特許第5748307号(P5748307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748307
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】無人搬送車
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   G05D1/02 K
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-253052(P2013-253052)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-111335(P2015-111335A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2013年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】ニチユ三菱フォークリフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 將
(72)【発明者】
【氏名】藤井 廷紀
【審査官】 谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−187609(JP,A)
【文献】 特開昭61−250562(JP,A)
【文献】 特開2000−258444(JP,A)
【文献】 特開2013−171368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00− 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に設けられたドライブタイヤと、前記ドライブタイヤを制御する制御部と、走行制御のために前記ドライブタイヤの回転を検出するエンコーダと、路面に敷設された誘導ラインを含む領域を光学的に撮像するカメラと、前記エンコーダの異常を検出する異常検出手段と、を備え、前記誘導ラインに沿って走行する無人搬送車であって、
前記制御部は、前記誘導ラインを含む領域の画像データに基づいて、当該画像データから前記誘導ラインを検出するとともに、前記誘導ラインの検出結果に基づいて、前記ドライブタイヤを操舵及び駆動し、
前記異常検出手段は、前記路面上の特徴部を含む領域の第1画像データと、前記第1画像データの撮像後に撮像された前記特徴部を含む領域の第2画像データと、前記第1画像データが撮像されてから前記第2画像データが撮像されるまでの所定時間の前記エンコーダのパルス数とに基づいて、前記エンコーダが異常か否かを判定し、
同一の前記カメラが、前記誘導ラインを含む前記路面を撮像することによって、前記ドライブタイヤの操舵及び駆動のための前記画像データと、前記エンコーダの異常判定のための前記第1画像データ及び前記第2画像データとを生成することを特徴とする無人搬送車。
【請求項2】
前記異常検出手段は、前記第1画像データと前記第2画像データ間での前記特徴部の位置の変化から算出される走行速度と、前記所定時間の前記パルス数から算出される走行速度とを比較することによって、前記エンコーダが異常か否かを判定する、ことを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記特徴部は、前記路面及び前記誘導ラインと異なる色に着色された前記誘導ライン上のマーカーで構成され、前記マーカーが、互いの一つの角だけが接するように配置された一対の長方形状のマークで構成されており、
前記異常検出手段は、前記第1画像データにおける前記一対のマークの接点の座標と前記第2画像データにおける前記接点の座標との座標間距離から走行速度を算出することを特徴とする請求項2に記載の無人搬送車。
【請求項4】
前記特徴部は、互いに直交するように前記路面に敷設された2本の前記誘導ラインで構成され、
前記異常検出手段は、前記第1画像データにおける前記誘導ラインの交点の中心の座標と前記第2画像データにおける前記交点の中心の座標との座標間距離から走行速度を算出することを特徴とする請求項2に記載の無人搬送車。
【請求項5】
車体と、前記車体に設けられたドライブタイヤと、前記ドライブタイヤを制御する制御部と、走行制御のために前記ドライブタイヤの回転を検出するエンコーダと、路面に敷設された誘導ラインを含む領域を光学的に撮像するカメラと、前記ドライブタイヤの空転を検出する異常検出手段と、を備え、前記誘導ラインに沿って走行する無人搬送車であって、
前記制御部は、前記誘導ラインを含む領域の画像データに基づいて、当該画像データから前記誘導ラインを検出するとともに、前記誘導ラインの検出結果に基づいて、前記ドライブタイヤを操舵及び駆動し、
前記異常検出手段は、前記路面上の特徴部を含む領域の第1画像データと、前記第1画像データの撮像後に撮像された前記特徴部を含む領域の第2画像データと、前記第1画像データが撮像されてから前記第2画像データが撮像されるまでの所定時間の前記エンコーダのパルス数とに基づいて、前記ドライブタイヤが空転しているか否かを判定し、
同一の前記カメラが、前記誘導ラインを含む前記路面を撮像することによって、前記ドライブタイヤの操舵及び駆動のための前記画像データと、前記ドライブタイヤの空転判定のための前記第1画像データ及び前記第2画像データとを生成することを特徴とする無人搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面に敷設された誘導ラインを撮像し、当該誘導ラインに沿って走行する無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
無人搬送車は、走行経路の路面に埋設された磁気棒を磁気センサで検出して走行する磁気誘導方式のものや(例えば、特許文献1)、走行経路の路面に敷設された誘導ラインを撮像手段(CCDカメラ等)で光学的に撮像して検出し、当該誘導ラインに沿って走行する画像誘導方式のものがある(例えば、特許文献2)。
【0003】
ところで、このような無人搬送車は、通常、走行制御のためにドライブタイヤの回転を検出するエンコーダを備えている。無人搬送車は、エンコーダのパルス信号に基づいて走行距離を測定し、当該走行距離によって走行動作を切り替えたり、またエンコーダのパルス信号に基づいて所定の目標速度で走行し、速度超過することがないように速度制御したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−202131号公報
【特許文献2】特開平11−240446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、エンコーダが経年的な理由により故障するなどエンコーダに異常が生じると、無人搬送車は予定通りに走行できない。例えば、エンコーダが故障して、図5A図5Bのようにパルス信号が欠損することがある。図5Aの通り、パルス信号が全部欠損している場合、走行モータを作動しているにもかかわらず、エンコーダが一定時間内にパルス信号を全く出力しないので、エンコーダに異常が生じたことは容易に検出できる。そして、エンコーダの異常を検出したときに走行モータを停止すれば、無人搬送車が異常走行を続けることを防止できる。
【0006】
図5Bの通り、パルス信号が一部欠損している場合、走行モータを作動させるとエンコーダが一定時間内にパルス信号を出力するので、エンコーダに異常が生じたことを検出できない。その結果、走行距離を正しく測定できず適切に走行動作を切り替えることができない、目標速度と異なる速度で走行するなど、無人搬送車は異常走行を続けてしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、ドイラブタイヤの回転検出用のエンコーダに異常が生じたことをより確実に検出することができる無人搬送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る無人搬送車は、車体と、前記車体に設けられたドライブタイヤと、前記ドライブタイヤを制御する制御部と、走行制御のために前記ドライブタイヤの回転を検出するエンコーダと、路面に敷設された誘導ラインを含む領域を光学的に撮像するカメラと、前記エンコーダの異常を検出する異常検出手段と、を備え、前記誘導ラインに沿って走行する無人搬送車であって、
前記制御部は、前記誘導ラインを含む領域の画像データに基づいて、当該画像データから前記誘導ラインを検出するとともに、前記誘導ラインの検出結果に基づいて、前記ドライブタイヤを操舵及び駆動し、
前記異常検出手段は、前記路面上の特徴部を含む領域の第1画像データと、前記第1画像データの撮像後に撮像された前記特徴部を含む領域の第2画像データと、前記第1画像データが撮像されてから前記第2画像データが撮像されるまでの所定時間の前記エンコーダのパルス数とに基づいて、前記エンコーダが異常か否かを判定し、
同一の前記カメラが、前記誘導ラインを含む前記路面を撮像することによって、前記ドライブタイヤの操舵及び駆動のための前記画像データと、前記エンコーダの異常判定のための前記第1画像データ及び前記第2画像データとを生成することを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記異常検出手段は、前記第1画像データと前記第2画像データ間での前記特徴部の位置の変化から算出される走行速度と、前記所定時間の前記パルス数から算出される走行速度とを比較することによって、前記エンコーダが異常か否かを判定する。
【0010】
好ましくは、前記特徴部は、前記路面及び前記誘導ラインと異なる色に着色された前記誘導ライン上のマーカーで構成され、前記マーカーが、互いの一つの角だけが接するように配置された一対の長方形状のマークで構成されており、
前記異常検出手段は、前記第1画像データにおける前記一対のマークの接点の座標と前記第2画像データにおける前記接点の座標との座標間距離から走行速度を算出する。
【0011】
好ましくは、前記特徴部は、互いに直交するように前記路面に敷設された2本の前記誘導ラインで構成され、
前記異常検出手段は、前記第1画像データにおける前記誘導ラインの交点の中心の座標と前記第2画像データにおける前記交点の中心の座標との座標間距離から走行速度を算出する。
【0012】
また、本発明に係る無人搬送車は、車体と、前記車体に設けられたドライブタイヤと、前記ドライブタイヤを制御する制御部と、走行制御のために前記ドライブタイヤの回転を検出するエンコーダと、路面に敷設された誘導ラインを含む領域を光学的に撮像するカメラと、前記ドライブタイヤの空転を検出する異常検出手段と、を備え、前記誘導ラインに沿って走行する無人搬送車であって、
前記制御部は、前記誘導ラインを含む領域の画像データに基づいて、当該画像データから前記誘導ラインを検出するとともに、前記誘導ラインの検出結果に基づいて、前記ドライブタイヤを操舵及び駆動し、
前記異常検出手段は、前記路面上の特徴部を含む領域の第1画像データと、前記第1画像データの撮像後に撮像された前記特徴部を含む領域の第2画像データと、前記第1画像データが撮像されてから前記第2画像データが撮像されるまでの所定時間の前記エンコーダのパルス数とに基づいて、前記ドライブタイヤが空転しているか否かを判定し、
同一の前記カメラが、前記誘導ラインを含む前記路面を撮像することによって、前記ドライブタイヤの操舵及び駆動のための前記画像データと、前記ドライブタイヤの空転判定のための前記第1画像データ及び前記第2画像データとを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記構成を備えることによって、ドイラブタイヤの回転検出用のエンコーダに異常が生じたことをより確実に検出することができる無人搬送車を提供できる。また、本発明は、ドライブタイヤの空転を検出することができる無人搬送車も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る無人搬送車の概略的な構成を示す図である。
図2】第1画像データ及び第2画像データの一例であり、特徴部がマーカーで構成された図である。
図3】エンコーダに異常が生じてパルス信号が欠損した状態を示す図である。
図4】第1画像データ及び第2画像データの一例であり、特徴部が互いに直交する2本の誘導ラインで構成された図である。
図5】エンコーダに異常が生じてパルス信号が欠損した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る無人搬送車について説明する。
【0016】
図1に示される通り、無人搬送システムSは、走行経路に沿って路面に敷設された誘導ラインLと、誘導ラインLを検出して当該誘導ラインLに沿って自動走行する本発明に係る無人搬送車1とを備えている。さらに、無人搬送システムSは、誘導ラインL上の適所に設けられたマーカーM(特徴部)を備えている。無人搬送車1は、マーカーMを検出することにより、走行経路上のどの位置を走行しているかを認識している。
路面、誘導ラインL及びマーカーMは、それぞれ異なる色が着色されて互いに明確に区別できる。
【0017】
無人搬送車1は、車体2と、車体2に取り付けられて路面に接地している2つのドライブタイヤ3、4及び2つのキャスタ5、6を備えている。無人搬送車1は、通常、車体2の長手方向を進行方向としている。進行方向の前方のドライブタイヤ3には、走行制御のためにドライブタイヤ3の回転を検出するエンコーダ7が接続されている。エンコーダ7は、ドライブタイヤ3の回転をパルス信号に変換して、下記する制御部15へ出力する。
なお、無人搬送車1は、ドライブタイヤ3、4を少なくとも90度操舵することができ、車体2の横手方向を進行方向として走行する(横行する)こともできる。
【0018】
無人搬送車1は、撮像手段としての2つのCCDカメラ8、9を備えている。2つのCCDカメラ8、9は、前後方向に所定の間隔をあけて配置されている。CCDカメラ8、9は、その撮像面が路面を向くように車体2に取り付けられており、誘導ラインLを含む領域を撮像して当該領域の画像データを生成する。CCDカメラ8、9は、一定の間隔で(例えば、100msec間隔で)撮像し、画像データを順次生成する。
【0019】
無人搬送車1は、照明手段として4つのLED10〜13を備えている。2つのLED10、11は、一方のCCDカメラ8の前後に配置されており、CCDカメラ8の撮像領域を照らすように車体2に取り付けられている。もう2つのLED12、13は、他方のCCDカメラ9の前後に配置されており、CCDカメラ9の撮像領域を照らすように車体2に取り付けられている。それによって、CCDカメラ8、9が、路面と誘導ラインLとマーカーMとをはっきりと区別できる画像データを生成できるようになっている。
【0020】
さらに、無人搬送車1には、画像処理演算部14(画像処理演算装置)及び制御部15(制御基板)が設けられている。画像処理演算部14は、CCDカメラ8、9から順次送られてくる画像データに対して、誘導ラインL及びマーカーMの検出のために2値化処理などの所定の画像処理を行い、画像処理された画像データを制御部15に送る。
【0021】
制御部15は、画像処理演算部14から送られた画像データにおいて誘導ラインL及びマーカーMを検出してこれらの位置を割り出す。また、制御部15は、下記するエンコーダ7の異常検出のために必要な演算及びエンコーダ7が異常か否かの判定を行う。
【0022】
制御部15は、誘導ラインLの検出結果に基づいて、走行モータを介してドライブタイヤ3、4を操舵及び駆動する。それによって、無人搬送車1は誘導ラインLに沿って走行する。
【0023】
制御部15は、エンコーダ7のパルス信号に基づいて速度制御している。本実施例では、制御部15は、エンコーダ7のパルス信号に基づいて走行速度が所定の目標速度になるようにフィードバック制御する。
【0024】
無人搬送車1は、エンコーダ7の異常を検出する異常検出手段16と、異常検出手段16が異常を検出したときに警告制御を行う警告制御手段17とを備える。図1の通り、異常検出手段16は、画像処理演算部14と制御部15とによって構成される。また、警告制御手段17は制御部15によって構成される。
【0025】
異常検出手段16によるエンコーダ7の異常検出について説明する。
無人搬送システムSは、誘導ラインL上の適所に特徴部としてのマーカーMを設けている。無人搬送車1が誘導ラインLに沿って直進走行してマーカーM上を通過すると、一定の間隔で撮像しているCCDカメラ8は、図2の通り、マーカーMを含む領域を撮像して当該領域の第1画像データD1を生成し、次いで、当該マーカーMを含む領域を撮像して当該領域の第2画像データD2を生成する。
【0026】
次いで、異常検出手段16は、第1画像データD1と第2画像データD2間での画像上でのマーカーMの位置の変化から、第1画像データD1が撮像されてから第2画像データD2が撮像されるまでの所定時間tの無人搬送車1の走行距離と、無人搬送車1の走行速度とを算出する。
【0027】
具体的には、本実施例では、図2の通り、マーカーMが誘導ラインL上に配置された一対の正方形状(長方形状)のマークからなっており、一対のマークが互いに誘導ラインLの幅方向及び長さ方向にずれて配置されて、それぞれの一角だけで接触するものからなる。異常検出手段16は、第1画像データD1及び第2画像データD2に対して所定の画像処理をし、第1画像データD1上における一対のマークの接触点、即ち、マーカーMの中心の座標P1(X1、Y1)、及び、第2画像データD2上におけるマーカーMの中心の座標P2(X1、Y2)を算出する。そして、異常検出手段16は、座標P1と座標P2の座標間距離Kを算出する。本実施例では、座標P1と座標P2のX座標がX1であるので、座標間距離K=Y1−Y2となる。
【0028】
次いで、異常検出手段16は、座標間距離Kから、第1画像データD1が撮像されてから第2画像データD2が撮像されるまでの所定時間tにおける無人搬送車1の走行距離及び走行速度を算出する。
【0029】
異常検出手段16は、上記のステップと並列して、図3の通り、第1画像データD1が撮像されてから第2画像データD2が撮像されるまでの所定時間tにおいて、エンコーダ7が出力するパルス信号のパルス数をカウントする。そして、異常検出手段16は、カウントしたパルス数から、所定時間tにおける走行距離及び走行速度を算出する。
【0030】
次いで、異常検出手段16は、所定時間tのエンコーダ7のパルス数から算出された走行速度と、第1画像データD1及び第2画像データD2から算出された走行速度とを比較することによって、エンコーダ7が異常であるか否かを判定する。以下、判定方法について説明する。
【0031】
エンコーダ7が正常なとき、エンコーダ7のパルス数から算出される走行距離及び走行速度は、実際の走行距離及び走行速度である。
【0032】
一方、エンコーダに異常が発生して、図3のようにパルス信号の欠損が生じたときは、所定時間tのエンコーダ7のパルス数から算出される走行距離及び走行速度は、実際の走行距離及び走行速度ではなく、実際の走行距離及び走行速度よりも小さくなってしまう。
なお、本実施例のようにエンコーダ7のパルス信号によって所定の目標速度になるようにフィードバック制御している無人搬送車1は、パルス信号の欠損が生じると、目標速度で走行しているつもりでも、実際には目標速度よりも速い速度で走行してしまう。
【0033】
これに対して、第1画像データD1及び第2画像データD2によってマーカーMの移動を追跡することで算出される走行距離及び走行速度は、エンコーダ7の正常及び異常に関係なく、実際の走行距離及び走行速度となる。
【0034】
要するに、所定時間tのエンコーダ7のパルス数から算出される走行距離及び走行速度は、エンコーダ7が正常であれば、第1画像データD1及び第2画像データD2から算出される走行距離及び走行速度と同じであり、エンコーダ7に異常が生じてパルス信号の欠損が生じれば、第1画像データD1及び第2画像データD2から算出される走行距離及び走行速度よりも小さくなる。
【0035】
よって、異常検出手段16は、所定時間tのエンコーダ7のパルス数から算出される走行速度が、第1画像データD1及び第2画像データD2から算出される走行速度と同じであれば、エンコーダ7が正常であると判定し、一方、第1画像データD1及び第2画像データD2から算出される走行速度より小さければ、エンコーダ7が異常であると判定する。
【0036】
なお、異常検出手段16は、算出した走行速度同士を比較するのではなく、算出した走行距離同士を比較してエンコーダ7の異常判定を行ってもよい。
【0037】
以上の通り、異常検出手段16は、第1画像データD1、第2画像データD2、及び、第1画像データD1が撮像されてから第2画像データD2が撮像されるまでの所定時間tのパルス数に基づいて、エンコーダ7が異常か否かを判定する。
【0038】
無人搬送車1は、無人搬送システムSの誘導ラインLの適所に設けられたマーカーM上を通過するたびに、エンコーダ7の異常検出を行うようになっている。
異常検出手段16がエンコーダ7に異常があることを検出すると、警告制御手段17が、走行モータの作動を止めて無人搬送車1を走行停止させたり、または搬送システムSの管理者に、エンコーダ7に異常が発生した旨を通知したりするなどの警告制御を行う。無人搬送車1の走行停止によって、無人搬送車1がエンコーダ7の異常によって目標速度と異なる速度で走行するなどといった異常走行を続けることが防止される。
【0039】
エンコーダ7の異常検出には、画像誘導方式の無人搬送車1に予め設けられているCCDカメラ8(撮像手段)が用いられるので、エンコーダ7の異常検出用に別のCCDカメラを設ける必要がない。また、エンコーダ7の異常検出のために利用されるマーカーMも、無人搬送車1が走行位置を認識するために予め走行経路に設けられているものであるので、エンコーダ7の異常検出用に別のマーカーを路面に設ける必要もない。
【0040】
また、異常検出手段16は、エンコーダ7が接続されたドライブタイヤ3の空転を検出することもできる。以下、その構成について説明する。
異常検出手段16は、エンコーダ7の異常検出と同じ要領で、第1画像データD1、第2画像データD2、及び、第1画像データD1が撮像されてから第2画像データD2が撮像されるまでの所定時間tのエンコーダ7のパルス数に基づいて、ドライブタイヤ3が空転しているか否かを判定する。
【0041】
無人搬送車1がマーカーM上を通過すると、図2のように、CCDカメラ8によって、マーカーMを含む領域の第1画像データD1が撮像されて生成され、次いでマーカーMを含む領域の第2画像データD2が撮像されて生成される。そして、異常検出手段16は、前述と同じように、第1画像データD1及び第2画像データD2間でのマーカーMの位置の変化から、即ち、第1画像データD1におけるマーカーMの中心の座標P1(X1、Y1)と、第2画像データD2におけるマーカーMの中心の座標P2(X1、Y2)との座標間距離Kから、第1画像データD1が撮像されてから第2画像データD2が撮像されるまでの所定時間tにおける走行距離及び走行速度を算出する。
さらに、異常検出手段16は、図3のように、所定時間tのエンコーダ7のパルス数から、所定時間tにおける走行距離及び走行速度を算出する。
【0042】
無人搬送車1がマーカーM上を通過する間にドライブタイヤ3が全く空転しなかったとき、エンコーダ7のパルス数から算出される走行距離及び走行速度は、実際の走行距離及び走行速度である。
一方、無人搬送車1がマーカーM上を通過する間にドライブタイヤ3が空転したとき、エンコーダ7のパルス数から算出される走行距離及び走行速度は、実際の走行距離及び走行速度より大きくなる。
【0043】
これに対して、第1画像データD1及び第2画像データD2によってマーカーMの移動を追跡することで算出される所定時間tにおける走行距離及び走行速度は、ドライブタイヤ3の空転に関係なく、実際の走行距離及び走行速度となる。
【0044】
要するに、所定時間tのエンコーダ7のパルス数から算出される走行距離及び走行速度と、第1画像データD1及び第2画像データD2により算出される走行距離及び走行速度とは、ドライブタイヤ3が空転していなければ同じであり、ドライブタイヤ3が空転すれば前者が後者よりも大きくなる。
【0045】
よって、異常検出手段16は、所定時間tのエンコーダ7のパルス数から算出される走行距離と、第1画像データD1及び第2画像データD2から算出される走行距離とを比較し、両者が同じであればドライブタイヤ3が空転していないと判定し、一方、前者が後者よりも大きければドライブタイヤ3が空転していると判定する。なお、異常検出手段16は、算出した走行距離同士を比較するのではなく、算出した走行速度同士を比較してドライブタイヤ3が空転しているか否かの判定を行ってもよい。
【0046】
なお、異常検出手段16によるドライブタイヤ3の空転検出は、マーカーM上を通過するときにしか行えないので、無人搬送車1が誘導ラインL上のマーカーMがないところを走行中にドライブタイヤ3が空転して進行方向に進まなくなってしまった場合においては、ドライブタイヤ3の空転を検出できない。
【0047】
そして、異常手段16はドライブタイヤ3が空転していることを検出したとき、警告制御手段17が前述と同様の警告制御を行う。
【0048】
以上、本発明に係る好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態では、エンコーダ7の異常検出及びドライブタイヤ3の空転検出に、前方のCCDカメラ8が用いられているが、後方のCCDカメラ9が用いられてもよい。また、エンコーダ7が後方のドライブタイヤ4に接続されていてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、エンコーダ7の異常検出及びドライブタイヤ3の空転検出のための特徴部がマーカーMで構成されていたが、特徴部は、例えば図4に示されるようなものでもよい。図4の特徴部は、互いに直交するように敷設された2本の誘導ラインL、L’で構成されている。2本の誘導ラインL、L’は互いに同じ色に着色されている。このように互いに直交する2本の誘導ラインL、L’は、無人搬送システムSの走行経路が直交するところに予め設けられている。
【0050】
異常検出手段16は、第1画像データD1上での誘導ラインL、L’の交点の中心の座標P1(X1、Y1)と、第2画像データD2上での誘導ラインL、L’の交点の中心の座標P2(X1、Y2)とを算出する。そして、異常検出手段16は、2つの座標P1、P2の座標間距離K(即ち、Y1−Y2)を算出し、当該座標間距離Kから、第1画像データD1が撮像されてから第2画像データD2が撮像されるまでの所定時間tにおける走行距離及び走行速度を算出する。
【符号の説明】
【0051】
1 無人搬送車
2 車体
3、4 ドライブタイヤ
5、6 キャスタ
7 エンコーダ
8、9 CCDカメラ(撮像手段)
10〜13 LED(照明手段)
14 画像処理演算部
15 制御部
16 異常検出手段
17 警告制御手段
S 無人搬送システム
L、L’ 誘導ライン
M マーカー(特徴部)
D1 第1画像データ
D2 第2画像データ
P1 第1画像データにおける特徴部の中心の座標
P2 第2画像データにおける特徴部の中心の座標
K 座標間距離
図1
図2
図3
図4
図5