特許第5748402号(P5748402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5748402-打ち抜き加工装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748402
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】打ち抜き加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/12 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   B21D28/12
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2009-247431(P2009-247431)
(22)【出願日】2009年10月28日
(65)【公開番号】特開2011-92962(P2011-92962A)
(43)【公開日】2011年5月12日
【審査請求日】2011年8月31日
【審判番号】不服2014-6038(P2014-6038/J1)
【審判請求日】2014年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴峰
【合議体】
【審判長】 久保 克彦
【審判官】 栗田 雅弘
【審判官】 刈間 宏信
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許発明第823694(DE,C)
【文献】 特開2000−153322(JP,A)
【文献】 特開2004−25257(JP,A)
【文献】 特開2002−316221(JP,A)
【文献】 特開2006−212656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D28/12
B26F1/08
B21D28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に打ち抜き刃を有する第1ローラと周面に前記打ち抜き刃と対応する打ち抜き穴を有する第2ローラとを互いに逆方向に同一周速度で回転させ、両ローラの周面間に平板状のワークを通過させて打ち抜き加工を行う打ち抜き加工装置において、
前記第1ローラの前記打ち抜き刃よりも軸方向両外側に溝を形成し、
前記溝に第2ローラ方向に向けてガイド部材を設け
前記ワークを前記第2ローラの外周面と前記ガイド部材の1つの端面との間の空間を通過させ、前記ワークの幅方向両側からそれぞれ前記ワークを強制的に前記第1ローラから剥離させることを特徴とする打ち抜き加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の打ち抜き加工装置において、
記ガイド部材の幅を両ローラの周面間距離よりも長くして、前記ガイド部材の剛性を高めることを特徴とする打ち抜き加工装置。
【請求項3】
請求項1に記載の打ち抜き加工装置において、
前記ガイド部材を、両ローラの周面間のうち、回転時に相互に近づき合う側まで延在させたことを特徴とする打ち抜き加工装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の打ち抜き加工装置において、
前記溝およびガイド部材を、前記ワークの幅方向両端にそれぞれ配置したことを特徴とする打ち抜き加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載の打ち抜き加工装置において、
前記溝およびガイド部材を、前記ワークの幅方向中央に配置したことを特徴とする打ち抜き加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打ち抜き加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、打ち抜き刃を有する第1ローラと打ち抜き穴を有する第2ローラとを互いに逆方向に同一回転で回転させ、両ローラの周面間に平板状のワークを通過させることで打ち抜き加工を行う打ち抜き加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−316221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の打ち抜き加工装置では、打ち抜き刃が打ち抜き穴に進入し、その後打ち抜き穴から離間する際、打ち抜き刃にワークの開口周縁が張り付いてワークが第1ローラ側に巻き上げられ、開口が変形するという問題があった。
本発明の目的は、第1ローラによるワークの巻き上げを防止できる打ち抜き加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明では、前記第1ローラの前記打ち抜き刃よりも軸方向両外側に溝を形成し、前記溝に第2ローラ方向に向けてガイド部材を設け、前記ワークを前記第2ローラの外周面と前記ガイド部材の1つの端面との間の空間を通過させ、前記ワークの幅方向両側からそれぞれ前記ワークを強制的に前記第1ローラから剥離させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明にあっては、開口と打ち抜き刃との摩擦により第1ローラの周面に張り付こうとするワークを、ガイド部材によって第1ローラの周面から剥離させることができるため、第1ローラによるワークの巻き上げを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1の打ち抜き加工装置の縦断面図である。
図2】実施例1の打ち抜き加工装置の平面図である。
図3】他の実施例の打ち抜き加工装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の打ち抜き加工装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0009】
〔実施例1〕
まず、打ち抜き加工装置の構成を説明する。
図1は実施例1の打ち抜き加工装置の縦断面図、図2は実施例1の打ち抜き加工装置の平面図である。
実施例1の打ち抜き加工装置は、平板状のワークAを挟んで上下に配置された第1ローラ1と第2ローラ2を備える。実施例1では、ワークAとして、排気ガス浄化用のメタル触媒担体の金属箔を用いている。金属箔は、例えば、厚さが20〜30μmのステンレスとする。
第1ローラ1は、略円柱状に形成され、回転中心O1周りに回動可能に支持されている。第1ローラ1の外周面1aには、ワークAの打ち抜き用の雄型となる複数の打ち抜き刃3が放射状に突出している。打ち抜き刃3は、周方向に20°ピッチで18個並んだものが軸方向に4列配置されている。打ち抜き刃3は円柱状に形成されている。第1ローラ1の外周面1aには、環状溝8が形成されている。以下、環状溝8を図2の下から順に環状溝8a,8b,8c,8dとし、特に必要がない場合にはこれらをまとめて環状溝8と称す。なお、他の部材および部位のうち、各環状溝8a,8b,8c,8dと対応するものであって、必要がある場合には、符号にa,b,c,dを付す。
環状溝8aと環状溝8dは、打ち抜き刃3よりも第1ローラ1の方向外側に配置されている。環状溝8bと環状溝8cは、打ち抜き刃3よりも第1ローラ1の向内側に配置されている。

【0010】
第2ローラ2は、略円筒状に形成され、回転中心O2周りに回動可能に支持されている。回転中心O2は、第1ローラ1の回転中心O1と平行である。また、第1ローラ1と第2ローラ2は、ワークAの厚さに応じて離間し、両ローラ1,2間にワークAを挟み込んだ状態でそれぞれの外周面がワークAと接するように配置されている。第2ローラ2の外周面2aには、ワークAの打ち抜き用の雌型となる複数の打ち抜き穴4が放射状に形成されている。打ち抜き穴4は、第2ローラ2の外周面2aから内周面2bに至る貫通穴である。打ち抜き穴4は、打ち抜き刃3と対応する位置に配置され、打ち抜き刃3の外径よりも大きな内径を有する円形状に形成されている。
第1ローラ1と第2ローラ2は、2つのギア(不図示)を介して連結されており、どちらか一方を電動モータ等によって回転させたとき、両ローラ1,2は互いに逆方向に同一の周速度で回転する。
【0011】
実施例1の打ち抜き加工装置では、第1ローラ1によるワークAの巻き上げ防止を狙いとし、両ローラ1,2の周面間であって、各環状溝8a,8b,8c,8dと対応する位置に、ガイド部材5(5a,5b,5c,5d)を介装している。ガイド部材5aとガイド部材5dは、ワークAの幅方向左右両端をそれぞれガイドする。ガイド部材5bとガイド部材5cは、ワークAの幅方向中央部分をガイドする。各ガイド部材5a,5b,5c,5dは、第1ローラ1と第2ローラ2を支持する図外の支台に長さ方向両端を支持されている。
ガイド部材5は、矩形の薄板であり、第1端面6と第2端面7とを有する。
第1端面6は、環状溝8と同一の中心を有する円弧状であり、環状溝8の底面9とは所定距離を維持して環状溝8内部に位置する。
第2端面7は、第2ローラ2の外周面2aと同一の中心を有する円弧状である。第2端面7と外周面2aとはワークAの厚み分だけ離間し、ワークAの通路が形成されている。
【0012】
次に、作用を説明する。
[ワークの巻き上げ防止作用]
実施例1の打ち抜き加工装置では、ワークAは第2ローラ2とガイド部材5との間の空間を移動する。一対の打ち抜き刃3と打ち抜き穴4は、両ローラ1,2の回転に応じてそれぞれ回転し、第1ローラ1がワークAと接触する位置で互いに噛み合う。このとき、ワークAのうち打ち抜き刃3と打ち抜き穴4とから剪断力を受けた部分が円形に切り取られる。
ここで、従来の打ち抜き加工装置では、開口形成後、打ち抜き刃が打ち抜き穴から離間する際、打ち抜き刃にワークの開口周縁が張り付いてワークが第1ローラ側に巻き上げられ、開口が変形するという問題があった。
【0013】
これに対し、実施例1の打ち抜き加工装置では、ワークAは第2ローラ2の外周面2aとガイド部材5の第2端面7との間の空間を通過するため、開口と打ち抜き刃3との摩擦により第1ローラ1に張り付こうとするワークAを強制的に第1ローラ1から剥離させることができる。よって、第1ローラ1によるワークAの巻き上げを防止でき、巻き上げに伴う開口の変形を回避できる。
また、実施例1では、ガイド部材5を、両ローラ1,2の周面間のうち、回転時に相互に近づき合う側と反対側、すなわち、回転時に相互に離れ合う側から、回転時に相互に近づき合う側まで延在している。上述したようなワークAの巻き上げ防止効果を得るためには、両ローラ1,2の周面間のうち、回転時に相互に近づき合う側と反対側にのみガイド部材を設ければよい。ところが、この場合、ガイド部材は片持ち支持となるため、ワークの押さえが効かなくなる。実施例1では、ガイド部材5を両持ち支持できるため、ワークAを第2ローラ2側に押さえつけるために必要な支持剛性を確保できる。さらに、ワークAを両ローラ1,2の周面間全域に亘って第2ローラ2側へ押さえつけることができるため、ワークAの移送が安定し、しわやたるみの発生を抑制できる。
【0014】
実施例1では、第1ローラ1の外周面1aに環状溝8を形成し、ガイド部材5の第1端面6を環状溝8の内部に配置している。仮に、環状溝を設けない場合、ガイド部材の幅を両ローラ1,2の周面間距離未満としなければならず、ガイド部材の剛性が著しく低下する。これに対し、実施例1のように第1ローラ1の外周面1aに環状溝8を設けることで、ガイド部材5の幅を両ローラ1,2の周面間距離よりも長くできるため、ガイド部材5の剛性を高めることができる。
また、実施例1では、ガイド部材5aとガイド部材5dによりワークAの幅方向両端をそれぞれガイドしているため、ワークAの幅方向両端部分が第1ローラ1の外周面1aから剥離し易くなる。さらに、ガイド部材5bとガイド部材5cによりワークAの幅方向中央部分をガイドしているため、ワークAの幅方向中央部分が第1ローラ1の外周面1aから剥離し易くなる。
【0015】
実施例1の効果を列挙する。
(1) 両ローラ1,2の周面間のうち、回転時に相互に近づき合う側と反対側でワークAを第1ローラ1の外周面1aから離間した所定経路(第2ローラ2の外周面2aとガイド部材5の第2端面7との間の空間)に沿ってガイドするガイド部材5を設けた。これにより、第1ローラ1の外周面1aに張り付こうとするワークAを外周面1aから剥離させることができるため、第1ローラ1によるワークAの巻き上げを防止できる。
(2) ガイド部材5を、両ローラ1,2の周面間のうち、回転時に相互に近づき合う側まで延在させたため、ガイド部材5を両持ち支持でき、ワークAを第2ローラ2側に押さえつけるために必要な支持剛性を確保できる。さらに、ワークAを安定して移送でき、しわやたるみの発生を抑制できる。
【0016】
(3) 第1ローラ1の外周面1aに環状溝8を形成し、ガイド部材5の第1端面6を環状溝8の内部に配置したため、ガイド部材5の幅を両ローラ1,2の周面間距離よりも長くでき、ワークAの剛性を高めることができる。
(4) ガイド部材5を、ワークAの幅方向両端にそれぞれ配置したため、ワークAの幅方向両端部分が第1ローラ1の外周面1aから剥離し易くなる。
(5) ガイド部材を、ワークAの幅方向中央に配置したため、ワークAの幅方向中央部分が第1ローラ1の外周面1aから剥離し易くなる。
【0017】
〔他の実施例〕
以下、実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、ガイド部材は、回転時に相互に近づき合う側と反対側でワークを第1ローラの周面から離間した所定経路に沿ってガイドするものであればよい。図3に、ガイド部材の他の実施例を示す。図3において、ガイド部材10は、両ローラ1,2の周面間のうち、回転時に相互に近づき合う側と反対側において、ワークAを第1ローラ1の外周面1aから離間した第1端面11に沿ってガイドしている。
実施例1では、ガイド部材10を薄板としたが、ガイド部材の材質や形状は任意である。また、ガイド部材の数や位置は、打ち抜き刃と重ならない位置であれば、自由に設定できるが、出来るだけ打ち抜き刃と近い位置に配置するのが好ましい。近い方がワークを第1ローラから剥離させ易いからである。
【符号の説明】
【0018】
A ワーク
1 第1ローラ
1a 外周面
2 第2ローラ
2a 外周面
3 打ち抜き刃
4 打ち抜き穴
5 ガイド部材
8 環状溝
図1
図2
図3