(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の芳香族化合物の水素化触媒を用い、反応温度50〜400℃、水素分圧0.05〜3MPa、[水素(mol)]/[原料芳香族化合物(mol)]比1〜15、液空間速度0.01〜10h−1の条件下で、芳香族化合物を水素化することを特徴とする芳香族化合物の水素化方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<芳香族化合物の水素化触媒の組成>
本発明の芳香族化合物の水素化触媒(以下、「本発明の水素化触媒」ということがある。)は、ニッケルを酸化物(NiO)換算で50〜95質量%、モリブデンを酸化物(MoO
3)換算で0.5〜25質量%、及び無機酸化物を含有し、NiOの結晶子径が3nm以下であり、かつ比表面積が150〜600m
2/gであることを特徴とする。本発明の水素化触媒は、ニッケル及びモリブデンを特定の組成比で含有し、かつ特定の結晶子径や比表面積であることにより、硫化水素等の不純物が含まれている場合であっても、温和な条件で効率よく、芳香族化合物を水素化することができる。
【0012】
本発明の水素化触媒におけるニッケルの含有量は、酸化物(NiO)換算で50〜95質量%、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは75〜90質量%である。ニッケル酸化物量が50質量%以上であれば所望の水素化活性が発現されるため好ましく、95質量%以下であれば、水素化活性が飽和せず、またNi同士の凝集による水素化活性の低下が生じにくいため好ましい。
【0013】
本発明の水素化触媒におけるモリブデンの含有量は、酸化物(MoO
3)換算で0.5〜25質量%、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。モリブデン酸化物量が0.5質量%以上であれば所望の水素化活性が発現されるため好ましく、25質量%以下であれば、水素化活性が飽和せず、また水素化活性の低下が生じにくいため好ましい
【0014】
本発明の水素化触媒においては、上記ニッケル及びモリブデンに加えてさらに、無機酸化物を含有する。無機酸化物を用いると、それに水素化活性金属が分散付着しその分散性が良くなり、水素化活性が向上し、触媒寿命の延長が期待される。また、触媒の成型性や強度も向上するため、無機酸化物を用いることは高活性かつ高耐久性の触媒を得る上で望ましい。
【0015】
無機酸化物の種類は特に限定されないが、Si、Al、B、Mg、Ce、Zr、P、Ti、W、Mnからなる群から選ばれるいずれか1種の元素の酸化物もしくはこれらの混合物、又は2種以上の元素の複合酸化物が好ましい。これらの無機酸化物は結晶構造が無定形であっても結晶性であっても構わない。例えば、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、B
2O
3、MgO、SiO
2−Al
2O
3、Al
2O
3−B
2O
3、SiO
2−MgO、ゼオライトなどが挙げられる。
【0016】
各種無機酸化物の中でも、比較的高い比表面積を有し、成形性、圧壊強度、磨耗性に優れる、SiO
2、Al
2O
3、及びSiO
2−Al
2O
3が特に好ましい。このSiO
2−Al
2O
3は、通常、後述する触媒の焼成工程においてSi原料及びAl原料の両者を含む混合物を焼成する過程で生成することができる。
【0017】
無機酸化物成分含有量については、特に制限はなく、各種条件において適宜選定すればよいが、通常は触媒全体に対して好ましくは0.5〜49.5質量%、より好ましくは0.5〜40質量%、さらに好ましくは0.5〜30質量%の範囲であればよい。含有量が0.5質量%以上であれば、無機酸化物成分としての効果が十分に発揮され、また49.5質量%以下であれば、水素化活性成分の低下による脱硫性能の低下が防ぐことができ、好ましい。
【0018】
本発明の水素化触媒の含有成分の一つであるニッケルの酸化物(NiO)状態における結晶子径は、3nm以下、好ましくは2.6nm以下、さらに好ましくは2.4nm以下である。一般に活性点の結晶子サイズが小さいほど表面積が増加し、活性が高くなる。NiOの結晶子径が3nm以下であれば、十分な水素化活性が発揮され好ましい。
【0019】
また、本発明の水素化触媒の比表面積は、還元処理前の状態で150〜600m
2/gであり、180〜500m
2/gであることが好ましい。比表面積が150m
2/g以上であれば、水素化のための活性点の数が多くなり、十分な水素化活性が得られて好ましい。また、比表面積が600m
2/g以下であれば、相対的に平均細孔径が大きくなり、十分な水素化活性が得られて好ましい。
【0020】
本発明の水素化触媒の形状については特に規定されず、成型体(押出し円柱、タブレット円柱、球など)、メッシュで篩い分けられた粒状体、粉末などいずれの状態でもかまわないが、取り扱いの簡便さを考えると、成型体又はメッシュで篩い分けられた粒状体が好ましい。触媒の形状を成型体あるいはメッシュで篩い分けられた粒状体にするためには、無機酸化物を用いることが望ましい。また、触媒の大きさは、成型体、メッシュで篩い分けられた粒状体に関らず特に限定されないが、通常直径、あるいは長さが0.1〜10mm、より好ましくは0.1〜5mmであることが好ましい
【0021】
<芳香族化合物の水素化触媒の製造方法>
触媒の製造方法については特に規定されず、任意の方法で適宜調製することができる。例えば、無機酸化物を用いて、含浸法、混練法、共沈法、ゾルゲル法、平衡吸着法などにより製造することができ、ニッケル及びモリブデンを有効的に機能させるためには含浸法及び共沈法が好ましい。
ニッケル成分の添加には、1回の操作による担持量をより多くし得るため、含浸法よりも共沈法がより好ましい。
【0022】
以下に本発明の水素化触媒の好適な製造方法について具体的に説明するが、本発明の水素化触媒の製造方法はこれに限定されるものではない
【0023】
〔Ni、Mo共沈(1)〕
好適な触媒の製造方法の第一の方法について説明する。
この方法では、まず、ニッケル原料を含む酸性水溶液と、モリブデン原料を含む塩基性水溶液を別個に調製する。無機酸化物原料は、酸性水溶液又は塩基性水溶液のいずれにも添加することができる。2種以上の無機酸化物原料を使用する場合は、無機酸化物原料を両方の水溶液に添加してもよい。
【0024】
例えば、無機酸化物としてSiO
2及びAl
2O
3を含む触媒を製造する場合、ニッケル原料及びアルミニウム原料を含む酸性水溶液と、モリブデン原料、Si原料及び無機塩基を含む塩基性水溶液をそれぞれ調製する。また、無機酸化物としてSiO
2のみを含む触媒を製造する場合は、例えば、ニッケル原料を含む酸性水溶液と、モリブデン原料、Si原料及び無機塩基を含む塩基性水溶液をそれぞれ調製する。
【0025】
ニッケル原料としては特に限定されないが、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケルなどの水溶性ニッケル金属塩及びその水和物が好適に使用できる。モリブデン原料としては特に限定されないが、モリブデン酸アンモニウム、モリブドリン酸などの水溶性モリブデン金属塩及びその水和物が好適に使用できる。これらのニッケル原料やモリブデン原料は、それぞれ単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、アルミニウム原料としては、特に限定されないが、ベーマイト、擬ベーマイト、γアルミナ、βアルミナなどが好ましい。これらは粉体状、あるいはゾルの形態で用いることができ、一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ニッケル原料及びアルミニウム原料を含む酸性水溶液は、塩酸、硫酸、硝酸などの酸によって調製することが好ましい。
【0026】
さらに、Si原料としては、特に限定されないが、シリカや水ガラス、メタケイ酸ソーダ、珪藻土、メソポーラスシリカ(MCM41)などが好ましい。
また、無機塩基としては、アルカリ金属の炭酸塩や水酸化物などが好ましく、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられ、特に炭酸ナトリウムが好適である。
この無機塩基の使用量は、次の工程において、酸性水溶液と塩基性水溶液との混合液が実質上中性から塩基性になるように選ぶのが有利である。Si原料及び無機塩基は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてよい。
なお、アルミニウム原料やSi原料は、触媒に無機酸化物成分を加えるために用いるものである。これは、後記する第二、第三の方法でも同様である。
【0027】
次に、調製した各水溶液を、それぞれ25〜90℃に加温し、両者を混合する。そして、液温を25〜90℃に保持しながら0.5〜3時間程度撹拌し、反応を完結させる。酸性水溶液と塩基性水溶液の混合後のpHは6以上であることが好ましく、6〜11の範囲であることがより好ましく、6.5〜10の範囲であることがさらに好ましい。pHが6以上であれば、ニッケル、モリブデンが効率よく沈殿するため好ましい。また、pHが11以下であることが、無機塩基の使用量を節減することができて、製造コスト面から好ましい。
【0028】
反応させた水溶液の沈殿物をろ過、水洗後、固形物を公知の方法により50〜150℃程度の温度で乾燥処理する。このようにして得られた乾燥処理物を、好ましくは200〜450℃の範囲の温度において1〜5時間焼成する。
【0029】
〔Ni、Mo共沈(2)〕
次に、好適な触媒の製造方法の第二の方法について説明する。この方法では、まず、ニッケル原料及びモリブデン原料を含む酸性水溶液と、無機酸化物原料を含む塩基性水溶液を別個に調製する。2種以上の無機酸化物原料を使用する場合は、無機酸化物原料を酸性水溶液にも添加することができる。
【0030】
例えば、無機酸化物としてSiO
2及びAl
2O
3を含む触媒を製造する場合は、ニッケル原料、モリブデン原料及びアルミニウム原料を含む酸性水溶液と、Si原料及び無機塩基を含む塩基性水溶液をそれぞれ調製する。
【0031】
ニッケル原料、モリブデン原料、アルミニウム原料、Si原料、無機塩基としては、第一の方法と同様のものを用いることができる。また、ニッケル原料、モリブデン原料、及びアルミニウム原料を含む酸性水溶液は、塩酸、硫酸、硝酸などの酸によって調製することが好ましい。また、酸性水溶液と塩基性水溶液の混合後のpHは、第一の方法で述べたpHと同様の範囲とすることが好ましい。
調製した酸性水溶液と塩基性水溶液は、第一の方法と同様の条件で、混合して反応を完結させ、生成した沈殿物は、ろ過、水洗後、乾燥処理し、乾燥処理物を焼成する。
【0032】
〔Ni共沈+Mo含浸(3)〕
次に、好適な触媒の製造方法の第三の方法について説明する。この方法では、まず、ニッケル原料を含む酸性水溶液と、無機酸化物原料を含む塩基性水溶液を別個に調製する。2種以上の無機酸化物原料を使用する場合は、無機酸化物原料を酸性水溶液にも添加することができる。
【0033】
例えば、無機酸化物としてSiO
2及びAl
2O
3を含む触媒を製造する場合は、ニッケル原料及びアルミニウム原料を含む酸性水溶液と、Si原料及び無機塩基を含む塩基性水溶液をそれぞれ調製する。
【0034】
ニッケル原料、アルミニウム原料、Si原料、無機塩基としては、第一の方法と同様のものを用いることができる。また、ニッケル原料及びアルミニウム原料を含む酸性水溶液は、塩酸、硫酸、硝酸などの酸によって調製することが好ましい。また、酸性水溶液と塩基性水溶液の混合後のpHは、第一の方法で述べたpHと同様の範囲とすることが好ましい。
調製した酸性水溶液と塩基性水溶液は、第一の方法と同様の条件で、混合して反応を完結させ、生成した沈殿物は、ろ過、水洗後、乾燥処理し、乾燥処理物を焼成する。
【0035】
得られた焼成物に、モリブデン原料をイオン交換水に溶解した水溶液を含浸担持させる。モリブデン原料がイオン交換水で溶解しない場合は少量のアンモニア水を加えても良い。
この際、モリブデン原料としては、第一の方法と同様のものを用いることができる。
得られたモリブデン原料水溶液の含浸物を、公知の方法により50〜150℃程度の温
度で乾燥処理し、その乾燥処理物を、好ましくは200〜450℃の範囲の温度において1〜5時間焼成する
【0036】
<芳香族化合物の水素化方法>
上記のようにして製造した本発明の水素化触媒は、水素化反応に供す前に、還元処理しておくことが好ましい。これにより、触媒の含有金属が活性化され、芳香族化合物を水素化しやすい状態となる。
【0037】
還元方法は、水素、CO等による気相還元、ホルムアルデヒド、エタノール等を用いた液相還元等の公知の方法を用いることが可能であるが、気相による水素化還元が好ましく、この場合、水素雰囲気で200〜500℃で行うことが好ましく、300〜450℃の温度で行うことがより好ましい。
【0038】
なお、水素化還元処理は、芳香族化合物の水素化反応の反応器内(オンサイト)で行ってもよく、事前の水素化還元処理装置(オフサイト)で行ってもかまわないが、水素化反応の温度よりも還元処理温度の方が高いため、使用する反応器の設計温度が高くなることなどを考慮すると、オフサイト還元が好ましい。さらにオフサイト水素化還元処理においては、還元処理後に触媒を空気中に取り出すと還元されたNi金属やRu金属の急激な酸化による発熱が起き、NiやRu、その他の含有成分が凝集し、表面積低下の恐れがある。よって、還元処理後、空気中に抜き出す前に、微量の酸素や二酸化炭素などを用いる金属表面の不動態化処理を施すことがさらに好ましい。上記不動態化処理では金属Niの表層の一部をNi酸化物(NiO)に酸化することで空気中に抜き出した場合でも、それ以上のNiの酸化が進まず安定に取り扱うことが可能となる。なお、このとき生成するNiOの粒子径は不動態化処理の条件によっては粒子径が多少変動する場合があるが、本発明において規定しているNiOの粒子径は還元、不動態化処理前の状態のものをいう。
【0039】
本発明の水素化触媒を用いた芳香族化合物の水素化反応では、通常、反応器に触媒を充填し、水素供給下で原料の芳香族化合物を触媒と接触させることにより水素化が行われる。
芳香族化合物と触媒とを接触させる方法としては、一般的には、固定床式反応器内に触媒層を形成し、原料の芳香族化合物及び水素を供給し行うことができる。
【0040】
水素化反応の条件としては、水素分圧は0.05〜3MPa、好ましくは、0.1〜1MPaが好ましい。一般に水素分圧が高いほど水素化反応には有利であるが、本発明では低い水素分圧においても効率的に水素化反応を進めることができるため、低品位な水素を有効に利用することができるとともに、昇圧器で全圧を高め水素分圧を高くする必要もなく、設備面や運転動力での投資を軽減することができる。
【0041】
また、原料芳香族化合物に対する水素のモル比([水素(mol)]/[原料芳香族化合物(mol)]比)は、1〜15、好ましくは、3〜7である。一般に原料に対する水素の量が多いほど水素化反応には有利であるが、この範囲を保つことにより、効率的に水素化反応を進めることができる。
【0042】
用いる水素の純度は、不純物が含まれておらず、純度の高い水素を用いることができるのは言うまでもないが、本発明では、水素純度が低く、また、不純物として硫化水素などの硫黄化合物がある程度含まれていても、効率的に水素化を進めることができる。
水素純度に関しては、用いるガスの全圧にもよるが例えば、20vol%程度以上あれば好適に用いることができる。また、硫化水素は、100(容量)ppm程度までであれば、水素とともに存在していても、水素化活性の急激な失活を引き起こすことはない。
【0043】
また、反応温度は50〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃、更に好ましくは100〜150℃である。本発明では、低温でも水素化が進行するのが特徴であるが、50℃以下では、反応速度が低下し、また、逆に高温すぎる場合には、触媒中のニッケル成分が凝集して活性サイト数が減少し、水素化の性能が低下する恐れがある。
液空間速度(LHSV)は0.01〜10h
−1、好ましくは0.1〜3h
−1である。
【0044】
原料とする芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール類、チオフェノール類、アニリン類などの単環芳香族化合物やナフタレン、アントラセン、フェナントレンなどの多環芳香族化合物といった、いわゆるベンゼン核を有する炭化水素類やチオフェン、ピリジン、フランなどの複素環芳香族化合物などが挙げられるが、炭化水素類であれば特に限定されるものではなく、例えば、灯油や軽油を原料として、各留分中の芳香族化合物を水素化することも可能である。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
まず、実施例及び比較例における触媒の物性、及びトルエン転化率の機器分析方法を以下に示す。
【0046】
<触媒の比表面積測定>
BET(Braunauer−Emmett−Tailor specific surface area)比表面積の測定には、日本ベル社製表面積測定装置(Belsorp Mini)を用いた。試料約200〜300mgを精秤し、これを石英製の試料管に充填し、10
-1〜10
-3mmHg台に減圧しながら室温から400℃まで1時間かけて昇温し、減圧下、同温度で3時間保持して脱気処理を行った。その後、減圧しながら室温まで降温させ、高純度ヘリウムガスで置換し、脱気後の試料重量を精秤した。この後、液化窒素温度で窒素吸着を行い、比表面積を測定した。
【0047】
<触媒のX線回折分析方法>
株式会社リガク社製X線回折装置(RINT−2500V)を用いた。測定する試料を粉砕し、試料板に詰め、走査範囲5〜90°、試料回転速度20rpm、発散スリット1°、散乱スリット1°、受光スリット1°、スキャンスピード2°/minでX線回折(線源Cu−Kα線)測定を行った。
NiOの結晶子径はX線回折測定により2θ=62°付近にピークトップを有する回折ピークを検出し、Scherrerの式により算出した。
【0048】
<トルエンの水素化反応>
内径15mmの反応管に触媒10mLを充填し、反応温度50〜350℃、LHSV=1.0h
−1、水素/トルエン=5mol/mol、全圧0.6MPa、水素分圧0.12MPa、H
2S=0〜50ppmの条件で反応を行った。また、生成油のFID−GC分析を行い、面積値よりトルエンの転化率を下記の式で求めた。なお、トルエン水素化生成物としてはメチルシクロヘキサンのみが確認され、それ以外の化合物は検出されなかった。
【0049】
式:トルエン転化率(%)=[メチルシクロヘキサンの面積値]/([トルエンの面積値]+[メチルシクロヘキサンの面積値])×100
【0050】
[実施例1;Ni、Mo共沈(1)(第一の方法)]
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24g、1N−HNO
3水溶液40mLをイオン交換水1Lに加え、80℃に加温後、Ni(NO
3)
2・6H
2Oを149g加えて調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1LにコロイダルシリカスノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム99.4g、(NH
4)
6Mo
7O
24・5H
2Oを3.0g加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて洗浄し、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥させた後、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けし、触媒1を得た。
【0051】
[実施例2;Ni、Mo共沈(1)(第一の方法)]
1N−HNO
3水溶液40mLをイオン交換水1Lに加え、80℃に加温後、Ni(NO
3)
2・6H
2Oを170g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1LにコロイダルシリカスノーテックスXS(日産化学製)17g、炭酸ナトリウム99.4g、(NH
4)
6Mo
7O
24・5H
2Oを1.8g加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて洗浄し、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥させた後、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けし、触媒2を得た。
【0052】
[実施例3;Ni共沈+Mo含浸(第三の方法)]
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24gをイオン交換水1Lに加え、80℃に加温後、Ni(NO
3)
2・6H
2Oを149g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1LにコロイダルシリカスノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム79.5gを加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に10分間で加えて、1時間攪拌した。その時の80℃におけるpHは7.9であった。その後、イオン交換水を5L用いて洗浄し、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥させた後、400℃で1時間焼成し、得られた成型物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けし、成形体を得た。その内の20gに、(NH
4)
6Mo
7O
24・5H
2O1.3gを水と7NNH
3水を9:1の比で混合した水溶液8gに溶かした水溶液を含浸し、空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、触媒3を得た。
【0053】
[比較例1;Ni共沈]
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24g、1N−HNO
3水溶液40mLをイオン交換水1Lに加え、80℃に加温後、Ni(NO
3)
2・6H
2Oを159g加え調製液A を得た。別途用意したイオン交換水1LにコロイダルシリカスノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム99.4g加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて洗浄し、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥させた後、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けし、触媒4を得た。
【0054】
[比較例2;Pt−Pd/SiO
2−Al
2O
3]
シリカ−アルミナ(シリカ/アルミナ質量比=20/80、直径1/16インチの柱状成形物)37.7gを投入し、そこへ10%塩酸水溶液31.26gに塩化白金酸6水和物0.5005gと塩化パラジウム0.6278gを溶解させた溶液を、ピペットを用いて添加した。約25℃で2時間浸漬後、風乾し、マッフル炉で浸漬混合物の温度を120℃に上げ、約1時間乾燥させた。次いで、500℃で4時間焼成し、触媒5を得た。
【0055】
実施例1〜3、比較例1〜2で得られた触媒1〜5の組成、物性及びトルエンの水素化反応を実施した結果を表1に示す。表1の結果より、本発明の水素化触媒は、0.12MPa程度の低い水素分圧において、Pt−Pd系の貴金属触媒よりも、より低温度で水素化反応を触媒することができ、かつトルエンの水素化活性が高いことが分かった。
【0056】
【表1】
【0057】
[比較例3;Ni/ZnO]
酢酸亜鉛94.5gと硝酸ニッケル77.8gを1200mLの水に溶解し両者の混合溶液を調製し、この溶液に、炭酸アンモニウム22gを200mLの水に溶解した炭酸アンモニウム水溶液と15%のアンモニア水を加えて、炭酸亜鉛と塩基性炭酸ニッケルの沈澱を得、12時間程放置した。この沈澱物を濾過、水洗後、120℃で12時間乾燥し、200℃で1時間、300℃で2時間、400℃で1時間、510℃で16時間焼成し、触媒6を得た。触媒6のNiO含有量は29%、比表面積は9m
2/g、NiO結晶子径は5.5nmであった。
【0058】
実施例1の触媒1、比較例2の触媒5、比較例3の触媒6を用いて硫化水素共存下でトルエンの水素化反応を行い、活性への影響を調べた。結果を表2に示す。触媒1は、H
2Sが共存する条件下であるにもかかわらず、876時間という非常に長時間、高い水素化活性が維持されていた。これに対して、触媒5では反応時間59時間で失活してしまい、触媒6では反応時間147時間ではトルエン転化率はたった7%しかなかった。すなわち、表2の結果より、本発明の水素化触媒は、Pt−Pd系の貴金属触媒に比べて非常に耐H
2Sに優れることが分かった。
【0059】
【表2】