが配置される第1領域の外側でのみ疎水性の層の表面層を除去するので、第1領域の外側より、第1領域内部の疎水性の層の厚さが大きくなる。疎水性の層が、プラズマエッチングを使用して疎水性が小さくされた場合、厚さの違いは、例えば10nmを超えることが好ましい。疎水性の層が、反応性イオンエッチングにより、疎水性が小さくされた場合、差異は、100nmを超えるのが好ましい。更なる好ましい実施形態において、差異は、150nm又は200nmを超える。疎水性の層からの多くの材料の制御された除去は、非常に疎水性の表面を備えた薄い層を残すであろう。より薄い層の利点は、エレクトロウェッティング装置を切り替える為に必要な電圧が低くなる点である。
【0022】
疎水性の層は、都合良く、第1領域の内部より第1領域の外側で高い疎水度を有する。本発明に従う表面処置後、第1領域の内部の後退接触角度に対する典型的な値は、70度以下であり、第1領域の外側は、100度を超え、好ましくは、110度を超える。処置後の表面は、好ましくは5度以内、堆積の直後の疎水性の層の表面と同一の後退接触角度である。
【0023】
本発明に従う表示装置の動作中のオイル又は第1流体のヒステリシスは、従来技術の表示装置のヒステリシスより小さい。
【0024】
親水性の材料パターンは、エレクトロウェッティング表示装置内のエレクトロウェッティング素子の大きさを定める壁を形成する。
【0025】
本発明の更なる特徴及び利点は、例示であり、添付図面を参照して行われる、本発明の好ましい実施形態の以下の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、エレクトロウェッティング表示装置の画素の概略断面図を示す。
【
図2】
図2は、表示装置の第1支持板の概略平面図である。
【
図3】
図3は、第1支持板の疎水性の層の断面図を示す。
【0027】
図1は、エレクトロウェッティング表示装置1の形式で、エレクトロウェッティング装置の一部の概略断面図を示す。表示装置は、複数の画素2を含み、その一つが図示されている。画素の側方の大きさは、2本の点線3,4により、図示されている。画素は、第1支持板5と第2支持板6とを備える。支持板は、各画素から独立した部分でもよいが、複数の画素により共通に共有されるのが好ましい。支持板は、ガラス又はポリマー基板6,7を含んでもよく、堅くても柔らかくてもよい。
【0028】
表示装置は、表示装置により形成される画像又は表示が見られる視聴側8と、後側9とを有する。図において、第1支持板5は、後側9と対面し、第2支持板6は視聴側と対面し、或いは、第1支持板は、視聴側と対面してもよい。表示装置は、反射性、透過性、半透過型でもよい。表示装置は、画像がセグメントから作られ、各セグメントが幾つかの画素を含み得るセグメント表示型でもよい。表示装置は、アクティブマトリクス駆動表示型あるいはパッシブ駆動表示装置でもよい。複数の画素は、白黒でもよい。カラー表示装置の為に、画素は、グループに分けられ、各グループが異なる色を有する、あるいは、個々の画素が異なる色を示してもよい。
【0029】
支持板間の空間10は、2つの流体、第1流体11と第2流体12で満たされている。第2流体は、第1流体とは混ざらない。第2流体は、導電性又は極性であり、水内の塩化カリウム溶液のような塩類溶液又は水でもよい。第2流体は、透明でもよいが、有色、白、吸収性、又は、反射性でもよい。第1流体は、電気的に導体ではなく、例えば、ヘキサデカン又は(シリコーン)オイルのようなアルカンでもよい。
【0030】
第1流体は、光学スペクトラムの少なくとも一部を吸収する。第1流体は、光学スペクトラムの一部に対して透過性であり、カラーフィルタを形成してもよい。このため、第1流体は、顔料粒子や染料の追加により着色されてもよい。あるいは、第1流体は、黒、例えば、光学スペクトラムのほぼ全部を吸収するか反射してもよい。反射性の層は、全ての可視スペクトラムを反射し、層を白、或いは白の一部に見せ、それに色を持たせてもよい。
【0031】
支持板5は、絶縁層13を含む。絶縁層は、透明或いは反射性でもよい。絶縁層13は、画素の壁の間に広がってもよい。しかしながら、第2流体12と、絶縁層下に配置された電極との間の短絡を避けるために、絶縁層は、図示されるように、複数の画素2にわたって広がる不断の層であることが好ましい。絶縁層は、画素2の空間10と対面する疎水性の表面14を有する。絶縁層の厚さは、好ましくは2マイクロメートル、より好ましくは、1マイクロメートルである。
【0032】
絶縁層は、疎水性の層15でもよく、或いは、図示のように、疎水性の層15と、誘電体の層16とを含み、疎水性の層15が空間10と対面してもよい。疎水性の層は、デュポン社により提供されるAF1600或いはAF1601、或いは、他の低表面エネルギーポリマーのような例えばアモルファスフルオロポリマー層でもよい。疎水性の層の厚さは、好ましくは、300から800nmである。誘電体の層は、酸化シリコン層あるいは窒化シリコン層でもよく、その厚さは、例えば200nmである。
【0033】
表面14の疎水性特性は、第1流体11を優先して絶縁層13に接着させるが、これは、第1流体が、第2流体12よりも絶縁層13の表面に対して高い湿潤性を有するからである。湿潤性は、固体の表面に対する流体の相対的な親和性に関する。
【0034】
各画素2は、電極17を支持板5の一部として含む。電極17は、絶縁層13により流体から分離され、隣接した画素の電極は、非導電層により分離されている。他の層は、絶縁層13と電極17との間に配置されてもよい。電極17は、如何なる所望の形状又は形式でもよい。画素の電極17には、概略的に図示された信号ライン18により電圧信号が供給される。第2信号ライン19は、導電性の第2流体12と接触している電極に接続されている。この電極は、全ての画素に対して共通でもよく、それらは、第2流体により流体的に相互接続され、第2流体により共有され、壁により中断されない。画素2は、信号ライン18,19間に印加される電圧Vにより制御可能である。基板7上の電極17は、表示駆動システムに結合されている。マトリクス形式に画素が配置された表示装置において、電極は、基板7上の制御ラインマトリクスに結合可能である。
【0035】
第1流体11は、画素の断面に続く壁20により一つの画素に閉じ込められている。画素の断面は、どのような形状でもよく、画素がマトリクス形式で配置されるとき、断面は、通常、正方形又は長方形である。壁は、絶縁層13から突き出ている構造体として示されているが、これらの壁は、第1流体を通さない支持板の表面層でもよく、例えば、親水性あるいは、あまり親水性でない層でもよい。壁は、第1支持板から第2支持板まで広がってもよいが、
図1に示されるように、第1支持板から第2支持板まで部分的に広がってもよい。点線3,4により表示された画素の大きさは、壁20の中心により定められる。画素の壁の間の領域は、点線21,22により表示されているが、表示効果が生じる表示領域23と呼ばれる。
【0036】
図2は、第1支持板の疎水性の層の平面図で正方形画素のマトリクスを示す。
図2の中央の画素の大きさは、
図1の点線3,4に対応しており、点線25により表示されている。ライン26は、壁の内部境界を表示し、そのラインは、表示領域23の縁でもある。壁20のパターンは、第1領域27を覆う。
【0037】
電極間に何も電圧が印加されないとき、第1流体11は、
図1に示されるように、壁20の間に層を形成する。電圧の印加は、例えば、
図1の点線形状24により示された壁に、第1流体を接触させる。第1流体の制御可能な形状は、光のバルブとして画素を動作する為に使用され、表示領域23の全面に表示効果を与える。
【0038】
表示装置の製造プロセス中、電極17を備える電極構造体が、基板7上に設けられる。その後、疎水性の層15を含む絶縁層13が電極構造体上に配置される。
【0039】
疎水性の層15の表面14は、その表面の疎水度を減少させるプロセスステップにより、壁の塗布のために準備される。このステップは、反応性イオンエッチング及び/又はプラズマ処置を含んでもよい。画像が形成される表示装置の領域の外側にある表面14の一部は、このステップから、区切られてもよい。画像が形成される領域は、表示領域の全体の領域であり、中間的な壁にある。
【0040】
壁は、既知の方法を使用して第1領域27内の表面14に配置されてもよいが、その表面上に例えばSU−8の壁材をスピニングし、その壁材の層を予備焼鈍し、フォトリソグラフィを使用して層をパターニングし、表示領域23から壁材を除去する工程を含んでもよい。
【0041】
製造プロセスにおける次のステップは、表示領域23内部の表面14の疎水度を高めることである。本発明によると、表面は疎水性の層15の材料の溶剤を受けるが、溶剤は、好ましくは気相又は液相である。疎水性の層が、AF1600,AF1601,Cytop又はFruoropelのようなアモルファスフルオロポリマーから作られるとき、好ましい溶剤は、3M社により作られるHFE7100のようなハイドロフルオロエーテル、FC40、FC70,PF−5060,AK−225,FC75のようなフルオロカーボンである。これらの溶剤は、壁材を溶解しない。溶解プロセスの制御は、オイルベースの希釈剤を溶剤に加えることにより改善され、希釈剤と溶剤が、正しい状態の溶液を形成する。希釈剤の例は、ヘプタン、テトラデカン、デカン、オクタン、ペンタンである。一例として、HFE7100分子は、フルオロカーボン枝及びカルボニル枝を有する。フルオロカーボン枝は、疎水性の層を溶解し、カルボニル枝は、例えばヘプタンを用いて良好な溶液を形成する助けになる。
【0042】
液体溶剤が使用されるとき、疎水性の層を備えた支持板は、その液体が含まれる槽内に沈めることができる。あるいは、支持板をスピンさせている間に、液体が支持板上にスプレーされ、あるいは支持板に投与されてもよい。ガスの溶剤が使用されるとき、疎水性の槽を備えた支持板は、支持板と液体との間の直接接触を避けて、液体溶剤が部分的に満たされたチャンバ内に置かれてもよい。液体溶剤の蒸発により、支持板は溶剤蒸気に囲まれ、疎水度を回復する為に疎水性の層の表面層が除去される。
【0043】
表面処置の完了後、溶解プロセスは、溶剤又は希釈剤が乾燥する前に、アルケンや他の液体のような停止剤と共に支持板5を槽に浸漬させることにより停止される。その処置がガス溶剤により実行されるとき、処置は、ガスとの接触を終了させることにより停止可能である。その後、支持板は、水、エタノール、IPA(イソプロピルアルコール)のような水溶液に浸漬され、その後、乾燥ステップが続く。また、支持板は、150℃でアニールステップを受けてもよい。
【0044】
表面14の処置の為の液体の塗布は、これらの液体が含まれる槽内で後に支持板5を浸漬することにより行われてもよい。液体は、特に、溶剤の槽内で攪拌されるのが好ましい。また、液体は、支持板に液体を連続して投与・スピニングすることにより塗布されてもよい。いずれの塗布プロセスにおいても、支持板は、異なる槽またはスピニングサイクル間に乾燥させるべきではない。
【0045】
第1支持板5の製造完了後、第1流体11は、例えば国際特許出願WO2005/098797で開示された既知の方法を使用して塗布される。第1支持板5及び第2支持板6は、例えば国際出願WO2009/065909に開示されたような既知の方法で第2液体12で空間10が満たされた後、例えば感圧型接着剤を使用して共に装着される。
【0046】
図3は、本発明に従う表面処置後の表示装置の疎水性の層の断面を示す。第1領域27における疎水性の層15の厚さ31は、表示領域23における疎水性の層の厚さ32より大きい。厚さの違いは、表示装置の分解、壁材に対する溶剤を使用する壁の除去、第1領域27(壁20が配置)と表示領域23との間の境界にわたる疎水性の層の表面プロファイルの測定により決定可能である。表面プロファイルは、Scientific Computing International社により作られるFilmtekのような測定装置または他のプロファイルスキャナーを使用して測定可能である。膜厚は、同様に、疎水性の層の断面の顕微鏡写真を作ることにより決定可能である。
【0047】
本発明は、エレクトロウェッティング表示装置を参照して説明されてきたが、本発明は、疎水性の層に親水性の材料が配置されなければならない如何なるエレクトロウェッティング装置にも適用される。他のエレクトロウェッティング装置の例は、エレクトロウェッティングダイアフラム、シャッター、ラブオンチップ装置のようなエレクトロウェッティング光学素子である。
【0048】
上記実施形態は、本発明の例示的実施例として理解されるものである。本発明の更なる実施形態が予見される。どの実施形態に関して説明された如何なる特徴も、単独で、あるいは、説明された他の特徴との組合せで使用されてもよく、他の実施形態の如何なる一つ又は複数の特徴との組合せで使用されてもよいことが分かる。さらに、前述された均等物及び変形例も同様に、本発明の範囲から逸脱することなく用いられてもよく、これらが、添付された特許請求の範囲に規定されている。
【符号の説明】
【0049】
1 エレクトロウェッティング表示装置
2 画素
3,4 点線
5 第1支持板
6 第2支持板
6,7 基板
8 視聴側
9 後側
10 空間
11 第1流体
12 第2流体
13 絶縁層
14 表面
15 疎水性の層
16 誘電体の層
17 電極
18,19 信号ライン
20 壁
21,22 点線
23 表示領域
24 点線形状
25 点線
26 ライン
27 第1領域
V 電圧