(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二枚の側板及び差渡し板で構成するフレームに設けた一方刃物と、この一方刃物と対峙する前記フレームに設けた支軸を介して枢着した他方刃物と、前記他方刃物を可動する剪断・折断用の可動手段と、前記一方刃物及び他方刃物の上部に形成した被破砕物である非鉄金属鋳物投入用の投入開口と、また前記一方刃物及び他方刃物の下部に形成した収斂形状の排出開口とを設けた被破砕物である非鉄金属鋳物を剪断・折断する剪断・折断装置であって、
前記一方刃物は、一方基板と、この一方基板に配置した一方刃物体で構成され、また、前記他方刃物は、他方基板と、この他方基板に配置した他方刃物体で構成され、
前記一方刃物体及び前記他方刃物体は、少なくとも中段位置の中段刃物体、下段位置の下段刃物体で構成した刃物体であって、
前記一方刃物体及び前記他方刃物体の前記中段刃物体は略同形であり、これら双方で間隙を有して噛合わせ構造をなす剪断刃物体を形成し、複数の組合わせの菱形刃物と、この菱形刃物の対角線の交点箇所に十字形刃物を結合して成る多頂点形状にした多頂点刃物部とし、
前記一方刃物体の下段刃物体は、下方が前記一方刃物体の中段刃物体に対して延出する凹部状刃部を形成し、また、前記他方刃物体の下段刃物体は、凸部状刃部を形成し、
この凹部状刃部と凸部状刃部とは間隙を有して凹凸噛合わせする非鉄金属鋳物の剪断・折断装置。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニュウムを剪断する装置としては、特開2005−87915「アルミニュウムの剪断装置」がある。この発明は、特殊な刃物形状である半截角錐刃物によって、しかも、アルミニュウムを剪断することに特化した発明である。その内容は、フレームに枢着し、半截角錐刃物を千鳥状に配置した一方刃物装置及び他方刃物装置が互いに対峙し、この他方刃物装置を可動する剪断用の可動手段と、一方刃物装置及び他方刃物装置の自由端部に形成したアルミニュウム投入用の投入開口と、また一方刃物装置及び他方刃物装置の基端部に設けた支軸を介して形成した排出開口とを設け、半截角錐刃物の角錐状傾斜面等でアルミの確実な剪断等が図れるものである。
【0003】
しかし、この文献1には改良すべき点がある。例えば、一方刃物装置及び他方刃物装置の下方は、屈曲傾斜していないため、アルミニュウムである剪断物が半截角錐刃物によっても剪断されないような形状、具体的には、剪断物が長尺物等の場合、一方刃物装置及び他方刃物装置の下方からすり抜けてしまう場合があるという問題があった。
【0004】
そこで、揺動刃物装置の下方端に帯状刃物を形成した発明として特開平6−106083「油圧による鋳造用の堰、湯道、不良製品等の破砕・折断装置」がある。その内容は、上下面開放のフレームに設けられた多数個の山形状の刃物を有する固定刃物装置と、この固定刃物装置に対峙し、フレームの下方に枢着部を有する山形状の刃物と嵌め合い関係となる多数個の山形状の刃物を有する揺動刃物装置と、揺動刃物装置を揺動させる押圧手段と、揺動刃物装置と固定刃物装置の下方に設けられた破砕・折断鋳物片を排出する排出口とで構成される揺動刃物装置であって、この揺動刃物装置の下方端に傾斜面を備えた帯状刃物を形成してなる油圧による鋳造用の堰、湯道、不良製品の破砕・折断装置で、帯状刃物によって、長尺物、棒状等の不要製品を確実にキャッチできるものである。
【0005】
その他、固定歯と可動歯の各下端部に適当な下り勾配で屈曲傾斜する構成としたクラッシャーに関する発明として、実開昭48−54557「クラツシャ」がある。その内容は、所定の噛込角度で対置せる固定歯体と上端の偏心軸の回転で破砕動作する動歯体との各下端部に前側方向に適当な下り勾配で屈曲傾斜する爪部を延長状に形成し、各爪部の対向面に鋸刃状歯列を横方向に形成してなるクラツシャで、上部の固定歯体と動歯体との対向面には、歯列を全面に縦方向に形成し、固定歯体と動歯体との各爪部の対向面には、歯列を全面に横方向に形成するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−87915
【特許文献2】特開平6−106083
【特許文献3】実開昭48−54557
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、文献2は、長尺物、棒状等の不要製品を確実にキャッチするため、揺動刃物装置の下方端に傾斜面を備えた帯状刃物を形成しているが、固定刃物装置及び揺動刃物装置に多数個設けた刃物は、山形状に過ぎず刃物の形状が単純であるため、鋳造用の堰、湯道、不良製品等を細かく破砕・折断することが困難な場合がある。また、アルミニュウムを剪断することに特化した発明でない。
【0008】
また、この文献3は、鋸刃状の歯列を縦方向及び横方向に形成する構成に過ぎず、本発明のように一方刃物体及び他方刃物体が中段位置、下段位置とし、中段位置を多頂点刃物部と、下段位置を凹部状刃部、凸部状刃部とする構造ではないため、被破砕物を細かく破砕するのが困難な場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1は、二枚の側板及び差渡し板で構成するフレームに設けた一方刃物と、この一方刃物と対峙する前記フレームに設けた支軸を介して枢着した他方刃物と、前記他方刃物を可動する剪断・折断用の可動手段と、前記一方刃物及び他方刃物の上部に形成した被破砕物である非鉄金属鋳物投入用の投入開口と、また前記一方刃物及び他方刃物の下部に形成した収斂形状の排出開口とを設けた被破砕物である非鉄金属鋳物を剪断・折断する剪断・折断装置であって、
前記一方刃物は、一方基板と、この一方基板に配置した一方刃物体で構成され、また、前記他方刃物は、他方基板と、この他方基板に配置した他方刃物体で構成され、
前記一方刃物体及び前記他方刃物体は、少なくとも中段位置の中段刃物体、下段位置の下段刃物体で構成した刃物体であって、
前記一方刃物体及び前記他方刃物体の前記中段刃物体は略同形であり、これら双方で間隙を有して噛合わせ構造をなす剪断刃物体を形成し、複数の組合わせの菱形刃物と、この菱形刃物の対角線の交点箇所に十字形刃物を結合して成る多頂点形状にした多頂点刃物部とし、
前記一方刃物体の下段刃物体は、下方が前記一方刃物体の中段刃物体に対して延出する凹部状刃部を形成し、また、前記他方刃物体の下段刃物体は、凸部状刃部を形成し、
この凹部状刃部と凸部状刃部とは間隙を有して凹凸噛合わせする非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0010】
したがって、請求項1の発明は、少なくとも中段刃物体、下段刃物体で被破砕物を細かく剪断・折断できることによって、剪断・折断された破砕物の搬送性が良くなる。また、被破砕物が小さくなることによって破砕物の溶解炉への投入性、溶解性が良く、また溶湯の湯温が冷めにくい。さらに、破砕物が小さくなることによって水分が溜まる箇所も小さくなり、水蒸気爆発が起きにくくなる。
【0011】
請求項2は、請求項1に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
前記一方刃物体及び前記他方刃物体は、上段位置には上段刃物体を構成し、
側面視した場合、前記一方刃物体及び前記他方刃物体の中段刃物体の高さが上段刃物体に対して高く、前記下段刃物体の凹部状刃部の高さが前記一方刃物体の中断刃物体に対して高く、前記下段刃物体の凸部状刃部の高さが前記他方刃物体の中断刃物体に対して高くすることによって、一方刃物と他方刃物の間隙が上段刃物体、中段刃物体、下段刃物体の順に小さくなることを特徴とする非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0012】
したがって、請求項2の発明は、被破砕物が中段位置側で粗く剪断・折断され、下段位置側に向かうにしたがって次第に細かく剪断・折断されるため、剪断・折断が効率的に行なわれる。
【0013】
請求項3は、請求項1又は請求項2のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
前記十字形刃物が、根元側を第一段、先端側を第二段とし、この第二段の角度は第一段の角度より大きく、
前記第二段の先端を面取りを施したことを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0014】
したがって、請求項3の発明は、十字形刃物を第一段と第二段に分け、この第一段と第二段の角度を相違させ、さらに第二段の先端を面取りしたため十字形刃物の強度を保つことができる。
【0015】
請求項4は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
前記一方刃物体及び前記他方刃物体の中段刃物体の中腹部分の刃面に筋状凹部及び/又は凸部を有することを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0016】
したがって、請求項4の発明は、被破砕物が中段刃物体に付着し難くなり、また仮に付着しても剥がれやすくなるため、中段刃物体における構成刃先の発生を予防することができる。
【0017】
請求項5は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
前記一方基板の基面と、この一方基板の基面に配置した中段刃物体である菱形刃物、十字形刃物で形成する凹み部、及び、前記他方基板の基面と、この他方基板の基面に配置した中段刃物体である菱形刃物、十字形刃物で形成する凹み部に、被破砕物の大きさに対して十分な大きさのRを設けたことを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0018】
したがって、請求項5の発明は、被破砕物が中段刃物体や基面に付着し難くなり、また仮に付着しても剥がれやすくなるため、中段刃物体や基面における構成刃先の発生を予防することができる。
【0019】
請求項6は、請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
前記下段刃物体の凸部状刃部は、前記他方基板に対して略垂直に形成され、
この凸部状刃部の
下面を切欠いて切欠き面を有することを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0020】
したがって、請求項6の発明は、凸部状刃部の切欠き面によって、被破砕物が凸部状刃部に引っ掛かりやすくなり、被破砕物の剪断・折断が効率的に行なうことができる。
【0021】
請求項7は、請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
前記下段刃物体の凸部状刃部の先端側に爪部を設けたことを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0022】
したがって、請求項7の発明は、凸部状刃部に設けた爪部によって被破砕物が凸部状刃部に引っ掛かりやすくなり、請求項6の発明よりも被破砕物の剪断・折断が効率的に行なうことができる。
【0023】
請求項8は、請求項1乃至請求項7のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
前記一方刃物体の下段刃物体の凹部状刃部の表面には、1個又は複数個の凸部を設けることを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0024】
したがって、請求項8の発明は、凹部状刃部の表面に1個又は複数個の凸部を設けるため、一方刃物及び他方刃物の下方から長尺物の被破砕物がすり抜けてしまうことを防止することができ、より細かく剪断・折断することができる。
【0025】
請求項9は、請求項1乃至請求項8のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
前記一方刃物体の下段刃物体の凹部状刃部は、前記他方刃物が前動した際、凹凸噛合わせ空間が縮小するよう肉盛り形成したことを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0026】
したがって、請求項9の発明は、肉盛り形成することによって、他方刃物が前動した際には凹部状刃部と凸部状刃部の凹凸噛合わせ空間が縮小するため、さらに効率的に剪断・折断でき、また、この剪断・折断した破砕物を押し出し、排出することができる。
【0027】
請求項10は、請求項1乃至請求項9のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
他方刃物体の下段刃物体の凸部状刃部の近傍に1個又は複数個の爪片を設けることを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0028】
したがって、請求項10の発明は、例えば、一方刃物体の凹部状刃部の近傍に被破砕物が付着したような場合は、爪片を設けた他方刃物体が前動することによって、この爪片で付着した被破砕物を取り除くことができる。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明は、少なくとも中段刃物体、下段刃物体で被破砕物を細かく剪断・折断できることによって、剪断・折断された破砕物の搬送性が良くなる。また、被破砕物が小さくなることによって被破砕物の溶解炉への投入性、溶解性が良く、また溶湯の湯温が冷めにくい。さらに、被破砕物が小さくなることによって水分が溜まる箇所も小さくなり、水蒸気爆発が起きにくくなる。
【0030】
したがって、請求項1は、二枚の側板及び差渡し板で構成するフレームに設けた一方刃物と、一方刃物と対峙するフレームに設けた支軸を介して枢着した他方刃物と、他方刃物を可動する剪断・折断用の可動手段と、一方刃物及び他方刃物の上部に形成した被破砕物である非鉄金属鋳物投入用の投入開口と、また一方刃物及び他方刃物の下部に形成した収斂形状の排出開口とを設けた被破砕物である非鉄金属鋳物を剪断・折断する剪断・折断装置であって、
一方刃物は、一方基板と、一方基板に配置した一方刃物体で構成され、また、他方刃物は、他方基板と、他方基板に配置した他方刃物体で構成され、
一方刃物体及び他方刃物体は、少なくとも中段位置の中段刃物体、下段位置の下段刃物体で構成した刃物体であって、
一方刃物体及び他方刃物体の中段刃物体は略同形であり、これら双方で間隙を有して噛合わせ構造をなす剪断刃物体を形成し、複数の組合わせの菱形刃物と、菱形刃物の対角線の交点箇所に十字形刃物を結合して成る多頂点形状にした多頂点刃物部とし、
一方刃物体の下段刃物体は、下方が一方刃物体の中段刃物体に対して延出する凹部状刃部を形成し、また、他方刃物体の下段刃物体は、凸部状刃部を形成し、
凹部状刃部と凸部状刃部とは間隙を有して凹凸噛合わせする非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0031】
請求項2の発明は、請求項2の発明は、被破砕物が中段位置側で粗く剪断・折断され、下段位置側に向かうにしたがって次第に細かく剪断・折断されるため、剪断・折断が効率的に行なわれ、破砕に必要な動力が小さくなる。
【0032】
したがって、請求項2は、請求項1に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
一方刃物体及び他方刃物体は、上段位置には上段刃物体を構成し、
側面視した場合、一方刃物体及び他方刃物体の中段刃物体の高さが上段刃物体に対して高く、下段刃物体の凹部状刃部の高さが一方刃物体の中断刃物体に対して高く、下段刃物体の凸部状刃部の高さが他方刃物体の中断刃物体に対して高くすることによって、一方刃物と他方刃物の間隙が上段刃物体、中段刃物体、下段刃物体の順に小さくなることを特徴とする非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0033】
請求項3の発明は、請求項3の発明は、十字形刃物を第一段と第二段に分け、この第一段と第二段の角度を相違させ、さらに第二段の先端を面取りしたため十字形刃物の強度を保つことができる。
【0034】
したがって、請求項3は、請求項1又は請求項2のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
十字形刃物が、根元側を第一段、先端側を第二段とし、第二段の角度は第一段の角度より大きく、
第二段の先端を面取りを施したことを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0035】
請求項4の発明は、被破砕物が中段刃物体に付着し難くなり、また仮に付着しても剥がれやすくなるため、中段刃物体における構成刃先の発生を予防することができる。
【0036】
したがって、請求項4は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
一方刃物体及び他方刃物体の中段刃物体の中腹部分の刃面に筋状凹部及び/又は凸部を有することを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0037】
請求項5の発明は、被破砕物が中段刃物体や基面に付着し難くなり、また仮に付着しても剥がれやすくなるため、中段刃物体や基面における構成刃先の発生を予防することができる。
【0038】
したがって、請求項5は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
一方基板の基面と、この一方基板の基面に配置した中段刃物体である菱形刃物、十字形刃物で形成する凹み部、及び、他方基板の基面と、この他方基板の基面に配置した中段刃物体である菱形刃物、十字形刃物で形成する凹み部に、被破砕物の大きさに対して十分な大きさのRを設けたことを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0039】
請求項6の発明は、凸部状刃部の切欠き面を設けることによって、被破砕物の剪断・折断が効率的に行なうことができる。
【0040】
したがって、請求項6は、請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
下段刃物体の凸部状刃部は、他方基板に対して略垂直に形成され、
この凸部状刃部の
下面を切欠いて切欠き面を有することを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0041】
請求項7の発明は、凸部状刃部に設けた爪部によって被破砕物が凸部状刃部に引っ掛かりやすくなり、請求項6の発明よりも被破砕物の剪断・折断が効率的に行なうことができる。
【0042】
したがって、請求項7は、請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
下段刃物体の凸部状刃部の先端側に爪部を設けたことを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0043】
請求項8の発明は、延出部の表面に1個又は複数個の凸部を設けるため、一方刃物及び他方刃物の下方からすり抜けてしまうことを防止することができ、効果的な剪断・折断ができる。
【0044】
したがって、請求項8は、請求項1乃至請求項7のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
一方刃物体の下段刃物体の凹部状刃部の表面には、1個又は複数個の凸部を設けることを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0045】
請求項9の発明は、肉盛り形成することによって、他方刃物が前動した際には凹部状刃部と凸部状刃部の凹凸噛合わせ空間が縮小するため、さらに効率的に剪断・折断でき、また、この剪断・折断した破砕物を押し出し、排出することができる。
【0046】
したがって、請求項9は、請求項1乃至請求項8のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
一方刃物体の下段刃物体の凹部状刃部は、他方刃物が前動した際、凹凸噛合わせ空間が縮小するよう肉盛り形成したことを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【0047】
請求項10の発明は、例えば、一方刃物体の凹部状刃部の近傍に被破砕物が付着したような場合は、爪片を設けた他方刃物体が前動することによって、この爪片で付着した被破砕物を取り除くことができる。
【0048】
したがって、請求項10は、請求項1乃至請求項9のうちいずれか1項に記載の非鉄金属鋳物の剪断・折断装置において、
他方刃物体の下段刃物体の凸部状刃部の近傍に1個又は複数個の爪片を設けることを特徴とした非鉄金属鋳物の剪断・折断装置である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明である非鉄金属鋳物の剪断・折断装置1の一例を、図面に基づいて説明すると、この非鉄金属鋳物の剪断・折断装置1は、
図1等で図示されているように、側板2a、2b及び差渡し板2cで構成された上下開放のフレーム3と、このフレーム3に設けた一方刃物4と、この一方刃物4と対峙するフレーム3に設けた支軸を介して枢着した他方刃物5と、この他方刃物5を前進後退させる可動手段7とを主構成要素とする。この一方刃物4と他方刃物5の上部で投入開口Aを、また一方刃物4と他方刃物5の下部で収斂形状の排出開口Bを形成する。そして、
図11で図示するように、例えば、コンベアDから運搬される非鉄金属鋳物の被破砕物が投入開口Aから投入され、この被破砕物を剪断・折断する。すなわち、本発明によって被破砕物を割る、切る、砕く、潰す等して細かくすることができる。そして、この細かくされた被破砕物が排出開口Bから排出される。
【0052】
なお、本発明は、以下説明する実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。また、本発明は、主としてアルミニュウム鋳物等、非鉄金属鋳物を剪断・折断することができる。
【0053】
図3、
図4は、固定側である一方刃物4を示す。
【0054】
一般的に、一方刃物4は、基板40と、この基板40に設けた一方刃物体42とで構成される。
【0055】
なお、他の例としては、基板40と、この基板40に着脱自在に設けた刃物台と、この刃物台に設けた一方刃物体42とで構成されるものが挙げられる。また、基板40と一方刃物体42が一体成形する例や、基板40と刃物台と一方刃物体42が一体成形する例も挙げられる。
【0056】
図5、
図6は、移動側である他方刃物5を示す。
【0057】
一般的に、他方刃物5は、基板50と、この基板50と、この基板50に設けた他方刃物体52とで構成される。
【0058】
なお、他の例としては、基板50と、この基板50に着脱自在に設けた刃物台と、この刃物台に設けた他方刃物体52とで構成されるものが挙げられる。また、基板50と一方刃物体52が一体成形する例や、基板50と刃物台と他方刃物体52が一体成形する例も挙げられる。
【0059】
図4、
図6等では、一方刃物体42及び他方刃物体52は、上から順に上段位置の上段刃物体10、中段位置の中段刃物体20、下段位置の下段刃物体30の3段構成であるが、このような構成に限らず、中段刃物体20、下段刃物体30の2段構成であってもよい。また、一方刃物体42及び他方刃物体52の刃の大きさ、形状、間隔、幅は被破砕物の剪断・折断が効率的に行えるように適宜設定することができる。
【0060】
なお、一方刃物体42や他方刃物体52の傾斜した部分にあっては、剪断・折断処理した被破砕物が、確実かつスムーズに落下すること、また刃物体の耐久性と剪断・折断機能の維持、又は被破砕物、処理途中の被破砕物の確実な剪断、また被破砕物、処理中の被破砕物を受止め得ること等の特徴がある。
【0061】
なお、一方刃物体42や他方刃物体52については、主に焼き入れ鋼やマンガン鋼等、高い刃面硬度の鋼材が使用される。
【0062】
一方刃物体42及び他方刃物体52の上段刃物体10について説明する。
【0063】
一方刃物体42の上段刃物体10と他方刃物体52の上段刃物体10は、構成が略同じであり、一方基板40,他方基板50の上に縦方向に適宜間隔を有して配設した縦刃11と、横方向に適宜間隔を有して配設した横刃12とで多数のメッシュ開口13を有するスクリーンとなる格子状に組み付けた構造としている。
【0064】
側面図である
図4、
図6では、縦刃11よりも横刃12のほうが高い構成としているが、この構成にかかわらず、横刃12よりも縦刃11のほうが高い構成であってもよいし、縦刃11と横刃12が同位の構成であってもよい。
【0065】
また、縦刃11、横刃は12、根元側から先端側に向かって傾斜する構成であっても、傾斜しない構成であってもよい。
【0066】
そして、一方刃物体42の上段刃物体10と他方刃物体52の上段刃物体10の間のクリアランスCを利用して被破砕物を剪断・折断する。
【0067】
次に、一方刃物体42及び他方刃物体52の中段刃物体20について説明する。
【0068】
一方刃物体42の中段刃物体20と他方刃物体52の中段刃物体20は、構成が略同じである。
【0069】
これらの中段刃物体20の形状について説明すると、まず、菱形の菱形刃物21、半菱形形状の菱形刃物21が形成されており、次にこの菱形刃物21の対角線の交点箇所の上に十字形刃物22を結合してなる。したがって、菱形刃物21よりも十字形刃物22の略上半部の方が高く配置されている。
【0070】
このような構成から、菱形刃物21の頂点と十字形刃物22の頂点(先端)の組み合わせによって多頂点形状にした多頂点刃物部27が形成される。
【0071】
なお、菱形刃物21に関しては、一例として、
図3では、菱形の菱形刃物21と半菱形形状の菱形刃物21の組み合わせで構成されたものを、
図5では、菱形形状の菱形刃物21で構成されたものを図示した。
【0072】
そして、一方刃物体42又は他方刃物体52の菱形刃物21の四辺で囲われた箇所をスポット部28とする。他方刃物5が前進すると、最終的にスポット部28の近傍に他方刃物体52又は一方刃物体42の十字形刃物22が位置する。
【0073】
なお、中段刃物体20の菱形刃物21、十字形刃物22は、根元側から先端側に向かって傾斜する構成となっている。
【0074】
他の例では、
図12等で図示したように、前記十字形刃物22が、根元側を第一段22a、先端側を第二段22bとし、この第二段22bの角度24bは第一段22aの角度24aより大きくする。さらに、第二段22bの先端に面取りを施している。
【0075】
中段刃物体20の第一段22aの角度24a、第二段22bの24bは、例えば、30度から90度の中から選択することが考えられるが、本発明の効果を奏することができれば、この角度に限定されない。
【0076】
さらに、中段刃物体20の中腹部分の刃面22dに筋状凹部25又は筋状凸部26を入れる例を
図13(イ)、
図13(ロ)で図示した。なお、
図13(イ)では、中段刃物体20の中腹部分の刃面22dであって、先端側から根元側にかけて筋状凹部25又は筋状凸部26を入れた状態を、
図13(ロ)では、中段刃物体20の中腹部分の刃面22dの一部に筋状凹部25又は筋状凸部26を入れた状態を図示した。また、両側を筋状凹部25又は筋状凸部26とする他、
図13(イ)、
図13(ロ)のように、片側を筋状凹部25、もう片側を筋状凸部26とすることも可能である。
【0077】
一方刃物体42及び他方刃物体52の中段刃物体20である菱形刃物21、十字形刃物22、一方基板40の基面40a、他方基板50の基面50aで形成する凹み部に、被破砕物の大きさに対して十分な大きさのR29を設けた状態を
図14(イ)、
図14(ロ)で図示した。
図14(イ)では、十字形刃物22と一方基板40の基面40a等で形成する凹み部にRを設けた状態を、
図14(ロ)では、菱形刃物21と十字形刃物22、菱形刃物21と一方基板40の基面40a、十字形刃物22と一方基板40の基面40a等で形成する凹み部にRを設けた状態を図示した。なお、R29については特に限定されず、本発明の効果を奏することができれば、どのようなR29であってもよい。
【0078】
そして、一方刃物体42及び他方刃物体52の中段刃物体20は、クリアランスCによって被破砕物を主に剪断する。
【0079】
また、一方刃物体42及び他方刃物体52の下段刃物体30について説明する。
【0080】
一方刃物体42の下段刃物体30と他方刃物体52の下段刃物体30は、上段刃物体10や中段刃物体20と異なり、構成が相違する。すなわち、一方刃物体42の下段刃物体30を凹部状刃部31と、他方刃物体52の下段刃物体30を凸部状刃部32としており、この凹部状刃部31と凸部状刃部32が間隙6を有する凹凸噛合わせ構造をなす刃物体となる。そして、凹部状刃部31と凸部状刃部32が噛合うことによって被破砕物が剪断・折断される。
【0081】
なお、間隙6は、剪断・折断された被破砕物の一部が通過する通過路となる。
【0082】
下段刃物体30の凸部状刃部32は、他方基板50に対して略垂直に形成し、凸部状刃部32の一部を切欠いて切欠き面33を有する状態を
図15で図示した。なお、切欠き面33を大きく取ることによって、剛性を確保することができる。
【0083】
また、切欠き面33を設けた下段刃物体30の凸部状刃部32の先端側に爪部34を設けた状態を
図16で図示した。このように、爪部34は、先端側に設けることが望ましい。なお、爪部34は、切欠き面33を設けていない凸部状刃部32に設けることも可能である。
【0084】
図17では、凹部状刃部31を
図1の例よりも延出させた状態を図示した。
【0085】
また、
図19で図示したように、凹部状刃部31を肉盛り38形成すると、他方刃物5が前動した場合、凹凸噛合わせ空間37が徐々に縮小するため、被破砕物がさらに細かく剪断・折断される。
【0086】
凹部状刃部31の表面に1個又は複数個の凸部36を設けた状態を
図18で図示した。この凸部36は、長尺物が滑り落ちることを防止できれば、凹部状刃部31の表面のどの位置に設けてもよい。また、凸部36は、本発明の効果を奏することが可能であれば形状は限定されない。例えば、半割とした算盤珠状の他、先鋭状や突起状の形状であってもよい。
【0087】
また、例えば、他方基板50の際に半裁した凸部状刃部32を設けることも可能である。具体的には、他方基板50の側面と半裁した凸部状刃部32の側面が面一とし、凸部状刃部32の一部に切り込みを入れる例も挙げられる。
【0088】
凸部状刃部32の一部に切り込みを入れることによって、凸部状刃部32の切り込みが爪状となり、この爪で被破砕物への食い込みを良くすることができ、より効率的な剪断・折断が可能となる。
【0089】
また、他方刃物体52の下段刃物体30の凸部状刃部32の近傍に爪片39を設けた状態を
図20で図示した。この爪片39は、例えば、一方刃物体42の凹部状刃部31の近傍に被破砕物が付着したような場合は、爪片39を設けた他方刃物体52が前動することによって、この爪片で被破砕物を取り除くことができる。
【0090】
この爪片39を設ける位置は、凸部状刃部32の近傍であればどこでもよい。例えば、
図20にように、凸部状刃部32の左右の位置に設けることが考えられる。また、爪片39の形状については、
図20にように、菱形であっても、半裁した菱形であってもよい。さらに、爪片39の大きさも問わない。要するに、上述した爪片39の効果を奏することができれば、爪片39を設ける位置や爪片39の形状、大きさ、数については問わない。
【0091】
一方刃物体42及び他方刃物体52の高さは、側面視して上段刃物体10、中段刃物体20、下段刃物体30が同位とする構成の他、一方刃物体42及び他方刃物体52の高さが、側面視して上段刃物体10、中段刃物体20、下段刃物体30の順に高くなる構成も挙げられる。この場合、一方刃物体42と他方刃物体52の間隙が上段刃物体10、中段刃物体20、下段刃物体30の順に小さくなる。このような構成とすると、大きな被破砕物が上段刃物体10で剪断・折断され、小さな被破砕物が下段刃物体30で剪断・折断される。
【0092】
可動する側の他方刃物5には、その背面側に形成した基板50にシリンダー71のピストンロッド72の先端に固定している。そして基板50は、シリンダー71により他方刃物5を押し出すことができるように構成している。なお、このシリンダー71は、油圧や空圧を作動流体とする流体シリンダーを用いることもできる。例えば、油圧シリンダー装置の場合は、ピストンロッド72を進退動させることによって、一方刃物体42と他方刃物体52の間に投入された被破砕物を破砕する直線送り駆動機構となる。したがって、油圧シリンダーの直線送り駆動装置で他方刃物を徐々に変位させ、油圧の強力な圧力を被破砕物に作用させ、被破砕物を剪断・折断する。
【0093】
また、他方刃物5の支軸73は、軸受け74と、フレーム3に大きく開設した枠穴79に嵌合する支持ブロック75を利用して支持されている。従って、枠穴79に嵌合する支持ブロック75の抜差しを利用して、枠穴79内において左右の支持ブロック75の数を調整することで、支軸73の位置を変更できる。そして、この軸受け74には、メタル76と、偏心ブッシュ77、図示しない止め具が設けられている。従って、止め具の開放で偏心ブッシュ77を適宜回転し、支軸73の位置を変更する。この変更後に(この回転位置を)止め具78で緊締し、当偏心ブッシュ77を固止する。この操作を介して支軸73の位置を変更し、かつ支軸73を変更位置で固定する。尚、支持ブロック75の左右側の数を、枠穴79内において変更しても、支軸73の位置を変更できることは勿論である。また偏心ブッシュ77は軸受けを半截して取出し可能とする。