(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748412
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】工作機械の切削工具刃先診断装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/09 20060101AFI20150625BHJP
B23Q 17/12 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
B23Q17/09 F
B23Q17/12
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-65359(P2010-65359)
(22)【出願日】2010年3月22日
(65)【公開番号】特開2011-194532(P2011-194532A)
(43)【公開日】2011年10月6日
【審査請求日】2013年2月6日
【審判番号】不服2014-12579(P2014-12579/J1)
【審判請求日】2014年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】五十棲 丈二
(72)【発明者】
【氏名】幸村 数善
(72)【発明者】
【氏名】原口 貴文
(72)【発明者】
【氏名】木了 利浩
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 信也
【合議体】
【審判長】
長屋 陽二郎
【審判官】
栗田 雅弘
【審判官】
原 泰造
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−57569(JP,A)
【文献】
特許第3300604(JP,B2)
【文献】
特公昭56−45739(JP,B2)
【文献】
特公昭60−14661(JP,B2)
【文献】
特開平10−6185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q17/09
B23Q17/12
B23Q17/20
B23Q17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを切削加工する切削工具を保持して第1軸方向に移動させる第1軸スライドと、該第1軸スライドの移動方向と直交する第2軸方向に該第1軸スライドを移動させる第2軸スライドとを備え、前記切削工具を前記第1軸方向に移動させてワークを切削加工し、切削の背分力が前記第2軸方向に作用する工作機械の切削工具刃先診断装置において、
前記第2軸スライド側に取り付けられて、前記第1軸スライドによって前記切削工具を前記第1軸方向に移動させてワークを切削加工する切削加工中の前記第1軸スライドの第2軸方向への振動変位を検出するリニアスケールと、
前記切削加工中に前記リニアスケールの出力信号の振動振幅に基づいて前記第1軸スライドの第2軸方向への振動振幅を検出して前記切削工具の刃先の状態を診断する刃先診断処理を実行する診断手段と
を備えていることを特徴とする工作機械の切削工具刃先診断装置。
【請求項2】
前記診断手段は、前記第2軸スライドが停止しているときに前記刃先診断処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の切削工具刃先診断装置。
【請求項3】
前記診断手段は、前記第2軸スライドが移動しているときに前記刃先診断処理を実行する場合は、前記リニアスケールの出力信号から前記第2軸スライドの移動による出力変動分を取り除くことで前記第1軸スライドの振動による振動成分を抽出し、この振動成分の振幅に基づいて前記切削工具の刃先の状態を診断することを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械の切削工具刃先診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の切削工具の刃先のチッピング(刃こぼれ)や摩耗等を診断する工作機械の切削工具刃先診断装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、工作機械の切削工具の刃先のチッピングや摩耗を検出する作業を自動化することを目的として、例えば特許文献1(特開平8−85047号公報)に記載されているように、工作機械の切削工具又は工具ホルダに加速度センサを取り付け、切削加工中に加速度センサの出力信号を周波数解析すると共に、切削工具の刃先形状から工具刃先の共振周波数を算出して、この共振周波数を含む帯域を工具摩耗監視周波数帯域に設定し、加速度センサの出力信号から抽出した工具摩耗監視周波数帯域の振動レベルと全周波数帯域の振動レベルとの比率を工具摩耗度として算出し、工具摩耗度が所定の摩耗限界レベルを越えたときに、工具刃先の摩耗と判定するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−85047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のように、切削工具又は工具ホルダに加速度センサを取り付ける構成では、切削加工時に加速度センサやその配線がワークに接近するため、加速度センサやその配線がワークと干渉して損傷する可能性がある。また、切削工具に加速度センサを取り付ける場合は、切削工具を取り替える毎に、加速度センサを付け替えなければならず、切削工具の取替え作業に手間がかかるという問題もある。
【0005】
そこで、これらの課題を解決するために、切削工具をZ軸・X軸方向に移動させるスライドを駆動するモータのトルク変動を検出して、そのトルク変動から切削工具の刃先の状態を診断するようにしたものがある。
【0006】
しかし、切削工具の刃先とモータとの間には、スライド摺動部、ボールねじ機構の連結部等の複数の弾性要素が存在するため、切削加工中に切削工具の刃先のチッピングや摩耗によって発生する微小な振動がモータに伝達されるまでに複数の弾性要素で吸収されてしまう。しかも、モータの制御は、位置制御→速度制御→トルク制御の順序で行われるため、モータのトルク制御に応答遅れが生じる。これらの原因で、切削工具の刃先の微小な振動がモータのトルク変動として現れにくいという事情があり、そのため、モータのトルク変動の検出精度を高めても、切削工具の刃先の微小な振動を精度良く検出することは困難であり、切削工具の刃先の状態の診断精度が低くなることは避けられない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ワークを切削加工する切削工具を保持して第1軸方向に移動させる第1軸スライドと、該第1軸スライドの移動方向と直交する第2軸方向に該第1軸スライドを移動させる第2軸スライドとを備え、前記切削工具を前記第1軸方向に移動させてワークを切削加工し、切削の背分力が前記第2軸方向に作用する工作機械の切削工具刃先診断装置において、前記第2軸スライド側に、
前記第1軸スライドによって前記切削工具を前記第1軸方向に移動させてワークを切削加工する切削加工中の前記第1軸スライドの第2軸方向への振動変位を検出するリニアスケールを設けると共に、
前記切削加工中に前記リニアスケールの出力信号の振動振幅に基づいて
前記第1軸スライドの第2軸方向への振動振幅を検出して、その検出値に基づいて前記切削工具の刃先の状態を診断する刃先診断処理を実行する診断手段を設けた構成としたものである。
【0008】
この場合、切削工具を保持する第1軸スライドは、第2軸スライドのスライド方向である第2軸方向に振動可能であるため、切削加工中に切削工具の刃先が切削の背分力の作用方向である第2軸方向に振動すると、その切削工具を保持する第1軸スライドも一体的に第2軸方向に振動する。この第1軸スライドの第2軸方向への振動は、第2軸スライド側に取り付けられたリニアスケールによって検出され、該リニアスケールから第1軸スライドの
第2軸方向への振動波形に応じた波形の信号が出力される。これにより、
第1軸スライドによって切削工具を第1軸方向に移動させてワークを切削加工する切削加工中にリニアスケールの出力信号の振動振幅に基づいて
第1軸スライドの第2軸方向への振動振幅を検出して切削工具の刃先の状態を精度良く診断することができる。この場合、リニアスケールは第2軸スライドのスライド方向に沿って設ければ良いため、前記特許文献1の構成(切削工具又は工具ホルダに加速度センサを取り付ける構成)で生じた問題は全て解消される。また、切削工具と第1軸スライドとは一体的に振動してその振動がリニアスケールで検出されるため、弾性要素を介さずに振動を検出できると共に、モータ制御系の応答遅れの影響を全く受けずに振動を検出できる。これにより、切削工具の刃先の微小な振動を精度良く検出することが可能となり、切削工具の刃先の状態の診断精度を向上できる。
【0009】
本発明は、請求項2のように、第2軸スライドが停止しているときに刃先診断処理を実行するようにすると良い。このようにすれば、第2軸スライドの駆動による影響がリニアスケールの出力信号に含まれないため、リニアスケールの出力信号に切削工具からの振動成分が顕著に現れ、切削工具の刃先の微小な振動をより一層検出しやすくなる。
【0010】
また、請求項3のように、第2軸スライドが移動しているときに刃先診断処理を実行する場合は、リニアスケールの出力信号から第2軸スライドの移動による出力変動分を取り除くことで、第1軸スライドの振動による振動成分を抽出し、この振動成分の振幅に基づいて切削工具の刃先の状態を診断するようにすれば良い。このように、第2軸スライドが移動しているときに刃先診断処理を実行する場合は、リニアスケールの出力信号から第2軸スライドの移動による出力変動分を取り除くことで、リニアスケールの出力信号から第2軸スライドの移動による影響を排除して、第1軸スライドの振動による振動成分のみを抽出することができ、切削工具の刃先の微小な振動を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明の一実施例における旋盤の正面図である。
【
図3】
図3はZ軸スライドの下端側に切削工具を着脱可能に保持する構造を示す正面図である。
【
図4】
図4(a)は切削工具が新品の時のリニアスケールの出力信号の振動波形、同図(b)は切削工具が摩耗した時のリニアスケールの出力信号の振動波形である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を旋盤に適用して具体化した一実施例を説明する。 まず、本実施例の旋盤の構成を
図1(正面図)及び
図2(側面図)を用いて概略的に説明する。
【0014】
本実施例の旋盤は、立型旋盤であり、基台11にはスピンドル12が上向きに回転可能に設けられ、このスピンドル12の上端部にはワークテーブル13が取り付けられている。このワークテーブル13上には、切削加工の対象となるワークがチャック(図示せず)で保持されるようになっている。
【0015】
基台11上には、XZ軸スライド機構14を支持する門型のコラム15が設けられている。XZ軸スライド機構14は、X軸スライド機構16とZ軸スライド機構21とから構成され、X軸スライド機構16は、コラム15の上部フレーム15aにX軸方向(左右方向)に延びるように取り付けられたX軸スライドガイド17と、このX軸スライドガイド17の裏面側に沿ってX軸方向に延びるように回転可能に支持されたX軸送りねじ18と、このX軸送りねじ18を正転・逆転両方向に回転駆動するX軸モータ19と、X軸スライドガイド17の前面側にX軸方向にスライド移動可能に支持されたX軸スライド20(第2軸スライド)とから構成されている。
【0016】
一方、Z軸スライド機構21は、X軸スライド20の前面にZ軸方向(上下方向)に延びるように取り付けられたZ軸スライドガイド22と、このZ軸スライドガイド22の裏面側に沿ってZ軸方向に延びるように回転可能に支持されたZ軸送りねじ23と、このZ軸送りねじ23を正転・逆転両方向に回転駆動するZ軸モータ24と、Z軸スライドガイド22にZ軸方向にスライド移動可能に支持されたZ軸スライド25(第1軸スライド)とから構成されている。これにより、Z軸スライド25は、X軸スライド20のスライド移動方向(X軸方向)と直交するZ軸方向にスライド移動するように構成されている。
図3に示すように、Z軸スライド25の下端に設けられた搭載部26には、切削工具27を保持する工具ホルダ28が着脱可能に保持されるようになっている。
【0017】
次に、切削工具27の刃先の状態を診断する切削工具刃先診断装置の構成を説明する。 X軸スライドガイド17には、光学式のリニアスケール29がX軸方向に延びるように設けられ、X軸スライド20には、Z軸スライド25(Z軸スライドガイド22)のX軸方向の位置をリニアスケール29から読み取るための位置計測部(図示せず)が設けられ、該位置計測部から出力される位置検出信号が旋盤の制御用コンピュータ(図示せず)に入力される。旋盤の制御用コンピュータは、リニアスケール29の位置計測部から入力される位置検出信号に基づいてZ軸スライド25(Z軸スライドガイド22)のX軸方向の位置を検出する。
【0018】
高精度加工においては、切削加工中の切削工具27の刃先振動は、ほぼ0.1μm以下である。この点を考慮して、リニアスケール29の分解能は、10nmの高分解能のものを用いている。また、XZ軸スライド機構14のスライドガイド17,22やスライド20,25の剛性を高めることで、切削工具27の刃先振動がスライドガイド17,22やスライド20,25の弾性によって吸収されることなく、Z軸スライド25(Z軸スライドガイド22)のX軸方向の振動変位として伝達されるように構成されている。
【0019】
切削加工中は、スピンドル12によってワークを回転させながら、切削工具27をZ軸方向に送りながら該切削工具27の刃先でワークを切削加工する。この際、切削の背分力は、刃先を送る方向(Z軸方向)に対して直角方向(X軸方向)に作用するため、切削工具27の刃先にチッピングや摩耗があると、切削工具27の刃先が主としてX軸方向に振動し、この刃先振動がZ軸スライド25(Z軸スライドガイド22)のX軸方向の振動となって現れる。また、切削工具27を保持するZ軸スライド25(Z軸スライドガイド22)は、X軸スライド20(X軸スライドガイド17)によってX軸方向に振動可能となっているため、切削加工中に切削工具27の刃先がX軸方向に振動すると、その切削工具27を保持するZ軸スライド25(Z軸スライドガイド22)も一体的にX軸方向に振動する。
【0020】
従って、切削加工中にX軸スライド機構16のX軸モータ19が停止している状態で、Z軸スライド25(Z軸スライドガイド22)がX軸方向に振動していれば、切削工具27の刃先にチッピングや摩耗が生じているものと考えられる。X軸スライド機構16のX軸モータ19の停止中は、X軸モータ19の駆動によるX軸方向の振動が発生しないため、Z軸スライド25(Z軸スライドガイド22)のX軸方向の振動に応じて、そのX軸方向の位置を検出するリニアスケール29の出力信号が振動し、その出力信号の振動振幅は、Z軸スライド25(Z軸スライドガイド22)のX軸方向の振動振幅に相当したものになる。これにより、X軸スライド機構16のX軸モータ19の停止中は、X軸モータ19の駆動の影響を全く受けずに、切削工具27の刃先振動によるZ軸スライド25(Z軸スライドガイド22)のX軸方向の振動のみをリニアスケール29で精度良く検出できる。
【0021】
この点に着目して、本実施例では、旋盤の制御用コンピュータ(診断手段)は、切削加工中にX軸スライド機構16のX軸モータ19が停止している状態で、リニアスケール29の出力信号の振動振幅に基づいて切削工具27の刃先の状態を診断する刃先診断処理を実行する。切削工具27が新品の時には、
図4(a)に示すように、リニアスケール29の出力信号の振動振幅が比較的小さいが、切削工具27が摩耗している時には、
図4(b)に示すように、リニアスケール29の出力信号の振動振幅が大きくなる。従って、リニアスケール29の出力信号の振動振幅が所定の判定しきい値以上であるか否かで、切削工具27の刃先にチッピングや摩耗が生じているか否かを判定することができる。
【0022】
以上説明した本実施例によれば、X軸スライド20側に、切削加工中のZ軸スライド25(Z軸スライドガイド22)のX軸方向への振動変位を検出するリニアスケール29を設け、切削加工中にリニアスケール29の出力信号の振動振幅に基づいて切削工具27の刃先の状態(チッピングや摩耗)を診断するようにしたので、切削加工中にリニアスケール29の出力信号の振動振幅に基づいて切削工具27の刃先の状態を精度良く診断することができる。
【0023】
この場合、リニアスケール29はX軸スライド20のスライド方向に沿って設ければ良いため、前述した特許文献1の構成(切削工具又は工具ホルダに加速度センサを取り付ける構成)で生じた問題は全て解消される。また、切削工具27とZ軸スライド25(Z軸スライドガイド22)とは一体的に振動してそのX軸方向の振動がリニアスケール29で検出されるため、弾性要素を介さずに振動を検出できると共に、モータ制御系の応答遅れの影響を全く受けずに振動を検出できる。これにより、切削工具27の刃先の微小な振動を精度良く検出することが可能となり、切削工具27の刃先の状態の診断精度を向上できる。
【0024】
しかも、本実施例では、切削加工中にX軸スライド機構16のX軸モータ19が停止している状態で、リニアスケール29の出力信号の振動振幅に基づいて切削工具27の刃先の状態を診断するようにしたので、X軸モータ19の駆動の影響を全く受けずに、切削工具27の刃先振動によるZ軸スライド25(Z軸スライドガイド22)のX軸方向の振動のみをリニアスケール29で検出でき、切削工具27の刃先の状態の診断精度をより一層向上できる。
【0025】
また、切削工具27の刃先振動はワークの加工面粗度と密接に関係するため、切削工具27の刃先の状態が良好なことが確認されている場合(チッピングや摩耗が無いことが確認されている場合)には、リニアスケール29の出力信号の振動振幅に基づいてワークの加工面粗度を測定することができ、ワーク加工面の寸法測定だけでは検出し難い加工面粗度の不良検知が可能となる。また、ワークの加工面粗度の測定を専用の測定機器を用いて行うと、測定機器の可動ストロークの制約から加工面全域の測定は難しく、部分的な測定となるが、本実施例の方法では、リニアスケール29を用いるため、加工面全域の測定が可能となる。
【0026】
以上説明した本実施例では、切削加工中にX軸スライド機構16のX軸モータ19が停止している状態で、リニアスケール29の出力信号の振動振幅に基づいて切削工具27の刃先診断処理を実行するようにしたが、本発明は、これに限定されず、X軸スライド機構16のX軸モータ19の駆動中に、リニアスケール29の出力信号の振動振幅に基づいて切削工具27の刃先診断処理を実行するようにしても良い。X軸モータ19の駆動中は、リニアスケール29の出力信号にX軸スライド25の移動による出力変動分が含まれるため、リニアスケール29の出力信号からX軸スライド25の移動による出力変動分を取り除くことで、Z軸スライド25の振動による振動成分を抽出し、この振動成分の振幅に基づいて切削工具27の刃先の状態を診断するようにすれば良い。ここで、X軸スライド25の移動による出力変動分は、移動指令に基づいて算出するようにすれば良い。
【0027】
このように、X軸スライド25が移動しているときに刃先診断処理を実行する場合に、リニアスケール29の出力信号からX軸スライド25の移動による出力変動分を取り除けば、リニアスケール29の出力信号からX軸スライド25の移動による影響を排除して、切削工具27を保持するZ軸スライド25(Z軸スライドガイド22)の振動による振動成分を抽出することができ、切削工具27の刃先の微小な振動を精度良く検出することができる。
【0028】
尚、本実施例では、X軸スライド20(第2軸スライド)側にリニアスケール29を取り付けて、Z軸スライド25(第1軸スライド)のX軸方向(第2軸方向)への振動変位を検出するようにしたが、これとは反対に、
参考例では、Z軸スライド25(第1軸スライド)側にリニアスケールを取り付けて、Z軸スライド25(第1軸スライド)を停止させてX軸スライド20(第2軸スライド)を動かして切削加工する場合に、リニアスケールによ
りX軸スライド20(第2軸スライド)
のZ軸方向(第1軸方向)への振動変位を検出して、該リニアスケールの出力信号の振動振幅に基づいて切削工具の刃先の状態を診断するようにして
いる。Z軸スライド25(第1軸スライド)を停止させてX軸スライド20(第2軸スライド)を動かして切削加工する場合は、切削工具27の刃先の摩耗等による振動の方向(切削の背分力の作用方向)がZ軸方向(第1軸方向)になるためである。
【0029】
その他、本発明は、
図1〜
図3に示すような立型旋盤に限定されず、他のタイプの旋盤やマシニングセンタにも適用して実施でき、要は、切削工具を直交2軸方向に移動させる工作機械であれば、本発明を広く適用して実施できる。
【符号の説明】
【0030】
11…基台、12…スピンドル、13…ワークテーブル、14…XZ軸スライド機構、15…コラム、16…X軸スライド機構、17…X軸スライドガイド、18…X軸送りねじ、19…X軸モータ、20…X軸スライド(第2軸スライド)、21…Z軸スライド機構、22…Z軸スライドガイド、23…Z軸送りねじ、24…Z軸モータ、25…Z軸スライド(第1軸スライド)、26…搭載部、27…切削工具、28…工具ホルダ、29…リニアスケール